JP3611376B2 - 毛髪セット剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、毛髪セット剤に関するものであり、さらに詳しくは、毛髪に対する優れたセット力を有し、しかも毛髪に艶、潤い、はりを付与し、かつ毛髪をなめらかにし、毛髪の櫛通り性を改善する毛髪セット剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、セットローションやヘアスタイリング剤には、毛髪に対するセット力を付与するために、トランタンガムなどのガム類、天然蛋白質やその加水分解物などの天然高分子、ヒドロキシエチルセルロースなどの半合成高分子などが配合されてきたが、最近では、それらに代えて、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸エステル、アクリル酸および/またはメタクリル酸とアクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルとの共重合体などの合成高分子が配合されるようになってきた。
【0003】
しかしながら、天然高分子やセルロース系の半合成高分子は、高湿度下ではべとつきを生じやすく、かつセット力が失われやすいという欠点があり、一方、合成高分子は、乾燥時にフレーキング(形成されたフィルムにひび割れを生じて鱗片状に剥離する現象)が生じやすいという欠点があった。
【0004】
そのため、合成高分子と蛋白加水分解物またはその誘導体とを併用して、蛋白加水分解物またはその誘導体の有する保湿作用により合成高分子のフレーキングが生じやすいという欠点を解消しようとする試みがなされているが、セット力の点で満足できる結果が得られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、毛髪に対する優れたセット力を有し、高湿度下でもべとつきを生じず、乾燥時にもフレーキングを起こさず、さらには、毛髪に艶や潤い、はりを付与し、毛髪をなめらかにし、かつ毛髪の櫛通り性を改善することができる毛髪セット剤を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、アミノ酸側鎖のアミノ基を含むペプチドのアミノ基にケイ素原子をただ一つ含む官能基(シリル官能基)が共有結合した下記の一般式(I)
【化3】
〔式中、R1 、R2 、R3 のうち2個は水酸基を示し、残りはメチル基を示す。R4 は側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く側鎖の残基を示し、R5 はR4 以外のアミノ酸側鎖を示し、aは1または3で、mの平均値は1〜2、nの平均値は7〜8、m+nの平均値は8〜10である(ただし、mおよびnはアミノ酸の数を示すのみで、アミノ酸配列の順序を示すものではない)〕
で表されるシリル化ペプチド、または下記の一般式(II)
【化4】
〔式中、R1 、R2 、R3 のうち少なくとも2個は水酸基を示し、残りはメチル基を示す。R4 は側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く側鎖の残基を示し、R5 はR4 以外のアミノ酸側鎖を示し、aは1または3で、mの平均値は0.4〜1.4、nの平均値は5.6〜18.6、m+nの平均値は6〜20である(ただし、mおよびnはアミノ酸の数を示すのみで、アミノ酸配列の順序を示すものではない)〕
で表されるシリル化ペプチドを配合し、かつ、そのpHを3.5〜6.5に調整して、毛髪に使用するときは、上記シリル化ペプチドが毛髪に艶、潤い、はりを付与し、かつ毛髪をなめらかにして、毛髪の櫛通り性を改善するとともに、毛髪に対する優れたセット力を付与することを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0007】
本発明の毛髪セット剤は、上記のシリル化ペプチドを配合し、かつpHを3.5〜6.5に調整することによって調製されるが、それらのシリル化ペプチドやpHを調整するためのpH調整剤について詳しく説明すると、以下の通りである。
【0008】
〔シリル化ペプチド〕
上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドは、例えば、下記の一般式(III)
【0009】
【化5】
〔式中、R6 、R7 、R8 はメチル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、水酸基またはハロゲン原子を示し、これらのR6 、R7 、R8 はすべて同じでもよく、また異なっていてもよいが、メチル基が2個以上になることはない。aは1または3で、XはCl、Br、F、Iなどのハロゲン原子を示す〕
で表されるシリル化合物と、下記の一般式(IV)
【0010】
【化6】
〔式中、R4 は側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く側鎖の残基を示し、R5 はR4 以外のアミノ酸側鎖を示し、mの平均値は1〜2、nの平均値は7〜8、m+nの平均値は8〜10である〕
で表されるペプチド類とを縮合反応させることによって得られる。
【0011】
また、一般式(II)で表されるシリル化ペプチドは、例えば、下記の一般式(V)
【0012】
【化7】
〔式中、R6 、R7 、R8 はメチル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、水酸基またはハロゲン原子を示し、これらのR6 、R7 、R8 はすべて同じでもよく、また異なっていてもよいが、メチル基が2個以上になることはない。aは1または3を示す〕
で表されるシリル化合物と、下記の一般式(VI)
【0013】
【化8】
〔式中、R4 は側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く側鎖の残基を示し、R5 はR4 以外のアミノ酸側鎖を示し、mの平均値は0.4〜1.4、nの平均値は5.6〜18.6、m+nの平均値は6〜20である〕
で表されるペプチド類とを縮合反応させることによって得られる。
【0014】
〔シリル化ペプチドの特性〕
一般式(I)で表されるシリル化ペプチドや一般式(II)で表されるシリル化ペプチドは、その化学構造式からも明らかなように、それぞれ一般式(III)で表されるシリル化合物や一般式(V)で表されるシリル化合物に基づくケイ素原子を含むシリル官能基部分と、一般式(IV)で表されるペプチド類や一般式(VI)で表されるペプチド類に基づくペプチド部分を有している。そして、そのシリル官能基部分はpH3.5〜6.5で会合してゲル化する性質を有するので、上記シリル化ペプチドをpH3.5〜6.5の溶液または湿潤状態で毛髪に使用し、乾燥すると、毛髪に強いセット力を付与することができる。さらに、シリル官能基部分の有する優れた伸展性、摩擦低減性、艶や光沢の付与作用、撥水性の付与作用などと、ペプチド部分の有する毛髪への収着作用、それに伴う毛髪のボリュームアップ、ハリの付与、造膜による保護作用、保湿作用などを同時に発揮することができる。
【0015】
また、高分子量のシリコーンオイルは、一旦毛髪に付着すると取れにくく、そのため、パーマ、ブリーチ、染毛などの化学的処理を行ないにくくし、ペプチドやカチオン性ポリマーなどの毛髪への収着作用を減少させるという欠点があるが、上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドや一般式(II)で表されるシリル化ペプチドは、ペプチド部分に低分子量のシリル官能基が結合したものであって、毛髪には通常のペプチドの収着機構で収着するので、ペプチドを含まない洗浄剤で洗浄することにより、可逆的にシリル化ペプチドを毛髪上から脱着することができ、上記のような弊害を生じない。
【0016】
さらに、上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドや一般式(II)で表されるシリル化ペプチドは、一物質中にシリル官能基部分とペプチド部分を有するので、従来のシリコーンオイルとポリペプチドを混合したものとは異なり、シリル官能基部分の毛髪への収着性が高い。
【0017】
一般式(I)で表されるシリル化ペプチドや一般式(II)で表されるシリル化ペプチドにおいて、R1 、R2 、R3 を前記のように特定しているのは、一般式(I)で表されるシリル化ペプチドや一般式(II)で表されるシリル化ペプチドが、水溶液を有し、水溶性の毛髪セット剤中で良好な保存安定性を保つようにするためである。また、aを1または3に特定しているのは、aが2の場合は一般式(III)で表されるシリル化合物や一般式(V)で表されるシリル化合物の状態での保存安定性が悪く、aが3より大きくなると、分子全体中でシリル官能基部分の占める割合が小さくなり、シリル官能基部分の有する性質を充分に発揮できなくなるためである。
【0018】
〔シリル化ペプチドにおけるペプチド部分〕
一般式(I)で表されるシリル化ペプチドや一般式(II)で表されるシリル化ペプチドにおいて、R4 は側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く側鎖の残基であるが、上記のような側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸としては、例えば、リシン、アルギニン、ヒドロキシリシンなどが挙げられる。また、R5 はR4以外のアミノ酸側鎖を示すが、そのようなアミノ酸としては、例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、セリン、トレオニン、バリン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、フェニルアラニン、プロリン、ヒドロキシプロリンなどが挙げられる。
【0019】
一般式(I)で表されるシリル化ペプチドにおいて、mの平均値は1〜2、nの平均値は7〜8、m+nの平均値は8〜10であり、一般式(II)で表されるシリル化ペプチドにおいて、mの平均値は0.4〜1.4、nの平均値は5.6〜18.6、m+nの平均値は6〜20であるが、これはシリル官能基部分の有する特性を充分に発揮させるとともに、ペプチドとしての毛髪への収着性や浸透性の減少を抑制し、シリル化ペプチドとしての保存安定性の低下を抑制するためである。
【0020】
なお、上記のm、nやm+nは、理論的には整数であるが、ペプチド部分が後述するような加水分解ペプチドである場合は、該加水分解ペプチドが分子量の異なるものの混合物として得られるため、測定値は平均値になる。
【0021】
上記一般式(IV)や一般式(VI)で表されるペプチド類におけるペプチドは、天然ペプチド、合成ペプチド、タンパク質(蛋白質)を酸、アルカリまたは酵素で部分加水分解して得られる加水分解ペプチドなどである。
【0022】
天然ペプチドとしては、例えば、グルタチオン、バシトラシンA、インシュリン、グルカゴン、オキシトシン、バソプレシンなどが挙げられ、合成ペプチドとしては、例えば、ポリグリシン、ポリリシン、ポリグルタミン酸、ポリセリンなどが挙げられる。
【0023】
加水分解ペプチドとしては、例えば、コラーゲン(その変成物であるゼラチンも含む)、ケラチン、絹フィブロイン、セリシン、カゼイン、コンキオリン、エラスチン、鶏、あひるなどの卵の卵黄タンパク、卵白タンパク、大豆タンパク、小麦タンパク、トウモロコシタンパク、米(米糠)タンパク、ジャガイモタンパクなどの動植物由来のタンパク、あるいは、サッカロミセス属、カンディタ属、エンドミコプシス属の酵母菌や、いわゆるビール酵母、清酒酵母といわれる酵母菌より分離した酵母タンパク、キノコ類(担子菌)より抽出したタンパク、クロレラより分離したタンパクなどの微生物由来のタンパクを酸、アルカリまたは酵素で部分的に加水分解して得られるペプチドなどが挙げられる。
【0024】
〔シリル化ペプチドの合成〕
上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドや一般式(II)で表されるシリル化ペプチドは、上記一般式(III)で表されるシリル化合物や一般式(V)で表されるシリル化合物と一般式(IV)で表されるペプチド類や一般式(VI)で表されるペプチド類とを接触反応させて得られるものであるが、一般式(III)で表されるシリル化合物や一般式(V)で表されるシリル化合物は、シランカップリング剤として市販されているものを使用することができる。そのようなシランカップリング剤としては、例えば、東芝シリコーン(株)製のTSL8390、TSL8219、TSL8395、TSL8326、TSL8325、TSL8320、TSL8355、TSL8350(いずれも、商品名)、日本ユニカー(株)製のA−143(商品名)、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSH6040、SH6076(いずれも、商品名)、信越シリコーン(株)製のKBE403、KBE402、KBE703(いずれも、商品名)などが挙げられる。
【0025】
上記一般式(III)で表されるシリル化合物や一般式(V)で表されるシリル化合物と一般式(IV)で表されるペプチド類や一般式(VI)で表されるペプチド類との反応は、例えば、まず、シリル化合物を30〜50℃の水中で5〜20分間攪拌して加水分解することにより、ケイ素原子に結合するアルコキシ基やハロゲン原子を水酸基に変換した後、この水酸基化したシリル化合物を一般式(IV)で表されるペプチド類の溶液に滴下し、両者を接触させることによって行われる。
【0026】
上記反応に際して、ペプチド類は30〜50重量%程度の水溶液にするのが好ましく、水酸基化したシリル化合物の滴下は30分〜5時間で終了するのが好ましい。
【0027】
一般式(III)で表されるシリル化合物を用いる場合は、反応時、反応によってハロゲン化水素が生成して反応液のpHが低下するので、反応と同時に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ溶液を滴下して、反応系内のpHを8〜11、特に9〜10に保つことが好ましい。また、一般式(V)で表されるシリル化合物を用いる場合は、反応によるpHの低下は生じないが、反応は塩基性で進行するので、ペプチド溶液のpHを8〜11、特に9〜10にしておく必要がある。
【0028】
反応は常温でも進行するが、温度は高くなるほど反応速度は速くなる。しかし、pHが高い状態で温度が高くなるとシリル化合物の加水分解が促進されるため、高くても70℃以下にすることが好ましく、特に40〜60℃で行うのが好ましい。
【0029】
反応の進行と終了は、ファン・スレーク(Van Slyke)法により、反応中のペプチド類のアミノ態窒素量を測定することによって確認することができる。
【0030】
反応終了後、反応液は中和した後、適宜濃縮して、イオン交換樹脂、透析膜、電気透析、ゲル濾過、限外濾過などによって精製し、液体のまま、あるいは粉末化して毛髪セット剤の原料として供される。
【0031】
上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドや一般式(II)で表されるシリル化ペプチドにおいて、ペプチドのアミノ基へのシリル官能基(すなわち、ケイ素原子をただ一つ含む官能基)の導入率は50%以上85%以下が好ましい。シリル官能基の導入率が50%より少ない場合はシリル化合物に基づく特性が充分に発揮されないおそれがあり、また85%より多くなると疎水性が増して親水性が減少するおそれがある。
【0032】
〔シリル化ペプチド配合毛髪セット剤の調製〕
本発明の毛髪セット剤は、一般式(I)で表されるシリル化ペプチドや一般式(II)で表されるシリル化ペプチドを水または水と水溶性アルコールなどを含有した溶液に溶解し、pHを3.5〜6.5の範囲に調整することによって調製されるが、シリル化ペプチドの毛髪セット剤への配合量(毛髪セット剤中での含有量)は、0.1〜40重量%が好ましく、特に2〜20重量%が好ましい。これは、シリル化ペプチドの配合量が上記範囲より少ない場合は、毛髪をセットする際に毛髪に付着するシリル化ペプチドの量が少ないため、充分なセット効果が得られず、また、シリル化ペプチドの配合量が上記範囲より多くなると、毛髪セット剤の粘度が高くなりすぎて毛髪に使用する際の取扱いが困難になるからである。そして、毛髪セット剤への配合にあたって、上記シリル化ペプチドは単独で用いてもよいし、また2種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
pHを3.5〜6.5の範囲に調整するためのpH調整剤としては、特に制限はなく、化粧品に配合できる無機酸、有機酸のいずれを用いてもよい。ただ、毛髪セット剤への着臭の点を考慮すると、無機酸では塩酸、有機酸ではシュウ酸、クエン酸、リンゴ酸などを用いることが好ましい。
【0034】
上記のように、毛髪セット剤のpHは3.5〜6.5に調整することが必要であり、特にpH4〜6が好ましい。pHが上記範囲より低い場合は、シリル官能基部分に基づくゲル化力が低下し、またpHが上記範囲より高くなると、シリル化ペプチドがゲル化しなくなり、いずれの場合も、充分なセット力を発揮できなくなる。
【0035】
本発明の毛髪セット剤は、シリル化ペプチドを必須成分とし、これを水または水に水溶性アルコールなどの適宜な溶剤などを加えた液に溶解させ、pHを3.5〜6.5に調整することによって調製されるが、これらのpHを調整するためのpH調整剤やシリル化ペプチド以外にも本発明の効果を損なわない範囲で適宜他の成分を添加することができる。
【0036】
そのような成分としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキル(炭素数12〜14)エーテル(7EO)(なお、EOはエチレンオキサイドで、EOの前の数値はエチレンオキサイドの付加モル数を示す)、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーエル、ポリオキシエチレンオレイン酸グリセリル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルステアリルジエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールラノリン(40EO)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、アルキルグリコシド、アルキルポリグリコシドなどのノニオン性界面活性剤、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セトステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルビス(ジエチレングリコール)ヒドロキシエチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、臭化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化トリ〔ポリオキシエチレン(5EO)〕ステアリルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、臭化ベヘニルトリメチルアンモニウム、ヨウ化セチルトリメチルアンモニウム、塩化オレイルベンジルジメチルアンモニウム、塩化オレイルビス〔ポリオキシエチレン(15EO)〕メチルアンモニウム、塩化ポリオキシプロピレンメチルジエチルアンモニウム、塩化ミンク油アルキルアミドプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム、塩化γ−グルコンアミドプロピルジメチルヒドロキシアンモニウム、アルキルピリジニウム塩などの陽イオン性界面活性剤、カチオン化セルロース、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化グアーガム、ポリ塩化ジアリルジメチルアンモニウム、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミンなどのカチオン性ポリマー、両性ポリマー、アニオン性ポリマーなどの合成ポリマー、イソステアリン酸ジエタノールアミド、ウンデシレン酸モノエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、牛脂脂肪酸モノエタノールアミド、硬化牛脂脂肪酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸モノエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸エタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸イソプロパノールアミド、ラウリン酸エタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ラノリン脂肪酸ジエタノールアミドなどの増粘剤、ワックス、パラフィン、脂肪酸エステル、グリセライド、動植物油などの油脂類、動植物抽出物、コラーゲン、ケラチン、フィブロイン、セリシン、カゼイン、大豆、小麦、トウモロコシ、イモ類、米(米糠)、酵母、キノコ類などの動植物および微生物由来のタンパク質の加水分解ペプチドやそのペプチドエステル誘導体、動植物および微生物由来のタンパク質の加水分解ペプチドのN−第4級アンモニウム誘導体類でトリメチルアンモニオ−2−ヒドロキシプロピル誘導体、トリエチルアンモニオ−2−ヒドロキシプロピル誘導体、ジエチルメチルアンモニオ−2−ヒドロキシプロピル誘導体、ラウリルジメチルアンモニオ−2−ヒドロキシプロピル誘導体、ヤシ油アルキルジメチルアンモニオ−2−ヒドロキシプロピル誘導体、ステアリルジメチルアンモニオ−2−ヒドロキシプロピル誘導体などのアルキル鎖が1〜22の第4級アンモニウム誘導体、ポリサッカライドまたはその誘導体、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ポリエチレングリコールなどの湿潤剤、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの低級アルコール類、セタノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、イソセチルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコールなどの高級アルコール類、ラウリン酸ジメチルアミノエチルアミド、ミリスチン酸ジエチエルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、イソステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミドなどの第3級アミドアミン化合物、L−アスパラギン酸、L−アスパラギン酸ナトリウム、DL−アラニン、L−アルギニン、グリシン、L−グルタミン酸、L−システイン、L−スレオニンなどのアミノ酸、などを挙げることができる。
【0037】
また、鎖状または環状のメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンポリエチレングリコール共重合体、ジメチルポリシロキサンポリプロピレン共重合体、アミノ変成シリコーンオイル、第4級アンモニウム変成シリコーンオイルなどのシリコーンオイルをシリル化ペプチドと併用した場合、上記シリル化ペプチドのシリル官能基部分がシリコーンオイルと相溶性があるため、シリコーンオイルの毛髪セット剤中での乳化安定性を増加させるので、シリコーンオイルの作用が発揮されやすくなる。
【0038】
本発明の毛髪セット剤は、毛髪のセットを主目的として使用されるものであり、そのような毛髪のセットを主目的として使用されるものであれば、例えば一般にセットローションやヘアスタイリング剤などと呼ばれているものをはじめ、各種のものが本発明の毛髪セット剤の範疇に含まれる。
【0039】
【発明の効果】
本発明の毛髪セット剤は、一般式(I)で表されるシリル化ペプチドまたは一般式(II)で表されるシリル化ペプチドがpH3.5〜6.5の範囲で示すゲル化作用により、毛髪に優れたセット力を付与することができる。また、本発明の毛髪セット剤は、上記シリル化ペプチドにより、毛髪に艶、潤い、ハリを付与し、かつ毛髪をなめらかにし、毛髪の櫛通り性を改善することができる。
【0040】
【発明の実施の形態】
つぎに、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例に先立ち、実施例中で実施するウェーブ効率およびウェーブ保持率の測定方法について説明する。
【0041】
〔ウェーブ効率およびウェーブ保持率の測定方法〕
毛髪10本を一束とし、その毛根側を揃えてテープで固定し、長さを18cmに揃える。ロッドには直径10mmで長さ80mmのガラス管を使用し、あらかじめ10mmごとに印をつけておく(反対側にも5mmずらして印をつける)。そして、その印の上を通るように毛束をロッドに巻き付け、両端を輪ゴムで固定する。その毛束に一定量の毛髪セット剤を塗布し、ヘアドライヤーで乾燥する。その後、毛先側の輪ゴムをはずし、デシケータ内でロッドを水平に宙吊り状態にして12時間乾燥する。乾燥後、毛束をロッドからはずし、ウェーブの波長および波数を測定し、ついで、毛先側に3gの錘を付け、毛束を垂直状態にしてデシケータ中で12時間放置する。つぎに、錘を毛束からはずし、毛束を垂直にしてデシケータ中で24時間放置し、再度ウェーブの波長および波数を測定する。
【0042】
波長、波数の測定は、図1に示すように、両端のウェーブを除き、第2番目の波の頂点からの距離を左右とも測定する。左右の波の頂点から頂点までの距離をL1 、L2 とし、L1 とL2 の間にある波の数をそれぞれn1 、n2 とすると、平均波長(L)は下式によって求められる。
【0043】
【0044】
ロッドそのものの波長(直径)は10mmであるから、ウェーブ効率は次式により求められる。
【0045】
【0046】
また、セット処理後のウェーブ効率と、錘をはずして24時間放置してウェーブが回復した後のウェーブ効率の比から、次式に示すように、ウェーブ保持率が求められる。
【0047】
【0048】
実施例1および比較例1〜2
表1に示す組成の3種類の毛髪セット剤を調製し、それぞれの毛髪セット剤を洗浄した毛髪に使用して、処理後の毛髪の艶、潤い、はり、ウェーブ効率およびウェーブ保持率を調べた。
【0049】
なお、実施例や比較例中における各成分の配合量はいずれも重量部によるものであり、配合量が固形分量でないものについては、成分名のあとに括弧書きで固形分濃度を示している。これらは、以後の実施例および比較例でも同様である。
【0050】
実施例1においては、シリル化ペプチドとして、一般式(I)において、R1 =CH3 、R2 =OH、R3 =OHで、a=3、mの平均値=2、nの平均値=8、m+nの平均値=10で、シリル官能基の導入率61%のシリル化加水分解ケラチンを用いている。比較例1では、シリル化加水分解ケラチンに代えて、加水分解ケラチン(m+n=10)〔(株)成和化成製、プロモイスWK−H(商品名)〕とメチルポリシロキサン〔東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、SH200C−1000cs(商品名)〕を用い、比較例2では、加水分解ケラチンのみを用いている。
【0051】
【表1】
【0052】
上記毛髪セット剤による処理に先立ち、毛髪をあらかじめ2%ポリオキシエチレン(10EO)ノニルフェニルエーテル水溶液で洗浄し、水でゆすいで室温で風乾した。これらの毛髪10本からなる毛束をロッドに巻き付け、そのロッドに巻き付けた毛束をそれぞれ実施例1および比較例1〜2のセットローションに30秒間浸漬し、前記の方法でウェーブ効率およびウェーブ保持率を測定した。また、その乾燥後の波長、波数の測定時に、毛髪の艶、潤い、はりを10人の女性パネラーに評価させた。さらに、上記評価後の毛束を相対湿度66%の恒湿槽中に24時間保存し、毛髪のべとつきの少なさについて上記パネラーに評価させた。
【0053】
評価方法は、最も良いものを〔2点〕とし、2番目に良いものを〔1点〕とし、悪いものを〔0点〕として、表2にその結果を10人の平均値で示す。
【0054】
【表2】
【0055】
表2に示すように、シリル化加水分解ケラチンを配合した実施例1は、シリル化加水分解ケラチンを配合していない比較例1〜2に比べて、毛髪の艶、潤い、はりのいずれにおいても評価値が高く、シリル化加水分解ケラチンが毛髪に収着して、毛髪に艶、潤い、はりを付与することが明らかであった。また、実施例1は毛髪のべとつきも少なかった。さらに、実施例1は、比較例1〜2に比べて、ウェーブ効率が約20%近く高く、かつウェーブ保持率が高いことから、シリル化加水分解ケラチンが毛髪を強力にセットし、かつ、そのセット力が持続性を有することが明らかであった。なお、恒湿槽中に保存前の状態では、いずれの毛束にも、毛髪セット剤によるフレーキングは認められなかった。
【0056】
実施例2および比較例3〜4
表3に示す組成の3種類の毛髪セット剤を調製し、それぞれの毛髪セット剤を用いた場合の毛髪の艶、潤い、はり、ウェーブ効率およびウェーブ保持率を実施例1と同様に調べた。
【0057】
実施例2においては、シリル化ペプチドとして、一般式(II)において、R1 =CH3 、R2 =OH、R3 =OHで、a=1、mの平均値=1.4、nの平均値=18.6、m+nの平均値=20で、シリル官能基の導入率67%のシリル化加水分解コラーゲンを用いている。比較例3では、シリル化加水分解コラーゲンに代えて、加水分解コラーゲン(m+n=20)〔(株)成和化成製、プロモイスW−52(商品名)〕とジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体〔東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、SH3771C(商品名)〕を用い、比較例4では、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体のみを用いている。
【0058】
【表3】
【0059】
毛髪のセット処理は、実施例1と同様に洗浄処理した毛束をロッドに巻き付け、そのロッドに巻き付けた毛束をそれぞれ上記実施例2および比較例3〜4の毛髪セット剤に30秒間浸漬することによって行った。そして、乾燥後の毛髪の艶、潤い、はりを10人の女性パネラーに実施例1と同じ評価方法で評価させ、またウェーブ効率、ウェーブ保持率も実施例1と同様に調べた。表4にそれらの結果を示す。
【0060】
【表4】
【0061】
表4に示すように、シリル化加水分解コラーゲンを配合した実施例2は、シリル化加水分解コラーゲンを配合していない比較例3〜4に比べて、毛髪の艶、潤い、はりのいずれにおいても評価値が高く、シリル化加水分解コラーゲンが毛髪に収着して、毛髪に艶、潤い、はりを付与することが明らかであった。また、実施例2は、比較例3〜4に比べて、ウェーブ効率、ウェーブ保持率とも高く、シリル化加水分解コラーゲンが毛髪に収着し、毛髪に対して優れたセット力を有していることが明らかであった。
【0062】
実施例3および比較例5〜6
表5に示す組成の3種類のムース状毛髪セット剤用ベースを調製し、該ムース状毛髪セット剤用ベースと液化石油ガス(LPG)とを90:10(重量比)でスプレー容器に充填して、ムース状毛髪セット剤とし、パーマネントウェーブ処理後の毛髪に使用して、毛髪の艶、潤い、はりおよびウェーブ保持率について評価した。なお、ウェーブ効率はパーマネントウェーブ処理によるウェーブ効率の影響が大きいため、その比較を行わず、ウェーブ保持率のみを比較した。
【0064】
実施例3では、シリル化ペプチドとして、一般式(I)において、R1 =CH3 、R2 =OH、R3 =OHで、a=1、mの平均値=1、nの平均値=7、m+nの平均値=8で、シリル官能基の導入率65%のシリル化加水分解小麦タンパクを用いている。比較例5では、シリル化加水分解小麦タンパクに代えて、加水分解小麦タンパク(m+n=8)〔(株)成和化成製、プロモイスWG(商品名)〕とアモジメチコーンエマルジョン〔東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、SM8702C(商品名)〕を用い、比較例6では、アモジメチコーンエマルジョンのみを用いている。
【0065】
【表5】
【0066】
この実施例3および比較例5〜6では、各毛束は毛髪30本で作製し、上記ムース状毛髪セット剤による処理に先立ち、ロッドに巻き付けた毛束を以下の手順でパーマネントウェーブ処理した。すなわち、ロッドに巻き付けた毛束に、28%アンモニア水でpHを9.2に調整した6%チオグリコール水溶液5mlを塗布し、ラップでロッドを覆い15分間放置した。流水中で10秒間洗浄後、6%臭素酸ナトリウム水溶液5mlを塗布し、ラップで覆い15分間放置後、流水中で30秒間洗浄した。毛束をロッドからはずし、毛髪が濡れた状態で実施例3および比較例5〜6のムース状毛髪セット剤をそれぞれ2gずつ各毛束にすり込むように塗布した後、ヘアドライヤーで乾燥した。乾燥後のウェーブの波長および波数を測定してウェーブ効率を求めた後、各毛束に3gの錘をつけてデシケータ中で毛束を垂直状態にして12時間放置し、錘をはずして24時間再びデシケータ中で毛束を垂直状態にして乾燥した後、再びウェーブ効率を求め、ウェーブ保持率を算・BR>Oした。
【0067】
また、毛髪の艶、潤いおよびはりについて10人のパネラー(女性6人、男性4人)に、実施例1と同じ評価方法で評価させた。それらの結果を表6に示すが、評価値はいずれも平均値である。
【0068】
【表6】
【0069】
表6に示すように、シリル化加水分解小麦タンパクを配合した実施例3は、シリル化加水分解小麦タンパクを配合していない比較例5〜6に比べて、毛髪の艶、潤い、はりのいずれにおいても評価値が高く、シリル化加水分解小麦タンパクが毛髪に収着して、毛髪に艶、潤い、はりを付与することが明らかであった。
【0070】
また、実施例3のウェーブ保持率は、加水分解小麦タンパクとシリコーン(アモジメチコーン)を併用した比較例5より5%程度高かっただけであるが、これはパーマネントウェーブ処理によるウェーブ保持力がセット剤によるウェーブ保持力より強いためであると考えられる。しかし、実施例3が比較例6より10%以上もウェーブ保持率が高いことからみて、パーマネントウェーブ処理を施した毛髪のウェーブ保持に対してもシリル化加水分解小麦タンパクが有効であるものと考えられる。
【0071】
実施例4および比較例7
表7に示す組成の2種類の毛髪セット剤を調製し、毛髪の艶、潤い、はり、櫛通り性、べとつきおよびセット力(カールの保持力)について評価した。
【0072】
実施例4では、シリル化ペプチドとして、一般式(II)において、R1 =OH、R2 =
OH、R3 =OHで、a=3、mの平均値=0.4、nの平均値=5.6、m+nの平均値=6で、シリル官能基の導入率60%のシリル化加水分解大豆タンパクを用い、比較例7では、シリル化加水分解大豆タンパクに代えて、加水分解大豆タンパク(m+n=6)〔(株)成和化成製、プロモイスWS(商品名)〕とオクタメチルトリシロキサン〔東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、SH200C−1cs(商品名)〕を用いている。
【0073】
【表7】
【0074】
上記の毛髪セット剤について、5人の女性パネラーに、毎日一度、最初の5日間は比較例7の毛髪セット剤で処理させ、次の5日間は実施例4の毛髪セット剤で処理させた。
【0075】
処理の方法は、頭部の毛髪をヘアカーラーに巻き付け、ポンプ式スプレーに詰めた上記の毛髪セット剤を毛髪に噴霧したのち、ヘアドライヤーで乾燥した。
【0076】
10日間の使用期間後(すなわち、実施例4の毛髪セット剤の5日間使用後)、毛髪のまとまりやすさ、艶、潤い、はり、櫛通り性、べとつきおよび毛髪のカールの保持力が、比較例7の毛髪セット剤を使用していた時より良くなったか、悪くなったか、あるいは変わらなかったかを回答させた。その結果を表8に示す。
【0077】
【表8】
【0078】
表8に示すように、シリル化加水分解大豆タンパクを配合した実施例4の毛髪セット剤の使用後は、その使用前に比べて、毛髪の艶、潤い、はり、櫛通り性、べとつきおよびカールの保持力が改善されたと回答したものが多く、シリル化加水分解大豆タンパクが、毛髪に艶、潤い、はりを付与し、櫛通り性、べとつきを改善するとともに、毛髪のカールの保持力を有することが明らかであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】セット処理後の毛髪の状態を模式的に示す図である。
Claims (2)
- アミノ酸側鎖のアミノ基を含むペプチドのアミノ基にケイ素原子をただ一つ含む官能基が共有結合した下記の一般式(I)
で表されるシリル化ペプチド、または下記の一般式(II)
- シリル化ペプチドの配合量が0.1〜40重量%である請求項1記載の毛髪セット剤。
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