JP3610751B2 - 誘電体フィルタ及び誘電体デュプレクサ - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘電体フィルタ及び誘電体デュプレクサ、特に、マイクロ波帯やミリ波帯の通信装置等に使用される誘電体フィルタ及び誘電体デュプレクサに関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来より、例えばマイクロ波帯やミリ波帯の通信装置に使用される誘電体フィルタとして、複数個のＴＥＭモードの同軸共振器を低誘電率の誘電体を挟んで多段フィルタとしたものが知られている（特開平２−９４９０３号公報参照）。この誘電体フィルタは、ＴＥＭモードの同軸共振器が１段毎に独立して共振器として機能している。
【０００３】
ところで、このようなフィルタが使用される通信装置においては、チャンネル数増加の要請等に伴い高周波化が進んでおり、複数個のＴＥＭモードの同軸共振器にて構成された誘電体フィルタを、高い周波数（例えば、３ＧＨｚ帯）に適用すると、無負荷Ｑが急激に低下し、通過損失が増大するという問題があった。
【０００４】
そこで、この問題を解消する誘電体フィルタとして、図１１に示したＴＥ１０モードの導波管型誘電体フィルタ４０が提案されている。この誘電体フィルタ４０は、三つのＴＥ１０モード共振器部５１と二つの誘電体結合窓部５２を備え、ＴＥ１０モード共振器部５１を誘電体結合窓部５２を介して直列に接続した構造を有している。
【０００５】
共振器部５１と誘電体結合窓部５２は、同一材料からなる略直方体形状の誘電体ブロック４１の表面に、この誘電体ブロック４１の表面を略全面覆うように外導体４３を設けることによって形成される。この外導体４３に対して所定の間隔を確保して外導体４３に非導通の状態で一対の入出力電極４５が誘電体ブロック４１の両端部に設けられている。各共振器部５１の中心周波数を所望の値にするには、各共振器部５１の長さを中心周波数の波長λの略１／２に設定すればよい。また、誘電体フィルタ４０の通過帯域幅を所望の値にするには、誘電体結合窓部５２の幅Ｗ１を適宜設定すればよい。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、提案されている誘電体フィルタは、高い周波数帯域で無負荷Ｑが高く損失が少ないが、共振器部５１と誘電体結合窓部５２の誘電体材料が同じで、共振器部５１の誘電体の誘電率と誘電体結合窓部５２の誘電体の誘電率が等しいため、中心周波数が同一で通過帯域幅の異なる誘電体フィルタを複数種類製作しようとすると、誘電体結合窓部５２の幅Ｗ１を変更しなければならず、誘電体ブロック４１の形状あるいは寸法を変える必要があり、誘電体フィルタの種類の数だけ成形金型が必要であった。
【０００７】
また、これとは別に、同じ成形金型を用いて通過帯域幅の異なる誘電体フィルタを複数種類製作する方法もある。すなわち、成形金型にて直方体の誘電体ブロックを形成し、この誘電体ブロックの両側部をダイシングソー等により切削して一対の溝を対向させて所定間隔で二組形成する。この一対の溝に挟まれた部分の誘電体ブロックが誘電体結合窓部とされる。従って、この方法も、中心周波数が同一で通過帯域幅の異なる誘電体フィルタを複数種類製作しようとすると、ダイシングソーの刃の送り寸法（溝の深さ方向の寸法）を誘電体フィルタの種類の数だけ変更して誘電体結合窓部の幅を変える必要があった。
【０００８】
そこで、本発明の目的は、形状や寸法を変えることなく帯域幅を変更することができる誘電体フィルタ及び誘電体デュプレクサを提供することにある。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
以上の目的を達成するため、本発明に係る誘電体フィルタ、あるいは誘電体デュプレクサは、ＴＥモード共振器部の誘電体の誘電率と誘電体材料から成形された誘電体結合窓部の誘電体の誘電率が異なっており、かつ、誘電体結合窓部には結合調整穴が形成されており、該結合調整穴の内壁面には内導体及び内導体非形成部が設けられていることを特徴とする。
【００１０】
【作用】
以上の構成により、誘電体結合窓部の形状や寸法を変更しない状態で、誘電体結合窓部の誘電体の誘電率を共振器部の誘電体の誘電率より大きくすると、隣接する共振器部相互間の結合量が大きくなり、誘電体フィルタや誘電体デュプレクサの帯域幅が広くなる。逆に、誘電体結合窓部の形状や寸法を変更しない状態で、誘電体結合窓部の誘電体の誘電率を共振器部の誘電体の誘電率より小さくすると、隣接する共振器部相互間の結合量が小さくなり、誘電体フィルタや誘電体デュプレクサの帯域幅が狭くなる。また、誘電体結合窓部に形成した結合調整穴の内導体非形成部の大きさや位置等によって通過帯域幅等の特性が調整される。
【００１１】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る誘電体フィルタ及び誘電体デュプレクサの実施形態について添付図面を参照して説明する。各実施形態において、同一部品及び同一部分には同じ符号を付した。
【００１２】
［第１実施形態、図１及び図２］
図１に示すように、この誘電体フィルタ１０は、横断面矩形のものであり、三つのＴＥ１０モード共振器部１ａ，１ｂ，１ｃと二つの誘電体結合窓部２ａ，２ｂで構成されている。各共振器部１ａ，１ｂ，１ｃは誘電体結合窓部２ａ，２ｂを介して直列に接続され一体化している。各共振器部１ａ〜１ｃの中心周波数を所望の値にするため、各共振器部１ａ〜１ｃの長さは中心周波数の波長λの略１／２に設定されている。
【００１３】
ここに、共振器部１ａ〜１ｃと誘電体結合窓部２ａ，２ｂは、以下のようにして形成される。図２に示すように、共振器部１ａ〜１ｃの誘電体１１と、誘電体結合窓部２ａ，２ｂの誘電体２１を準備する。誘電体１１，２１は、それぞれ誘電体粉末を結合剤等と共に混練してスラリー状にした後、成形して乾燥したものである。誘電体１１と２１は相互に異なった誘電率を有している。この誘電体１１，２１を、誘電体２１の間に誘電体１１を挟むようにして成形金型内に配置した後、成形金型によって誘電体１１，２１を加熱加圧することにより誘電体１１，２１を一体焼成させ、直方体形状の誘電体ブロック３１を形成する。焼結された誘電体ブロック３１の表面に、図１に示すように、この誘電体ブロック３１を略覆うように外導体５が形成される。さらに、誘電体ブロック３１の両端部に、外導体５に対して所定の間隔を確保して外導体５に非導通の状態で一対の入出力電極７，８が形成される。
【００１４】
こうして、誘電体１１とこの誘電体１１の外面に設けられた外導体５とで構成された共振器部１ａ〜１ｃと、誘電体２１とこの誘電体２１の外面に設けられた外導体５とで構成された誘電体結合窓部２ａ，２ｂとが形成される。第１実施形態では、誘電体結合窓部２ａ，２ｂの幅Ｗ１は共振器部１ａ〜１ｃの幅Ｗ２と等しくなるように設定されている。
【００１５】
得られた誘電体フィルタ１０は、従来の１段毎に独立したＴＥＭモードの同軸共振器を低誘電率の誘電体で挟んだ多段フィルタとは構成が異なっている。すなわち、誘電体フィルタ１０のＴＥ１０モード共振器部１ａ〜１ｃは、伝搬領域となる導波管と同様の作用をする。そして、誘電体フィルタ１０の誘電体結合窓部２ａ，２ｂは、遮断領域となる導波管と同様の作用をする。一般に導波管の場合、共振させるためには、伝搬領域となる導波管の両端面を反射係数の大きな電磁気的境界部で区切る必要がある。
【００１６】
従って、仮に、誘電体フィルタ１０の誘電体結合窓部２ａ，２ｂを共振器部１ａ〜１ｃと同じ誘電率の誘電体材料で形成すると、反射係数の大きな境界部が誘電体フィルタ１０の両端、即ち、共振器部１ａ，１ｃのそれぞれの外側端面に設定されることになり、誘電体フィルタ１０は１段の共振器を有するフィルタとなってしまう。
【００１７】
これに対して、第１実施形態の誘電体フィルタ１０は、誘電体結合窓部２ａ，２ｂを共振器部１ａ〜１ｃと異なる誘電率の誘電体材料で形成することにより、共振器部１ａ〜１ｃ相互間に異誘電率部材を挟む構造となり、それによって初めて共振器部１ａ〜１ｃが共振器として機能し、３段の共振器を有するフィルタとなる。このようにして、誘電体結合窓部２ａ，２ｂは、単に共振器部１ａ〜１ｃを電磁気的に結合するだけでなく、共振器部１ａ〜１ｃの反射係数の大きな電磁気的境界部としても機能している。
【００１８】
以上の構成の誘電体フィルタ１０において、誘電体結合窓部２ａ，２ｂの誘電体２１の誘電率を共振器部１ａ〜１ｃの誘電体１１の誘電率より大きくすると、共振器部１ａと１ｂ間の結合量及び共振器部１ｂと１ｃ間の結合量は大きくなる。従って、誘電体フィルタ１０の通過帯域幅は広くなる。また、誘電体結合窓部２ａ，２ｂの誘電体２１の誘電率を共振器部１ａ〜１ｃの誘電体１１の誘電率より小さくすると、共振器部１ａと１ｂ間の結合量及び共振器部１ｂと１ｃ間の結合量は小さくなり、通過帯域幅は狭くなる。この結果、誘電体結合窓部２ａ，２ｂの形状や寸法を変更しなくても、誘電体結合窓部２ａ，２ｂの誘電体２１の誘電率を共振器部１ａ〜１ｃの誘電体１１の誘電率と異ならせることによって、中心周波数が同一で通過帯域幅の異なる誘電体フィルタ１０が得られる。すなわち、同一の成形金型を用いて中心周波数が同一で通過帯域幅の異なる誘電体フィルタを製造することができるので、成形金型の種類が大幅に抑えられ、製造コストの低減を図ることができる。
【００１９】
［第２実施形態、図３］
図３に示すように、この誘電体フィルタ１０は、三つのＴＥ１０モード共振器部１ａ〜１ｃと二つの誘電体結合窓部２ａ，２ｂで構成されている。各共振器部１ａ〜１ｃは誘電体結合窓部２ａ，２ｂを介して直列に接続され、図１に示す前記第１実施形態と略同様の構造とされる。
【００２０】
共振器部１ａ〜１ｃと誘電体結合窓部２ａ，２ｂは以下のようにして形成される。共振器部１ａ〜１ｃの未焼成誘電体１１と、誘電体結合窓部２ａ，２ｂの未焼成誘電体２１を準備する。誘電体２１の誘電率は、誘電体１１の誘電率と異なっている。次に、未焼成誘電体１１，２１を個別に成形金型内にセットした後、成形金型によって誘電体１１，２１を加熱加圧することにより誘電体１１，２１を焼成する。このとき、誘電体結合窓部２ａ，２ｂの誘電体２１の誘電率を共振器部１ａ〜１ｃの誘電体１１の誘電率と異ならせることによって、誘電体２１の形状や寸法を変更しなくても、中心周波数が同一で通過帯域幅の異なる誘電体フィルタ１０が得られる。従って、同一の成形金型を用いて誘電体２１を製造することができ、成形金型の種類を大幅に減少させることができる。
【００２１】
次に、焼結された誘電体１１の表面を、誘電体２１との接合面及び入出力電極７，８形成部分を残して外導体５にて覆う。同様に、焼結された誘電体２１の表面を、誘電体１１との接合面を残して外導体５にて覆う。
次に、共振器部１ａ，１ｂ，１ｃの間に誘電体結合窓部２ａ，２ｂを配置し、それぞれの接合面に塗布したガラスグレーズ等の絶縁性接着剤にて共振器部１ａ〜１ｃと誘電体結合窓部２ａ，２ｂを接合して、誘電体フィルタを製作する。ただし、焼結された誘電体１１，２１を予め絶縁性接着剤にて接合して一体化し、直方体形状の誘電体ブロックとした後、この誘電体ブロックの表面に、誘電体ブロックを略覆うように外導体５を形成するようにしてもよい。
【００２２】
［第３実施形態、図４及び図５］
第３実施形態は自動車電話、携帯電話等の移動通信機器に使用される誘電体デュプレクサについて説明する。図４に示すように、誘電体デュプレクサ６０は、三つのＴＥ１０モード共振器部６１ａ，６１ｂ，６１ｃと二つの誘電体結合窓部６２ａ，６２ｂで構成されている。各共振器部６１ａ〜６１ｃは誘電体結合窓部６２ａ，６２ｂを介して直列に接続され、一体化している。ここに、誘電体結合窓部６２ａ，６２ｂの幅Ｗ１は、共振器部６１ａ〜６１ｃの幅Ｗ２より小さく設定されている。ただし、誘電体結合窓部６２ａ，６２ｂの幅Ｗ１を共振器部６１ａ〜６１ｃの幅Ｗ２と等しくなるように設定してもよいことは言うまでもない。
【００２３】
共振器部６１ａ〜６１ｃと誘電体結合窓部６２ａ，６２ｂは以下のようにして形成される。共振器部６１ａ〜６１ｃの未焼成誘電体７１ａ〜７１ｃと、誘電体結合窓部６２ａ，６２ｂの未焼成誘電体８１ａ，８１ｂを準備する。誘電体８１ａ，８１ｂの誘電率は、誘電体７１ａ〜７１ｃの誘電率と異なっている。誘電体７１ｂには、上下面を貫通する二つの外部結合孔７２ａ，７２ｂが形成され、さらに、この二つの外部結合孔７２ａ，７２ｂにそれぞれ直交する引出し用貫通孔７３ａ，７３ｂが形成されている。
【００２４】
次に、未焼成誘電体７１ａ〜７１ｃ，８１ａ，８１ｂを個別に成形金型内にセットした後、成形金型によって誘電体７１ａ〜７１ｃ，８１ａ，８１ｂを加熱加圧することにより誘電体７１ａ〜７１ｃ，８１ａ，８１ｂを焼成する。このとき、誘電体結合窓部６２ａ，６２ｂの誘電体８１ａ，８１ｂの誘電率を共振器部６１ａ〜６１ｃの誘電体７１ａ〜７１ｃの誘電率と異ならせることによって、誘電体８１ａ，８１ｂの形状や寸法を変更しなくても、中心周波数が同一で帯域幅の異なる誘電体デュプレクサ６０が得られる。従って、同一の成形金型を用いて誘電体８１ａ，８１ｂを製造することができ、成形金型の種類を大幅に減少させることができる。
【００２５】
次に、焼結された誘電体７１ａ〜７１ｃの表面を、それぞれ誘電体８１ａ，８１ｂとの接合部分、入出力電極である送信側電極Ｔｘ、受信側電極Ｒｘ及びアンテナ電極ＡＮＴ形成部分を残して外導体６５にて覆う。外部結合孔７２ａ，７２ｂ及び引出し用貫通孔７３ａ，７３ｂの内周全面には、それぞれ内導体６３が形成されている。つまり、それぞれの内導体６３は、外部結合孔７２ａ，７２ｂの両端部で外導体６５と電気的に導通し、引出し用貫通孔７３ａ，７３ｂの一方の端部でアンテナ電極ＡＮＴに電気的に導通している。従って、外部結合孔７２ａ，７２ｂは、それぞれ引出し用貫通孔７３ａ，７３ｂを介して、アンテナ電極ＡＮＴに電気的に導通している。同様に、焼結された誘電体８１ａ，８１ｂの表面を、誘電体７１ａ〜７１ｃとの接合面を残して外導体６５にて覆う。
【００２６】
次に、図５に示すように、共振器部６１ａ，６１ｂ，６１ｃの間に誘電体結合窓部６２ａ，６２ｂを配置し、それぞれの接合面に塗布したガラスグレーズ等の絶縁性接着剤にて共振器部６１ａ〜６１ｃと誘電体結合窓部６２ａ，６２ｂを接合して、誘電体デュプレクサ６０を製作する。ただし、焼結された誘電体７１ａ〜７１ｃ，８１ａ，８１ｂを予め絶縁性接着剤にて接合して一体化した後、外導体６５を形成するようにしてもよい。
【００２７】
以上の構成からなる誘電体デュプレクサ６０は、共振器部６１ａと誘電体結合窓部６２ａと共振器部６１ｂの略左半分からなる送信フィルタ（帯域通過フィルタ）６８Ａと、共振器部６１ｃと誘電体結合窓部６２ｂと共振器部６１ｂの略右半分からなる受信フィルタ（帯域通過フィルタ）６８Ｂとを備えている。この誘電体デュプレクサ６０は、図示しない送信回路系から送信側電極Ｔｘに入った送信信号を送信フィルタ６８Ａを介してアンテナ電極ＡＮＴから出力すると共に、アンテナ電極ＡＮＴに入った受信信号を受信フィルタ６８Ｂを介して受信側電極Ｒｘから図示しない受信回路系に出力する。
【００２８】
［他の実施形態］
なお、本発明に係る誘電体フィルタ及び誘電体デュプレクサは前記実施形態に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
例えば、前記第１及び第２実施形態は、誘電体結合窓部２ａ，２ｂの幅Ｗ１を共振器部１ａ〜１ｃの幅Ｗ２と等しくなるように設定しているが、必ずしもこれに限るものではなく、図６及び図７に示すように、誘電体結合窓部２ａ，２ｂの幅Ｗ１を共振器部１ａ〜１ｃの幅Ｗ２より小さく設定してもよい。この場合も、誘電体結合窓部２ａ，２ｂの誘電体２１の誘電率を共振器部１ａ〜１ｃの誘電体１１の誘電率と異ならせることによって、誘電体結合窓部２ａ，２ｂの形状や寸法を変更することなく、中心周波数が同一で通過帯域幅の異なる誘電体フィルタが得られる。
【００２９】
また、前記第２実施形態において、共振器部１ａ〜１ｃと誘電体結合窓部２ａ，２ｂを接合するための接着剤として、銀ペーストや半田ペースト等の導電性接着剤を用いてもよい。この場合、例えば図８に示すように、各誘電体結合窓部２ａ，２ｂの両接合面に、それぞれ円形窓３５を残して斜線で示した領域に導電性接着剤３４を塗布する。この円形窓３５を通して共振器部１ａ〜１ｃは電磁界結合する。
【００３０】
さらに、誘電体結合窓部に結合調整穴を設けてもよい。具体的には、例えば図９に示すように、第１実施形態の誘電体フィルタ１０において、誘電体結合窓部２ａ，２ｂに結合調整穴１５ａ，１５ｂを形成する。結合調整穴１５ａ，１５ｂは、それぞれ誘電体結合窓部２ａ，２ｂの上面から下面に貫通した、横断面円形のものである。結合調整穴１５ａ，１５ｂの内壁全面には、内導体１７（図１０参照）が形成される。
【００３１】
そして、この内導体１７の一部を削って内導体非形成部１６ａ，１６ｂを形成し、通過帯域幅等の特性調整を行う。すなわち、誘電体フィルタ１０の通過帯域幅等の特性を測定する。その測定結果に基づいて、図１０に示すように、ルータ等の切削治具１８を結合調整穴１５ａ，１５ｂの開口部から穴１５ａ，１５ｂの内部に侵入させ、結合調整穴１５ａ，１５ｂの内周面に露出している内導体１７の所望の部分を削って内導体非形成部１６ａ，１６ｂを形成する。この内導体非形成部１６ａ，１６ｂの大きさや形成位置等により、通過帯域幅等の特性が調整される。従って、誘電体フィルタ１０を組み立てた後であっても、通過帯域幅等の特性調整を行うことができ、調整作業がさらに容易になる。
【００３２】
なお、結合調整穴１５ａ，１５ｂは、必ずしも誘電体結合窓部２ａ，２ｂの上面から下面に貫通する穴である必要はなく、手前側の面から奥側の面に貫通する穴や、誘電体結合窓部２ａ，２ｂの外周面に対してその軸が傾斜している穴等であってもよい。さらに、結合調整穴１５ａ，１５ｂの横断面の形状も円形の他に、矩形等であってもよい。
【００３３】
また、前記第１及び第２実施形態では、三つの共振器部を直列に接続した３段の誘電体フィルタについて説明しているが、段数はこれに限るものではなく、２段あるいは４段以上であってもよい。さらに、誘電体フィルタあるいは誘電体デュプレクサは仕様に合わせて種々の形状が選択され、例えば横断面矩形の他に、横断面円形のもの、あるいは同軸線路のもの等であってもよい。
【００３４】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、誘電体結合窓部の誘電体の誘電率をＴＥモード共振器部の誘電体の誘電率と異ならせることにより、誘電体結合窓部の形状や寸法を変更しなくても中心周波数が同一で帯域幅の異なる誘電体フィルタや誘電体デュプレクサが得られる。
【００３５】
この結果、中心周波数が同一で帯域幅が異なる誘電体フィルタや誘電体デュプレクサを、同一の成形金型を用いて同一形状かつ同一寸法で製作することができる。従って、成形金型の種類を大幅に減らすことができ、製造コストの低減を図ることができる。また、誘電体結合窓部に形成した結合調整穴の内導体非形成部の大きさや位置等によって通過帯域幅等の特性調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る誘電体フィルタの第１実施形態を示す外観斜視図。
【図２】図１に示した誘電体ブロックの分解斜視図。
【図３】本発明に係る誘電体フィルタの第２実施形態を示す分解斜視図。
【図４】本発明に係る誘電体デュプレクサの一実施形態を示す分解斜視図。
【図５】図４に示した誘電体デュプレクサの外観斜視図。
【図６】本発明に係る誘電体フィルタの他の実施形態を示す外観斜視図。
【図７】本発明に係る誘電体フィルタの別の他の実施形態を示す分解斜視図。
【図８】本発明に係る誘電体フィルタのさらに別の他の実施形態を示す分解斜視図。
【図９】本発明に係る誘電体フィルタのさらに別の他の実施形態を示す斜視図。
【図１０】図９に示した誘電体フィルタの結合調整穴部分の拡大断面図。
【図１１】従来例を示す外観斜視図。
【符号の説明】
１ａ，１ｂ，１ｃ…共振器部
２ａ，２ｂ…誘電体結合窓部
５…外導体
１０…誘電体フィルタ
１１，２１…誘電体
１５ａ，１５ｂ…結合調整穴
１６ａ，１６ｂ…内導体非形成部
１７…内導体
６０…誘電体デュプレクサ
６１ａ，６１ｂ，６１ｃ…共振器部
６２ａ，６２ｂ…誘電体結合窓部
６５…外導体
７１ａ〜７１ｃ，８１ａ，８１ｂ…誘電体
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘電体フィルタ及び誘電体デュプレクサ、特に、マイクロ波帯やミリ波帯の通信装置等に使用される誘電体フィルタ及び誘電体デュプレクサに関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来より、例えばマイクロ波帯やミリ波帯の通信装置に使用される誘電体フィルタとして、複数個のＴＥＭモードの同軸共振器を低誘電率の誘電体を挟んで多段フィルタとしたものが知られている（特開平２−９４９０３号公報参照）。この誘電体フィルタは、ＴＥＭモードの同軸共振器が１段毎に独立して共振器として機能している。
【０００３】
ところで、このようなフィルタが使用される通信装置においては、チャンネル数増加の要請等に伴い高周波化が進んでおり、複数個のＴＥＭモードの同軸共振器にて構成された誘電体フィルタを、高い周波数（例えば、３ＧＨｚ帯）に適用すると、無負荷Ｑが急激に低下し、通過損失が増大するという問題があった。
【０００４】
そこで、この問題を解消する誘電体フィルタとして、図１１に示したＴＥ１０モードの導波管型誘電体フィルタ４０が提案されている。この誘電体フィルタ４０は、三つのＴＥ１０モード共振器部５１と二つの誘電体結合窓部５２を備え、ＴＥ１０モード共振器部５１を誘電体結合窓部５２を介して直列に接続した構造を有している。
【０００５】
共振器部５１と誘電体結合窓部５２は、同一材料からなる略直方体形状の誘電体ブロック４１の表面に、この誘電体ブロック４１の表面を略全面覆うように外導体４３を設けることによって形成される。この外導体４３に対して所定の間隔を確保して外導体４３に非導通の状態で一対の入出力電極４５が誘電体ブロック４１の両端部に設けられている。各共振器部５１の中心周波数を所望の値にするには、各共振器部５１の長さを中心周波数の波長λの略１／２に設定すればよい。また、誘電体フィルタ４０の通過帯域幅を所望の値にするには、誘電体結合窓部５２の幅Ｗ１を適宜設定すればよい。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、提案されている誘電体フィルタは、高い周波数帯域で無負荷Ｑが高く損失が少ないが、共振器部５１と誘電体結合窓部５２の誘電体材料が同じで、共振器部５１の誘電体の誘電率と誘電体結合窓部５２の誘電体の誘電率が等しいため、中心周波数が同一で通過帯域幅の異なる誘電体フィルタを複数種類製作しようとすると、誘電体結合窓部５２の幅Ｗ１を変更しなければならず、誘電体ブロック４１の形状あるいは寸法を変える必要があり、誘電体フィルタの種類の数だけ成形金型が必要であった。
【０００７】
また、これとは別に、同じ成形金型を用いて通過帯域幅の異なる誘電体フィルタを複数種類製作する方法もある。すなわち、成形金型にて直方体の誘電体ブロックを形成し、この誘電体ブロックの両側部をダイシングソー等により切削して一対の溝を対向させて所定間隔で二組形成する。この一対の溝に挟まれた部分の誘電体ブロックが誘電体結合窓部とされる。従って、この方法も、中心周波数が同一で通過帯域幅の異なる誘電体フィルタを複数種類製作しようとすると、ダイシングソーの刃の送り寸法（溝の深さ方向の寸法）を誘電体フィルタの種類の数だけ変更して誘電体結合窓部の幅を変える必要があった。
【０００８】
そこで、本発明の目的は、形状や寸法を変えることなく帯域幅を変更することができる誘電体フィルタ及び誘電体デュプレクサを提供することにある。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
以上の目的を達成するため、本発明に係る誘電体フィルタ、あるいは誘電体デュプレクサは、ＴＥモード共振器部の誘電体の誘電率と誘電体材料から成形された誘電体結合窓部の誘電体の誘電率が異なっており、かつ、誘電体結合窓部には結合調整穴が形成されており、該結合調整穴の内壁面には内導体及び内導体非形成部が設けられていることを特徴とする。
【００１０】
【作用】
以上の構成により、誘電体結合窓部の形状や寸法を変更しない状態で、誘電体結合窓部の誘電体の誘電率を共振器部の誘電体の誘電率より大きくすると、隣接する共振器部相互間の結合量が大きくなり、誘電体フィルタや誘電体デュプレクサの帯域幅が広くなる。逆に、誘電体結合窓部の形状や寸法を変更しない状態で、誘電体結合窓部の誘電体の誘電率を共振器部の誘電体の誘電率より小さくすると、隣接する共振器部相互間の結合量が小さくなり、誘電体フィルタや誘電体デュプレクサの帯域幅が狭くなる。また、誘電体結合窓部に形成した結合調整穴の内導体非形成部の大きさや位置等によって通過帯域幅等の特性が調整される。
【００１１】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る誘電体フィルタ及び誘電体デュプレクサの実施形態について添付図面を参照して説明する。各実施形態において、同一部品及び同一部分には同じ符号を付した。
【００１２】
［第１実施形態、図１及び図２］
図１に示すように、この誘電体フィルタ１０は、横断面矩形のものであり、三つのＴＥ１０モード共振器部１ａ，１ｂ，１ｃと二つの誘電体結合窓部２ａ，２ｂで構成されている。各共振器部１ａ，１ｂ，１ｃは誘電体結合窓部２ａ，２ｂを介して直列に接続され一体化している。各共振器部１ａ〜１ｃの中心周波数を所望の値にするため、各共振器部１ａ〜１ｃの長さは中心周波数の波長λの略１／２に設定されている。
【００１３】
ここに、共振器部１ａ〜１ｃと誘電体結合窓部２ａ，２ｂは、以下のようにして形成される。図２に示すように、共振器部１ａ〜１ｃの誘電体１１と、誘電体結合窓部２ａ，２ｂの誘電体２１を準備する。誘電体１１，２１は、それぞれ誘電体粉末を結合剤等と共に混練してスラリー状にした後、成形して乾燥したものである。誘電体１１と２１は相互に異なった誘電率を有している。この誘電体１１，２１を、誘電体２１の間に誘電体１１を挟むようにして成形金型内に配置した後、成形金型によって誘電体１１，２１を加熱加圧することにより誘電体１１，２１を一体焼成させ、直方体形状の誘電体ブロック３１を形成する。焼結された誘電体ブロック３１の表面に、図１に示すように、この誘電体ブロック３１を略覆うように外導体５が形成される。さらに、誘電体ブロック３１の両端部に、外導体５に対して所定の間隔を確保して外導体５に非導通の状態で一対の入出力電極７，８が形成される。
【００１４】
こうして、誘電体１１とこの誘電体１１の外面に設けられた外導体５とで構成された共振器部１ａ〜１ｃと、誘電体２１とこの誘電体２１の外面に設けられた外導体５とで構成された誘電体結合窓部２ａ，２ｂとが形成される。第１実施形態では、誘電体結合窓部２ａ，２ｂの幅Ｗ１は共振器部１ａ〜１ｃの幅Ｗ２と等しくなるように設定されている。
【００１５】
得られた誘電体フィルタ１０は、従来の１段毎に独立したＴＥＭモードの同軸共振器を低誘電率の誘電体で挟んだ多段フィルタとは構成が異なっている。すなわち、誘電体フィルタ１０のＴＥ１０モード共振器部１ａ〜１ｃは、伝搬領域となる導波管と同様の作用をする。そして、誘電体フィルタ１０の誘電体結合窓部２ａ，２ｂは、遮断領域となる導波管と同様の作用をする。一般に導波管の場合、共振させるためには、伝搬領域となる導波管の両端面を反射係数の大きな電磁気的境界部で区切る必要がある。
【００１６】
従って、仮に、誘電体フィルタ１０の誘電体結合窓部２ａ，２ｂを共振器部１ａ〜１ｃと同じ誘電率の誘電体材料で形成すると、反射係数の大きな境界部が誘電体フィルタ１０の両端、即ち、共振器部１ａ，１ｃのそれぞれの外側端面に設定されることになり、誘電体フィルタ１０は１段の共振器を有するフィルタとなってしまう。
【００１７】
これに対して、第１実施形態の誘電体フィルタ１０は、誘電体結合窓部２ａ，２ｂを共振器部１ａ〜１ｃと異なる誘電率の誘電体材料で形成することにより、共振器部１ａ〜１ｃ相互間に異誘電率部材を挟む構造となり、それによって初めて共振器部１ａ〜１ｃが共振器として機能し、３段の共振器を有するフィルタとなる。このようにして、誘電体結合窓部２ａ，２ｂは、単に共振器部１ａ〜１ｃを電磁気的に結合するだけでなく、共振器部１ａ〜１ｃの反射係数の大きな電磁気的境界部としても機能している。
【００１８】
以上の構成の誘電体フィルタ１０において、誘電体結合窓部２ａ，２ｂの誘電体２１の誘電率を共振器部１ａ〜１ｃの誘電体１１の誘電率より大きくすると、共振器部１ａと１ｂ間の結合量及び共振器部１ｂと１ｃ間の結合量は大きくなる。従って、誘電体フィルタ１０の通過帯域幅は広くなる。また、誘電体結合窓部２ａ，２ｂの誘電体２１の誘電率を共振器部１ａ〜１ｃの誘電体１１の誘電率より小さくすると、共振器部１ａと１ｂ間の結合量及び共振器部１ｂと１ｃ間の結合量は小さくなり、通過帯域幅は狭くなる。この結果、誘電体結合窓部２ａ，２ｂの形状や寸法を変更しなくても、誘電体結合窓部２ａ，２ｂの誘電体２１の誘電率を共振器部１ａ〜１ｃの誘電体１１の誘電率と異ならせることによって、中心周波数が同一で通過帯域幅の異なる誘電体フィルタ１０が得られる。すなわち、同一の成形金型を用いて中心周波数が同一で通過帯域幅の異なる誘電体フィルタを製造することができるので、成形金型の種類が大幅に抑えられ、製造コストの低減を図ることができる。
【００１９】
［第２実施形態、図３］
図３に示すように、この誘電体フィルタ１０は、三つのＴＥ１０モード共振器部１ａ〜１ｃと二つの誘電体結合窓部２ａ，２ｂで構成されている。各共振器部１ａ〜１ｃは誘電体結合窓部２ａ，２ｂを介して直列に接続され、図１に示す前記第１実施形態と略同様の構造とされる。
【００２０】
共振器部１ａ〜１ｃと誘電体結合窓部２ａ，２ｂは以下のようにして形成される。共振器部１ａ〜１ｃの未焼成誘電体１１と、誘電体結合窓部２ａ，２ｂの未焼成誘電体２１を準備する。誘電体２１の誘電率は、誘電体１１の誘電率と異なっている。次に、未焼成誘電体１１，２１を個別に成形金型内にセットした後、成形金型によって誘電体１１，２１を加熱加圧することにより誘電体１１，２１を焼成する。このとき、誘電体結合窓部２ａ，２ｂの誘電体２１の誘電率を共振器部１ａ〜１ｃの誘電体１１の誘電率と異ならせることによって、誘電体２１の形状や寸法を変更しなくても、中心周波数が同一で通過帯域幅の異なる誘電体フィルタ１０が得られる。従って、同一の成形金型を用いて誘電体２１を製造することができ、成形金型の種類を大幅に減少させることができる。
【００２１】
次に、焼結された誘電体１１の表面を、誘電体２１との接合面及び入出力電極７，８形成部分を残して外導体５にて覆う。同様に、焼結された誘電体２１の表面を、誘電体１１との接合面を残して外導体５にて覆う。
次に、共振器部１ａ，１ｂ，１ｃの間に誘電体結合窓部２ａ，２ｂを配置し、それぞれの接合面に塗布したガラスグレーズ等の絶縁性接着剤にて共振器部１ａ〜１ｃと誘電体結合窓部２ａ，２ｂを接合して、誘電体フィルタを製作する。ただし、焼結された誘電体１１，２１を予め絶縁性接着剤にて接合して一体化し、直方体形状の誘電体ブロックとした後、この誘電体ブロックの表面に、誘電体ブロックを略覆うように外導体５を形成するようにしてもよい。
【００２２】
［第３実施形態、図４及び図５］
第３実施形態は自動車電話、携帯電話等の移動通信機器に使用される誘電体デュプレクサについて説明する。図４に示すように、誘電体デュプレクサ６０は、三つのＴＥ１０モード共振器部６１ａ，６１ｂ，６１ｃと二つの誘電体結合窓部６２ａ，６２ｂで構成されている。各共振器部６１ａ〜６１ｃは誘電体結合窓部６２ａ，６２ｂを介して直列に接続され、一体化している。ここに、誘電体結合窓部６２ａ，６２ｂの幅Ｗ１は、共振器部６１ａ〜６１ｃの幅Ｗ２より小さく設定されている。ただし、誘電体結合窓部６２ａ，６２ｂの幅Ｗ１を共振器部６１ａ〜６１ｃの幅Ｗ２と等しくなるように設定してもよいことは言うまでもない。
【００２３】
共振器部６１ａ〜６１ｃと誘電体結合窓部６２ａ，６２ｂは以下のようにして形成される。共振器部６１ａ〜６１ｃの未焼成誘電体７１ａ〜７１ｃと、誘電体結合窓部６２ａ，６２ｂの未焼成誘電体８１ａ，８１ｂを準備する。誘電体８１ａ，８１ｂの誘電率は、誘電体７１ａ〜７１ｃの誘電率と異なっている。誘電体７１ｂには、上下面を貫通する二つの外部結合孔７２ａ，７２ｂが形成され、さらに、この二つの外部結合孔７２ａ，７２ｂにそれぞれ直交する引出し用貫通孔７３ａ，７３ｂが形成されている。
【００２４】
次に、未焼成誘電体７１ａ〜７１ｃ，８１ａ，８１ｂを個別に成形金型内にセットした後、成形金型によって誘電体７１ａ〜７１ｃ，８１ａ，８１ｂを加熱加圧することにより誘電体７１ａ〜７１ｃ，８１ａ，８１ｂを焼成する。このとき、誘電体結合窓部６２ａ，６２ｂの誘電体８１ａ，８１ｂの誘電率を共振器部６１ａ〜６１ｃの誘電体７１ａ〜７１ｃの誘電率と異ならせることによって、誘電体８１ａ，８１ｂの形状や寸法を変更しなくても、中心周波数が同一で帯域幅の異なる誘電体デュプレクサ６０が得られる。従って、同一の成形金型を用いて誘電体８１ａ，８１ｂを製造することができ、成形金型の種類を大幅に減少させることができる。
【００２５】
次に、焼結された誘電体７１ａ〜７１ｃの表面を、それぞれ誘電体８１ａ，８１ｂとの接合部分、入出力電極である送信側電極Ｔｘ、受信側電極Ｒｘ及びアンテナ電極ＡＮＴ形成部分を残して外導体６５にて覆う。外部結合孔７２ａ，７２ｂ及び引出し用貫通孔７３ａ，７３ｂの内周全面には、それぞれ内導体６３が形成されている。つまり、それぞれの内導体６３は、外部結合孔７２ａ，７２ｂの両端部で外導体６５と電気的に導通し、引出し用貫通孔７３ａ，７３ｂの一方の端部でアンテナ電極ＡＮＴに電気的に導通している。従って、外部結合孔７２ａ，７２ｂは、それぞれ引出し用貫通孔７３ａ，７３ｂを介して、アンテナ電極ＡＮＴに電気的に導通している。同様に、焼結された誘電体８１ａ，８１ｂの表面を、誘電体７１ａ〜７１ｃとの接合面を残して外導体６５にて覆う。
【００２６】
次に、図５に示すように、共振器部６１ａ，６１ｂ，６１ｃの間に誘電体結合窓部６２ａ，６２ｂを配置し、それぞれの接合面に塗布したガラスグレーズ等の絶縁性接着剤にて共振器部６１ａ〜６１ｃと誘電体結合窓部６２ａ，６２ｂを接合して、誘電体デュプレクサ６０を製作する。ただし、焼結された誘電体７１ａ〜７１ｃ，８１ａ，８１ｂを予め絶縁性接着剤にて接合して一体化した後、外導体６５を形成するようにしてもよい。
【００２７】
以上の構成からなる誘電体デュプレクサ６０は、共振器部６１ａと誘電体結合窓部６２ａと共振器部６１ｂの略左半分からなる送信フィルタ（帯域通過フィルタ）６８Ａと、共振器部６１ｃと誘電体結合窓部６２ｂと共振器部６１ｂの略右半分からなる受信フィルタ（帯域通過フィルタ）６８Ｂとを備えている。この誘電体デュプレクサ６０は、図示しない送信回路系から送信側電極Ｔｘに入った送信信号を送信フィルタ６８Ａを介してアンテナ電極ＡＮＴから出力すると共に、アンテナ電極ＡＮＴに入った受信信号を受信フィルタ６８Ｂを介して受信側電極Ｒｘから図示しない受信回路系に出力する。
【００２８】
［他の実施形態］
なお、本発明に係る誘電体フィルタ及び誘電体デュプレクサは前記実施形態に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
例えば、前記第１及び第２実施形態は、誘電体結合窓部２ａ，２ｂの幅Ｗ１を共振器部１ａ〜１ｃの幅Ｗ２と等しくなるように設定しているが、必ずしもこれに限るものではなく、図６及び図７に示すように、誘電体結合窓部２ａ，２ｂの幅Ｗ１を共振器部１ａ〜１ｃの幅Ｗ２より小さく設定してもよい。この場合も、誘電体結合窓部２ａ，２ｂの誘電体２１の誘電率を共振器部１ａ〜１ｃの誘電体１１の誘電率と異ならせることによって、誘電体結合窓部２ａ，２ｂの形状や寸法を変更することなく、中心周波数が同一で通過帯域幅の異なる誘電体フィルタが得られる。
【００２９】
また、前記第２実施形態において、共振器部１ａ〜１ｃと誘電体結合窓部２ａ，２ｂを接合するための接着剤として、銀ペーストや半田ペースト等の導電性接着剤を用いてもよい。この場合、例えば図８に示すように、各誘電体結合窓部２ａ，２ｂの両接合面に、それぞれ円形窓３５を残して斜線で示した領域に導電性接着剤３４を塗布する。この円形窓３５を通して共振器部１ａ〜１ｃは電磁界結合する。
【００３０】
さらに、誘電体結合窓部に結合調整穴を設けてもよい。具体的には、例えば図９に示すように、第１実施形態の誘電体フィルタ１０において、誘電体結合窓部２ａ，２ｂに結合調整穴１５ａ，１５ｂを形成する。結合調整穴１５ａ，１５ｂは、それぞれ誘電体結合窓部２ａ，２ｂの上面から下面に貫通した、横断面円形のものである。結合調整穴１５ａ，１５ｂの内壁全面には、内導体１７（図１０参照）が形成される。
【００３１】
そして、この内導体１７の一部を削って内導体非形成部１６ａ，１６ｂを形成し、通過帯域幅等の特性調整を行う。すなわち、誘電体フィルタ１０の通過帯域幅等の特性を測定する。その測定結果に基づいて、図１０に示すように、ルータ等の切削治具１８を結合調整穴１５ａ，１５ｂの開口部から穴１５ａ，１５ｂの内部に侵入させ、結合調整穴１５ａ，１５ｂの内周面に露出している内導体１７の所望の部分を削って内導体非形成部１６ａ，１６ｂを形成する。この内導体非形成部１６ａ，１６ｂの大きさや形成位置等により、通過帯域幅等の特性が調整される。従って、誘電体フィルタ１０を組み立てた後であっても、通過帯域幅等の特性調整を行うことができ、調整作業がさらに容易になる。
【００３２】
なお、結合調整穴１５ａ，１５ｂは、必ずしも誘電体結合窓部２ａ，２ｂの上面から下面に貫通する穴である必要はなく、手前側の面から奥側の面に貫通する穴や、誘電体結合窓部２ａ，２ｂの外周面に対してその軸が傾斜している穴等であってもよい。さらに、結合調整穴１５ａ，１５ｂの横断面の形状も円形の他に、矩形等であってもよい。
【００３３】
また、前記第１及び第２実施形態では、三つの共振器部を直列に接続した３段の誘電体フィルタについて説明しているが、段数はこれに限るものではなく、２段あるいは４段以上であってもよい。さらに、誘電体フィルタあるいは誘電体デュプレクサは仕様に合わせて種々の形状が選択され、例えば横断面矩形の他に、横断面円形のもの、あるいは同軸線路のもの等であってもよい。
【００３４】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、誘電体結合窓部の誘電体の誘電率をＴＥモード共振器部の誘電体の誘電率と異ならせることにより、誘電体結合窓部の形状や寸法を変更しなくても中心周波数が同一で帯域幅の異なる誘電体フィルタや誘電体デュプレクサが得られる。
【００３５】
この結果、中心周波数が同一で帯域幅が異なる誘電体フィルタや誘電体デュプレクサを、同一の成形金型を用いて同一形状かつ同一寸法で製作することができる。従って、成形金型の種類を大幅に減らすことができ、製造コストの低減を図ることができる。また、誘電体結合窓部に形成した結合調整穴の内導体非形成部の大きさや位置等によって通過帯域幅等の特性調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る誘電体フィルタの第１実施形態を示す外観斜視図。
【図２】図１に示した誘電体ブロックの分解斜視図。
【図３】本発明に係る誘電体フィルタの第２実施形態を示す分解斜視図。
【図４】本発明に係る誘電体デュプレクサの一実施形態を示す分解斜視図。
【図５】図４に示した誘電体デュプレクサの外観斜視図。
【図６】本発明に係る誘電体フィルタの他の実施形態を示す外観斜視図。
【図７】本発明に係る誘電体フィルタの別の他の実施形態を示す分解斜視図。
【図８】本発明に係る誘電体フィルタのさらに別の他の実施形態を示す分解斜視図。
【図９】本発明に係る誘電体フィルタのさらに別の他の実施形態を示す斜視図。
【図１０】図９に示した誘電体フィルタの結合調整穴部分の拡大断面図。
【図１１】従来例を示す外観斜視図。
【符号の説明】
１ａ，１ｂ，１ｃ…共振器部
２ａ，２ｂ…誘電体結合窓部
５…外導体
１０…誘電体フィルタ
１１，２１…誘電体
１５ａ，１５ｂ…結合調整穴
１６ａ，１６ｂ…内導体非形成部
１７…内導体
６０…誘電体デュプレクサ
６１ａ，６１ｂ，６１ｃ…共振器部
６２ａ，６２ｂ…誘電体結合窓部
６５…外導体
７１ａ〜７１ｃ，８１ａ，８１ｂ…誘電体
Claims (2)
- 複数のＴＥモード共振器部が誘電体材料から成形された誘電体結合窓部を介して直列に接続されている誘電体フィルタにおいて、
前記ＴＥモード共振器部の誘電体の誘電率と前記誘電体結合窓部の誘電体の誘電率が異なっており、
前記誘電体結合窓部には結合調整穴が形成されており、該結合調整穴の内壁面には内導体及び内導体非形成部が設けられていること、
を特徴とする誘電体フィルタ。 - 複数のＴＥモード共振器部が誘電体材料から成形された誘電体結合窓部を介して直列に接続されている誘電体デュプレクサにおいて、
前記ＴＥモード共振器部の誘電体の誘電率と前記誘電体結合窓部の誘電体の誘電率が異なっており、
前記誘電体結合窓部には結合調整穴が形成されており、該結合調整穴の内壁面には内導体及び内導体非形成部が設けられていること、
を特徴とする誘電体デュプレクサ。
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