JP3608422B2 - 低サイクル疲労強度に優れた高耐食鋼管コイルおよびその製造方法 - Google Patents

低サイクル疲労強度に優れた高耐食鋼管コイルおよびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP3608422B2
JP3608422B2 JP05692699A JP5692699A JP3608422B2 JP 3608422 B2 JP3608422 B2 JP 3608422B2 JP 05692699 A JP05692699 A JP 05692699A JP 5692699 A JP5692699 A JP 5692699A JP 3608422 B2 JP3608422 B2 JP 3608422B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel pipe
butt
fatigue strength
less
welding
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP05692699A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2000246435A (ja
Inventor
和博 小川
昌彦 濱田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP05692699A priority Critical patent/JP3608422B2/ja
Publication of JP2000246435A publication Critical patent/JP2000246435A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3608422B2 publication Critical patent/JP3608422B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Butt Welding And Welding Of Specific Article (AREA)
  • Pressure Welding/Diffusion-Bonding (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コイル状に巻き取られた鋼管コイルに関し、より詳しくは長さの短い複数本の鋼管を順次突き合わせて円周溶接することで長尺鋼管となし、この長尺鋼管をコイル状に巻き取った鋼管コイルであるにも係わらず、その使用時に伸ばしと巻き戻しを繰り返し行った際にも良好な曲げ戻し強度を有する低サイクル疲労強度に優れた高耐食鋼管コイルとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コイル状に巻き取られた鋼管コイルは、現地での施工工数を少なくする目的で用いられ、主として油井プラントや化学工業プラントなどの配管材料として使用されている。
【0003】
具体的に説明すると、例えば、化学工業プラントにおいては、各種の装置間を連結する配管部材として用いられ、施工に際しては、その内部に高圧水や腐食性の強い高圧ガスや液体などを注入し、所定の配管形状に伸ばして使用される。この場合、その伸ばし工程は、通常、1回であり、その際、鋼管コイルが局部的に繰り返しの塑性歪みを受けた場合でも高々10回程度の繰り返し曲げであるので、低サイクル疲労強度を特に考慮する必要はない。
【0004】
これに対し、石油や天然ガスを生産する油井プラントに使用される鋼管コイルは、次のようにして用いられている油井管の代替え品として使用される。
【0005】
すなわち、油井管は長さの短い真直な鋼管である。このため、その使用時は複数本の鋼管をねじ継手を用いて機械的に接続して長尺鋼管となし、使用後は解体して別の油井プラントに移送し、上記のねじ継手による機械的接続を行って再使用するという操作を繰り返して使用される。
【0006】
従来、上記の油井プラントに使用される鋼管コイルとしては、複数の帯鋼を順次突き合わせ溶接接合して長尺帯鋼とした後溶接製管された長尺の溶接鋼管を巻き取ったものが主に用いられていた。そして、この場合、複数の帯鋼を順次突き合わせ溶接接合する際、溶接線の配置を工夫することにより、その突き合わせ接合部の信頼性の向上が図られている。
【0007】
しかし、溶接鋼管には鋼管本体の溶接部の信頼性に問題があるので、最近では長さは短いが溶接鋼管よりも信頼性の高い継目無鋼管を順次突き合わせ円周溶接して長尺鋼管にし、この長尺鋼管を巻き取った鋼管コイルが多用されるようになってきた(例えば、Society of Petroleum Engineering、SPE37645(1997)参照)。
【0008】
そして、上記の文献では、より優れた繰り返し曲げ強度を備えた継目無鋼管を素材とする鋼管コイルを得るためには、アーク溶接法、具体的にはTIG溶接法ではなく、拡散接合法で突き合わせ円周溶接を行うのがよいとしている。
【0009】
しかし、上記の文献に示される結果は、素材の継目無鋼管が低合金鋼製の場合の結果でしかなく、油井プラントにおいて用いられる多量のCrを含むステンレス鋼製の継目無鋼管の場合でも同じであるか否かについては何らの記載もない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ステンレス鋼製の長さの短い継目無鋼管または溶接鋼管を素材とする鋼管コイルを提供することにある。すなわち、その製造時における突き合わせ円周溶接を、拡散接合法に限らずTIG溶接法などのアーク溶接法で行うことが可能であるにもかかわらず、突き合わせ円周溶接部に貫通割れが発生するまでの繰り返し曲げ回数が250回以上という極めて良好な曲げ戻し強度を有する低サイクル疲労強度に優れた高耐食ステンレス鋼管コイルを提供することにある。
【0011】
また、別の目的は、その管内に次に述べる目的を持って挿入されことがある管部材や工具の挿入作業が円滑に行え、しかも管内面に付着した異物の除去も確実に行えるようにした鋼管コイルとその製造方法を提供することにある。
【0012】
すなわち、上記の管部材は、外径が鋼管コイルの内径よりも若干小さい管材で、巻き取られた長尺の鋼管コイルのうちの実際に伸ばすべきコイル部分に高圧水や腐食性の強い高圧ガスや液体などを直接供給するために挿入される。また、上記の工具は、外径が上記の管部材と同様の棒状や管状のもので、例えば油井プラントの場合のように真直に伸ばして使用され、その使用中に管内面に付着した異物を除去するために挿入される。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記(1)と(2)の低サイクル疲労強度に優れた高耐食鋼管コイル、および(3)のその製造方法にある。
【0014】
(1)質量%で、10.5%以上のCrを含むステンレス鋼からなる複数本の鋼管が順次突き合わせ円周溶接され、この長尺鋼管がコイル状に巻き取られた鋼管コイルであって、前記突き合わせ円周溶接部における管軸方向の硬化部の長さWが母材部の管肉厚tの2倍以下であり、この硬化部の硬さと母材部の硬さとの硬度差がビッカース硬度で80以下である低サイクル疲労強度に優れた高耐食鋼管コイル。
【0015】
(2)突き合わせ円周溶接部における内面ビードの高さが0.3mm以下である上記(1)に記載の低サイクル疲労強度に優れた高耐食鋼管コイル。
【0016】
(3)上記の(2)に記載の低サイクル疲労強度に優れた高耐食鋼管コイルの製造方法であって、突き合わせ円周溶接部の溶接金属中に含まれるS、O(酸素)およびAlの量が、質量%で、S:0.005%以下、O:0.008%以下、Al:0.06%以下、かつSとO、OとAlの関係がそれぞれ下記の▲1▼式および▲2▼式を満たすように突き合わせ円周溶接する低サイクル疲労強度に優れた高耐食鋼管コイルの製造方法。
【0017】
0.004≦(O+2×S)≦0.012 ・・・ ▲1▼
O≧0.2×Al ・・・・・・・・・・・・・・ ▲2▼
ここで、▲1▼式および▲2▼式中の元素記号は、溶接金属中に含まれる各元素の含有量(質量%)を意味する。
【0018】
上記の本発明は、下記の知見に基づいて完成させた。すなわち、本発明者らは、ステンレス鋼製の長さの短い継目無鋼管または溶接鋼管を素材とする鋼管コイルの突き合わせ円周溶接部の繰り返し曲げ特性を向上させる方法について種々検討した結果、次のことを知見した。
【0019】
曲げ変形を受ける領域での硬さ分布の変動範囲を所定値以下、具体的には、突き合わせ円周溶接部における管軸方向の硬化部の長さWを母材部の管肉厚tの2倍以下とし、かつこの硬化部の硬さと母材部の硬さとの硬度差をビッカース硬度で80以下にすると、繰り返し曲げ寿命が向上する。
【0020】
すなわち、高耐食ステンレス鋼では、Crを多く添加した鋼を用いる必要があるが、その際の組織はマルテンサイト系、フェライト系、フェライトとオーステナイトの二相系およびオーステナイト系のいずれかになる。そして、マルテンサイト系の場合には、溶接熱サイクルにより焼入れ硬化が生じる。また、フェライト系の場合には、溶接熱によりフェライトの一部がマルテンサイト化して焼入れ硬化が生じたり析出硬化が生じる。さらに、二相系とオーステナイト系の場合には、多層溶接時における溶接熱歪みの重畳により加工硬化が生じる。その結果、いずれの場合も、突き合わせ円周溶接部での硬さの変動が大きなり、これに伴って突き合わせ円周溶接部、具体的には硬化部または硬化部と母材部との境界部分の繰り返し曲げ特性も大きくばらつく。
【0021】
しかし、素材鋼管の化学組成、溶接材料の化学組成、溶接条件、および溶接後における後熱処理の有無(有時はその条件)の如何にかかわらず、上記の硬さ要件を満たす突き合わせ円周溶接部であれば、該部の繰り返し曲げ時における低サイクル疲労強度が高くなることが確認された。
【0022】
また、突き合わせ円周溶接部の内面ビード高さが0.3mm以下でないと、前述した目的を持って管内に挿入される管部材や工具を円滑に挿入することができないだけでなく、母材部の管内面に付着している異物が十分に除去されないことが判明した。
【0023】
上記0.3mm以下の内面ビードは、溶接金属中に含まれるS、O(酸素)およびAlの含有量を、質量%で、それぞれ、0.005%以下、0.008%以下、0.06%以下にし、かつSとO、OとAlの関係がそれぞれ上記の▲1▼式および▲2▼式を満たすように調整する場合に確保される。その理由は次のとおりである。
【0024】
S、AlおよびOの含有量、並びにSとO、OとAlの関係が上記の条件を満たす場合に限って溶融池が安定するほか、十分な溶け込み深さが確保されるためである。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の鋼管コイルの構成要件とその限定理由につい説明する。
【0026】
素材鋼管の材質と種類:
本発明の鋼管コイルの素材鋼管の材質は、質量%で、10.5%以上のCrを含むステンレス鋼とする。これは、Crの含有量が10.5%未満のステンレス鋼では、炭酸ガスなどの腐食環境下での耐食性が確保できないためである。
【0027】
なお、上記のステンレス鋼とは、Crを除く元素のうち、Feの含有量が50質量%以上のステンレス鋼であり、その組織はマルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系、およびフェライト相とオーステナイト相との二相系のいずれであってもよい。具体的に例示すると、JISやAISIなどの各種の規格に規定される各種のステンレス鋼、およびこれらのステンレス鋼に適量のMo、Cu、W、Ti、Zrなどの合金元素を添加して耐食性を高めた高耐食ステンレス鋼などを挙げることができる。
【0028】
素材鋼管は継目無鋼管が好ましいが、溶接製管後に短く切断された溶接鋼管であってもよい。また、素材鋼管としての溶接鋼管は、母材部と溶接部の少なくとも機械的性質が実質的に均一に調整されたものであることが好ましいが、その溶接線が管軸と平行なものであれば、母材部と溶接部の機械的性質が異なるものであってもよい。これは、溶接線が管軸と平行な溶接部は、低サイクル疲労強度に何らの悪影響も及ぼさないためである。
【0029】
突き合わせ円周溶接部における管軸方向の硬化部長さと硬さ:
本発明の鋼管コイルは、突き合わせ円周溶接部における管軸方向の硬化部の長さWが母材部の管肉厚tの2倍以下{(W/t)≦2}であり、かつこの硬化部の硬さと母材部の硬さとの硬度差△Hがビッカース硬度で80以下(△Hv≦80)でなければならない。
【0030】
その理由は、上記の硬化部の長さWが母材部の管肉厚tの2倍超であったり、硬度差△Hvが80超であると、当該円周溶接部に繰り返し曲げを付与した際、曲げ歪みの分布の不均一が顕著になって母材部との境界付近に塑性歪みが集中し、少ない繰り返し曲げ回数で主として前記の境界付近に肉厚を貫通する割れが生じ、所望の繰り返し曲げ強度が確保できないためである。
【0031】
突き合わせ円周溶接の手段としては、アーク溶接法のほかに拡散接合法を用いてもよく、その際の溶接条件は上記の要件が満たされる条件を適宜選定すればよい。また、材料によっては、上記の要件を満たすために溶接終了後に適当な後熱処理を施してもよい。
【0032】
TIG溶接法を用いる場合の溶接条件の一例を示せば、溶接電流130〜200A、溶接電圧12〜16V、溶接速度15cm/minであり、この条件で溶接すれば、溶接のままで上記の要件を満たす突き合わせ円周溶接部を有する鋼管コイルが得られる。ただし、一部の材料については、上記の条件による溶接のままでは上記の要件を満たさないが、この場合には、例えば650〜750℃に5分間程度加熱保持する後熱処理を施せば、上記の要件を満たす突き合わせ円周溶接部を有する鋼管コイルが得られる。
【0033】
突き合わせ円周溶接部における内面ビードの高さ:
本発明の鋼管コイルは、その突き合わせ円周溶接部の内面ビードの高さが0.3mm以下であることが好ましい。その理由は次のとおりである。すなわち、前述したように、鋼管コイルの管内には、前述した目的を持って管部材や工具が挿入されることがある。しかし、突き合わせ円周溶接部の内面ビードの高さが0.3mm超であると、管部材や工具を円滑に挿入することができなくなるだけでなく、母材部の管内面にある異物を十分に除去できなくなるためである。
【0034】
突き合わせ円周溶接の手段がアーク溶接法の場合、高さが0.3mm以下の内面ビードを得るには、溶接金属中に含まれるS、O(酸素)およびAlの含有量を、質量%で、それぞれ、0.005%以下、0.008%以下、0.06%以下にし、かつSとO、OとAlの関係がそれぞれ上記の▲1▼式および▲2▼式を満たすように調整するのがよい。その理由は次のとおりである。
【0035】
すなわち、良好な内面ビードを形成させ、しかもその高さを低くするためには溶融池の安定化と十分な溶け込み深さの確保が欠かせない。しかし、溶接金属中のS含有量が0.005質量%超、またはO含有量が0.008質量%超であると、溶融池の対流が内向きになって著しく凸型の内面ビードが形成されるようになり、0.3mm以下の内面ビードが形成されなくなる。
【0036】
また、Al含有量が0.06質量%超であると、溶融池内のスラグ量が増加して溶融池が不安定になり、0.3mm以下の内面ビードが形成されなくなる。
【0037】
さらに、SとOの含有量が上記の上限値以下であっても、O値と2倍のS値の合計値が0.012質量%を超えると、溶融池後方部での熱膨張に呼応して生じる溶融池の揺動が十分に抑制されず、高さ0.3mm以下の安定した内面ビードが形成されなくなる。
【0038】
一方、SとOを低減しすぎて上記の合計値を0.004質量%未満にすると、溶接時の溶け込み深さが十分に確保できず、裏面ビードの未形成や融合不良などが生じやすくなり、却って溶接作業性が劣化する。
【0039】
また、Oによる溶け込みと溶融池の安定化効果を十分に発揮させるためには、溶融池でAlと結合せずに溶融池中に溶解しているOの存在が重要であるが、そのO量がAl含有量の1/5未満であると、溶融池中に溶解するO量が不足して十分な溶け込み深さが確保されない。
【0040】
以上のことから、本発明では、突き合わせ円周溶接の手段がアーク溶接法の場合における高さ0.3mm以下の内面ビードを得る必要がある場合には、上記のような条件とするのが望ましい。
【0041】
なお、突き合わせ円周溶接の手段に拡散接合法を用いる場合に、高さ0.3mm以下の内面ビードを形成させるには、素材鋼管の鋼種と加熱温度に応じて接合時における加圧力を適宜制御すればよい。
【0042】
【実施例】
(実施例1)
表1に示す化学組成を有する3種類のステンレス鋼からなり、外径80mm、肉厚6mm、および外径130mm、肉厚12mmで、長さがいずれも12mの継目無鋼管と、表2に示す化学組成を有する8種類の溶接材料を準備した。
【0043】
【表1】
Figure 0003608422
【0044】
【表2】
Figure 0003608422
【0045】
そして、準備した継目無鋼管の管端に、片側30度のV開先を設け、表2に示す溶接材料のうちのF1〜F4のいずれかを用い、管外面側からTIG溶接法にて突き合わせ円周溶接して長さ480mの長尺鋼管にした後、直径10m、幅3mのボビンに巻き取った。
【0046】
その際、突き合わせ円周溶接は、いずれも、溶接電流130A、溶接電圧12V、溶接速度15cm/minの条件で行った。また、これらのうち、一部の鋼管コイルについては、その円周溶接部に、650℃に5分間または670℃に5分間加熱保持する後熱処理を施した。
【0047】
なお、一部の鋼管コイルは、突き合わせ円周溶接に拡散接合法を用い、融点1050℃、厚さ50μmのインサート材(19%Cr−1.5%Si−7%B−残部Ni)を介在させ、加熱温度1200℃、加圧力15MPaの条件で製造した。
【0048】
得られた各鋼管コイルからは、長さ方向の中央部分に円周溶接部を有し、全体形状が円弧状の長さ15mの試験材を採取して下記の繰り返し曲げ試験に供し、試験材の円周溶接部、具体的には硬化部または硬化部と母材部との境界部分に肉厚を貫通する亀裂が発生するまでのサイクル数を調べることにより、その低サイクル疲労強度を調査した。その結果を表3に示した。
【0049】
繰り返し曲げ試験:
採取した試験材の片端を直径10mの円筒部材の表面に固定装着する一方、他方端部を把持して円筒部材の同一円周上の外面に完全に沿うように巻き付け、この状態から真直に伸ばすことを1サイクルとする操作を繰り返す。
【0050】
なお、試験は、管内に、塩素イオン濃度が6質量%、pHが4.5の水溶液と圧力が10MPaの炭酸ガスを封入して行った。
【0051】
【表3】
Figure 0003608422
【0052】
表3に示す結果から明らかなように、本発明で規定する要件を満たす鋼管コイル(試番1〜12)は、サイクル数が250回に達しても、その円周溶接部には肉厚を貫通する亀裂は発生せず、良好な低サイクル疲労強度を有していた。
【0053】
これに対し、本発明で規定する要件を満たさない鋼管コイル(試番13〜17)は、最大でもサイクル数が170回に達し時点で、その円周溶接部に肉厚を貫通する亀裂が発生し、低サイクル疲労強度が劣っていた。
【0054】
(実施例2)
実施例1においてTIG溶接法で製造した鋼管コイルのうち、後熱処理を施さなかった試番1〜11の鋼管コイルと、その溶接条件を溶接電流200A、溶接電圧16V、溶接速度15cm/minにして製造した鋼管コイル、および溶接材料に表2中のG1〜G4を用いる一方、その溶接要条件を溶接電流130A、溶接電圧12V、溶接速度15cm/min、並びに上記と同じ溶接電流200A、溶接電圧16V、溶接速度15cm/minにして製造した鋼管コイルを準備した。
【0055】
そして、各鋼管コイルの溶接金属中のS、OおよびAlの含有量を調べるとともに、円周溶接部から試験片を採取して内面ビードの最大高さを測定し、その結果を表4に示した。
【0056】
【表4】
Figure 0003608422
【0057】
表4に示す結果から明らかなように、溶接金属中のS、OおよびAlの含有量が望ましい条件の上限値以下であり、かつSとO、OとAlの関係がそれぞれ本発明で規定する▲1▼式および▲2▼式を満たす鋼管コイル(試番1〜11)は、いずれも内面ビードの高さが0.3mm以下であった。また、この0.3mm以下の内面ビードは、広い溶接条件で得られた。
【0058】
これに対し、溶接金属中のS、OおよびAlの含有量が望ましい条件の上限値以下であるが、SとO、OとAlの関係が▲1▼式および▲2▼式を満たさない鋼管コイル(試番18〜21)は、内面ビードの高さが、いずれも0.3mmよりも大きかった。したがって、内面ビードの高さを0.3mm以下にする必要がある場合には、溶接金属中に含まれるS、O(酸素)およびAlの含有量を、質量%で、それぞれ、0.005%以下、0.008%以下、0.06%以下にし、かつSとO、OとAlの関係がそれぞれ上記の▲1▼式および▲2▼式を満たすように調整するのがよいことがわかる。
【0059】
【発明の効果】
本発明の鋼管コイルは、円周溶接部の低サイクル疲労強度が優れるので、油井や化学工業プラントの配管部材に用いて有効であり、特に伸ばし時、その管内に腐食性の強いガスや液体が注入され、しかも伸ばしと巻き取りの回数が多い油井用の配管部材に用いて極めて有効ある。
【0060】
また、円周溶接部の内面ビード高さが0.3mm以下の鋼管コイルは、管内への管部材や工具挿入が円滑に行えるほか、管本体の内面に付着している異物を確実に除去することが可能である。

Claims (3)

  1. 質量%で、10.5%以上のCrを含むステンレス鋼からなる複数本の鋼管が順次突き合わせ円周溶接され、この長尺鋼管がコイル状に巻き取られた鋼管コイルであって、前記突き合わせ円周溶接部における管軸方向の硬化部の長さWが母材部の管肉厚tの2倍以下であり、この硬化部の硬さと母材部の硬さとの硬度差がビッカース硬度で80以下であることを特徴とする低サイクル疲労強度に優れた高耐食鋼管コイル。
  2. 突き合わせ円周溶接部における内面ビードの高さが0.3mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の低サイクル疲労強度に優れた高耐食鋼管コイル。
  3. 請求項2に記載の低サイクル疲労強度に優れた高耐食鋼管コイルの製造方法であって、突き合わせ円周溶接部の溶接金属中に含まれるS、O(酸素)およびAlの量が、質量%で、S:0.005%以下、O:0.008%以下、Al:0.06%以下、かつSとO、OとAlの関係がそれぞれ下記の▲1▼式および▲2▼式を満たすように突き合わせ円周溶接することを特徴とする低サイクル疲労強度に優れた高耐食鋼管コイルの製造方法。
    0.004≦(O+2×S)≦0.012 ・・・ ▲1▼
    O≧0.2×Al ・・・・・・・・・・・・・・ ▲2▼
    ここで、▲1▼式および▲2▼式中の元素記号は、溶接金属中に含まれる各元素の含有量(質量%)を意味する。
JP05692699A 1999-03-04 1999-03-04 低サイクル疲労強度に優れた高耐食鋼管コイルおよびその製造方法 Expired - Fee Related JP3608422B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP05692699A JP3608422B2 (ja) 1999-03-04 1999-03-04 低サイクル疲労強度に優れた高耐食鋼管コイルおよびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP05692699A JP3608422B2 (ja) 1999-03-04 1999-03-04 低サイクル疲労強度に優れた高耐食鋼管コイルおよびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2000246435A JP2000246435A (ja) 2000-09-12
JP3608422B2 true JP3608422B2 (ja) 2005-01-12

Family

ID=13041118

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP05692699A Expired - Fee Related JP3608422B2 (ja) 1999-03-04 1999-03-04 低サイクル疲労強度に優れた高耐食鋼管コイルおよびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3608422B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5408031B2 (ja) * 2010-05-17 2014-02-05 新日鐵住金株式会社 耐低サイクル疲労特性に優れたパイプライン用高強度鋼管の円周溶接継手及びその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2000246435A (ja) 2000-09-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5118028A (en) Diffusion bonding method for corrosion-resistant materials
WO2001010591A1 (fr) Conduite en acier inoxydable soude de martensite
JP4876350B2 (ja) 油井用高強度鋼管継手の製造方法
JP2007516351A (ja) 配管システムに使用されるステンレス鋼管の製造方法
JPH11320097A (ja) 高Crフェライト鋼の溶接継手構造
JP5045178B2 (ja) ラインパイプ用ベンド管の製造方法およびラインパイプ用ベンド管
EP3010680A1 (en) Filler for the welding of materials for high-temperature applications
JP3896031B2 (ja) 高強度uoe鋼管の製造方法
JP3608422B2 (ja) 低サイクル疲労強度に優れた高耐食鋼管コイルおよびその製造方法
JP2007321181A (ja) マルテンサイト系ステンレス鋼材溶接部の形成方法
JP3506088B2 (ja) 耐疲労特性に優れたコイルドチュービング用マルテンサイト系ステンレス鋼とそれからの製造法
JPH05293661A (ja) 耐食性の優れたクラッド鋼管の製造法
JP4193308B2 (ja) 耐硫化物応力割れ性に優れた低炭素フェライト−マルテンサイト二相ステンレス溶接鋼管
JP4196755B2 (ja) 低炭素ステンレス鋼管の配管溶接継手とその製造方法
JP2011068967A (ja) ステンレス鋼製パネル溶接施工貯水槽
JP2013204741A (ja) ステンレス鋼管継ぎ手
CN107755980B (zh) 一种2205/x65双金属冶金复合弯管的制造方法
JP2004042133A (ja) 耐応力腐食割れ性に優れた溶接継手およびその製造方法
JP3165902B2 (ja) 高Cr鋼の溶接方法
JP2003149366A (ja) 溶接継手付きラッパ管及びその製造方法
JPH01100247A (ja) オーステナイト系耐食鋳銅
Lauro et al. Welding and weldability of the ‘super-austenitic’and ‘super-martensitic’stainless steels
JP4304892B2 (ja) 溶接継手
Tharanitharan et al. Analysis of Welding Characteristics of Two Dissimilar Metal (FSS 409 and ASS 304) Using TIG Welding
JP5055758B2 (ja) ステンレス鋼の溶接継手

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20031226

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20040113

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20040921

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20041004

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081022

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091022

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091022

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101022

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111022

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121022

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131022

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131022

Year of fee payment: 9

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131022

Year of fee payment: 9

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees