JP3607605B2 - Wcdma無線基地局 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、WCDMA無線基地局に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話機などの移動体通信端末装置(以下、移動機)により移動しつつ通信を行うとき、フェージング現象により受信信号の信号レベルが変動し、通信が困難になる場合がある。この問題に対処するため、従来よりTSTD(Time Switched Transmit Diversity)方式が用いられている。
図8は従来のTSTD方式のWCDMA(Wideband Code Division Multiple Access)無線基地局装置の一例を示すブロック図である。このWCDMA無線基地局102は、TSTD回路104ならびに第1および第2の送信部106、108(0系および1系とも称す)を含み、ベースバンド信号を2系統の高周波信号に変換して、異なる場所に接地された第1および第2のアンテナ110、112を通じ不図示の移動機に向け送信する構成となっている。
【0003】
TSTD回路104は、不図示の交換機などの上位装置からベースバンド信号(BB信号)113を受け取り、2系統の第1および第2のベースバンド信号114、116をそれぞれ第1および第2の送信部106、108に出力する。第1および第2のベースバンド信号114、116は基本的には同一の信号であるが、TSTD方式におけるSCH(Synchronization Channel)信号(同期信号)は第1および第2のベースバンド信号114、116に交互に振り分けられている。したがって、ベースバンド信号113のたとえば偶数番目のSCH信号は第1のベースバンド信号114に含まれ、奇数番目のSCH信号は第2のベースバンド信号116に含まれている。
【0004】
第1および第2の送信部106、108はそれぞれ第1および第2の遅延調整回路118、120および第1および第2の高周波回路(RF回路)122、124を備えている。第1および第2の遅延調整回路118、120はそれぞれ第1および第2の遅延制御信号126、128にもとづいて第1および第2のベースバンド信号114、116を遅延させて出力し、第1および第2の高周波回路122、124はそれぞれ第1および第2の遅延調整回路118、120により遅延した第1および第2のベースバンド信号114、116を高周波信号に変換するとともに、同高周波信号を電力増幅して出力端子130、132を通じてそれぞれ第1および第2のアンテナ110、112に供給する。
【0005】
このような構成のWCDMA無線基地局102では、接地場所の異なる第1および第2のアンテナ110、112を通じて電波が送信されることから、移動機側では、移動時のフェージングにより受信信号レベルが変動した場合には、第1および第2のアンテナ110、112からの電波のうち受信レベルの高い方を選択することで、通信を安定に継続することが可能となる。
【0006】
そして、この送信ダイバーシチ構成でフェージングの問題を効果的に回避するためには、第1および第2のアンテナ110、112から同一のタイミングで送信が行われる必要があり、そのため、第1および第2のベースバンド信号114、116のタイミングが第1および第2の遅延調整回路118、120によって調整される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この第1および第2の遅延調整回路118、120の遅延時間の調整は、従来、出力端子130、132に送信機テスターや高周波用オシロスコープなどの測定器を接続して第1および第2の送信部106、108における高周波信号の遅延時間をそれぞれ測定し、測定結果にもとづいて適切な第1および第2の遅延制御信号126、128を第1および第2の遅延調整回路118、120に供給することで行っていた。
しかし、このような方法では、送信機テスターや高周波用オシロスコープなどの高価な測定器を用意しなければならず、また作業者が測定や調整を行うことから人件費がかかり、さらに作業ミスが発生する虞もあった。
【0008】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、送信部における遅延時間の調整を低コストで、かつ確実に行えるWCDMA無線基地局を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するため、TSTD回路ならびに第1および第2の送信部を含み、前記TSTD回路が、上位装置からのベースバンド信号を第1および第2の出力端子を通じて出力する際に、前記ベースバンド信号に含まれるTSTD方式に係わるSCH信号については前記第1および第2の出力端子から交互に出力し、前記第1の送信部は、前記TSTD回路の前記第1の出力端子からの前記ベースバンド信号を遅延させる第1の遅延調整回路と、前記第1の遅延調整回路により遅延した前記ベースバンド信号を高周波信号に変換するとともに同高周波信号を電力増幅して第1のアンテナに供給する第1の高周波回路とを含み、前記第2の送信部は、前記TSTD回路の前記第2の出力端子からの前記ベースバンド信号を遅延させる第2の遅延調整回路と、前記第2の遅延調整回路により遅延した前記ベースバンド信号を高周波信号に変換するとともに同高周波信号を電力増幅して第2のアンテナに供給する第2の高周波回路とを含む、TSTD方式のWCDMA無線基地局であって、前記SCH信号のみを含む前記ベースバンド信号を前記TSTD回路に出力するよう指示する制御信号を前記上位装置に出力する上位装置制御手段と、前記上位装置制御手段が前記制御信号を出力した後、前記第1および第2の高周波回路により高周波信号に変換された前記SCH信号にもとづいて前記第1および第2の送信部における信号の遅延時間または遅延時間の差を検出する遅延検出手段と、前記遅延検出手段による遅延時間または遅延時間の差の検出結果にもとづき、前記第1および第2の送信部における信号の遅延時間を一致させるべく前記第1および第2の遅延調整回路の遅延時間を制御する遅延時間制御手段とを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明のWCDMA無線基地局では、まず上位装置制御手段が、制御信号を上位装置に出力して、SCH信号のみを含むベースバンド信号をTSTD回路に出力するよう指示し、このようなSCH信号のみを含むベースバンド信号がTSTD回路に供給されている状態で、遅延検出手段は、第1および第2の高周波回路により高周波信号に変換されたSCH信号にもとづいて第1および第2の送信部における信号の遅延時間または遅延時間の差を検出する。そして、遅延時間制御手段は、遅延検出手段による遅延時間または遅延時間の差の検出結果にもとづき、第1および第2の送信部における信号の遅延時間を一致させるべく第1および第2の遅延調整回路を制御する。
【0011】
したがって、本発明のWCDMA無線基地局では、送信部における遅延時間の調整を、送信機テスターや高周波用オシロスコープなどの高価な測定器を用いることなく行え、さらに作業者が測定や調整を行う必要もない。すなわち、送信ダイバーシチ構成に係わる信号遅延時間の調整を低コストで、かつ確実に行うことができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態例について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は本発明によるWCDMA無線基地局の一例を示すブロック図、図2は図1のWCDMA無線基地局を構成するTSTD回路を詳しく示すブロック図、図3は図1の遅延検出回路の構成を示すブロック図、図4は実施の形態例のWCDMA無線基地局の動作を説明するためのタイミングチャート、図5は遅延検出回路の動作を説明するためのタイミングチャート、図6は実施の形態例のWCDMA無線基地局の動作を示すフローチャートである。なお、図1などにおいて図8と同一の要素には同一の符号が付されている。
【0014】
図1に示したように、本実施の形態例のWCDMA無線基地局2はTSTD方式の送信ダイバーシチ構成となっており、基本構成要素として、TSTD回路104ならびに第1および第2の送信部4、6を含み、TSTD回路104は、上位装置からのベースバンド信号113を第1および第2の出力端子8、10を通じて出力する際に、ベースバンド信号に含まれるTSTD方式に係わるSCH信号については第1および第2の出力端子8、10から交互に出力し、第1の送信部4は、TSTD回路104の第1の出力端子8からのベースバンド信号114を遅延させる第1の遅延調整回路118と、第1の遅延調整回路118により遅延したベースバンド信号を高周波信号に変換するとともに同高周波信号を電力増幅して第1のアンテナ110に供給する第1の高周波回路122とを含み、第2の送信部6は、TSTD回路104の第2の出力端子10からのベースバンド信号116を遅延させる第2の遅延調整回路120と、第2の遅延調整回路120により遅延したベースバンド信号を高周波信号に変換するとともに同高周波信号を電力増幅して第2のアンテナ112に供給する第2の高周波回路124とを含んでいる。
【0015】
WCDMA無線基地局2はさらに、メモリー12にあらかじめ格納されたプログラムにもとづき動作する、本発明に係わる上位装置制御手段としてのCPU(中央処理装置)14を含み、CPU14は、SCH信号のみを含むベースバンド信号をTSTD回路104に出力するよう指示する制御信号16を、たとえば交換機などの不図示の上位装置に出力する。
【0016】
そしてWCDMA無線基地局2は、第1および第2の方向性結合器18、20、合成器22、ならびに遅延検出回路24により構成された遅延検出手段26を含み、遅延検出手段26によって、上位装置制御手段としてのCPU14が制御信号16を出力した後、第1および第2の高周波回路122、124により高周波信号に変換されたSCH信号にもとづいて第1および第2の送信部4、6における信号の遅延時間の差が検出される。
CPU14は、本発明に係わる遅延時間制御手段としても機能し、遅延検出手段26による遅延時間の差の検出結果にもとづき、第1および第2の送信部4、6における信号の遅延時間を一致させるべく第1および第2の遅延調整回路118、120を制御する。
【0017】
遅延検出手段26を構成する上記第1および第2の方向性結合器18、20は、第1および第2の高周波回路122、124と出力端子130、132との間にそれぞれ設けられ、第1および第2の高周波回路122、124の出力信号を出力端子28を通じて第1および第2のアンテナ110、112にそれぞれ供給するとともに、出力端子30を通じて出力する。
【0018】
また、遅延検出手段26を構成する合成器22は第1および第2の方向性結合器18、20の出力端子30からの2つの出力信号を合成して出力し、遅延検出回路24は、合成器22の出力信号において連続する2つのSCH信号の時間間隔を検出して前記遅延時間の差の検出結果としてCPU14に出力する。
【0019】
遅延検出回路24は、詳しくは図3に示したように、合成器22が出力する高周波信号70からSCH信号を復調する検波回路32と、クロックパルスを生成する基準発振器34と、検波回路32がSCH信号を出力し次にSCH信号を出力するまでの間、基準発振器34が生成したクロックパルス78を計数して、計数結果を前記遅延時間の差の検出結果として出力するカウンタ回路36とにより構成されている。
【0020】
また、第1および第2の遅延調整回路118、120はそれぞれ不図示のシフトレジスターを含んで構成され、シフトレジスターを構成する直列接続された複数の記憶単位のうち、どの記憶単位から信号を取り出すかの切り換えにより信号遅延時間を調整する構造となっている。
【0021】
TSTD回路104は、図2に示したように、SCHスイッチ回路38、第1および第2のPCCPCHスイッチ回路40、42(Primary Common Control Physical Channelスイッチ回路)、ならびに第1および第2の合成器44、46を含んで構成されている。
SCHスイッチ回路38は、ベースバンド信号から抽出されたSCH信号37を入力信号として同入力信号を切換制御信号48にもとづき第1および第2の端子50、52のいずれかから出力する。
【0022】
第1のPCCPCHスイッチ回路40は、ベースバンド信号から抽出されたPCCPCH信号54およびSCHスイッチ回路38の第1の端子50から出力されたSCH信号を入力信号としてこれら2つの入力信号のいずれかを第1の切換制御信号56にもとづき選択して第1の合成器44に出力する。
第2のPCCPCHスイッチ回路42は、ベースバンド信号から抽出されたPCCPCH信号54およびSCHスイッチ回路38の第2の端子52から出力されたSCH信号を入力信号としてこれら2つの入力信号のいずれかを第2の切換制御信号58にもとづき選択して第2の合成器46に出力する。
【0023】
第1の合成器44は、第1のPCCPCHスイッチ回路40の出力信号と、ベースバンド信号113から抽出された他のCH信号60(PCPPICH(Primary Common Pilot Channel)信号やDPCH(Dedicated Physical Channel)信号)とを合成し第1のベースバンド信号114として第1の送信部4に出力する。
第2の合成器46は、第2のPCCPCHスイッチ回路42の出力信号と、ベースバンド信号113から抽出された他のCH信号60とを合成し第2のベースバンド信号116として第2の送信部6に出力する。
【0024】
なお、図2では、PCCPCH信号54および他のCH信号60として、第1のPCCPCHスイッチ回路40および第1の合成器44に供給するものと、第2のPCCPCHスイッチ回路42および第2の合成器46に供給するものとが示されているが、これはPCCPCH信号54および他のCH信号60に関しては両送信部にともに供給されることを分かり易く示すためである。したがって、ベースバンド信号にあくまでも1種類のPCCPCH信号54および他のCH信号60のみが含まれている。
【0025】
次に、このように構成されたWCDMA無線基地局2の動作について説明する。
まず、上位装置制御手段としてのCPU14は、制御信号16を上位装置に出力してシステムの運用の一時的な中断を指示する。これにより上位装置は、1フレーム(10ms)の間だけSCH信号のみを含むベースバンド信号113をTSTD回路104に出力する。TSTD回路104は通常のシステム運用時と同様に動作しており、SCH信号は第1および第2の送信部4、6に交互に出力される。
【0026】
まず、SCH信号について詳しく説明すると、図4に示したように、世界的な標準規格である3GPPの仕様書TS.25.211の規定にしたがってベースバンド信号の各フレーム62は、0.667ms幅の15のタイムスロット64に分割され、各タイムスロット先頭部の1/10スロット相当の期間(66.7μs)がSCH信号37に割り当てられている。そしてタイムスロットのうち偶数スロットは第1の送信部4を通じて送信され、奇数スロットは第2の送信部6を通じて送信される。
【0027】
TSTD回路104の動作について説明すると、SCHスイッチ回路38は、ベースバンド信号113から抽出されたSCH信号37を切換制御信号48にもとづき第1および第2の端子50、52のいずれかから出力し、詳しくは、各フレーム62において偶数番目のタイムスロット64のSCH信号は第1の端子50に、奇数番目のタイムスロット64のSCH信号は第2の端子52に出力する。
【0028】
そして、第1のPCCPCHスイッチ回路40は、第1の切換制御信号56にもとづいて動作し、SCHスイッチ回路38の第1の端子50からSCH信号が出力されている期間では、このSCH信号を選択して第1の合成器44に出力し、それ以外の期間ではベースバンド信号113から抽出されたPCCPCH信号54を第1の合成器44に出力する。
一方第2のPCCPCHスイッチ回路は、第2の切換制御信号58にもとづいて動作し、SCHスイッチ回路38の第2の端子52からSCH信号が出力されている期間では、このSCH信号を選択して第2の合成器46に出力し、それ以外の期間ではベースバンド信号113から抽出されたPCCPCH信号54を第2の合成器46に出力する。
【0029】
第1および第2の合成器44、46はそれぞれ第1および第2のPCCPCHスイッチ回路40、42の出力信号と、ベースバンド信号から抽出された他のCH信号60とを合成して第1および第2の送信部4、6に出力する。
なお、遅延時間を調整する場合には、上述のようにCPU14の制御によって上位装置はシステム運用を一時的に中断しており、その間、ベースバンド信号にはSCH信号37のみが含まれているため、第1および第2のPCCPCHスイッチ回路40、42は、SCHスイッチ回路38からのSCH信号を常に選択して出力するように設定を固定してもよい。
【0030】
TSTD回路104がこのように動作する結果、TSTD回路104からはSCH信号が第1および第2の送信部4、6に対して交互に出力され、出力端子130、132からは、図4に示したように、SCH信号を交互に含む高周波信号が出力される。
【0031】
TSTD回路104の第1および第2の合成器44、46からそれぞれ出力されたベースバンド信号114、116はそれぞれ、第1および第2の遅延調整回路118、120を通じ第1および第2の高周波回路122、124に入力されて、第1および第2の高周波回路122、124で周波数が2110〜2170MHzの高周波信号に変換され、さらに必要な電力にまで増幅される。その結果得られた高周波のSCH信号はそれぞれ第1および第2の方向性結合器18、20で2分配され、各方向性結合器の出力端子28、30を通じて出力される。
【0032】
第1および第2の方向性結合器18、20の出力端子28から出力された高周波のSCH信号はそれぞれ出力端子130、132を通じて第1および第2のアンテナ110、112に供給され、一方、第1および第2の方向性結合器18、20の出力端子30から出力された高周波SCH信号66、68はともに合成器22に入力される。合成器22はこれらのSCH信号を合成して合成SCH信号70を遅延検出回路24に供給する。図5はこれら高周波SCH信号66、68などを示している。ただし図では分かり易くするため各SCH信号は高周波信号としてではなくパルスとして示されている。
【0033】
遅延検出回路24では、検波回路32(図3)が合成SCH信号70を受け取り振幅検波を行ってSCH信号を復調する。そして、カウンタ回路36は、CPU14が上位装置制御信号を上位装置に出力した後、復調後の合成SCH信号72の最初の立ち上がりエッジ74から次の立ち上がりエッジ76まで、すなわち第1の方向性結合器18からのSCH信号(高周波SCH信号66)の立ち上がりエッジから、つづく第2の方向性結合器20からのSCH信号(高周波SCH信号68)の立ち上がりエッジまで、基準発振器34からのクロックパルス78(図5)を計数し、結果を遅延時間差情報として出力する。
【0034】
本実施の形態例では、基準発振器34が生成するクロックパルス78の周波数は一例として30.72MHzであるとする。3GPPではチップレートは3.84Mcpsと決められているため、クロックパルス78を上記周波数にした場合、1/8チップ(32.6ns)単位で遅延時間差を検出できることになる。
【0035】
ここで、第1および第2の送信部4、6における遅延時間に差が無かったとすると、復調後の合成SCH信号72の最初の立ち上がりエッジ74から次の立ち上がりエッジ76までの時間は0.667msであるから、カウンタ回路36の計数値は2048回、すなわち16進数で表して800となる。
【0036】
また、第2の送信部6における遅延時間の方が第1の送信部4の遅延時間より長く、たとえば合成SCH信号70の最初の立ち上がりエッジ74から次の立ち上がりエッジ76までの時間が、1/8チップ分長い666.699μs(SCH信号の標準周期+32.6ns)であったとすると、カウンタ回路36の計数値は2049回(16進数で801)となり、1クロックパルス分だけ第2の送信部6における遅延時間の方が長いことにになる。
【0037】
一方、合成SCH信号70の最初の立ち上がりエッジ74から次の立ち上がりエッジ76までの時間が、1チップ分短い666.406μs(SCH信号の標準周期−260.4ns)であったとすると、カウンタ回路36の計数値は2040回(16進数で7F8)となり、第2の送信部6の遅延時間の方が8クロックパルス分だけ短いことになる。
【0038】
遅延時間制御手段としてのCPU14は、このような遅延時間差情報をもとに第1および第2の遅延調整回路118、120にそれぞれ制御信号118A、120Aを出力して各遅延調整回路における遅延時間を制御する。
以下、特に図6を参照して遅延時間制御手段としてのCPU14の動作を説明する。CPU14はまずメモリー12内に、遅延時間差A、旧0系調整時間B(第1の遅延調整回路118の元の遅延時間)、旧1系調整時間C(第2の遅延調整回路120の元の遅延時間)、新0系調整時間D(第1の遅延調整回路118の新たな遅延時間)、新1系調整時間E(第2の遅延調整回路120の新たな遅延時間)をそれぞれ格納する領域を確保し、これらの領域に各情報を格納した上で(ステップF1)、各領域から情報を適宜読み出し、また各領域の情報を適宜更新して以下の動作を行う。
【0039】
CPU14はカウンタ回路36の計数値35から、第1の送信部4における遅延時間を基準にした遅延時間差Aを算出する。たとえばカウンタ回路36の計数値が2048なら遅延時間差Aは0となり、カウンタ回路36の計数値が2049なら遅延時間差Aは32.6ns、カウンタ回路36の計数値が2040なら遅延時間差Aは−260.4nsとなる。
【0040】
CPU14はまず遅延時間差Aが0に等しいか否かを判定する(ステップF2)。
この判定結果が正ならCPU14は、第1および第2の送信部4、6における遅延時間に差がないと判定し(ステップF12)、第1および第2の遅延調整回路118、120における遅延時間はそのままとする。
【0041】
一方、ステップF2で判定結果が否となった場合には、CPU14は遅延時間差Aが0より大きいか否かを判定する(ステップF3)。この判定結果が正なら、CPU14は、第1の送信部4の遅延時間の方が短いと判定し(ステップF4)、つづいて遅延時間差A−旧1系調整時間Cが0以下か否かを判定する(ステップF6)。そして、この判定結果が正なら、新0系調整時間D=遅延時間差A−旧1系調整時間C、新1系調整時間E=0として、第1および第2の遅延調整回路118、120における遅延時間がこれらの値となるよう第1および第2の遅延調整回路118、120を制御する(ステップF8)。
【0042】
たとえばカウンタの計数値が2049なら遅延時間差Aは32.6nsとなり、旧0系調整時間Bおよび旧1系調整時間Cが0nsの場合、新0系調整時間Dは32.6ns、新1系調整時間Eは0nsとなるので、第1および第2の送信部4、6における遅延時間のずれが解消され、アンテナ1、2には同じタイミングで高周波信号が供給されることになる。
【0043】
逆にステップF6における判定結果が否なら、CPU14は、新0系調整時間D=0、新1系調整時間E=旧1系調整時間C−遅延時間差Aとして、第1および第2の遅延調整回路118、120における遅延時間がこれらの値となるよう第1および第2の遅延調整回路118、120を制御する(ステップF9)。
【0044】
また、ステップF3で判定結果が否となった場合には、CPU14は、第2の送信部6の遅延時間の方が短いと判定し(ステップF5)、つづいて(−遅延時間差A)−旧0系調整時間Bが0以下か否かを判定する(ステップF7)。そして、この判定結果が正なら、新0系調整時間D=0、新1系調整時間E=(−遅延時間差A)−旧0系調整時間Bとして、第1および第2の遅延調整回路118、120における遅延時間がこれらの値となるよう第1および第2の遅延調整回路118、120を制御する(ステップF10)。
【0045】
たとえばカウンタの計数値が2040なら遅延時間差Aは−260.4nsとなり、旧0系調整時間Bが130.2ns、旧1系調整時間が0nsの場合、新0系調整時間Dは0ns、新1系調整時間Eは130.2nsとなるので、第1および第2の送信部4、6における遅延時間のずれが解消され、アンテナ1、2には同じタイミングで高周波信号が供給されることになる。
逆にステップF7における判定結果が否なら、CPU14は、新0系調整時間D=旧0系調整時間B−(−遅延時間差A)、新1系調整時間E=0として、第1および第2の遅延調整回路118、120における遅延時間がこれらの値となるよう第1および第2の遅延調整回路118、120を制御し(ステップF11)、第1および第2の送信部4、6における遅延時間のずれを解消する。
【0046】
このように、本実施の形態例のWCDMA無線基地局2では、2系統の送信部における遅延時間の調整を、従来のように送信機テスターや高周波用オシロスコープなどの高価な測定器を用いることなく行え、さらに作業者が測定や調整を行う必要もない。その結果、送信ダイバーシチ構成に係わる遅延時間の調整を低コストで、かつ確実に行うことができる。
【0047】
また、本実施の形態例では第1および第2の方向性結合器18、20から出力される高周波SCH信号66、68をまず合成器22により合成した後、上述のようにして遅延時間の検出を行うので、合成後の2つのSCH信号は同一の伝送線および回路を伝送されることになり、合成後の経路において2つのSCH信号に新たに時間差が生じることはない。したがって、高い精度で2系統のSCH信号の遅延時間差を検出することができ、第1および第2の送信部4、6の遅延時間差を高精度で解消することが可能となる。
【0048】
そして、本実施の形態例のWCDMA無線基地局では、第1および第2の送信部4、6に第1および第2の高周波回路122、124とは別に予備系の高周波回路を設けた場合、第1および第2の122、124が故障して予備系の高周波回路に切り替わったとしてもただちに第1および第2の送信部4、6における遅延時間差を解消することができる。
【0049】
また、本実施の形態例WCDMA無線基地局では、簡単な機能を追加するだけで第1および第2の送信部における異常検出を行うことも可能となる。すなわち、送信部で異常が発生すると遅延検出回路24に正しくSCH信号が供給されなくなるため、遅延時間差の検出結果も異常となる。したがって、遅延時間差の検出結果に適切な基準値を設け、たとえば検出値がその基準を越えた場合には送信部で異常が発生したと判定することができる。
【0050】
なお、第1および第2の送信部4、6における遅延時間の調整は、出力端子130、132における送信信号の遅延時間差を無くすことが目的であるから、第1の方向性結合器18の出力端子28から出力端子130までと、第2の方向性結合器20の出力端子28から出力端子132までとは同じ特性の伝送線により接続て、これらの伝送線における遅延時間が等しくなるように図ることが望ましい。同様に、第1の方向性結合器18の出力端子30から合成器22までと、第2の方向性結合器20の出力端子30から合成器22までとも同じ特性の伝送線により接続することが望ましい。
【0051】
また、上述のようにCPU14により上位装置を制御して、1フレーム(10ms)の間だけ通常のシステム運用を中断してSCH信号のみを送信した場合、フレーム62の最初のタイムスロット#0では、SCH信号にはそれまで他のCH信号60が多重されていて、SCH信号の立ち上がりの見分けが難しくなることも考えらる。そこで、次のタイムスロット#1のSCH信号からつづくタイムスロット#2のSCH信号までの時間間隔を検出したり、あるいはSCH信号の立ち下がりからカウンタ回路36を動作させるといった構成とすることも有効である。
【0052】
次に、本発明の第2の実施の形態例について説明する。
図7は第2の実施の形態例を示すブロック図である。図中、図1と同一の要素には同一の符号が付されており、それらに関する説明はここでは省略する。
第2の実施の形態例のWCDMA無線基地局80が上記WCDMA無線基地局2と異なるのは、合成器22および遅延検出回路24に代えて第1および第2の遅延検出回路82、84が設けられている点である。
【0053】
第1の遅延検出回路82は、SCHスイッチ回路38(図2)の第1の端子50からの信号を選択するための第1の切換制御信号56が第1のPCCPCHスイッチ回路40に供給された後、第1の方向性結合器18から、高周波SCH信号66が出力されるまでの時間を測定する。
一方、第2の遅延検出回路84は、SCHスイッチ回路38の第2の端子52からの信号を選択するための第2の切換制御信号58が第2のPCCPCHスイッチ回路42に供給された後、第2の方向性結合器20から、高周波SCH信号68が出力されるまでの時間を測定する。
【0054】
したがって、第1の遅延検出回路82による測定結果が第1の送信部4における遅延時間を表し、第2の遅延検出回路84による測定結果が第2の送信部6における遅延時間を表している。そして、遅延時間制御手段としてのCPU14は、第1および第2の遅延検出回路82、84によ測定された遅延時間にもとづき、第1および第2の送信部4、6における遅延時間を一致させるべく第1および第2の遅延調整回路118、120を制御する。
よって、第2の実施の形態例においても、上記WCDMA無線基地局2の場合と同様の効果を得ることができる。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のWCDMA無線基地局では、まず上位装置制御手段が、制御信号を上位装置に出力して、SCH信号のみを含むベースバンド信号をTSTD回路に出力するよう指示し、このようなSCH信号のみを含むベースバンド信号がTSTD回路に供給されている状態で、遅延検出手段は、第1および第2の高周波回路により高周波信号に変換されたSCH信号にもとづいて第1および第2の送信部における信号の遅延時間または遅延時間の差を検出する。そして、遅延時間制御手段は、遅延検出手段による遅延時間または遅延時間の差の検出結果にもとづき、第1および第2の送信部における信号の遅延時間を一致させるべく第1および第2の遅延調整回路を制御する。
したがって、本発明のWCDMA無線基地局では、送信部における遅延時間の調整を、送信機テスターや高周波用オシロスコープなどの高価な測定器を用いることなく行え、さらに作業者が測定や調整を行う必要もない。すなわち、送信ダイバーシチ構成に係わる信号遅延時間の調整を低コストで、かつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるWCDMA無線基地局の一例を示すブロック図である。
【図2】図1のWCDMA無線基地局を構成するTSTD回路を詳しく示すブロック図である。
【図3】図1の遅延検出回路の構成を示すブロック図である。
【図4】実施の形態例のWCDMA無線基地局の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】遅延検出回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】実施の形態例のWCDMA無線基地局の動作を示すフローチャートである。
【図7】第2の実施の形態例を示すブロック図である。
【図8】従来のTSTD方式のWCDMA無線基地局装置の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
2……WCDMA無線基地局、4……第1の送信部、6……第2の送信部、8……第1の出力端子、10……第2の出力端子、12……メモリー、14……CPU、16……制御信号、18……第1の方向性結合器、20……第2の方向性結合器、22……合成器、24……遅延検出回路、26……遅延検出手段、28……出力端子、30……出力端子、32……検波回路、34……基準発振器、36……カウンタ回路、38……SCHスイッチ回路、40……第1のPCCPCHスイッチ回路、42……第2のPCCPCHスイッチ回路、44……第1の合成器、46……第2の合成器、48……切換制御信号、50……第1の端子、52……第2の端子、54……PCCPCH信号、56……第1の切換制御信号、58……第2の切換制御信号、60……他のCH信号、62……フレーム、64……タイムスロット、66……高周波SCH信号、68……高周波SCH信号、70……合成SCH信号、72……復調後の合成SCH信号、74……エッジ、76……エッジ、78……クロックパルス、80……WCDMA無線基地局、82……第1の遅延検出回路、84……第2の遅延検出回路、102……WCDMA無線基地局、104……TSTD回路、106……第1の送信部、108……第2の送信部、110……第1のアンテナ、112……第2のアンテナ、114……第1のベースバンド信号、116……第2のベースバンド信号、118……第1の遅延調整回路、120……第2の遅延調整回路、122……第1の高周波回路、124……第2の高周波回路、126……第1の遅延制御信号、128……第2の遅延制御信号、130……出力端子、132……出力端子。
Claims (6)
- TSTD回路ならびに第1および第2の送信部を含み、前記TSTD回路は、上位装置からのベースバンド信号を第1および第2の出力端子を通じて出力する際に、前記ベースバンド信号に含まれるTSTD方式に係わるSCH信号については前記第1および第2の出力端子から交互に出力し、前記第1の送信部は、前記TSTD回路の前記第1の出力端子からの前記ベースバンド信号を遅延させる第1の遅延調整回路と、前記第1の遅延調整回路により遅延した前記ベースバンド信号を高周波信号に変換するとともに同高周波信号を電力増幅して第1のアンテナに供給する第1の高周波回路とを含み、前記第2の送信部は、前記TSTD回路の前記第2の出力端子からの前記ベースバンド信号を遅延させる第2の遅延調整回路と、前記第2の遅延調整回路により遅延した前記ベースバンド信号を高周波信号に変換するとともに同高周波信号を電力増幅して第2のアンテナに供給する第2の高周波回路とを含む、TSTD方式のWCDMA無線基地局であって、
前記SCH信号のみを含む前記ベースバンド信号を前記TSTD回路に出力するよう指示する制御信号を前記上位装置に出力する上位装置制御手段と、
前記上位装置制御手段が前記制御信号を出力した後、前記第1および第2の高周波回路により高周波信号に変換された前記SCH信号にもとづいて前記第1および第2の送信部における信号の遅延時間または遅延時間の差を検出する遅延検出手段と、
前記遅延検出手段による遅延時間または遅延時間の差の検出結果にもとづき、前記第1および第2の送信部における信号の遅延時間を一致させるべく前記第1および第2の遅延調整回路の遅延時間を制御する遅延時間制御手段とを含むことを特徴とするWCDMA無線基地局。 - 前記遅延検出手段は、
前記第1および第2の高周波回路と前記第1および第2のアンテナとの間にそれぞれ設けられ、前記第1および第2の高周波回路の出力信号を第1の出力端子を通じて前記第1および第2のアンテナにそれぞれ供給するとともに、第2の出力端子を通じて出力する第1および第2の方向性結合器と、
前記第1および第2の方向性結合器が前記第2の出力端子を通じて出力した信号を合成する合成器と、
前記合成器の出力信号において連続する2つの前記SCH信号の時間間隔を検出し前記遅延時間の差の検出結果として前記遅延時間制御手段に出力する遅延検出回路とを含むことを特徴とする請求項1記載のWCDMA無線基地局。 - 前記遅延検出回路は、
前記合成器が出力する高周波信号から前記SCH信号を復調する検波回路と、
クロックパルスを生成する基準発振器と、
前記検波回路がSCH信号を出力し次にSCH信号を出力するまでの間、または前記検波回路がSCH信号の出力を終了し次のSCH信号の出力を終了するまでの間、前記基準発振器が生成したクロックパルスを計数して、計数結果を前記遅延時間の差の検出結果として出力するカウンタ回路とを含むことを特徴とする請求項2記載のWCDMA無線基地局。 - 前記遅延時間制御手段は、前記第1の高周波回路により高周波信号に変換された前記SCH信号の遅延時間が、前記第2の高周波回路により高周波信号に変換された前記SCH信号の遅延時間より長い場合には、前記第1の遅延調整回路の遅延時間を基準にした前記第1および第2の遅延調整回路の遅延時間差が長くなるように前記第1および第2の遅延調整回路のいずれか一方または両方を制御し、前記第2の高周波回路により高周波信号に変換された前記SCH信号の遅延時間が前記第1の高周波回路により高周波信号に変換された前記SCH信号の遅延時間より長い場合には、前記第1の遅延調整回路の遅延時間を基準にした前記第1および第2の遅延調整回路の遅延時間差が短くなるように前記第1および第2の遅延調整回路のいずれか一方または両方を制御することを特徴とする請求項1記載のWCDMA無線基地局。
- 前記第1および第2の遅延調整回路はそれぞれシフトレジスターを含んで構成されていることを特徴とする請求項1記載のWCDMA無線基地局。
- 前記TSTD回路は、
前記ベースバンド信号から抽出された前記SCH信号を入力信号として同入力信号を切換制御信号にもとづき第1および第2の端子のいずれかから出力するSCHスイッチ回路と、
前記ベースバンド信号から抽出されたPCCPCH信号および前記SCHスイッチ回路の前記第1の端子から出力された前記SCH信号を入力信号としてこれら2つの入力信号のいずれかを第1の切換制御信号にもとづき選択して前記第1の送信部に出力する第1のPCCPCHスイッチ回路と、
前記ベースバンド信号から抽出された前記PCCPCH信号および前記SCHスイッチ回路の前記第2の端子から出力された前記SCH信号を入力信号としてこれら2つの入力信号のいずれかを第2の切換制御信号にもとづき選択して前記第2の送信部に出力する第2のPCCPCHスイッチ回路とを含み、
前記遅延検出手段は、
前記第1および第2の高周波回路と前記第1および第2のアンテナとの間にそれぞれ設けられ、第1および前記第2の高周波回路の出力信号を第1の出力端子を通じて前記第1および第2のアンテナにそれぞれ供給するとともに、第2の出力端子を通じて出力する第1および第2の方向性結合器と、
前記SCHスイッチ回路の前記第1の端子からの信号を選択するための前記第1の切換制御信号が前記第1のPCCPCHスイッチ回路に供給された後、前記第1の方向性結合器から、高周波信号に変換された前記SCH信号が出力されるまでの時間を測定する第1の遅延検出回路と、
前記SCHスイッチ回路の前記第2の端子からの信号を選択するための前記第2の切換制御信号が前記第2のPCCPCHスイッチ回路に供給された後、前記第2の方向性結合器から、高周波信号に変換された前記SCH信号が出力されるまでの時間を測定する第2の遅延検出回路とを含むことを特徴とする請求項1記載のWCDMA無線基地局。
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