JP3606916B2 - 極低温用タンクの防熱層構造 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、液化石油ガス(LPG)、液化天然ガス(LNG)、液化水素(LH2)、液化窒素(LN2)、液化酸素(LO2)、液化ヘリウム(LHe)などの極低温物質を貯蔵するための極低温用タンクにおいて、極低温用タンクの表面を被覆し、硬質ウレタン、フェノール樹脂などの合成樹脂発泡体からなり、その中間に網状の補強材を介装した極低温用タンクの防熱層構造に関するものである。本発明の対象とする極低温用タンクは球形や円筒形など曲率を有するもので、地上に設置されるものだけでなく、たとえば、船舶に搭載されるものも含む。
【0002】
【従来の技術】
この種の極低温用タンクでは、外気からのタンク内への熱の侵入を防止するため、その表面を防熱層で被覆する必要がある。この防熱層には、従来、特公昭54−1948号公報および実公昭59−7676号公報に記載のものがある。いずれも、硬質ポリウレタンやフェノール樹脂などの合成樹脂発泡体からなる内側防熱層部と外側防熱層部の間に網状の補強材を介装し、前記合成樹脂の発泡時の自己接着作用もしくは接着剤で接着して一体にした構造からなる。補強材は、主に外側防熱層部の低温割れを防止するために介装されている。またタンクはステンレスやアルミニウム合金で形成され、タンクの外周面上を被覆する防熱層は、タンクの周面に植設された多数の支持具(スタッドボルト等)によって支持され、とくにタンクの下半分で防熱層が落下するのを阻止している。それらの支持具は、通常、タンクと同質の材料であるステンレスやアルミニウム合金で形成されている。たとえばLNG船に搭載される大型の球形タンク(直径40m前後)の場合、内側防熱層部と外側防熱層部の厚みはそれぞれ100mm前後(この値は一例で要求防熱性能によって設計的に変更される得る)で、その境界層位置に介装される補強材には、線径0.9mm、網目密度(ピッチ)5mmの平織の金網が使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した公報に記載の従来の防熱層には、次のような点で改良の余地がある。すなわち、
(1) 上記したLNG船用の球形タンクの場合、タンクの材質がアルミニウム合金の場合には、タンクの線膨張係数が略(20×10-6)でLNGの温度が−162℃で、外気温度を38℃とすると、タンクと外気との温度差が200℃になる。一方、補強材としての金網の線膨張係数が略(10×10-6)で、金網の温度が略−62℃((−162℃+38℃)×1/2)であるから、外気との温度差が略100℃になる。したがってタンク内にLNGを貯蔵した状態では、タンクの熱収縮が金網の熱収縮よりもはるかに大きく(4倍前後)なるため、防熱層を連結する多数の支持具にタンク側へ防熱層を引き寄せようとする力が作用する。この引き寄せ力は、防熱層の自重の約20倍以上に達することがある。
【0004】
(2) LNGなどの極低温物質をタンクに注入した際に各支持具に作用する負荷(熱荷重)を低減するためには、支持具の本数を増やす必要があるが、支持具の増設は施工コストの増加をまねくのに加えて、支持具を経由して補強材へ逃げるタンクからの冷熱量(伝熱量)が増加することにより、防熱性能が低下する。
【0005】
(3) たとえば球形タンクの場合に、その直径をたとえば40mから20m前後に小型化(直径を半分に)しようとすると、曲率(1/R)が倍になるため、各支持具に作用する熱荷重も倍近くになる。したがって、支持具の本数を倍に増やしたり、支持具の強度を上げたりする必要がある。
【0006】
この発明は上述の点に鑑みなされたもので、LPGやLNGなどの極低温物質をタンク内に注入した際に常温から極低温に温度低下することにより生じる支持具の熱荷重を低減あるいはゼロにし、支持具の本数を減らして材料コスト並びに施工コストを下げ、支持具を経由して逃げる伝熱量を削減し、防熱性能を向上することができ、タンクの小型化にも十分に対応し得る極低温用タンクの防熱層構造を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明の防熱層構造は、1)極低温用タンクの表面を被覆し、硬質ウレタン、フェノール樹脂などの合成樹脂発泡体からなり、その中間に網状の補強材を介装するとともに、前記タンクの外周面には支持具を一定の間隔をあけて立設し該支持具の先端部にて前記補強材を貫通保持した極低温用タンクの防熱層構造において、2)前記補強材の熱収縮率{(線膨張係数(α N ))×(前記補強材の温度と外気温度との温度差(△T N ))}を、前記タンクの熱収縮率{(線膨張係数(α TK ))×(前記タンク内に貯蔵される極低温物質の温度と外気温度との温度差(△T TK ))}よりも大きくなるように設定したこと特徴とする。なお、前記補強材の熱収縮率(α N ×△T N )は、前記補強材の材質と同補強材の前記合成樹脂発泡体内における介装位置とによって決定される。
【0008】
たとえば請求項2記載のように、3)前記補強材の網目を構成する線材を、ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維)の撚り糸で構成するとともに、前記補強材の介装位置(前記合成樹脂発泡体の外表面からの深さ)を前記合成樹脂発泡体の厚みの1/2の位置又はこの位置よりも前記タンクの表面寄りにするとよい。
なお、上記請求項1又は2記載の防熱層構造において、前記補強材の網目を構成する線材(単線)の断面積と該網目密度(線材のピッチ)とで特定される補強材の等価板厚をteq、前記補強材の縦弾性係数をETとしたときに、前記補強材の面内引張剛性(ET×teq)が前記タンク表面上に前記防熱層を支持できるまで大きくなるように設定するとなおよい。とくに、補強材の縦弾性係数ETだけを大きくするのが望ましい。このように構成した防熱層構造によれば、極低温物質をタンクに貯蔵したときに補強材の面内引張剛性が増大し、タンク面に防熱層を押し付けようとする力が大きくなるから、支持具を省いても防熱層の自重を十分に支持できる。とくに補強材の等価板厚teqは増大させずに前記補強材の縦弾性係数ETだけを増大すると効果的である。これは、補強材の等価板厚teqが増大すると、施工上の理由、たとえば防熱層をタンク表面に施工する途中で落下防止のため仮取付する等の理由で、支持具を設ける場合において、その支持具を介して逃げる冷熱量が増え、防熱性能が低下するからである。
【0009】
請求項3記載のように、a)極低温用タンクの表面を被覆し、硬質ウレタン、フェノール樹脂などの合成樹脂発泡体からなり、その中間に網状の補強材を介装するとともに、前記タンクの外周面には支持具を一定の間隔をあけて立設し該支持具の先端部にて前記補強材を貫通保持した極低温用タンクの防熱層構造において、b)前記補強材を、線径0.1〜0.8mmで5〜30mmピッチのポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維)の撚り糸からなる平織の網で形成し、 c)前記補強材の熱収縮率{(線膨張係数(αN))×(前記補強材の温度と外気温度との温度差(△TN))}を、前記タンクの熱収縮率{(線膨張係数(αTK))×(前記タンク内に貯蔵される極低温物質の温度と外気温度との温度差(△TTK))}よりも大きくなるように設定することが好ましい。
【0010】
請求項4記載のように、d)前記補強材の介装位置(前記合成樹脂発泡体の外表面からの深さ)を、前記合成樹脂発泡体の厚みの1/2の位置又はこの位置よりも前記タンクの表面寄りにするとよい。
【0011】
【作用】
上記した構成を有する本発明の防熱層構造によれば、タンクの熱収縮率(αTK×△TTK)よりも、補強材の熱収縮率(αN×△TN)が大きくなるように、つまり、(αN×△TN)>(αTK×△TTK)が成り立つように前記補強材の材質と同補強材の前記合成樹脂発泡体内における介装位置とが決定されているから、LNGなどの極低温物質をタンクに貯蔵したときに、防熱層内の補強材の熱収縮がタンクの熱収縮よりも大きくなる。これにより、従来の防熱層構造と違って各支持具に作用する熱荷重が低減あるいはゼロになる。したがって、支持具の本数を減らしたり、たとえば球形タンクの場合には上半分の支持具が不要になったりする(タンクの下半分は、常温で防熱層自重をタンク側に支持するために必要)。
【0012】
請求項2記載の防熱層構造では、たとえばアルミニウム合金製タンクにLNGを貯蔵する場合に、補強材を防熱層の厚さ方向の1/2の位置に介装すると、ポリエステル繊維のうち、ポリエチレンテレフタレート繊維の場合には線膨張係数が80×10-6で、外気温度との差が100℃、タンク(アルミニウム合金)の線膨張係数が20×10-6で、外気温度との差が200℃であるから、(80×10-6×100)>(20×10-6×200)となり、請求項1の要件が成立する。
【0013】
請求項3記載の防熱層構造では、請求項1記載の防熱層構造と補強材の熱伝導性を小さくすることとの両者の長所を合わせ持ち、したがって、支持具の本数を減らしたり、たとえば球形タンクの場合には上半分の支持具が不要になったりするとともに、支持具と補強材を伝わって逃げる冷熱量も小さくなるため、防熱層の防熱性能が向上する。また、補強材をポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維)の撚り糸からなる平織の網にしたことにより、まず(80×10 -6 ×100)>(20×10 -6 ×200)となって請求項1の要件が充足されるうえに、網の線径0.1〜0.8mmで5〜30mmピッチとしたことにより、従来の金網に比べて等価板厚(t eq )および熱伝導率(λ)がそれぞれ小さくなって補強材の熱伝導性を小さくすることも同時に充足される。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の極低温用タンクの防熱層構造の実施例を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は本実施例の防熱層構造を備えた極低温用タンクの縦断面図、図2はタンクおよび防熱層の一部を切り欠いて示す部分拡大切断図、図3は図2のタンクおよび防熱層を拡大して示す縦断面図である。
【0017】
図1に示すように、タンク1は球形もしくは円筒形の曲率を有し、本例ではアルミニウム合金から形成されている。タンク1の外周面を被覆する防熱層2は、内側(タンク側)防熱層部2aと外側防熱層部2bとの2層積層構造からなり、両層部2a・2bの間に網状の補強材3を介装し、相互に防熱層を形成する合成樹脂を発泡成形するときの発泡時自己接着作用あるいは接着剤にて接着して一体化した構造からなる。内側防熱層部2aはガラス繊維、天然繊維、化学繊維などで強化された硬質ウレタン樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体などから選択されるが、本例では天然繊維強化のフェノール樹脂発泡体からなる。また、外側防熱層部2bは、硬質ウレタン樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体などから選択されるが、本例では硬質ウレタン樹脂発泡体からなる。さらに、両層2a・2bの厚さは、いずれも100mmにしている。
【0018】
図2・図3に示すように、タンク1の外周面には、支持具としてのアルミニウム合金製スタッドボルト4が一定の間隔(本例では、2本/m2)をあけて溶接等により植設されており、スタッドボルト4の先端部は補強材3を貫通し、ワッシャー5を挿通したうえナット6で補強材3を保持している。外側防熱層部2bのワッシャー5の位置に該当する部分は目地になっており、この目地に外側防熱層部2bと同質の合成樹脂発泡体2cが充填されている。また外側防熱層部2bの外表面には、エンボス成形されたアルミニウム合金板2dが装着されている。
【0019】
さて、本発明(請求項1)に対応する防熱層構造においては、次のような特徴的構成を備えている。すなわち、タンク1内にLNGなどの極低温物質を注入(貯蔵)したときに、タンク1の熱収縮よりも補強材3の熱収縮が大きくなるように設定している。タンク1内にたとえばLNGが注入されることにより、タンク1および防熱層2が冷却されるが、定常状態となったときの常温(外気温度)との冷却温度差(△T)は、図4の右側の線図に示すように、防熱層2の厚さ方向における表面からの深さ(d)にほぼ比例する。したがって、防熱層2内において補強材3が介装されている位置の表面からの深さが決まれば、補強材3の冷却温度差(△TN)が求められる。図4はタンク1とその防熱層2の部分断面図および冷却温度差(△T)と防熱層2の厚さ方向における表面からの深さ(d)の関係を示す線図である。
【0020】
また、タンク1の冷却温度差(△TTK)およびタンク1の線膨張率(αTK)がわかっているから、補強材の熱収縮率(αN×△TN)>タンクの熱収縮率(αTK×△TTK)となる、線膨張率(αN)を有する補強材3の材質を選択すればよい。補強材3を防熱層2の厚み方向の1/2の位置に介装する場合には、△TN=1/2×△TTKで、アルミニウム合金の線膨張率はαTN=20×10-6であるから、αN>40×10-6となる補強材3の材質を選択すればよい。これに該当するものに、ポリエチレンテレフタレート繊維(線膨張係数:80×10-6)製の網状補強材がある。なお、補強材3を介装する防熱層2内の位置(表面からの深さ)は深くしてタンク1の表面に近づければ近づけるほど、有利になることは言うまでもない。すなわち、補強材3の位置をタンク1の表面に近づけるほど、αN×△TN>αTK×△TTKを満たすαNの必要最小値が小さくなり、それだけ補強材3の材質の選択枝が増え、設計上の自由度(フレキシビリティー)が増すことになる。
【0021】
次に、本発明の他の実施例にかかる防熱層構造においては、次のような特徴的構成を備えている。すなわち、補強材3の面内圧縮剛性を、従来の補強材(0.9mm径の金網)に比べてかなり小さくしている。補強材3の面内圧縮剛性は補強材3の縦弾性係数(Ec)と補強材3の等価板厚(teq)の積になる。ここで等価板厚(teq)とは、網状の補強材3を一枚の薄い板に均等に引き伸ばしたと仮定したときの板厚をいう。同時に、補強材3の面内熱伝導性も、従来の補強材(0.9mm径の金網)に比べてかなり小さくしている。補強材3の面内熱伝導性は、補強材3の熱伝導率(λ)と補強材3の等価板厚(teq)の積になる。
【0022】
本例では、補強材3の網の線径を0.6mmに細くした3つの場合を示している。いずれも網目(メッシュ)密度(ピッチ)は5mmで従来のものと共通している。そして、材質は金網(鉄)、ステンレス鋼およびガラス繊維(グラスネット)である。結果は、図5に示すように、スタッドボルト4に作用する熱荷重およびタンク1から防熱層2の外表面に逃げる冷熱量のいずれも小さくなった。すなわち、
図5(a)は上記タンク1にLNGを貯蔵したときにスタッドボルト4に作用する熱荷重(F)と補強材3の面内圧縮剛性(Ec×teq)との関係を示す線図であり、図5(b)は上記タンク1にLNGを貯蔵したときに防熱層2の外表面からタンク1内に侵入する伝熱量(Q)と補強材3の面内熱伝導性(λ×teq)との関係を示す線図である。いずれの線図も
、補強材が0.9mm径の平織の金網(線材のピッチ5mm)の場合を指数100として現したものである。これらの結果から認められるように、補強材3の網目を構成する線材の径を0.6mmに縮小したことによって等価板厚(teq)が小さくなったから、材質に関係なく、図5(a)に示すようにスタッドボルト4に作用する熱荷重(F)が小さくなった。同時に、図5(b)に示すようにタンク1内に侵入する伝熱量(Q)も小さくなった。とくに、金網に比べて縦弾性係数(Ec)および熱伝導率(λ)のどちらも小さいガラス繊維(グラスネット)を使用することにより、図5(a)・図5(b)に示すように熱荷重(F)および伝熱量(Q)がさらに小さくなった。
【0023】
このように補強材3の線径を細くすること、あるいはピッチ(メッシュ密度)を広げることが効果的であるが、外側防熱層部2bの低温割れを防止するための補強材3の強度を考慮すると、線径は外側防熱層部2bの合成樹脂発泡体の比重、強度、強度のバラツキ度にもよるが、最小でも0.1mmが限度である。またメッシュ密度は、外側防熱層部2bの発泡体の上記に例示した強度特性との関係から、最大で20〜30mmが限度である。20〜30mmよりもメッシュ密度を広げると、外側防熱層部2bの低温割れを確実に防止できないおそれがあるからである。合成樹脂発泡体の強度は、本来大きくなく、しかも発泡条件や施工要領に影響され、発泡の均一性が保たれにくく、その結果として強度特性がバラツクものであるからである。
【0024】
とくに、上記のスタッドボルト4に作用する熱荷重(F)は、タンク1の曲率が大きくなるのに正比例して増加するから、タンク1を小型化するときはその防熱層2の構造において、スタッドボルト4並びに同近傍部構造の安全率確保のためにスタッドボルト4に作用する熱荷重を低減すべきであり、本発明を適用すると効果的である。
【0025】
最後に、本発明(請求項3)に対応する防熱層構造においては、次のような特徴的構成を備えている。すなわち、タンク1内に極低温物質を貯蔵したときに、タンク1の熱収縮よりも補強材3の熱収縮が大きくなるように設定したうえ、補強材3の面内熱伝導性も、従来の補強材(0.9mm径の金網)に比べてかなり小さくしている。本例では、補強材3にポリエチレンテレフタレート繊維製の網状補強材を選択し、その線径を0.6mmにした。補強材3の線膨張係数が(80×10-6)であるため、補強材3の熱収縮度がタンク1より大となり、補強材3の熱伝導率が(0.12kcal/mh℃)で、等価板厚(teq)が小となり、補強材3の上記した2つの要件である、(1)補強材の熱収縮率(αN×△TN)>タンクの熱収縮率(αTK×△TTK)、(2)補強材3の面内熱伝導性(λ×teq)を、従来の補強材(0.9mm径の金網)に比べてかなり小さくすることを充足するものとなった。
【0026】
ところで、上記実施例は単一の材質で補強材3を構成した場合の例であるが、下記のように実施することによって、αN、E(E c 又はE T )、λ、teqの物性値が当該防熱層の補強材として設計・施工性・コスト上において適したものとなる補強材を新たに作り上げ、これを採用することも可能である。すなわち、図6に示すように、
(a) 材質の異なる二種の材料によってそれぞれ形成した線材3a・3bを組み合わせて、補強材3を構成する(図6(a))。
【0027】
(b) 材質の異なる二種の材料によってそれぞれ形成した線材3a・3bを組み合わせる際に、メッシュ密度も変更して配列して、補強材3を構成する(図6(b))。
【0028】
(c) 材質の異なる二種の材料によって形成し、かつ材料の違いによって線径を変えた線材3a・3cを組み合わせて、補強材3を構成する(図6(c))。
【0029】
(d) 材質の異なる二種以上の材料によってそれぞれ糸材3e・3fを形成し、それらの糸材を組み合わせて単一の線材3dとして、補強材3を構成する(図6(d))。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明の極低温用タンクの防熱層構造には、次のような優れた効果がある。
【0031】
(1) 極低温物質をタンクに貯蔵したときに、防熱層内の補強材の熱収縮がタンクの熱収縮よりも大きくなるようにしたから、従来の防熱層構造と違って各支持具に作用する熱荷重が低減される。したがって支持具の本数を減らしたり、支持具を不要にしたりでき、支持具の本数を減らして材料コスト並びに施工コストを削減でき、また支持具を経由して逃げる伝熱量も低減されるから、防熱性能が向上する。また支持具の熱荷重が低減されるから、タンクの小型化にも十分対応できる。
【0032】
(2) 請求項2記載の防熱層構造では、上記した本発明が有効に達成される。
【0033】
(3) 請求項3記載の防熱層構造では、請求項1記載の防熱層構造と補強材の熱伝導性を小さくすることとの両者の効果が同時に発揮され、防熱層の防熱性能がより一層向上する。
【0034】
(4) 請求項4記載の防熱層構造では、請求項3の発明が有効に達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の防熱層構造を備えた極低温用タンクの縦断面図である。
【図2】タンクおよび防熱層の一部を切り欠いて示す部分拡大切断図である。
【図3】図2のタンクおよび防熱層を拡大して示す縦断面図である。
【図4】タンクとその断熱層の部分断面図および冷却温度差(△T)と防熱層の厚さ方向における表面からの深さ(d)の関係を示す線図である。
【図5】図5(a)はタンクにLNGを貯蔵したときにスタッドボルトに作用する熱荷重(F)と補強材の面内圧縮剛性(Ec×teq)との関係を示す線図であり、図5(b)はタンクにLNGを貯蔵したときに防熱層の外表面からタンク内に侵入する熱量(Q)と補強材の面内熱伝導性(λ×teq)との関係を示す線図である。
【図6】図6(a)〜図6(d)はそれぞれ本発明の異なる実施例を示す、補強材の線材の拡大断面図である。
【符号の説明】
1 タンク
2 防熱層(合成樹脂発泡体)
3 補強材
4 スタッドボルト(支持具)
Claims (4)
- 極低温用タンクの表面を被覆し、硬質ウレタン、フェノール樹脂などの合成樹脂発泡体からなり、その中間に網状の補強材を介装するとともに、前記タンクの外周面には支持具を一定の間隔をあけて立設し該支持具の先端部にて前記補強材を貫通保持した極低温用タンクの防熱層構造において、
前記補強材の熱収縮率{(線膨張係数(αN))×(前記補強材の温度と外気温度との温度差(△TN))}を、前記タンクの熱収縮率{(線膨張係数(αTK))×(前記タンク内に貯蔵される極低温物質の温度と外気温度との温度差(△TTK))}よりも大きくなるように設定したことを特徴とする極低温用タンクの防熱層構造。 - 前記補強材の網目を構成する線材を、ポリエステル繊維の撚り糸で構成するとともに、前記補強材の介装位置(前記合成樹脂発泡体の外表面からの深さ)を前記合成樹脂発泡体の厚みの1/2の位置又はこの位置よりも前記タンクの表面寄りにした請求項1記載の極低温用タンクの防熱層構造。
- 極低温用タンクの表面を被覆し、硬質ウレタン、フェノール樹脂などの合成樹脂発泡体からなり、その中間に網状の補強材を介装するとともに、前記タンクの外周面には支持具を一定の間隔をあけて立設し該支持具の先端部にて前記補強材を貫通保持した極低温用タンクの防熱層構造において、
前記補強材を、線径0.1〜0.8mmで5〜30mmピッチのポリエステル繊維の撚り糸からなる平織の網で形成し、
前記補強材の熱収縮率{(線膨張係数(αN))×(前記補強材の温度と外気温度との温度差(△TN))}を、前記タンクの熱収縮率{(線膨張係数(αTK))×(前記タンク内に貯蔵される極低温物質の温度と外気温度との温度差(△TTK))}よりも大きくなるように設定することを特徴とする極低温用タンクの防熱層構造。 - 前記補強材の介装位置(前記合成樹脂発泡体の外表面からの深さ)を、前記合成樹脂発泡体の厚みの1/2の位置又はこの位置よりも前記タンクの表面寄りにした請求項3記載の極低温用タンクの防熱層構造。
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