JP3605026B2 - タイヤ空気圧低下警報装置および方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はタイヤ空気圧低下警報装置および方法に関する。さらに詳しくは、車両の運転者にタイヤの減圧状態を適切に知らせ、安全運転をさせることができるタイヤ空気圧低下警報装置および方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、4輪の回転(車輪速)情報からタイヤの減圧を検出するタイヤ空気圧低下警報システム(DWS)がある。このシステムは、タイヤが減圧すると正常内圧のタイヤより外径(タイヤの動荷重半径)が減少するため、他の正常なタイヤに比べると回転速度や回転角速度が増加するという原理を用いている。たとえばタイヤの回転角速度の相対的な差から内圧低下を検出する方法(特開昭63−305011号公報参照)では、判定値DELとして、
DEL={(F1+F4)/2−(F2+F3)/2}/{(F1+F2+F3+F4)/4}×100(%)
を用いており、この判定値が事前に適切に調整されたしきい値をこえると内圧低下を運転手に知らせている。ここで、F1〜F4は、それぞれ前左タイヤ、前右タイヤ、後左タイヤおよび後右タイヤの回転角速度である。かかる方法では、正常な内圧より30%減圧していることが確実と思われるようにしきい値を調整しておけば、30%程度の内圧低下が発生すると、減圧の警報を運転手に知らせることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の方法では、タイヤの内圧が30%減圧したことを検知するように調整されている場合、30%減圧するまでは運転手に対して何の情報も与えていない。すなわち、従来では、設定されたしきい値をこえるまでは何の情報も与えないのである。したがって、徐々に減圧している場合や20%の減圧の場合の減圧状態を運転者に知らせることができれば、急に警報を発して運転手に動揺を与えることなく、より安全に走行させて、運転者にタイヤの修理をさせることができる。
【0004】
本発明は、叙上の事情に鑑み、車両の運転者にタイヤの減圧状態を適切に知らせて、安全運転をさせることができる空気圧低下警報装置および方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のタイヤ空気圧低下警報装置は、車両に装着したタイヤからえられる回転情報に基づいてタイヤの内圧低下を警報するタイヤ空気圧低下警報装置であって、前記各タイヤの回転情報を検知する回転情報検知手段と、前記各タイヤの回転情報を記憶する回転情報メモリ手段と、前記各タイヤの回転情報から判定値を演算する判定値演算処理手段と、前記判定値を記憶する判定値メモリ手段と、前記記憶された判定値から判定値の推移を演算する推移演算処理手段と、前記判定値から、タイヤの内圧低下を判定する判定手段と、前記判定値の推移に基づいて、判定値が内圧低下を判定する所定のしきい値をこえる方向にある場合、前記内圧低下による所定の警報を発する前に、予備警報を発する警報手段を備え、前記判定手段に、前記所定のしきい値より小さい第1予備警報しきい値と前記判定値が当該第1予備警報しきい値を連続してこえる所定の回数を表す第2予備警報しきい値を設定する回路が含まれ、前記判定値が前記第1予備警報しきい値以上である第1条件および前記判定値メモリ手段に蓄積される加算値が前記第1予備警報しきい値と前記第2予備警報しきい値との積以上である第2条件が含まれており、前記第1条件を満たす場合、判定値を前記判定値メモリ手段に加算し、前記第2条件を満たす場合、予備警報を発する命令を下す予備警報回路が前記警報手段に含まれてなることを特徴とする。
【0006】
また本発明のタイヤ空気圧低下警報方法は、車両に装着したタイヤからえられる回転情報に基づいてタイヤの内圧低下を警報するタイヤ空気圧低下警報方法であって、前記各タイヤの回転情報を検知する工程と、前記各タイヤの回転情報を記憶する工程と、前記各タイヤの回転情報から判定値を演算する工程と、前記判定値を記憶する工程と、前記記憶された判定値から判定値の推移を演算する工程と、前記判定値から、タイヤの内圧低下を判定する工程と、前記判定値の推移に基づいて、判定値が内圧低下を判定する所定のしきい値をこえる方向にある場合、前記内圧低下による所定の警報を発する前に、予備警報を発する工程を含み、前記予備警報を発するときに、前記所定のしきい値より小さい第1予備警報しきい値と前記判定値が当該第1予備警報しきい値を連続してこえる所定の回数を表す第2予備警報しきい値を用い、前記判定値が前記第1予備警報しきい値以上である第1条件、および蓄積される判定値の加算値が前記第1予備警報しきい値と前記第2予備警報しきい値との積以上である第2条件が設定されており、前記判定値が前記第1条件を満たす場合、該判定値を記憶および加算し、ついで当該加算値が前記第2条件を満たす場合、予備警報を発することを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて、本発明のタイヤ空気圧低下警報装置および方法を説明する。
【0008】
図1は本発明のタイヤ空気圧低下警報装置の一実施の形態を示すブロック図、図2は図1におけるタイヤ空気圧低下警報装置の電気的構成を示すブロック図、図3は本発明の一実施の形態にかかわるフローチャート、図4は判定値の推移を示す図である。
【0009】
図1に示されるように、タイヤ空気圧低下警報装置は、4輪車両に備えられた4つのタイヤW1、W2、W3およびW4(W1は前左タイヤ、W2は前右タイヤ、W3は後左タイヤ、W4は後右タイヤである。以下、総称してWiという)の空気圧が低下しているか否かを検出するもので、前記タイヤWiにそれぞれ関連して設けられた通常の車輪速センサである回転情報検知手段1を備えている。この回転情報検知手段1としては、各タイヤの回転情報、たとえば回転数、回転速度または角速度などを検知することができるものであれば、とくに限定されるもではないが、電磁ピックアップなどを用いて回転パルスを発生させてパルスの数から車輪速度(回転速度)を測定する車輪速センサまたはダイナモのように回転を利用して発電を行ない、この電圧から車輪速度を測定するものを含む角速度センサなどを用いることができる。前記回転情報検知手段1の出力はABSなどの制御ユニット2に与えられる。
【0010】
この制御ユニット2には、空気圧が低下したタイヤWiを知らせるための液晶表示素子、プラズマ表示素子またはCRTなどで構成された警報手段である表示器3、および運転手によって操作することができる初期化スイッチ4が接続されている。
【0011】
前記制御ユニット2は、図2に示すように、外部装置との信号の受け渡しに必要なI/Oインターフェイス2aと、演算処理の中枢として機能するCPU2bと、該CPU2bの制御動作プログラムが格納されたROM2cと、前記CPU2bが制御動作を行なう際にデータなどが一時的に書き込まれたり、その書き込まれたデータなどが読み出されるRAM2dとから構成されている。
【0012】
本実施の形態では、前記各タイヤの回転情報を検知する回転情報検知手段と、前記各タイヤの回転情報を記憶する回転情報メモリ手段と、前記各タイヤの回転情報から判定値を演算する判定値演算処理手段と、前記判定値を記憶する、たとえば判定値メモリ手段である判定値蓄積用バッファと、前記記憶された判定値から判定値の推移を演算する推移演算処理手段と、前記判定値から、タイヤの内圧低下を判定する判定手段と、前記判定値の推移に基づいて、判定値が内圧低下を判定する所定のしきい値をこえる方向にある場合、前記内圧低下による所定の警報を発する前に、予備警報を発する警報手段を備えている。
【0013】
前記制御ユニット2が判定値メモリ手段、判定値蓄積用バッファ、判定値演算処理手段、推移演算処理手段および判定手段である。
【0014】
また本実施の形態では、前記判定手段に、前記所定のしきい値より小さい第1予備警報しきい値と前記判定値が当該第1予備警報しきい値を連続してこえる所定の回数を表す第2予備警報しきい値を設定する回路が含まれている。
【0015】
また前記判定手段に、判定値が第1予備警報しきい値以上である第1条件、および前記判定値メモリ手段に蓄積される加算値が第1予備警報しきい値と第2予備警報しきい値との積以上である第2条件が含まれており、前記第1条件を満たす場合、判定値を前記判定値メモリ手段に加算し、前記第2条件を満たす場合、予備警報を発する命令を下す予備警報回路が前記警報手段に含まれている。
【0016】
前記回転情報検知手段1では、タイヤWiの回転数に対応したパルス信号(以下、車輪速パルスという)が出力される。またCPU2bでは、回転情報検知手段1から出力された車輪速パルスに基づき、所定のサンプリング周期ΔT(sec)、たとえばΔT=1秒ごとに各タイヤWiの回転角速度Fiが算出される。
【0017】
ここで、タイヤWiは、規格内でのばらつき(初期差異)が含まれて製造されるため、各タイヤWiの有効転がり半径(一回転により進んだ距離を2πで割った値)は、すべてのタイヤWiがたとえ正常内圧であっても、同一とは限らない。そのため、各タイヤWiの回転角速度Fiはばらつくことになる。そこで、初期差異によるばらつきを打ち消すために補正した回転角速度F1iを算出する。具体的には、
F11=F1
F12=mF2
F13=F3
F14=nF4
と補正される。前記補正係数m、nは、たとえば車両が直線走行していることを条件として回転角速度Fiを算出し、この算出された回転角速度Fiに基づいて、m=F1/F2、n=F3/F4として得られる。
【0018】
そして、前記F1iに基づき、車両の速度Vをつぎの式により算出する。
V=(V1+V2+V3+V4)/4
ここで、Vi:タイヤの車輪速度(m/sce)
i:1=前左タイヤ、2=前右タイヤ、3=後左タイヤ、4=後右タイヤである。
【0019】
またタイヤWiの空気圧低下の検出のための減圧判定値(DEL)は、たとえば前輪タイヤと後輪タイヤとの2つの対角和の差を比較するものであって、対角線上にある一対の車輪からの信号の合計から対角線上にある他の一対の車輪からの信号の合計を引算し、その結果と2つの合計の平均値との比率として、つぎの式(1)から求められる。
【0020】
【数1】
【0021】
本実施の形態では、前記判定値を記憶および加算し、その判定値の推移が減圧のしきい値をこえる方向にある場合に予備警報を発する。
【0022】
すなわち図3に示されるように、走行中の判定値の演算から所定の減圧判定による警報までのあいだに、第1予備警報しきい値S1および第2予備警報しきい値S2を設定するとともに、つぎの第1条件および第2条件を設定する。
【0023】
第1条件:判定値が第1予備警報しきい値S1以上である。
第2条件:判定値蓄積用バッファの値(判定値の加算値)が、第1予備警報しきい値S1と第2予備警報しきい値S2の積(S1×S2)以上で
ある。
【0024】
ここで、各タイヤが正常空気圧である場合には、判定値はゼロとなるので、判定値の変動は大きく現れない。このため、前記第1予備警報しきい値S1としては、所定のしきい値Sより小さい値に設定する。また第1予備警報しきい値S1をこえる判定値が、どのくらい連続して算出されるかにより、タイヤの空気圧が減少する傾向にあると判定できるため、第2予備警報しきい値S2をこのときの度合として表すことにする。たとえば車輪速のサンプリング時間を5秒とすると、この5秒に一回の頻度で判定値が算出されるので、減圧していると思われる判定値、たとえば所定の減圧の判定値の約6/10が少なくとも一分(60秒)間連続して算出される場合を考えると、第2予備警報しきい値S2(度合)は、12(=60/5)に設定することができる。
【0025】
そして、図3に示されるように第1条件を満たす場合には、判定値蓄積用バッファに判定値を加算し、第1条件を満たさない場合には判定値蓄積用バッファをクリアする(ゼロにする)。引き続き減圧判定を繰り返す。
【0026】
ついで第2条件を満たした場合には、判定値の推移が減圧の所定のしきい値Sをこえる方向にあるとして、予備警報を発する。
【0027】
これにより、車両の運転手がタイヤの内圧低下に対処する機会を増やすことができるため、慌てることなく安全運転により、タイヤ修理工場などで空気を充填したり、タイヤ交換を行なうことができる。
【0028】
つぎに本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0029】
実施例
まず正常な空気圧(21.6×104Pa)にされたタイヤ(タイヤサイズ:115/65R15)が装着された、メルセデスベンツ Aクラス(A160)の車両を用意した。ついでタイヤの減圧判定にあたり、車輪速のサンプリング時間を5秒として、所定のしきい値Sを0.125、第1予備警報しきい値S1を0.08および第2予備警報しきい値S2を12に設定した。
【0030】
ついで右側前輪タイヤの内圧を一分間あたり104Pa(0.1bar)減圧させながら走行試験を行なった。
【0031】
その結果、図4に示されるような判定値の推移が得られた。本実施例では、判定値が第1予備警報しきい値0.08(S1)以上である場合、判定値を蓄積すとともに、当該判定値の加算値である予備警報判定値が第1予備警報しきい値0.08(S1)と第2予備警報しきい値12(S2)の積である0.96をこえたときに、タイヤが所定のしきい値Sをこえる方向にあると判断し、走行開始から374秒(6.23分)後に予備警報が発せられた。そして、前記所定のしきい値による通常の減圧警報は、さらにその後60秒後の434秒(7.23分)に発せられた。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、車両の運転者にタイヤの減圧状態を適切に知らせて、安全運転をさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のタイヤ空気圧低下警報装置の一実施の形態を示すブロック図である。
【図2】図1におけるタイヤ空気圧低下警報装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施の形態にかかわるフローチャートである。
【図4】判定値の推移を示す図である。
【符号の説明】
1 回転情報検知手段
2 制御ユニット
3 表示器
4 初期化スイッチ
Claims (2)
- 車両に装着したタイヤからえられる回転情報に基づいてタイヤの内圧低下を警報するタイヤ空気圧低下警報装置であって、前記各タイヤの回転情報を検知する回転情報検知手段と、前記各タイヤの回転情報を記憶する回転情報メモリ手段と、前記各タイヤの回転情報から判定値を演算する判定値演算処理手段と、前記判定値を記憶する判定値メモリ手段と、前記記憶された判定値から判定値の推移を演算する推移演算処理手段と、前記判定値から、タイヤの内圧低下を判定する判定手段と、前記判定値の推移に基づいて、判定値が内圧低下を判定する所定のしきい値をこえる方向にある場合、前記内圧低下による所定の警報を発する前に、予備警報を発する警報手段を備え、前記判定手段に、前記所定のしきい値より小さい第1予備警報しきい値と前記判定値が当該第1予備警報しきい値を連続してこえる所定の回数を表す第2予備警報しきい値を設定する回路が含まれ、前記判定値が前記第1予備警報しきい値以上である第1条件および前記判定値メモリ手段に蓄積される加算値が前記第1予備警報しきい値と前記第2予備警報しきい値との積以上である第2条件が含まれており、前記第1条件を満たす場合、判定値を前記判定値メモリ手段に加算し、前記第2条件を満たす場合、予備警報を発する命令を下す予備警報回路が前記警報手段に含まれてなるタイヤ空気圧低下警報装置。
- 車両に装着したタイヤからえられる回転情報に基づいてタイヤの内圧低下を警報するタイヤ空気圧低下警報方法であって、前記各タイヤの回転情報を検知する工程と、前記各タイヤの回転情報を記憶する工程と、前記各タイヤの回転情報から判定値を演算する工程と、前記判定値を記憶する工程と、前記記憶された判定値から判定値の推移を演算する工程と、前記判定値から、タイヤの内圧低下を判定する工程と、前記判定値の推移に基づいて、判定値が内圧低下を判定する所定のしきい値をこえる方向にある場合、前記内圧低下による所定の警報を発する前に、予備警報を発する工程を含み、前記予備警報を発するときに、前記所定のしきい値より小さい第1予備警報しきい値と前記判定値が当該第1予備警報しきい値を連続してこえる所定の回数を表す第2予備警報しきい値を用い、前記判定値が前記第1予備警報しきい値以上である第1条件、および蓄積される判定値の加算値が前記第1予備警報しきい値と前記第2予備警報しきい値との積以上である第2条件が設定されており、前記判定値が前記第1条件を満たす場合、該判定値を記憶および加算し、ついで当該加算値が前記第2条件を満たす場合、予備警報を発するタイヤ空気圧低下警報方法。
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