JP3604308B2 - ナノコンポジット磁石用原料合金、その粉末および製造方法、ならびにナノコンポジット磁石粉末および磁石の製造方法 - Google Patents

ナノコンポジット磁石用原料合金、その粉末および製造方法、ならびにナノコンポジット磁石粉末および磁石の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、FeB化合物の微結晶およびFe−R−B系化合物の微結晶が混在したナノコンポジット磁石の製造方法に関する。特に、ナノコンポジット磁石を製造するための原料合金およびその粉末、原料合金の製造方法、ならびにナノコンポジット磁石粉末やナノコンポジット磁石の製造方法に関する。また、本発明はナノコンポジット磁石を備えたモータにも関する。
【0002】
【従来の技術】
FeB/NdFe14B系ナノコンポジット磁石は、ソフト磁性相であるFeB微結晶とハード磁性相であるNdFe14B微結晶が均一に分布し、交換相互作用によって両者が磁気的に結合した磁石である。これらの微結晶はナノメートル(nm)オーダーのサイズを持ち、両微結晶相が複合化した組織(ナノコンポジット組織)を構成していることから、「ナノコンポジット磁石」と呼ばれている。
【0003】
ナノコンポジット磁石は、ソフト磁性相を含みながらも、ハード磁性相との磁気的結合によって優れた磁石特性を発揮することができる。また、Nd等の希土類元素を含まないソフト磁性相が存在する結果、全体として希土類元素の含有量が低く抑えられる。このことは、磁石の製造コストを低減し、磁石を安定に供給するうえでも好都合である。
【0004】
このようなナノコンポジット磁石は、溶融した原料合金を急冷し、それによっていったん非晶質化した後、熱処理によって微結晶を析出させるという方法を用いて製造される。
【0005】
非晶質状態の合金は片ロール法などのメルトスピニング技術を用いて作製されれるのが一般的である。メルトスピニング技術は、回転する冷却ロールの外周表面上に溶湯状原料合金を流下し、溶湯原料合金を冷却ロールと短時間だけ接触させることによって原料合金を急冷・凝固させるものである。この方法による場合、冷却速度の制御は冷却ロールの回転周速度を調節することによって行われる。
【0006】
凝固し、冷却ロールから離れた合金は、周速度方向に薄く且つ長く延びたリボン(薄帯)形状になる。この合金薄帯は破断機によって破砕され薄片化したのち、粉砕機によってより細かいサイズに粉砕されて粉末化される。
【0007】
その後、結晶化のための熱処理が行われる。この熱処理によって、FeB微結晶およびNdFe14B微結晶が生成され、両者は交換相互作用によって磁気的に結合することになる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
熱処理によってどのような金属組織を形成するかが磁石特性を向上させる上で重要である。しかし、この熱処理は制御性および再現性の観点で幾つかの問題点を有していた。すなわち、非晶質原料合金の結晶化反応で短時間に大きな熱が発生する結果、熱処理装置による合金温度の制御が困難であるという問題があった。特に、大量の原料合金粉末に対して熱処理を施そうとする場合、その温度制御が不能状態に陥りやすかったため、少量ずつの原料合金粉末に対してしか熱処理を施せなくなり、処理レート(単位時間あたりの粉末処理量)が低下してしまうという問題があった。このことは、磁石粉末の量産化にとって大きな支障となっていた。
【0009】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、結晶化反応熱を少なくし、それによって微細かつ均質な金属組織を持った磁石粉末を再現性良く効率的に製造するのに適したナノコンポジット磁石用原料合金(粉末)およびその製造方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、磁石性能に優れたナノコンポジット磁石粉末の製造方法およびナノコンポジット磁石の製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の更に他の目的は、このように優れた特性を持つナノコンポジット磁石を備えたモータを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明によるナノコンポジット磁石用原料合金は、一般式がFe100−x−y、Fe100−x−y−zCo、Fe100−x−y−u、またはFe100−x−y−z−uCoで表されるナノコンポジット磁石用原料合金であって、
RはPrおよびNdの一方または両方の元素を90原子%以上含有し、残部が他のランタン系列元素またはYの一種以上の元素を0%以上10%未満含有する希土類元素であり、MはAl、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびAgからなる群から選択された一種以上の元素であり、組成比x、y、zおよびuが、2≦x≦6、16≦y≦20、0.2≦z≦7、0.01≦u≦7
を満足し、しかも、X線回折におけるブラッグ反射ピークが0.179nm±0.005nmの結晶面間隔に相当する位置にある準安定相Zを含有し、前記ブラッグ反射ピークの強度がハローパターンの最高強度の5%以上200%未満であり、かつ、体心立方型Feの(110)ブラッグ散乱ピークの強度が前記ハローパターンの最高強度の5%未満である。
【0013】
本発明によるナノコンポジット磁石用原料合金粉末は、一般式がFe100−x−y、Fe100−x−y−zCo、Fe100−x−y−z−u、またはFe100−x−y−z−uCoで表されるナノコンポジット磁石用原料合金粉末であって、 RはPrおよびNdの一方または両方の元素を90原子%以上含有し、残部が他のランタン系列元素またはYの一種以上の元素を0%以上10%未満含有する希土類元素であり、MはAl、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびAgからなる群から選択された一種以上の元素であり、組成比x、y、zおよびuが、2≦x≦6、16≦y≦20、0.2≦z≦7、0.01≦u≦7を満足し、しかも、X線回折におけるブラッグ反射ピークが0.179nm±0.005nmの結晶面間隔に相当する位置にある準安定相Zを含有し、前記ブラッグ反射ピークの強度がハローパターンの最高強度の5%以上200%未満であり、かつ、体心立方型Feの(110)ブラッグ散乱ピークの強度が前記ハローパターンの最高強度の5%未満である。
【0014】
ナノコンポジット磁石用原料合金の製造方法は、一般式がFe100−x−y、Fe100−x−y−zCo、Fe100−x−y−u、またはFe100−x−y−z−uCoで表されるナノコンポジット磁石用原料合金であって、RはPrおよびNdの一方または両方の元素を90原子%以上含有し、残部が他のランタン系列元素またはYの一種以上の元素を0%以上10%未満含有する希土類元素であり、MはAl、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびAgからなる群から選択された一種以上の元素であり、組成比x、y、zおよびuが、2≦x≦6、16≦y≦20、0.2≦z≦7、および0.01≦u≦7を満足するナノコンポジット磁石用原料合金を製造する方法において、前記原料合金の溶湯を形成する工程と、前記溶湯を急冷凝固させる工程とを包含し、前記急冷凝固工程に際して前記合金の冷却速度を調整することによって、X線回折におけるブラッグ反射ピークが0.179nm±0.005nmの結晶面間隔に相当する位置にある準安定相Zを凝固後の原料合金が含有し、しかも、前記ブラッグ反射ピークの強度がハローパターンの最高強度の5%以上200%未満であり、かつ、体心立方型Feの(110)ブラッグ散乱ピークの強度が前記ハローパターンの最高強度の5%未満にする。
【0015】
前記急冷凝固された原料合金から粉末を作製する工程を更に包含していてもよい。
【0016】
前記急冷凝固工程において、前記合金の冷却速度を5×10〜5×10K/秒とし、急冷前の合金の温度Tmから400〜800℃だけ低い温度に合金の温度を低下させることが好ましい。
【0017】
本発明によるナノコンポジット磁石粉末の製造方法は、一般式がFe100−x−y、Fe100−x−y−zCo、Fe100−x−y−u、またはFe100−x−y−z−uCoで表されるナノコンポジット磁石用合金であって、RはPrおよびNdの一方または両方の元素を90原子%以上含有し、残部が他のランタン系列元素またはYの一種以上の元素を0%以上10%未満含有する希土類元素であり、MはAl、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびAgからなる群から選択された一種以上の元素であり、組成比x、y、zおよびuが、2≦x≦6、16≦y≦20、0.2≦z≦7、および0.01≦u≦7を満足し、しかも、X線回折におけるブラッグ反射ピークが0.179nm±0.005nmの結晶面間隔に相当する位置にある準安定相Zを含有し、前記ブラッグ反射ピークの強度がハローパターンの最高強度の5%以上200%未満であり、かつ、体心立方型Feの(110)ブラッグ散乱ピークの強度が前記ハローパターンの最高強度の5%未満であるナノコンポジット磁石用原料合金の粉末を用意する工程と、前記ナノコンポジット磁石用原料合金の粉末に対して熱処理を施し、それによって、FeB化合物およびFe−R−B系化合物の結晶化を実行する工程とを包含する。
【0018】
前記ナノコンポジット磁石用原料合金の粉末を用意する工程は、前記原料合金の溶湯を形成する工程と、前記溶湯を急冷凝固させる工程と、前記急冷凝固された原料合金を破砕する工程と、前記原料合金を粉砕する工程とを包含し、前記急冷凝固工程において、前記合金の冷却速度を5×10〜5×10K/秒とし、急冷前の合金の温度Tmから400〜800℃だけ低い温度に合金の温度を低下させることが好ましい。
【0019】
本発明によるナノコンポジット磁石の製造方法は、一般式がFe100−x−y、Fe100−x−y−zCo、Fe100−x−y−u、またはFe100−x−y−z−uCoで表されるナノコンポジット磁石用合金であって、RはPrおよびNdの一方または両方の元素を90原子%以上含有し、残部が他のランタン系列元素またはYの一種以上の元素を0%以上10%未満含有する希土類元素であり、MはAl、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびAgからなる群から選択された一種以上の元素であり、組成比x、y、zおよびuが、2≦x≦6、16≦y≦20、0.2≦z≦7.0、0.01≦u≦7を満足し、しかも、X線回折におけるブラッグ反射ピークが0.179nm±0.005nmの結晶面間隔に相当する位置にある準安定相Zを含有し、前記ブラッグ反射ピークの強度がハローパターンの最高強度の5%以上200%未満であり、かつ、体心立方型Feの(110)ブラッグ散乱ピークの強度が前記ハローパターンの最高強度の5%未満であるナノコンポジット磁石用原料合金の粉末を用意する工程と、前記ナノコンポジット磁石用原料合金の粉末に対して熱処理を施し、それによって、FeB化合物およびFe−R−B系化合物の結晶化を実行する工程と、前記熱処理後の原料合金の粉末を用いて成形体を形成する工程とを包含する。
【0020】
前記ナノコンポジット磁石用原料合金の粉末を用意する工程は、前記原料合金の溶湯を形成する工程と、前記溶湯を急冷凝固させる工程と、前記急冷凝固された原料合金を破砕する工程と、前記原料合金を粉砕する工程とを包含し、前記急冷凝固工程において、前記合金の冷却速度を5×10〜5×10K/秒とし、急冷前の合金の温度Tmから400〜800℃だけ低い温度に合金の温度を低下させることが好ましい。
【0021】
好ましい実施形態では、前記成形体を形成する工程は、前記熱処理後の原料合金の粉末を用いてボンド磁石を作製する工程を含む。
【0022】
本発明によるモータは、上記ナノコンポジット磁石の製造方法によって製造されたナノコンポジット磁石を備えている。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明では、一般式がFe100−x−y、Fe100−x−y−zCo、Fe100−x−y−u、またはFe100−x−y−z−uCoの何れかで表されるナノコンポジット磁石用合金の溶湯を作製した後、その合金溶湯を急冷して凝固する。
【0024】
ここで、RはPrおよびNdの一方または両方の元素を90原子%以上含有し、残部が他のランタン系列元素またはYの一種以上の元素を0%以上10%未満含有する希土類元素であり、MはAl、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、CU、Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびAgからなる群から選択された一種以上の元素である。組成比x、y、zおよびuは、2≦x≦6、16≦y≦20、0.2≦z≦7、および0.01≦u≦7を満足する。これらの組成限定理由については後述する。
【0025】
本発明者は、合金溶湯の冷却凝固に際して、その冷却速度を5×10〜5×10K/秒とすることが好ましいことを見いだした。また、このような冷却速度にて冷却凝固した合金およびその粉末は、次に述べるような金属ガラス状態にあることがわかった。すなわち、粉末X線回折におけるブラッグ散乱ピークが0.179nm±0.005nmの結晶面間隔に相当する位置にある準安定相Zを含有し、ブラッグ反射ピークの強度がハローパターンの最高強度の5%以上200%未満であり、かつ、体心立方型Feの(110)ブラッグ散乱ピークの強度が前記ハローパターンの最高強度の5%未満である。
【0026】
このような原料合金またはその粉末に対して熱処理を施すと、それによって、FeB微結晶およびR−Fe−B系微結晶の結晶化が生じ、優れた磁石特性を持ったナノコンポジット磁石構造が発現することになる。
【0027】
本発明の原料合金は、結晶化のための熱処理を受ける前において金属ガラス構造を有しており、長距離の周期的秩序性を示していないことが粉末X線回折から確認されている。本願発明者の実験によれば、合金溶湯の冷却速度を前述のようにして調節することによって、上記準安定相Zを含む金属ガラス状合金を形成することができ、その後の熱処理によって極めて優れた磁気特性が発揮されることになる。
【0028】
本発明の金属ガラス合金を用いて製造した磁石が磁石特性に優れる第1の理由は、上述の金属ガラス状態にある合金中において、FeB等の結晶成長に必要な微小前駆体(エンブリオ)が高密度で分散しているためと考えられる。そのため、熱処理を行うと、合金中に存在する多数の前駆体が示す短距離秩序を核として結晶成長が進行し、その結果、微細かつ均質な結晶組織が形成されることになる。またFeBの結晶化が極短範囲の原子拡散によって進行するため、その結晶化を比較的低い温度で達成することが可能になるという利点もある。
【0029】
FeBの結晶化は590〜600℃の温度で生じる。この結晶化の進展に伴って、Nd等の希土類元素がFeBの周囲の非晶質領域にはき出され、その部分の組成がNdFe14Bに近づく。その結果、NdFe14Bは複雑な構造を持つ三元化合物であるにもかかわらず、長距離の原子拡散を必要とすることなく、結晶化する。NdFe14Bが結晶化する温度は、FeBの結晶化が完了する温度よりも約20〜90℃だけ高く、約610〜690℃である。
【0030】
このように本発明による原料合金では、FeBの結晶化とNdFe14Bの結晶化とを異なる温度範囲で別々に実行できるため、結晶化に伴う大きな反応熱が短時間に生じることがなく、20nm程度の微細な金属組織を再現性良く生成することができる。このことは、合金結晶化のための熱処理工程を制御する上で重要である。すなわち、大きな反応熱を伴い結晶化が一挙に進展してしまうと、合金の温度を所定範囲内に制御することができなくなるからである。
【0031】
準安定相Zは、その実際の構造がまだ確認されていないが、X線回折で特定位置に急峻な回折線ピークを持つため、その存在を定量的に把握することができる。準安定相Zは、0.179nm±0.005nmの結晶面間隔に相当する位置に鋭いブラッグ散乱ピークを示し、また、0.417nm±0.005nmの結晶面間隔および0.267nm±0.005nmの結晶面間隔に相当する位置にも、ほぼ同レベルのブラッグ散乱ピークを示す。また、これらに加えて0.134nm±0.005nmにもブラッグピークを示すことがある。
【0032】
急冷凝固後に合金中に存在した準安定相Zは、磁石化のための熱処理によって熱分解して最終的には準安定相FeBを生成するものと考えられる。この過程は、FeBの不均一核の生成が最も頻繁に生じる温度よりも低い温度であって、比較的に広い範囲の温度で進行すると考えられる。
【0033】
準安定相Zは急冷凝固時の冷却速度が比較的に小さい場合に凝固薄帯の表面付近に形成され、冷却速度が従来の急冷凝固方法の場合のように大きい場合には生成されない特徴を有している。本発明では、準安定相Zを適切な量だけ生成するように冷却速度を調整している。すなわち、本発明では、適切な冷却速度を決定する場合の指標として、準安定相Zの存在を利用している。合金の組成を変更したり、冷却装置を変更した場合でも、準安定相Zの生成量を基に冷却速度を設定しなおせば、本発明の原料合金として最適な状態のものが簡単に得られる。なお、準安定相Z自体が微結晶化にとって大きな役割を果たしているか否かは不明である。ただ、準安定相Zがある割合で形成されるように急冷条件を制御すれば、その後の熱処理で高い磁気特性が得られることがわかっている。
【0034】
以下、冷却速度が所定範囲から外れた場合に何が生じるかを説明する。
【0035】
まず、冷却速度が速すぎる場合を説明する。
【0036】
冷却速度が速すぎると、合金はほぼ完全な非晶質状態になる。その場合、FeBの不均一核が生成するサイトの数が極めて少ないため、あとの熱処理でFeBの結晶粒が大きく成長することになる。その結果、微細な結晶組織を形成できず、保磁力などが低下し、優れた磁気特性が発揮されなくなる。
【0037】
このように冷却速度が速すぎる場合、準安定相Zの生成が抑制される。その存在比率をX線回折におけるブラッグ散乱ピークの強度で評価すると、準安定相Zによるブラッグ散乱ピーク強度はハローパターンの最高強度の5%未満になり、ほとんど観察されないレベルにある。この場合、FeB結晶化のための核を発生するために大きな駆動力が必要となり、結晶化反応温度が高温側に移動する。しかも、その場合いったん結晶化反応が開始すると、結晶化反応が爆発的に進行するため、短時間に大量の熱が発生して原料合金温度が高くなる。その結果、原子拡散が高速で生じるレベルにまで原料合金温度が上昇して反応工程の制御性を失い、粗大な金属組織しか得られなくなってしまう。
【0038】
上記結晶化のための熱処理を連続熱処理法を用いて行う場合、単位時間あたりの原料合金粉末供給量を低く抑え、結晶化反応熱が熱拡散によって周囲に逸散できるようにする必要がある。連続熱処理法に代えてバッチ処理法による場合も、同様の理由から、原料合金粉末の処理量を大きく制限する必要がある。
【0039】
次に、冷却速度が遅すぎる場合を説明する。
【0040】
冷却速度が遅すぎると、周期的規則性が長範囲にわたって形成される。多くの場合、安定相であるFeが結晶化してしまう。このように冷却速度が遅すぎると、結晶相のブラッグ反射ピークの強度がハローパターンの上に重なって観察されるようになる。体心立方型Feの最強線である(110)ブラッグ散乱ピークが面間隔0.203nmの位置に観測され、その強度がハローパターンの最高強度の5%以上となった場合、「冷却速度は遅すぎる」と判断できる。Feは生成時点では高温相のガンマ鉄である可能性があるが、室温では体心立方鉄に変態している。
【0041】
最後に、Feの結晶核が生成する程には冷却速度が遅くないが、好ましい冷却速度には達していない場合を説明する。この場合、結晶核エンブリオが既に大きな組織に成長してしまっているため、あとの熱処理工程で微細な結晶組織を形成することができなくなる。この場合の合金は準安定相Zを多く含んでおり、粉末X線回折によると、準安定相Zのブラッグ反射ピークの強度が極めて高くなり、ハローパターンの最高強度の200%を超える。
【0042】
このように準安定相Zの比率が非常に大きな状態の原料合金は、あとの熱処理によって粗大な金属組織しか生成することができなくなる。その理由は、FeBの核発生サイトが減少するとともに、平衡相であるFeの結晶粒成長が優先的に生じるからである。熱処理後の金属組織が粗大化すると、FeBやFeの磁化方向とNdFe14Bの磁化方向との間の交換相互作用を介した磁気的結合が不充分となる。その結果、本来のナノコンポジット磁石が持つ高い磁気特性を発現させられなくなる。
【0043】
本発明によるナノコンポジット磁石用原料合金の特質を整理すると、下記の通りになる。
【0044】
1.FeBの結晶化が極短範囲の原子拡散で進行するため、FeBの結晶化が比較的低温で開始する。その結果、結晶化反応速度が過度に速くなることはない。
【0045】
2.FeBの結晶化核が高密度で分散し、かつ熱平衡相が粗大に結晶化しないため、微細な結晶化金属組織を形成することができる。
【0046】
3.大きな結晶化反応熱を伴うことなく、結晶化を制御性良く実行させることができるようになる。その結果、磁石特性を劣化させることなく、熱処理工程での原料粉末処理量を増大させることができる。
【0047】
4.FeBの結晶化に必要な結晶核が原料合金中に高密度で存在するため、磁石化熱処理によって微細かつ均一な金属組織を形成することができる。このことは、高い磁石特性の発現を可能にする。
【0048】
冷却速度を5×10〜5×10K/秒にするには、回転する冷却ロールの外周表面に溶湯を接触させて急速に抜熱し、溶湯の一部を高速凝固させるとともに、高速凝固によってできた合金薄帯を速やかに溶湯から引き離すことが必要である。そうすることによって溶湯から合金薄帯への熱の流入を遮断し、さらに抜熱することができる。これにより、合金薄帯中で結晶化相変態あるいは過度の構造緩和が起こることを阻止できる。なお、適度の構造緩和は準安定相の生成のために必要である。
【0049】
このような高速凝固を工業的かつ定常的に安定した状態で行うには、回転しているロールに対して一定量の溶湯を供給することが必要である。そのためには、溶湯の供給源とロール表面との間に溶湯の溜まり(リザーバーとして働く)を安定的に形成させることが好ましい。このような溶湯の溜まりは、例えば融点以上に加熱したノズルオリフィスを通して一定範囲内の圧力で溶湯を整流化して噴射すれば形成できる(第1の急冷凝固方法)。こうして形成した溶湯の溜まりは、通常、「パドル」または「フット」と称される。
【0050】
溶湯の溜まりを形成する方法は他にもある。例えば、回転する冷却ロールの外周近傍に耐火物を配置し、耐火物とロール表面との間に上方(ロール表面の移動方向)に開放された空間を形成する。この空間内に溶湯を注いで湯だまりを生成することによってロール外周面に溶湯を接触させ、回転するロール外周面上に溶湯の急冷凝固物を生成せしめる。この凝固物をロール外周面と共に上方に移動させて湯だまりから引き上げる方法によっても達成される(第2の急冷凝固方法)。
【0051】
次に、第3の急冷凝固方法を説明する。まず、一対のロールを外周面が対抗するようにして設置し、両ロール間に狭い隙間を設定する。この隙間をロール側面から挟み込むようにして耐火物壁を配置し、これらによって上方に解放された空間を形成する。この隙間空間内に定常的に溶湯を注ぎ、回転するロール表面に溶湯を接触させることによって急冷凝固物を生成する。このとき、ロール間の隙間部分でロール表面が下方に向かうようにロールを回転させ、ロール間の隙間から下方に向けて急冷凝固物を排出する。第3の急冷凝固方法では、数対の回転ロールを更に下方に設け、多段で抜熱することも可能である。
【0052】
上記の各急冷方法に対し、溶湯溜まりの生成を必要としない方法もある。それは、回転するロールに向かって溶湯の噴霧流をぶつけ、急速に凝固させる方法(第4の急冷凝固方法)である。しかしながら、このような方法では、ロール表面にたたきつけられる溶湯液滴の体積及び速度に依存して冷却速度が変化してしまう。しかも、溶湯液滴の体積及び速度は数倍〜数十倍の範囲で分布するため、前述した第1〜第3の急冷凝固方法に比べて冷却速度の分布範囲が広くなる傾向がある。その結果、操業条件の設定を経験的に決める必要がある。
【0053】
なお、上記の急冷凝固方法では、何れの場合でもロール内部に水などを流すことによってロール自体を冷却し、ロール外周面の温度を一定値に保持することが好ましい。
【0054】
本発明では、急冷前の合金温度(溶湯温度)Tmから400〜800℃だけ低い温度に合金の温度を低下させる。上述の回転ロールを用いる何れの方法においても、溶湯の溜まりとロール外周面との接触長さは工学的観点からある一定値以上にすることが困難である。すなわち、第1の急冷凝固方法の場合、溶湯溜まりの大きさを成る一定範囲以上にすると、溶湯溜まりの生成状態が不安定となり、定常状態を維持できなくなる。第2の急冷凝固方法では、溶湯溜まりのための空間を設けているため、この上限値は幾らか緩和されるが、ロールと溶湯との接触長さが長くなると、凝固物に溶湯からの熱の流入が継続されるため、凝固物の構造に変化が生じるようになる。これらの観点から、工業的操業においては接触長さを約5mm以上50mm以下にすることが好ましい。
【0055】
ロール表面の移動速度は、上記接触長さを規定する接触領域内において所望の冷却速度を達成するように調整される。好ましいロール表面の移動速度は、第1の急冷凝固方法の場合6〜20m/秒程度であり、第2の急冷凝固方法の場合2〜8m/秒程度である。したがって、接触長さが10mm、表面速度が6m/秒の場合、1200℃から800℃まで冷却すれば、2.4×10K/秒の冷却速度が得られることになる。
【0056】
冷却条件及び溶湯とロールとの接触長さから要求される最低のロール表面速度は、例えば接触長さ5mmの場合、1200℃から800℃までの幅400Kの温度区間を最低冷却速度5×10K/秒で冷却する条件に相当する。接触時間は400K÷5×10K/秒から8m/秒であることが要求されるので、最低ロール表面速度は5mm÷8m/秒から約0.63m/秒となる。一方、最高のロール周速度は、例えば接触長さ50mmで1200℃から400℃までの幅800Kの温度区間を5×10K/秒で冷却することに相当し、同様にして、312.5m/秒となる。
【0057】
ロール表面速度が遅いと、溶湯供給レート変動の影響を受けやすくなるため望ましくない。また、ロール表面速度が速すぎると、溶湯溜まりを攪乱して定常状態の維持が困難になるうえ、ロールが高速回転による遠心力に耐えるように機械強度を高める必要が生じるため、好ましくない。従って、上述のように、安定した工業的操業を実現するためには、第1の急冷方法では通常6〜20m/秒程度、第2の急冷方法では2〜8m/秒程度が好ましい。
【0058】
冷却速度5×10〜5×10K/秒で上述の方法により得られた合金の厚さは、通常70〜300μm程度の範囲内にある。急冷凝固における凝固界面の移動速度は溶湯とロール表面との伝熱係数により変化するが、本合金系では50mm/秒〜100mm/秒の程度である。従って、合金薄帯の厚さは、例えば接触長が10mmで表面速度6m/秒で1200℃から800℃まで冷却すれば、接触時間が0.167m/秒であるから、約80μm〜170μmである。
【0059】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0060】
[原料合金およびその粉末の製造方法]
本実施形態では、図1(a)および(b)に示す装置を用いて原料合金を製造する。酸化しやすい希土類元素を含む原料合金の酸化を防ぐため、不活性ガス雰囲気中で合金製造工程を実行する。不活性ガスとしては、ヘリウムまたはアルゴン等の希ガスを用いることが好ましい。窒素は希土類元素と反応しやすいため、不活性ガスとして用いることは好ましくない。
【0061】
図1の装置は、真空または不活性ガス雰囲気を保持し、その圧力を調整することが可能な原料合金の溶解室1および急冷室2を備えている。
【0062】
溶解室1は、所望の磁石合金組成になるように配合された原料20を高温にて溶解する溶解炉3と、底部に出湯ノズル5を有する貯湯容器4と、大気の進入を抑制しつつ配合原料を溶解炉3内に供給するための配合原料供給装置8とを備えている。貯湯容器4は原料合金の溶湯21を貯え、その出湯温度を所定のレベルに維持できる加熱装置(不図示)を有している。
【0063】
急冷室2は、出湯ノズル5から出た溶湯21を急冷凝固するための回転冷却ロール7と、これによって急冷凝固された原料合金を急冷室2内で破砕する破断機10とを備えている。この装置によれば、溶解、出湯、急冷凝固、破断等を連続かつ平行して実行することができる。このような装置は、例えば特開平8−277403号公報に詳しく記載されている。
【0064】
この装置においては、溶解室1および急冷室2内の雰囲気およびその圧力が所定の範囲に制御される。そのために、雰囲気ガス供給口1b、2b、8b、および9bとガス排気口1a、2a、8a、および9aとが装置の適切な箇所に設けられている。
【0065】
溶解炉3は傾動可能であり、ロート6を介して溶湯21を貯湯容器4内に適宜注ぎ込む。溶湯21は貯湯容器4内において不図示の加熱装置によって加熱される。
【0066】
貯湯容器4の出湯ノズル5は、溶解室1と急冷室2との隔壁に配置され、貯湯容器4内の溶湯21を下方に位置する冷却ロール7の表面に流下させる。出湯ノズル5のオリフィス径は、例えば0.5〜2.0mmである。溶湯21の粘性が大きい場合、溶湯21は出湯ノズル5内を流れにくくなるが、溶解室1と急冷室2との間に適当な大きさの圧力差を形成することによって、溶湯21の出湯をスムーズに実行するこができる。
【0067】
冷却ロール7の表面は例えばクロムめっき層で覆われており、冷却ロール7の直径は例えば300〜500mmである。冷却ロール7内に設けた水冷装置の水冷能力は、単位時間あたりの凝固潜熱と出湯量とに応じて算出し、調節される。
【0068】
本装置によれば、例えば合計20kgの原料合金を20〜40分間で急冷凝固させることができる。こうして形成した合金は、破断前においては、厚さ:70〜150μm、幅:1.5〜6mmの合金薄帯(合金リボン)22であるが、破断装置10によって長さ2〜150mm程度の合金薄片23に破砕されたのち、回収機構部9によって回収される。図示している装置例では、回収機構部9に圧縮機11を備え付けており、それによって薄片23を圧縮することができる。
【0069】
次に、図1の装置を用いた原料合金の製造方法を説明する。
【0070】
まず、一般式がFe100−x−y、Fe100−x−y−zCo、Fe100−x−y−u、またはFe100−x−y−z−uCoの何れかで表されるナノコンポジット磁石用合金の溶湯21を作製し、溶解室1の貯湯容器4に貯える。ここで、R、M、組成比x、y、zおよびuの範囲などは、前述した通りである。
【0071】
次に、この溶湯21は出湯ノズル5から水冷ロール7上に出湯され、水冷ロール7との接触によって急冷され、凝固する。急冷凝固方法としては、冷却速度の高精度の制御が可能な方法を用いる必要があり、本実施形態では液体急冷法の一つである片ロール法を用いている。急冷凝固のためには、この他にガスアトマイズ法を用いることも可能であるが、この方法によれば冷却速度が粉末粒径に大きく依存して変化し、適切な冷却速度を経た粉末粒子の収率を高められないため、本発明には不適当である。
【0072】
本実施形態では、溶湯21の冷却凝固に際して、冷却速度を5×10〜5×10K/秒とする。この冷却速度で合金の温度を△T1だけ低い温度に低下させる。急冷前の合金溶湯21の温度は融点Tmに近い温度(例えば1200〜1300℃)にあるため、合金の温度は冷却ロール7上でTmから(Tm−△T1)にまで低下する。本願発明者の実験によれば、最終的な磁石特性を向上させるという観点から△T1は400〜800℃の範囲内にあることが好ましい。
【0073】
合金の溶湯21が冷却ロール7によって冷却される時間は、回転する冷却ロール7の外周表面ら合金が接触してから離れるまでの時間に相当し、本実施形態の場合は0.5〜2ミリ秒である。その間に、合金の温度は低下し、凝固する。その後、凝固した合金は冷却ロール7から離れ、不活性雰囲気中を飛行する。合金は薄帯状で飛行している間に雰囲気ガスに熱を奪われる結果、その温度は(Tm−△T1−△T2)に低下する。△T2は、装置のサイズや雰囲気ガスの圧力によって変化するが、約100℃またはそれ以上である。
【0074】
本実施形態では、合金薄帯22の温度が(Tm−△T1−△T2)になった段階で装置内で速やかに破砕工程を実行し、その場で合金薄片23を作製する。そのため、(Tm−△T1−△T2)が合金のガラス化温度Tgよりも低くなるように(△T1+△T2)の大きさを調整することが好ましい。もし、(Tm−△T1−△T2)≧Tgであれば、合金が軟化した状態にあり、その破断が困難になるからである。凝固合金の破断・粉砕工程を他の装置で別途実行する場合は、合金温度が室温程度に低下するため、(△T1+△T2)の大きさを考慮する必要はない。
【0075】
なお、急冷室2内の絶対圧力は、2〜30kPaの範囲内に設定することが好ましく、3〜10kPaの範囲内に設定することが更に好ましい。このような減圧状態で溶湯21を冷却ローラ7上に流下すれば、溶湯21とローラ7の表面との間に雰囲気ガスがまき込まれるおそれがなくなり、溶湯21の冷却速度を従来より低くしても、冷却状態が均一化され、表面形状の優れた合金薄帯22が得られるからである。これに対して、常圧雰囲気中において、本実施形態のように遅い周速度で回転する冷却ローラ上に溶湯21を流下すると、合金薄帯22の表面形状が劣化してしまうおそれがある。
【0076】
また、本実施形態のように、急冷凝固工程に引き続いて破砕装置による凝固合金の破砕工程を速やかに実行すれば、長い合金リボンとして冷却ロールから吐き出された急冷合金を比較的に狭い空間内でコンパクトに回収することができる。急冷凝固装置と破砕装置とを別構成にすると、いったん急冷合金を長い薄帯として、かさばった状態で収納する必要が生じる。
【0077】
破断装置によって破砕された合金薄片を公知の機械的粉砕装置によって更に粉砕すれば、熱処理工程やその後の成形工程に適した大きさの合金粉末を作製することができる。本実施形態では、パワーミル装置で約850μm以下となるまで合金の粗粉砕を行った後、ピンディスクミル装置によって粒度が約150μm以下となるまで粉砕する。
【0078】
[ナノコンポジット磁石粉末の製造方法]
以下に、図2を参照しながら、上記原料合金粉末に対して行う熱処理方法を説明する。
【0079】
図2は、フープベルトを用いた粉末焼成炉装置を示している。この装置は、本体28によって回転可能に支持された回転ロール24および25と、それらの回転ロール24および25の回転によって一方向に所定速度で駆動されるフープベルト26とを備えている。原料合金の粉末はフープベルト26上の原料フィード位置Aに供給され、図中左方に運搬される。フープベルト26上に供給された粉末は、摺切板27によって均され、それによって粉末の高さが一定レベル以下(例えば高さ2〜4mm)に調整される。その後、粉末は金属チューブに囲まれた加熱ゾーンに入り、そこで微結晶化のための熱処理を受ける。加熱ゾーン(例えば長さ1100mm)内には、例えば3ゾーンにわけて不図示のヒータが配置されている(1ゾーンの長さは例えば300mm)。粉末は加熱ゾーン内を移動しながら、熱処理を受けることになる。加熱ゾーンの後段には、例えば長さ800mmの冷却ゾーンCが存在し、粉末は水冷された金属筒内を通過することによって冷却される。冷却された粉末は、回転ローラ25の左下方で不図示の回収装置によって回収される。
【0080】
この熱処理装置によれば、与えられた加熱ゾーンの長さに対して、フープベルト26の移動速度を調整することによって熱処理工程を制御することができる。
【0081】
熱処理工程としては、例えば、昇温レート100〜150℃/分にて熱処理温度590〜700℃にまで上昇させ、その状態を5〜15分程度のあいだ保持すればよい。その後、合金温度を降温レート100〜150℃/分にて室温レベルまで低下させる。
【0082】
なお、熱処理の処理粉末量を増大させるには、フープベルト26の幅を広くし、フープベルト26の単位長さ当たりの粉末供給量を大きくする一方、加熱ゾーンの長さを長くし、回転ローラ24および25の回転周速度を早くすればよい。本発明による合金粉末によれば、熱処理に際して急激に大きな結晶化反応熱が生成されないため、熱処理工程における合金粉末の温度制御が容易である。その結果、粉末供給量を増加しても、安定した磁気特性を持つ磁石粉末を作製できる。
【0083】
上記熱処理装置による熱処理を受けた原料粉末は、前述したように微結晶化し、ナノコンポジット磁石としての特性を発揮できるようになる。こうして、熱処理前においては金属ガラス状態にあり、硬質磁性材料としての特性を示さなかった原料合金粉末が、熱処理によって磁気特性に優れたナノコンポジット磁石合金粉末に変化する。
【0084】
[磁石の製造方法]
以下に、上記ナノコンポジット磁石合金粉末から磁石を製造する方法を説明する。
【0085】
まず、前述のようにして得られたナノコンポジット磁石合金粉末にエポキシ樹脂からなるバインダーと添加剤とを加え、混練することによってコンパウンドを作製する。次に、コンパウドの所望形状の成形空間を持つ成形装置によってプレス成形した後、加熱硬化工程、洗浄工程、コーティング工程、検査工程、着磁工程を経て、最終的なボンド磁石を得ることができる。
【0086】
成形加工は、上述の圧縮成形に限定されるわけではなく、公知の押出成形、射出成形、または圧延成形によってもよい。磁石粉末は、採用する成形法の種類に応じてブラスチック樹脂やゴムと混練されることになる。
【0087】
なお、射出成形による場合、樹脂として広く使用されているポリイミド(ナイロン)の他、PPSのように高軟化点樹脂を使用することができる。これは、本発明の磁石粉末が低希土類合金から形成されているため、酸化されにくく、比較的に高い温度で射出成形を行っても磁石特性が劣化しないからである。
【0088】
また、本発明の磁石は酸化されにくいため、最終的な磁石表面を樹脂膜でコートする必要もない。従って、例えば、複雑な形状のスロットを持つ部品のスロット内に射出成形によって本発明の磁石粉末および溶融樹脂を圧入し、それによって複雑な形状の磁石を一体的に備えた部品を製造することも可能である。
【0089】
[モータ]
次に、このようにして製造した磁石を備えたモータの実施形態を説明する。
【0090】
本実施形態のモータは、IPM(Inner Permanent Magnet)型モータであり、前述の製造方法によって作製したボンド磁石を一体型ロータのスプリング磁石として用いる。
【0091】
なお、本発明の磁石は、この種のモータ以外にも、他の種類のモータやアクチュエータに好適に用いられることは言うまでもない。
【0092】
以下に、本発明の実施例および比較例を説明する。
【0093】
[第1の実施例]
本実施例では、絶対圧力が30kPa以下のアルゴン雰囲気中で前述の急冷凝固工程を行った。冷却ロールとしては、厚さ5〜15μmのクロムめっき層で覆われた銅合金製ロール(直径:350mm)を用いた。その銅合金製ロールを10m/秒の周速度で回転しながら、その外周表面上に原料合金の溶湯を流下し、急冷凝固させた。溶湯の温度は輻射温度計で測定したところ、1300℃であった。溶湯は、オリフィスから毎秒10〜20gのレートで直径1.3〜1.5mmにして落下させた。
【0094】
表1に各実施例についての溶湯の組成、およびハローパターンの最高強度に対する準安定相Zのブラッグ反射強度の比(%)を示す。表1からわかるように、何れの実施例についても「ブラッグ反射強度の比」が5〜200%の範囲内にあった。なお、表1において、例えば「R」の欄に記載されている「Nd2.5+Pr1」という表記は、希土類元素RとしてNdとPrとを含み、それぞれの組成比が2.5原子%および1原子%であることを意味している。
【0095】
図3(a)は、番号2の実施例に関する粉末X線回折パターンを示している。図3(a)からわかるように、背景をなすハローパターンが2θ=約43°において最高強度を示す一方、20=51.4°において急峻な強度ピークが観察される。この急峻な強度ピークは、0.179nm±0.005nmの結晶面間隔に相当する位置に現れたブラッグ散乱ピークである。このブラッグ散乱ピークは、準安定相Zによるものである。他に、0.417nm±0.005nmの結晶面間隔、および0.267nm±0.005nmの結晶面間隔に相当する位置にも、準安定相Zによる回折線が観測される。
【0096】
なお、上記の粉末X線回折パターンの観測は、測定装置としてリガクRINT2000を用い、試料とCuターゲットとの間にモノクロメータを設置して実行した。
【0097】
本実施例の原料合金を850μm以下の粒径を持つ粉末に粉砕した後、図2の粉体焼成炉(試験用:長さ2m)で原料合金粉末に熱処理を施した。原料合金粉末は加熱ゾーンを10分間で通過した後、冷却ゾーンCを10分間で通過した。熱処理雰囲気はアルゴンガスであり、単位面積あたり0.6g/cmの搭載密度で原料合金粉末を供給した。単位時間あたりの処理量を3kgとした場合の磁気特性と最適熱処理温度とを表2に示す。
【0098】
[比較例1]
表3に示す組成を有する溶湯を用いて、実施例と同様のプロセスを実行した。
【0099】
実施例との相違点は溶湯の冷却速度にあり、この比較例では、ロール周速度を20m/秒とした。他の条件は、実施例の条件と実質的に同一である。表3から、ハローパターンの最高強度に対する準安定相Zのブラッグ反射強度の比(%)が5%未満であることがわかる。
【0100】
図3(b)は、番号2の実施例に関する粉末X線回折パターンを示している。図3(b)からわかるように、準安定相Zによるブラッグ散乱ピークが明瞭には観測されなかった。
【0101】
本比較例に関する最適熱処理温度および熱処理後の磁気特性を表4に示す。熱処理装置および方法は実施例の場合と同一である。表4から、保磁力が実施例に比較して低く、磁石特性が劣っていることがわかる。この原因は、熱処理の制御性がわるく、望ましい結晶成長が実現していないためである。
【0102】
実施例の磁石特性と同等の磁石特性を発現させるには、熱処理時の粉末処理量を1時間あたり0.7kgに低下させる必要があった。比較例の場合、熱処理の制御性が低下しているため、合金粉末の量を少なくして処理しない限り、所望の金属組織を持った磁石合金を得ることができない。このことは、比較例は磁石化のための熱処理工程でスループットが劣っており、量産に向いていないことを示している。
【0103】
[比較例2]
表5に示す組成を有する溶湯を用いて、実施例と同様のプロセスを実行した。
【0104】
実施例との相違点は冷却速度および溶湯の流下量にある。この比較例では、ロール周速度を5m/秒とし、毎秒20〜30gのレートで溶湯を落下させた。熱処理時の粉末処理量は、1時間あたり3kgとした。他の条件は、実施例の条件と実質的に同一である。
【0105】
表5には、ハローパターンの最高強度に対する準安定相Zのブラッグ反射強度の比(%)と、体心立方型Feの(110)ブラッグ散乱ピークの強度の比(%)が示されている。表5からわかるように、冷却速度が遅すぎると、ハローパターンの最高強度に対する準安定相Zのブラッグ反射強度の比(%)は200%を超えている。
【0106】
図4は、番号2の実施例に関する粉末X線回折パターンを示している。図4からわかるように、準安定相Zによるブラッグ散乱ピークは顕著に観測されるが、ハローパターンの強度が著しく低下している。
【0107】
本比較例について、熱処理後の磁気特性と最適熱処理温度とを表5に示す。熱処理装置および方法は実施例の場合と同一である。表6から、保磁力が実施例に比較して低く、磁石特性が劣っていることがわかる。
【0108】
熱処理時の粉末処理量を変化させても、実施例の磁石特性と同等の磁石特性を発現させることはできなかった。このことから、冷却速度が遅すぎると、好ましいナノコンポジット組成を得ることはできなくなることがわかる。
【0109】
[第2の実施例]
以下、前述した第2の方法による実施例を説明する。
【0110】
本実施例では、図1の装置において、ノズルオリフィスと回転ロールの相対位置を変更した。より詳細には、冷却ロール7の中心を基準にして斜め45度上方から樋を介して溶湯を傾注し、樋とロール外周面とで囲まれる上方解放の空間(幅10mm)内で溶湯の深さが5mm〜8mmとなるように制御しながら溶湯を急冷凝固した。なお、本実施例で使用した原料合金の組成は、表1および表3に記載されたものと同一である。
【0111】
ロール表面と接触して凝固した合金薄帯は、ロール7の回転に伴って上方に引き出され、ロール7の頂上を過ぎた付近でロール7から剥がれて下方に落下した。その後、合金薄帯は滑り台を介して粉砕機に導入され、粉砕された。このときのロール周速度は5m/秒であった。溶湯温度は湯だまりの位置で1200℃〜1280℃であり、冷却時の雰囲気圧力は40kPa〜50kPaであった。合金薄帯の温度は、波長帯域3〜5μmの赤外線強度を測定し、鉄の黒体輻射を仮定してステファン・ボルツマン分布から推定した。こうして得た合金薄帯の推定温度は、湯だまりから引き出された直後に既に約800℃〜900℃まで低下していた。また、得られた合金薄帯の厚さは100μm〜170μmであった。凝固時の冷却速度は、溶湯とロールの接触長さが湯の深さの1.4倍(1/cos45度)として、1.3×106K/秒〜3.4×106K/秒と見積もられた。
【0112】
溶湯は湯だまりから引き上げられた後、さらに速やかに抜熱されるため、ロール7から剥離する時点での合金薄帯温度は400〜500℃に低下していた。本実施例で使用した装置のロール径は350mmであったため、溶湯がロールに接触してから離れるまでの時間はロールが1/8回転する時間に相当し、約20m秒であった。従って、溶湯のロール上での平均の冷却速度は3.6×104K/秒〜4.5×104K/秒であったと見積もられる。
【0113】
これらの合金のガラス化遷移温度は、非晶質合金を20℃/分で加熱する条件で熱分析を行い、FeBの結晶化温度(約590〜600℃)以下でガラス遷移が観察される場合でもせいぜい約550℃〜580℃である。一方、そのような熱分析でガラス遷移が観測されない場合は、ガラス化遷移温度は結晶化温度以上であることになる。本実施例の場合、合金薄帯がロール7から離れる時点における合金薄帯温度が400〜500℃であったため、合金薄帯はガラス化遷移温度以下に急冷されてからロール7を離れたことがわかる。
【0114】
このようにして得られた合金薄帯をX線回折装置によりCu−Kα線を用いて測定した結果、図5に示す回折パターンが得られた。この回折パターンにある回折線は、図中に示したようにFe23相として指数付けできるものであることが分かった。
【0115】
この原料を図2に示した評価用熱処理炉を用いて3kg/hの供給量で熱処理したところ、それぞれ表7に示す熱処理温度(炉の設定温度)において表7に示す磁石特性が得られた。同一組成の合金について、0.7kg/hの供給量で熱処理した比較例1と本実施例とを比べると、本実施例の磁気特性が相対的に高いことがわかる。言いかえると、本実施例の熱処理工程はスループットが高い。なお、表7の最左欄の番号は、表1および表3に示されている番号に対応しており、同じ番号は同一組成の原料合金を示している。
【0116】
[第3の実施例]
以下、前述した第3の方法による実施例を説明する。
【0117】
ロール径150mmの一対の炭素鋼製急冷ロールをロール間距離が160μmとなるようにして相対配置し、ロール間の隙間位置においてロール表面が下方に移動するようにロールを同一速度で互いに逆方向に回転させた。本実施例でも、ロール表面速度を5m/秒とした。ロール側面に耐火物フェルトを介して耐火物の堰を作り、溶湯が側面方向へ漏れないようにした。このようにして上方から石英ノズルオリフィスを通して溶湯をロール間隙間に向かって流下させ、ロール間の隙間空間内に湯だまりを形成した。湯だまりの幅(ロール間隔と平行方向)に基づいて推定した湯だまり深さは約10mmであった。溶湯はロール間の隙間から下方に引き出され、連続した急冷合金薄帯が形成された。急冷前の溶湯温度は1300℃、合金薄帯温度はロール直下で約800℃であった。従って、平均冷却速度は約2.5×10K/秒と見積もられた。本実施例では、薄帯をさらに冷却アルゴンガス流により抜熱し、薄帯温度を500℃以下にまで低下させた。
【0118】
この合金を図2に示した評価用熱処理炉を用いて3kg/時間の供給量で熱処理したところ、それぞれ表8に示す最適熱処理温度(炉の設定温度)において表8に示す磁石特性が得られた。同一組成の合金について、0.7kg/時間の供給量で熱処理した比較例1と本実施例とを比べると、本実施例の磁気特性が相対的に高いことがわかる。言いかえると、本実施例の熱処理工程はスループットが高い。
【0119】
【表1】
Figure 0003604308
【0120】
【表2】
Figure 0003604308
【0121】
【表3】
Figure 0003604308
【0122】
【表4】
Figure 0003604308
【0123】
【表5】
Figure 0003604308
【0124】
【表6】
Figure 0003604308
【0125】
【表7】
Figure 0003604308
【0126】
【表8】
Figure 0003604308
【0127】
[組成限定理由]
最後に、合金組成の限定理由を説明する。
【0128】
希土類元素Rは、ハード磁性相であるRFe14Bに必須の元素である。本発明でのRは、PrおよびNdの一方または両方の元素を90原子%以上含有し、残部が他のランタン系列元素またはYの一種以上の元素を0%以上10%未満含有する。PrおよびNdの何れか一方の元素は、一軸結晶磁気異方性を持つRFe14Bを生成するために不可欠である。PrおよびNd以外の希土類元素は、適宜任意に選択される。Rの組成比は、2原子%を下回ると保磁力発生の効果が少なすぎるので好ましくない。一方、Rの組成比が6原子%を超えると、FeB相およびNdFe14B相が生成されず、α−Fe相が主相となってしまうため、保磁力が著しく低下してしまうことになる。以上のことから、Rの組成比xについては、2≦x≦6であることが好ましい。
【0129】
Bは、ソフト磁性相であるFeBおよびハード磁性相であるRFe14Bの両方にとって必須の元素である。Bの組成比yが16〜20原子%の範囲から外れると所要の保磁力が発揮されないため、Bの組成比yについては16≦y≦20であることが好ましい。更に、Bがこの組成範囲を外れると、融点が上昇し、溶解温度および貯湯容器の保温温度を高める必要が生じ、また、非晶質生成能も低下するので所望の急冷合金組織が得られにくくなる。
【0130】
Coは、キュリー温度を向上させることによって磁気特性の温度変化依存性を減少させ、その結果、磁気特性を安定化させるという機能を持つ。また、合金溶湯の粘性を改善するという機能もあり、溶湯流下レートの安定化にも寄与する。Coの添加割合が0.02原子%を下回ると上記機能が充分に発揮されず、7原子%を超えると磁化特性が低下し始める。Coの添加は、これらの機能を発揮させたい場合に行えば良く、本発明の効果を得る上でCoの添加が不可欠であるわけではない。Coを添加する場合は、上述の理由から、その組成比zについて0.2≦z≦7が成立することが好ましい。
【0131】
Mは、保磁力をできるだけ増加させたい場合などに添加する。Mの添加割合が0.01原子%を下回ると、保磁力増加が充分に観察されず、Mの添加割合が7原子%を超えると、磁化が低下する。従って、Mを添加する場合は、その組成比uについて、0.1≦z≦7が成立することが好ましい。Mの中で、Crは保磁力増加の他に耐食性向上の効果も発揮する。また、Cu、Au、Agは結晶化熱処理工程での適正温度範囲を拡大する効果がある。
【0132】
【発明の効果】
本発明によるナノコンポジット磁石用原料合金によれば、FeBの結晶化が極短範囲の原子拡散で進行するため、FeBの結晶化が比較的低温で可能となる。また、FeBの結晶化が進行する温度範囲がNdFe14Bの結晶化が進行する温度範囲からずれるため、熱処理時にそれぞれの結晶化が時間的に別々に起こる。このため、結晶化反応熱が広い温度範囲に分散し、大きな結晶化反応熱が一度に放出されることなく、微結晶化を制御性良く実行させることができるようになる。その結果、磁石特性を劣化させることなく、熱処理工程での原料粉末処理量を向上させることができる。
【0133】
また、FeBの結晶化に必要な結晶核が原料合金中に高密度で存在するため、磁石化熱処理によって微細かつ均一な金属組織を形成することができ、高い磁石特性の発現を可能にする。
【0134】
本発明のナノコンポジット磁石用原料合金の製造方法によれば、合金のX線回折におけるブラッグ反射ピークを指標として用いて、合金形成のための冷却過程を制御することが可能になる。このため、冷却速度を最適化することや、管理することが容易になり、磁石特性に優れたナノコンポジット磁石のための原料合金を安定して製造することができるようになる。
【0135】
本発明のナノコンポジット磁石粉末の製造方法によれば、磁石化熱処理によって微細かつ均一な金属組織を制御性よく形成することができるので、磁石特性に優れた磁石を高いスループットで提供することが可能になる。
【0136】
本発明のナノコンポジット磁石によれば、優れた磁石特性が発揮されるので、モータやアクチュエータなどの特性を低いコストで向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明によるナノコンポジット磁石用原料合金を製造する方法に用いる装置の全体構成例を示す断面図であり、(b)は急冷凝固が行われる部分の拡大図である。
【図2】本発明によるナノコンポジット磁石を製造する方法に用いる熱処理装置の例を示す断面図である。
【図3】(a)は第1の実施例のX線回折パターンを示すグラフであり、(b)は比較例1のX線回折パターンを示すグラフである。
【図4】比較例2のX線回折パターンを示すグラフである。
【図5】第2の実施例のX線回折パターンを示すグラフである。
【符号の説明】
1b、2b、8b、および9b 雰囲気ガス供給口
1a、2a、8a、および9a ガス排気口
1 溶解室
2 急冷室
3 溶解炉
4 貯湯容器
5 出湯ノズル
6 ロート
7 回転冷却ロール
10 破断機10
11 圧縮機
21 溶湯
22 合金薄帯
23 合金薄片
28 本体
24 回転ロール
25 回転ロール
26 フープベルト
27 摺切板

Claims (10)

  1. 一般式がFe100-x-yxy、Fe100-x-y-zxyCoz、Fe100-x-y-uxyu、またはFe100-x-y-z-uxyCozuで表されるナノコンポジット磁石用原料合金であって、
    RはPrおよびNdの一方または両方の元素を90原子%以上含有し、残部が他のランタン系列元素またはYの一種以上の元素を0%以上10%未満含有する希土類元素であり、
    MはAl、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびAgからなる群から選択された一種以上の元素であり、
    組成比x、y、zおよびuが、
    2≦x≦6、
    16≦y≦20、
    0.2≦z≦7、
    0.01≦u≦7
    を満足し、しかも、
    X線回折におけるブラッグ反射ピークが0.179nm±0.005nmの結晶面間隔に相当する位置にある準安定相Zを含有し、前記ブラッグ反射ピークの強度がハローパターンの最高強度の5%以上200%未満であり、かつ、
    体心立方型Feの(110)ブラッグ散乱ピークの強度が前記ハローパターンの最高強度の5%未満であるナノコンポジット磁石用原料合金。
  2. 一般式がFe100-x-yxy、Fe100-x-y-zxyCoz、Fe100-x-y-uxyu、またはFe100-x-y-z-uxyCozuで表されるナノコンポジット磁石用原料合金粉末であって、
    RはPrおよびNdの一方または両方の元素を90原子%以上含有し、残部が他のランタン系列元素またはYの一種以上の元素を0%以上10%未満含有する希土類元素であり、
    MはAl、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびAgからなる群から選択された一種以上の元素であり、
    組成比x、y、zおよびuが、
    2≦x≦6、
    16≦y≦20、
    0.2≦z≦7、
    0.01≦u≦7
    を満足し、しかも、
    X線回折におけるブラッグ反射ピークが0.179nm±0.005nmの結晶面間隔に相当する位置にある準安定相Zを含有し、前記ブラッグ反射ピークの強度がハローパターンの最高強度の5%以上200%未満であり、かつ、
    体心立方型Feの(110)ブラッグ散乱ピークの強度が前記ハローパターンの最高強度の5%未満であるナノコンポジット磁石用原料合金粉末。
  3. 一般式がFe100-x-yxy、Fe100-x-y-zxyCoz、Fe100-x-y-uxyu、またはFe100-x-y-z-uxyCozuで表されるナノコンポジット磁石用原料合金であって、RはPrおよびNdの一方または両方の元素を90原子%以上含有し、残部が他のランタン系列元素またはYの一種以上の元素を0%以上10%未満含有する希土類元素であり、MはAl、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびAgからなる群から選択された一種以上の元素であり、組成比x、y、zおよびuが、2≦x≦6、16≦y≦20、0.2≦z≦7、および0.01≦u≦7を満足するナノコンポジット磁石用原料合金を製造する方法において、
    前記原料合金の溶湯を形成する工程と、
    前記溶湯を急冷凝固させる工程と、
    を包含し、
    前記急冷凝固工程において、冷却速度を5×10 4 〜5×10 6 K/秒とし、急冷前の合金の温度Tmから400〜800℃だけ低い温度に合金の温度を低下させることによって、X線回折におけるブラッグ反射ピークが0.179nm±0.005nmの結晶面間隔に相当する位置にある準安定相Zを凝固後の原料合金が含有し、しかも、前記ブラッグ反射ピークの強度がハローパターンの最高強度の5%以上200%未満であり、かつ、体心立方型Feの(110)ブラッグ散乱ピークの強度が前記ハローパターンの最高強度の5%未満にすることを特徴とするナノコンポジット磁石用原料合金の製造方法。
  4. 前記急冷凝固された原料合金から粉末を作製する工程を更に包含する請求項3に記載のナノコンポジット磁石用原料合金の製造方法。
  5. 一般式がFe100-x-yxy、Fe100-x-y-zxyCoz、Fe100-x-y-uxyu、またはFe100-x-y-z-uxyCozuで表されるナノコンポジット磁石用合金であって、RはPrおよびNdの一方または両方の元素を90原子%以上含有し、残部が他のランタン系列元素またはYの一種以上の元素を0%以上10%未満含有する希土類元素であり、MはAl、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびAgからなる群から選択された一種以上の元素であり、組成比x、y、zおよびuが、2≦x≦6、16≦y≦20、0.2≦z≦7、および0.01≦u≦7を満足し、しかも、X線回折におけるブラッグ反射ピークが0.179nm±0.005nmの結晶面間隔に相当する位置にある準安定相Zを含有し、前記ブラッグ反射ピークの強度がハローパターンの最高強度の5%以上200%未満であり、かつ、体心立方型Feの(110)ブラッグ散乱ピークの強度が前記ハローパターンの最高強度の5%未満であるナノコンポジット磁石用原料合金の粉末を用意する工程と、
    前記ナノコンポジット磁石用原料合金の粉末に対して590〜700℃で5〜15分の熱処理を施し、それによって、Fe3B化合物およびFe−R−B系化合物の結晶化を実行する工程と、
    を包含するナノコンポジット磁石粉末の製造方法。
  6. 前記ナノコンポジット磁石用原料合金の粉末を用意する工程は、
    前記原料合金の溶湯を形成する工程と、
    前記溶湯を急冷凝固させる工程と、
    前記急冷凝固された原料合金を破砕する工程と、
    前記原料合金を粉砕する工程と、
    を包含し、
    前記急冷凝固工程において、前記合金の冷却速度を5×104〜5×106K/秒とし、急冷前の合金の温度Tmから400〜800℃だけ低い温度に合金の温度を低下させることを特徴とする請求項に記載のナノコンポジット磁石粉末の製造方法。
  7. 一般式がFe100-x-yxy、Fe100-x-y-zxyCoz、Fe100-x-y-uxyu、またはFe100-x-y-z-uxyCozuで表されるナノコンポジット磁石用合金であって、RはPrおよびNdの一方または両方の元素を90原子%以上含有し、残部が他のランタン系列元素またはYの一種以上の元素を0%以上10%未満含有する希土類元素であり、MはAl、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびAgからなる群から選択された一種以上の元素であり、組成比x、y、zおよびuが、2≦x≦6、16≦y≦20、0.2≦z≦7.0、0.01≦u≦7を満足し、しかも、X線回折におけるブラッグ反射ピークが0.179nm±0.005nmの結晶面間隔に相当する位置にある準安定相Zを含有し、前記ブラッグ反射ピークの強度がハローパターンの最高強度の5%以上200%未満であり、かつ、体心立方型Feの(110)ブラッグ散乱ピークの強度が前記ハローパターンの最高強度の5%未満であるナノコンポジット磁石用原料合金の粉末を用意する工程と、
    前記ナノコンポジット磁石用原料合金の粉末に対して590〜700℃で5〜15分の熱処理を施し、それによって、Fe3B化合物およびFe−R−B系化合物の結晶化を実行する工程と、
    前記熱処理後の原料合金の粉末を用いて成形体を形成する工程と、
    を包含するナノコンポジット磁石の製造方法。
  8. 前記ナノコンポジット磁石用原料合金の粉末を用意する工程は、
    前記原料合金の溶湯を形成する工程と、
    前記溶湯を急冷凝固させる工程と、
    前記急冷凝固された原料合金を破砕する工程と、
    前記原料合金を粉砕する工程と、
    を包含し、
    前記急冷凝固工程において、前記合金の冷却速度を5×104〜5×106K/秒とし、急冷前の合金の温度Tmから400〜800℃だけ低い温度に合金の温度を低下させることを特徴とする請求項に記載のナノコンポジット磁石の製造方法。
  9. 前記成形体を形成する工程は、前記熱処理後の原料合金の粉末を用いてボンド磁石を作製する工程を含む請求項7または8に記載のナノコンポジット磁石の製造方法。
  10. 請求項7、8または9に記載のナノコンポジット磁石の製造方法によって製造されたナノコンポジット磁石を備えたモータ。
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