JP2017011283A - α−Fe/R2TM14B系ナノコンポジット磁石の製造方法 - Google Patents
α−Fe/R2TM14B系ナノコンポジット磁石の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】薄帯を所定の長さに切断、または任意形状に打抜加工できるB(硼素)-richナノコンポジット磁石は、保磁力が小さいため磁気安定性に課題があり、他方ではNd2TM14B化学量論組成付近のB(硼素)量6〜8原子%の組成では長さ数mmの薄片状となり、粉末化して樹脂とともに任意形状のボンド磁石とするほかない。
【解決手段】長さ10mm未満の薄片の含有を20%未満とした、保磁力600kA/m以上の結晶化薄帯を、樹脂との複合薄帯とし、所定の長さに切断、曲げ、または任意形状に打抜加工し、所定形状のα-Fe/R2TM14B系ナノコンポジット磁石とする。更に好ましくは、14〜15m/secで移動する、直径500mm以上のCu製単ロールの鉛直方向(頂点)に、1300℃以上の溶湯合金パドルを形成し、ロール表面接触距離10〜15mmにて急冷凝固し、平板状シュータにて捕集した、平均厚さ40〜45μmの結晶化薄帯を用いる。
【選択図】図2
【解決手段】長さ10mm未満の薄片の含有を20%未満とした、保磁力600kA/m以上の結晶化薄帯を、樹脂との複合薄帯とし、所定の長さに切断、曲げ、または任意形状に打抜加工し、所定形状のα-Fe/R2TM14B系ナノコンポジット磁石とする。更に好ましくは、14〜15m/secで移動する、直径500mm以上のCu製単ロールの鉛直方向(頂点)に、1300℃以上の溶湯合金パドルを形成し、ロール表面接触距離10〜15mmにて急冷凝固し、平板状シュータにて捕集した、平均厚さ40〜45μmの結晶化薄帯を用いる。
【選択図】図2
Description
本発明は、磁気安定性に優れた比較的長尺な結晶化α-Fe/R2TM14B系薄帯を、そのまま直接、或いは樹脂複合薄帯として、所定の長さに切断、曲げ、又は任意形状に打抜加工するナノコンポジット磁石の製造方法に関する。
比較的長尺な薄帯を、そのまま直接、或いは樹脂複合希土類-鉄系薄帯として、所定の長さに切断、又は任意形状に打抜加工できるナノコンポジット磁石薄帯に関して、例えば、特許文献1では、合金組成式Fe100-x-yRxAy(但し、RはPr、Nd、Dy、Tbの1種又は2種以上、AはC(炭素)、又はB(硼素)の1種又は2種、1≦x<6原子%、15≦y≦30原子%)のようなB(硼素)-richな溶湯合金を、特定の急冷凝固条件にて厚さ10〜100μm、90%以上が非晶質の薄帯とし、その優れた靭性および弾性変形能を利用して、当該薄帯をそのまま直接、或いは所定の長さに切断、又は任意形状に打抜加工した後、更に非晶質組織から、Fe3B相とNd2Fe14B相が混在した、平均結晶粒径が10〜50nmの微細結晶組織にする、550〜750℃の熱処理を施し、保磁力が160kA/m以上、残留磁化が0.8T以上の結晶化薄帯を作製し、これを2枚以上積層し、エポキシ樹脂にて積層した結晶化薄帯同士を密着、一体化することで、薄帯、或いは薄片の粉砕、ボンド磁石化の方法を用いることなく、任意の肉厚、或いは所望の形状を有するナノコンポジット磁石の製造技術を開示している。
又、特許文献2では、上記のようなB(硼素)-richな溶湯合金を急冷凝固し、90%以上が非晶質の組織からなる、厚み10〜100μmの薄帯表面に、200〜550℃の融点を有する金属を鍍金、又は蒸着し、この急冷薄帯を、そのまま直接、或いは所定形状に加工した後に積層し、更に非晶質組織から、Fe3B相、α-Fe相、Nd2Fe14B相が混在した、平均結晶粒径が10〜50nmの微細結晶組織とする、550〜750℃の熱処理を施し、同時に表面の金属層を溶融させて一体化するナノコンポジット磁石の製造技術を開示している。
更に、特許文献3では、Fe100-y-zCo10RyBz、又はFe100-y-zCo9.5TM2RyBz(但し、TMはV、Ti、Cr、Mn、Cu、Nb、Mo、W、Ta、Hf、又はZrのうちから選択される1種又は2種以上の元素、Rは希土類元素のうちから選択される1種又は2種以上の元素、Bは硼素、組成比を示すy、zは原子%で、2.5<y<4.0、19<z<25)であり、かつΔTx=Tx-Tg(但し、Txは結晶化開始温度、Tgはガラス遷移温度)の式で表される過冷却液体領域の温度間隔ΔTxが35℃以上、Tg/Tm(但し、Tmは合金の融解温度)の式で表される換算ガラス化温度が0.55以上であり、単ロール急冷凝固法により得られた、厚さ200〜300μm、非晶質相の体積比率90%以上の、金属ガラス合金を熱処理した合金であって、R2Fe14B、Fe3B、α-Fe相および残存アモルファス相からなる平均粒径50nm以下の組織を有し、残留磁化Mrが1T以上、保磁力が150kA/m以上、厚さ200〜300μmの薄帯状ナノコンポジット磁石の製造技術を開示している。
D. Goll, I. Kleinschroth, H. Kronmuller, Proc.17th Int. workshop on rare-earth magnets and their applications, Vol.2, pp.641-657 (2000).
F. Yamashita, K. Takasugi, H. Yamamoto, H. Fukunaga, Transaction on Magn. Soc. Japan, Vol.2, No.2, pp.32-35 (2002).
Zhongmin Chena, Y.Q. Wub, M.J. Kramer, Benjamin R. Smitha, Bao-Min Maa, Mei-Qing Huang, Journal of Magnetism and Magnetic Materials Vol.268. pp.105-113 (2004).
特許文献1、および特許文献2のB(硼素)量は、15≦B≦30原子%、特許文献3のB(硼素)量は、19<B<25原子%である。このようなB(硼素)-richとする理由は、90%以上の非晶質形成に必要であるほか、R2TM14B化学量論組成よりもB(硼素)を約2.5倍以上、或いは約3倍量以上とすることで、長尺な非晶質薄帯の作製を容易にすることができる。それ故に、薄帯状のナノコンポジット磁石を、そのまま直接、或いは所定の長さに切断、又は任意形状に打抜加工することができる。
しかし、B(硼素)の量を、R2TM14B化学量論組成付近の6〜8原子%とした、PrxFe83-xCo8V1Nb1B7(X=2〜7)を、例えば1400℃程度の溶湯合金とし、急冷凝固したとき、その薄帯形状(リボン形状)は、数mm程度の幅と長さで、厚さが数十μm程度のものとしている([特許文献4]参照)。このように、B(硼素)量をR2TM14B化学量論組成付近とした場合の薄帯は、数mm程度の長さのものしか得られない。従って、このような合金組成から作られる急冷薄帯、或いは薄片は、それを粉砕して樹脂と共に固めるボンド磁石化の方法を用いて、任意の肉厚、或いは所望の形状とすることが行なわれる。
一方、長尺な非晶質薄帯にかかる特許文献1、および特許文献2で示される、B(硼素)-richナノコンポジット磁石の保磁力の範囲は160〜568kA/mであり、同様な特許文献3では171〜284kA/mである。このように保磁力が低い原因は、特許文献1、特許文献2、および特許文献3の何れもが、非晶質相を結晶化したとき、少なくともFe3B相、α-Fe相、Nd2Fe14B相の3相が混在した微細な結晶組織となるが、ハード相を形成する希土類元素Rの上限が6原子%と、R2TM14B化学量論組成の約1/2以下([特許文献1]、[特許文献2]参照)、或いは希土類元素Rの上限が4原子%と、R2TM14B化学量論組成の約1/3以下に限定される([特許文献3]参照)。このように、希土類元素が7原子%以下でB(硼素)-richな合金組成のナノコンポジット磁石は、ソフト相の含有量が増すことで残留磁化は向上するものの、600kA/mを越える高い保磁力が得られない。
ところで、特許文献1、特許文献2、および特許文献3に開示された、B(硼素)-richナノコンポジット磁石の磁気トルクを利用するモータ、アクチュエータ、センサなどでは、その保磁力の水準から、外部磁界に対するトルクの直線性、トルク曲線の歪、或いは熱による初期不可逆減磁など、磁気安定性に欠ける点がある。従って、このような磁気安定性は、当該モータ、アクチュエータ、センサなどの動作、ならびに信頼性に、重大な影響を及ぼす場合がある。
例えば、特許文献1、特許文献2、および特許文献3に開示されているような、残留磁化が1T以上の高残留磁化型B(硼素)-richナノコンポジット磁石を用いて、高パーミアンス磁気回路としたモータは、R2TM14B化学量論組成付近の結晶化薄帯から作製したボンド磁石のモータよりも、高いトルクが得られる。しかしながら、電流(回転磁界のような外部磁界)対トルクにおける直線性、正弦波トルク曲線が要求される位置制御(サーボモータ)、或いは高温暴露での初期不可逆減磁など、所謂磁気安定性の観点からの課題がある。又、高パーミアンス磁気回路が構造上困難な用途では、高残留磁化型B(硼素)-richナノコンポジット磁石の利点を活かすことが困難であった。
本発明の目的は、磁気安定性に優れ、かつ比較的長尺なα-Fe/R2TM14B系薄帯を、そのまま直接、或いは樹脂との複合薄帯とし、これを所定の長さに切断、曲げ、又は任意形状に打抜加工する、ナノコンポジット磁石の製造方法を提供し、これにより、モータ、アクチュエータ、センサなどの高トルク化、或いはその信頼性を高めることにある。
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
(1)α-Fe/R2TM14B(Rは9原子%以上、かつR2TM14B化学量論組成未満のNd又はPr、TMはFe又はFeの一部を20原子%以下のCoで置換したもの、Bは6〜8原子%)系ナノコンポジット磁石の製造方法であって、合金組成PrFeCoBVNb(Vは0〜4原子%、Nbは0〜3原子%)の溶湯合金をα-Fe及びR2TM14Bの結晶化温度以下まで急速冷却し、熱処理を施すことなく結晶化した、長さ10mm未満の薄片の含有を20%未満とした比較的長尺な、保磁力600kA/m以上の結晶化薄帯と、樹脂組成物とを複合化し、所定の長さに切断、曲げ、又は任意形状に打抜加工するα-Fe/R2TM14B系ナノコンポジット磁石の製造方法(請求項1)。
本項に記載の発明は、特許文献1、特許文献2、ならびに特許文献3のような、R2TM14B化学量論組成に比べB(硼素)-richとした溶湯合金を急冷凝固し、非晶質相が90%以上の薄帯とし、これにより、当該薄帯を必要に応じて適宜切断し、所定形状になるように機械的な加工を施し、積層し、所望の磁石とするものではなく、6〜8原子%のB(硼素)、および9原子%以上R2TM14B化学量論組成未満のRを必須とすることで、保磁力を600kA/m以上とする、磁気安定性に優れ、かつ比較的長尺なα-Fe/R2TM14B系結晶化薄帯とし、これを樹脂との複合薄帯として、所定の長さに切断、曲げ、又は任意の形状に打抜加工、積層する、α-Fe/R2TM14B系ナノコンポジット磁石の製造方法である。
ここで、本項に記載の発明にかかる磁気安定性とは、保磁力600kA/m以上であることを基本とする。このような磁気安定性を、合金組成PrFeCoBVNb(Vは0〜4原子%、Nbは0〜3原子%)の溶湯合金をα-Fe及びR2TM14Bの結晶化温度以下まで急速冷却し、熱処理を施すことなく結晶化した結晶化薄帯を用いて実現するものである。又、本項に記載の発明にかかる比較的長尺な薄帯とは、樹脂組成物と複合化した薄帯として、所定の長さに切断、曲げ、又は任意形状に打抜加工することが容易な、長さ10mm以上の薄帯を意味し、具体的には薄帯の作製において、長さ10mm未満の薄片の含有を20%未満とした、α-Fe/R2TM14B系結晶化薄帯である。なお、製造時に発生する加工屑、薄片は粉末化し、樹脂とともに固めるボンド磁石の原料とすることができる。
ここで、本項に記載の発明にかかる磁気安定性とは、保磁力600kA/m以上であることを基本とする。このような磁気安定性を、合金組成PrFeCoBVNb(Vは0〜4原子%、Nbは0〜3原子%)の溶湯合金をα-Fe及びR2TM14Bの結晶化温度以下まで急速冷却し、熱処理を施すことなく結晶化した結晶化薄帯を用いて実現するものである。又、本項に記載の発明にかかる比較的長尺な薄帯とは、樹脂組成物と複合化した薄帯として、所定の長さに切断、曲げ、又は任意形状に打抜加工することが容易な、長さ10mm以上の薄帯を意味し、具体的には薄帯の作製において、長さ10mm未満の薄片の含有を20%未満とした、α-Fe/R2TM14B系結晶化薄帯である。なお、製造時に発生する加工屑、薄片は粉末化し、樹脂とともに固めるボンド磁石の原料とすることができる。
(2)上記(1)項において、前記結晶化薄帯の平均膜厚を、35〜50μmとするα-Fe/R2TM14B系ナノコンポジット磁石の製造方法(請求項2)。
本項に記載の発明は、結晶化薄帯の平均膜厚を35〜50μmとすることで、磁気特性の安定化及び加工の容易化を図るものである。
本項に記載の発明は、結晶化薄帯の平均膜厚を35〜50μmとすることで、磁気特性の安定化及び加工の容易化を図るものである。
(3)上記(1)(2)項において、前記結晶化薄帯が、アルゴンガス雰囲気50〜90kPaにおいて、周速14〜15m/secで表面移動する直径500mm以上のCu製単ロールの鉛直方向(頂点)に形成される、1300℃以上のR-TM-B系溶湯合金のパドルから、ロール表面接触距離10〜15mmで急冷凝固させて生成したものであるα-Fe/R2TM14B系ナノコンポジット磁石の製造方法(請求項3)。
本項に記載の発明では、磁気安定に優れ、かつ比較的長尺なα-Fe/R2TM14B系結晶化薄帯の生成に、液体急冷凝固装置が使用される。より好ましくは、アルゴンガス雰囲気50〜90kPa、周速14〜15m/secで回転する、直径500mm以上のCu製単ロールの鉛直方向(頂点)に、1300℃以上のR-TM-B系溶湯合金のパドルを定常状態となるように形成し、更には薄帯のロール表面接触距離Lcntが、10〜15mmの範囲にて急冷凝固するよう調整するものである。
本項に記載の発明では、磁気安定に優れ、かつ比較的長尺なα-Fe/R2TM14B系結晶化薄帯の生成に、液体急冷凝固装置が使用される。より好ましくは、アルゴンガス雰囲気50〜90kPa、周速14〜15m/secで回転する、直径500mm以上のCu製単ロールの鉛直方向(頂点)に、1300℃以上のR-TM-B系溶湯合金のパドルを定常状態となるように形成し、更には薄帯のロール表面接触距離Lcntが、10〜15mmの範囲にて急冷凝固するよう調整するものである。
(4)上記(3)項において、前記パドルの中心でロールに接する周方向接線と、前記パドルから剥離点まで薄帯が描く接触円弧の弦とが成す角度が、1.7度以下であるα-Fe/R2TM14B系ナノコンポジット磁石の製造方法(請求項4)。
本項に記載の発明では、形成したパドルの中心でロールに接する周方向接線と、パドルから剥離点まで描く、薄帯接触円弧の弦とが成す角をθとしたとき、θを1.7度以下とする。これにより、平均結晶粒径10〜50nmのγ-Feから相変態したα-Fe相、ならびにR2TM14B相を主相とする、保磁力が600kA/m以上、平均厚さ40〜45μmで、かつ比較的長尺な結晶化薄帯とするものである。
本項に記載の発明では、形成したパドルの中心でロールに接する周方向接線と、パドルから剥離点まで描く、薄帯接触円弧の弦とが成す角をθとしたとき、θを1.7度以下とする。これにより、平均結晶粒径10〜50nmのγ-Feから相変態したα-Fe相、ならびにR2TM14B相を主相とする、保磁力が600kA/m以上、平均厚さ40〜45μmで、かつ比較的長尺な結晶化薄帯とするものである。
(5)上記(1)から(4)項において、2.4MA/m以上で面内方向に磁化した、前記結晶化薄帯の円板の、外部磁界40kA/mにおける磁気トルク曲線歪率が、1.2%以下であるα-Fe/R2TM14B系ナノコンポジット磁石の製造方法(請求項5)。
本項に記載の発明は、2.4MA/m以上で面内方向に磁化した等方性円板試料の、外部磁界40kA/mにおけるトルク曲線の歪率が1.2%以下であり、回転磁界のような外部磁界に対するトルクの可逆性、直線性をも確保するものである。これにより、α-Fe/R2TM14B系ナノコンポジット磁石でありながら、熱による初期不可逆減磁は、R2TM14B化学量論組成付近の結晶化薄帯、又は薄片を粉末化し樹脂で固めたボンド磁石と、ほぼ同水準となるなど、実使用における優れた磁気安定性を確保できる。
本項に記載の発明は、2.4MA/m以上で面内方向に磁化した等方性円板試料の、外部磁界40kA/mにおけるトルク曲線の歪率が1.2%以下であり、回転磁界のような外部磁界に対するトルクの可逆性、直線性をも確保するものである。これにより、α-Fe/R2TM14B系ナノコンポジット磁石でありながら、熱による初期不可逆減磁は、R2TM14B化学量論組成付近の結晶化薄帯、又は薄片を粉末化し樹脂で固めたボンド磁石と、ほぼ同水準となるなど、実使用における優れた磁気安定性を確保できる。
(6)上記(3)から(5)項において、飛行する前記結晶化薄帯を、平板状のシュータにて捕集するα-Fe/R2TM14B系ナノコンポジット磁石の製造方法(請求項6)。
本項に記載の発明は、液体急冷凝固装置のロールから剥離する際に飛行する結晶化薄帯を、平板状のシュータで捕集するものである。
本項に記載の発明は、液体急冷凝固装置のロールから剥離する際に飛行する結晶化薄帯を、平板状のシュータで捕集するものである。
本発明はこのように構成したので、磁気安定性に優れ、かつ比較的長尺なα-Fe/R2TM14B系薄帯を、そのまま直接、或いは樹脂との複合薄帯とし、これを所定の長さに切断、曲げ、又は任意形状に打抜加工する、ナノコンポジット磁石の製造方法を提供し、これにより、モータ、アクチュエータ、センサなどの高トルク化、或いはその信頼性を高めることが可能となる。
本発明にかかる比較的長尺な薄帯は、α-Fe相、R2TM14B相からなる主相の結晶粒径の範囲を10〜50nm程度に制御した、磁気的に等方性のα-Fe/R2TM14B系結晶化薄帯であることが望ましい。このような薄帯は、レマネンスエンハンスメント(残留磁化促進効果)によって残留磁化が高まる。例えば、D.Gollらは、合金組成Pr8Fe87B5の溶湯合金を急冷凝固し、α-Fe相の結晶粒径を略15nm、Pr2Fe14B相の結晶粒径を20〜30nmとすると、α-Fe相とPr2Fe14B相との接触界面で充分な磁気的結合が生じ、残留磁化1.17T、保磁力470kA/m、(BH)max180.7kJ/m3が得られるとしている([非特許文献1]参照)。
ところで、上記のようなナノコンポジット磁石の、高温における減磁曲線の劣化による初期不可逆減磁は、保磁力が600kA/m以上であれば概ね抑制することができる。そして、その初期不可逆減磁は、保磁力の水準と、保磁力の温度係数ΔHcJ/ΔT(%/℃)に支配されるようになり、例えば、120℃までの環境下では、モータなどに実装した磁石として、実用的な磁気安定性が確保される([非特許文献2])参照)。
しかしながら、Prが8原子%(Pr8Fe87B5)であっても、保磁力は470kA/m([非特許文献1]参照)、Prが6原子%(Pr6Fe86-x-y-zCo8VxNbyBz、x=0〜4、y=0〜3、z=6〜9)では、365kA/mに止まる。そこで、本発明では9原子%以上のRとし、かつ、6〜8原子%のB(硼素)とすることで、保磁力を600kA/m以上とする。但し、本発明はα-Fe相とのナノコンポジット磁石であるから、Rの上限はR2TM14B化学量論組成における11.76原子%未満とする必要がある。又、Feは20原子%以下のCoで置換することができる。FeのCo置換は1原子%当り、キュリー温度を概ね10℃上昇させ、残留磁化の温度係数を調整できる。又、初期減磁に影響を及ぼす保磁力値とともに、保磁力の温度係数ΔHcJ/ΔT(%/℃)の改善、或いはレマネンスエンハンスメントによる残留磁化の改善には、非特許文献2のような主相の微細化が必要であり、急冷凝固の際の粒成長を抑える第4元素(grain boundary)としてNb([非特許文献3]参照)、或いはNbとV([特許文献4]参照)などを、通常1原子%程度添加する手法が有効である。
又、上記のような保磁力水準のとき、2極に面内方向磁化した円板状試料の、室温での外部磁界240kA/m以下での磁気トルクの直線性は、相関係数Rで0.9999以上、かつその40kA/mにおけるトルク曲線の歪率は、1.15%以下となる。なお、本発明にかかるα-Fe/R2Fe14B系ナノコンポジット磁石の保磁力を600kA/m以上とするには、9原子%以上R2TM14B化学量論組成未満のR、6〜8原子%のB(硼素)を必須とする。
つぎに、本発明にかかるα-Fe/R2TM14B系ナノコンポジット磁石の好ましい製造方法を、図1(a)、(b)により説明する。図1(a)は、R/B(Nd又はPrと、Bとの比)が2のタイラインに沿ったR-TM-B系疑似2元状態図、図1(b)は、急冷凝固における要部斜視図である。但し、図1(a)は、Feの一部のCo置換量を一定としている。又、図1(b)において、1は溶湯合金、11はノズル(オリフィス)、2はロール表面、3はパドル、4は薄帯、Aは薄帯4のロール表面2との剥離点、5はコイルである。
図1(a)のR/B=2タイラインに沿ったR-TM-B系疑似2元状態図から、溶湯合金1は1300℃以上とする。このような溶湯合金1の急冷凝固では、先ず液相+γ-Fe域を経てγ-Fe+R2Fe14B域となると推定される。なお、γ-Feは室温に冷却される過程でα-Feに相変態し、α-Fe相とR2Fe14B相とを主相とする急冷凝固薄帯となる。
急冷凝固は、例えば、アルゴンガス雰囲気50〜90kPa(図示せず)において、14〜15m/secの速度で移動する、直径500mm以上のCu製単ロール表面2の鉛直方向(頂点)に、1300℃以上のR-TM-B系溶湯合金1のパドル(湯溜り)3を形成する。そして、パドル3で急冷凝固した薄帯4は、剥離点Aまでロール表面2にて抜熱される。そして、剥離点Aにてロール表面2から離れた薄帯4は、アルゴンガス雰囲気中にて更に冷却されて、平均結晶粒径10〜50nmのγ-Fe相(α-Feに相変態)、およびR2TM14B相を主相とする、保磁力が600kA/m以上の結晶化急冷薄帯4となる。
上記のような、本発明にかかる急冷凝固を安定して行うには、溶湯合金1の供給源であるノズル11と、移動するCu製のロール表面2との間に、溶湯合金1のパドル3を安定的に形成する必要がある。このような溶湯合金1のパドル3は、コイル5に高周波電流を通電するなどの手段により、融点以上に加熱したノズル(オリフィス)11を通して一定範囲内の圧力、例えば30〜50kPaにて、溶湯合金1を栓流化して供給すれば形成できる。換言すれば、溶湯合金1が急冷凝固されて薄帯4となり、ロールの移動によって運び去られる量に見合う溶湯合金1を供給することで、パドル3の安定化が達成される。
又、パドル3の大きさがある一定範囲を越えると、パドル3の生成が不安定となり、定常状態を維持できなくなる。更に、パドル3の安定維持には、冷却ロールの冷却能力が損なわれることなく安定していることも重要である。
上記のような安定したパドル3の凝固界面移動速度Vsldは、当該溶湯合金1とロール表面2との伝熱係数により変化する。例えば、14.5m/secの速度で移動する、直径500mmのCu製単ロール表面2の鉛直方向(頂点)に、1300℃以上のPr9Fe73Co9 B7V1Nb1溶湯合金1のパドル3を形成し、急冷凝固したとき、薄帯4の平均厚さは42μmであった。又、パドル3から生成した薄帯4の剥離点Aまでの距離、すなわち、薄帯4とロール表面2との接触距離Lcntは、概ね12.0〜12.5mmであった。従って、凝固界面移動速度Vsldは50mm/sec、薄帯4のロール表面2との接触時間は0.84msecであった。更に、1300℃の溶湯合金1が、薄帯4としてロール表面2から離れるときの温度を700〜800℃とすれば、急冷凝固における冷却速度は概ね7×105 〜6×105℃/secとなる。
更に、本発明にかかる比較的長尺な薄帯4とするには、接触距離Lcntにおける薄帯4の円弧状の軌跡を小さくする必要がある。例えば、パドル3の周方向接線と、パドル3を起点とし剥離点Aを終点とする、薄帯4が描く円弧の弦とが成す角をθとすれば、角θが小さいほどロール表面2と接する薄帯4の直線性が増す。本発明は、θを約1.4度以下とすれば、剥離点Aの位置も安定化し、比較的長尺な薄帯4が得やすくなることを見出した。
剥離点Aを通過した薄帯4は、50〜90kPaのアルゴンガス雰囲気中で飛行し、R2TM14B(結晶化温度約590℃)、α-Fe(結晶化温度約420℃)以下まで急速冷却される。そして、薄帯4を、好ましくは平板状のシュータ(滑り台)により捕集する。なお、特許文献1、特許文献2、および特許文献3のような、B(硼素)-richの合金組成の薄帯は、通常連続した薄帯4となるが、通常ねじれや反りが生じる。薄帯4を平板状のシュータにより捕集する理由は、直線的に飛行する本発明にかかる薄帯4が、壁面に衝突したときに起こるねじれや反り、或いは破砕される薄片の生成を抑制し、比較的長尺で直線的な薄帯の収率を高めるためである。このように薄帯のねじれや反りを抑制することで、当該薄帯をそのまま直接、或いは樹脂組成物と複合化した薄帯とし、所定の長さに切断、曲げ、又は任意形状への打抜加工を容易にすることができる。
次に、本発明にかかるα-Fe/R2TM14B系ナノコンポジット磁石の、機械的な加工について説明する。本発明にかかる薄帯の機械的な加工としては、超音波加工、マイクロブラスト加工などが適用可能である。又、好ましくはファインブランキング法、シェービング法などの精密打抜型を用いた打抜加工であり、更に好ましくは、対向ダイス法による精密打抜加工を挙げることができる。
本発明にかかるα-Fe/R2TM14B系ナノコンポジット磁石の製造方法を、実施例により、更に詳しく説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
(長さとロール径)
1350℃の溶湯合金(合金組成Pr9Fe73Co9 B7V1Nb1)20gを、60kPaのアルゴンガス雰囲気中、直径0.8mmのオリフィスを介し、14.5m/secで表面移動する直径500mmのCu製ロール表面の鉛直方向(頂点)にてパドルを形成し、急冷凝固した。なお、幅約2mmの急冷凝固した薄帯は、板状のシュータにて捕集した。又、比較例として、Cu製ロールの直径を200mmとしたこと以外は全て同一条件にて、比較例の薄帯を作製した。
1350℃の溶湯合金(合金組成Pr9Fe73Co9 B7V1Nb1)20gを、60kPaのアルゴンガス雰囲気中、直径0.8mmのオリフィスを介し、14.5m/secで表面移動する直径500mmのCu製ロール表面の鉛直方向(頂点)にてパドルを形成し、急冷凝固した。なお、幅約2mmの急冷凝固した薄帯は、板状のシュータにて捕集した。又、比較例として、Cu製ロールの直径を200mmとしたこと以外は全て同一条件にて、比較例の薄帯を作製した。
図2(a)は、本発明にかかる直径500mmのCu製ロールで作製した、急冷薄帯の長さ分布を、比較例(直径200mmのCu製ロール)と共に示している。図から明らかなように、比較例では、長さ10mm未満の短冊状の薄帯が75%、又、30mm未満の短冊状薄片の割合は99%であった。つまり、数mm程度の長さのものしか得られない([特許文献4]参照)。これに対し、本発明にかかる薄帯は、長さ10mm未満の短冊状の薄帯は約17%であり、比較的長尺な薄帯と言える。このような比較的長尺な薄帯は、樹脂組成物と複合化して所定の長さに切断、曲げ、又は任意形状に打抜加工し、所定形状のα-Fe/R2TM14B系ナノコンポジット磁石とすることができる。
なお、パドル3とロール表面2との接触距離Lcntは、本実施例ではロール径に依存せず、本合金系では12.0〜12.5mmであった。本発明にかかる比較的長尺な薄帯4を安定して得るためには、接触距離Lcntにおける薄帯4の円弧状の軌跡を小さくする必要がある。例えば、図2(b)中のパドル3のロール周方向接線X-X’と、パドル3と剥離点Aの区間で薄帯4が描く円弧の弦とが成す角をθとすれば、θの値が小さいほどロール表面2と接する薄帯4の直線性が増すことになる。図2(a)の結果から、角度θを1.4度程度とすれば、パドル3の形成とともに剥離点Aの位置も安定化し、ロール表面2と接する薄帯4の直線性が増す。例えば、ロール径を500mmとし、接触距離Lcntが最大15mmとしたときの角度θは1.7度であり、比較例と比べると、ロール表面2における薄帯4の直線性は2.5倍となっており、このことが比較的長尺な薄帯4が得やすくなる理由と言える。
(保磁力と厚さ)
1350℃の溶湯合金(合金組成Pr9Fe73Co9 B7V1Nb1)20gを、60kPaのアルゴンガス雰囲気中、直径0.8 mmのオリフィスを介し、10.0、14.0、14.5、15.0、20.0、30.0m/secでロール表面が移動する直径500mmのCu製ロール表面で急冷凝固した。なお、幅約2mmの急冷薄帯は、平板状のシュータにて捕集した。
1350℃の溶湯合金(合金組成Pr9Fe73Co9 B7V1Nb1)20gを、60kPaのアルゴンガス雰囲気中、直径0.8 mmのオリフィスを介し、10.0、14.0、14.5、15.0、20.0、30.0m/secでロール表面が移動する直径500mmのCu製ロール表面で急冷凝固した。なお、幅約2mmの急冷薄帯は、平板状のシュータにて捕集した。
図3(a)は、直径500mmのCu製ロール表面の移動速度と薄帯の保磁力、および膜厚の関係、図3(b)は、Cu製ロール表面の移動速度を20、30m/secとして作製した薄帯の、熱処理温度と保磁力HcJの関係を示す特性図である。但し、保磁力は、外部磁界±2.4MA/mのVSM(振動試料磁力計)で測定した室温での値であり、熱処理は、アルゴンガスフロー(1.5L/min)中、約10℃/secで設定温度まで昇温し、保持時間なしで、かつガスフロー中にて100℃以下まで冷却した。
図3(a)の本発明例のように、本発明は保磁力値から、急冷凝固におけるCuロール表面の移動速度を最適化することができる。なお、Cu製ロール表面の移動速度が14〜15m/sec付近であれば、平均の保磁力は686kA/mであり、これを570〜600℃で熱処理しても保磁力は殆ど変化せず、むしろα-Fe相やR2TM14B相の粗大化による磁気特性の低下がある。
なお、この合金系で特許文献1、特許文献2、および特許文献3のような非晶質急冷薄帯を得るには、Cu製ロール表面の移動速度を40m/sec以上に設定する必要がある。そして、Cu製ロール表面の移動速度が20、および30m/secでは、結晶化はしているが、その保磁力は数kA/mに過ぎず、図3(b)のように結晶化のための熱処理が必要である。しかし、570〜600℃の温度範囲で熱処理した薄帯の保磁力は、Cu製ロール表面の移動速度を14〜15m/secとした、非熱処理薄帯の保磁力686kA/mには及ばない。なお、本発明にかかる、1辺が約2mmの面内方向に、4.8MA/mパルス着磁後の代表的な磁気特性は、残留磁化0.95T、保磁力652kA/m、(BH)max140kJ/m3であった。
ところで、薄帯の厚さtは、t=Tcnt×Vsldで律則される。又、Tcnt=Lcnt/Vrollなる関係がある。但し、Tcntは薄帯のロール表面との接触時間、Vsldは凝固界面移動速度、Vrollはロール表面の移動速度、Lcntは薄帯とロール表面との接触距離である。本発明例であるロール表面の移動速度Vrollが14.5m/secのとき、Lcntは12.0〜12.5 mm、tは41〜43μm、Vsldは50mm/secであった。このことから本実施例のような合金組成で、特許文献1、特許文献2、および特許文献3のような90%以上非晶質急冷薄帯とするには、ロール表面の移動速度Vrollを40m/secとする必要があり、その場合の厚さtは約16μm程度となる。このような厚さになると薄帯は極めて機械的に脆弱になり、シュータで捕集しても、その長さは数mm以下となり、目的とする比較的長尺な薄帯は得られない。従って、薄帯を、そのまま直接、或いは樹脂と複合化しても、所定の長さに切断、曲げ、又は任意形状に打抜加工することはできない。
(トルクとトルク曲線の歪)
実施例1で得た、本発明にかかる1辺が約2mmの面内方向に、4.8MA/mパルス着磁後の代表的な磁気特性は、残留磁化0.95T、保磁力652kA/m、(BH)max140kJ/m3であった。この試料を対向ダイス法により、直径1.6mmの円板状に打抜き、更に、4MA/mのパルス磁界で面内方向に磁化した。
実施例1で得た、本発明にかかる1辺が約2mmの面内方向に、4.8MA/mパルス着磁後の代表的な磁気特性は、残留磁化0.95T、保磁力652kA/m、(BH)max140kJ/m3であった。この試料を対向ダイス法により、直径1.6mmの円板状に打抜き、更に、4MA/mのパルス磁界で面内方向に磁化した。
比較例として、特許文献1に記載される合金組成式Fe100-x-yRxAy(但し、RはPr、Nd、Dy、Tbの1種又は2種以上、AはC(炭素)、又はB(硼素)の1種又は2種、1≦x<6原子%、15≦y≦30原子%)の範囲に対応するB(硼素)-richな合金組成Nd4.5Fe70Co5B18.5Cr2母合金を高周波溶解し、当該溶湯合金を1200℃で直径0.8mmのオリフィスを介し、表面が30m/secで移動する直径500mmのCu製ロールの鉛直方向(頂点)にパドルを形成し、急冷凝固し、厚さ約45μmの非晶質薄帯を得た。なお、薄帯の捕集は板状シュータを用いた。得られた非晶質薄帯は、長さ方向にほぼ連続したものであるが、速度30m/secで飛行するため、ねじれや反りが大きい。
上記薄帯をアルゴンガスフロー中、約10℃/secで560℃まで昇温し、結晶化した。X線回折ではFe3B相、α-Fe相、Nd2Fe14B相の3相からなるナノコンポジット磁石であり、外部磁界±2.4MA/mのVSMで測定した室温での残留磁化は1.1T、保磁力は330kA/m、(BH)maxは95kJ/m3であった。この試料を対向ダイス法により、直径1.6mmの円板状に打抜き、更に、4MA/mのパルス磁界で面内方向に磁化した。
図4(a)は、試料(極対数2)の外部磁界に対する磁気トルク、図4(b)は、磁気トルク曲線の歪率の変化を示す特性図である。但し、磁気トルクは、試料の直径は同じであるが厚さが異なるために、それぞれの体積で除した体積磁気トルクで表している。又、磁気トルク曲線の歪率とは、磁気トルク曲線をフーリエ分解し、高調波成分を基本波成分で除したものである。
ところで、面内方向に極対数1で磁化した試料を、一様な回転する外部磁界に暴露したとする。ここで、外部磁界の回転方向(磁気トルクの発生方向)の反時計回りを正とし、外部磁界のS極中心が、試料のN極の真上から反時計回りに廻ると考える。すると外部磁界のS極中心が、試料のN極の真上にある場合、トルクはゼロ、半時計回りに外部磁界のS極中心が回転すると、磁気トルクは徐々に増加し、90度回転した位置で最大磁気トルクとなる。更に回転すると、磁気トルクは再び徐々に減少し、180度でゼロとなる。つまり、磁気トルク計での計測値は極対数1のDCモータのトルクと等価である。又、外部磁界を変化させたとき、外部磁界Hexに対するトルク勾配dT/dHexは、DCモータにおけるトルク定数に相当する。
図4(a)の本発明にかかる試料では、8〜240kA/mの外部磁界(モータの電流値に対応)とトルクとの直線近似における相関係数は0.9999である。又、比較例([特許文献1]に対応)の相関係数は0.9363であった。加えて、DCモータにおけるトルク定数に相当する傾きも、本発明にかかる試料が大であることも明らかである。更に、図4(b)の磁気トルク曲線歪率は、8〜240kA/mの広範囲の外部磁界において、本発明例が比較例に比べて著しく小さく、かつ安定的であることは明らかである。なお、外部磁界40kA/mでの歪率は本発明例で0.94%、比較例で3.84%であった。
(初期不可逆減磁)
図5は、実施例3で示した本発明例、ならびに比較例の保磁力と外部磁界40kA/mでの磁気トルク曲線歪率の関係、ならびにα-Fe相とNd2TM14B相とを主相とする急冷薄帯、ならびにNd2Fe14B相を主相とする急冷薄帯を粉砕して粉末とし、樹脂と共に固めたボンド磁石の保磁力と初期不可逆減磁の関係を示す特性図である。但し、初期不可逆減磁率は、直径4.1mmの円筒磁石の外周に8極着磁した磁石をロータとしたステッピングモータを、120℃雰囲気に1時間暴露した前後の誘起電圧減少率である。
図5は、実施例3で示した本発明例、ならびに比較例の保磁力と外部磁界40kA/mでの磁気トルク曲線歪率の関係、ならびにα-Fe相とNd2TM14B相とを主相とする急冷薄帯、ならびにNd2Fe14B相を主相とする急冷薄帯を粉砕して粉末とし、樹脂と共に固めたボンド磁石の保磁力と初期不可逆減磁の関係を示す特性図である。但し、初期不可逆減磁率は、直径4.1mmの円筒磁石の外周に8極着磁した磁石をロータとしたステッピングモータを、120℃雰囲気に1時間暴露した前後の誘起電圧減少率である。
図から明らかなように、磁気トルク曲線の歪率が1.2%を越えると、初期不可逆減磁率も急激に増加する傾向がある。このように磁気トルク曲線の歪率と高温暴露での初期不可逆減磁は、何れも磁化反転に由来するもので、本発明例は合金組成Nd12Fe77Co5B6、すなわち、R2TM14B化学量論組成付近の長さ数μmの急冷薄帯を粉砕し、樹脂と共に固めたボンド磁石と、同等の磁気安定性を有している。更に、本発明例によれば、比較的長尺な薄帯を得ることが可能であることから、比較例([特許文献1]に対応)と同様に、当該薄帯を樹脂と複合化した薄帯とし、所定の長さに切断、又は任意形状に打抜加工したα-Fe/Nd2TM14B系ナノコンポジット磁石とすることができる。
1:溶湯合金、2:ロール表面、3:パドル、4:薄帯、5:コイル、11:ノズル(オリフィス)、A:薄帯4のロール表面2との剥離点、X-X’:パドル3のロール周方向接線、θ:パドル3のロール周方向接線X-X’と、パドル3と剥離点Aの区間で薄帯4が描く円弧の弦とが成す角
Claims (6)
- α-Fe/R2TM14B(Rは9原子%以上、かつR2TM14B化学量論組成未満のNd又はPr、TMはFe又はFeの一部を20原子%以下のCoで置換したもの、Bは6〜8原子%)系ナノコンポジット磁石の製造方法であって、
合金組成PrFeCoBVNb(Vは0〜4原子%、Nbは0〜3原子%)の溶湯合金をα-Fe及びR2TM14Bの結晶化温度以下まで急速冷却し、熱処理を施すことなく結晶化した、長さ10mm未満の薄片の含有を20%未満とした比較的長尺な、保磁力600kA/m以上の結晶化薄帯と、樹脂組成物とを複合化し、所定の長さに切断、曲げ、又は任意形状に打抜加工することを特徴とするα-Fe/R2TM14B系ナノコンポジット磁石の製造方法。 - 前記結晶化薄帯の平均膜厚を、35〜50μmとすることを特徴とする請求項1記載のα-Fe/R2TM14B系ナノコンポジット磁石の製造方法。
- 前記結晶化薄帯が、アルゴンガス雰囲気50〜90kPaにおいて、周速14〜15m/secで表面移動する直径500mm以上のCu製単ロールの鉛直方向(頂点)に形成される、1300℃以上のR-TM-B系溶湯合金のパドルから、ロール表面接触距離10〜15mmで急冷凝固させて生成したものであることを特徴とする請求項1又は2記載のα-Fe/R2TM14B系ナノコンポジット磁石の製造方法。
- 前記パドルの中心でロールに接する周方向接線と、前記パドルから剥離点まで薄帯が描く接触円弧の弦とが成す角度が、1.7度以下であることを特徴とする請求項3記載のα-Fe/R2TM14B系ナノコンポジット磁石の製造方法。
- 2.4MA/m以上で面内方向に磁化した、前記結晶化薄帯の円板の、外部磁界40kA/mにおける磁気トルク曲線歪率が、1.2%以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のα-Fe/R2TM14B系ナノコンポジット磁石の製造方法。
- 飛行する前記結晶化薄帯を、平板状のシュータにて捕集することを特徴とする請求項3から5のいずれか1項記載のα-Fe/R2TM14B系ナノコンポジット磁石の製造方法。
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JPS63213324A (ja) | 樹脂結合型希土類磁石 |
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Date | Code | Title | Description |
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