JP3601320B2 - サージアブソーバ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電話機、モデムなどの電子機器が通信線と接続する部分、或いはCRT駆動回路などの雷サージや静電気等の異常電圧による電撃を受けやすい部分に接続することで、異常電圧によって電子機器が破壊されるのを防ぐために使用される放電形成型のサージアブソーバに関する。
【0002】
【従来の技術】
図4(a)は、従来のマイクロギャップ式サージアブソーバを示す断面図である。このサージアブソーバは、円柱状(多角柱状であっても良い。)のセラミック素体1の表面にマイクロギャップ2Aを設けてSnO2等の導電性皮膜2を形成したマイクロギャップ式サージ吸収素子3の両端に、金属製のキャップ電極4A,4Bを被着したものを、鉛ガラスからなるガラス管5内に不活性ガスと共に挿入し、端子電極(スラグリード:リード線付き封止電極)6A,6Bで挟持して固定、封止することにより作製される。
【0003】
このようなサージアブソーバに要求される特性に、放電開始電圧、絶縁抵抗、寿命特性及びサージ耐量がある。このうち、サージ耐量は、異常電圧によってサージアブソーバ内でアーク放電が発生した際に、セラミック素体1とガラス管5の熱容量と熱伝導性の差によってサージアブソーバが破壊に至る現象に対する耐久性の程度であり、サージアブソーバの形状により決定される特性である。このサージ耐量を増大させるために、
(1) 図4(b)に示す如く、ガラス管として内径の大きいガラス管5Aを用いる;
(2) 図4(c)に示す如く、ガラス管として、肉厚の厚いガラス管5Bを用いる;
ことが行われている。
【0004】
即ち、異常電圧によってサージアブソーバ内でアーク放電が発生したとき、アーク放電の熱はセラミック素体1よりなるサージ吸収素子3及びガラス管5に伝導し、それぞれが加熱される。この時、セラミック素体1は熱容量が小さく熱伝導度が大きいが、ガラス管5は熱容量が大きくかつ熱伝導度が小さいため、ガラス管5に比べてセラミック素体1の方が大きく熱膨張する。このため、大電流が流れたときにガラス管5内には引張応力が発生し、応力の集中する端子電極(スラグリード6A,6B)とガラス管5との接触点でクラックが発生し、破壊に至る。
【0005】
上記(1)では、このクラック発生を、内径の大きいガラス管5Aを用いることにより、セラミック素体1の熱膨張の影響を緩和して防止する。また、上記(2)では、肉厚が厚く、耐クラック性に優れたガラス管5Bを用いることにより、クラック発生を防止する。
【0006】
また、アーク放電によりギャップ電極が蒸発しマイクロギャップの特性が劣化してサージ吸収素子の特性が劣化することもある。これを防止するために、
(3) 金属キャップ電極4A,4Bを設けないサージ吸収素子を用いる;
ことも行われている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記(1),(2)のサージ耐量の増大方法では、次のような問題があった。
【0008】
図4(b)に示す如く、内径の大きいガラス管5Aを用いると、当然、作製されたサージアブソーバ自体が大型化し、自動実装に必要な5mmピッチのアキシャルテーピングが不可能となる。また、ガラス管5Aの内径が大きくなった分、封止に使用する封止材(スラグリード6A’,6B’)の直径が大型化し、市販品で入手することが非常に困難になる。このように直径の大きな封止材を使用することなく、通常の封止材を用いて封止することができるように、図4(d)に示す如く、スラグリード6A,6Bとガラス管5Aとの間にガラスビーズ7A,7Bを介在させることが考えられるが、この場合には、別途ガラスビーズ7A,7Bが必要となるため、コストアップにつながる。
【0009】
図4(c)に示す如く、肉厚のガラス管5Bを用いる場合にも、サージアブソーバが大型化すると共に、封止に使用するガラス量が増大する。また、ガラス管自体のコストアップにつながる。
【0010】
上記(3)のキャップ電極なしのサージ吸収素子をガラス管内に入れる場合にあっては、封止後のガラス管にクラックが発生し易い。
【0011】
本発明は上記従来の問題点を解決し、サージ耐量が大きく、長寿命であり、小型で低コストなサージアブソーバを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明(請求項1)のサージアブソーバは、ガラス管と、該ガラス管内に挿入されたサージ吸収素子と、該ガラス管の両端に設けられた封止電極とを有する放電形成型のサージアブソーバにおいて、該サージ吸収素子の端部と封止電極との間に、高融点金属よりなる緩衝部材が介在しており、該緩衝部材を主放電電極としたサージアブソーバであって、該緩衝部材は前記ガラス管の軸方向に弾性変形することができることを特徴とするものである。
【0013】
本発明(請求項2)のサージアブソーバは、高融点金属は、Cr、Mo及びWの少なくとも1種からなる金属又は合金であることを特徴とするものである。
【0014】
本発明のサージアブソーバでは、異常電圧を受けた際のセラミック素体の瞬間的な熱膨張を緩衝部材の変形により吸収し、ガラス管に引張応力が発生するのを防止することで、サージ耐量を増大させることができる。
【0015】
本発明では、サージ吸収素子が金属キャップ電極を有しておらず、従って金属キャップ電極からの放電による蒸発が無く、これに伴う素子劣化も無い。
【0016】
本発明では、緩衝部材を主放電電極としてあり、従来に比べこの放電電極がサージ吸収素子のマイクロギャップから遠ざかっているので、主放電電極の蒸発の影響が小さい。この主放電電極は高融点金属よりなるものであるため蒸発がきわめて少ない。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明のサージアブソーバの実施の形態を示す断面図である。図1に示すサージアブソーバは、サージ吸収素子3がキャップ電極4A,4Bを有していない点、及び、サージ吸収素子3とスラグリード6A,6Bとの間に緩衝部材10Bを介在させた点が図4(a)に示す従来のサージアブソーバと異なり、その他の構成は同様の構成とされている。図1において図4(a)と同一機能を奏する部材には同一符号を付してある。
【0019】
図1に示す緩衝部材10Bは、図3の通り、円形の金属板を時計皿状に湾曲させた形状のものである。この緩衝部材10Bは、矢印X方向に弾性変形するので、セラミック素体1の熱膨張が吸収される。
【0020】
この緩衝部材10Bの直径はガラス管5の内径よりも若干小さい程度とし、その厚さは0.1〜1mm程度とするのが適当である。この厚さが0.1mm未満では弾性係数(バネ強さ)が小さすぎ、1mm超では弾性係数が大きすぎる場合がある。
【0021】
この金属板の材料としては、2000℃以上の融点を有したCr,Mo,Wの単体或いはこれらの2種以上の合金を用いることができる。
【0022】
このような金属板よりなる緩衝部材は、図2(a)(平面図),(b)(側面図)に示す如く、金属板を円形に切り抜いたものを中央で好ましくはθ=約90〜178°とくに好ましくは150〜175°程度に折り曲げた緩衝部材10であってもよい。また、図5(a),(b)のように方形に切り抜いた金属板の四隅を約30〜90°折り曲げ加工すると共に板央部を時計皿状に湾曲加工することにより作製した緩衝部材10Cであってもよい。
【0023】
本発明のサージアブソーバは、サージ吸収素子と共に緩衝部材をガラス管内に封止することにより、容易に作製することができる。
【0024】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0025】
実施例1
厚さ0.1mmのタングステン板よりなる直径1.6mmの図3に示す形状の緩衝部材10Bを用いて、図1に示す本発明のサージアブソーバを作製した。
【0026】
サージ吸収素子3としては、円柱状セラミック素体(直径1mm,長さ3mm,コランダムムライト製)1に、厚さ2μmのSnO2導電性皮膜2を形成し、導電性皮膜2の中央部に周方向にマイクロギャップ2A(幅50μm)を形成したものを用いた。
【0027】
これをガラス管(外径3mm,内径1.8mm,長さ7.3mm)5に挿入し、次いで上記緩衝部材10Bを挿入した。このガラス管5の端部をスラグリード(封止部の直径1.7mm,長さ1.8mm)でガラス管5の端部を閉じた後、ガラス管5内を封止ガス(Arガス,1300Torr)雰囲気に置換し、その後加熱して封止した。
【0028】
このサージアブソーバについて、寿命特性を次のようにして測定した。即ち、波形8/20μsec−100Aのインパルス電流を300回印加したときの放電開始電圧の変化率を測定し、この変化率が30%以下のものを寿命範囲内とし、30%超のものを寿命と判定し、5mmピッチのアキシャルテーピング及び封着の可否を調べ、結果を表1に示した。
【0029】
比較例1
サージ吸収素子3に対しキャップ電極(SUS製、肉厚0.1mm)を圧入し、マイクロギャップの本数を5本とした。また、緩衝部材10Bを用いなかった。これら以外は実施例1と同様にして、図4(a)に示す如きサージアブソーバ(ただし、マイクロギャップの本数は5本)を作製し、同様にサージ耐量及びテーピングの可否並びに封着の可否を調べ、結果を表1に示した。
【0030】
実施例2,3
緩衝部材10Bの代わりに、実施例2では図2に示す緩衝部材10を用い、実施例3では図5に示す緩衝部材10Cを用いた。なお、緩衝部材10は直径1.6mmであり角度θ=30°である。緩衝部材10Cは一辺1.25mmの正方形板を加工したものであり、4隅の曲げ角度は元の板面に対し30°である。これらのこと以外は実施例1と同様にしてサージアブソーバを作製し、同様にサージ耐量及びテーピングの可否並びに封着の可否を調べ、結果を表1に示した。
【0031】
比較例2
図4(d)に示すサージアブソーバを作製するに当り、ガラス管として外径5.3mm,内径3.3mm,長さ7.3mmのものを用い、外径3.1mm,内径1.8mm,長さ1.8mmのガラスビーズ7A,7Bを介してスラグリード6A,6Bを取り付けた。また、サージ吸収素子としてはマイクロギャップを1本だけ設けたものを用いた。これら以外は比較例1と同様にして図4(d)に示すサージアブソーバを作製し、同様にサージ耐量及びテーピングの可否並びに封着の可否を調べ、結果を表1に示した。
【0032】
比較例3
実施例1において緩衝部材10Bを用いなかったこと以外は同様にして図1に示すサージアブソーバを作製し、同様にサージ耐量及びテーピングの可否並びに封着の可否を調べ、結果を表1に示した。
【0033】
【表1】
【0034】
表1より、本発明のサージアブソーバは、小型でしかも寿命特性に優れ、テーピング特性、封着特性にも優れることが明らかである。
【0035】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明のサージアブソーバは、サージ耐量が大きく、寿命特性に優れ、しかも、ガラス管の内径や肉厚を大きくする必要がないため、小型で、自動実装に必要な5mmピッチのテーピングが可能であると共に、市販品で入手が容易な通常の封止材で封着することができる。また、ガラスビーズが不要で、ガラス管自体のコストアップの問題がないため、安価に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のサージアブソーバの実施の形態を示す断面図である。
【図2】図2(a)は緩衝部材の実施例を示す平面図、図2(b)は同側面図である。
【図3】図4(a)は緩衝部材の他の実施例を示す平面図、図4(b)は同側面図である。
【図4】従来のサージアブソーバを示す断面図である。
【図5】図5(a)は緩衝部材の別の実施例を示す正面図、図5(b)は側面図である。
【符号の説明】
1 セラミック素体
2 導電性皮膜
2A マイクロギャップ
3 サージ吸収素子
4A,4B キャップ電極
5,5A,5B ガラス管
6A,6B スラグリード
10,10B,10C 緩衝部材
Claims (2)
- ガラス管と、該ガラス管内に挿入されたサージ吸収素子と、該ガラス管の両端に設けられた封止電極とを有する放電形成型のサージアブソーバにおいて、
該サージ吸収素子の端部と封止電極との間に、2000℃以上の高融点金属よりなる緩衝部材が介在しており、該緩衝部材を主放電電極としたサージアブソーバであって、
該緩衝部材は前記ガラス管の軸方向に弾性変形することができることを特徴とするサージアブソーバ。 - 請求項1において、該高融点金属は、Cr、Mo及びWの少なくとも1種からなる金属又は合金であることを特徴とするサージアブソーバ。
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