JP3598536B2 - ランス - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、溶融金属を精錬するに当たって溶融金属に精錬用気体や精錬用粉体を吹き込むランスに関する。
【0002】
【従来の技術】
溶融金属にその上方のランスから精錬用気体や精錬用粉体を吹き込んで精錬する処理方法が製鋼分野において利用されている。精錬用粉体はランス中を搬送用気体によって搬送されて溶融金属中に吹き込まれる。精錬用粉体を吹き込むためのランスとしては、消耗式のランスと非消耗式のランスが知られており、消耗式ランスでは単管構造が用いられ、非消耗式ランスでは内部に冷却水を通す3重管構造のものが用いられるのが一般的である。精錬用粉体を吹き込む場合は、精錬用粉体や搬送用気体の流速を超音速にする必要がないので、いわゆるストレート形のランスが使用されている。
【0003】
一方、精錬用気体を溶融金属中に吹込む場合には、吹き込んだ精錬用気体と溶融金属との反応効率の向上を図るために精錬用気体の流速を可能な限り大きくすることが望ましい。このため、精錬用気体を超音速にすることが一般的であり、中細区間を有するいわゆるラバール形のランスが一般的に用いられている。
また、精錬用粉体と精錬用気体の両者を同時もしくは個別に溶融金属に吹き込むことがある。この場合、上記のようにそれぞれの吹き込みに適した2種類のランスを用いるか、もしくは2種類のランスを並列に組み合わせた構造のランスを用いることが一般的である(例えば、特公昭35−14501号公報、特開昭59−35615号公報、特開昭60−46313号公報、特開平2−221312号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来のランスを使用して精錬する方法としては、
(1)精錬用粉体及び精錬用気体それぞれに適した2種類のランスを用いる方法
(2)ストレート形のランスを用いて精錬用粉体、精錬用気体を吹き込む方法
(3)ラバール形のランスを用いて精錬用粉体、精錬用気体を吹き込む方法
が考えられるが、これら(1)〜(3)の方法にはそれぞれ、下記に述べるような問題点がある。
【0005】
(1)の方法では、2種類のランスを用いるので、ランスの昇降装置などの付帯設備を2式必要とする上、スペースに余裕がない場合には設置が困難である。また、ランスが水冷構造の場合には3重管になるので、単管に比べ費用が2倍以上になる。
(2)の方法では、精錬用気体のみを吹き込む場合、精錬用気体を超音速にまで加速できないので、精錬用気体と溶融金属との反応効率の低下は免れない。また、精錬用粉体を吹き込む場合、ストレート形であるので加速距離を十分取ることができるにも拘らず、超音速に加速するための中細区間がないので搬送用気体が音速までにしか加速されない。このため、精錬用粉体の速度も十分に大きくならない。さらに、ランスの出口形状に広がり角度が無いので、精錬用粉体を広域に散布できない。
【0006】
(3)の方法では、精錬用気体のみを吹き込む場合は、超音速で吹き込むことができる。しかし、精錬用粉体を吹き込む場合は、精錬用粉体を搬送する搬送用気体を超音速にまで加速できるが、精錬用粉体のための十分な加速距離を取ることができないので、精錬用粉体は低速度のままである。
また、上記参照文献には、ランスの出口形状についての説明がなく、精錬用気体及び精錬用粉体を高速かつ広域に吹込むことができない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、精錬用気体と精錬用粉体とを同時に、必要十分な高速度で吹込むことができ、精錬用気体による攪拌効果と精錬用粉体による溶鋼中の不純物除去(例えば[S]の除去)とを両立できるランスを提供することを目的とする。
【0008】
上記目的を達成するための本発明は、溶融金属に気体と粉体とを同時に吹き込むランスにおいて、前記気体及び前記粉体を加速させるラバール形内管と、前記ラバール形内管の先端に同軸に接続されたストレート形内管とを備えると共に、該ストレート形内管の直径は、前記粉体を前記気体により加速させるように、ラバール形内管後端の直径と同一にし、ラバール及びストレートの両区間を滑らかに接続してなることを特徴とするものである。ラバール形内管のラバール区間に関しては等エントロピー流れとして流体力学的にその形状を決定できその設計方法は既知である。ストレート形内管のストレート区間の直径はラバール区間後端の直径と同一にし、両区間を滑らかに接続する。ストレート区間の寸法は、ファノー流れ(Fanno流れ)として解析できる。
【0009】
ここで、前記ストレート形内管は、そこを通過する粉体の速度が搬送用気体のもつエネルギーで達成し得る最高速度になる長さを有することが好ましい。
【0010】
また、前記ストレート形内管を、末広がり形状の内管に代えることが好ましい。
さらに、末広がりの角度を、中心軸に対して3°以上10°以下にすることが好ましい。噴射するガスがランス内で過不足なく膨張でき適正な流れになることが条件であり、角度が上記範囲よりも小さすぎるとノズル内で十分に膨張できずに、ノズル外で膨張波を生ずる。一方、角度が上記範囲よりも大きすぎるとノズル内で膨張波が生ずる。適正な流れとは、噴射するガスがランス内外の圧力差分だけ過不足なく膨張し、衝撃波を生じない流れをいう。
【0011】
【作用】
本発明のランスによれば、精錬用気体のみを噴射する場合は、従来のランスと同様にラバール形内管のラバール区間において精錬用気体が超音速にまで加速される。従来のランスでは、ラバール形内管の先端から噴射されるが本発明のランスでは、ストレート形内管のストレート区間で10%程度の速度減衰を経て噴射される。精錬用粉体を噴射する場合は、ラバール区間において搬送用気体が超音速にまで加速され、ストレート区間において搬送用気体から精錬用粉体にエネルギーが伝達され、搬送用気体の速度が減衰する一方、精錬用粉体の速度が上昇して噴射される。従って、精錬用気体のみを噴射する場合は従来ランスに比べ速度の減衰がほとんどなく、一方、精錬用粉体を噴射する場合には、従来ランスに比べ大幅に速度を向上できる。
【0012】
ここで、ストレート形内管に代えて、末広がり形状の内管を用いた場合は、精錬用気体や精錬用粉体を溶融金属に広域にわたって吹き込める。
【0013】
【実施例】
以下、図面を参照して本発明のランスの実施例を説明する。図1は、第1実施例のランスを示す断面図である。
ランス10は、気体を加速させるラバール形内管の先端に粉体を加速させるストレート形内管を同軸に接続した形状の内管20と、この内管20を囲んで冷却する外管40とを備えて構成されている。内管20には、先細りになった先細区間22と最小径の絞り区間24と先太りになった拡大区間26とからなるラバール区間28が形成されており、このラバール区間28の先端には拡大区間26の先端と同径のストレート区間30が形成されている。ラバール形内管とは、ラバール区間28からなる内管をいい、ストレート形内管とはストレート区間30からなる内管をいう。また、外管40には、入側の通水路42と出側の通水路44とを仕切る仕切板46が備えられている。
【0014】
次に、図2を参照してランス10を用いて溶融金属を精錬した例を説明する。ここでは、RH環流式脱ガス設備にランス10を備え、脱Sを目的とする精錬用粉体としてCaOを噴射し、脱Cを目的とする精錬用気体として酸素を噴射した場合を比較例と共にする。比較例のランスとしては特公昭35−14501号公報に記載されたランスを用いた。精錬用気体(酸素)は0.7MPa−abs×40Nm3 /min、精錬用粉体(CaO)は250kg/min、精錬用粉体を搬送するための搬送用気体(Ar)は0.4MPa−abs×20Nm3 /minとした。表1に、精錬用気体と精錬用粉体の噴射速度を比較して示す。表1に示されているように、本発明のランスでは精錬用粉体の噴射速度が従来のランスに比べ1.7倍に向上した。
【0015】
【表1】
【0016】
この結果、溶鋼面への精錬用粉体の到達速度も、従来のランスを用いた場合に比べ1.7倍に維持されており、図2に示されるように、排気ガス中にさらわれる精錬用粉体の割合が減少し、溶融金属面に到達する割合(捕捉率と定義する)が向上した。尚、図2では、精錬用粉体の粒径をパラメータとして縦軸に示し、溶鋼面からランス先端までの距離を横軸に示した。
【0017】
以上説明したように、ランス10を用いることにより、精錬用粉体の速度が従来法に比べ1.7倍程度に向上するので溶融金属への精錬用粉体の浸漬深さが増大し、溶融金属への捕捉率が向上するなどの利点を有する。従って、例えば極低S鋼の溶製に使用した場合を例にとると、
(1)同一の精錬用粉体の原単位で処理時間が30%低減し、次工程とのマッチング精度が向上した。
(2)処理時間が短縮できるので溶鋼の温度降下が少なくなり、この結果、溶鋼の温度保証が不要になって精錬プロセスを省力でき、精錬コストが溶鋼加熱設備を用いる場合に比べ30%に低減した。
(3)(2)と同様の理由で溶鋼加熱設備を省略できるので処理中のCピックアップがなくなり溶鋼清浄度が向上し、製品欠陥が0.3%低減した。
【0018】
以上述べたようにRH脱ガス設備の大幅な改造がなく、既存のランス先端部の小改造のみにもかかわらず、本発明による総合的効果は極めて大きい。尚、上記の例では、ランスをRH環流式脱ガスに用いたが、溶融金属に精錬用粉体を上部から噴射する装置(例えばVODにおける精錬用粉体上吹き)にも適用できることはいうまでもない。
【0019】
次に、図3、図4を参照して本発明のランスの第2実施例を説明する。図3は第2実施例のランスを示す断面図、図4はランス内での気体と粉体の速度を示すグラフである。
ここでは、ランス50から搬送用気体を用いて精錬用粉体を噴射する場合を例に説明する。矢印52で示される方向から吹き込まれた搬送用気体は、ランス入口54からランス50の内部に入り、先細区間56で音速まで加速され、絞り区間58でちょうど音速に達する。さらに末広区間60で超音速に加速される。精錬用粉体を吹込む時は、搬送用気体のもつエネルギーが精錬用粉体に与えられて、末広区間60で精錬用粉体が加速されていき、ランス出口62において精錬用粉体は最高速度に達する。末広区間60は、広がり角度θを有するので、ランス50から噴射された精錬用粉体噴流は広がりをもち、広域に散布される。
【0020】
ここで、ランス内での精錬用粉体の速度と搬送用気体の速度を測定する方法を説明する。等エントロピー流れとして搬送用気体の速度を計算し、精錬用粉体の速度は、搬送用気体のもつエネルギーが精錬用粉体を加速させるために消費されるとして計算した。以上より、精錬用粉体の速度と搬送用気体の速度が求められるので、精錬用粉体の速度が最大値になる長さをランスの長さとすればよい。上記の方法で、精錬用粉体の流速と搬送用気体の流速を求めた結果を図4に示す。搬送用気体の流速が減少していく分、精錬用粉体の流速は増加していくことがわかる。精錬用粉体の流速が最高ピーク値に達する距離を、加速のための末広区間60の最適長さとする。精錬用気体のみを吹込む場合(ここでは酸素)は、図4の実線(KTB)で示されるように、640m/sまで加速されて超音速の流れになる。
【0021】
次に、RH環流式脱ガス設備にランス10を備え、表2に示す条件で、脱Sを目的とする精錬用粉体としてCaOを噴射し、脱Cを目的とする精錬用気体として酸素を噴射した場合を比較例と共に表3、表4に示す。比較例のランスとしては特公昭35−14501号公報に記載されたランスを用いた。
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
【表4】
【0025】
ランス50は、精錬用粉体の加速区間を備え、さらに加速区間が末広がりになっているので、表3、表4に示されるように、従来のランスに比べ精錬用粉体が十分に加速されると共に広域に散布された。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のランスによれば、精錬用気体のみを噴射する場合は、従来のランスと同様にラバール形内管のラバール区間において精錬用気体が超音速にまで加速され、精錬用粉体を噴射する場合においては、ラバール区間において搬送用気体が超音速にまで加速され、ストレート区間において搬送用気体から精錬用粉体にエネルギーが伝達され精錬用粉体の速度が上昇して噴射される。従って、精錬用気体のみを噴射する場合は従来ランスに比べて速度の減衰がほとんどなく、一方、精錬用粉体を噴射する場合には、従来ランスに比べ大幅に速度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のランスの第1実施例を示す断面図である。
【図2】第1実施例のランスによる捕捉率と比較例のランスによる捕捉率を比較して示すグラフである。
【図3】本発明のランスの第2実施例を示す断面図である。
【図4】ランス内での気体と粉体の速度を示すグラフである。
【符号の説明】
10,50 ランス
20 内管
22,56 先細区間
24,58 絞り区間
26 拡大区間
28 ラバール区間
30 ストレート区間
60 末広区間
【産業上の利用分野】
本発明は、溶融金属を精錬するに当たって溶融金属に精錬用気体や精錬用粉体を吹き込むランスに関する。
【0002】
【従来の技術】
溶融金属にその上方のランスから精錬用気体や精錬用粉体を吹き込んで精錬する処理方法が製鋼分野において利用されている。精錬用粉体はランス中を搬送用気体によって搬送されて溶融金属中に吹き込まれる。精錬用粉体を吹き込むためのランスとしては、消耗式のランスと非消耗式のランスが知られており、消耗式ランスでは単管構造が用いられ、非消耗式ランスでは内部に冷却水を通す3重管構造のものが用いられるのが一般的である。精錬用粉体を吹き込む場合は、精錬用粉体や搬送用気体の流速を超音速にする必要がないので、いわゆるストレート形のランスが使用されている。
【0003】
一方、精錬用気体を溶融金属中に吹込む場合には、吹き込んだ精錬用気体と溶融金属との反応効率の向上を図るために精錬用気体の流速を可能な限り大きくすることが望ましい。このため、精錬用気体を超音速にすることが一般的であり、中細区間を有するいわゆるラバール形のランスが一般的に用いられている。
また、精錬用粉体と精錬用気体の両者を同時もしくは個別に溶融金属に吹き込むことがある。この場合、上記のようにそれぞれの吹き込みに適した2種類のランスを用いるか、もしくは2種類のランスを並列に組み合わせた構造のランスを用いることが一般的である(例えば、特公昭35−14501号公報、特開昭59−35615号公報、特開昭60−46313号公報、特開平2−221312号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来のランスを使用して精錬する方法としては、
(1)精錬用粉体及び精錬用気体それぞれに適した2種類のランスを用いる方法
(2)ストレート形のランスを用いて精錬用粉体、精錬用気体を吹き込む方法
(3)ラバール形のランスを用いて精錬用粉体、精錬用気体を吹き込む方法
が考えられるが、これら(1)〜(3)の方法にはそれぞれ、下記に述べるような問題点がある。
【0005】
(1)の方法では、2種類のランスを用いるので、ランスの昇降装置などの付帯設備を2式必要とする上、スペースに余裕がない場合には設置が困難である。また、ランスが水冷構造の場合には3重管になるので、単管に比べ費用が2倍以上になる。
(2)の方法では、精錬用気体のみを吹き込む場合、精錬用気体を超音速にまで加速できないので、精錬用気体と溶融金属との反応効率の低下は免れない。また、精錬用粉体を吹き込む場合、ストレート形であるので加速距離を十分取ることができるにも拘らず、超音速に加速するための中細区間がないので搬送用気体が音速までにしか加速されない。このため、精錬用粉体の速度も十分に大きくならない。さらに、ランスの出口形状に広がり角度が無いので、精錬用粉体を広域に散布できない。
【0006】
(3)の方法では、精錬用気体のみを吹き込む場合は、超音速で吹き込むことができる。しかし、精錬用粉体を吹き込む場合は、精錬用粉体を搬送する搬送用気体を超音速にまで加速できるが、精錬用粉体のための十分な加速距離を取ることができないので、精錬用粉体は低速度のままである。
また、上記参照文献には、ランスの出口形状についての説明がなく、精錬用気体及び精錬用粉体を高速かつ広域に吹込むことができない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、精錬用気体と精錬用粉体とを同時に、必要十分な高速度で吹込むことができ、精錬用気体による攪拌効果と精錬用粉体による溶鋼中の不純物除去(例えば[S]の除去)とを両立できるランスを提供することを目的とする。
【0008】
上記目的を達成するための本発明は、溶融金属に気体と粉体とを同時に吹き込むランスにおいて、前記気体及び前記粉体を加速させるラバール形内管と、前記ラバール形内管の先端に同軸に接続されたストレート形内管とを備えると共に、該ストレート形内管の直径は、前記粉体を前記気体により加速させるように、ラバール形内管後端の直径と同一にし、ラバール及びストレートの両区間を滑らかに接続してなることを特徴とするものである。ラバール形内管のラバール区間に関しては等エントロピー流れとして流体力学的にその形状を決定できその設計方法は既知である。ストレート形内管のストレート区間の直径はラバール区間後端の直径と同一にし、両区間を滑らかに接続する。ストレート区間の寸法は、ファノー流れ(Fanno流れ)として解析できる。
【0009】
ここで、前記ストレート形内管は、そこを通過する粉体の速度が搬送用気体のもつエネルギーで達成し得る最高速度になる長さを有することが好ましい。
【0010】
また、前記ストレート形内管を、末広がり形状の内管に代えることが好ましい。
さらに、末広がりの角度を、中心軸に対して3°以上10°以下にすることが好ましい。噴射するガスがランス内で過不足なく膨張でき適正な流れになることが条件であり、角度が上記範囲よりも小さすぎるとノズル内で十分に膨張できずに、ノズル外で膨張波を生ずる。一方、角度が上記範囲よりも大きすぎるとノズル内で膨張波が生ずる。適正な流れとは、噴射するガスがランス内外の圧力差分だけ過不足なく膨張し、衝撃波を生じない流れをいう。
【0011】
【作用】
本発明のランスによれば、精錬用気体のみを噴射する場合は、従来のランスと同様にラバール形内管のラバール区間において精錬用気体が超音速にまで加速される。従来のランスでは、ラバール形内管の先端から噴射されるが本発明のランスでは、ストレート形内管のストレート区間で10%程度の速度減衰を経て噴射される。精錬用粉体を噴射する場合は、ラバール区間において搬送用気体が超音速にまで加速され、ストレート区間において搬送用気体から精錬用粉体にエネルギーが伝達され、搬送用気体の速度が減衰する一方、精錬用粉体の速度が上昇して噴射される。従って、精錬用気体のみを噴射する場合は従来ランスに比べ速度の減衰がほとんどなく、一方、精錬用粉体を噴射する場合には、従来ランスに比べ大幅に速度を向上できる。
【0012】
ここで、ストレート形内管に代えて、末広がり形状の内管を用いた場合は、精錬用気体や精錬用粉体を溶融金属に広域にわたって吹き込める。
【0013】
【実施例】
以下、図面を参照して本発明のランスの実施例を説明する。図1は、第1実施例のランスを示す断面図である。
ランス10は、気体を加速させるラバール形内管の先端に粉体を加速させるストレート形内管を同軸に接続した形状の内管20と、この内管20を囲んで冷却する外管40とを備えて構成されている。内管20には、先細りになった先細区間22と最小径の絞り区間24と先太りになった拡大区間26とからなるラバール区間28が形成されており、このラバール区間28の先端には拡大区間26の先端と同径のストレート区間30が形成されている。ラバール形内管とは、ラバール区間28からなる内管をいい、ストレート形内管とはストレート区間30からなる内管をいう。また、外管40には、入側の通水路42と出側の通水路44とを仕切る仕切板46が備えられている。
【0014】
次に、図2を参照してランス10を用いて溶融金属を精錬した例を説明する。ここでは、RH環流式脱ガス設備にランス10を備え、脱Sを目的とする精錬用粉体としてCaOを噴射し、脱Cを目的とする精錬用気体として酸素を噴射した場合を比較例と共にする。比較例のランスとしては特公昭35−14501号公報に記載されたランスを用いた。精錬用気体(酸素)は0.7MPa−abs×40Nm3 /min、精錬用粉体(CaO)は250kg/min、精錬用粉体を搬送するための搬送用気体(Ar)は0.4MPa−abs×20Nm3 /minとした。表1に、精錬用気体と精錬用粉体の噴射速度を比較して示す。表1に示されているように、本発明のランスでは精錬用粉体の噴射速度が従来のランスに比べ1.7倍に向上した。
【0015】
【表1】
【0016】
この結果、溶鋼面への精錬用粉体の到達速度も、従来のランスを用いた場合に比べ1.7倍に維持されており、図2に示されるように、排気ガス中にさらわれる精錬用粉体の割合が減少し、溶融金属面に到達する割合(捕捉率と定義する)が向上した。尚、図2では、精錬用粉体の粒径をパラメータとして縦軸に示し、溶鋼面からランス先端までの距離を横軸に示した。
【0017】
以上説明したように、ランス10を用いることにより、精錬用粉体の速度が従来法に比べ1.7倍程度に向上するので溶融金属への精錬用粉体の浸漬深さが増大し、溶融金属への捕捉率が向上するなどの利点を有する。従って、例えば極低S鋼の溶製に使用した場合を例にとると、
(1)同一の精錬用粉体の原単位で処理時間が30%低減し、次工程とのマッチング精度が向上した。
(2)処理時間が短縮できるので溶鋼の温度降下が少なくなり、この結果、溶鋼の温度保証が不要になって精錬プロセスを省力でき、精錬コストが溶鋼加熱設備を用いる場合に比べ30%に低減した。
(3)(2)と同様の理由で溶鋼加熱設備を省略できるので処理中のCピックアップがなくなり溶鋼清浄度が向上し、製品欠陥が0.3%低減した。
【0018】
以上述べたようにRH脱ガス設備の大幅な改造がなく、既存のランス先端部の小改造のみにもかかわらず、本発明による総合的効果は極めて大きい。尚、上記の例では、ランスをRH環流式脱ガスに用いたが、溶融金属に精錬用粉体を上部から噴射する装置(例えばVODにおける精錬用粉体上吹き)にも適用できることはいうまでもない。
【0019】
次に、図3、図4を参照して本発明のランスの第2実施例を説明する。図3は第2実施例のランスを示す断面図、図4はランス内での気体と粉体の速度を示すグラフである。
ここでは、ランス50から搬送用気体を用いて精錬用粉体を噴射する場合を例に説明する。矢印52で示される方向から吹き込まれた搬送用気体は、ランス入口54からランス50の内部に入り、先細区間56で音速まで加速され、絞り区間58でちょうど音速に達する。さらに末広区間60で超音速に加速される。精錬用粉体を吹込む時は、搬送用気体のもつエネルギーが精錬用粉体に与えられて、末広区間60で精錬用粉体が加速されていき、ランス出口62において精錬用粉体は最高速度に達する。末広区間60は、広がり角度θを有するので、ランス50から噴射された精錬用粉体噴流は広がりをもち、広域に散布される。
【0020】
ここで、ランス内での精錬用粉体の速度と搬送用気体の速度を測定する方法を説明する。等エントロピー流れとして搬送用気体の速度を計算し、精錬用粉体の速度は、搬送用気体のもつエネルギーが精錬用粉体を加速させるために消費されるとして計算した。以上より、精錬用粉体の速度と搬送用気体の速度が求められるので、精錬用粉体の速度が最大値になる長さをランスの長さとすればよい。上記の方法で、精錬用粉体の流速と搬送用気体の流速を求めた結果を図4に示す。搬送用気体の流速が減少していく分、精錬用粉体の流速は増加していくことがわかる。精錬用粉体の流速が最高ピーク値に達する距離を、加速のための末広区間60の最適長さとする。精錬用気体のみを吹込む場合(ここでは酸素)は、図4の実線(KTB)で示されるように、640m/sまで加速されて超音速の流れになる。
【0021】
次に、RH環流式脱ガス設備にランス10を備え、表2に示す条件で、脱Sを目的とする精錬用粉体としてCaOを噴射し、脱Cを目的とする精錬用気体として酸素を噴射した場合を比較例と共に表3、表4に示す。比較例のランスとしては特公昭35−14501号公報に記載されたランスを用いた。
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
【表4】
【0025】
ランス50は、精錬用粉体の加速区間を備え、さらに加速区間が末広がりになっているので、表3、表4に示されるように、従来のランスに比べ精錬用粉体が十分に加速されると共に広域に散布された。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のランスによれば、精錬用気体のみを噴射する場合は、従来のランスと同様にラバール形内管のラバール区間において精錬用気体が超音速にまで加速され、精錬用粉体を噴射する場合においては、ラバール区間において搬送用気体が超音速にまで加速され、ストレート区間において搬送用気体から精錬用粉体にエネルギーが伝達され精錬用粉体の速度が上昇して噴射される。従って、精錬用気体のみを噴射する場合は従来ランスに比べて速度の減衰がほとんどなく、一方、精錬用粉体を噴射する場合には、従来ランスに比べ大幅に速度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のランスの第1実施例を示す断面図である。
【図2】第1実施例のランスによる捕捉率と比較例のランスによる捕捉率を比較して示すグラフである。
【図3】本発明のランスの第2実施例を示す断面図である。
【図4】ランス内での気体と粉体の速度を示すグラフである。
【符号の説明】
10,50 ランス
20 内管
22,56 先細区間
24,58 絞り区間
26 拡大区間
28 ラバール区間
30 ストレート区間
60 末広区間
Claims (3)
- 溶融金属に気体と粉体とを同時に吹き込むランスにおいて、
前記気体及び前記粉体を加速させるラバール形内管と、前記ラバール形内管の先端に同軸に接続されたストレート形内管とを備えると共に、該ストレート形内管の直径は、前記粉体を前記気体により加速させるように、ラバール形内管後端の直径と同一にし、ラバール及びストレートの両区間を滑らかに接続してなることを特徴とするランス。 - 前記ストレート形内管は、そこを通過する粉体の速度が搬送用気体のもつエネルギーで達成し得る最高速度になる長さを有することを特徴とする請求項1記載のランス。
- 前記ストレート形内管に代えて、末広がりの角度を、中心軸に対して3°以上10°以下とした末広がり形状の内管を備えたことを特徴とする請求項1記載のランス。
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