JP3597978B2 - サンプル希釈分析装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、火力発電所等のプラントの蒸気/復水/給水等を採取して得たサンプル水を希釈して分析処理するサンプル希釈分析装置に関するのものである。
【0002】
【従来の技術】
火力発電所の発電プラントでは、例えば蒸気、復水、給水系統水中に溶け込んでいる酸素により配管が腐食するので、これを防止する目的で、この溶存酸素に対して還元作用を行うヒドラジンを注入している。
【0003】
このヒドラジンのサンプル水中での濃度(残留ヒドラジン濃度)には前記還元作用が必要且つ十分に行われるような基準値が設定されており、通常の運転状態(起動工程から通常運転の間)では、その残留ヒドラジン濃度をヒドラジン計で計測してフィードバック制御によりヒドラジン補給量を調整し、その残留ヒドラジン濃度が基準値となるように制御している。あるいは、系統水の流量に見合うヒドラジン量を予め計算してその補給量を系統水の流量に比例して制御し、その残留ヒドラジン濃度が基準値となるようにヒドラジン計で監視している。
【0004】
ところが、発電プラントを停止して系統水配管を大気開放した後の立ち上げの時、あるいはプラントの竣工後の立ち上げの時等のように、停止時から次の起動時までの間では、多量の空気(酸素)が混入しているので注入ヒドラジンの量を通常の運転時よりも多くする必要があり、そのとき制御すべき残留ヒドラジン濃度は最大で、例えば100ppm程度にまで高濃度となる。
【0005】
しかしながら、通常市販されているヒドラジン計の計測範囲は、0〜10ppmであって上記したような高濃度の測定は不可能であった。このため、手分析で残留ヒドラジン濃度を計測して、その計測結果に基づく補給を手動操作で行うのが現状であった。また、ある程度自動化を行う場合であっても、プラントの動作内容に合わせて、予め決められた量を注入するだけで、適量制御を行うものではなく、どうしても多めに補給せざるを得ず、ヒドラジンの無駄な補給を余儀なくされていた。
【0006】
そこで、このような問題を解決するために、高濃度の残留ヒドラジンであっても従来の市販のヒドラジン計による計測を可能にして、これに基づき適量なヒドラジンの自動補給制御ができるようにした技術として、本出願人により出願した実開平6−86056号公報「純水希釈サンプリング装置」がある。この装置は、系統水から採取したサンプル水を純水により希釈してから所望の分析を行い、その分析結果を希釈倍率により補正して、真の分析計測値を得るようにしたものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この装置では、サンプル水と純水の量を流量計で計測しているものの、流量変動があった場合には、その変動時の流量値に基づく希釈倍率により行う分析値の補正処理のタイミングが遅れて、分析補正値に誤差が含まれるようになるという問題がある。
【0008】
また、このようなタイミングの遅れを小さくするためには、流量計から分析計までの配管長をできるだけ短くする必要があるが、短くすればするほど、サンプル水と純水の撹拌効果が低下するので、やはり分析補正値の精度が劣化するという問題がある。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、サンプル水と純水に流量変動が生じないようにして分析補正精度の向上を図り、前記した問題を解決することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、第1の本発明は、サンプル水を取り込むサンプル水導入配管に希釈用の純水を取り込む純水導入配管を接続し、前記サンプル水を前記純水で希釈した希釈水について測定部において各種測定を行ない、該測定結果を前記サンプル水の希釈倍率で補正するようにしたサンプル希釈分析装置において、所定の水頭圧に設定するヘッドベッセルを各々設けるとともに、ヘッドベッセルの後段に一定の流量の液体を吐き出す定量ポンプを各々設け、
これら両定量ポンプは、ストローク長の設定により流量調整可能であり、且つ共通のモータにより駆動する構成とした。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記定量ポンプは、ストローク長を設定するためのドライブユニットと、その設定ストローク長を検出するセンサを備え、流量設定器によりストローク長が設定されるとその設定信号を流量制御装置が取り込んで、その設定信号に対応したストローク長となるようにドライブユニットが制御され、そのときの実際のストローク長がセンサで検知される構成とした。
【0012】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記測定部の前段に、前記希釈水を撹拌する撹拌手段を設けるとともに、ヘッドベッセルを設け、攪拌手段によって攪拌した希釈水をヘッドベッセルでその水頭圧を一定にしてから測定部で測定する構成とした。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施の形態のサンプル希釈分析装置の系統図であり、火力発電所の系統水の残留ヒドラジン濃度の計測に適用したものである。Aは発電プラントの蒸気配管、給水配管、又は復水配管等の系統水から採取して減温、減圧したサンプル水を取り込むサンプル水導入配管であり、その初段には電磁弁1、フロートスイッチ2a付きのヘッドベッセル2、脱泡器3等が配置されている。ここでは、電磁弁1で取り込まれたサンプル水が、ヘッドベッセル2によって所定の水頭圧に設定されると共に、脱泡器3によって内部のエアー抜きが行われる。ヘッドベッセル2のフロートスイッチ2aは、作動することによりサンプル水の供給量が所定値以下(例えば、供給断等)であることの検知信号を出力する。この検知信号は警報その他に使用される。
【0014】
Bは希釈用の純水をタンク(図示せず)から取り込むための純水導入配管であり、その初段には電磁弁4、フロートスイッチ5a付きのヘッドベッセル5、脱泡器6等が設けられている。ここでは、電磁弁4で取り込まれた純水が、ヘッドベッセル5によって所定の水頭圧(サンプル水と同一である必要はない。)に設定されると共に、脱泡器6によって内部のエアー抜きが行われる。ヘッドベッセル5のフロートスイッチ5aは、作動することにより純水の供給量が所定値以下(例えば、供給断等)であることの検知信号を出力する。この検知信号も警報その他に使用される。
【0015】
7、8は各々サンプル水導入配管A、純水導入配管Bに取り付けられたプランジャ式の定量ポンプであり、共通のモータ9により駆動され、その吐き出し流量は、サンプル水側の定量ポンプ7が例えば3.6〜36cc/min、純水側の定量ポンプ8が例えば30〜300cc/minであり、その細かい流量調整は、ストローク長を調整することにより行われるようになっている。
【0016】
10はサンプル水のポンプ7の吐き出し側に所定の背圧を与えるための背圧弁、11はポンプ7の吐き出し側の圧力が所定値以上になるのを防ぐためのリリーフ弁である。また、12は純水のポンプ8の吐き出し側に所定の背圧を与えるための背圧弁、13はポンプ8の吐き出し側の圧力が所定値以上になるのを防ぐためのリリーフ弁である。
【0017】
14〜17は手動弁、18、19は流量計である。一方の流量計18はサンプル水の流量を計測表示し、他方の流量計19は純水の流量を計測表示する。
【0018】
Cは上記したサンプル水導入配管Aと純水導入配管Bを連結してサンプル水と純水を混合するための希釈水配管であり、そこにはラインミキサ20が設けられている。このラインミキサ20は、流量計18、19から吐き出されたサンプル水と純水との混合水である希釈水を、内部に形成された螺旋状の通路を通過させることにより撹拌して、その希釈水中の残留ヒドラジン等の測定対象物質の濃度分布を均一化するためのものである。
【0019】
21はヘッドベッセル、22はヒドラジン計である。ラインミキサ20から吐き出された希釈水は、定量ポンプ7、8の吐き出し時の脈流の影響を受けており、ヘッドベッセル21によって所定の安定した水頭圧に設定された状態で、ヒドラジン計22に送られて、残留ヒドラジンの濃度が計測される。23、24は手動弁である。
【0020】
さて、この実施の形態では、サンプル水と純水は、その各々が所定の水頭圧で且つエアー抜きされてから、定量ポンプ7、8に吸引されてそこで所定の流量に設定されてから混合希釈され、さらにラインミキサ20で撹拌され、ヒドラジン計22で残留ヒドラジン濃度が計測される。
【0021】
いま、定量ポンプ7から吐き出されたサンプル水の流量がf1、定量ポンプ8から吐き出された純水の流量がf2であったとすると、サンプル水は純水によって、
1/K=f1/(f1+f2) ・・・・(1)
に希釈され、その希釈倍率はK倍となる。そして、このときのヒドラジン計22により計測したヒドラジン濃度がdであったとすると、真の濃度Dは、
D=Kd ・・・・(2)
により求めることができる。
【0022】
図2はこのヒドラジン濃度の計測システムの構成を示す図である。定量ポンプ7、8には、そのストローク長(流量)を設定するためのアクチュエータとしてのサーボモータを使用したドライブユニット7a、8aと、その設定ストローク長を検出するセンサ(図示せず)が備えられている。
【0023】
25はサンプル水流量制御装置、26は純水流量制御装置、27はサンプル水流量設定器、28は純水流量設定器である。サンプル水流量設定器27によって定量ポンプ7のストローク長が設定されると、サンプル水流量制御装置25がその設定信号S1を取り込んで、その設定信号S1に対応したストローク長となるようにドライブユニット7aを制御し、そのときの実際のストローク長の信号がセンサで検知され流量f1としてフィードバックされ、目標値制御が行われる。このときの流量f1は、サンプル水流量設定器27に送り返され、表示される。
【0024】
また、純水流量設定器28によって定量ポンプ8のストローク長が設定されると、純水流量制御装置26がその設定信号S2を取り込んで、その設定信号S2に対応したストローク長となるようにドライブユニット8aを制御し、そのときの実際のストローク長の信号がセンサで検知され流量f2としてフィードバックされ、目標値制御が行われる。このときの流量f2は、純水流量設定器27に送り返され、表示される。
【0025】
29は演算装置であり、上記流量f1、f2と、ヒドラジン濃度の計測値dを取り込んで、前記した式(1)、(2)を演算して、希釈倍率Kや真のヒドラジン濃度値Dを算出する。希釈倍率Kは希釈倍率表示器30で表示され、真のヒドラジン濃度Dはヒドラジン濃度表示器31で表示されるとともに、ヒドラジン補給制御装置32に制御信号として入力される。
【0026】
以上から、サンプル水導入配管Aにより取り込まれたサンプル水中のヒドラジン濃度が、ヒドラジン計22の測定範囲を超えた高濃度であったとしても、純水による希釈倍率Kを所定の値に設定することにより、ヒドラジン計22の測定範囲の内に入るように希釈してから計測することができ、ヒドラジンの補給制御の自動化を実現することができる。
【0027】
しかも、本実施の形態では、ヘッドベッセル2、5によりサンプル水や純水を所定の水頭圧に変換しているので、サンプル水や純水の取り込みの流量が多少変動してもこれを吸収することができる。このとき余剰のサンプル水や純水はドレインに排水される。さらにこのヘッドベッセル2、5の後段に定量ポンプ7、8を介在させているので、そのサンプル水や純水の取り込み流量の変動をほぼ完全に吸収することができる。
【0028】
また、この定量ポンプ7、8はその吐き出し流量をかなり広い範囲で任意に設定することができるので、サンプル水の希釈倍率を任意に設定することができる。このときは、例えば、弁14を閉じ弁15を開いて、予めサンプル水のヒドラジン濃度を手分析で計測してから希釈倍率の設定を行えばよい。このようにすることにより、ヒドラジン計22の計測感度がその濃度範囲によって異なるような場合には、その最も高感度な計測濃度範囲に入るよう希釈濃度を設定することができる。
【0029】
また、この高感度な計測濃度範囲から高濃度側にはずれた場合に、その計測結果に応じて定量ポンプ8の吐き出し流量を多くして希釈倍率を高め、低濃度側にはずれた場合にはその流量を少なくして希釈倍率を低くするように、定量ポンプ8にフィードバックをかければ、計測濃度がヒドラジン計22の高感度な計測濃度範囲に入るように自動的に制御できる。
【0030】
また、本実施の形態では、サンプル水と純水の希釈水をラインミキサ20によって撹拌し、かつヘッドベッセル21でその水頭圧を一定にしてからヒドラジン計22に流入しているので、ヒドラジン計22を流れる希釈水のヒドラジンの濃度分布が均一化されるとともに、それが安定化されるので、ヒドラジン濃度の計測精度が高くなる。
【0031】
なお、弁16、17は純水の抽出用であり、純水の検査等に使用できる。また弁23、24は希釈水の抽出用であり、ヒドラジン濃度以外の例えば全鉄濃度、濁度、その他の希釈分析に使用できる。
【0032】
また、以上説明したサンプル水希釈分析装置は、純水導入配管Bの系統を使用しない場合、つまりサンプルの希釈を行わない場合には、定量ポンプ8の流量設定値を0にしておけばよく、このとき必要に応じて電磁弁4や弁16等を閉じておく。このようにすることにより、通常の濃度範囲の残留ヒドラジン濃度を直接的に計測することができる。
【0033】
また、以上の説明では、サンプル水の流量f1を定量ポンプ7のストローク長のフィードバック信号により、純水の流量f2を定量ポンプ8のストローク長のフィードバック信号により、各々得ているが、流量計18、19から得ても同様に処理することができることは勿論である。
【0034】
【発明の効果】
以上から第1の発明によれば、ヘッドベッセルによりサンプル水や純水を所定の水頭圧に変換しているので、サンプル水や純水の取り込みの流量が多少変動してもこれを吸収することができ、さらにこのヘッドベッセルの後段にモータを共通した定量ポンプを介在させているので、そのサンプル水や純水の取り込み流量の変動を確実に吸収することができる。したがって、サンプル水と純水の流量が安定化し、これにより流量変動による時間遅れに基づく計測誤差を防止することができる利点がある。また、この定量ポンプはその吐き出し流量を任意に設定することができるので、サンプル水の希釈倍率を任意に設定することができる。
また、第2の発明によれは、第1の発明において、前記定量ポンプは、ストローク長を設定するためのドライブユニットと、その設定ストローク長を検出するセンサを備え、流量設定器によりストローク長が設定されるとその設定信号を流量制御装置が取り込んで、その設定信号に対応したストローク長となるようにドライブユニットが制御され、そのときの実際のストローク長がセンサで検知される構成としたので、センサからの信号を流量としてフィードバックでき、これにより目標値制御を行うことができる。
さらに、第3の発明によれば、サンプル水と純水の希釈水を攪拌手段によって撹拌し、かつヘッドベッセルでその水頭圧を一定にしてから計測部に流入しているので、計測部での濃度分布が均一化されるとともに、それが安定化されるので、計測精度が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態のサンプル希釈分析装置の系統図である。
【図2】同実施の形態の計測システムの構成を示す図である。
【符号の説明】
A:サンプル水導入配管、B:純水導入配管、C:希釈水配管、
1:電磁弁、2:ヘッドベッセル、2a:フロートスイッチ、3:脱泡器、4:電磁弁、5:ヘッドベッセル、5a:フロートスイッチ、6:脱泡器、7、8:定量ポンプ、7a、8a:アクチュエータ、9:モータ、10:背圧弁、11:リリーフ弁、12:背圧弁、13:リリーフ弁、14〜17:手動弁、18、19:流量計、20:ラインミキサ、21:ヘッドベッセル、22:ヒドラジン計、23、24:手動弁、25:サンプル水流量制御装置、26:純水流量制御装置、27:サンプル水流量設定器、28:純水流量設定器、29:演算装置、30:希釈倍率表示器、31:ヒドラジン濃度表示器、32:ヒドラジン補給制御装置。
Claims (3)
- サンプル水を取り込むサンプル水導入配管に希釈用の純水を取り込む純水導入配管を接続し、前記サンプル水を前記純水で希釈した希釈水について測定部において各種測定を行ない、該測定結果を前記サンプル水の希釈倍率で補正するようにしたサンプル希釈分析装置において、
前記サンプル水導入配管と前記純水導入配管に、所定の水頭圧に設定するヘッドベッセルを各々設けるとともに、ヘッドベッセルの後段に一定の流量の液体を吐き出す定量ポンプを各々設け、
これら両定量ポンプは、ストローク長の設定により流量調整可能であり、且つ共通のモータにより駆動する構成とし、
前記両定量ポンプで所定の流量に設定したサンプル水と純水とを混合希釈し、この希釈水を測定部で測定することを特徴とするサンプル希釈分析装置。 - 前記定量ポンプは、ストローク長を設定するためのドライブユニットと、その設定ストローク長を検出するセンサを備え、流量設定器によりストローク長が設定されるとその設定信号を流量制御装置が取り込んで、その設定信号に対応したストローク長となるようにドライブユニットが制御され、そのときの実際のストローク長がセンサで検知される構成であることを特徴とする請求項1に記載のサンプル希釈分析装置。
- 前記測定部の前段に、前記希釈水を撹拌する撹拌手段を設けるとともに、ヘッドベッセルを設け、攪拌手段によって攪拌した希釈水をヘッドベッセルでその水頭圧を一定にしてから測定部で測定するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のサンプル希釈分析装置。
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