JP3595733B2 - アンモニア冷媒を使用する冷凍機用潤滑剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アンモニアを冷媒とする冷凍機用の潤滑剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、圧縮式冷凍機は、圧縮機、凝縮器、膨張機構(膨張弁等)及び蒸発器からなり、その冷媒としてトリクロロフルオロメタン(R11)、ジクロロジフルオロメタン(R12)やクロロジフルオロメタン(R22)等の塩素を含有するフッ化炭化水素(フロン化合物)が長い間使用されてきた。これらのフロン化合物は、オゾン層破壊という国際的な環境問題を引き起こし、その使用が規制され、塩素を含有しないジフルオロメタン(R32)、テトラフルオロエタン(R134又はR134a)、ジフルオロエタン(R152又はR152a)等のフロン化合物に転換されてきている。ところが、これら塩素を含有しないフロン化合物においても、地球温暖化のおそれが非常に高いため、長期的な面から見ると環境問題を引き起こす恐れが指摘されている。
【0003】
そこで、近年ではこのような環境問題を起こさない冷媒として、炭化水素やアンモニア等が注目されてきている。これらの冷媒は、フロン化合物と比較すると地球環境や人体に対する適合性や安全性という観点で遥かに優れている。また、これらの化合物は冷媒としてはこれまで主流ではなかったものの、古くから使用されてきた実績もある。
これまで、アンモニアは、冷凍機油である鉱油やアルキルベンゼン等と相溶しないために、圧縮機出口側に油を分離回収して再び圧縮機入口側に戻す油循環設備を装備する冷凍機のみに使用が制限されてきた。また、このような油循環設備の機能が十分でないと、冷凍機油が冷凍サイクル内に持ち出され、圧縮機の潤滑油不足を招き、その結果摺動部において潤滑不良から焼き付き等を引き起こし、装置寿命を著しく短縮してしまうことがある。また、蒸発器は低温であるために、冷凍サイクル内に持ち出された粘度の高い冷凍機油が蒸発器に留まり、熱交換効率を低下させることもある。このためアンモニアを使用する冷凍機は比較的大型で、定期的にメンテナンスができる産業用の装置に限られていた。
【0004】
しかし、前記のような環境問題を背景として、アンモニア冷媒も見直されてきている。それに伴い、アンモニア冷媒との相溶性を有し、フロン冷媒と同様に油循環設備を必要としない冷凍機油が提案されている。例えば欧州特許第0490810号公報には、エチレンオキサイド(EO)及びプロピレンオキサイド(PO)の共重合体であり、EO/POが4/1であるポリアルキレングリコールからなる潤滑剤が開示されている。欧州特許第585934号公報には、EO/POが2/1〜1/2である1又は2官能性のポリアルキレングリコールからなる潤滑剤が開示されている。ドイツ特許第4404804号公報では、一般式RO−(EO)x−(PO)y−H(RはC1〜C8のアルキル基、x及びyは5〜55の数)で表わされるポリエーテル系潤滑剤が開示されている。また、欧州特許第699737号公報では、一般式Z{−O(CH2CH(R1)O)n−(CH2CH(R1)O)m−H}p(Zはアリール基の場合C6以上、アルキル基の場合C10以上、R1は水素原子、メチル基又はエチル基、nは0又は正数、mは正数、pはZの価数に対応する数)で表わされる潤滑剤が開示されている。
また、特開平5−9483号公報及びWO94/12594号公報には、ポリアルキレングリコールジエーテルからなる、アンモニアとの相溶性及び安定性に優れた冷凍機油が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
アンモニア冷媒冷凍機用の冷凍機油として、上記のようなポリアルキレングリコール系化合物を使用する場合、水酸基を2個有する多官能性のポリアルキレングリコールは、安定性及び吸湿性に問題があるという問題が指摘されている。また、上記のようなポリアルキレングリコールジエーテルは、水酸基を含有するポリアルキレングリコールよりもアンモニアとの相溶性が低く、構造によっては相溶しないという問題を抱えている。また、ポリアルキレングリコールジエーテルは分子の末端をアルキル基で封鎖しているが、末端封鎖を行うため製造工程が複雑になるという欠点を有していた。
従って本発明の目的は、アンモニア冷媒との相溶性に優れ、且つ、潤滑性及び安定性に優れたアンモニアを冷媒として使用する冷凍機用の冷凍機油を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、触媒として水酸化カリウムを使用して得られたポリエーテルであって、下記の一般式(1)
X{−O−(AO)n−H}p (1)
(式中、Xはモノオール又はポリオールから水酸基を除いた炭素数1〜4の残基を表わし、(AO)nはエチレンオキサイド及び炭素数3以上のアルキレンオキサイドの共重合によって構成されたポリオキシアルキレン基を表わし、pはXの価数を表わし、1〜3である。)
で表わされ、構造末端に位置する水酸基のうち、2級水酸基の数が全水酸基の数の70%以上であり、且つ不飽和度が、0.05meq/g以下であるポリエーテル
ただし、下記の一般式(2)
X{−O−(AO1)a−(AO2)b−H}p (2)
[式中、Xはモノオール又はポリオールから水酸基を除いた残基を表わし、(AO1)aはエチレンオキサイド及び、プロピレンオキサイド及び/又はブチレンオキサイドの共重合によって構成されたポリオキシアルキレン基を表わし、AO2は炭素数3以上のオキシアルキレン基を表わし、aは2以上の数を表わし、bは1以上の数を表わし、pはXの価数を表わす。]で表わされるポリエーテルを除く
からなる、アンモニア冷媒を使用する冷凍機用潤滑剤である。
【0007】
【発明の実施の形態】
一般式(1)において、Xはモノオール又はポリオールから水酸基を除いた残基を表わす。モノオールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、2−ブタノール等のアルコール;ポリオールとしては例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール等のジオール;グリセリン、トリオキシイソブタン、1,2,3−ブタントリオール等の3価アルコール等が挙げられる。
【0010】
また、Xは上記モノオール又はポリオールから誘導された化合物の残基であってもよい。このようなモノオール又はポリオールから誘導された化合物としては、上記モノオール又はポリオールのナトリウムアルコラート、カリウムアルコラート等が挙げられる。
【0011】
これらの中でも、あまりXの価数pが大きくなると、得られるポリエーテルの分子量が大きくなり過ぎて粘度が高くなり過ぎたり、アンモニア冷媒との相溶性が低下するので、Xの価数pは1〜3がより好ましい。特に、pが1、即ちXはモノオールから水酸基を除いた残基であることが最も好ましい。モノオールであっても、あまり炭素数が多くなるとアンモニア冷媒との相溶性が低下する場合があるので、Xの炭素数はより好ましくは1〜4であり、最も好ましくはXはメチル基である。
【0012】
一般式(1)において、(AO)nは、エチレンオキサイド及び炭素数3以上のアルキレンオキサイドの共重合によって構成されたポリオキシアルキレン基を表わす。炭素数3以上のアルキレンオキサイドとしては、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、α−オレフィンオキサイド、スチレンオキサイド等が挙げられる。エチレンオキサイド及び炭素数3以上のアルキレンオキサイドの重合比は特に限定されないが、重合生成物であるポリエーテルに、アンモニアとの優れた相溶性を付与するためには、少なくともエチレンオキサイドを必要とする。しかし、あまりエチレンオキサイドの割合が増加すると、吸湿性や、流動点等の低温特性が悪化したり、粉末状の固形物が析出、或いは沈殿する場合があるので、(AO)nに占めるオキシエチレン基の割合は50重量%以下が好ましく、50〜10重量%がより好ましく、30〜10重量%が最も好ましい。また、共重合の形態はブロック状重合、ランダム状重合又はブロック状重合とランダム状重合の混合でもよいが、(AO)nの部分が全てブロック状重合により構成されたポリオキシアルキレン鎖であると、低温における流動性が悪化する場合があるため、(AO)nはランダム状重合により構成されたポリオキシアルキレン鎖又は一部にランダム状重合を含むポリオキシアルキレン鎖であることが特に好ましい。nは2以上の数を表わし、好ましくは2〜150、より好ましくは5〜100である。
【0013】
本発明の潤滑剤は、上記条件を満たす一般式(1)で表わされるポリエーテルであって、Xの反対側の構造末端が水酸基である化合物となる。本発明に使用する一般式(1)で表わされるポリエーテルにおいて、この構造末端に位置する水酸基について、2級水酸基の数が、全水酸基の数の70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが最も好ましい。これは、構造末端に位置する水酸基のうち、2級水酸基が70%以上であるとアンモニア冷媒に対して優れた安定性を示すが、2級水酸基が70%よりも少ないと安定性が悪くなるためである。尚、2級水酸基の割合は、1H−NMRにより測定することができる。
【0014】
本発明で用いる一般式(1)で表わされるポリエーテルは、構造末端に位置する全水酸基のうち、50%以上が2級水酸基であるので、アンモニア冷媒に対して優れた安定性を示す。一般に、1級炭素原子に結合した水酸基は、酸化を受けるとアルデヒドを経てカルボン酸に変化するが、カルボン酸はアンモニア存在下では酸アミドを生成しこれが析出してくる恐れがある。それに比べて2級炭素原子に結合した水酸基は酸化を受けてもケトンに変化するのみであり、アンモニア存在下ではケトンはカルボン酸に比べて安定である。従って、本発明で用いる一般式(1)で表わされるポリエーテルが、アンモニア存在下でも優れた安定性を発揮することができるのは、その構造末端の全水酸基の50%以上が2級炭素原子に結合した形になっているからであると推察される。即ち本発明の潤滑剤は、アンモニア冷媒を使用する冷凍機の潤滑剤に特有の問題を、上記のように特定の構造をした潤滑剤を選択したことで解決したものである。
【0015】
本発明で用いる一般式(1)で表わされるポリエーテルの分子量は特に限定されないが、分子量と動粘度は比例する傾向があるので、動粘度を以下に述べる好適な範囲にするためには、分子量は300〜3,000程度が好ましい。
本発明で用いる一般式(1)で表わされるポリエーテルの動粘度は特に限定されないが、あまり粘度が低いとシール性が悪く、潤滑性能も低下する場合があり、あまり粘度が高いとアンモニアとの相溶性が低下し、エネルギー効率も悪くなる。従って、40℃における動粘度は好ましくは15〜200cSt、より好ましくは20〜150cStが良い。
冷媒であるアンモニアと本発明の潤滑剤は、冷媒の冷却能力及び潤滑剤のシール性の面から、重量比で99/1〜1/99の範囲で使用することが好ましく、95/5〜30/70の範囲で使用することがより好ましい。
【0016】
本発明で用いる一般式(1)で表わされるポリエーテルは、アンモニア冷媒の冷凍機に使用する潤滑剤であるため、水分、塩素等の不純物はできるだけ少ないほうが好ましい。水分は潤滑剤や添加剤等の劣化を促進するので、少ないほど良く、500ppm以下が好ましく、300ppm以下がより好ましく、100ppm以下が最も好ましい。一般的にポリエーテルは吸湿性があるので、保管中や冷凍機に充填する際に注意を要するが、減圧下での蒸留や乾燥剤を充填したドライヤーを通すことによって除去することができる。
また、塩素はアンモニア存在下ではアンモニウム塩を形成し、キャピラリー詰まりの原因になるので、塩素含量は少ないほど良く、100ppm以下が好ましく、50ppm以下がより好ましい。
【0017】
更に、オキシプロピレン基を含有する本発明の潤滑剤を製造する際に、プロピレンオキサイドが副反応を起こして炭素−炭素二重結合を有するアリル基を生成することがある。アリル基が生成すると、まず潤滑剤自体の熱安定性が低下する。その他、重合物を生成してスラッジの原因になったり、酸化されやすいために過酸化物を生成する原因となる。過酸化物が生成すると、分解してカルボニル基を生成し、これがアンモニア冷媒と反応して酸アミドを生成し、やはりキャピラリー詰まりの原因となる。従って、アリル基等に由来する不飽和度は少ないほど良い。具体的には,この不飽和度が0.05meq/g以下であることが好ましく、0.03meq/g以下であることがより好ましく、0.02meq/g以下であることが最も好ましい。
【0018】
また、過酸化物価は10meq/kg以下であることが好ましく、5meq/kg以下であることがより好ましく、1meq/kg以下であることが最も好ましい。カルボニル価は、100重量ppm以下であることが好ましく、50重量ppm以下であることがより好ましく、20重量ppm以下であることが最も好ましい。
このような不飽和度の低いポリエーテルを製造するためには、プロピレンオキサイドを反応させる際の反応温度を、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下とすることが良い。また、製造に際してアルカリ触媒を使用することがあれば、これを除去するために無機系の吸着剤、例えば、活性炭、活性白土、ベントナイト、ドロマイト、アルミノシリケート等を使用すると、不飽和度を減ずることができる。また、本発明の潤滑剤を製造する際に、又は使用する際に酸素との接触を極力避けたり、酸化防止剤を併用することによっても過酸化物価又はカルボニル価の上昇を防ぐことができる。
【0019】
尚、不飽和度、過酸化物価及びカルボニル価は、日本油化学会制定の基準油脂分析試験法により以下の方法で測定した値である。以下に、その測定方法の概略を示す。
<不飽和度(meq/g)の測定方法>
試料にウイス液(ICl−酢酸溶液)を反応させ、暗所に放置し、その後、過剰のIClをヨウ素に還元し、ヨウ素分をチオ硫酸ナトリウムで滴定してヨウ素価を算出し、このヨウ素価をビニル当量に換算し、それを不飽和度とする。
<過酸化物価(meq/kg)の測定方法>
試料にヨウ化カリウムを加え、生じた遊離のヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで滴定し、この遊離のヨウ素を試料1kgに対するミリ当量数に換算し、過酸化物価とする。
<カルボニル価(重量ppm)の測定方法>
試料に2,4−ジニトロフェニルヒドラジンを作用させ、発色性アルキノイドイオンを生ぜしめ、この試料の480nmにおける吸光度を測定し、予めシンナムアルデヒドを標準物質として求めた検量線を基に、カルボニル量に換算する。
【0020】
本発明で用いられる一般式(1)で表わされるポリエーテルの製造方法は特に限定されず、通常のポリエーテルの製造方法によればよい。例えば、出発物質であるメタノール等のアルコールに、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ触媒の存在下、エチレンオキサイドと炭素数3以上のアルキレンオキサイド(例えばプロピレンオキサイド)との混合アルキレンオキサイドを、温度100〜150℃、圧力0〜10kg/cm2程度で反応させればよい。
【0021】
本発明の潤滑剤には、必要に応じて他の成分を添加することができる。例えば、鉱油、アルキルベンゼン、ポリアルキレングリコールジエーテル、ポリアルキレングリコール、ポリオールエステル等の他の周知の冷凍機用潤滑剤や、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート等の極圧剤;2,6−ジ−ターシャリブチル−4−メチルフェノール、4,4’−メチレンビス−2,6−ジ−ターシャリブチルフェノール、ジオクチルジフェニルアミン、ジオクチル−p−フェニレンジアミン等の酸化防止剤;フェニルグリシジルエーテル等の安定剤;グリセリンモノオレイルエーテル、グリセリンモノラウリルエーテル等の油性剤;ベンゾトリアゾール等の金属不活性化剤;ポリジメチルシロキサン等の制泡剤等の添加剤を適宜配合することができる。更に、清浄分散剤、粘度指数向上剤、防錆剤、腐食防止剤、流動点降下剤等の添加剤も必要に応じて配合することができる。これらの添加剤は、通常、本発明の潤滑剤に対して0.01〜10重量%程度配合される。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の実施例中、部及び%は特に記載が無い限り重量基準である。また、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基、BOはオキシブチレン基の略記であり、両者の間にある記号「−」はブロック状共重合を表わし、「/」はランダム状共重合を表わす。
【0023】
(製造例)
3リットル容のオートクレーブに、メタノールと触媒として水酸化カリウムを仕込んだ。触媒溶解後、反応温度100〜150℃、圧力0〜10kg/cm2で、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの混合アルキレンオキサイドを反応させた。熟成後、反応温度100〜150℃、圧力0〜10kg/cm2で、プロピレンオキサイドを反応させ、表1の実施例1に示すポリエーテルからなる潤滑剤を得た。このポリエーテルの末端の水酸基の状態は90モル%が2級水酸基であり、平均分子量は950、40℃での動粘度は46.7cStであった。その他の実施例2〜6及び比較例1〜4の潤滑剤も同様の方法で製造した。それぞれのポリエーテルからなる潤滑剤の構造及び諸特性値を表1に示す。
尚、実施例及び比較例の全試料の不飽和度、過酸化物価、及びカルボニル価を前述の方法により測定したところ、不飽和度は0.012meq/g〜0.018meq/g、過酸化物価は2.5meq/kg〜3.2meq/kg、カルボニル価は10重量ppm〜15重量ppmであった。また、この水分含量をカールフィッシャー水分測定機を使用して測定したところ、何れも300ppm以下であった。
【0024】
【表1】
【0025】
尚、表1中、ポリエーテルの構造の欄の、{(PO)/(EO)}はプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドのランダム共重合を表わし、(PO)−(EO)はプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドのブロック共重合を表わす。
同じく、Gは、グリセリンから水酸基を除いた残基を表わす。
PO/EO比の欄の数値は、ポリエーテル中の{(PO)/(EO)}の部分の重量比を表わす。但し、比較例2については全体のPO/EOの重量比を表わす。
【0026】
次に、表1の各実施例及び比較例に示す潤滑剤について、以下の試験を行い、アンモニア冷媒を使用する冷凍機用の潤滑剤としての評価を行った。
<アンモニアとの相溶性>
各試料5mLとアンモニア1mLをガラスチューブに封入した後、室温から毎分1℃の速度で冷却していき、2層分離を起こす温度を測定した。
<ファレックス焼付荷重>
各試料の潤滑性を評価するために、ASTM−D−3233−73に準拠してファレックス焼付荷重を測定した。
【0027】
<ボンベテスト>
アンモニア雰囲気下における各試料の安定性を評価するために、以下の試験を行った。即ち、触媒として直径1.6mmφの鉄線を装填した300mLのボンベに各試料を50gずつ入れ、アンモニアで0.6kg/cm2Gまで加圧し、更に窒素ガスで5.7kg/cm2Gまで加圧した。その後、150℃まで加熱して同温度で7日間保持した。その後、室温まで放冷し、気体を除いて圧力を下げた後、更に減圧にして試料からアンモニアを除去した。こうして得られた各試料についてテスト前及びテスト後の全酸価及び色相(JIS−K−2580 ASTM色試験方法)を測定した。
【0028】
また、更にテスト後の試料を100mLのビーカーに移して室温で5時間放置後、外観の変化を目視にて観察し、以下の評点にて評価した。
0:異常無し(テスト前と同じ状態)。
1:ビーカーの底に粉末状の沈殿物がわずかに見られる。
2:評点1と3の中間の状態
3:ビーカーの底全面に粉末状の沈殿物が見られる。
4:固化、又は、室温での流動性が無くなった。
以上の評価試験の結果を表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
これらの結果から明らかなように、本発明の潤滑剤は十分な潤滑性を有すると同時に、アンモニアとの2相分離温度は十分に低くアンモニアと良好な相溶性を示し、ボンベテストの結果からもその試験前に比べて色相、酸価及び外観にほとんど変化が見られず、アンモニア冷媒系で安定性に優れることがわかる。
【0031】
【発明の効果】
本発明の効果は、アンモニア冷媒との相溶性に優れ、且つ、潤滑性及び安定性に優れたアンモニアを冷媒として使用する冷凍機用の冷凍機油を提供したことにある。
Claims (4)
- 触媒として水酸化カリウムを使用して得られたポリエーテルであって、下記の一般式(1)
X{−O−(AO)n−H}p (1)
(式中、Xはモノオール又はポリオールから水酸基を除いた炭素数1〜4の残基を表わし、(AO)nはエチレンオキサイド及び炭素数3以上のアルキレンオキサイドの共重合によって構成されたポリオキシアルキレン基を表わし、pはXの価数を表わし、1〜3である。)
で表わされ、構造末端に位置する水酸基のうち、2級水酸基の数が全水酸基の数の70%以上であり、且つ不飽和度が、0.05meq/g以下であるポリエーテル
ただし、下記の一般式(2)
X{−O−(AO1)a−(AO2)b−H}p (2)
[式中、Xはモノオール又はポリオールから水酸基を除いた残基を表わし、(AO1)aはエチレンオキサイド及び、プロピレンオキサイド及び/又はブチレンオキサイドの共重合によって構成されたポリオキシアルキレン基を表わし、AO2は炭素数3以上のオキシアルキレン基を表わし、aは2以上の数を表わし、bは1以上の数を表わし、pはXの価数を表わす。]で表わされるポリエーテルを除く
からなる、アンモニア冷媒を使用する冷凍機用潤滑剤。 - (AO)nが、エチレンオキサイド及び、プロピレンオキサイド及び/又はブチレンオキサイドのランダム状共重合によって構成されたポリオキシアルキレン基又は一部にランダム状共重合を含むポリオキシアルキレン基である請求項1に記載のアンモニア冷媒を使用する冷凍機用潤滑剤。
- 一般式(1)で表わされるポリエーテルの40℃における動粘度が、15〜200cStである請求項1又は2に記載のアンモニア冷媒を使用する冷凍機用潤滑剤。
- (AO)n中に占めるオキシエチレン基の割合が、50〜10重量%である請求項1乃至3の何れか1項に記載のアンモニア冷媒を使用する冷凍機用潤滑剤。
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