JP3595686B2 - 重質炭酸カルシウムスラリー及びその調製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、重質炭酸カルシウム、特に塗工紙塗料用に好適な白色顔料として大量に使用される重質炭酸カルシウム、及びその調製方法に関するものである。
【従来の技術】
塗工用無機顔料として、カオリン、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、酸化チタンなどが幅広く使用されている。これらの白色顔料は、白紙光沢、白色度、不透明度、平滑、インキ受理性など塗工紙の光学的性質及び印刷適正に大きな影響を及ぼす。これらの白色顔料のうち、重質炭酸カルシウムは、沈降性炭酸カルシウムに比べて粒子径が大きく粒度分布の幅も広いが、安価で流動性に優れており、紙用塗料に多く配合される傾向にある。紙用塗料として用いる場合、炭酸カルシウムの顔料としての性能は粒子径によって大きく変化し、0.2〜5μmの範囲では粒子径は小さくなるにつれて、不透明度、白色度、光沢、インキ受理性は向上するが、0.2μm以下になると不透明度と白色度も低下する。
近年、重質炭酸カルシウムについても粒径の小さい製品が提供されているが、単に機械的粉砕をしただけでは粒子径が小さくなるにつれて0.2μm以下の粒子の量が増加し、これにより流動性の低下をもたらし、又比表面積の増大に伴い塗工カラーのバインダーの要求量が増え塗工紙の光学特性に悪影響を与えるなど問題も多い。
【0002】
一般的に、重質炭酸カルシウムは天然の石灰石を機械的に粉砕することによって製造されている。調製方法には乾式粉砕と湿式粉砕があり、乾式粉砕品は空気分級により粒度を調整している。近年、高性能な分級機の開発により粗粒子の除去の精度は向上しているが、粒径が小さくなるにつれて粒子の凝集力が強くなり0.2μm以下の微粒子を分離することは困難である。湿式粉砕においても原料粒度や粉砕条件の制御により粗粒子と微粒子の少ない調製方法が提供されているが、この方法とて十分とはいえない。
一方、スラリー中の粗粒の除去には工業的には振動スクリーンが使用されているが、スクリーンの開目は45μm程度であるので粗粒子の混入が避けられない。粒径が20μmよりも大きい粗粒子の混入は、高速塗工において問題となる。例えば、高速塗工に伴い、ブレード圧が上がる為塗料中の水分が原紙に吸収され流動性不良となり、ストリークを引き起こす原因となったり、又リターンカラーの顔料の粒度分布がブロードとなり操業時間とともにカラーの粒度分布をブロードにし、紙質を変化させる要因となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、20μmよりも大きい粗粒子の含有量及び0.2μm以下の微粒子の含有量が少なく、特に塗工紙塗料用に好適に用いられる重質炭酸カルシウム水性スラリーを提供することを目的とする。
本発明は、又、このような重質炭酸カルシウム水性スラリーの効率的な調製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
本発明は、特定の高濃度の重質炭酸カルシウム水性スラリーを、特定の条件下で連続的に遠心分離すると20μmよりも大きい粗粒子(635メッシュオン)を効率的に除去することができ、及び/又はこの分離された水性スラリーを希釈して別の条件で連続的に遠心分離すると0.2μm以下の微粒子を効率的に除去することができ、これにより上記課題を効率的に解決できるとの知見に基づいてなされたのである。
【0004】
すなわち、本発明は、重質炭酸カルシウムの平均粒径が0.5〜2μm、固形分濃度が73〜85重量%、液温20℃における粘度が150mPas以下である重質炭酸カルシウム水性スラリーであって、該スラリーに含まれる重質炭酸カルシウムのBET比表面積が6〜12m2/g、粒度分布測定曲線の50重量%の粒子径と粒度分布測定曲線の10重量%の粒子径の比(D50/D10)が1.5〜2.5であり、かつ粒径が20μmより大きい重質炭酸カルシウムの含有量が40ppm以下であることを特徴とする重質炭酸カルシウム水性スラリーを提供する。
本発明は、又、重質炭酸カルシウムの平均粒径が0.5〜2μm、固形分濃度が74〜80重量%であって、粘度が300mPas以下の重質炭酸カルシウム水性スラリーを遠心分離機に連続的に導入して、下記の式で表される遠心効果Zが200〜3000の範囲内で、重液と軽液とに、遠心分離前の水性スラリーの固形分濃度と遠心分離後の軽液の固形分濃度の差が1重量%以下となるように連続的に遠心分離し、軽液を回収し、この軽液に水を加えて固形分濃度を30〜70重量%、粘度を100mPas以下に調製し、この重質炭酸カルシウム水性スラリーを遠心分離機に連続的に導入して、遠心効果Zが1000〜3000の範囲で、連続的に重液と軽液とに、遠心分離し、重液を回収することを特徴とする、上記特性の重質炭酸カルシウム水性スラリーの調製方法を提供する。
【0005】
【式1】
Z=(N2 π2 r)/(900g)
(式中、Nは回転数[rpm] 、rは転半径[m] 、gは重力加速度[m/sec2 ] を表す。)
【発明の実施の形態】
本発明で原料として用いる重質炭酸カルシウムスラリーは、天然石灰石を乾式粉砕し得られた粉体に水と分散剤とを添加して水に分散させたものを用いられる。特に、このようにして調製した水性スラリーを、さらに、ビーズミル等を用い湿式粉砕したものが好ましい。
【0006】
本発明では、天然石灰石を直ちに湿式粉砕することができるが、湿式粉砕に先立って、予めを乾式粉砕するのがよい。乾式粉砕では、石灰石の粒径を40mm以下、好ましくは平均粒径を2mm〜2μm程度に粉砕しておくのがよい。
本発明では、次に、上記粉砕した石灰石の表面に有機分散剤が施すのがよい。これは種々の方法で行うことができるが、乾式粉砕した石灰石を有機分散剤の存在下で湿式粉砕することにより行うのが好ましい。
具体的には、石灰石/水性媒体(好ましくは水)との重量比が30/70〜85/15、好ましくは60/40〜80/20の範囲となるように石灰石に水性媒体を加え、ここに分散剤を加える。使用する分散剤の量は特に限定されないが、重質炭酸カルシウム100重量部当たり固形分として0.1〜2.0重量部用いるのが好ましく、より好ましくは0.3〜1.0重量部添加し、常法により湿式粉砕する。又は、上記範囲の量となる分散剤を予め溶解してなる水性媒体を石灰石と混合し、常法により湿式粉砕する。湿式粉砕は、バッチ式でも連続式でもよく、サンドミル、アトライター、ボールミルなどの粉砕媒体を使用したミルなどが使用するのが好ましい。このように湿式粉砕することにより、平均粒径が2μm 以下、好ましくは平均粒径2〜0.5μm 、より好ましくは平均粒径1.5〜0.5μm のものが得られる。又、液温20℃における粘度を300mPas以下に調整したものが好ましく、特に50〜200mPasに調整したものが好ましい。
【0007】
ここで、分散剤としては、水溶性カチオン系界面活性剤(A)、水溶性アニオン系界面活性剤(B)および水溶性非イオン系界面活性剤(C)があげられる。
有機分散剤として用いる水溶性カチオン系界面活性剤(A)としては、第1、2、3級アミン塩型カチオン系低分子または高分子界面活性剤および第4級アンモニウム塩型カチオン系低分子または高分子界面活性剤が挙げられる。
第1〜3級アミン塩型低分子界面活性剤としては、例えば高級アルキルアミン塩、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加物、ソロミンA型アミン塩、サパミンA型アミン塩、アーコベルA型アミン塩およびイミダゾリン型アミン塩等が挙げられる。
第4級アンモニウム塩型低分子界面活性剤としては、例えば高級アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、サパミン型第4級アンモニウム塩、イミダゾリン型第4級アンモニウム塩およびアルキルビリジウム塩等が挙げられる。
【0008】
第1〜3級アミン塩型高分子界面活性剤としては、例えばポリエチレンイミン、ポリアルキレンポリアミン塩、ポリアミン・ジシアンジアミド縮合塩、ポリジアリルアミン塩等が挙げられ、第4級アンモニウム塩型高分子界面活性剤としては、例えばポリスチレンメチルアミノトリメチルアンモニウム塩、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩、トリメチルアミノエチル(メタ)アクリレートアンモニウム塩およびポリN−アルキルピリジン塩等が挙げられる。
これらのカチオン系界面活性剤の内、湿式粉砕時に高濃度スラリーを得るためには、アミン塩型高分子界面活性剤または第4級アンモニウム塩型高分子界面活性剤が好ましいが、特に好ましいものとしてジアリルアミンの単独またはビニール化合物との共重合物の塩およびポリジアリルジメチルアンモニウム塩が挙げられる。このような高分子分散剤としては、特開平7−300568号公報に記載の水溶性カチオン性コポリマー分散剤が好ましい。特開平7−300568号公報における該水溶性カチオン性コポリマー分散剤の記載は、本明細書の記載に含まれるものとする。これらの分子量は、特に限定はないが、好ましくは1000〜150000であり、更に好ましくは5000〜80000である。
【0009】
有機分散剤として用いる水溶性界面活性剤(B)としては、官能基としてカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩およびリン酸エステル塩を持つ低分子または高分子界面活性剤が挙げられる。
低分子カルボン酸塩としては、例えばラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウムおよびオレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩、高級アルコールポリエチレンオキサイドエーテル酢酸塩、ペルフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられ、高分子カルボン酸塩としては、例えばポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸−マレイン酸共重合物の塩等のカルボン酸単量体の単独または少なくとも2つ以上からなる共重合物またはその塩、ビニル化合物とカルボン酸系単量体との共重合物またはその塩およびカルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
低分子硫酸エステル塩としては、例えば高級アルコールポリエチレンオキサイド硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化脂肪酸、硫酸化オレフィンおよびアルキルフェノールポリエチレンオキサイド硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0010】
低分子スルホン酸塩としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンポリスルホン酸塩、ペルフルオロアルキルスルホン酸塩、イゲホンT型およびエアロゾル型等が挙げられ、高分子スルホン酸塩としては、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリビニルスルホン酸塩、ポリアリールスルホン酸塩およびアクリルアミドとアクリルアミドプロパンスルホン酸の共重合物の塩等が挙げられる。
共重合型高分子界面活性剤としては、例えばカルボン酸単量体とスルホン酸単量体からなる共重合体またはその塩が挙げられる。
低分子リン酸エステル塩としては、例えば高級アルコールモノリン酸エステル塩、高級アルコールポリエチレンオキサイドリン酸エステル塩およびアルキルフェノールポリエチレンオキサイドリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0011】
これらのアニオン系界面活性剤の内、湿式粉砕時に高濃度スラリーを得るためには、高分子型界面活性剤が好ましいが、特に好ましいものとして、ポリアクリル酸またはその塩、ポリアクリル酸−マレイン酸共重合物またはその塩等のカルボン酸単量体の単独または少なくともそれらの2つ以上からなる共重合物またはその塩が挙げられる。これらの分子量は、特に限定はないが、好ましくは1000〜100000であり、更に好ましくは5000〜50000である。
有機分散剤として使用する水溶性界面活性剤(C)としては、ポリエチレングリコール型および多価アルコール型非イオン界面活性剤が挙げられる。
ポリエチレングリコール型としては、例えば高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物およびポリエーテル変成シリコーン等が挙げられる。
【0012】
多価アルコール型としては、例えばグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステルまたはそのエチレンオキサイド付加物およびアルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられ、更にメチルセルロース(MC)、ハイドロオキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニールアルコール(PVA)、ポリアルキレンオキサイドビニールエテル化合物およびポリハイドロキシルアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの非イオン系界面活性剤の内、湿式粉砕時に高濃度スラリーを得るためには、高分子型界面活性剤が好ましいが、特に好ましいものとして抵重合度の部分ケン化ポパールおよびポリハイドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記種々の分散剤のうち、特に、ポリアクリル酸系分散剤(例えばサンノプコ社製:F―130)が好ましい。
【0013】
本発明では、上記方法において、重質炭酸カルシウム水性スラリー濃度を所定の濃度に調整し、次に遠心分離機を用いる次の方法により、本発明の重質炭酸カルシウム水性スラリーを調製する。
方法1
上記の方法により湿式粉砕した平均粒径が0.5〜2μm、固形分濃度が74〜80重量%(好ましくは75〜77重量%)であって、液温20℃における粘度が300mPas以下(より好ましくは200mPas以下、特に50〜150mPas)の重質炭酸カルシウム水性スラリーを遠心分離機に導入して、下記の式で表される遠心効果Zが200〜3000(好ましくは500〜1500)の範囲で、重液と軽液とに、遠心分離前の水性スラリーの固形分濃度と遠心分離後の軽液の固形分濃度の差が1重量%以下(好ましくは0.2〜0.5重量%)となるように連続的に遠心分離し、粗粒子を含有する重液を除去し、軽液を回収することを特徴とする、固形分濃度が73〜79重量%(好ましくは74〜76重量%)であって粒径が20μmより大きい重質炭酸カルシウムの含有量が40ppm以下(好ましくは20ppm以下)である重質炭酸カルシウム水性スラリーの調製方法。
【式2】
Z=(N2 π2 r)/(900g)
(式中、Nは回転数[rpm] 、rは転半径[m] 、gは重力加速度[m/sec2 ] を表す。)
【0014】
方法2
上記の方法により湿式粉砕した平均粒径が0.5〜2μm、固形分濃度が30〜70重量%(好ましくは40〜60重量%)であって、液温20℃における粘度が100mPas以下(好ましくは50mPas以下、特に10〜40mPas)の重質炭酸カルシウム水性スラリーを遠心分離機に導入して、遠心効果Zが1000〜3000(好ましくは1500〜3000)の範囲で、連続的に重液と軽液とに、遠心分離し、微粒子を含有する軽液を除去し、重液を回収することを特徴とする、固形分濃度が73〜85重量%(好ましくは75〜80重量%)であって、BET比表面積が6〜12m2/gである重質炭酸カルシウム水性スラリーの調製方法。
【0015】
方法3
上記の方法により湿式粉砕した平均粒径が0.5〜2μm、固形分濃度が74〜80重量%(好ましくは75〜77重量%)であって、液温20℃における粘度が300mPas以下(より好ましくは200mPas以下、特に50〜150mPas)の重質炭酸カルシウム水性スラリーを遠心分離機に導入して、遠心効果Zが200〜3000(好ましくは500〜1500)の範囲で、重液と軽液とに、遠心分離前の水性スラリーの固形分濃度と遠心分離後の軽液の固形分濃度の差が1重量%以下となるように連続的に遠心分離し、粗粒子を含有する重液を除去し、軽液を回収し、次いで、得られた軽液を水で希釈してその固形分濃度を30〜70重量%(好ましくは40〜60重量%)、粘度を100mPas以下(好ましくは50mPas以下、特に10〜40mPas)に調製し、この重質炭酸カルシウム水性スラリーを遠心分離機に導入して、遠心効果Zが1000〜3000(好ましくは1500〜3000)の範囲で、連続的に重液と軽液とに、遠心分離し、微粒子を含有する軽液を除去し、重液を回収することを特徴とする、固形分濃度が73〜85重量%(好ましくは75〜80重量%)であって、BET比表面積が6〜12m2/gである重質炭酸カルシウム水性スラリーの調製方法。
【0016】
上記遠心分離操作は、遠心分離器に1回または複数回通液して行うことができる。
本発明で用いる遠心分離器は一般に固液分離や分級に用いられるものでよく、例えばデカンタータイプ、バスケットタイプなどの遠心分離器があげられる。このうち、デカンタータイプの遠心分離器が好ましく、この遠心分離機は、排水処理、カオリンの分級等に使用されており、比重差がある2〜5μm程度以上の微粒から大粒子の分離や脱水に用いられているが、極微粒子の分離には不適で、許容供給濃度は0.5〜50重量%といわれている。塗工用に提供される分散性のよい重質炭酸カルシウムスラリーを遠心分離機で処理すると遠心分離機内でハードケーキを作り排出が難しいとされており、従来の技術では高濃度スラリーを供給することは行われていない。本発明では、重質炭酸カルシウムスラリーを高濃度で供給することにより、遠心分離器内での沈降速度をコントロールし、ハードケーキを作ることなくダイラタントなスラリー状態での排出を可能とした。粒度分布は遠心効果、供給液濃度、供給液量を任意に調整することによって任意に制御できる。
【0017】
【発明の効果】
本発明によれば、20μmよりも大きい粗粒子の含有量及び0.2μm以下の微粒子の含有量が少ない重質炭酸カルシウム水性スラリーが提供される。又、本発明によれば、このような特性の重質炭酸カルシウム水性スラリーを効率的に調製できる方法が提供される。
本発明により得られた重質炭酸カルシウム水性スラリーは、紙塗工に好適に用いられるが、その用途は紙塗工用に限られず、そのまま又は常法により乾燥してペイント、研磨剤、建材、及びプラスチックやゴムなどの充填剤として使用することができる。
次に本発明を実施例により説明する。
【0018】
【実施例】
実施例1
平均粒子径8μmの重質炭酸カルシウム(日本セメント石灰石原料の乾式粉砕品)に水を加え、重質炭酸カルシウム100重量部当たりアニオン分散剤(ポリアクリル酸系分散剤、サンノプコ社製:F―130)を0.8重量部加え、テーブル式媒体攪拌ミルを用い、直径1.2mmのガラスビーズ充填率170%、周速10m/sec で湿式粉砕し、次いで350Meshスクリーンを通し分級し重質炭酸カルシウム水性スラリーを調製した(平均粒子径1.108μm、粒径20μm以上100ppm、粒径0.2μm以下0.8%、固形分濃度75.59重量%、20℃における粘度130mPas)。
この水性スラリーをデカンタータイプの遠心分離器(回転半径0.077m、有効体積1.8リットル)に0.367m3 /hで供給し、1500Gの遠心力をかけたところ(遠心効果Z1500)、粗粒が遠心分離器の内壁に沈降した。この沈降した粗粒子をスクリュウによって外部に搬送、排出した。この時、排出された粗粒子を含むスラリー(重液)の濃度は83.28重量%であり、この中に含まれる重質炭酸カルシウムの平均粒子径1.399μmであった。
【0019】
一方、遠心分離器から排出された水性スラリー(軽液)の濃度は75.39重量%であり、この中に含まれる重質炭酸カルシウムの平均粒子径1.084μm、20μmよりも大きい粗粒子の含有量は0.8ppmであった。尚、遠心分離器からの水性スラリー回収側には適量の水をシャワーリングし、水性スラリーの固形分濃度の調整並びに固化防止を行った。
このようにして得た重質炭酸カルシウム水性スラリーの特性をまとめて表−1に示す。
【0020】
実施例2
先ず、実施例1と同様の方法により、重質炭酸カルシウム水性スラリーを調製した(平均粒子径1.341μm、粒径20μm以上455ppm、粒径0.2μm以下0.69%、固形分濃度76.22重量%、20℃における粘度120mPas)。
この水性スラリーを実施例1で用いたのと同じ遠心分離機に0.825m3/hで供給し、1500Gの遠心力をかけ(遠心効果Z1500)、実施例1と同様にして粗粒と水性スラリーを回収した。粗粒子を含むスラリー(重液)の濃度は86.0重量%であり、この中に含まれる重質炭酸カルシウムの平均粒子径2.018μmであった。
一方、遠心分離器から排出された水性スラリー(軽液)の濃度は75.89重量%であり、この中に含まれる重質炭酸カルシウムの平均粒子径1.328μm、20μmよりも大きい粗粒子の含有量は6ppmであった。
【0021】
実施例3
先ず、実施例1と同様の方法により、重質炭酸カルシウム水性スラリーを調製した(平均粒子径1.284μm、粒径20μm以上375ppm、粒径0.2μm以下0.82%、固形分濃度73.93重量%、20℃における粘度70mPas)。
この水性スラリーを実施例1で用いたのと同じ遠心分離機に0.590m3 /hで供給し、600Gの遠心力をかけ(遠心効果Z600)、実施例1と同様にして粗粒と水性スラリーを回収した。粗粒子を含むスラリー(重液)の濃度は85.63重量%であり、この中に含まれる重質炭酸カルシウムの平均粒子径2.079μmであった。
一方、遠心分離器から排出された水性スラリー(軽液)の濃度は73.53重量%であり、この中に含まれる重質炭酸カルシウムの平均粒子径1.284μm、20μmよりも大きい粗粒子の含有量は12ppmであった。
【0022】
実施例4
先ず、実施例1と同様の方法により、重質炭酸カルシウム水性スラリーを調製した(平均粒子径1.104μm、粒径20μm以上105ppm、粒径0.2μm以下1.02%、固形分濃度76.95重量%、20℃における粘度150mPas)。
この水性スラリーを実施例1で用いたのと同じ遠心分離機に0.684m3 /hで供給し、2100Gの遠心力をかけ(遠心効果Z2100)、実施例1と同様にして粗粒と水性スラリーを回収した。粗粒子を含むスラリー(重液)の濃度は84.23重量%であり、この中に含まれる重質炭酸カルシウムの平均粒子径1.392μmであった。
【0023】
一方、遠心分離器から排出された水性スラリー(軽液)の濃度は74.91重量%であり、この中に含まれる重質炭酸カルシウムの平均粒子径1.096μm、20μmよりも大きい粗粒子の含有量は3ppmであった。
このようにして得られた水性スラリーを水で希釈して固形分濃度56重量%に調整し、前工程で用いたのと同じタイプの遠心分離機に0.162m3 /hで供給し、1700Gの遠心力をかけ(遠心効果Z1700)、実施例1と同様にして重液と軽液とを分離した。軽液の濃度は36.28重量%であり、この中に含まれる重質炭酸カルシウムの平均粒子径0.354μmであった。
一方、遠心分離器から排出された重液の濃度は78.42重量%であり、この中に含まれる重質炭酸カルシウムの平均粒子径1.174μm、0.2μmよりも小さい微粒子の含有量は0%であった。
【0024】
実施例5
先ず、実施例1と同様の方法により、重質炭酸カルシウム水性スラリーを調製した(平均粒子径1.100μm、粒径20μm以上95ppm、粒径0.2μm以下0.91%、固形分濃度58.0重量%、20℃における粘度30mPas)。
この水性スラリーを実施例1で用いたのと同じ遠心分離機に0.252m3 /hで供給し、1400Gの遠心力をかけ(遠心効果Z1400)、実施例1と同様にして粗粒と水性スラリーを回収した。粗粒子を含むスラリーの濃度は80.35重量%であり、この中に含まれる重質炭酸カルシウムの平均粒子径1.342μmであった。
一方、遠心分離器から排出された水性スラリーの濃度は57.0重量%であり、この中に含まれる重質炭酸カルシウムの平均粒子径0.762μm、20μmよりも大きい粗粒子の含有量は0.1ppmであった。
このようにして得られた水性スラリーを、前工程で用いたのと同じタイプの遠心分離機に0.162m3 /hで供給し、2100Gの遠心力をかけ(遠心効果Z2100)、実施例1と同様にして重液と軽液とを分離した。軽液の濃度は40.26重量%であり、この中に含まれる重質炭酸カルシウムの平均粒子径0.365μmであった。
【0025】
一方、遠心分離器から排出された重液の濃度は78.29重量%であり、この中に含まれる重質炭酸カルシウムの平均粒子径0.879μm、0.2μmよりも小さい微粒子の含有量は0.67%であった。
実施例6
先ず、実施例1と同様の方法により、重質炭酸カルシウム水性スラリーを調製した(平均粒子径1.100μm、粒径20μm以上95ppm、粒径0.2μm以下0.91%、固形分濃度60.3重量%、20℃における粘度45mPas)。
この水性スラリーを実施例1で用いたのと同じ遠心分離機に0.162m3 /hで供給し、1700Gの遠心力をかけ(遠心効果Z1700)、実施例1と同様にして軽液と重液を回収した。軽液の濃度は49.12重量%であり、この中に含まれる重質炭酸カルシウムの平均粒子径0.512μmであった。
一方、遠心分離器から排出された重液の濃度は77.58重量%であり、この中に含まれる重質炭酸カルシウムの平均粒子径1.249μm、0.2μmよりも小さい微粒子の含有量は0%であった。
実施例1〜6に記載の特性及び得られたスラリー及び市販品A及びBの特性を以下の方法で測定した。
【0026】
粘度
水性スラリーの温度を20℃に調整した後、東京計器社製:B型粘度計、スピンドル#2、ローター回転数60rpm で測定した。
固形分濃度
105±5℃での絶乾重量を求め固形分濃度を算出した。
BET比表面積測定方法
BET比表面積測定装置:湯浅アイオニクス社製:モノソープ型で測定した。粒度分布
レーザー回折式粒度分布測定装置:日機装社製:Microtrac X−100 で測定した。得られた粒度分布測定曲線の50重量%の粒子径を平均粒子径とし、又粒度分布測定曲線の50重量%の粒子径と粒度分布測定曲線の10重量%の粒子径の比をD50/D10として求めた。尚、粒度分布の幅が狭い程、この比率は1に近づく。
実施例1〜3で得られたスラリーの特性を表―1に、実施例4〜6で得られたスラリーと市販品A及びBの特性を表−2に示す。
【0027】
【表1】
表−1
【0028】
【表2】
表−2
【0029】
表―2の粒度分布を制御した本発明の重質炭酸カルシウムスラリーはD50/D10とBET比表面積が従来品に比べ小さく微粒子が除去されていることがわかる。例えば市販品Bは光沢向上を目的に提供されているが、一般に使用されている市販品Aに比べ比表面積が大きくバインダー等の必要量が増加し塗工紙の光学特性に悪影響を与える。しかし、本発明品の実施例5では市販品Aに比べ平均粒子径が小さいにも関わらず、BET比表面積も小さく、バインダーの必要量も少なく塗工紙の光学特性に良好な影響を与えることができる。また、市販品は微粒化に伴い製品の白色度が低下するが、本発明品は0.2μm以下の微粒子を除去したため、白色度も向上している。
【図面の簡単な説明】
【図1】市販品Aの粒度分布曲線を示す。
【図2】市販品Bの粒度分布曲線を示す。
【図3】実施例4で得られた重質炭酸カルシウム水性スラリーの粒度分布曲線を示す。
【図4】実施例5で得られた重質炭酸カルシウム水性スラリーの粒度分布曲線を示す。
Claims (4)
- 重質炭酸カルシウムの平均粒径が0.5〜2μm、固形分濃度が73〜85重量%、液温20℃における粘度が150mPas以下である重質炭酸カルシウム水性スラリーであって、該スラリーに含まれる重質炭酸カルシウムのBET比表面積が6〜12m2/g、粒度分布測定曲線の50重量%の粒子径と粒度分布測定曲線の10重量%の粒子径の比(D50/D10)が1.5〜2.5であり、かつ粒径が20μmより大きい重質炭酸カルシウムの含有量が40ppm以下であることを特徴とする重質炭酸カルシウム水性スラリー。
- 重質炭酸カルシウムの平均粒径が0.5〜2μm、固形分濃度が74〜80重量%であって、液温20℃における粘度が300mPas以下の重質炭酸カルシウム水性スラリーを遠心分離機に連続的に導入して、下記の式で表される遠心効果Zが200〜3000の範囲内で、重液と軽液とに、遠心分離前の水性スラリーの固形分濃度と遠心分離後の軽液の固形分濃度の差が1重量%以下となるように連続的に遠心分離し、軽液を回収することを特徴とする、固形分濃度が73〜79重量%であって粒径が20μmより大きい重質炭酸カルシウムの含有量が40ppm以下である重質炭酸カルシウム水性スラリーの調製方法。
Z=(N2 π2 r)/(900g)
(式中、Nは回転数[rpm] 、rは転半径[m] 、gは重力加速度[m/sec2 ] を表す。) - 重質炭酸カルシウムの平均粒径が0.5〜2μm、固形分濃度が30〜70重量%、液温20℃における粘度が100mPas以下の重質炭酸カルシウム水性スラリーを遠心分離機に連続的に導入して、遠心効果Zが1000〜3000の範囲で、連続的に重液と軽液とに、遠心分離し、重液を回収することを特徴とする、固形分濃度が73〜85重量%であってBET比表面積が6〜12m2/gである重質炭酸カルシウム水性スラリーの調製方法。
Z=(N2 π2 r)/(900g)
(式中、Nは回転数[rpm] 、rは転半径[m] 、gは重力加速度[m/sec2 ] を表す。) - 重質炭酸カルシウムの平均粒径が0.5〜2μm、固形分濃度が74〜80重量%であって、液温20℃における粘度が300mPas以下の重質炭酸カルシウム水性スラリーを遠心分離機に連続的に導入して、下記の式で表される遠心効果Zが200〜3000の範囲内で、重液と軽液とに、遠心分離前の水性スラリーの固形分濃度と遠心分離後の軽液の固形分濃度の差が1重量%以下となるように連続的に遠心分離し、軽液を回収し、この軽液に水を加えて固形分濃度を30〜70重量%、液温20℃における粘度を100mPas以下に調製し、この重質炭酸カルシウム水性スラリーを遠心分離機に連続的に導入して、遠心効果Zが1000〜3000の範囲で、連続的に重液と軽液とに、遠心分離し、重液を回収することを特徴とする、請求項1記載の重質炭酸カルシウム水性スラリーの調製方法。
Z=(N2 π2 r)/(900g)
(式中、Nは回転数[rpm] 、rは転半径[m] 、gは重力加速度[m/sec2 ] を表す。)
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