JP3591628B2 - 動作補助装置および冷蔵庫用の動作補助装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷蔵庫等に設置された旋回式のドアや引き出しの前面部等、筐体の内部空間を外部に開放したり、外部から遮断する開閉部材に適用されるもので、当該開閉部材の動作を補助する動作補助装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
旋回式のドアや引き出し等のついた家電製品や家具などにおいて、ドアや引き出しの前面を筐体本体側にマグネットなどの吸着力を利用して保持させるものがある。このようなドアや引き出し(以下、開閉部材という)は、閉じる寸前にマグネットの吸引力により筐体本体側に吸引されるため、小さな力で確実に閉めることができ、また、閉まった状態では一定の閉じ力で閉じ状態が保持される。したがって、多少の振動などがあっても自然にドアや引き出しが開いてしまうというような不都合も解消できることから多くの製品に適用されている。
【0003】
このような一定の閉じ力により閉じられている開閉部材は、通常では、それほど苦にならずに開けられるが、たとえば、両手に物を持っていて、僅かな力で開閉部材を開けようとするような場合、簡単には開かないことが生じる。また、腕力や握力等の落ちた高齢者にとっては操作性が良いとはいえない。
【0004】
この種の開閉部材は、閉じ状態を確実に保持するという要素と、容易な開操作が可能という両方の要素を満たす必要があるが、確実な閉じ状態の保持という観点から考えると、或る程度の閉じ力を持たせる必要性は否めない。したがって、一定以上の閉じ力を持ちながら、容易に開けられるような開閉機構とすることが望まれる。
【0005】
そこで、このような面倒な操作を少しでも容易なものとするための装置として、本出願人は、特開平4−17548号公報記載のモータアクチュエーターを開発した(図10参照)。このモータアクチュエーターは、モータ51と、モータ51の駆動力を減速して伝達する減速機構52と、この減速機構52の最終段のピニオン53に噛合するラック54を有するロッド55と、ロッド55の位置を検出するための位置検出手段56と、これらの部材を収納するケース57と、を有している。
【0006】
このモータアクチュエーターは、ドア(図示省略)に設けたスイッチ機構にユーザーが触れると、モータ51が通電され、モータ51の駆動力によりロッド55を前方へスライド移動させるようになっており、このロッド55の前方へのスライド移動を利用して、前方に配置されるドアの開動作を補助するようになっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようなモータアクチュエーターでは、ドアの開動作を補助した後、前方にロッドが残ったままになっていると、ユーザーがドアを閉めた際に、ドアに押されてロッドがケース内に戻ってくる。そのため、ロッドの戻り方向へのスライド移動によって、減速輪列が無理に回転しようとし、減速輪列の各歯車を破損してしまうおそれが生じる。
【0008】
そのため、このような装置では、減速輪列にスリップ機構を備えたり、あるいは駆動力が一方向(ロッドを前進させる方向)にのみ伝達されるクラッチ機構を備えたり、モータを逆回転させてロッドを戻す制御を行ったりすること等が考えられる。
【0009】
上述のモータアクチュエーターの場合は、ロッド55が所定位置まで前方へスライド移動させると、これを位置検出手段56で検知させ、この検知に基づいて制御回路(図示省略)の駆動制御によりモータ51を停止させる。その後、モータ51を逆回転させることにより、ロッド55を逆方向にスライド移動させ、ロッド55が元の位置まで戻す。すなわち、上述のモータアクチュエーターでは、ロッド55を前方へスライド移動させた後、モータ51を逆回転させることにより、ロッド55を原点位置まで戻す制御を行っている。
【0010】
しかしながら、このような制御を行うため、上述のモータアクチュエーターは、ロッド55の位置を検出するための位置検出手段56と、この位置検出手段56による位置検出の結果に基づきモータ51を双方向回転させるための駆動回路(図示省略)を備えている。そのため、部品点数が多くなると共に、構造が複雑化してしまい、装置全体が大型化してしまう。これらの問題は、高級品や大型装置に組み込む場合は、大きな問題とはならないが、低価格商品や小型の商品に組み込む場合は、大きな欠点となってしまう。
【0011】
さらに、上述のモータアクチュエーターは、ロッド55を原点位置に戻す際には、必ずモータ51の駆動力を必要とする。そのため、ロッド55が飛び出してしまっている状態で停電になったり、その状態で回路的損傷が生じた場合は、手動等によりロッド55をケース57内に押し戻すこととなるが、モータ51のロータへ伝わる力は増速関係となるため、モータ51への負荷が極めて大きくなり、簡単には押し戻すことができない。仮に、強引に押し戻すとすると、上述のように歯車輪列中の歯車を破損してしまう。これを避けるためスリップ機構やクラッチ機構を設けると、やはり部品点数の増大、構造の複雑化、装置の大型化を招いてしまう。
【0012】
本発明は、モータを双方向回転させるような複雑な駆動回路や、突き出し部材の位置検出をするための手段を備えず、かつ停電時や回路的故障時にも、手動等により突き出し部材を容易に原点位置へ復帰させることが可能な動作補助装置および当該装置を備える冷蔵庫を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するため、本発明は、モータの駆動力を伝達する歯車輪列と、この歯車輪列を介して入力されるモータの駆動力によってスライド移動して、開閉部材に直接または間接的に当接可能な突き出し部材と、を有し、突き出し部材のスライド動作により開閉部材の動作を補助する動作補助装置であって、歯車輪列に、突き出し部材と係合する区間(第1の区間という)と、突き出し部材との係合が外れる区間(第2の区間という)を有する係脱歯車を設け、この係脱歯車の第1の区間との係合によって突き出し部材をスライド移動させ開閉部材の動作補助を行い、さらに、第1の区間は、第2の区間に比してその歯の軸方向の厚みを厚く形成し、突き出し部材および歯車輪列における係脱歯車の前段の歯車の双方に係合可能であると共に、第2の区間は、第1の区間に比してその歯の軸方向の厚みが薄く形成され、歯車輪列における係脱歯車の前段の歯車のみに係合可能であり、第1の区間および第2の区間と噛み合う前段の歯車の軸方向の厚みが、第2の区間における歯の軸方向の厚みよりも厚く形成され、突き出し部材および前段の歯車の双方への係合から係脱歯車のさらなる回転によって突き出し部材と係脱歯車の第1の区間との係合が外れることにより、モータの駆動力が突き出し部材へ伝達されないようにすると共に突き出し部材からの力が係脱歯車から先に伝わらないように構成している。
【0014】
そのため、モータの駆動力により開閉部材の動作補助のため前方へ飛び出した後の突き出し部材は、係脱歯車との係合が外れることにより歯車輪列との連結関係が絶たれ、ユーザーは手動等により容易に突き出し部材を内部(原点位置方向)へ押し戻すことができる。また、係脱歯車はその前段の歯車と常時係合し、モータからの回転力によって回転することとなる。また、係脱歯車の第2の区間を、第1の区間に比してその歯の軸方向の厚みを薄く形成し、歯車輪列の前段の歯車のみに係合するようにすると、開閉部材の動作補助後、第2の区間が突き出し部材に対向するように係脱歯車を停止させることで、突き出し部材を手動等で原点位置方向へ戻す際、突き出し部材と係脱歯車とが干渉せず、容易に動かすことができる。
【0017】
また、他の発明は、上述の動作補助装置に加えて、係脱歯車は、少なくとも突き出し部材が開閉部材に当接を開始する際に、第1の区間が突き出し部材及び前段の歯車の双方に同時に係合するように配置されている。
【0018】
このように係脱歯車の歯の軸方向の厚みが厚い第1の区間が、少なくとも突き出し部材が開閉部材に当接を開始する際に、突き出し部材及び前段の歯車の双方に同時に係合するように配置されると、必要とされるトルクが最大となるときに、歯車の強度の強い場所、すなわち全歯部分を利用することができる。このため、係脱歯車の歯の薄い部分を強度アップのために厚くする必要がなくなり、係脱歯車全体の厚みを薄くすることができ、装置全体としても薄型化が可能となる。
【0019】
また、他の発明は、上述の動作補助装置に加えて、突き出し部材と係脱歯車との係合が外れた際、突き出し部材をスライド移動を行う前の位置に復帰させるための突き出し部材復帰手段を備えている。このように構成すると、突き出された突き出し部材を開閉部材や手動によって元の位置にわざわざ復帰させる手間がなくなると共に、突き出し部材が突き出たままの状態となることがない。突き出し部材が突き出たままとなると、開閉部材が備えられる本体内の内容物を取り出す際に邪魔となったり、子どものいたずらの対象となりがちで故障し易くなる。このような問題を突き出し部材復帰手段によって避けることができる。
【0020】
また、他の発明は、上述の動作補助装置に加えて、突き出し部材と係脱歯車との係合が外れた後、係脱歯車をさらに回転させて補助動作を開始した位置関係と同じ状態となる位置に復帰させるための係脱歯車復帰手段を備えている。このように突き出し部材と係脱歯車との係合が外れた後、係脱歯車を元の位置に復帰させるための係脱歯車復帰手段を備えると、開閉部材の動作補助後、係脱歯車が次の動作補助への準備位置に復帰させられることとなるので、次の動作補助を無駄な時間を経過させることなくスムーズに開始させることができる。
【0023】
また、他の発明は、モータの駆動力を伝達する歯車輪列と、この歯車輪列を介して入力されるモータの駆動力によってスライド移動して、開閉部材に直接または間接的に当接可能な突き出し部材と、を有し、突き出し部材のスライド動作により開閉部材の動作を補助する動作補助装置であって、歯車輪列に、突き出し部材と係合する区間(第1の区間という)と、突き出し部材との係合が外れる区間(第2の区間という)を有する係脱歯車を設け、この係脱歯車の第1の区間との係合によって突き出し部材をスライド移動させ開閉部材の動作補助を行い、さらに、第1の区間は、第2の区間に比してその歯の軸方向の厚みを厚く形成し、突き出し部材および歯車輪列における係脱歯車の前段の歯車の双方に係合可能であると共に、第2の区間は、第1の区間に比してその歯の軸方向の厚みが薄く形成され、歯車輪列における上記係脱歯車の前段の歯車のみに係合可能であり、第1の区間および第2の区間と噛み合う前段の歯車の軸方向の厚みが、第2の区間における歯の軸方向の厚みよりも厚く形成され、突き出し部材および前段の歯車の双方への係合から係脱歯車のさらなる回転によって突き出し部材と係脱歯車の第1の区間との係合が外れることにより、モータの駆動力が突き出し部材へ伝達されないようにすると共に突き出し部材からの力が係脱歯車から先に伝わらないように構成し、係脱歯車の停止位置を、モータの電流値の変化を利用して突き出し部材の動作開始後の所定電流値の時点を測定基準時とし、当該測定基準時から0を含む所定時間後であって係合が外れた状態となっている位置としている。係脱歯車復帰手段を、上述のようにすると、動作のばらつきが少なく、より確実に係脱歯車を原点位置に復帰させることができる。また、係脱歯車の第2の区間を、第1の区間に比してその歯の軸方向の厚みを薄く形成し、歯車輪列の前段の歯車のみに係合するようにすると、開閉部材の動作補助後、第2の区間が突き出し部材に対向するように係脱歯車を停止させることで、突き出し部材を手動等で原点位置方向へ戻す際、突き出し部材と係脱歯車とが干渉せず、容易に動かすことができる。
【0024】
また、他の発明は、上述の動作補助装置に加えて、開閉部材を磁気的作用により筐体に吸着されるもので構成すると共に、開閉部材が磁気的作用によっては動作しない範囲まで動かされた後、係脱歯車と突き出し部材との係合が外れるようにしている。このように構成すると、開閉部材がしっかり保持された状態から解除された後の力を必要としない状態での動作補助を行わないようにできる。このため、無駄な補助動作やモータの無駄な駆動を省略することができる。
【0025】
また、他の発明は、上述の動作補助装置に加えて、開閉部材が磁気的作用によっては動作しない範囲まで動かされた際に切り替わるドアスイッチを筐体に設け、このドアスイッチの切り替わりに連動してモータの駆動を停止するようにしている。このため、磁気的作用力の変化を確実にとらえることができ、その変化に対応してモータの停止を行わせることができる。このため、一層適切な動作補助をさせることができる。
【0026】
また、本発明の冷蔵庫用の動作補助装置は、開閉部材としての扉または引き出しが磁気的吸引力により本体側に吸引され、閉じ状態を保持するようにした冷蔵庫の本体に、請求項1から7のいずれか1項記載の動作補助装置を設け、磁気的吸引力が強く働く範囲の間、動作補助装置の突き出し部材を前方へスライド移動させ、扉または引き出しの開動作を補助し、その磁気的吸引力が弱くなる位置まで扉または引き出しが押されると、突き出し部材を前方に移動させるモータからの伝達力がその突き出し部材に伝わらないようにする伝達力解除手段を動作させるものとなっている。
【0027】
上述したように構成された各発明の動作補助装置を取り付けた冷蔵庫は、僅かな力で扉や引き出しを開けることができると共に閉じ状態では確実に冷気を庫内に閉じ込めることができる。しかも、扉等を開ける際に突き出てくる突き出し部材の原点位置等、所定位置への復帰が、複雑な回路や構成を設けることなく達成でき、コスト低減が可能となると共に、冷蔵庫内の狭い部分にも容易に組み込むことが可能となる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態における動作補助装置について、図1から図9に基づき説明する。なお、本実施の形態では、動作補助装置を冷蔵庫に取り付けたものとして説明するが、本発明は、特に、冷蔵庫に取り付けるものに限定されるものではない。
【0029】
動作補助装置1は、図1に示すように、筐体としての冷蔵庫2のフレーム3の扉(以下、ドアという)4と対向する位置に備えられており、前方に配置された開閉部材としてのドア4の開動作の補助を行う装置となっている。なお、ドア4は、冷蔵庫2に形成された冷蔵室5の開放端部分を開放/閉塞するためのものとなっており、冷蔵室5の開放端の一部に一端が回動自在に支持されている。
【0030】
そして、ドア4の他端には、吸着マグネット6が備えられている。この吸着マグネット6は、閉塞時に冷蔵室5の開放端の一部に磁気的作用により吸着するようになっており、これによってドア4で冷蔵室5を完全に密封し、かつ冷蔵室5の開放端にドア4を保持させるものとなっている。
【0031】
動作補助装置1は、図2及び図3に示すように、DCモータ(以下、単にモータという)7と、モータ7の駆動力を伝達する歯車輪列8と、歯車輪列8を介して入力されるモータ7の駆動力によって前方へスライド移動してドア4に当接可能な突き出し部材9と、突き出し部材9を原点位置に復帰させるための突き出し部材復帰手段としてのコイルバネ10と、これらの各部を内部に収納するケース11と、を有している。
【0032】
そして、動作補助装置1は、突き出し部材9の前方へのスライド動作により、ドア4の全動作範囲のうちの所定範囲の動作を補助するものとなっている。すなわち、突き出し部材9がドア4の内側にぶつかりながらさらに前方へスライド動作することによってドア4を前方へ押し出す。ドア4は吸着マグネット6の磁気的作用である磁気吸引力により冷蔵庫2本体側に引き付けられているが、動作補助装置1が、磁気吸引力によって引き付けられない位置まで前方へドア4を押し出す。なお、第1の実施の形態では、このように磁気的作用によってはドアが動作しない範囲まで動かすものとしているが、本発明は、特に、マグネットの吸着力を使用するドアに使用する場合に限られるものではなく、バネ等で閉じ力を生成しているものやマグネット、バネ等の閉じ力を持たないものにも適用することができる。
【0033】
このように、モータ7の回転駆動力によって突き出し部材9を前方へ移動させることで、ドア4を冷蔵室5の開放端への吸着保持から解除させる。なお、この動作補助装置1は、ドア4を冷蔵庫2の前方へのみ動作させる装置となっている。したがって、ドア4をこの動作補助装置1によって前方へ駆動し、その後、ユーザーが手動でドア4を開いて冷蔵室5内に食品等を出し入れした後は、ユーザーが、手動によってドア4を閉じるものとなっている。また、本実施の形態では、突き出し部材9を、ドア4に直接当接可能なものとしているが、突き出し部材9は、何らかの部材を介し間接的にドア4に当接可能なものとしてもよい。
【0034】
さらに、動作補助装置1は、突き出し部材9によってドア4の動作補助を行った後、突き出し部材9と歯車輪列8との関係が絶たれ、モータ7の駆動力が突き出し部材9へ伝達されないように構成されている。すなわち、歯車輪列8の最終段には、突き出し部材9と所定の区間(以下、第1の区間12aという=図4参照)でのみ係合し、所定の区間以外の区間(以下、第2の区間12bという=図4参照)では係合が外れる係脱歯車12が配置されている。
【0035】
そのため、歯車輪列8の係脱歯車12の回転により、突き出し部材9を前方へ突き出し、ドア4の動作補助を行った後は、突き出し部材9と係脱歯車12との係合が外れる。そのため、ドア4の動作補助を行った後は、モータ7の駆動力が、突き出し部材9へ伝達されないようになる。なお、突き出し部材9は、係脱歯車12との係合が外れた後は、コイルバネ10の付勢力によって元の位置(原点位置)に復帰する。
【0036】
このような構成となっているため、本実施の形態の動作補助装置1は、特に、歯車輪列8にクラッチ機構やスリップ機構等を設けていないが、突き出し部材9によりドア4の動作補助を行った後にユーザーがドア4を閉めても、ドア4が突き出し部材9にぶつかることはなく、したがって突き出し部材9の逆方向へのスライド動作によって歯車輪列8の各歯車を破損するという問題は生じない。なお、突き出し部材9の原点位置復帰手段としては、例えば、コイルバネ10を用いず、マグネットの磁気吸引力を利用するような構成としてもよい。
【0037】
また、本実施の形態では、ドア4の動作補助後の突き出し部材9を、コイルバネ10の付勢力により原点位置へ戻す構成となっているが、このような原点位置復帰手段(上述のマグネットも含めて)自体を廃止してもよい。その場合、ユーザーが、ドア4を戻す(閉める)ことにより、ドア4が突き出し部材9にぶつかることとなるが、突き出し部材9は、既に係脱歯車12との係合が外れた状態となっており、ドア4でケース11の内部側に押されても、この動作によって係脱歯車12が回転されることはなく、その結果、歯車輪列8の各歯車を破損するという問題は生じない。なお、歯車輪列8の各歯車の構成は、後で詳述する。
【0038】
モータ7は、ケース11内に形成されたモータ保持部13内に保持されている。このモータ保持部13は、モータ7を取り囲むように形成されている。モータ7の出力軸14は、モータ保持部13に形成された挿通孔13aよりケース11の内部空間内に突出している。なお、モータ7は、複数本で構成されたリード線15により端子部材16と接続されている。そして、端子部材16は、電源及び制御手段を兼ねた外部の制御装置17と接続されている。このため、モータ7は、リード線15及び端子部材16を介して、外部の制御装置17に接続されており、制御装置17によって制御駆動されるようになっている。
【0039】
モータ7の出力軸14のモータ保持部13より突出している部分には、歯車輪列8の一部を構成するウォーム18が連結板19を介して一体回転可能に取り付けられている。そのため、モータ7の駆動力は、ウォーム18を介して歯車輪列8側に減速されて伝わるようになっている。
【0040】
また、突き出し部材9は、歯車輪列8の最終段の係脱歯車12と係合し、モータ7の駆動力を受けることにより、ケース11内に形成されたガイドレール1aに案内されて、図2において矢示A方向にスライド移動可能となっている。突き出し部材9は、矢示A方向にスライド移動することによって、先端部分がケース11に形成された挿通孔11bから、ケース11の外部へ突出するようになっている。この突出する部分には、上述したドア4が配置されている。すなわち、この突き出し部材9は、モータ7の駆動力で前方(図2において矢示A方向)へスライド移動することにより、ドア4に当接しドア4を開方向(図2において矢示B方向)に突き出すものとなっている。
【0041】
なお、突き出し部材9の先端部分は、突き出し部材9が最奥部に引っ込んだ状態でケース11と略面一となるように配置される。この突き出し部材9の配置に関しては、突き出し部材9とドア4との配置関係、及びモータ7の始動時から突き出し部材9をドア4へ当接させるまでの時間制御の関係等、種々の関係により適宜変更可能である。
【0042】
また、動作補助装置1は、突き出し部材9と係脱歯車12との係合が外れた際、突き出し部材9を元の位置(原点位置)に復帰させるための突き出し部材復帰手段としてのコイルバネ10を、ケース11内に備えている。このコイルバネ10は、ケース11と突き出し部材9とに挟まれた位置に配置され、一端をケース11のドア4と対向する側の内壁11aから突出した突出部1bに係止させていると共に、他端を突き出し部材9に嵌合された後述するマグネット1cに対するヨークとなる金属製のプレート20に当接させている。そして、コイルバネ10は、突き出し部材9が、図2において矢示A方向にスライド移動されると、プレート20に押されて収縮して、突き出し部材9を原点位置へ復帰させるための付勢力を貯える。
【0043】
この状態で突き出し部材9と係脱歯車12との係合が外れ、モータ7の駆動力の伝達が絶たれると、コイルバネ10の付勢力(復元力)によって突き出し部材9が原点位置まで戻されることとなる。なお、原点位置まで戻された突き出し部材9は、金属製のプレート20がケース11内に配置されるマグネット1cに吸着されることにより、ケース11内の原点位置で保持されることとなる。なお、プレート20とマグネット1cとの関係は、逆、すなわち突き出し部材9にマグネットを備え、ケース11に金属製のプレートを配置することにより、突き出し部材9の原点位置での保持をするようにしてもよいし、双方マグネットとしてもよい。
【0044】
さらに、コイルバネ10は、突き出し部材9の前方へのスライド移動によって収縮して付勢力を貯えるのではなく、伸張することにより縮み方向への付勢力を貯えるもので構成されてもよい。また、このコイルバネ10を廃止し、ドア4の戻し動作(閉じ動作)や手動によって突き出し部材9を原点位置に復帰させるものとしてもよい。この場合も、押し戻す突き出し部材9と歯車輪列8との連結が外れているので、弱い力で容易に押し戻すことができる。
【0045】
歯車輪列8は、モータ7の出力軸14と一体的に回転可能なウォーム18と、このウォーム18に噛合する第1歯車部21と、この第1歯車部21に噛合する第2歯車部22と、この第2歯車部22に噛合する第3歯車部23と、この第3歯車部23に噛合する係脱歯車12から構成されている。
【0046】
ウォーム18は、上述したようにモータ7の出力軸14に固定されていると共に、先端部分をケース11の側壁内側に形成された軸受け部25に回転自在に支承されている。このようにウォーム18を支承する軸受け部25をケース11の内側に設けることにより、ケース11が補強されている。
【0047】
第1歯車部21は、ケース11に両端を支持された金属製の軸26に回転自在に支持されている。この第1歯車部21は、ウォーム18と噛合する大径の受け歯車21aと、第2歯車部22の受け歯部22aと噛合する小径の送り歯車21bから構成されている。これらの受け歯車21aと送り歯車21bとは、一体的に形成されている。
【0048】
第2歯車部22は、ケース11に両端を支持された金属製の軸27に回転自在に支持されている。この第2歯車部22は、第1歯車部21の送り歯車21bと噛合する大径の受け歯車22aと、第3歯車部23の受け歯部23aと噛合する小径の送り歯車22bから構成されている。これらの受け歯車22aと送り歯車22bとは、一体的に形成されている。
【0049】
第3歯車部23は、ケース11に両端を支持された金属製の軸28に回転自在に支持されている。この第3歯車部23は、第2歯車部22の送り歯車22bと噛合する大径の受け歯車23aと、係脱歯車12と噛合する小径の送り歯車23bから構成されている。これらの受け歯車23aと送り歯車23bとは、一体的に形成されている。
【0050】
係脱歯車12は、歯車輪列8の最終段歯車となっており、ケース11に両端を支持された金属製の軸29に回転自在に支持されている。この係脱歯車12は、図2から図5に示すように、突き出し部材9のラック歯部31及び歯車輪列8の前段の歯車となる第3歯車部23の双方に係合可能な112度に渡る第1の区間12aと、第3歯車部23にのみ係合可能な残り248度に渡る第2の区間12bとから構成されている。
【0051】
第1の区間12aは、第2の区間12bに比して歯の軸方向の厚みを2倍程度厚く形成された全歯形状となっており、上述したようにラック歯部31と第3歯車部23の送り歯車23bとの双方に係合可能となっている(図4参照)。なお、この第1の区間12aは、第3歯車部23の送り歯車23bとは軸方向全面を利用して係合する。すなわち、送り歯車23bは、係脱歯車12の第1の区間12aの軸方向全面と係合できる歯部としている。この第1の区間12aは、突き出し部材9のラック歯部31とは、図3に示すように下側半面のみを利用して係合する。すなわち、突き出し部材9のラック歯部31は、係脱歯車12の全歯部となる第1の区間12aの軸方向下側半面とのみ対向している。
【0052】
そして、係脱歯車12が、図2において矢示C方向に回転し、円弧状に並べられた係脱歯車12の第1の区間12aの歯が直線状に並べられたラック歯部31の歯に順に噛み合うことによって、ラック歯部31が徐々に前方(図2において矢示A方向)へスライド移動させられる。なお、このとき、同時に噛み合う歯数は、このスライド移動に必要な数、例えば3つとなっている。
【0053】
これに対して、第2の区間12bの歯は、第1の区間12aの歯に比して軸方向の厚みを1/2程度に薄く形成されたものとなっており、上述したようにラック歯部31とは係合せず、第3歯車部23の送り歯車23bとのみ係合可能となっている。すなわち、係脱歯車12の第2の区間12bは、図3において下側半分を切り欠いた形状となっており、この切り欠いた部分が突き出し部材9のラック歯部31と対向するようになっている。したがって、係脱歯車12は、モータ7の駆動力によって回転し、第2の区間12bがラック歯部31と対向する位置まで移動すると、ラック歯部31との係合が外れるようになっている。
【0054】
なお、このように構成された係脱歯車12は、第1の区間12aでラック歯部31を前方へ送り出し、さらに第2の区間12bが対向することによってラック歯部31との係合が外れた後も、後述する係脱歯車復帰手段によって、原点位置まで回転させられる。すなわち、係脱歯車12は、第1区間12aの最初の歯がラック歯部31の最初の歯と係合する手前となる位置まで回転させられる。このため、第1の実施の形態の動作補助装置1は、ドア4を手動で閉めた後の次の動作補助時に、確実にしかもスムーズに動作を開始することができる。
【0055】
このように構成された係脱歯車12の第1の区間12aは、図4に示すように、全周360度のうち112度形成されており、残りの248度が第2の区間12bとなっている。そのため、係脱歯車12が突き出し部材9に係合し、112度回転する間、突き出し部材9は図2において矢示A方向へ前進し、この区間が終了し係合が外れると、コイルバネ10の復元力により原点位置に戻ることとなる。一方、係脱歯車12は、送り歯車23bとは常時係合しており、係脱歯車復帰手段としての制御装置17のモータ7の駆動制御により、この状態よりさらに248度回転させられ、原点位置に復帰する。
【0056】
また、この係脱歯車12は、第1の区間12aと突き出し部材9のラック歯部31とが係合し始めた状態から所定の区間(この実施の形態では約43度の区間)においては、軸方向の厚みの厚い第1の区間12aで第3歯車部23の送り歯車23bと係合している。すなわち、突き出し部材9によるドア4の動作補助が開始するもっとも大きなトルクを必要とする最初の区間では、モータ7の駆動力を係脱歯車12の第1の区間12a、すなわち全歯部分で受ける構成となっている。
【0057】
上述したように、突き出し部材9の駆動初期の段階は、ドア4が吸着マグネット6の磁気的作用により冷蔵庫2側に引き付けられており、これに抗してドア4を押し出す必要がある。そのため、このような構成、すなわち駆動初期段階において軸方向に厚みのある全歯部分の第1の区間12aでモータ7の駆動力を受ける構成とすると、大きなトルクが第1の区間12aの歯に加わっても損傷しづらくなる。このため、歯車輪列8の歯車の配置を変えて、駆動開始当初に第3歯車部23が第2の区間12bに係合するように構成する場合に比べ、係脱歯車12の軸方向の厚みを薄くすることができ、装置の厚みも薄型化できる。
【0058】
なお、このような第1区間12aの全範囲112度のうちのラック歯部31と第3歯車部23とが同時に係合する区間は、この実施の形態では、図4に示すように、43度40分15秒となっている。そのため、駆動初期から係脱歯車12が43度40分15秒回転すると、係脱歯車12は、軸方向に歯の厚みのない薄型の第2の区間12bでモータ7の駆動力を受けることとなる。しかしながら、係脱歯車12がこの第2の区間12bで駆動力を受けるときには、既に突き出し部材9によってドア4が前方へ移動し始めており、モータ7にかかる負荷が小さくなっている。そのため、このときは、軸方向に歯の厚みのない薄型の第2の区間12bでモータ7の駆動力を受けても、それ程歯車に負担がかからないものとなっている。
【0059】
なお、上述の第1区間12aと第2区間12bとの比率に関しては、任意のものであり、適宜角度を調節できるものとなっている。また、第1区間12aのラック歯部31と第3歯車部23とに同時に係合する区間に関しても、任意のものであり、適宜角度を調節できるものとなっている。また、係脱歯車12の第2の区間12bの強度が十分に突き出し部材9の駆動初期段階に耐えうるものである場合や、それ程薄型化が要請されない場合は、このような構成とせず、第2の区間12bで第3歯車部23の送り歯23bの回転を受けるようにしてもよい。
【0060】
なお、歯車輪列8の最終段歯車としての係脱歯車を、上述したように下側半分に欠け歯形状を有する歯車とするのではなく、図6に示すような2段の歯車で構成してもよい。すなわち、図6に示す係脱歯車120は、歯車輪列の前段となる歯車121に常時係合している大径の受け歯車122と、この受け歯車122と同軸上に一体的に形成された小径の送り歯車123とから構成されている。送り歯車123は、突き出し部材9のラック歯部31に係合する第1の区間123aと、ラック歯部31との係合が外れる第2の区間123bとから構成されている。そして、係脱歯車120が、図6において矢示C’方向に回転し、円弧状に並べられた係脱歯車120の第1の区間123aの歯が直線状に並べられたラック歯部31の歯に順に噛み合うことによって、突き出し部材9が徐々に前方(図6において矢示A’方向)へスライド移動させられる。さらに、係脱歯車120が回転し、第2の区間123bがラック歯部31と対向する位置となると、係脱歯車120とラック歯部31との係合が外れる。
【0061】
上述したように構成された本実施の形態の動作補助装置1は、冷蔵庫2のドア4を駆動するために、冷蔵庫2のフレーム3に着脱自在にネジ止め固定されるようになっている。この冷蔵庫2は、図1及び図7に示すように、前面に旋回式のドア4を有すると共に内部に飲料製品等の冷蔵保存の必要な食品類を保存するための冷蔵室5を有している。ドア4には、ドア4を開ける際にユーザーが握って手前に引くための引き用把手35が設けられており、この引き用把手35の一部にユーザーが引き用把手を掴んだことを検知するセンサー32が備えられている。
【0062】
また、冷蔵室5内には、ドア4が密閉状態から解除されるとオンするドアスイッチ33と、ドアスイッチ33の入力によって点灯する室内灯34と、が設けられている。そのため、ドア4が動作補助装置1によってわずかに開放されると、ドアスイッチ33がオンし、冷蔵室5内の室内灯34が点灯するようになっている。なお、このドアスイッチ33のオンオフ動作と連動させて、上述の動作補助装置1のモータ7の駆動停止を行うようにしてもよい。この場合、ドアスイッチ33がオンするタイミングは、ドア4が吸着マグネット6の磁気的作用によって閉まってしまわない程度ドア4が開放された後にすると共に、突き出し部材9と係脱歯車12との係合が外れた後にする必要がある。
【0063】
また、冷蔵庫2は、1つのドア4と2つの引き出し39,41を有する筐体となっているが、ドアを2つ以上としたり、引き出しを1つまた3つ以上としても良い。また、ドアが2つ以上設けられていたり、引き出しが3つ以上設置されている場合、動作補助装置1をドアの数及び引き出しの数を足した数と同じ数だけ配置し、全てのドア及び引き出しをそれぞれ駆動するようにしても良いし、また一部のドアもしくは引き出しのみを駆動するように動作補助装置1を配置しても良い。
【0064】
上述したように構成された冷蔵庫2のドア4は、ユーザーが引き用把手35を握ってセンサー32が働くことより、動作補助装置1のモータ7が起動し、このモータ7の駆動力によって前方へ僅かに押し出されるものとなっている。なお、センサー32は、図8に示すように、制御装置17に接続される。この制御装置17には、モータ7も接続されている。そのため、センサー32からの信号の入力があると、制御装置17は、モータ7に電力を供給しモータ7を駆動させる。これによって、モータ7の駆動力が歯車輪列8を介して突き出し部材9へ伝達され、突き出し部材9が前方に動作し、ドア4を押し出すこととなる。
【0065】
なお、本実施の形態では、ユーザーがドア4を開こうとしているのを検知するためにセンサー32をタッチセンサーで構成したが、タッチセンサーの代わりに圧電素子や赤外線による検知手段等、他の検知手段を設けるようにしてもよい。
【0066】
制御装置17は、このようにセンサー32からの信号に基づきモータ7を駆動し突き出し部材9を前進させるための制御を行うが、一方、突き出し部材9との係合が外れた後に係脱歯車12を所定の位置で停止させる制御も行う。なお、本実施の形態では、モータ7を停止させるタイミングを、上述の係脱歯車12の第1の区間12aの最初の歯が突き出し部材9のラック歯部31の最初の歯に噛合する寸前としている。
【0067】
すなわち、係脱歯車12は、この回転角度(ラック歯部31と係合する寸前で停止する角度)が原点位置となっており、突き出し部材9によるドア4の動作補助後、制御装置17は、係脱歯車12を原点位置で停止させる制御を行うようになっている。言い換えれば、制御装置17は、係脱歯車12を元の位置に復帰させるための係脱歯車復帰手段となっている。
【0068】
このときの制御装置17の制御方法を、図9を用いて、以下に説明する。なお、図9は、モータ7に加わる電流値の経時変化を示したもので、モータ7にかかる負荷の変化に対応させることができる。
【0069】
図9によれば、モータ7に流れる電流値は、起動時が一番高く(図9において矢示a1)、その後、一旦落ちる(図9において矢示a2)が、依然高いレベルを維持する。これは、停止状態からモータ7を駆動開始させる際に大電流の、いわゆる起動電流が必要とされるためであり、その起動電流が流れた直後、突き出し部材9がドア4に当接するため、モータ7にかかる負荷が非常に高くなるためである。そして、突き出し部材9がモータ7の駆動力によってドア4を前方へ押し出し、ドア4と突き出し部材9との当接が離れると、モータ7に流れる電流値が急激に低下する(図9において矢示a3)。上述したように、ドア4から受ける負荷がなくなるからである。
【0070】
なお、本実施の形態では、ドア4の動作補助を行った(ドア4との当接が離れた)後も、モータ7の回転は停止せず、突き出し部材9をさらに前方まで突き出させる。この間、モータ7に流れる電流値は、徐々に上昇する(図9において矢示a4)。これは、モータ7で突き出し部材9を前方へ駆動すると、モータ7の駆動力に抗して、上述した復帰手段としてのコイルバネ10の弾性エネルギー(付勢力)が徐々に貯えられていき、僅かであるがモータ7への負荷を増加させているためである。
【0071】
そして、突き出し部材9が前方終端まで駆動されると、突き出し部材9と係脱歯車12との係合が外れる。そのため、モータ7の駆動力は、突き出し部材9へ伝達されず、係脱歯車12は空転する。このとき、すなわち、突き出し部材9と係脱歯車12との係合が外れた瞬間のモータ7に流れる電流値は急激に低下(図9において矢示a5)し、係脱歯車12が空転している間中、その低下した状態の電流値を維持することとなる(図9において矢示a6)。
【0072】
本実施の形態の動作補助装置1では、このようなモータ7に流れる電流値の変化を利用して、モータ7の駆動制御をしている。すなわち、本実施の形態では、上述の矢示a4の区間(ドア4の解放によりモータ7の電流値が急激に低下した後、徐々に上昇に向かう区間)における任意の電流値nを設定し、この電流値nを超えた時点を測定基準時としている。そして、制御装置17は、この測定基準時に達したときから所定時間s、モータ7への電力供給を行うことにより、係脱歯車12を原点位置まで回転させる制御を行う。
【0073】
このような制御方法を採用するのは、以下の理由による。すなわち、動作補助装置1は、ユーザーが引き用把手35を触れることによりセンサー32が働き、これによって制御装置17の制御によりモータ7の駆動が開始する。そして、このモータ7の駆動を所定時間行えば、通常、突き出し部材9が前方終端まで動作をし、ドア4を開放するようになる。
【0074】
しかしながら、何らかの理由、例えば、ドア4を持ったまま開けない状態が続いたりして、突き出し部材9がスムーズに駆動されない場合、モータ7の起動時から突き出し部材9の全動作(原点位置から前方終端までのスライド動作)が終了するまでにかかる時間には、予期せぬばらつきが生じる。
【0075】
そのため、モータ7の起動時から所定時間を経過した後にモータ7を停止するという制御では、ばらつきが積み重なることで突き出し部材9の前方終端までの移動が確実に行われない場合が生ずる危険がある。突き出し部材9が前方終端まで駆動されず、途中位置で止まった状態でモータ7を停止させてしまうと、ドア4が閉められた際にドア4が係脱歯車12に係合したままの状態の突き出し部材9にぶつかってしまい、突き出し部材9がケース11内部に押し込まれてしまう。この結果、ケース11内部の歯車輪列8を破損してしまうおそれが生じる。
【0076】
また、ドア4の開放時点から所定時間後にモータ7を停止させる制御の場合、組み立て誤差等によってドア4の開放時点がばらつく。このばらつきは先に示したと同様な問題を発生させる。すなわち、突き出し部材9が突き出た状態で停止したり、突き出し部材9の動作開始までの時間が一定しなくなる。
【0077】
そこで、本実施の形態の動作補助装置1では、上述したような制御方法を採用している。上述の制御方法を採用した場合、ドア4の動作補助後の負荷が少なくスムーズに駆動されているモータ7の駆動時間を測定することとなるので、測定時間にばらつきが生じにくく、確実な位置での係脱歯車12の停止が可能となる。このようにして確実に係脱歯車12を原点位置に停止させると、次のドア4の動作補助時も、係脱歯車12が原点位置から回転を開始することとなり、係脱歯車12と突き出し部材9とが短時間で係合し、かつその時間も毎回一定なものとなり、常時、安定した動作を期待できることとなる。また、突き出し部材9が突き出た状態でモータ7が停止してしまうこともなくなる。
【0078】
なお、モータ7の駆動時間を測定する測定基準時は、上述の時点でなくても良く、例えば、組み立て誤差を発生させないようにした場合等では、突き出し部材9とドア4との当接が解除となり急激にモータ7に流れる電流値が低下した時点(図9において矢示a3)としてもよい。また、測定基準時は、突き出し部材9を前方終端まで駆動し突き出し部材9と係脱歯車12との係合が外れてモータ7に流れる電流値が低下した時点(図9において矢示a5)等でもよい。また、実際にはばらつきが生じる可能性が高いが、ある程度の精度誤差が許容されたり、他の誤差対策が施されているような場合には起動電流の発生時(図9において矢示a1)や、起動電流発生後の急激な電流の低下時(図9において矢示a2)でも良い。
【0079】
さらには、このように電流値の変化を利用するのではなく、例えば、上述のドアスイッチ33のオン時を測定基準時として、その後のモータ7の駆動時間を制御する等、他の制御方法によってモータ7の停止時を設定して、係脱歯車12を所定位置で停止させるようにしても良い。
【0080】
なお、上述したように、係脱歯車12を係合寸前の位置となる原点位置で常に停止させるようにすると、次の動作時に短時間で突き出し部材9との係合が始まることとなるが、特に、このような制御をしなくてもよく、少なくとも係脱歯車12が突き出し部材9と係合し始めてから係合が外れるまでの間、モータ7を駆動して係合が外れている間に停止させる制御を行うようにしてもよい。その場合は、次の動作開始時が若干遅れる場合も生じるが、動作的には問題がない。
【0081】
また、本実施の形態では、制御装置17からモータ7への電力供給を単に停止することにより、モータ7を停止させるようにしているが、これに加え電力供給の停止直後に、モータ7の駆動回路を短絡させてモータ7を停止させるような短絡ブレーキを働かせる制御を行うようにしてもよい。
【0082】
また、ケース11は、図3に示すように、2つのケース半体11c,11dを4つのボルト11e等で固定するようにして構成され、上述したように、モータ7や歯車輪列8や突き出し部材9等を内部に収納する箱形状のものとなっている。すなわち、ケース11は、各部材を取り付けるための面(底面及び蓋となる面)と、各部材を囲む面(側壁)とを有している。
【0083】
このケース11の内部には、歯車輪列8の各歯車をそれぞれ回転自在に支承するための機構、具体的には、軸26の両端をそれぞれ支持する固定部11f,11gや、軸27の両端をそれぞれ支持する固定部11h,11jや、軸28の両端をそれぞれ支持する固定部11k,11mや、軸29の両端をそれぞれ支持する固定部11p,11qなどが設けられている。
【0084】
次に、上述した本実施の形態の動作補助装置1を用いて、冷蔵庫2のドア4の全動作範囲のうち所定範囲の動作を補助するための動作について、今までの説明と若干重複するが以下に説明する。なお、ドア4は、吸着マグネット6によって冷蔵室5の開放端に吸着保持されている。
【0085】
ユーザーが冷蔵庫2のドア4を開けようとして、引き用把手35を握ると、引き用把手35に設けられたセンサー32がこの接触を検知して信号を制御装置17に伝達する。すると、制御装置17からリード線15を介して動作補助装置1のモータ7に電力が供給される。
【0086】
モータ7に電力が供給されると、モータ7の出力軸14とウォーム18とが一体的に回転する。ウォーム18が回転すると、この回転は、第1、第2、第3歯車部21,22,23を介して係脱歯車12へ伝達され、係脱歯車12が図2において矢示C方向に回転する。
【0087】
なお、係脱歯車12は、原点位置(モータ7の起動時点)において、第1区間12aの最初の歯が突き出し部材9のラック歯部31の最初の歯に係合する寸前で停止している。そして、同時に、係脱歯車12は、第3歯車部23の送り歯車23bとも第1区間12aで噛合している。そして、係脱歯車12は、モータ7の駆動力により43度40分15秒回転すると、第3歯車部23の送り歯車23bとの噛合は第2区間12bへと移行する。すなわち、第3歯車部23の当初の回転は、送り歯車23bから係脱歯車12の第1の区間12aに伝達され、その後、第2の区間12bに伝達されることにより、係脱歯車12は矢示C方向に回転する。
【0088】
そして、この係脱歯車12の回転は、突き出し部材9のラック歯部31に伝達される。これにより、突き出し部材9が、矢示A方向にスライド移動する。この間、突き出し部材9のプレート20に一端を当接させているコイルバネ10は、収縮し、突き出し部材9を原点位置に戻すための付勢力を貯える。
【0089】
そして、係脱歯車12が起動時より112度回転し、突き出し部材9が前方終端まで動作すると、突き出し部材9と係脱歯車12との係合が外れる。これによって、突き出し部材9は、コイルバネ10の付勢力によって原点位置側に戻される。この復帰によってプレート20がマグネット1cの磁力が作用する付近まで戻されるとマグネット1cの磁気的作用によりマグネット1cはプレート20の当接部20aと当接し、突き出し部材9はその位置、すなわち原点位置で固定される。
【0090】
なお、コイルバネ10がケース11に引っ掛かる等して、突き出し部材9が原点位置に復帰せず途中位置で停止してしまったとしても、突き出し部材9のラック歯部31が係脱歯車12の第1の区間12aと係合しないため、ドア4を閉めたり手動等によって容易に突き出し部材9を原点位置に復帰させることができる。
【0091】
なお、突き出し部材9との係合が外れた後も、係脱歯車12の矢示C方向への回転は継続する。このときのモータ7の駆動制御は、上述した方法により制御装置17で行う。そして、係脱歯車12が360度回転し、原点位置(第1の区間12aの最初の歯が突き出し部材9のラック歯部31の最初の歯に係合する寸前となる位置)まで駆動されると、制御装置17の制御により係脱歯車12が停止する。なお、開放されたドア4は、上述したように動作補助装置1によって前方へ押し出された後、さらに開いたりあるいは閉めたりする際は、ユーザーが手動によって行うものとなっている。
【0092】
なお、上述の実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の例であるが、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施の形態では、動作補助装置1を冷蔵庫2に取り付けたが、特にこれに限定されるものではなく、他の筐体、例えば、箪笥や机等のスライド式の引き出しを有するものや、金庫等の旋回式のドアを有するものに取り付けても良い。
【0093】
また、上述の実施の形態の動作補助装置1は、冷蔵庫2のフレーム3のドア4の上端に対向する位置にのみ取り付けられているが、例えば、冷蔵室5とその下の室となる冷凍室との仕切り部分にも取り付けて、上下の動作補助装置1で協働させるようにしてもよい。
【0094】
さらに、上述した実施の形態の動作補助装置1では、ドア4の動作補助後(突き出し部材9とドア4との当接が解除になった後)も、突き出し部材9を前方へ突き出させる構成となっているが、動作補助終了と同時のタイミングで突き出し部材9と係脱歯車12との係合も外れるように構成してもよい。
【0095】
また、さらに、動作補助終了のタイミングでモータ7を停止させる制御を行うようにしてもよいし、このタイミングとドアスイッチ33のオンのタイミングの同期をとり、ドアスイッチ33のオン動作と共にモータ7を停止させるようにしても良い。また、人が速くドア4を開けた場合さらなる突き出し部材9の突き出しを中止させるため、動作補助終了をモータ7の電流値で検出し(図9の矢示a3)、モータ7を停止させ、その後モータ7を逆回転させて突き出し部材9を元の位置に戻すようにしてもよい。
【0096】
また、突き出し部材9と歯車輪列8との係合外れを係脱歯車12を利用した係合外れではなく、突き出し部材9がスライド移動すると、ケース11の一方の側に移動し、歯車輪列8の最終段歯車との噛合が外れるように構成してもよい。また、係脱歯車12の第1の区間12aと第2の区間12bを各1つではなく、交互に各2つや3つ等、複数設ける構成としてもよい。
【0097】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の動作補助装置によれば、モータの駆動力を歯車輪列を介して突き出し部材に伝達し、突き出し部材をスライド移動することによって開閉部材の動作を補助するようになっている。そして、歯車輪列は、突き出し部材と第1の区間でのみ係合し、第2の区間では係合が外れる係脱歯車を備えている。そのため、動作補助を行うために前方へ突出した突き出し部材は、歯車輪列との係合関係が絶たれており、歯車等を損傷させずに手動等により容易に原点位置へ押し戻すことができる。
【0098】
その結果、突き出し部材が逆方向にスライド移動する際の不具合を回避するための種々の構成、すなわち、クラッチ機構やスリップ機構等のメカ的な機構、もしくはモータを逆回転させて突き出し部材を予め原点位置に戻しておくための制御回路等を備える必要性が無く、製造コストや組み立てコスト等の削減や、部品点数の削減による小型化・薄型化が可能なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における動作補助装置を取り付けた冷蔵庫の外観を示す縦断面図である。
【図2】図1に示した動作補助装置の内部機構を示す平面図である。
【図3】図2に示した動作補助装置の内部機構から突き出し部材復帰手段とその周辺を除いた状態を示す断面展開図である。
【図4】図2と同方向からの図で、第3歯車部と係脱歯車と突き出し部材のラック歯部との関係を、係脱歯車の第1の区間に基づいて説明するための図である。
【図5】図2に示した動作補助装置の係脱歯車を示す図で(A)はその部分側面図で、(B)は(A)の矢示B方向から見た図で図3の矢示V方向から見た平面図である。
【図6】本発明の実施の形態における動作補助装置の内部機構の一部を変形した変形例を示す図であって、係脱歯車付近を示した図である。
【図7】図1に示した冷蔵庫を正面側から見た外観斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態における動作補助装置の制御回路を模式的に示したブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態における動作補助装置のモータに流れる電流値の時間的な変化を示したグラフである。
【図10】従来の動作補助装置としてのモータアクチュエーターを示した断面図である。
【符号の説明】
1 動作補助装置
2 冷蔵庫(筐体)
4 ドア(開閉部材)
6 吸着マグネット
7 モータ(係脱歯車復帰手段の一部)
8 歯車輪列(伝達手段)
9 突き出し部材
10 コイルバネ(突き出し部材復帰手段)
12 係脱歯車
12a 第1の区間
12b 第2の区間
17 制御装置(係脱歯車復帰手段)
23 第3歯車部(係脱歯車の前段の歯車)
32 センサー
33 ドアスイッチ
Claims (8)
- モータの駆動力を伝達する歯車輪列と、この歯車輪列を介して入力される上記モータの駆動力によってスライド移動して、開閉部材に直接または間接的に当接可能な突き出し部材と、を有し、上記突き出し部材のスライド動作により上記開閉部材の動作を補助する動作補助装置であって、
上記歯車輪列に、上記突き出し部材と係合する区間(第1の区間という)と、上記突き出し部材との係合が外れる区間(第2の区間という)を有する係脱歯車を設け、
この係脱歯車の第1の区間との係合によって上記突き出し部材をスライド移動させ上記開閉部材の動作補助を行い、
さらに、上記第1の区間は、上記第2の区間に比してその歯の軸方向の厚みを厚く形成し、上記突き出し部材および上記歯車輪列における上記係脱歯車の前段の歯車の双方に係合可能であると共に、
上記第2の区間は、上記第1の区間に比してその歯の軸方向の厚みが薄く形成され、上記歯車輪列における上記係脱歯車の前段の歯車のみに係合可能であり、
上記第1の区間および上記第2の区間と噛み合う上記前段の歯車の軸方向の厚みが、上記第2の区間における歯の軸方向の厚みよりも厚く形成され、
上記突き出し部材および上記前段の歯車の双方への係合から上記係脱歯車のさらなる回転によって上記突き出し部材と上記係脱歯車の第1の区間との係合が外れることにより、上記モータの駆動力が上記突き出し部材へ伝達されないようにすると共に上記突き出し部材からの力が上記係脱歯車から先に伝わらないように構成したことを特徴とする動作補助装置。 - 前記係脱歯車は、少なくとも、前記突き出し部材が前記開閉部材に当接を開始する際に、前記第1の区間が前記突き出し部材及び前記前段の歯車の双方に同時に係合するように配置されていることを特徴とする請求項1記載の動作補助装置。
- 前記突き出し部材と前記係脱歯車との係合が外れた際、前記突き出し部材をスライド移動を行う前の位置に復帰させるための突き出し部材復帰手段を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の動作補助装置。
- 前記突き出し部材と前記係脱歯車との係合が外れた後、前記係脱歯車をさらに回転させ前記補助動作を開始した位置関係と同じ状態となる位置に復帰させるための係脱歯車復帰手段を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の動作補助装置。
- モータの駆動力を伝達する歯車輪列と、この歯車輪列を介して入力される上記モータの駆動力によってスライド移動して、開閉部材に直接または間接的に当接可能な突き出し部材と、を有し、上記突き出し部材のスライド動作により上記開閉部材の動作を補助する動作補助装置であって、
上記歯車輪列に、上記突き出し部材と係合する区間(第1の区間という)と、上記突き出し部材との係合が外れる区間(第2の区間という)を有する係脱歯車を設け、
この係脱歯車の第1の区間との係合によって上記突き出し部材をスライド移動させ上記開閉部材の動作補助を行い、
さらに、上記第1の区間は、上記第2の区間に比してその歯の軸方向の厚みを厚く形成し、上記突き出し部材および上記歯車輪列における上記係脱歯車の前段の歯車の双方に係合可能であると共に、
上記第2の区間は、上記第1の区間に比してその歯の軸方向の厚みが薄く形成され、上記歯車輪列における上記係脱歯車の前段の歯車のみに係合可能であり、
上記第1の区間および上記第2の区間と噛み合う上記前段の歯車の軸方向の厚みが、上記第2の区間における歯の軸方向の厚みよりも厚く形成され、
上記突き出し部材および上記前段の歯車の双方への係合から上記係脱歯車のさらなる回転によって上記突き出し部材と上記係脱歯車の第1の区間との係合が外れることにより、上記モータの駆動力が上記突き出し部材へ伝達されないようにすると共に上記突き出し部材からの力が上記係脱歯車から先に伝わらないように構成し、
上記係脱歯車の停止位置を、上記モータの電流値の変化を利用して上記突き出し部材の動作開始後の所定電流値の時点を測定基準時とし、当該測定基準時から0を含む所定時間後であって上記係合が外れた状態となっている位置としたことを特徴とする動作補助装置。 - 前記開閉部材を磁気的作用により筐体に吸着されるもので構成すると共に、前記開閉部材が上記磁気的作用によっては動作しない範囲まで動かされた後、前記係脱歯車と前記突き出し部材との係合が外れるようにしたことを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか1項記載の動作補助装置。
- 前記開閉部材が前記磁気的作用によっては動作しない範囲まで動かされた際に切り替わるドアスイッチを前記筐体に設け、このドアスイッチの切り替わりに連動して前記モータの駆動を停止することを特徴とする請求項6記載の動作補助装置。
- 開閉部材としての扉または引き出しが磁気的吸引力により本体側に吸引され、閉じ状態を保持するようにした冷蔵庫の本体に、請求項1から7のいずれか1項記載の動作補助装置を設け、上記磁気的吸引力が強く働く範囲の間、上記動作補助装置の突き出し部材を前方へスライド移動させ、上記扉または引き出しの開動作を補助し、その磁気的吸引力が弱くなる位置まで上記扉または引き出しが押されると、上記突き出し部材を前方に移動させるモータからの伝達力がその突き出し部材に伝わらないようにする伝達力解除手段を動作させたことを特徴とする冷蔵庫用の動作補助装置。
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