JP3588293B2 - ゴム系発泡体 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、自動車ガラス等の高温揮発昇華物の付着による曇り防止などに好適なゴム系発泡体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ゴム系発泡体としては、ゴム系ポリマーをアゾジカルボンアミドと尿素系発泡助剤とで発泡処理したものが知られていた。かかる発泡体は、その優れた軽量性や柔軟性、クッション性や圧縮性等に基づいてクッション材やパッド材、気密や止水等のシール材、断熱材や防音材などとして家電等の室内用品や自動車等の屋外用品、住宅等の建築物などの各種の分野で広く使用されている。
【0003】
しかしながら、前記のゴム系発泡体を例えば自動車のフロントやリアやウィンド等の各種ガラス板の周辺、住宅用複合ガラス窓の周辺、プラズマディスプレーの周辺、太陽電池パネルの周辺等におけるシール材などとして用いた場合に、ガラス板に汚染による曇りが生じる問題点があった。
【0004】
【発明の技術的課題】
本発明者らは、前記の汚染問題を解決するために鋭意研究を重ねる中で、その主汚染物質がアゾジカルボンアミドの分解温度を下げるために併用した尿素系発泡助剤に基づく尿素であることを究明した。これは、直射日光や装置の稼動で自動車内や窓、ディスプレーや太陽電池パネルが温度上昇した際にその尿素が揮発昇華しガラス板に付着して曇りを生じるものである。従って本発明は、シール性能等を低下させることなく高温下の揮発昇華物質でガラス等の曇りを生じないゴム系発泡体の開発を課題とする。
【0005】
【課題の解決手段】
本発明は、ゴム系ポリマー、加硫剤、アゾジカルボンアミド、尿素系発泡助剤及び40℃での動粘度が1〜1000mm2/秒で、かつ引火点が200℃以下のプロセスオイルを少なくとも成分とする混和物の加硫発泡体からなることを特徴とするゴム系発泡体を提供するものである。
【0006】
【発明の効果】
本発明によれば、ゴム系ポリマーによるゴム物性を良好に温存してクッション性や圧縮性等のシール性能に優れると共に、高温下におかれると低動粘度で低引火点のプロセスオイルが他の揮発昇華物質よりも先に揮発してガラス板等に付着し疎水性炭化水素膜を形成して、尿素等の極性物質がガラス板等に付着することを阻止し曇りを生じることを抑制して、ガラス板等の光透過率が低下しにくいゴム系発泡体を得ることができる。
【0007】
【発明の実施形態】
本発明によるゴム系発泡体は、ゴム系ポリマー、加硫剤、アゾジカルボンアミド、尿素系発泡助剤及び40℃での動粘度が1〜1000mm2/秒で、かつ引火点が200℃以下のプロセスオイルを少なくとも成分とする混和物の加硫発泡体からなる。
【0008】
ゴム系ポリマーとしては、特に限定はなく、従来に準じた適宜なものを用いうる。ちなみにその例としては、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)やエチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレンターポリマーやシリコーン系ゴム、フッ素系ゴムやアクリル系ゴム、ポリウレタン系ゴムやポリアミド系ゴム、天然ゴムやポリイソブチレン、ポリイソプレンやクロロプレンゴム、ブチルゴムやニトリルブチルゴム、スチレン・ブタジエンゴムやスチレン・ブタジエン・スチレンゴム、スチレン・イソプレン・スチレンゴムやスチレン・エチレン・ブタジエンゴム、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンゴムやスチレン・イソプレン・プロピレン・スチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンやブテン−1の如きα−オレフィン・ジシクロペンタジエンやエチリデンノルボルネンの如き非共役二重結合を有する環状又は非環状のポリエンを成分とするゴム系共重合体などがあげられる。実用性等の点よりは、EPDMが好ましく用いうる。
【0009】
加硫剤としても特に限定はなく、従来に準じた適宜なものを用いうる。ちなみにその例としては、硫黄や硫黄化合物類、セレンや酸化マグネシウム、一酸化鉛や酸化亜鉛、有機過酸化物類やポリアミン類、オキシム類やニトロソ化合物類、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物の如き樹脂類やアンモニウム塩類などがあげられる。
【0010】
得られる発泡体の加硫性や発泡性による耐久性等の物性などの点よりは、硫黄や硫黄化合物類、特に硫黄が好ましく用いうる。加硫剤の使用量は、その種類に基づく加硫効率などに応じて適宜に決定することができる。ちなみに硫黄系の場合、ゴム系ポリマー100重量部あたり通例、0.1〜10重量部、就中0.5〜5重量部が用いられる。
【0011】
発泡剤としては、自己消火性による安全性や無毒性などの点よりアゾジカルボンアミド(ADCA)が用いられる。またそのADCAの分解温度を下げて発泡処理と共に加硫処理を達成するための発泡助剤としては、尿素系発泡助剤が用いられる。
【0012】
ADCAの使用量は、目的とする発泡体の物性などに応じて適宜に決定することができる。一般にはゴム系ポリマー100重量部あたり1〜50重量部、就中3〜40重量部、特に5〜30重量部のADCA、0.1〜30重量部、就中0.5〜20重量部、特に1〜10重量部の発泡助剤が用いられる。
【0013】
混和物には、成形性の調節などを目的に軟化剤が配合されるが、本発明にてはその軟化剤として40℃での動粘度が1〜1000mm2/秒で、かつ引火点が200℃以下のプロセスオイルが用いられる。プロセスオイルの使用量は、シート加工性等の成形性などに応じて適宜に決定しうるが一般には、ゴム系ポリマー100重量部あたり1〜100重量部、就中5〜80重量部、特に10〜60重量部とされる。
【0014】
混和物の調製は、ゴム系ポリマーや加硫剤、ADCAや尿素系発泡助剤、プロセスオイル等の配合成分を、例えばニーダやミキシングロール等の混練機を介し混合する方式などの適宜な方式で混合することにより行うことができる。その際、加硫が進行する程度に温度上昇する混合方式は好ましくない。また混和物の調製に際しADCA以外の各配合成分は、1種又は2種以上を用いうる。
【0015】
また混和物の調製に際しては、粘度や加硫性の調節、得られる発泡体の強度等の物性の調節などを目的に従来に準じた適宜な配合剤を1種又は2種以上添加することができる。ちなみに加硫の促進を目的に、例えばグアニジン類やチアゾール類、スルフェンアミド類やチューラム類、ジチオカルバミン酸類やキサントゲン酸類、アルデヒドアンモニア類やアルデヒドアミン類、チオウレア類などからなる加硫促進剤、さらには加硫促進助剤を配合することができる。加硫促進剤の使用量は、ゴム系ポリマー100重量部あたり0.1〜10重量部が適当であるが、これに限定されない。
【0016】
さらに混和物には、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウム、ケイ酸ないしその塩類やタルク、クレーや雲母粉、亜鉛華やベントナイト、カーボンブラックやシリカ、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム、アルミナやアルミニウムシリケート、アセチレンブラックやアルミニウム粉、ステアリン酸やそのエステル類の如き充填剤、老化防止剤や酸化防止剤、顔料や着色剤、防カビ剤などの適宜な配合剤の1種又は2種以上を必要に応じて添加することができる。
【0017】
前記の亜鉛華は安定剤として、カーボンブラックは補強剤として、ステアリン酸やそのエステル類は滑剤などとしても有用であり、従って各種の安定剤や補強剤、滑剤も配合しうる成分の例としてあげられる。
【0018】
加えて混和物には、得られる発泡体の強度等の物性の調節を目的に、非ゴム系ポリマーの1種又は2種以上を配合することもできる。その非ゴム系ポリマーについては適宜なものを用いることができ、特に限定はない。
【0019】
ちなみに前記非ゴム系ポリマーの例としては、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルの如きアクリル系ポリマーやポリ塩化ビニル、ポリエチレンやポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体やポリ酢酸ビニル、ポリアミドやポリエステル、塩素化ポリエチレンやウレタン系ポリマー、スチレン系ポリマーやシリコーン系ポリマー、エポキシ系樹脂などがあげられる。その使用量は、発泡体のゴム的性質を維持する点などよりゴム系ポリマーの50重量%以下、就中30重量%以下、特に15重量%以下が好ましい。
【0020】
なお上記した混和物に必要に応じて添加する配合剤については、揮発昇華しにくいもの、特に高温において揮発昇華しにくいものであることが好ましい。
【0021】
本発明によるゴム系発泡体の形成は、上記した混和物を加熱して加硫発泡処理することにより行いうるが、その形成に際しては必要に応じ混和物を例えばシート等の所定の形態に成形して、その成形体を加熱処理して加硫発泡体とすることもできる。その場合、成形体は、適宜な方式にて任意な形態に成形したものであってよく、その形態について特に限定はない。
【0022】
従って加硫発泡処理の対象物は、混和物を例えばミキシングロールやカレンダーロールや押出成形等による適宜な方式でシート状やその他の形態に成形したものであってもよいし、所定の型を介して射出成形やプレス成形等による適宜な方式で凹凸等を有する所定の形態に成形したものなどであってもよい。
【0023】
前記において、凹凸形状を有する発泡体の形成では、未加硫シートを凹凸を有する型の上に配置して加熱し、その型の凹凸に前記未加硫シートを形成する混和物を流動侵入させて加硫発泡処理する方式なども採ることができる。かかる方式は、ヒダ構造を有する複雑で深い凹凸構造を有する型の場合にもその凹凸形状を精度よく形成できる利点などを有している。
【0024】
よって成形体の寸法は任意であり、目的とする加硫発泡体の形態などに応じて適宜に決定することができる。シート等の場合、その厚さは100mm以下、就中1μm〜80mm、特に10μm〜50mmが一般的である。
【0025】
上記した加硫発泡処理は、用いた加硫剤やADCAなどによる加硫開始温度や発泡温度などにより従来に準じた適宜な条件で行うことができる。一般的な加硫発泡温度は、約200℃以下、就中120〜180℃である。かかる加硫発泡処理で通例、混和物が軟化してADCAが分解し発泡構造を形成しつつ加硫が進行して目的の加硫発泡体が形成される。加硫発泡処理は、発泡倍率の調節などを目的に加圧下に行うこともできる。その加圧条件は従来に準じることができる。
【0026】
形成する加硫発泡体の発泡倍率(発泡前後の密度比)は、使用目的などに応じて適宜に決定される。一般には密度に基づいて0.5g/cm3以下、就中0.20g/cm3以下、特に0.15g/cm3以下とされる。かかる密度は、上記した発泡剤の配合量や加硫発泡の処理時間や温度等により発泡倍率などを調節することにより制御することができる。また発泡倍率の調節等を介して加硫発泡体の独立や連続、それらの混在等の発泡構造を制御することができる。
【0027】
本発明によるゴム系発泡体は、例えばクッション材やパッド材、気密や防水等の各種目的のシール材、断熱材、防音や制振等の振動低減材などの従来に準じた各種の用途に用いることができる。特に高温下でのガラス板等の曇り防止性に優れることより、例えばエンジン熱や直射日光等で温度上昇しやすい自動車のフロントやリアやウィンド等の各種ガラス板の周辺などにおけるシール材等として好ましく用いうる。
【0028】
【実施例】
実施例1
EPDM100部(重量部、以下同じ)、動粘度(40℃、以下同じ)12.1mm2/秒、引火点136℃のプロセスオイル40部、炭酸カルシウム150部、カーボンブラック10部、亜鉛華5部及び粉末ステアリン酸3部をバンバリーミキサーにて130〜140℃で12分間混練後、それに硫黄1.5部、加硫促進剤(大内新興化学社製、ノクセラーEZ)3部、ADCA20部、尿素系発泡助剤5部を添加してミキシングロールにより3分間混練して混和物を得、それを押出し機で成形して厚さ5mmの未加硫シートを得、それを160℃のオーブン中で30分間加熱して加硫発泡処理し、密度が0.093g/cm3の発泡シートを得た。なお発泡シートは、形成した発泡体より表層のスキン層をスライスして除去したものである(以下同じ)。
【0029】
実施例2
プロセスオイルに動粘度110mm2/秒、引火点162℃のものを用いたほかは実施例1に準じて密度が0.078g/cm3の発泡シートを得た。
【0030】
実施例3
プロセスオイルに動粘度655mm2/秒、引火点170℃のものを用いたほかは実施例1に準じて密度が0.078g/cm3の発泡シートを得た。
【0031】
実施例4
加硫促進剤の使用量を1.8部とし、ADCAの使用量を10部としたほかは実施例1に準じて密度が0.175g/cm3の発泡シートを得た。
【0032】
実施例5
加硫促進剤の使用量を1.8部とし、ADCAの使用量を10部としたほかは実施例2に準じて密度が0.200g/cm3の発泡シートを得た。
【0033】
実施例6
加硫促進剤の使用量を1.8部とし、ADCAの使用量を10部としたほかは実施例3に準じて密度が0.156g/cm3の発泡シートを得た。
【0034】
比較例1
プロセスオイルに動粘度2300mm2/秒、引火点180℃のものを用いたほかは実施例1に準じて密度が0.093g/cm3の発泡シートを得た。
【0035】
比較例2
プロセスオイルに動粘度381.6mm2/秒、引火点300℃のものを用いたほかは実施例1に準じて密度が0.078g/cm3の発泡シートを得た。
【0036】
比較例3
プロセスオイルに動粘度2300mm2/秒、引火点180℃のものを用いたほかは実施例4に準じて密度が0.175g/cm3の発泡シートを得た。
【0037】
比較例4
プロセスオイルに動粘度95.54mm2/秒、引火点270℃のものを用いたほかは実施例4に準じて密度が0.175g/cm3の発泡シートを得た。
【0038】
評価試験
実施例、比較例で得た縦100mm、横50mm、厚さ10mmの発泡シートについてガラス霞性試験(曇り度)を行った。試験は、開口径40mm、底径70mm、高さ170mm(底径70mm部分の高さ140mm)のガラス瓶に試料を入れて100℃のシリコンオイルバス(オイル深さ110mm)に入れ、開口を47mm角、厚さ3mmのガラス板で密閉して20時間放置した後、開口部に配置したガラス板のヘイズ値(霞度)を調べた。なおヘイズ値は、散乱透過光/全透過光×100にて定義される。従ってヘイズ値が小さいほど曇り度が低いことを意味する。
【0039】
前記の結果を次表に示した。
【0040】
表より、実施例ではガラス板の透明度が良好に維持されていることがわかる。これは、比較例1〜4においてプロセスオイルが動粘度1〜1000mm2/秒又は引火点200℃以下の条件を満たさない場合に55〜60の高いヘイズ値となったこととの対比より、実施例ではプロセスオイルが低動粘度、低引火点であることより高温下におかれると他の揮発昇華物質よりも先に揮発してガラス板等に付着し疎水性炭化水素膜を形成して、尿素等の極性フォギング物質が付着することを阻止しているものと考えられる。
Claims (3)
- ゴム系ポリマー、加硫剤、アゾジカルボンアミド、尿素系発泡助剤及び40℃での動粘度が1〜1000mm2/秒で、かつ引火点が200℃以下のプロセスオイルを少なくとも成分とする混和物の加硫発泡体からなることを特徴とするゴム系発泡体。
- 請求項1において密度が0.2g/cm3以下であるゴム系発泡体。
- 請求項1又は2においてゴム系ポリマーがエチレン・プロピレン・ジエンゴムであるゴム系発泡体。
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