JP3587831B2 - 吸収性物品用の表面シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸収性物品用の表面シートに関し、更に詳しくは、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品の肌当接面に用いられる表面シートに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品用の表面シートには、尿や経血等の人体からの排出物をスムーズに吸収体に移行させることのできる吸収特性と共に、ムレによる不快感や、痒み・カブレといった皮膚トラブルを防止できる表面特性が要求される。
従来、吸収性物品用の表面シートとして、吸収性物品の着用者の肌側に向けられる面に、凹凸形状を形成したものが各種提案されている。
しかし、斯かる表面シートにおける凹凸形状は、上記の吸収特性の改善や肌触りの柔軟性等の感触の向上を目的として設計されたものが殆どであり、従来の表面シートは、ムレによる不快感や皮膚トラブルを防止する点において改善の余地を残すものであった。
【0003】
特開平9−111631号公報には、表面に筋状に配列された多数の皺を有する多皺性不織布を吸収性物品の表面シートとして用いることが記載されている。しかし、前記多皺性不織布は、装着圧によって厚み方向に圧縮変形することにより容易に皺間の隙間が潰れることから、着用中における通気性が損なわれ、ムレによる不快感や皮膚トラブルを生じる恐れがある。
【0004】
特開2000−135239号公報には、生理用ナプキン等の吸収性物品の肌当接面に、不織布製透液シートを用いて多数条のひだを形成した吸収性物品が記載されている。また、特許3181195号公報には、使い捨ておむつ等の面ファスナーの雌材に用いられる不織布として、積層させて部分的に熱融着させた第1及び第2繊維層の内の一方を熱収縮させることにより、他方を片面側に突出させて規則的な凸部を形成した不織布が記載されている。
【0005】
特開2000−135239号公報においても、装着圧によって、ひだ部が容易に潰れやすく、着用中における通気性が損なわれる。また、特許3181195号公報の不織布は、多数のきめ細かい凹凸形状を有し、硬い材料となり易いために、着用者の装着感を損なうばかりでなく、ムレによる不快感や皮膚トラブルを防止するに充分な設計になり得ていない。そのため、特許3181195号公報の不織布を、吸収性物品用の表面シートとして用いることには無理がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、吸収性物品の着用中にムレを生じさせにくく、ムレによる不快感や、痒み・カブレ等の皮膚トラブルを抑制することのできる、吸収性物品用の表面シートを提供することにある。
【0007】
本発明は、吸収性物品の肌当接面に用いられる表面シートにおいて、それぞれ繊維集合体からなる第1繊維層及び第2繊維層を有し、第1繊維層と第2繊維層とは積層されて所定パターンで部分的に熱融着されており、第1繊維層は、第1及び第2繊維層の熱融着部以外の部位において***部を形成しており、該***部における、前記熱融着部に隣接する部位は、構成繊維同士が熱融着されて該***部の他の部位よりも剛性が高められており、10cN/cm2 圧力下における水平方向への空気透過容量が10mL/cm2 ・秒以上であることを特徴とする吸収性物品用の表面シートを提供することにより、上記の目的を達成したものである。
【0008】
また、本発明は、吸収性物品の肌当接面に用いられる表面シートにおいて、それぞれ繊維集合体からなる第1繊維層及び第2繊維層を有し、第1繊維層と第2繊維層とは積層されて所定パターンで部分的に熱融着されており、第1繊維層は、第1及び第2繊維層の熱融着部以外の部位において、着用者の肌側に向けられる面に***部を形成しており、前記***部は、シートのMD方向及びCD方向に不連続に形成されており、各***部は、MD方向の長さとCD方向の長さとの比(前者/後者)が1/2〜2/1であり、0.5cN/cm 2 圧力下におけるシートの厚みが0.5〜10mmであり、隣接する***部同士間の最短距離が0.5〜15mmであり、前記熱融着部の厚みtに対する前記***部の実質厚みT'の比(T'/t)が5〜50であり、10cN/cm 2 圧力下における水平方向への空気透過容量が10mL/cm 2 ・秒以上であり、且つ、10cN/cm 2 圧力下におけるシートのMD方向への空気透過容量と、10cN/cm 2 圧力下におけるシートのCD方向への空気透過容量との比(前者/後者)が0.6〜1.7であることを特徴とする吸収性物品用の表面シートを提供することにより、上記の目的を達成したものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。
本発明の吸収性物品用の表面シートは、吸収性物品の肌当接面(着用者の肌に当接される面)に用いられる。吸収性物品としては、例えば液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、両シート間に介在される吸収体とを有し、尿や経血等の人体からの排出物を、前記表面シートを通して吸収体に吸収して保持する、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、パンティライナー等が挙げられる。
【0010】
本発明の吸収性物品用の表面シートは、水平方向(シートの厚み方向に直交する方向)に対する空気の流通性が、所定圧力での加圧下においても維持されるようにした点に大きな特長を有するものである。
具体的には、本発明の吸収性物品用の表面シートは、10cN/cm2 圧力下における水平方向への空気透過容量が10mL/cm2 ・秒以上であり、より好ましくは50〜800mL/cm2 ・秒であり、特に好ましくは100〜500mL/cm2 ・秒である。
【0011】
前記10cN/cm2 圧力下における水平方向への空気透過容量を10mL/cm2 ・秒以上とすることにより、吸収性物品の着用中におけるムレの発生を効果的に防止でき、ムレによる不快感や痒み・カブレ等の皮膚トラブルを確実に防止できる。即ち、吸収性物品の着用中に、表面シートが加圧されて着用者の身体に密着した場合においても、水平方向(シートの厚み方向に直交する方向)に対する空気の流通性を充分確保することにより、着用中の***及び発汗等による着装内の湿度上昇を抑えることができ、故に、常にムレ・カブレのない快適な装着感を提供できる。
【0012】
これに対して、10cN/cm2 圧力下における水平方向の空気透過容量が10mL/cm2 ・秒未満の場合には、水平方向(シートの厚み方向に直交する方向)に対する空気の流通性が不充分であり、吸収性物品の着用中の***及び発汗等による着装内の湿度上昇に伴い、痒み・カブレ等の皮膚トラブルが起こる可能性がある。
尚、10cN/cm2 圧力下の水平方向の空気透過容量の上限値は、特に制限はないが、着用者に対して、液流れ等の不具合が生じない程度に密着できる表面シートの表面設計の観点から1000mL/cm2 ・秒程度である。
【0013】
10cN/cm2 圧力下における水平方向への空気透過容量は、以下の方法により測定される。
先ず、10cN/cm2 圧力下における、吸収性物品用の表面シートの厚みT1を測定する。
そして、図1に示すように、吸収性物品用の表面シートを一辺50mmの正方形状に裁断し、得られた測定片1を、中央に一辺10mmの正方形状の開口部21を有する正方形状の第1アクリル板(寸法:50mm×50mm×3mm)2と、開口部を有しない以外は第1アクリル板2と同一構成の第2アクリル板3との間に、該測定片1の着用者の肌側に向けられる面(***部11が存在する面)を第1アクリル板2側にして挟んで測定用積層体10(図2参照)とし、これを、図2に示すように、JIS P 8117の「ガーレー試験機法」に規定されるガーレー試験機(B形)のガスケット4下に、第1アクリル板2側を上に向けてセットし、上記測定片1が上記厚みT1となるまで圧縮する。
次いで、厚みをT1に維持した測定片1の中央部に、上記開口部21を介して空気を導入して300mLの空気を導入するのに要した時間を計測する。
そして、開口部21の単位面積(1cm2 )×1秒当たりの空気導入量(mL)を算出して、荷重10cN/cm2 圧力下における水平方向への空気透過容量とする。
【0014】
10cN/cm2 圧力下における、吸収性物品用の表面シートの厚みT1は以下のようにして測定することができる。
厚みT1は、KES測定器(例えばカトーテック株式会社製の「KES−FBシリーズ」商品名,型式「KES−BF3」)を用いて測定する。KES測定器は、加圧板及び受圧板間に測定片を挟み、該測定片を一定速度で厚み方向に圧縮変形させることのできる試験機である。
先ず、吸収性物品用の表面シートを所定寸法(上記加圧板より大きい寸法)に裁断し、それを上記受圧板上にセットする。そして、上記加圧板を1.2mm/分の速度で降下させ、該測定片を加圧板と受圧板との間で挟んで圧縮する。
試験片に加える荷重の最大値を50cN/cm2 に設定し、該測定片に加わる荷重が50cN/cm2 に達するまでの間における、上記加圧板と上記受圧板との距離及び測定片に加わる荷重を測定し、該測定片に加わる荷重が圧縮過程において10cN/cm2 となった時点における上記加圧板と上記受圧板との間の距離(=測定片の厚み)を、10cN/cm2 圧力下における表面シートの厚みT1とする。
【0015】
JIS P 8117の「ガーレー試験機法」に規定されるガーレー試験機としては、例えば図2に示す熊谷理機工業株式会社製の「Gurley Densometer」を用いる。
図2の装置を用いて測定用積層体10の圧縮及び圧縮状態下における空気導入を行うには、先ず、測定用積層体10を、第1アクリル板2側を上方に向けて、該装置のガスケット4の下に位置させ、試料締付けハンドル5を回転させることにより、測定片1が目的とする荷重厚み(上記厚みT1)となるように、ガスケット4とガスケット4の対向面6との間のクリアランスを調整する。図中、符号7は、一辺10mmの正方形状の開口部71を中央に有するシリコン板(硬度50)であり、導入した空気が測定片1の端縁以外から漏れ出るのを防止するために、ガスケット4と第1アクリル板2との間に介在させる。
そして、引上げつまみ81を摘んで内筒8を引き上げ、シリンダー(外筒9)内に所定量の外気を吸気させた後、該内筒8を外筒9内に下降させる。これにより、ガスケット4の下面中央の空気供給口(図示せず)から、試験片1の中央部上に300mlの空気が導入される(圧力は内筒の質量による)。そして、空気導入開始から300mLの空気の導入が完了する迄の時間を計測し、荷重10cN/cm2 圧力下における水平方向への空気透過容量を算出する。図中、符号Sは投受光センサーであり、これら光の投受光センサー間に、内筒に取り付けられた短冊状のスリット板(予め設定されたスリット点を有する)を通過させることにより、信号をデジタルカウンターに送り、前記時間をデジタルに表示する。
【0016】
また、本発明の吸収性物品用の表面シートは、50cN/cm2 圧力下における水平方向への空気透過容量が10〜500mL/cm2 ・秒、特に20〜200mL/cm2 ・秒であることが好ましい。
前記50cN/cm2 圧力下における水平方向への空気透過容量が10mL/cm2 ・秒以上であると、吸収性物品の着用中に表面シートが著しく加圧されて着用者の身体に密着した場合においても、水平方向に対する空気の通過性が充分維持され、ムレによる不快感や痒み・カブレ等の皮膚トラブルを一層防止することができる。また、該空気透過容量が500mL/cm2 ・秒以下であると、着用中の違和感を抑え、また、表面の液流れ等の吸収性能の低下を防止することができる。
【0017】
50cN/cm2 圧力下における水平方向への空気透過容量の測定方法は、50cN/cm2 圧力下における吸収性物品用の表面シートの厚みT2を予め測定しておき、厚みをT2に維持した測定片1に空気を導入する以外は、上述した荷重10cN/cm2 圧力下における水平方向への空気透過容量の測定と同様である。
【0018】
本発明の吸収性物品用の表面シートは、10cN/cm2 圧力下における水平方向の空気透過容量が、MD方向とCD方向とで差が小さいことが好ましい。具体的には、10cN/cm2 圧力下におけるシートのMD方向への空気透過容量と、10cN/cm2 圧力下におけるシートのCD方向への空気透過容量との比(前者/後者)が0.6〜1.7であることが好ましく、より好ましくは0.8〜1.5であり、特に好ましくは0.9〜1.2である。前記比が0.6〜1.7の範囲内であると、MD方向及びCD方向における空気の流通性が充分確保され、着用者がとり得るあらゆる体勢に追随することにより、最適なムレにくい環境を提供することができる。
【0019】
尚、本明細書において、シートのMD方向及びCD方向とは、吸収性物品用の表面シートの製造ラインおける原反の流れ方向(MD方向)及び該流れ方向に直交する方向(CD方向)を意味する。但し、MD方向及びCD方向の区別が付かない場合には、シートの長手方向をMD方向とし短手方向をCD方向とする。MD方向及びCD方向の区別が付かず且つ長手方向及び短手方向の区別が付かない場合には、表面シートの何れか一方向をMD方向としそれに直交する方向をCD方向とする。
【0020】
10cN/cm2 圧力下におけるシートのMD方向及びCD方向への空気透過容量の測定方法は、測定片1を2枚のアクリル板2,3間に挟んだ測定用積層体10における二組の相対向する2辺の内の何れか一組を空気が漏れないように粘土等で封止する以外は、上記の荷重10cN/cm2 圧力下における水平方向への空気透過容量の測定と同様である。
粘土等で封止する相対向する2辺は、シートのMD方向への空気透過容量を測定する場合には、シートのMD方向に沿う2辺(CD方向の両端に位置する2辺)とし、シートのCD方向への空気透過容量を測定する場合には、シートのCD方向に沿う2辺(MD方向の両端に位置する2辺)とする。
【0021】
水平方向への空気透過容量を向上させる観点から、10cN/cm2圧力下における吸収性物品用の表面シートの厚みT1は0.5〜5mm、特に0.8〜4mmであることが好ましい。また、同様の観点から、50cN/cm2圧力下における吸収性物品用の表面シートの厚みT2は0.3〜4mm、特に0.5〜3mmであることが好ましい。
【0022】
図3及び図4は、本発明の好ましい一実施形態としての吸収性物品用の表面シートの具体的構造を示す図である。
本実施形態の吸収性物品用の表面シート1は、着用者の肌側に向けられる面Cに、シートのMD方向及びCD方向に不連続である多数の***部11を有している。各***部11は、MD方向及びCD方向の長さがほぼ同じ(MD方向長さ/CD方向長さ=1/2〜2/1程度)である。
【0023】
本実施形態の表面シートの厚み(***部における厚み)T(図4参照)は0.5〜10mm、特に1〜5mmであることが好ましく、隣接する***部11,11同士間の最短距離L1(図4参照)は0.5〜15mm、特に1〜10mmであることが好ましい。
【0024】
表面シートの厚みTを0.5mm以上とし且つ***部同士間の最短距離L1を1mm以上とすることにより、***部11間に、空気を流通させるに充分な大きさの谷間を形成させることができ、加圧下における水平方向への空気透過容量を容易且つ充分に確保することができる。
また、前記厚みTを10mm以下とすることにより、表面シートの風合い(やわらかさ等)を維持しながら、着用中の違和感を抑えることができる。
また、前記最短距離L1を15mm以下とすることにより、加圧下における水平方向への空気透過容量を充分確保しながら(肌への接触面積を最低限確保することにより)、吸収性能を維持することができる。
【0025】
表面シートの厚みTは、以下のようにして測定する。
前述のKES測定器にて同様に測定し、0.5cN/cm2(初期圧)となった時点における加圧板と受圧板との間の距離を表面シートの厚み(***部における厚み)Tとする。
【0026】
本実施形態の吸収性物品用の表面シート1は、図4に示すように、それぞれ繊維集合体からなる第1繊維層13及び第2繊維層14からなる。
第1繊維層13と第2繊維層14とは積層されて所定パターンで部分的に熱融着されている。この熱融着は、熱エンボスによる熱融着であり、より具体的には、第1及び第2繊維層を構成する繊維集合体を積層した後、多数のピンが規則的に配設されたエンボス面(エンボスロールの周面等)を、第1繊維層側に圧接させることにより、各ピンに熱圧された部位における、第1繊維層13及び/又は第2繊維層14の構成繊維を溶融させて熱融着させてある。
表面シート1は、各ピンに熱圧された部位に、熱融着部15,15・・が形成されている。
また、上述した熱エンボス後に第2繊維層を水平方向に収縮させることにより、表面シート1には、熱融着部15,15・・以外の部位に、第1繊維層からなる多数の***部11,11が形成されている。
【0027】
本実施形態の吸収性物品用の表面シート1においては、上述した熱エンボスの際に、第1繊維層13における熱融着部(ピンの先端に直接押圧される部位)15の隣接部16にも、ピンによる熱が加えられるため(ピンの周面が当接するため)、該隣接部16においても、第1繊維層13の構成繊維の溶融及び繊維同士の融着が生じる。
そのため、第2繊維層14の収縮により***部11が生じた状態において、該***部11における熱融着部15の隣接部16は、該***部11の他の部位(頂部付近)よりも圧密化しており、剛性が高くなっている。
前記隣接部16の剛性を高めることで、***部の形状保持性が向上し、圧力下において***部11がつぶされて容易に熱融着部に広がることがなく、優れた通気性が安定して得られる。尚、熱融着部15の隣接部16を圧密化させる方法としては、超音波シール等の他の固定方法を採用することもできる。
【0028】
前記隣接部16を圧密化させて剛性を高めるために、熱融着部15の厚みtに対する***部11の実質厚みT’の比(T’/t)は、5〜50、特に8〜30であることが好ましい。
***部11の実質厚みT’とは、第1繊維層13と第2繊維層14の合計厚みであって、第1繊維層13と第2繊維層14との間に空間を有するような場合には、***部11の頂点を形成する最大厚み部分において、第1繊維層13及び第2繊維層14の厚みをそれぞれ測定して合計したものが実質厚みT’である。第1繊維層13と第2繊維層14が***部11において接触している場合には、***部11の頂点を形成する最大厚み部分の厚みが実質厚みT’であり、この場合、***部の実質厚みT’と上述した表面シートの厚み(***部における厚み)Tとはほぼ同じ値であるため、実質厚みT’に代えて、表面シートの厚みTの値を用いることもできる。
【0029】
熱融着部15の厚みt及び***部の実質厚みT’は、無加圧の状態の表面シートの断面写真または断面映像から測定する。本実施例では、サンプルを***部の頂点および熱融着部を通るように切断し、その断面形状を(株)キーエンス製のマイクロスコープVH−8000を使用し、熱融着部15の厚みt及び***部の実質厚みT’を測定した。
表面シートの熱融着部15の厚さtを***部の実質厚みT’に対して、コントロールすることにより、隣接部16の圧密化が向上し剛性が高められる。本実地形態において、上記観点から熱融着部15の厚みtは0.01〜1mm、特に0.1〜0.5mmが好ましい。
【0030】
本実施形態の表面シート1における熱融着部15は、平面視して円形であり、表面シート1には、多数の円形状の熱融着部15が散点状に規則的に形成されている。熱融着部15同士間の距離はほぼ一定である。そして、4つの熱融着部に囲まれた各領域における第1繊維層13が上方に突出して多数の上記***部11が形成されている。各***部11は、それぞれドーム状をなしており、内部は第1繊維層を構成する繊維で満たされている。
第1繊維層13と第2繊維層14とは、構成繊維及び/又は繊維の配合が相違している。また、第1繊維層及び第2繊維層は、何れも繊維集合体から構成されているので、表面シート1は全体として厚み方向に通気性を有している。
水平方向への空気透過容量を向上させる観点から、熱融着部を形成するためのエンボス面(エンボスロールの周面)に設けるピンの個数は、1cm2あたり1〜15個、特に3〜10個が好ましい。更に、本実施例において、水平方向への空気透過容量を向上させる観点及び液吸収性の観点から、熱収縮後の表面シート1の熱融着部は、1cm2あたり1〜30個、特に5〜20個が好ましい。
【0031】
第1繊維層を構成する繊維としては、熱可塑性ポリマー材料からなる繊維が好適に用いられる。熱可塑性ポリマー材料としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミドなどが挙げられる。また、これらの熱可塑性ポリマー材料の組み合わせからなる芯鞘型複合繊維やサイド・バイ・サイド型複合繊維も用いることができる。また、第1繊維層13を構成する繊維は、実質的に熱収縮性を有しないか、又は後述する第2繊維層14を構成する繊維の熱収縮温度以下で熱収縮しないものを用いることが好ましい。
【0032】
第2繊維層を構成する繊維としては、熱可塑性ポリマー材料からなり且つ熱収縮性を有するものが好適に用いられる。また、該繊維は、エラストマー的挙動を示すものが好適に用いられる。そのような繊維の例としては、潜在捲縮性繊維が挙げられる。潜在捲縮性繊維は、加熱される前は、従来の不織布用の繊維と同様に取り扱うことができ、且つ所定温度での加熱によって螺旋状の捲縮が発現して収縮する性質を有する繊維である。潜在捲縮性繊維は、例えば収縮率の異なる2種類の熱可塑性ポリマー材料を成分とする偏心芯鞘型複合繊維又はサイド・バイ・サイド型複合繊維からなる。その例としては、特開平9−296325号公報や特許2759331号明細書に記載のものが挙げられる。第2繊維層は、例えば、このような潜在捲縮性繊維を含ませておき、加熱による該繊維の捲縮により収縮させる。
第1及び第2繊維層には、前記以外の繊維、例えばレーヨン、コットン、親水化アクリル系繊維などの吸水性繊維を混綿することもできる。
【0033】
第1繊維層を構成する繊維集合体の形態は、カード法によって形成されたウェブ、及び該ウエブと各種製法による不織布の組み合わせ等が挙げられる。
第2繊維層を構成する繊維の集合体の形態としては、(1)潜在捲縮性繊維を含み且つカード法によって形成されたウェブ、(2)熱収縮性を有する不織布として、熱融着法によって形成された不織布、水流交絡法によって形成された不織布、ニードルパンチ法によって形成された不織布、溶剤接着法によって形成された不織布、スパンボンド法によって形成された不織布、メルトブローン法によって形成された不織布等が挙げられる。ここで、熱収縮性を有する不織布とは、所定温度での加熱によって収縮する性質の不織布のことである。更に(3)繊維集合体に代えて、熱収縮性を有するネット等を利用することもできる。
【0034】
第1繊維層13の坪量は5〜60g/m2 、特に10〜40g/m2 であることが、充分な高さの***部を形成して、水平方向の空気透過容量を高める観点から好ましい。第2繊維層層14の坪量は5〜50g/m2 、特に10〜30g/m2 であることが、充分な熱収縮性を発現して第1繊維層を***させ、かつシートの吸収性能を損なわない観点から好ましい。ここで、第1及び第2繊維層の坪量とは、第1繊維層と第2繊維層とを接合する前のそれぞれの層の坪量のことである。
***部を形成した後(熱収縮させた後)の第1繊維層13の坪量は10〜90g/m2、特に20〜80g/m2あることが、水平方向の空気透過容量及び***部の形成性を向上させる観点から好ましい。
また、本発明の表面シート1の坪量は15〜200g/m2、特に30〜150g/m2あることが、水平方向の空気透過容量、***部の形状保持性及び吸収性能等の観点から好ましい。
【0035】
本発明の表面シート1には、多数の開孔部を設けてもよい。例えば、上記実施形態における第1及び/又は第2繊維層には、直径0.2〜10mmの開口部を設けることが好ましい。このような開口部を設けることにより、尿、経血、便などの体液の透過性が向上し、漏れやムレの発生が一層低減される。
【0036】
本発明は上述した実施形態に制限されない。例えば、前記実施形態の表面シートにおける、第2繊維層14の第1繊維層13側とは反対側の面には、第1繊維層と同一の又は異なる繊維層等を形成しても良い。また、表面シートは、繊維集合体からなる一層の繊維層からなるものであっても良い。
更に、繊維集合体以外の、実質的に空気を通し得る材料からなる一層又は複数層からなるものものであっても良く、そのような材料としては、通気性フィルム、開孔フィルム、ネット、若しくはこれらの複合体、又はこれらと繊維集合体との複合体等が挙げられる。
【0037】
〔実施例1〕
(1)第1繊維層の製造
大和紡績株式会社製の芯鞘型複合繊維NBF(SH)〔商品名、2.2dtex×51mm〕を原料として、カード法によって坪量25g/m2 のカードウエブを製造し、これを第1繊維層として用いた。前記芯鞘型複合繊維NBFはポリエチレンテレフタレート(PET)を芯成分としポリエチレン(PE)を鞘成分とする繊維である。
【0038】
(2)第2繊維層の製造
大和紡績株式会社製の潜在螺旋状捲縮繊維〔CPP繊維(商品名)、2.2dtex×51mm〕を原料として、カード法によって坪量25g/m2 のカードウエブを製造し、これを第2繊維層として用いた。
【0039】
(3)表面シートの製造
第1繊維層と第2繊維層とを重ね合わせ、両者を、熱エンボス(ヒートシール)によって所定のパターンで部分的に熱融着させた。熱エンボスは、図5に示すパターンで多数のピンが規則的に配置されたエンボス面を第1繊維層側に圧接させておこなった。シール条件は220℃,10秒とした。図5中の各ピンは直径が1.5mmで、隣接するピンの中心点同士間の距離が6mmである。
そして、得られた両繊維層の熱融着体を、130℃の電気乾燥機内に10分間放置し、第2繊維層の潜在螺旋状捲縮繊維を捲縮させて第2繊維層を収縮させると共に、第1繊維層を熱融着部以外の部位において凸状に突出させ、多数の***部を有する図3及び図4に示す形態の吸収性物品用の表面シートを得た。
得られた表面シートは、0.5cN/cm2圧力下の厚み(***部における厚み)Tが3.1mm、隣接する***部同士間の最短距離L1が1〜1.5mmであった。また、***部における熱融着部に隣接する部位は、芯鞘型複合繊維が鞘成分同士の融着により繊維同士が融着して該***部の他の部位よりも剛性が高くなっていた。
【0040】
〔実施例2〕
熱エンボスに図6に示すパターンのエンボス面を用いた以外は、実施例1と同様にして吸収性物品用の表面シートを製造した。
得られた表面シートは、0.5cN/cm2圧力下の厚み(***部における厚み)Tが2.3mm、隣接する***部同士間の最短距離L1が1〜1.5mmであった。また、***部における熱融着部に隣接する部位は、繊維同士が融着して該***部の他の部位よりも剛性が高くなっていた。
【0041】
〔比較例1,2〕
市販の生理用ナプキン(商品名「ロリエ やわらかメッシュ」,花王株式会社製)に用いられている表面シート、及び市販の生理用ナプキン(商品名「ロリエドライupメッシュ」,花王株式会社製)に用いられている表面シートを用意した。
【0042】
〔比較例3〕
大和紡績株式会社製の芯鞘型複合繊維〔芯PET/鞘PE=40/60(容積比),繊度2.2dtex〕よりカード法によって得られた不織布シート(坪量25g/m2 )上に、幅1mmのホットメルトを2mmピッチ(1mm間隔)で該不織布シートのMD方向に並列するように塗布した。
そして、上記不織布シートと同一の不織布シートを、高さ1mm、幅1mmの凸条片が2mmピッチ(1mm間隔)で平行に配列された凹凸形成型に押し付け、略蛇腹状に変形させた後、予めホットメルトを塗布した上記の不織布シートと貼り合わせた。
得られた表面シートは、幅1mmの凸条部が2mmピッチで多数形成されており、不織布シート同士の接合部の幅が1mmであり、0.5cN/cm2圧力下の厚み(凸条部における厚み)Tが0.9mmであり、凸条部の突出高さが0.7mmであった。
【0043】
〔比較例4〕
熱エンボスに関して、ピンを直径1mmで、隣接するピンの中心点同士間の距離を1mmとした以外は、実施例1と同様にして吸収性物品用の表面シートを製造した。得られた表面シートは、0.5cN/cm2圧力下の厚み(***部における厚み)Tが0.5mm、隣接する***同士間の最短距離L1が0.7mmであった。
【0044】
〔空気透過容量の測定〕
実施例及び比較例の各表面シートについて、10cN/cm2 圧力下及び50cN/cm2 圧力下における水平方向への空気透過容量、並びに、10cN/cm2 圧力下におけるMD方向及びCD方向の水平方向への空気透過容量を、それぞれ前述した方法により測定し、その結果を表1に示した。
【0045】
〔性能評価(皮膚コンダクタンス増加量の測定)〕
50mm×75mmに裁断した表面シートの着用者の肌側に向けられる面側に6gの水を注入し、その面を肌側にして、人体の前腕内側に包帯で固定した。そして、固定から2時間後に、皮膚コンダクタンスを測定した。
その値と固定前の皮膚コンダクタンスの値との差を、皮膚コンダクタンスの増加量とし、その結果を表1に併せて示した。
皮膚コンダクタンスは、アイビーエス社(IBS Co.Ltd.)のSkin Surface Hydrometer(SKICON 200)を用いて測定した。
【0046】
【表1】
【0047】
皮膚コンダクタンスの増加量を比較すると、実施例の表面シート(本発明品)は、比較例の表面シートの約半分となっており、本発明の吸収性物品用の表面シートは、比較例の表面シートに対してムレを生じにくいことが判る。
尚、表面シートの製造に用いるエンボスピンの配列は、図7に示すような配列とすることもできる。
【0048】
【発明の効果】
本発明の吸収性物品用の表面シートは、吸収性物品の着用中にムレを生じさせにくく、ムレによる不快感や、痒み・カブレ等の皮膚トラブルを抑制することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、水平方向への空気透過容量を測定する際に用いるアクリル板等を示す斜視図である。
【図2】図2は、水平方向への空気透過容量を測定する際に用いるガーレー試験機を示す概略模式図である。
【図3】図3は、本発明の吸収性物品用の表面シートの一実施形態を示す斜視図である。
【図4】図4は、図3のX−X模式断面図である。
【図5】図5は、実施例1に用いたエンボスパターンを示す平面図である。
【図6】図6は、実施例2に用いたエンボスパターンを示す平面図である。
【図7】図7は、本発明の表面シートの製造に用い得る他のエンボスパターンを示す平面図である。
【符号の説明】
1 吸収性物品用の表面シート
2 第1アクリル板
3 第2アクリル板
11 ***部
13 第1繊維層
14 第2繊維層
15 熱融着部
16 ***部における熱融着部の隣接部
Claims (5)
- 吸収性物品の肌当接面に用いられる表面シートにおいて、
それぞれ繊維集合体からなる第1繊維層及び第2繊維層を有し、第1繊維層と第2繊維層とは積層されて所定パターンで部分的に熱融着されており、第1繊維層は、第1及び第2繊維層の熱融着部以外の部位において***部を形成しており、該***部における、前記熱融着部に隣接する部位は、構成繊維同士が熱融着されて該***部の他の部位よりも剛性が高められており、
10cN/cm2 圧力下における水平方向への空気透過容量が10mL/cm2 ・秒以上であることを特徴とする吸収性物品用の表面シート。 - 前記熱融着部の厚みtに対する前記***部の実質厚みT ' の比(T ' /t)が5〜50である請求項1記載の吸収性物品用の表面シート。
- 吸収性物品の肌当接面に用いられる表面シートにおいて、
それぞれ繊維集合体からなる第1繊維層及び第2繊維層を有し、第1繊維層と第2繊維層とは積層されて所定パターンで部分的に熱融着されており、第1繊維層は、第1及び第2繊維層の熱融着部以外の部位において、着用者の肌側に向けられる面に***部を形成しており、
前記***部は、シートのMD方向及びCD方向に不連続に形成されており、各***部は、MD方向の長さとCD方向の長さとの比(前者/後者)が1/2〜2/1であり、
0.5cN/cm 2 圧力下におけるシートの厚みが0.5〜10mmであり、隣接する***部同士間の最短距離が0.5〜15mmであり、前記熱融着部の厚みtに対する前記***部の実質厚みT ' の比(T ' /t)が5〜50であり、
10cN/cm 2 圧力下における水平方向への空気透過容量が10mL/cm 2 ・秒以上であり、且つ、10cN/cm 2 圧力下におけるシートのMD方向への空気透過容量と、10cN/cm 2 圧力下におけるシートのCD方向への空気透過容量との比(前者/後者)が0.6〜1.7であることを特徴とする吸収性物品用の表面シート。 - 50cN/cm2 圧力下における水平方向への空気透過容量が10〜500mL/cm2 ・秒である請求項1〜3の何れか記載の吸収性物品用の表面シート。
- 10cN/cm2 圧力下における水平方向への空気透過容量が50〜800mL/cm2 ・秒である請求項1〜4の何れかに記載の吸収性物品用の表面シート。
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