JP3587789B2 - 桜桃の苗木の育成方法及び桜桃の栽培方法 - Google Patents

桜桃の苗木の育成方法及び桜桃の栽培方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は桜桃の苗木の育成方法及び桜桃の栽培方法に関し、より詳細には、桜桃(サクランボ)を確実に結実させることができ、かつ台木の育成からはじめて3年目に桜桃を収穫可能とする桜桃の苗木の育成方法及びこれを利用した桜桃の栽培方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
桜桃の苗木を育成する方法として従来行われている方法は、桜桃専用の台木に桜桃の穂木を接ぎ木し、地植えして苗木として養成する方法である。桜桃の花芽のできかたを説明するため、図1に桜桃の二年枝一年枝のかたちを示す。図1でAの部分が二年枝と呼ばれる部分であり、Bの部分が一年枝(前年に伸びた枝)と呼ばれる部分である。桜桃の場合、花芽がつくのは二年枝三年枝以降の枝の部分であり、花芽がついたところは休眠あけした翌年に開花し、結実する。一方、一年枝には花芽がつかず、葉芽のみがついている。この一年枝には翌年に花芽がつき、その翌年に結実する。
【0003】
露地植え用として、接ぎ木によって苗木を養成する従来の方法は、葉芽のみの一年枝を使用し、これを台木に接ぎ木し、露地で育成して苗木とする方法である。一般に、苗木は大きいほど良いとされることから、20cm〜30cmのやや長めの台木を使用し、これに穂木を接ぎ木して苗木を育成する。苗木は2m程度の大きなものが提供されている。桜桃の栽培者は、この苗を畑に植えて桜桃を栽培する。
【0004】
桜桃の栽培方法としては、露地植えによって栽培する他に、鉢植えとして桜桃を栽培する方法もある。桜桃(サクランボ)の鉢植え製品は商店でのディスプレイとしてももちろん使用されるが、桜桃の栽培用としても利用される。桜桃の鉢植え製品はサクランボの実がついていると見栄えがしてディスプレイ用として市場価値が高く、また、栽培用とした場合でも、一鉢で20〜50個程度のサクランボの実がつくことから十分利用できる。鉢植えの場合でも、ほどよく摘果すると、実の大きさは露地栽培によるものと変わらない。また、鉢植えすることで、ハウス内で栽培しやすいといった取り扱い上の利点もある。
桜桃の鉢植え製品をつくる方法として従来行われている方法は、すでに花芽ができている枝を鉢植えの台木に接ぎ木して養成する花芽接ぎによる方法と、前述した方法で育成した苗木を鉢で数年かけて育て、結実するようになってから鉢植え製品として提供する方法である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述したように台木に穂木を接ぎ木して養成する従来の苗木の育成方法による場合は、大きな台木を使用して根を伸長させ、できるだけ大きく育てるように養成するため、栄養生長の苗木となって、生殖生長の苗木にならないという性質がある。栄養生長の木とは、果実をつけるまでの間、木をある程度大きくするために花芽や果実がつかない木であり、従来の養成方法による桜桃の苗木の場合は、植え付けてから実をつけるまでに5〜6年を要する。一方、生殖生長の木とは、苗木から数年間を経過して、安定的に果実を収穫できるようになった木のことであり、安定的に果実を収穫できるようになると、この性質を失うことはない。
【0006】
従来の苗木の養成方法は、果樹はできるだけ大きな苗木を植え付ける方が木が早く生長し収量が多くなるという考えに基づくものであるが、このような養成方法による場合は、木の生長に養分が奪われ、栄養生長の木になって、実をつけるまでに年数がかかる。一般農家で桜桃の栽培をはじめた場合、苗木を畑に植え付けて4年間位は手入れのみで収穫果実はなく、4〜5年目位で花芽はついても、わずかに結実する程度である。栄養生長の場合は、木が結実しないため、ますます大きく生長することになる。このように、従来の桜桃の苗木の育成方法の場合は、木が大きく生長して栄養生長となることから、結実するまでに時間がかかるという問題があった。
【0007】
また、果樹栽培においては、収穫作業やハウス内で加温したりする作業を容易にするため、矮化栽培が望まれるのであるが、従来の苗木は栄養生長で大きく生長するため、矮化することが難しいという問題があった。矮化樹とするため矮化剤を使用したり、コンテナやポットで苗木を3〜4年養成し、これを地植えしたりする方法も考えられている。しかしながら、このような方法でも通常の大きさの3分の2程度に大きさにすることができる程度で完全に矮化することはできない。また、矮化樹とするための台木についても研究はされているが、これらの台木を使用した場合は、台負けしてしまったり、実が小さかったりして、矮化樹で高品質の桜桃を得ることができるまでに至っていない。
【0008】
また、前述した鉢植え製品では、鉢植えした台木に接ぎ木する場合、従来は二年枝あるいは三年枝を接ぎ木しているから、技術的に非常に難しく、活着率が半分程度であり、熟練技術がない場合はほとんど失敗してしまう。これは、二年枝あるいは三年枝という太い枝を台木に接ぎ木しなければならないからである。また、うまく接ぎ木ができた場合でも、結実しにくかったり、実だけついてしまって葉が出なかったり、途中で枯死してしまったりして、最終的に実付きの鉢として出荷できるものは、接ぎ木ができたものの2〜3割程度である。このように、花芽接ぎ木の方法によって桜桃の鉢植え製品を仕上げることは実際には非常にむずかしく、出荷率が悪いために従来の栽培方法では十分に利益をあげることができない。また、苗木を植え付けて養成したものを鉢植えする場合は、上述したように、木の性質上、結実するまでに何年もかかり、その間に木が大きくなりすぎたり、下枝の花芽が枯死したりすることがあって、小さな鉢で丈の低い鉢植えを育成することは殆ど不可能である。
【0009】
そこで、本発明はこれらの問題点を解消すべくなされたものであり、その目的とするところは、通常の接ぎ木の技術を利用するだけで、桜桃を苗木から育成して2年後には確実に結実させることができ、かつ矮化樹として提供することができ、粒が大きく、糖度が高い高品質のサクランボを収穫することを可能とする桜桃の苗木の育成方法及び桜桃の栽培方法を提供するにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
すなわち、桜桃の苗木の育成方法として、桜桃の台木を鉢植えして鉢のみで養成した後、露地で育成した1芽〜5芽程度の葉芽を有する桜桃の一年枝を、前記鉢植えされている台木に接ぎ木し、台木に接ぎ木した鉢植えの状態のまま養成して、地植え用あるいは鉢植え用の苗木を育成することを特徴とする。桜桃の苗木を育成する際に、台木を鉢植えのまま養成することにより、根の伸長が抑制され、木の防衛本能が作用してより早く生殖生長の性質を備え、矮化性を備えるようになる。
また、台木に一年枝を接ぎ木する際に、ハウス内であらかじめ台木を加温して、露地栽培での接ぎ木時期よりも早い時期に接ぎ木し、その後、鉢植えの状態で露地にて育成することにより、その年の秋に落葉するまでに木が充実して生長し、翌年の開花、結実が安定するようになる。
【0011】
また、桜桃の栽培方法において、桜桃の台木を鉢植えして鉢のみで養成した後、露地で育成した1芽〜5芽程度の葉芽を有する桜桃の一年枝を、前記鉢植えされている台木に接ぎ木し、台木に接ぎ木した鉢植えの状態のまま養成した後、鉢植えのまま開花させ、結実させることを特徴とする。
また、桜桃の台木を鉢植えし、露地で育成した1芽〜2芽程度の葉芽を有する桜桃の一年枝を、前記鉢植えされている台木に接ぎ木し、台木に接ぎ木した鉢植えの状態のまま養成した後、苗木を地植えして、開花、結実させることを特徴とする。台木を鉢植えとして苗木を育成したことによって、地植えしたその年から、開花して結実するようになる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面とともに詳細に説明する。
本発明に係る桜桃の苗木の育成方法及び桜桃の栽培方法は、桜桃の苗木を育成する際に、台木から鉢植えの状態で生育させることを特徴としている。以下では、苗木を鉢植えとして栽培する場合と、地植えとして栽培する場合の各々について説明する。
【0013】
(鉢植え製品としての栽培例)
桜桃の鉢植えをつくる場合、従来は桜桃の二年枝または三年枝を台木に接ぎ木するが、本発明に係る栽培方法では、まず、台木を鉢で育成することからはじめる。
図2は鉢10に台木20を植えて育成している1年目の状態を示す。図2(a)は、1年目の春の状態で、露地で育成した台木20を鉢10に植え替えて育成を開始した状態である。台木は青葉台等の桜桃専用の台木として一般に使用されているものを使用する。図2(b)は、1年目の冬の状態で、鉢10の台木20から枝が伸びて根が張ってきた状態を示す。
【0014】
図3は、鉢の2年目の状態で、台木に桜桃の枝を接ぎ木して養成している期間である。図3(a)は、2年目の春で、台木に接ぎ木をした状態である。ここで使用している接ぎ木30は桜桃の一年枝である。一年枝とは、前述したように、露地栽培の木で前年に伸びた枝で、花芽のない葉芽のみの枝である。接ぎ木する場合は、葉芽が4〜5芽程度ついている枝を使用するのがよい。図1に示すように、一年枝は枝のもっとも先の部分であり、接ぎ木する場合は露地栽培の桜桃の木から切ってきて使用する。接ぎ木する時期は、もちろん冬をこえて休眠期間を経過した翌年の春である。
【0015】
なお、休眠期間とは、果樹を結実させる際に、果樹を一定の温度以下で一定の日数(時間)経過させる期間である。桜桃はこの休眠期間を経過させないと実を結ばない。露地栽培の桜桃では、長野県が桜桃を栽培できる南限である。暖地では冬期でも休眠に必要な温度以下に一定期間下がらないため、必要な休眠期間を得ることができない。これが暖地で桜桃が栽培できない理由である。
【0016】
一般に露地栽培で台木に接ぎ木するのは、樹液が動き始める時期である。長野県の例でいえば3月から4月上旬の頃が接ぎ木に適している。
しかしながら、鉢植えの桜桃をつくる場合、この時期に接ぎ木して育成すると、接ぎ木した後に芽が伸び始めるから、露地栽培の木よりも半月から1ヶ月程度生育が遅れ、落葉する秋までの期間に花芽が完全に充実するまでにいたらないことがある。
【0017】
そこで、鉢植えの桜桃をつくる場合には、台木を育成した鉢を春からハウス内で加温して育成しはじめ、樹液が動き始める時期を早めて、通常の接ぎ木時期よりも2ヶ月程度早く接ぎ木するようにするのがよい。長野県の例では2月上旬頃にハウス内で接ぎ木する。このように、露地栽培の木よりも早めに接ぎ木すると、秋の落葉するまでに木が完全に充実して成長するから、翌年の開花、結実が安定し、製品化率を向上させることができる。
もちろん、その地の気候条件等によって、接ぎ木時期を早めることなく充実した花芽ができる場合には、時期を早めて接ぎ木しなくてもよい。
【0018】
なお、接ぎ木する場合は、露地栽培の桜桃の木から一年枝を切り取って接ぎ木するから露地栽培の木が休眠あけしている時期でなければならない。休眠あけしていない木から接ぎ木用の一年枝を切り取って接ぎ木した場合は、葉芽が充実していないため芽ふきが悪くなるし、接ぎ木にできた花芽が秋までの長い期間のうちに返り咲きしてしまって翌年度の使用ができなくなることがあるからである。長野県の例では2月上旬よりも早いと桜桃の木が休眠あけしていないため、このような不都合もある。接ぎ木する場合は露地栽培の桜桃の木が休眠あけする時期をみながら行う必要がある。
【0019】
本発明方法では、一年枝を接ぎ木するから、従来のように二年枝三年枝を接ぎ木する場合にくらべて、枝が細く、台木20に接ぎ木することが容易である。接ぎ木が確実にできることから、二年枝を接ぎ木する場合にくらべてはるかに活着率が高くなる。すなわち、とくに熟練した技術がなくても通常の接ぎ木方法で容易にかつ確実に接ぎ木することが可能である。
接ぎ木の方法は、切り接ぎでも割り接ぎでもどちらでもかまわない。実施形態では割り接ぎに近い切り接ぎで養成している。これは、鉢を輸送中に接ぎ木部分からの折れを防止するためである。
【0020】
接ぎ木する際は、一つの鉢に1〜3本の一年枝を接ぐ。台木20に接ぐ接ぎ木30の本数は、鉢10の大きさや木の強さに応じて調節するようにする。台木20に複数本の接ぎ木30を接ぐことによって、木の勢力を分散させ、木をあまり大きくさせないという意味もあるからである。また、あまり小さい鉢に多く接ぎ木すると花芽がつきにくくなるので注意する。図3(a)は、台木20に3本の枝を接ぎ木したした状態である。
【0021】
接ぎ木した後、ハウス内でしばらく養成してから、露地栽培に移す。長野県の例ではハウス内の栽培は5月中旬頃までとし、その後、露地栽培とする。これは、桜桃の性質として高温栽培をきらうためである。ハウス内でそのまま養成すると暖地型の木になってしまう。暖地型の木とは、普通に木が成長して花が咲くが、実がつかない性質の木である。暖地型の木になりやすいのは生育中の高温と前述した休眠期間中の低温不足である。
【0022】
接ぎ木した後、枝が伸び始めたら、接ぎ木30の先端の枝のみをそのまま伸ばし、それ以外の横芽(接ぎ木30についていた4〜5の葉芽のこと)は葉が5〜6枚以上伸びたときに早めに先端を摘芯する。この摘芯によって、この芽は翌年に実がつくクラスター(花束状短果枝)になる。
【0023】
図3(b)は、露地栽培に移して養成した木の秋頃の状態を示す。接ぎ木30の先端から新しく枝が伸び、接ぎ木30には花芽30aが形成され、新しく伸びた枝には葉芽30bができている。なお、実際には、新しく伸びた枝のうち、接ぎ木30に近い側の3つの芽も花芽となる。このように、花芽30aはもとの接ぎ木30の部分にある4〜5個程度と新しい枝の部分の3個が翌年に開花して結実する。花芽30aができている接ぎ木30の部分が露地栽培でのいわば二年枝、新しく伸びた枝が露地栽培での一年枝にあたる。
台木に接ぎ木して1年間養成する期間は、鉢植えではあるが露地栽培で養成することによって、充実した木に育ち、しっかりした花芽に成長する。秋から冬にかけては落葉し、休眠する期間になる。
【0024】
図4は、2年経過したて3年目を迎えた鉢の状態を示す。図4(a)は、鉢の春先の状態で、枝先を剪定した状態である。枝先を剪定する際には、新しく伸びた枝に形成されている花芽よりも先側で剪定する。開花時期は、鉢をハウス内で生育させるか、露地で生育させるかによって異なるが、開花後、2ヶ月で完熟する。図4(b)は、サクランボの実40がなった状態である。一つのクラスターには花芽が5個〜7個あるから、一つのクラスターで20〜30個開花して5個〜7個結実する。一鉢全体としては、花芽が20個くらいあるから、全部で100個程度サクランボが実ることになるが、7号鉢の場合は20個位まで摘果して優良品をつくるようにする。8号鉢の場合は30個〜40個位とする。
【0025】
鉢植え製品として出荷する場合は、開花後1ヶ月半程度でサクランボの実がピンク色になるから、この時期に出荷すればよい。
鉢植え状態で桜桃の収穫用として使用する場合は、鉢植えのまま、サクランボが熟したところで収穫すればよい。桜桃の木が生殖生長の木となっていることから、粒の大きな品質の良いサクランボを収穫することができる。一鉢でも、かなりの数のサクランボを収穫できるから、たくさん鉢を用意しておくことによって、鉢栽培でも十分な量のサクランボを収穫することができる。
【0026】
(地植えとしての栽培例)
上述したように、本発明の桜桃の苗木の育成方法は、桜桃の台木を鉢植えとして、抑制された環境下で桜桃を育成することによって早く生殖生長の性質を備えた木とし、これによってサクランボを早く収穫できるようにすることを特徴とする。いったん生殖生長の性質が得られた木は、その後は毎年、結実してサクランボを収穫することができるようになる。
【0027】
地植え用として桜桃を栽培する場合も、苗木を育成する基本的な考え方は上述した鉢植え製品の場合の考え方と同様である。なお、地植え用とする場合は、上述した方法と同様に、桜桃の台木を鉢植えして養成した後、台木に桜桃の一年枝を接ぎ木し、鉢植えのまま養成して苗木として使用する場合と、桜桃の台木を鉢に植えて養成する1年目から台木に接ぎ木し、鉢で養成して苗木とする地植え専用とする場合とがある。
【0028】
地植え専用の場合は、1年目に、まず台木を鉢植えしてから、葉芽が1芽〜2芽程度の一年枝を穂木として春に台木に接ぎ木し、その後、露地に移して育成する。接ぎ木した枝は先端の1芽のみを伸ばし、他の芽は摘芯する。初年度は50cm〜80cm程度に伸びる。
2年目は、前年に接ぎ木した枝を40cm程度に剪定した後、春先からハウスに入れて養成する。枝の先端のみ伸ばし、横芽をすべて摘芯すると、秋までには1m程度の苗木に生長し、前年に伸びた芽はクラスターになり、1本の苗木で5〜10個程度のクラスターがつく。
3年目の春に、鉢植えされていた苗木を鉢から出し、そのまま地植えする。木にはすでに花芽ができ、生殖生長の性質の木となっているから、そのまま開花して結実する。この年には、5個〜20個程度のサクランボが結実するが、5個程度以内に摘果して多くの実はつけないようにする。多く果実をつけると木が大きくならないので注意する。
【0029】
地植えから2年目も、同様に開花して結実するが、この年も20個程度結実させて、多くの果実はつけないようにする。3年目も、同様に開花して結実するが、この年も50個〜100個程度の果実を収穫するに止める。
本格的に収穫を開始するのは、地植えして4年目からである。地植えして4年目になると、木の高さが2m程度、横幅が1.5m程度となる。この木の大きさは通常の苗木を植え付けて生長させた木の約3分の1程度の大きさである。この木から1kg〜1.5kg程度サクランボを収穫することができる。
通常の苗木を植え付けて生長させた木の場合は、植え付けて4年目で高さ3m〜4m程度となり、サクランボはわずかに結実するのみである。本発明方法による場合は、木の大きさが抑制され、完全な矮化樹となること、結実年が早まって、4年目ですでに本格的な収穫が可能になることが特徴である。
【0030】
果樹等の栽培では、苗木の植え付け時期は秋植えが基本であるが、本発明方法によって育成した桜桃の苗木は春植えの方が結実しやすい。とくに、リンゴや桃の後地で、堆肥や肥料が多くあって、あまり桜桃の栽培に適していない土地の場合は、春に鉢で開花した後に地植えする方が結実率が高くなる。
本発明方法による桜桃の苗木の育成方法によれば、上述したように、苗木は大きく伸長せず、好適な矮化樹として得られる。したがって、ハウスに収めることも容易にでき、手入れや収穫作業がきわめて容易になる。苗木の初期の植え付け本数としては、10アールあたり80本〜100本程度が適当である。
現地試験の栽培例としては、本発明方法によって育成した苗木を植え付けて7年となるが、木の高さ約2.3m、横幅2m程度で、3kg〜4kgのサクランボを収穫している。柱の高さが2.5m以内の小さなハウスで10アールあたり、300kg〜400kgのサクランボの収穫が可能である。
【0031】
前述したように、本発明に係る桜桃の苗木の育成方法及び桜桃の栽培方法で特徴とする点は、桜桃の苗木を育成する際に、台木から鉢で育成することにある。鉢に台木を入れて養成した場合は、露地栽培とは異なり、自分に合った大きさにしか育たないという木の特性が引き出され、早い時期に木の防衛本能ともいえる生殖生長に変わり、矮化の技術につながるようになる。したがって、台木を育成する鉢は5号(直径15cm)〜8号(直径24cm)程度の比較的小さな鉢を使用するのがよく、コンテナ等の大きな鉢で育成したのでは矮化の作用が有効に機能しなくなる。
桜桃の台木を鉢植えにすることで、根が鉢の中で自由に伸びられず、鉢の中で根が一杯になって生殖生長に変わり、結実率が高まるようになる。また、初期から結実することによって、木の生長が抑制され、矮化樹となる。矮化の性質が備わった木は、上述したように、地植えした場合でも、大きくのびることはなく、好適な矮化栽培を可能とする。
【0032】
本発明は、このような桜桃の木の生長の性質を利用して苗木を育成し、その苗木を利用して桜桃を栽培するものである。とくに、本発明方法によれば、従来の花芽接ぎ木の方法にくらべて確実に結実させることができ、専門家でなくても失敗がないこと、台木の育成から3年間で苗木が育成できること、台木の鉢植えから作業をはじめることができるので大量生産に適すること、一年枝二年枝にくらべて大量に手に入れることができるから、接ぎ木に使用することが容易であること、優秀な桜桃の品種を接ぎ木してサクランボの良品を得ることができるといった種々の利点がある。
【0033】
【発明の効果】
本発明に係る桜桃の苗木の育成方法及び桜桃の栽培方法によれば、桜桃の結実率を高めることができ、桜桃の苗木を地植えした初年度から桜桃を結実させることができ、また、鉢植えの場合も接ぎ木した翌年から桜桃を結実させて収穫することができ、これによって効率的に桜桃を栽培することが可能になる。また、本発明方法によって得られた苗木は、矮化性を備えることから、地植えした場合でも生長が抑制され、好適な矮化栽培が可能となり、収穫作業が容易になるとともに、量産が可能になる等の著効を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】桜桃の枝の一年枝二年枝の構成を示す説明図である。
【図2】鉢で台木を育成している1年目の状態を示す説明図である。
【図3】台木に桜桃の枝を接ぎ木して育成している2年目の状態を示す説明図である。
【図4】桜桃の鉢植え品を出荷する3年目の状態を示す説明図である。
【符号の説明】
10 鉢
20 台木
30 接ぎ木
30a 花芽
30b 葉芽
40 実

Claims (4)

  1. 桜桃の台木を鉢植えして鉢のみで養成した後、
    露地で育成した1芽〜5芽程度の葉芽を有する桜桃の一年枝を、前記鉢植えされている台木に接ぎ木し、
    台木に接ぎ木した鉢植えの状態のまま養成して、地植え用あるいは鉢植え用の苗木を育成することを特徴とする桜桃の苗木の育成方法。
  2. 台木に一年枝を接ぎ木する際に、ハウス内であらかじめ台木を加温して、露地栽培での接ぎ木時期よりも早い時期に接ぎ木し、
    その後、鉢植えの状態で露地にて育成することを特徴とする請求項1記載の桜桃の苗木の育成方法。
  3. 桜桃の台木を鉢植えして鉢のみで養成した後、露地で育成した1芽〜5芽程度の葉芽を有する桜桃の一年枝を、前記鉢植えされている台木に接ぎ木し、台木に接ぎ木した鉢植えの状態のまま養成した後、
    鉢植えのまま開花させ、結実させることを特徴とする桜桃の栽培方法。
  4. 桜桃の台木を鉢植えし、露地で育成した1芽〜2芽程度の葉芽を有する桜桃の一年枝を、前記鉢植えされている台木に接ぎ木し、台木に接ぎ木した鉢植えの状態のまま養成した後、
    苗木を地植えして、開花、結実させることを特徴とする桜桃の栽培方法。
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