JP3583563B2 - エンジンのシリンダヘッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダブルオーバーヘッドカムシャフト方式のエンジンのシリンダヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ロッカーアームを介して吸気弁及び排気弁を駆動するダブルオーバーヘッドカムシャフト(DOHC)方式の4ストロークエンジンが知られている。DOHCエンジンは、吸気弁と排気弁との成す角である弁(バルブ)挟み角の設定の自由度が大きいという利点を有している。
【0003】
このエンジンのシリンダヘッドには、吸気用と排気用の2本のオーバーヘッドカムシャフトと、各オーバーヘッドカムシャフトの回転に伴うカムの動きが伝達されて作動する吸気用と排気用の複数のロッカーアームが組み込まれている。各ロッカーアームは、吸気用と排気用に分かれて2本のロッカー軸に回動自在に取り付けられている。ロッカー軸に取り付けられたロッカーアームは、作動端を2本のロッカー軸の外側に向けている。作動端の下面には、吸気弁或いは排気弁の上端部が当接している。吸気弁及び排気弁は、それぞれ上端側が外側に傾斜してV字を形成するように対向し、各ロッカー軸は、気筒に対応してシリンダヘッドに形成された隔壁にそれぞれ固定されている。
【0004】
隔壁は、ボアの両側に並設されており、両ロッカー軸は、この隔壁に略平行に並列に固定支持されている。多気筒の場合、シリンダヘッドは隔壁によって各気筒毎に区画される。隔壁により仕切られた部屋には、ボアの略中心に位置して、点火プラグが取り付けられるプラグ取付部が形成されている。プラグ取付部の下方には、燃焼室が形成されている。
【0005】
プラグ取付部の周囲及び燃焼室の周縁上部には、冷却水の通路となるウォータジャケットが形成されている。ウォータジャケットは、点火プラグの外形形状に沿ってプラグ取付部を囲むとともに、燃焼室の上部形状に沿って燃焼室周縁に形成されている。このウォータジャケットを流れる冷却水により、点火プラグ及び燃焼室を冷却することができる。
【0006】
各気筒を仕切る両側の2つの隔壁は、それぞれその中央で分離し隙間(図3の実施例の隙間15 a に対応)が形成されている。この隙間は、各ロッカー軸が固定された各々の隔壁の中央部上下方向の全域に渡って略同一幅で設けられている。この隙間の底となる分離した両隔壁の基部(2本のロッカー軸間中央の下方)には、ウォータジャケットに連通する後述の砂抜き用開口部が形成されている。開口部は、両隔壁に沿う方向に向かって開口しており、開口面はボア面と略平行である。即ち、開口面は、2本のロッカー軸を含む平面と略平行であり、開口の軸方向は、このロッカー軸を含む平面に対し略垂直である。
【0007】
シリンダヘッドは、例えば、シェルモールド鋳造法により製造されるが、この場合、ウォータジャケットは、シェル中子を抜き取った後の空間として形成される。ウォータジャケットを形成する際は、シリンダヘッド全体の軽量化のため、開口部の周辺に無駄な肉が付かないようにその形状が考慮される。シェル中子は、熱硬化性の樹脂を混ぜた砂からなる鋳物砂を焼成硬化して形成されており、鋳物成形後に抜き取られ、鋳物内部にウォータジャケットの空洞が形成される。この砂の抜き取りは前述の開口部から行われる。シェル中子を抜き取った後の開口部は、埋め栓により閉塞される。埋め栓は、例えば、開口部の内周面に形成されたネジ部に、埋め栓の外周部に形成されたネジ部を螺合して、開口部を密閉するように取り付けられる。
【0008】
開口部のネジ切りやこのような埋め栓の着脱作業は、この開口面に対し垂直上方から工具を挿入して行う。従って、少なくともこの開口の径に対応した幅の空間が開口の上方に必要となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、DOHCエンジンにおいては、弁挟み角の設定の自由度が大きいことから、できるだけ弁挟み角を小さくすることが要望されている。弁挟み角を小さくすることにより、圧縮比を上げ易く熱効率の良い燃焼室を形成し、且つ吸気通路を直線状にして吸気及び排気の流れを円滑にすることが可能となる。
【0010】
しかしながら、上述した従来のDOHCエンジンは、弁挟み角を小さくすることが構造上制限されている。弁挟み角を小さくするためには、両ロッカー軸の間の距離を短くする必要があるが、この距離は、前述の各隔壁中央の隙間より短くすることができない。つまり、開口部の軸方向はロッカー軸を含む平面に対し略垂直であるため、少なくともこの開口部の径に対応した幅の空間が開口部の上方に必要となって、鋳物砂を抜き取る開口部の径よりも両ロッカー軸の間の距離を短くすることができず、これ以上弁挟み角を小さくすることができなかった。
【0011】
また、ウォータジャケットを、熱源である点火プラグを積極的に冷却することができるような形状にした場合、複雑な外形形状を有する点火プラグに合せるために構造が複雑になり、無駄な肉が増え易い。
【0012】
さらに、ウォータジャケットの下方には燃焼室が設けられているため、ウォータジャケットの下側部分は、燃焼室に関連する構成物を避けて形成しなければならず狭くなってしまう。ウォータジャケットの天井側面積が下側面積より広い場合、冷却水は天井側に多く流れてしまって、冷却したい燃焼室や点火プラグの点火部がある下側部分には、冷却水全体の一部分のみが流れるに過ぎない。よって、点火プラグを充分冷却することができない。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、砂抜き用開口部の径に制限されることなく両ロッカー軸の間の距離を短くして、弁挟み角を小さくすることができるとともに、無駄な肉が付かない形状で点火プラグを積極的に冷却することができるウォータジャケットを備えたエンジンのシリンダヘッドの提供を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明においては、点火プラグの周囲を冷却水が流れるウォータジャケットを有し、シリンダヘッド上部に配置された吸気用と排気用の2本のカム軸の回転がそれぞれ伝達されて作動する複数のロッカーアームを有し、前記ロッカーアームが取り付けられた吸気用と排気用の2本のロッカー軸を並列支持する支持部の前記両ロッカー軸間下方に、前記ウォータジャケットを形成する鋳物砂の砂抜開口が設けられ、前記シリンダヘッドと一体の隔壁がボアの両側に形成され、該隔壁は、その中央に隙間を有し、その隙間の両側に該隔壁の脚部が形成され、前記隙間の底部に前記砂抜開口が形成され、前記ロッカー軸は前記隔壁に支持されたエンジンのシリンダヘッドにおいて、前記砂抜開口の軸は、前記2本のロッカー軸(軸心)を含む平面に対しこれと垂直で且つ前記カム軸と平行な断面内で傾斜し、前記隔壁の脚部は、前記隙間の上部で隙間側に張り出し、この張り出した部分の隔壁に前記ロッカー軸が支持されたことを特徴とするエンジンのシリンダヘッドを提供する。
【0015】
上記構成によると、砂抜開口の軸が斜めであるため、砂抜開口に対する工具等の挿入が砂抜開口直上の隔壁に制限されず、斜め方向から挿入でき、開口の径に対応した隙間を隔壁中央に設ける必要がなくなる。従って、この隔壁により支持する2本のロッカー軸を中央に近づけることができる。これにより、開口部の径に制限されることなく両ロッカー軸の間の距離を短くして、弁挟み角を小さくすることができるとともに、砂抜開口の傾斜に合わせ点火プラグの方向に低下する天井面を持つウォータジャケットを形成することにより、燃焼室や点火プラグの点火部がある下側部分に向けて冷却水を流すことができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
好ましい実施の形態においては、前記ボアの略中心位置に点火プラグが取り付けられ、前記ウォータジャケットの天井面が、前記点火プラグに向かって低下し、流路断面が縮小されるように傾斜していることを特徴としている。
【0017】
この構成により、ウォータジャケットを、無駄な肉が付かない形状で点火プラグを積極的に冷却することができるように形成するとともに、ウォータジャケットを流れる冷却水を、燃焼室や点火プラグの点火部がある下側に向けて流すことができる。
【0018】
さらに、好ましい実施の形態においては、前記砂抜開口の開口面と前記ウォータジャケットの天井面が略平行であることを特徴としている。
【0019】
この構成により、砂抜開口の周辺部分を、無駄な肉を付けずに同じ肉厚で形成することができる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施例に係るエンジンのシリンダヘッドの内部を示す平面説明図である。図2は、図1のA−A線に沿った断面図であり、図3は、図1のB−B線に沿った断面図であり、図4は、図1のC−C線に沿った断面図であり、図5は、図1のD−D線に沿った断面図である。
【0021】
図1〜5に示すように、エンジンのシリンダヘッド1は、気筒2の上部に設置され、図示しないピストン頂部との間に燃焼室3を形成する。図1においては、1列に並んだ3個の気筒2の内の真ん中の気筒2部分が示されている。このエンジンは、ロッカーアームを介して吸気弁及び排気弁を駆動するダブルオーバーヘッドカムシャフト(DOHC)方式の4ストロークエンジンである。
【0022】
図1に示すように、シリンダヘッド1には、排気用と吸気用の2本のオーバーヘッドカムシャフト4,5と、各オーバーヘッドカムシャフト4,5の回動に伴うカム4a,5aの動きが伝達されて作動する排気用と吸気用の4個のロッカーアーム6,7,8,9が組み込まれている。各ロッカーアーム6,7,8,9は、排気用ロッカーアーム6,7と吸気用ロッカーアーム8,9に2個ずつ分かれて2本のロッカー軸10,11に回動自在に取り付けられている。
【0023】
ロッカー軸10,11に取り付けられた各ロッカーアーム6,7,8,9は、図4に示すように、それぞれの作動端7a,9a(他は図示せず)を2本のロッカー軸10,11の外側に向けている。作動端7a,9aの下面には、排気弁12或いは吸気弁13の上端部が当接している。排気弁12及び吸気弁13は、それぞれ上端側が外側に傾斜してV字を形成するように対向し、各ロッカー軸10,11は、気筒2に対応してシリンダヘッド1に形成された隔壁14にそれぞれ固定されている(図3参照)。多気筒の場合、シリンダヘッド1は隔壁14によって各気筒毎に区画される。
【0024】
隔壁14は、ボアの両側に略平行に配置されている。隔壁14に固定された両ロッカー軸10,11は、略平行に並列に支持されており、2本のロッカー軸10,11の軸心を含む平面は、ヘッド底面のブロックとの合せ面となるボア面に対して略平行となる。図3に示すように、隔壁14は、離間して並立する2本の脚部15の上端が連結した門型形状を有している。各脚部15の上部には、ロッカー軸10,11を取り付ける軸取付部16が形成されている。軸取付部16は、互いに接近するように膨出しており、両軸取付部16,16の間は両脚部15,15の間より狭い。両脚部15,15の間に形成される隙間15 aの底となる隔壁14の基部には、後述するウォータジャケット20に連通する鋳物砂抜取り用の砂抜開口21が形成されている。
【0025】
図1及び図2に示すように、隔壁14により仕切られた部屋には、ボアの略中心に位置して、点火プラグが取り付けられるプラグ取付部18が形成されている。プラグ取付部18の下方には、燃焼室3が形成されている。プラグ取付部18の周囲及び燃焼室3の周縁上部には、冷却水の通路となるウォータジャケット20が形成されている。
【0026】
ウォータジャケット20は、点火プラグ17や燃焼室3等の冷却が必要な熱源周辺を冷却水が流れるようにシリンダヘッド1の内部に張り巡らされ、点火プラグ17の外形形状に沿ってプラグ取付部18を囲むとともに、燃焼室3の上部形状に沿って燃焼室3の周縁に形成されている。ウォータジャケット20を流れる冷却水は、例えば、エンジンの進行方向の前方から後方へ(図5矢印参照)向かって、ウォータジャケット20内を一定の方向に流れて循環する。循環する冷却水により、点火プラグ17及び燃焼室3等の熱源を常時冷却することができる。このウォータジャケット20の天井面20aは、点火プラグ17に向かって低下するように傾斜し、冷却水が流れる流路の断面が点火プラグ17に向かうに連れて縮小する(図5参照)。即ち、天井面20aが点火プラグ17に向かって低下する傾斜面を有するため、冷却水は、点火プラグ17近傍ではシリンダヘッド1の低い位置を流れて、点火プラグ17下端の点火部17a及び燃焼室3に近い部分を通ることになる。また、流路の断面が点火プラグ17に向かうに連れて縮小するため、点火プラグ17の周囲では冷却水の流速が速くなる。
【0027】
従って、ウォータジャケット20を流れる冷却水に、燃焼室3及び点火プラグ17に向かうように方向性を持たせることができるため、燃焼室3及び点火プラグ17を積極的に冷却することができる。その上、大きな冷却量を必要とする点火プラグ17の周囲では、冷却水の流速が速くなるため、冷却効率が向上し充分な冷却効果が得られる。
【0028】
図3及び図5に示すように、隔壁14の基部に形成された砂抜開口21は、ウォータジャケット20の天井面20aに開けられており、砂抜開口21の開口軸Lは、2本のロッカー軸10,11を含む平面(軸心を含む平面)に対し傾斜している。よって、砂抜開口21の開口面は、前記平面即ちボア面(ヘッド底面)に対して傾斜することになる。本実施例の場合、開口軸Lは、冷却水の流れ方向に沿って傾斜しており、ウォータジャケット20の天井面20aとその傾斜方向及び角度が一致している。この場合、砂抜開口21の外径を示す延長線Mは、点火プラグ17が取り付けられたプラグ取付部18に掛かることはない。
【0029】
また、図5に示すように、この延長線Mに掛からない範囲に、隔壁14の軸取付部16を形成することができる。つまり、この延長線Mに示される範囲を空間として確保すれば、砂抜開口21のネジ切りや後述する埋め栓の着脱作業を支障無く行えるため、隔壁14の上部に形成される両軸取付部16,16間の距離を任意に設定することができる。
【0030】
従って、両軸取付部16,16間の距離は、砂抜開口21の径に制限されずに可能な限り近づけることができる。即ち、図3に示すように、両軸取付部16,16を近づけて両ロッカー軸10,11を互いに近づけることが可能となるため、図4に示すように、排気用ロッカーアーム7及び吸気用ロッカーアーム9の各作動端7a,9aの下面に当接する排気弁12及び吸気弁13の傾きをより立ち上げることができる。その結果、排気弁12と吸気弁13との成す角度である弁挟み角αをより小さくすることができる。
【0031】
また、図5に示すように、砂抜開口21の開口面とウォータジャケット20の天井面20aの傾斜方向及び角度が一致しているため、砂抜開口21の開口面とウォータジャケット20の天井面20aとが略平行となる。従って、砂抜開口21の周囲は、均等な肉厚を有することとなり、砂抜開口21の周囲に無駄な肉が付かないため、シリンダヘッド1全体の軽量化を図ることができる。
【0032】
図1〜3に示すように、隔壁14の上端には、それぞれジャーナル22が載置されている。ジャーナル22により、シリンダヘッド1の上部に配置された排気用と吸気用の2本のオーバーヘッドカムシャフト4,5が、回動可能に位置決め固定される。各ジャーナル22は、その上に載置されたジャーナル固定部材23を介してシリンダヘッド1に固定される。
【0033】
ジャーナル固定部材23は、シリンダヘッド1にネジ止めされたジャーナルボルト24により、シリンダヘッド1に固定される。これらのボルト24は、オーバーヘッドカムシャフト4,5に対応して2個ずつ設けられている。ジャーナルボルト24は、オーバーヘッドカムシャフト4,5の両側に1本ずつ位置するように、1個のジャーナル固定部材23に2本ずつ配置されている。オーバーヘッドカムシャフト4,5の内側に位置するジャーナルボルト24は、先端がロッカー軸10,11に達しており(図3参照)、ロッカー軸10,11を回動不能に固定している。
【0034】
図3に示すように、オーバーヘッドカムシャフト4,5の軸心には、潤滑オイルを通すためのオイル孔25が開けられている。ロッカー軸10,11の軸心にも、同様のオイル孔26が開けられており、ジャーナル固定部材23、ジャーナル22及び隔壁14に連通して設けられたオイル通路27を経て、オイル孔26に潤滑オイルが供給される。
【0035】
図3に示すように、シリンダヘッド1は、ヘッドボルト取付部28に取り付けられたヘッドボルト28a(図1参照)により、図示しないシリンダブロックにネジ止めされて、シリンダブロックと一体化する。図1に示すように、ヘッドボルト28aは、各気筒2の周囲を4本で固定することができるように、配置されている。シリンダヘッド1とシリンダブロックが一体化することにより、ボア上部には燃焼室3が形成される。
【0036】
図4に示すように、燃焼室3には、排気口29と吸気口30が設けられている。排気口29は、排気通路31に連通し、排気弁12により開閉される。吸気口30は、吸気通路32に連通し、吸気弁13により開閉される。排気弁12及び吸気弁13は、それぞれバルブガイド33を介してシリンダヘッド1に装着され、弁上端のバルブコッター34を介して排気用ロッカーアーム7及び吸気用ロッカーアーム9の各作動端7a,9aの下面に当接している。排気弁12及び吸気弁13の上部には、バルブスプリング35が装着されている。バルブスプリング35の付勢力により、排気弁12及び吸気弁13は、常時弁上端側へと持ち上げられ、排気口29及び吸気口30をそれぞれ閉じている。
【0037】
排気口29及び吸気口30にはバルブシート36が取り付けられており、閉時、排気弁12及び吸気弁13がバルブシート36に密着することにより、排気口29及び吸気口30が密閉される。
【0038】
排気口29を閉じる排気弁12及び吸気口30を閉じる吸気弁13は、チェーンによりクランク軸に連結された各オーバーヘッドカムシャフト4,5の回動により、排気口29及び吸気口30をクランク軸回転に同期した所定のバルブタイミングで開ける。即ち、各オーバーヘッドカムシャフト4,5が回動してカム4a,5aが排気用ロッカーアーム7及び吸気用ロッカーアーム9を押し下げると、押し下げられた排気用ロッカーアーム7及び吸気用ロッカーアーム9の各作動端7a,9aが、バルブスプリング35の付勢力に抗して排気弁12及び吸気弁13を押し下げる。押し下げられた排気弁12及び吸気弁13は、排気口29及び吸気口30の下方へ移動し、排気口29及び吸気口30が開く。
【0039】
シリンダヘッド1は、例えば、上下金型を合わせてキャビティを形成しそこに溶融金属を流し込んで形成するシェルモールド鋳造法により製造される。この際、シリンダヘッド内の空洞部となるウォータジャケット20は、金型内にシェル中子を配して形成する。シェル中子は、熱硬化性の樹脂を混ぜた砂からなる鋳物砂を焼成硬化したものであって、鋳造後に抜き取られる。
【0040】
この鋳物砂の抜き取りは砂抜開口21から行われる。砂抜開口21は、シリンダヘッド1を鋳型から外した後、図示しない孔開け用工具を用いて形成される。孔開け用工具は、隔壁14の基部である両脚部15間の空間の底に向けて、軸取付部16にかからないように両脚部15に対し傾斜する方向から操作される(図5参照)。従って、砂抜開口21は、開口軸Lがロッカー軸10,11を含む平面に対し傾斜した状態になる。シェル中子を抜き取った後の砂抜開口21は、図1に示すように、埋め栓37により閉塞される。埋め栓37は、例えば、砂抜開口21の内周面に形成されたネジ部に、埋め栓37の外周部に形成されたネジ部を螺合して、砂抜開口21を密閉するように取り付けられる。
【0041】
このように砂抜開口21を形成し、埋め栓37を装着した後、隔壁14にロッカー軸10,11が装着される。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るエンジンのシリンダヘッドによれば、鋳物砂抜取り用の砂抜開口の軸は、ロッカー軸を含む平面に対し傾斜しているので、開口部の径に制限されることなく両ロッカー軸の間の距離を短くして、弁挟み角を小さくすることができる。従って、所望の最適挟み角を選択してエンジン運転特性の向上を図ることができる。
【0043】
また、天井面が、点火プラグに向かって低下し、流路断面が縮小するように傾斜させることにより、ウォータジャケットを、無駄な肉が付かない形状で点火プラグを積極的に冷却することができるように形成するとともに、ウォータジャケット内を流れる冷却水を、燃焼室や点火プラグの点火部がある下側に向けて速い流速で流すことができる。従って、高温部を集中的に冷却して冷却効率を高め、安定した燃焼を維持し、運転性能を良好に保つことができる。
【0044】
さらに、砂抜開口の開口面とウォータジャケットの天井面が略平行であるようにすれば、砂抜開口の周辺部分を、無駄な肉が付かずに同じ肉厚で形成することができ、前述の効果とともに、効率良く無駄肉を削除することができエンジン軽量化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るエンジンのシリンダヘッドの内部を示す平面説明図。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図。
【図3】図1のB−B線に沿った断面図。
【図4】図1のC−C線に沿った断面図。
【図5】図1のD−D線に沿った断面図。
【符号の説明】
1:シリンダヘッド、2:気筒、3:燃焼室、
4,5:オーバーヘッドカムシャフト、4a,5a:カム、
6,7:排気用ロッカーアーム、8,9:吸気用ロッカーアーム、
10,11:ロッカー軸、12:排気弁、13:吸気弁、14:隔壁、
16:軸取付部、17:点火プラグ、20:ウォータジャケット、
20a:天井面、21:砂抜開口、L:軸、M:延長線、α:弁挟み角。
Claims (3)
- 点火プラグの周囲を冷却水が流れるウォータジャケットを有し、シリンダヘッド上部に配置された吸気用と排気用の2本のカム軸の回転がそれぞれ伝達されて作動する複数のロッカーアームを有し、前記ロッカーアームが取り付けられた吸気用と排気用の2本のロッカー軸を並列支持する支持部の前記両ロッカー軸間下方に、前記ウォータジャケットを形成する鋳物砂の砂抜開口が設けられ、
前記シリンダヘッドと一体の隔壁がボアの両側に形成され、
該隔壁は、その中央に隙間を有し、その隙間の両側に該隔壁の脚部が形成され、
前記隙間の底部に前記砂抜開口が形成され、
前記ロッカー軸は前記隔壁に支持されたエンジンのシリンダヘッドにおいて、
前記砂抜開口の軸は、前記2本のロッカー軸を含む平面に対しこれと垂直で且つ前記カム軸と平行な断面内で傾斜し、
前記隔壁の脚部は、前記隙間の上部で隙間側に張り出し、
この張り出した部分の隔壁に前記ロッカー軸が支持されたことを特徴とするエンジンのシリンダヘッド。 - 前記ボアの略中心位置に点火プラグが取り付けられ、
前記ウォータジャケットの天井面が、前記点火プラグに向かって低下し、流路断面が縮小されるように傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のエンジンのシリンダヘッド。 - 前記砂抜開口の開口面と前記ウォータジャケットの天井面が略平行であることを特徴とする請求項2に記載のエンジンのシリンダヘッド。
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