JP3582321B2 - 液晶性樹脂ペレットおよびその製造方法ならびにそれを用いた熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低粘度でも操作性に優れた液晶性樹脂ペレットおよびその製造方法とそれを用いて得られる優れた流動性と機械的性質を有し、高品質の熱可塑性樹脂組成物およびその成形品、フィルム、繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年プラスチックの高性能化に対する要求がますます高まり、種々の新規性能を有するポリマーが数多く開発されているが、なかでも分子鎖の平行な配列を特徴とする光学異方性の液晶性樹脂が優れた流動性と機械物性を有する点で注目されている。しかしながら、液晶性樹脂は靱性に劣り、成形品では面衝撃性、フィルム、繊維においては靱性に劣り、また価格が高いなどの理由で用途が制限されているのが現状である。
【0003】
一方、多くの熱可塑性樹脂は液晶性樹脂と比較して、機械物性および成形時の流動性に劣るため、加工の面から制限されているのが現状である。
【0004】
そこで、両者のもつ欠点を解決するために、液晶性ポリエステルと熱可塑性樹脂のブレンドが注目されている(たとえば、特開昭57−25354号公報)。しかしながら、流動性を改善するために液晶性樹脂を熱可塑性樹脂に添加すると面衝撃性、靱性が低下し、一方、液晶性樹脂の量を少なくすると面衝撃性、靱性などの機械物性は保持されるが、十分な流動性が得られないという問題があった。
【0005】
また、熱可塑性樹脂の流動性を向上させるために液晶性オリゴマーを使用することが特開平3−72559号公報に記載されており、同公報記載の方法は、重合により液晶性オリゴマーを製造した後、得られた液晶オリゴマーを粉砕し、それを配合に供する方法であるが、粉砕された液晶オリゴマーは、粒度がそろわないため特に熱可塑性樹脂等とのブレンドの際、分級が生じたり、押出機に噛み込まないなどの問題のあることがわかった。そして本発明者らの検討によれば、かかる方法により得られた液晶オリゴマーは、チップ化し難く、粒度の揃ったチップを得ることが困難であることがわかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述の問題を解決し、低粘度でも操作性に優れた液晶性樹脂ペレットおよびその製造方法とそれを用いて得られる優れた流動性と機械的性質を有し、高品質の熱可塑性樹脂組成物およびその成形品、フィルム、繊維を得ることを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は
(1)液晶性樹脂(A)のTm(融点)+10℃で測定された溶融粘度が8Pa・s以下である液晶性樹脂ペレット、
(2)液晶性樹脂(A)のTm(融点)+10℃で測定された溶融粘度が5Pa・s以下である上記(1)記載の液晶性樹脂ペレット、
(3)液晶性樹脂(A)がpーヒドロキシ安息香酸残基を必須成分として含有する上記(1)または(2)記載の液晶性樹脂ペレット、
(4)液晶性樹脂(A)がエチレンジオキシ単位を必須成分として含有する上記(1)〜(3)のいずれか記載の液晶性樹脂ペレット、
(5)液晶性樹脂(A)が下記構造単位(I)、(III)および(IV)からなる液晶性ポリエステル、または(I)、(II)、(III)および(IV)からなるからなる液晶性ポリエステルである上記(1)〜(4)のいずれか記載の液晶性樹脂ペレット、
【化5】
(ただし式中のR1は
【化6】
から選ばれた1種以上の基を示し、R2は
【化7】
から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)
(6)液晶性樹脂(A)が構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)からなり、構造単位(I)および(II)の合計が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して30〜95モル%、構造単位(III)が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して70〜5モル%であり、構造単位(I)と(II)のモル比[(I)/(II)]が75/25〜95/5であり、構造単位(IV)は構造単位(II)および(III)の合計と実質的に等モルである上記(5)記載の液晶性樹脂ペレット、
(7)融点(Tm)+10℃で測定した溶融粘度が8Pa・sを越える液晶性樹脂ペレットを水、下式(a)から選ばれた化合物および下式(b)から選ばれた化合物から選ばれた少なくとも1種以上の処理剤で50℃以上の温度で処理することにより、処理後の液晶性樹脂の融点+10℃で測定された溶融粘度が8Pa・s以下である液晶性樹脂ペレットを得ることを特徴とする液晶性樹脂ペレットの製造方法、
【化8】
(ただし、式中のR3は炭素数1〜10の1価の有機基、R4は炭素数2〜10の2価の有機基を示す。)
(8)上記(1)〜(6)のいずれか1項記載の液晶性樹脂ペレット(A)0.01〜10重量%と熱可塑性樹脂(B)99.9〜90重量%を溶融混練してなる熱可塑性樹脂組成物、
(9)上記(1)〜(6)のいずれか記載の液晶性樹脂ペレット(A)0.01〜10重量%と熱可塑性樹脂ペレット(B)99.99〜90重量%を溶融混練することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法、
(10)さらに無機充填材(C)を(A)成分および(B)成分の合計100重量部に対して1〜200重量部含有せしめてなる上記(8)記載の熱可塑性樹脂組成物、
(11)上記(8)または(10)記載の熱可塑性樹脂組成物で構成してなる成形品、
(12)上記(8)または(10)記載の熱可塑性樹脂組成物で構成してなるフィルム、および
(13)上記(8)または(10)記載の熱可塑性樹脂組成物で構成してなる繊維である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の液晶性樹脂ペレットにおける液晶性樹脂とは、溶融時に異方性を形成し得る樹脂であり、例えば液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミド、液晶性ポリエステルカーボネート、液晶性ポリエステルエラストマーなどが挙げられ、なかでも液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミドなどが好ましく用いられる。
【0009】
上記液晶性ポリエステルとしては、芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、エチレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位からなる異方性溶融相を形成するポリエステルを挙げることができ、液晶性ポリエステルアミドとしては、上記構造単位と芳香族イミノカルボニル単位、芳香族ジイミノ単位、芳香族イミノオキシ単位などから選ばれた構造単位からなる異方性溶融相を形成するポリエステルアミドを挙げることができる。
【0010】
本発明に好ましく使用できる液晶性樹脂は芳香族オキシカルボニル単位としてp−ヒドロキシ安息香酸からなる構造単位を含む液晶性樹脂であり、また、エチレンジオキシ単位を必須成分とする液晶性樹脂も好ましく使用できる。さらに好ましくは下記構造単位(I)、(III)および(IV)からなる液晶性ポリエステル、あるいは(I)、(II)、(III)および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステルであり、最も好ましいのは(I)、(II)、(III)および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステルである。
【0011】
【化9】
(ただし式中のR1は
【化10】
から選ばれた1種以上の基を示し、R2は
【化11】
から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位であり、構造単位(II)は4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位を、構造単位(III)はエチレングリコールから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸から選ばれた芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位を各々示す。これらのうちR1が
【化12】
であり、R2が
【化13】
であるものが特に好ましい。
【0012】
本発明に好ましく使用できる液晶性ポリエステルは、上記構造単位(I)、(III)、(IV)からなる共重合体または(I)、(II)、(III)、(IV)からなる共重合体であり、上記構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)の共重合量は任意である。しかし、流動性の点から次の共重合量であることが好ましい。
【0013】
すなわち、上記構造単位(I)、(III)、(IV)からなる共重合体の場合は、上記構造単位(I)は構造単位(I)および(III)の合計に対して30〜85モル%が好ましく、40〜80モル%がより好ましい。また、構造単位(IV)は構造単位(III)と実質的に等モルであることが好ましい。
【0014】
一方、上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)からなる共重合体の場合は、上記構造単位(I)および(II)の合計は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して30〜95モル%が好ましく、40〜85モル%がより好ましい。また、構造単位(III)は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して70〜10モル%が好ましく、60〜15モル%がより好ましい。また、構造単位(I)と(II)のモル比[(I)/(II)]は好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(IV)は構造単位(II)および(III)の合計と実質的に等モルであることが好ましい。
【0015】
また液晶性ポリエステルアミドとしては、上記構造単位(I)〜(IV)以外にp−アミノフェノールから生成したp−イミノフェノキシ単位を含有した異方性溶融相を形成するポリエステルアミドが好ましい。
【0016】
上記好ましく用いることができる液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミドは、上記構造単位(I)〜(IV)を構成する成分以外に3,3’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロルハイドロキノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを液晶性を損なわない程度の範囲でさらに共重合せしめるることができる。
【0017】
本発明の液晶性樹脂ペレットを構成する液晶性樹脂の重合方法は特に制限はなく、例えば液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミドの製造方法は、公知のポリエステル、ポリエステルアミドの重縮合法に準じて製造できる。
【0018】
例えば、上記好ましく用いられる液晶性ポリエステルの製造において、次の製造方法が好ましく挙げられる。
【0019】
(1)p−アセトキシ安息香酸、4,4’−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物とテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸およびポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマ、オリゴマまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルから脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
【0020】
(2)p−ヒドロキシ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物、無水酢酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマ、オリゴマまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルとを脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
【0021】
(3)(1)または(2)の製造方法において出発原料の一部に特開平3−59024号公報のように1,2−ビス(4−ヒドロキシベンゾイル)エタンを用いる方法。
【0022】
重縮合反応に使用する触媒としては、液晶性樹脂の重縮合触媒として公知のものを使用することができる。
【0023】
また、本発明の液晶性樹脂ペレットの溶融粘度の上限は、融点(Tm)+10℃の条件で、ずり速度1,000(1/秒)の条件下でノズル径0.5mmφ、ノズル長10mmのノズルを用いて高化式フローテスターによって測定した値で8Pa・s以下であることが必須であり、5Pa・s以下であることが好ましい。また、より好ましい粘度としては、3Pa・s以下である。一方、溶融粘度の下限は液晶性樹脂ペレットが形状を維持できる程度であれば特にない。
【0024】
なお、融点(Tm)とは示差熱量測定において、液晶性樹脂を室温から40℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2)のピークを指す。
【0025】
さらに、本発明の液晶性樹脂の形態はペレットであることが必須である。ここでいうペレットとは液晶性樹脂を粒状にしたものである。ペレットの形状としては特に制限はなく、例えば円柱状、直方状、球状などが挙げられる。具体例としてはペレット100gを20メッシュ(目開き0.833mm)のふるい、、好ましくは16メッシュ(目開き0.991mm)のふるいで振盪装置を用い、2分間以上、好ましくは5分間振盪させた際のふるい上に残るふるい残量が95重量%以上、好ましくは97重量%以上のものが挙げられる。また、ペレットの最長径は、特に限定されないが熱可塑性樹脂とのブレンド時の分級を抑制するために、ペレット最長部の平均長が1mm以上50mm以下のものが好ましく、特に好ましくは1.5mm以上10mm以下、より好ましくは2mm以上7mm以下のものである。なお、測定方法は任意にペレットを20個取り出し、ノギスあるいはマイクロメーターを用いてペレットの最長部を測定し、平均値を算出する。さらに本発明の液晶性樹脂ペレットの見かけ密度は好ましくは0.6〜1.0g/cm3、0.65〜0.9g/cm3のものがより好ましく用いられる。ここでいう見掛け密度とはJIS K 6911の方法に準じて測定されたものである。
【0026】
上記ペレットを得る方法としては特に制限されないが、具体例を挙げると液晶性樹脂を溶融した状態でノズルから押出し、ストランド状にしたものをストランドカッターによりペレット化する方法、溶融状態でノズルから押し出したものをホットカッターによりペレット化する方法、シート状に押し出したものをシートカッターによりペレット化する方法などが挙げられる。
【0027】
また、本発明の液晶性樹脂ペレットを得る方法としては特に限定はしないが、好ましい方法としては融点(Tm)+10℃で測定した溶融粘度が8Pa・sを越える液晶性樹脂ペレットを水、下式(a)から選ばれた化合物および下式(b)から選ばれた化合物から選ばれた少なくとも1種以上の処理剤で50℃以上の温度で処理する方法が挙げられる。
【0028】
【化14】
(ただし、式中のR3は炭素数1〜10の1価の有機基、R4は炭素数2〜10の2価の有機基を示す。)
上式(a)で表される化合物の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、フェノールなどが挙げられ、メタノール、エタノールが好ましく用いられる。また上式(b)で表される化合物の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールなどが挙げられ、グリコールなどが好ましく用いられる。これらの処理剤は2種以上の混合物、例えばメタノール水溶液、エチレングリコール水溶液などとして用いることもでき、塩酸、硫酸、リン酸などの酸または水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリを加えた溶液を用いることも可能である。
【0029】
また、処理温度の下限としては50℃以上であることが好ましく、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは90℃以上である。一方、上限は用いる溶媒または溶液の蒸気圧が10kgf/cm2以下となる温度が好ましく、より好ましくは7kgf/cm2以下となる温度、さらに好ましくは5kgf/cm2以下となる温度である。また、溶媒または溶液の蒸気圧が1.1kgf/cm2未満の条件で処理する場合の処理時間は、30分以上250時間以下が好ましく、より好ましくは1時間以上220時間、最も好ましくは3時間以上200時間以下である。また、溶媒または溶液の蒸気圧が1.1kgf/cm2以上の条件で処理する場合の処理時間は、30分以上144時間以下が好ましく、より好ましくは1時間以上72時間以下、最も好ましくは3時間以上、48時間以下である。
【0030】
かくして得られる本発明の液晶性樹脂ペレットは低粘度でも操作性に優れ、熱可塑性樹脂との混合に際し、極めて有用であり、上記液晶性樹脂ペレットを熱可塑性樹脂(B)と混合することで熱可塑性樹脂組成物とすることができる。なお、上記処理を行って得られた本発明の液晶性樹脂ペレットは、通常、重合完了後のポリマーに比べ、融点が若干低下する。
【0031】
熱可塑性樹脂(B)としては上記特定の溶融粘度を有する液晶性樹脂以外の熱可塑性樹脂であれば特に限定はないが、具体例を挙げると、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリ(シクロヘキサンジメチレンテレフタレート−エチレンテレフタレート)共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ABS、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリスルフォン、フッ素樹脂等を挙げることができ、これらの熱可塑性樹脂は2種以上混合して使用することができる。なかでも本熱可塑性樹脂組成物を成形品として用いる場合にはポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリ(シクロヘキサンジメチレンテレフタレート−エチレンテレフタレート)共重合体、ポリカーボネート、ABSなどが好ましく用いられ、フィルム、繊維としてはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく用いられる。
【0032】
また、配合に供する際の熱可塑性樹脂(B)の形態はペレットであることが好ましい。かかるペレットの形状等は一般に市販されているものでよい。
【0033】
本発明の熱可塑性樹脂組成物において全熱可塑性樹脂成分中、すなわち(A)成分と(B)成分の合計100重量%中、液晶性樹脂(A)は0.01〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.05〜8重量%、さらに好ましくは0.07〜7重量%、最も好ましくは0.1〜5重量%であり熱可塑性樹脂(B)は99.99〜90重量%が好ましく、より好ましくは99.95〜92重量%、さらに好ましくは99.93〜93重量%、最も好ましくは99.9〜95重量%である。液晶性樹脂(A)が0.01重量%未満であると流動性に対する効果が小さくなり、10重量%を越えると機械物性が低下するため好ましくない。
【0034】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法には特に制限はなく、液晶性樹脂ペレット(A)と熱可塑性樹脂(B)、好ましくは熱可塑性樹脂(B)ペレットを直接、製膜機、製糸機あるいは成形機などのホッパーに投入、あるいはドライブレンド後ホッパーに投入し(すなわち直接混合し)、製膜、製糸、あるいは成形する方法、液晶性樹脂ペレット(A)と熱可塑性樹脂(B)、好ましくは熱可塑性樹脂(B)ペレットをあらかじめ溶融混練して、製膜機、製糸機あるいは成形機などに供することができる。特に直接混合する場合、本発明の液晶性樹脂ペレットは混合時に分級しにくく、製膜機、製糸機などへの噛み込み性に優れている。溶融混練には公知の方法を用いることができ、例えば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、一軸もしくは二軸押出機などを用い、200〜400℃の温度で溶融混練して組成物とすることができる。
【0035】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物に対して(C)充填剤を添加することにより、機械的特性などをいっそう改善することができる。
【0036】
上記充填剤(C)の量は、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、通常、0.01〜200重量部であり、0.1〜150重量部が好ましい。充填剤(C)の具体例としてはガラス繊維、炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、石膏繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維、セラミック繊維、ボロンウィスカー繊維、アスベスト繊維、グラファイト、マイカ、タルク、湿式または乾式シリカ、コロイド状シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、ワラステナイト、酸化チタン、二硫化モリブデン、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、ジルコニア等の繊維状、粉状、粒状あるいは板状の無機フィラーが挙げられる。又、これらの充填剤についてはシラン系、チタネート系などのカップリング剤、その他の表面処理剤で処理されたものを用いてもよい。本発明熱可塑性樹脂組成物を成形品として用いる場合、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト、マイカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ワラステナイト、酸化チタンなどの繊維状、粉状、粒状あるいは板状の無機フィラーが好ましく用いられ、フィルム、繊維として用いる場合、酸化チタン、炭酸カルシウム、湿式または乾式シリカ、コロイド状シリカ等の粉状、粒状の無機フィラーが好ましく用いられる。
【0037】
更に、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない程度の範囲で、酸化防止剤および熱安定剤(たとえばヒンダードフェノール、ヒドロキノン、亜リン酸エステル類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(たとえばレゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、滑剤および離型剤(モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、ポリエチレンおよびポリエチレンワックスなど)、染料(たとえばニトロシンなど)および顔料(たとえば硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラックなど)を含む着色剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤などの通常の添加剤を添加して、所定の特性を付与することができる。
【0038】
これら充填剤あるいは各種添加剤を添加する方法は、特に制限はなく、(A)および(B)成分とともに直接混合、あるいはあらかじめ溶融混練することができる。また、あらかじめ(B)成分と溶融混練した後、(A)成分と直接混合、あるいは溶融混練することもできる。なかでも各成分をあらかじめ溶融混練することが好ましく、溶融混練には公知の方法を用いることができる。たとえば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを用い、200〜400℃の温度で溶融混練して組成物とすることができる。
【0039】
本発明の液晶性樹脂ペレットは低粘度でも操作性に優れるため、それを用いて得られる熱可塑性樹脂組成物は優れた流動性と機械的性質を有し、高品質で良好な表面外観を備えるものであり、かかる性質をいかして成形品、フィルム、繊維に加工することが可能である。また、成形品を成形するにあたっての成形方法は通常の成形方法(射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、インジェクションプレス成形など)により、三次元成形品、シート、容器パイプなどに加工することができ、特に射出成形あるいはインジェクションプレスにより厚みが1.5mm以下の部分を有する成形品、より好ましくは1.2mm以下の部分を有する成形品に、さらに好ましくは1.0mm以下の部分を有する成形品に有効である。また、フィルムとしてはTダイ法、リングダイ法などの既存の方法により製膜でき、未延伸、未配向フィルムでもよいが、公知の一軸あるいは二軸延伸、熱処理した配向フィルムである方が高弾性率、強靱性、耐熱性等の点で好ましく、これらフィルムは単膜でもよいが、これに他のポリマー層、例えばポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系ポリマーなどを積層してもよい。さらに繊維を紡糸するにあたっての製糸方法は通常公知の方法すなわち紡糸−延伸の2工程法やそれを連続して行なうスピンドロー法や、高速紡糸して延伸工程を省略するドロースピン法などいずれの方法を用いてもよく、紡糸、延伸工程での配向度の配分方法や弛緩処理の有無、温度の工程なども特に限定を必要としない。またいうまでもなく、トータル繊度、フィラメント数、断面形状も限定されるものではない。
【0040】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は成形品として用いる場合は各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチコイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶ディスプレー部品、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、HDD部品、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケースなどの自動車・車両関連部品、その他各種用途に有用であり、フィルムとして用いる場合は磁気記録媒体用フィルム、写真用フィルム、コンデンサー用フィルム、電気絶縁用フィルム、包装用フィルム、製図用フィルム、リボン用フィルムに有用であり、繊維として用いる場合にはタイヤコード、コンベアーベルト、ホース等のゴム補強材、ロープ、ケーブル、スピーカーコーン、テンションメンバー、安全着、防弾チョッキ、宇宙服、海底作業服等幅広い分野に有用である。
【0041】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳述する。
【0042】
なお、参考例中のk/l/m/nは、組成モル比を表す。
【0043】
参考例1
p−ヒドロキシ安息香酸839重量部、4,4´−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト432重量部及び無水酢酸834重量部を撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行なった。
【0044】
まず、窒素ガス雰囲気下に100〜250℃で5時間、250〜280℃で1.5時間反応させた後、280℃、1時間で0.5mmHgに減圧し、更に1.25時間反応させ、重縮合を完結させたところ、ほぼ理論量の酢酸が留出し、下記の理論構造式を有する液晶性ポリエステル樹脂(A−1)を得、吐出口から吐出し、水冷後、ストランドカッターによりカッティングを行い、ペレットとした。このペレットを任意に20個とりペレットの最長部の平均長を測定したところ3mmであった。また、16メッシュのふるいおよびフリッシュ(Fritsh)社製の“アナリセット(Analysette)”型振盪装置を用い、ペレット100gをふるい上で、5分間振盪させた際の、16メッシュのふるい残量は99重量%であった。また、JIS K 6911の方法で測定した、見掛け密度は0.75g/cm3であった。
【0045】
【化15】
k/l/m/n=67.5/7.5/25/32.5
このポリエステルの融点を測定したところ244℃で、溶融粘度は254℃で13Pa・sであった。
【0046】
参考例2
参考例1と同一装置を用い、次の条件で脱酢酸重合を行った。p−アセトキシ安息香酸1216重量部およびポリエチレンテレフタレート432重量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下に240℃で3時間攪拌を行った。その後2時間かけて缶内温度を240〜280℃にし、重合缶を90分かけて1Torrまで減圧した。その後1時間攪拌を続け重縮合を完結させたところ、ほぼ理論量の酢酸が留出し、下記の理論構造式を有する液晶ポリエステル樹脂(A−2)を得、吐出口から吐出し、水冷後、ストランドカッターによりカッティングを行い、ペレットとした。このペレットを任意に20個とりペレットの最長部の平均長を測定したところ3mmであり、16メッシュのふるい残量は99重量%、見掛け密度0.74g/cm3であった。
【0047】
【化16】
k/l/m=75/25/25
このポリエステルの融点を測定したところ246℃、溶融粘度は256℃で23Pa・sであった。
【0048】
実施例1
参考例1で得られた液晶性ポリエステル樹脂(A−1)を600重量部を1500重量部の水に入れ、オートクレーブ中加圧下で120℃で20時間処理し、液晶性ポリエステル樹脂(A−4)を得た。この液晶性ポリエステル樹脂は処理前のペレット形状を維持しており、融点は232℃であった。溶融粘度は254℃の条件下で1.0Pa・s、242℃の条件下で1.6Pa・sであった。また、見掛け密度は処理前とかわらなかった。
【0049】
実施例2
参考例2で得られた液晶性ポリエステル樹脂(A−2)を600重量部を1500重量部の水に入れオートクレーブ中加圧下で120℃で20時間処理し、液晶性ポリエステル樹脂(A−5)を得た。この液晶性ポリエステル樹脂は処理前のペレット形状を維持しており、融点は234℃であった。溶融粘度は256℃の条件下で1.5Pa・s、244℃の条件下で2.4Pa・sであった。また、見掛け密度は処理前とかわらなかった。
【0050】
実施例3
参考例1で得られた液晶ポリエステル樹脂(A−1)600重量部を1500重量部の水に入れ、97℃で190時間処理し、液晶ポリエステル樹脂(A−6)を得た。この液晶性ポリエステル樹脂は処理前のペレット形状を維持しており、融点は232℃であった。溶融粘度は254℃の条件下で1.8Pa・s、242℃の条件下で2.9Pa・sであった。また、見かけ密度は処理前と変わらなかった。
【0051】
比較例1
参考例1と同一装置を用い、次の条件で脱酢酸重合を行った。p−ヒドロキシ安息香酸839重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート432重量部及び無水酢酸834重量部を窒素ガス雰囲気下に100〜250℃で5時間、250〜280℃で1.5時間反応させた後、280℃、1時間で0.5mmHgに減圧し、下記の理論構造式を有する液晶性ポリエステル樹脂(A−3)を得、吐出口から吐出し、ストランドカッターによりペレット化を試みたが、不可能であったので水冷後、粉砕した。粉砕品の20メッシュのふるい残量は82%であった。
【0052】
【化17】
k/l/m/n=67.5/7.5/25/32.5
このポリエステルの融点を測定したところ240℃で、溶融粘度は250℃で1.0Pa・sであった。
【0053】
実施例4〜10、比較例2〜12
液晶性樹脂(A)A−1〜A−6、表1記載の熱可塑性樹脂(B)のペレットおよび表1記載の充填剤(C)をそれぞれ表1に示すとおりドライブレンドし、250〜280℃に設定した30mmφ二軸押出機で溶融押出し、水冷後ペレット化した。また、この乾燥ペレットを用いてシリンダ温度250〜280℃、金型温度40〜90℃に設定した射出成形機(住友ネスタール射出成形機プロマット(住友重機械工業(株)製)に供し、1mm厚×70mm×70mmの角板を成形した。その角板を用い、面衝撃性のテストとして撃芯9mmφ、重量300gを用いデュポン衝撃試験を行い、角板にひび割れの起こらない落下距離を求めた。また、流動性の評価として上記射出成形機を用いてシリンダ温度250〜280℃、射出速度99%、射出圧力500kgf/cm2の条件で0.5mm厚×12.7mm幅の試験片を50ショット成形し、流動長さ(棒流動長)の平均値およびその標準偏差を測定した。その結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
上記表1の結果より、本願発明の液晶性樹脂組成物は流動性、面衝撃性にも優れることがわかる。また、未処理品の液晶性樹脂を用いた場合は流動性に劣り、液晶性樹脂を多量に添加することで流動性は向上するものの面衝撃性は大きく低下しており、満足のいくものは得られないことがわかる。さらに、液晶性樹脂として低粘度品のA−3を用いた場合流動長さの標準偏差が大きく、混練時の分級による組成のバラツキが大きいことがわかる。
【0055】
実施例11〜14、比較例13〜20
液晶性樹脂(A)A−1〜A−5と固有粘度(IV)1.4dl/g(オルトクロロフェノール中、0.1g/ml濃度、25℃で測定)のPET(ポリエチレンテレフタレート)のペレットをそれぞれ表2に示すとおりVブレンダーでブレンドし160℃で5時間真空中で乾燥させた後280℃に設定した40mmφ単軸押出機に供給して溶融押出し、これを表面温度60℃のキャスティングドラムに巻き付けて冷却固化し、厚さ50〜100μmの未延伸フィルムをT.M.Long社製のフィルムストレッチャーを用いて90℃で長手方向、幅方向とも3倍に同時二軸延伸した。これらについて押出時の噛み込み性、剪断発熱および得られたフィルムの品質の評価としてフィルム中に含まれるオリゴマー量を観測し、フィルムの固有温度、破断強度を測定した。その結果を表2に示す。なお、各物性の測定方法ならびに効果の評価方法は下記のとおりである。
【0056】
(1)剪断発熱
剪断発熱(℃)=押出時の温度(℃)−設定温度(℃)
押出時の温度は押出機から押出された直後の組成物の温度であり、設定温度は押出機先端のシリンダーの設定温度を示す。
【0057】
(2)生成オリゴマー量
生成オリゴマー量(%)=組成物中のオリゴマー量(%)−押出前のPET中のオリゴマー量(%)
組成物中のオリゴマー量、押出前のPET中のオリゴマー量は組成物あるいはPET100mgをオルトクロロフェノール1mlに溶解し、ポリエチレンテレフタレート環状三量体の含有量を液体クロマトグラフ(モデル8500、VARIAN社製)を用いて測定し、ポリマーに対する割合(重量%)で示す。
【0058】
(3)製膜後のPETの固有粘度(IV)
オルトクロロフェノール中、0.1g/mlの濃度でフィルムを溶解させ、不溶分を濾過し、25℃で測定した。なお、濃度については不溶分を除いた濃度で計算した。単位はdl/gである。
【0059】
(4)破断強度
テンシロン型引張試験機(オリエンテック社製)に幅10mm、チャック間長さ100mmになるようにサンプルをセットし、23℃、65%RHの雰囲気下で引張速度200mm/分で引張試験を行い求める。単位はkg/mm2で表す。
【0060】
【表2】
上記表2の結果より、本発明の液晶性樹脂はブレンド時に分級せず、噛み込み性に優れていることがわかる。また、押出時の剪断発熱も少ないため生成するオリゴマー量が少なく、PETの分子量を表す固有粘度の低下も小さく、破断強度にも優れているフィルムが得られていることがわかる。また、未処理品の液晶性樹脂を用いた場合は生成オリゴマー量が多く、固有粘度低下も大きくなり、液晶性樹脂を多量に添加した場合、生成オリゴマー量、固有粘度低下は低減するものの、液晶性樹脂の添加により破断強度が低下しており、満足のいくものは得られないことがわかる。さらに、液晶性樹脂として低粘度品のA−3を用いた場合には押出時の分級により噛み込み性が悪くフィルムを得ることができなかった。
【0061】
実施例15〜18、比較例21〜28
液晶性樹脂(A)A−1〜A−5と固有粘度1.4dl/g(オルトクロロフェノール中、0,1g/ml濃度、25℃で測定)をPET(ポリエチレンテレフタレート)のペレットをそれぞれ表3に示すとおりVブレンダーでブレンドし160℃で5時間真空中で乾燥させた後、40mmφ単軸押出機に供給して溶融押出し、0.4mmφ、6ホールの口金を用いて紡糸温度295℃、引取速度70m/分で溶融紡糸を行った。この未延伸糸を熱ピン(80℃)、熱板(150℃)を用いて6倍延伸を行った。これらについて押出時の噛み込み性および剪断発熱および得られた繊維の評価として破断強度を測定した。その結果を表3に示す。
【0062】
(1)剪断発熱
剪断発熱(℃)=押出時の温度(℃)−設定温度(℃)
押出時の温度は押出機から押出された直後のポリマーの温度であり、設定温度は押出機先端のシリンダーの設定温度を示す。
【0063】
(2)固有粘度(IV)
オルトクロロフェノール中、0.1g/mlの濃度で、25℃で測定した。単位はdl/gである。
【0064】
(3)破断強度
テンシロン型引張試験機(オリエンテック社製)に、チャック間長さ100mmになるようにサンプルをセットし、23℃、65%RHの雰囲気下で引張速度200mm/分で引張試験を行い求める。単位はg/dで表す。
【0065】
【表3】
上記表3の結果より、本発明の液晶性樹脂はブレンド時に分級せず、噛み込み性に優れていることがわかる。また、押出時の剪断発熱も少ないためPETの固有粘度の低下も小さく、破断強度にも優れている繊維が得られていることがわかる。また、未処理品の液晶性樹脂を用いた場合は固有粘度低下も大きくなり、液晶性樹脂を多量に添加した場合、固有粘度低下は低減するものの、液晶性樹脂の添加により破断強度が低下しており、満足のいくものは得られないことがわかる。さらに、液晶性樹脂として低粘度品のA−3を用いた場合にには押出時の分級により噛み込み性が悪く繊維を得ることができなかった。
【0066】
【発明の効果】
本発明は、低粘度でも操作性に優れた液晶性樹脂ペレットおよびその製造方法とそれを用いて得られる優れた流動性と機械的性質を有し、高品質の熱可塑性樹脂組成物およびその成形品、フィルム、繊維を得ることができる。
Claims (7)
- 液晶性樹脂(A)のTm(融点)+10℃で測定された溶融粘度が8Pa・s以下である液晶性樹脂ペレット。
- 液晶性樹脂(A)のTm(融点)+10℃で測定された溶融粘度が5Pa・s以下である請求項1記載の液晶性樹脂ペレット。
- 液晶性樹脂(A)が構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)からなり、構造単位(I)および(II)の合計が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して30〜95モル%、構造単位(III)が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して70〜5モル%であり、構造単位(I)と(II)のモル比[(I)/(II)]が75/25〜95/5であり、構造単位(IV)は構造単位(II)および(III)の合計と実質的に等モルである請求項3記載の液晶性樹脂ペレット。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載の液晶性樹脂ペレット(A)0.01〜10重量%と熱可塑性樹脂(B)99.9〜90重量%を溶融混練してなる熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載の液晶性樹脂ペレット(A)0.01〜10重量%と熱可塑性樹脂ペレット(B)99.99〜90重量%を溶融混練することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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