JP3580354B2 - スライドファスナー用スライダー - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
この発明は、主にスポーツ用ユニフォームに用いられるスライドファスナーのスライダーであり、スライダーは表面に引手取付部などの突起物がなく、また硬い引手も存在しない表面が平滑で危害を与えることのない安全なスライダーに関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来、図１４に示すようにスライドファスナー用スライダーの胴体における案内柱に上下方向へ貫通する透孔を設け、この透孔に丸紐を挿通し、丸紐の両端部に止金を装着して透孔から抜脱するのを防いだスライドファスナー用スライダーが米国特許第２２５３４９４号明細書に開示されているのをはじめ、紐を装着したスライダーは数多く知られている。
【０００３】
また図１５に示すようにスライドファスナー用スライダーの胴体に引手を取付けることなく、上翼板の表面に凹部を形成して周囲に環状の突起を形成し、この凹部内に樹脂塗料を塗布して***状の装飾面を形成したスライドファスナー用スライダーが実開昭６１−２０４５０６号公報に開示されている。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
前項で述べた図１４に示したスライドファスナー用スライダーは、スライダー胴体に丸紐を挿通した位置が、胴体の前端側にあるため、スライドファスナーの閉鎖操作はスムーズに行えるが、開離操作の際はスライダーの先端部が持ち上げられ摺動操作がスムーズに行えない。また丸紐は胴体に固定されていないため遊動し、先端の止金に力が加わりその結果丸紐から抜けて丸紐自体が胴体から抜脱する恐れがあるなど問題点がある。
【０００５】
また他に知られた紐を装着したスライダーは、その殆どが紐をスライダーに固定してなく自由に遊動できるものであるから、紐がスライダーから抜け易いなど問題点がある。
【０００６】
さらに、図１５に示したスライダーは、胴体の表面はなだらかで危害を与える形態ではないが、胴体には引手がなくスライダーの摺動操作を行うには不便である。また胴体の上面に塗布した装飾面を固定する手段がとられていないため、使用中に装飾面が胴体から剥離する恐れがあり、長期にわたって安定した使用ができないなど問題点がある。
【０００７】
この発明は、上述の事柄を考慮して発明されたものであり、この発明のうち請求項１記載の発明は、スライドファスナー用スライダーの胴体の表面に引手取付部などの突起物がなく平滑で過激なスポーツにおいても危険性がなく安全であり、しかもデザイン的にも優れたカラフルなスライダー、そのために胴体に引手として取付ける柔軟な紐体の基部を胴体上に設けた紐取付部に取付け、この紐取付部の表面を平滑面に形成するため、合成樹脂を胴体上に成形して成形樹脂体を形成し、紐体の基部を埋装できる成形樹脂体によって被覆したスライドファスナー用スライダーを提供することが主たる目的である。
【０００８】
請求項２記載の発明は、請求項１記載の発明の目的に加え、スライダーの胴体上で紐体の基部を紐取付部に固定し、この固定部分を埋装できる成形樹脂体を胴体上に簡単かつ強固に固定することができる固定部を、紐体を取付けた紐取付部とともに併設し体裁のよい美しいスライドファスナー用スライダーを供することが目的である。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、この発明のうち請求項１記載の発明は、スライダー胴体１の翼板２、ここで翼板２とは上翼板または下翼板あるいは両翼板を指す、翼板２の上面すなわち表面に、引手として用いる平紐３１、丸紐３２などの紐体３０を取付けるための紐取付部１０を胴体１上に突出する形に設け、この紐取付部１０に紐体３０の基部を固定し、この固定部分を埋装する形態で合成樹脂をインサート成形して成形樹脂体２５を形成し、翼板２の表面を成形樹脂体２５によって被覆したスライドファスナー用スライダーを主な構成とするものである。
【００１０】
請求項２記載の発明は、請求項１記載の発明の構成に加え、スライダー胴体１の翼板２の表面に成形樹脂体２５を固定するための固定部２０を紐体３０を取付ける紐取付部１０とともに突出状に併設し、翼板２の表面を成形樹脂体２５によって被覆したスライドファスナー用スライダーである。
【００１１】
【発明の実施の形態】
以下、この発明のスライドファスナー用スライダーの実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【００１２】
この発明のスライドファスナー用スライダーは、主としてスライダー胴体１を亜鉛合金またはアルミニウム合金などをダイキャスト成形して作製し、胴体１の上面に合成繊維糸などを編織成した紐体３０を引手として用いるため、胴体１に紐体３０を取付けるのに、主としてポリウレタン、ポリエステルなどの合成樹脂を胴体１上にインサート成形して成形樹脂体２５を形成することによって、紐体３０の基部を胴体１に固定するとともに、胴体１の表面に突起物が存在しないスライダーに形成する。スライダーの胴体１は金属以外にもポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレンなどの合成樹脂を用いてもよく、また胴体１上に成形する成形樹脂体２５は塩化ビニル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリプロピレンなどの合成樹脂を用いて成形してもよい。
【００１３】
なお、引手を構成する紐体３０は合成繊維糸などを編織成したものだけでなく、可撓性あるいは弾力性または柔軟性を備えた合成樹脂材から平角体または線状体に形成したもの、たとえば軟質塩化ビニル紐などであってもよい。
【００１４】
図１に示す第１実施例のスライダーは、スライダー胴体１が、上翼板２と下翼板２とを案内柱４によて連結し、上翼板２の両側縁にファスナーエレメントをガイドするガイドフランジ５が形成されてガイド溝６が設けられている。上翼板２の上面すなわち表面には紐取付部１０を形成するため、やや大きな先細状の舌片１１を横方向に対面する形で、表面へ突出するように設け、この一対の舌片１１の前後に、紐取付部１０の舌片１１よりやや小さい同形の舌片１１を対面状に複数個突設し、成形樹脂体２５を固定するための固定部２０を形成してスライダー胴体１に仕上げる。
【００１５】
上記のように形成されたスライダーの胴体１に紐体３０を取付けるには、まず胴体１の上翼板２上に形成した紐取付部１０の舌片１１間に、所要長さで舌片１１間に適応できる形の平紐３１を紐体３０として用い、図２に示すように舌片１１間に介在させて舌片１１を内側へ上方からかしめ加工してかしめ部１４を形成することによって、平紐３１の端部を固定し平紐３１を胴体１に取付ける。そして紐取付部１０の前後に設置された成形樹脂体２５を固定するための固定部２０における舌片１１の先端部分を内側へかしめ加工し、屈曲したかしめ部１４を形成する。なお固定部２０の舌片１１と紐取付部１０の舌片１１とを同時にかしめ加工してもよい。
【００１６】
所要長さの平紐３１を紐取付部１０に取付け、かつ成形樹脂体２５を固定するための固定部２０を形成したスライダーの胴体１は、図３に示すように上翼板２の上面に紐取付部１０および固定部２０を埋装する形で合成樹脂をインサート成形することによって、上翼板２の上面を被覆する形に成形樹脂体２５を形成する。成形樹脂体２５が形成されたスライダー胴体１は、図４、５に示すように紐取付部１０の舌片１１で固定された平紐３１は成形樹脂体２５によって表面を圧迫され、かつ固定部２０の屈曲された舌片１１が成形樹脂体２５の内部に存在するため、成形樹脂体２５が上翼板２から剥離できないように形成されている。仕上げられたスライダーは、多種多様の色彩模様の平紐３１と相俟って、成形樹脂体２５も合成樹脂であるため簡単に着色もでき美しい体裁のよいスライダーを作製することができる。また成形樹脂体２５の材質によっては柔軟性を備えたスライダーにも仕上げることができる。
【００１７】
上記で説明したスライダーにあっては、スライダー胴体１に設置する紐体３０を取付ける紐取付部１０および成形樹脂体２５を固定する固定部２０を胴体１における上翼板２上に設置する形態のみについて説明したが、紐取付部１０および固定部２０を胴体１の下翼板２表面に設置することもできる。また胴体１の上翼板２と下翼板２との両翼板２の表面に設置し両面スライダーに形成することもできる。なお以下に説明する実施例のスライダーにおいても同様の形態に形成することができる。
【００１８】
図６に示す第２実施例のスライダーは、スライダー胴体１の上翼板２の上面中央部分に紐取付部１０を形成するため、先細状の舌片１１を横方向に対面する形で表面へ突出するように配設し、この舌片１１間の間隔は第１実施例のスライダーよりも狭く形成し、引手として用いる紐体３０に丸紐３２を用いるのに適応できるように形成されている。この紐取付部１０の前後位置にそれぞれ突起２１を突設し、この突起２１の基部をアンダーカットして凹部２３を設け、成形樹脂体２５を成形した際、強固に固定できるように形成する。なお突起２１の凹部２３はそれぞれの基部の前後外側に設けるのがよい。
【００１９】
上記のように形成されたスライダーの胴体１は、上翼板２上に対設された舌片１１間に紐体３０として所要長さの丸紐３２を用い、丸紐３２の端部を介在させて舌片１１を内側へ上方からかしめ加工してかしめ部１４を形成することによって丸紐３２を固定し、この紐固定部分をはじめ上翼板２上に形成した固定部２０の突起２１を埋装する形で、合成樹脂をインサート成形して、上翼板２の上面を成形樹脂体２５によって被覆し、胴体１に丸紐３２を取り付けたスライダーを作製することができる。
【００２０】
図７に示す第３実施例のスライダーは、スライダー胴体１の上翼板２の上面における中央部分よりやや前方肩口側に、横長の広幅でかすがい状、すなわち伏コ字形に突出する突出板１２を設けて紐取付部１０を形成し、この突出板１２の後口側に突出板１２と略同じ高さのＴ字体形を呈する突片２２を突設して成形樹脂体２５を固定する固定部２０を形成する。
【００２１】
上記のように形成されたスライダーの胴体１は、上翼板２上に突設された広幅の伏コ字形の突出板１２に形成された挿通孔１３に、紐体３０として所要長さの平紐３１の基部を挿入した後、図８に示すように平紐３１を挿入した側の突出板１２の一部を上方からかしめ加工して、かしめ部１４を形成することによって、紐取付部１０に平紐３１を取付ける。
【００２２】
平紐３１を取付けたスライダーの胴体１は、上翼板２上の紐取付部１０およびＴ字体形の固定部２０を埋装する形で、合成樹脂をインサート成形して上翼板２の上面に、図９に示すように成形樹脂体２５によって被覆する。この成形樹脂体２５は紐取付部１０の突出板１２の前部の空隙および後口側に設けたＴ字体形の突片２２の内側凹部２３内に、合成樹脂が充填し成形樹脂体２５を強固に固定し、胴体１に平紐３１を取付けたスライダーを作製することができる。
【００２３】
図１０に示す第４実施例のスライダーは、スライダー胴体１の上翼板２の上面における中央部分よりやや前方肩口側に、横長の細幅でかすがい状、すなわち伏コ字形の突出片１５を設け、この突出片１５は中央部分を切断しまたは分離させて切欠部１６を設けることによって紐取付部１０を形成する。切欠部１６はやや斜めに形成するのがかしめ加工の際変形し易いから便利である。
【００２４】
上翼板２の上面に形成した紐取付部１０の前方肩口側にＴ字体形を呈する突片２２を突設して成形樹脂体２５を固定するための固定部２０を形成し、また紐取付部１０の後方後口側に間隙をおいてＴ字体形の突片２２を突設して成形樹脂体２５の固定部２０を形成する。
【００２５】
上記のように形成されたスライダーの胴体１は、上翼板２の上面に形成された突出片１５の内側へ紐体３０として所要長さの平紐３１を挿入し、切欠部１６側を上方からかしめ加工して平紐３１の先端を固定させた後、この固定部分をはじめ前後の突片２２を埋装する形で合成樹脂をインサート成形して、上翼板２の上面を成形樹脂体２５によって被覆する。成形樹脂体２５は前後のＴ字体形の突片２２の凹部２３内に合成樹脂が充填することによって強固に固定され、胴体１に平紐３１を取付けたスライダーを作製することができる。
【００２６】
図１１に示す第５実施例のスライダーは、スライダー胴体１の略中央に縦長にアーチ形のアーチ片１７を突設して紐取付部１０を形成する。そして胴体１の上翼板２の上面における略四隅に対応する位置にアーチ片１７よりもやや高めの突起２１を突設し、この突起２１の表面は平滑であり、外側面は胴体１の外側縁と一致し、突起２１の内側基部をアンダーカットして凹部２３を形成して成形樹脂体２５を固定する固定部２０を形成する。
【００２７】
上記のように形成されたスライダーの胴体１は、上翼板２の上面に縦長に形成されたアーチ片１７の挿通孔１３に丸紐３２を挿通し、二つ折りに取付けた後に上翼板２の上面に形成した突起２１の表面を基準として、アーチ片１７に挿通した丸紐３２の挿通基部が埋装される形で合成樹脂をインサート成形し、上翼板２の上面を成形樹脂体２５によって被覆する。成形樹脂体２５は数個の突起２１の凹部２３内に合成樹脂が充填することによって強固に固定され、胴体１に丸紐３２からなる紐体３０を取付けたスライダーを作製することができる。
【００２８】
図１２に示す第６実施例のスライダーは、スライダー胴体１の上翼板２上の前端側と後端側に、それぞれ横方向に対向する一対の先細状の舌片１１を突設して紐取付部１０を形成し、その間の中央部分に舌片１１よりも丈が低いＴ字体形の突片２２を突設する。
【００２９】
上記のように形成されたスライダーの胴体１は、上翼板２上の前端側に突設された一対の舌片１１間に所要長さの丸紐３２の一端を介在させて、舌片１１を内側へ屈曲させるように上方からかしめ加工してかしめ部１４を形成し、後端側に突設された一対の舌片１１間に丸紐３２の他端を介在させて、舌片１１を内側へ屈曲させるように上方からかしめ加工してかしめ部１４を形成して、丸紐３２を胴体１に対してリング状に取付ける。
【００３０】
紐体３０を取付けた胴体１は、丸紐３２を前後で固定した部分と、中央の突片２２が埋装されるように合成樹脂をインサート成形して上翼板２の上面を成形樹脂体２５によって被覆する。成形樹脂体２５は突片２２の凹部２３内に合成樹脂が充填することによって強固に固定され、胴体１に丸紐３２をリング状に取付けたスライダーを作製することができる。
【００３１】
最後に図１３に示す第７実施例のスライダーについて説明すると、スライダー胴体１の上翼板２における上面中央部分に、前端から後端に向かう広幅のフック状を呈するフック板１８を縦長に配設して紐取付部１０を形成し、フック板１８の先端下側に紐体３０の脱出を阻止するように下向きの小突片１９が形成されている。フック板１８は前端から後端に向かうように形成するのがスライダーの機能上有利である。
【００３２】
この紐取付部１０としてのフック板１８に紐体３０を取付けるには、紐体３０として用いる平紐３１の先端にフック板１８に嵌入できる孔部３３を設け、孔部３３を備えた平紐３１は、フック板１８の小突片１９側から嵌入し保持した状態で、上翼板２上へフック板１８が埋装されるように合成樹脂をインサート成形して、上翼板２の上面を成形樹脂体２５によって被覆する。
【００３３】
成形樹脂体２５はフック板１８に紐体３０が存在しない部分と上翼板２との間隙に、合成樹脂が充填され紐体３０を強固に固定する。したがって上翼板２上に成形樹脂体２５を固定するための固定部２０を改めて配設する必要がなく、上翼板２上に設けたフック板１８が固定部２０を兼備し、固定部２０の機能を果たすものである。
【００３４】
【発明の効果】
この発明のスライドファスナー用スライダーは、以上説明したとおりの構成であり、この構成によって下記の効果を奏するものである。
【００３５】
この発明のうち請求項１記載の発明は、スライダー胴体の翼板の上面に引手用の紐体を取付ける紐取付部を突出状に配設し、該紐取付部に紐体の基部を固定し、紐取付部を合成樹脂で埋装して成形樹脂体を形成し、胴体上面を成形樹脂体で被覆したことによって、スライダー胴体上に設けた紐取付部に引手としての紐体の基部を的確に固定し、かつ埋装する形で胴体の表面を成形樹脂体で被覆しているので、胴体の表面が平滑で使用者に好感触を与え、また引手が紐体であるので、身体に損傷または危害を与える恐れがなく、しかもスライダーをデザイン的にも優れた形態、色彩に仕上げることができる効果がある。
【００３６】
請求項２記載の発明は、請求項１記載の発明の効果に加え、胴体の上面に成形樹脂体を固定する固定部を紐取付部とともに突出状に併設したことによって、スライダーの胴体の表面へ成形樹脂体を強固に固定し、如何なる使用に対しても胴体から成形樹脂体が剥離、脱落する恐れがなく、長期の使用に耐えられる効果があるなど、この発明が奏する効果はきわめて顕著である。
【図面の簡単な説明】
【図１】第１実施例のスライドファスナー用スライダーの作製時における斜視図である。
【図２】同上スライダーの紐体取付時における斜視図である。
【図３】同上スライダーの完成後のスライダーの側面図である。
【図４】同上スライダーの図３におけるＡ−Ａ断面図である。
【図５】同上スライダーの図３におけるＢ−Ｂ断面図である。
【図６】第２実施例のスライドファスナー用スライダーの紐体取付時における斜視図である。
【図７】第３実施例のスライドファスナー用スライダーの作製時における斜視図である。
【図８】同上スライダーの紐体取付時における斜視図である。
【図９】同上スライダーの完成後のスライダーの縦断面図である。
【図１０】第４実施例のスライドファスナー用スライダーの紐体取付時における斜視図である。
【図１１】第５実施例のスライドファスナー用スライダーの紐体取付時における斜視図である。
【図１２】第６実施例のスライドファスナー用スライダーの紐体取付時における斜視図である。
【図１３】第７実施例のスライドファスナー用スライダーの紐体取付時における斜視図である。
【図１４】公知のスライドファスナー用スライダーの縦断面図である。
【図１５】他の公知のスライドファスナー用スライダーの縦断面図である。
【符号の説明】
１ 胴体
２ 翼板（上翼板、下翼板）
１０ 紐取付部
１１ 舌片
１２ 突出板
１３ 挿通孔
１５ 突出片
１６ 切欠部
１７ アーチ片
１８ フック板
２０ 固定部
２１ 突起
２２ 突片
２３ 凹部
２５ 成形樹脂体
３０ 紐体
３１ 平紐
３２ 丸紐
３３ 孔部
【発明の属する技術分野】
この発明は、主にスポーツ用ユニフォームに用いられるスライドファスナーのスライダーであり、スライダーは表面に引手取付部などの突起物がなく、また硬い引手も存在しない表面が平滑で危害を与えることのない安全なスライダーに関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来、図１４に示すようにスライドファスナー用スライダーの胴体における案内柱に上下方向へ貫通する透孔を設け、この透孔に丸紐を挿通し、丸紐の両端部に止金を装着して透孔から抜脱するのを防いだスライドファスナー用スライダーが米国特許第２２５３４９４号明細書に開示されているのをはじめ、紐を装着したスライダーは数多く知られている。
【０００３】
また図１５に示すようにスライドファスナー用スライダーの胴体に引手を取付けることなく、上翼板の表面に凹部を形成して周囲に環状の突起を形成し、この凹部内に樹脂塗料を塗布して***状の装飾面を形成したスライドファスナー用スライダーが実開昭６１−２０４５０６号公報に開示されている。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
前項で述べた図１４に示したスライドファスナー用スライダーは、スライダー胴体に丸紐を挿通した位置が、胴体の前端側にあるため、スライドファスナーの閉鎖操作はスムーズに行えるが、開離操作の際はスライダーの先端部が持ち上げられ摺動操作がスムーズに行えない。また丸紐は胴体に固定されていないため遊動し、先端の止金に力が加わりその結果丸紐から抜けて丸紐自体が胴体から抜脱する恐れがあるなど問題点がある。
【０００５】
また他に知られた紐を装着したスライダーは、その殆どが紐をスライダーに固定してなく自由に遊動できるものであるから、紐がスライダーから抜け易いなど問題点がある。
【０００６】
さらに、図１５に示したスライダーは、胴体の表面はなだらかで危害を与える形態ではないが、胴体には引手がなくスライダーの摺動操作を行うには不便である。また胴体の上面に塗布した装飾面を固定する手段がとられていないため、使用中に装飾面が胴体から剥離する恐れがあり、長期にわたって安定した使用ができないなど問題点がある。
【０００７】
この発明は、上述の事柄を考慮して発明されたものであり、この発明のうち請求項１記載の発明は、スライドファスナー用スライダーの胴体の表面に引手取付部などの突起物がなく平滑で過激なスポーツにおいても危険性がなく安全であり、しかもデザイン的にも優れたカラフルなスライダー、そのために胴体に引手として取付ける柔軟な紐体の基部を胴体上に設けた紐取付部に取付け、この紐取付部の表面を平滑面に形成するため、合成樹脂を胴体上に成形して成形樹脂体を形成し、紐体の基部を埋装できる成形樹脂体によって被覆したスライドファスナー用スライダーを提供することが主たる目的である。
【０００８】
請求項２記載の発明は、請求項１記載の発明の目的に加え、スライダーの胴体上で紐体の基部を紐取付部に固定し、この固定部分を埋装できる成形樹脂体を胴体上に簡単かつ強固に固定することができる固定部を、紐体を取付けた紐取付部とともに併設し体裁のよい美しいスライドファスナー用スライダーを供することが目的である。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、この発明のうち請求項１記載の発明は、スライダー胴体１の翼板２、ここで翼板２とは上翼板または下翼板あるいは両翼板を指す、翼板２の上面すなわち表面に、引手として用いる平紐３１、丸紐３２などの紐体３０を取付けるための紐取付部１０を胴体１上に突出する形に設け、この紐取付部１０に紐体３０の基部を固定し、この固定部分を埋装する形態で合成樹脂をインサート成形して成形樹脂体２５を形成し、翼板２の表面を成形樹脂体２５によって被覆したスライドファスナー用スライダーを主な構成とするものである。
【００１０】
請求項２記載の発明は、請求項１記載の発明の構成に加え、スライダー胴体１の翼板２の表面に成形樹脂体２５を固定するための固定部２０を紐体３０を取付ける紐取付部１０とともに突出状に併設し、翼板２の表面を成形樹脂体２５によって被覆したスライドファスナー用スライダーである。
【００１１】
【発明の実施の形態】
以下、この発明のスライドファスナー用スライダーの実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【００１２】
この発明のスライドファスナー用スライダーは、主としてスライダー胴体１を亜鉛合金またはアルミニウム合金などをダイキャスト成形して作製し、胴体１の上面に合成繊維糸などを編織成した紐体３０を引手として用いるため、胴体１に紐体３０を取付けるのに、主としてポリウレタン、ポリエステルなどの合成樹脂を胴体１上にインサート成形して成形樹脂体２５を形成することによって、紐体３０の基部を胴体１に固定するとともに、胴体１の表面に突起物が存在しないスライダーに形成する。スライダーの胴体１は金属以外にもポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレンなどの合成樹脂を用いてもよく、また胴体１上に成形する成形樹脂体２５は塩化ビニル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリプロピレンなどの合成樹脂を用いて成形してもよい。
【００１３】
なお、引手を構成する紐体３０は合成繊維糸などを編織成したものだけでなく、可撓性あるいは弾力性または柔軟性を備えた合成樹脂材から平角体または線状体に形成したもの、たとえば軟質塩化ビニル紐などであってもよい。
【００１４】
図１に示す第１実施例のスライダーは、スライダー胴体１が、上翼板２と下翼板２とを案内柱４によて連結し、上翼板２の両側縁にファスナーエレメントをガイドするガイドフランジ５が形成されてガイド溝６が設けられている。上翼板２の上面すなわち表面には紐取付部１０を形成するため、やや大きな先細状の舌片１１を横方向に対面する形で、表面へ突出するように設け、この一対の舌片１１の前後に、紐取付部１０の舌片１１よりやや小さい同形の舌片１１を対面状に複数個突設し、成形樹脂体２５を固定するための固定部２０を形成してスライダー胴体１に仕上げる。
【００１５】
上記のように形成されたスライダーの胴体１に紐体３０を取付けるには、まず胴体１の上翼板２上に形成した紐取付部１０の舌片１１間に、所要長さで舌片１１間に適応できる形の平紐３１を紐体３０として用い、図２に示すように舌片１１間に介在させて舌片１１を内側へ上方からかしめ加工してかしめ部１４を形成することによって、平紐３１の端部を固定し平紐３１を胴体１に取付ける。そして紐取付部１０の前後に設置された成形樹脂体２５を固定するための固定部２０における舌片１１の先端部分を内側へかしめ加工し、屈曲したかしめ部１４を形成する。なお固定部２０の舌片１１と紐取付部１０の舌片１１とを同時にかしめ加工してもよい。
【００１６】
所要長さの平紐３１を紐取付部１０に取付け、かつ成形樹脂体２５を固定するための固定部２０を形成したスライダーの胴体１は、図３に示すように上翼板２の上面に紐取付部１０および固定部２０を埋装する形で合成樹脂をインサート成形することによって、上翼板２の上面を被覆する形に成形樹脂体２５を形成する。成形樹脂体２５が形成されたスライダー胴体１は、図４、５に示すように紐取付部１０の舌片１１で固定された平紐３１は成形樹脂体２５によって表面を圧迫され、かつ固定部２０の屈曲された舌片１１が成形樹脂体２５の内部に存在するため、成形樹脂体２５が上翼板２から剥離できないように形成されている。仕上げられたスライダーは、多種多様の色彩模様の平紐３１と相俟って、成形樹脂体２５も合成樹脂であるため簡単に着色もでき美しい体裁のよいスライダーを作製することができる。また成形樹脂体２５の材質によっては柔軟性を備えたスライダーにも仕上げることができる。
【００１７】
上記で説明したスライダーにあっては、スライダー胴体１に設置する紐体３０を取付ける紐取付部１０および成形樹脂体２５を固定する固定部２０を胴体１における上翼板２上に設置する形態のみについて説明したが、紐取付部１０および固定部２０を胴体１の下翼板２表面に設置することもできる。また胴体１の上翼板２と下翼板２との両翼板２の表面に設置し両面スライダーに形成することもできる。なお以下に説明する実施例のスライダーにおいても同様の形態に形成することができる。
【００１８】
図６に示す第２実施例のスライダーは、スライダー胴体１の上翼板２の上面中央部分に紐取付部１０を形成するため、先細状の舌片１１を横方向に対面する形で表面へ突出するように配設し、この舌片１１間の間隔は第１実施例のスライダーよりも狭く形成し、引手として用いる紐体３０に丸紐３２を用いるのに適応できるように形成されている。この紐取付部１０の前後位置にそれぞれ突起２１を突設し、この突起２１の基部をアンダーカットして凹部２３を設け、成形樹脂体２５を成形した際、強固に固定できるように形成する。なお突起２１の凹部２３はそれぞれの基部の前後外側に設けるのがよい。
【００１９】
上記のように形成されたスライダーの胴体１は、上翼板２上に対設された舌片１１間に紐体３０として所要長さの丸紐３２を用い、丸紐３２の端部を介在させて舌片１１を内側へ上方からかしめ加工してかしめ部１４を形成することによって丸紐３２を固定し、この紐固定部分をはじめ上翼板２上に形成した固定部２０の突起２１を埋装する形で、合成樹脂をインサート成形して、上翼板２の上面を成形樹脂体２５によって被覆し、胴体１に丸紐３２を取り付けたスライダーを作製することができる。
【００２０】
図７に示す第３実施例のスライダーは、スライダー胴体１の上翼板２の上面における中央部分よりやや前方肩口側に、横長の広幅でかすがい状、すなわち伏コ字形に突出する突出板１２を設けて紐取付部１０を形成し、この突出板１２の後口側に突出板１２と略同じ高さのＴ字体形を呈する突片２２を突設して成形樹脂体２５を固定する固定部２０を形成する。
【００２１】
上記のように形成されたスライダーの胴体１は、上翼板２上に突設された広幅の伏コ字形の突出板１２に形成された挿通孔１３に、紐体３０として所要長さの平紐３１の基部を挿入した後、図８に示すように平紐３１を挿入した側の突出板１２の一部を上方からかしめ加工して、かしめ部１４を形成することによって、紐取付部１０に平紐３１を取付ける。
【００２２】
平紐３１を取付けたスライダーの胴体１は、上翼板２上の紐取付部１０およびＴ字体形の固定部２０を埋装する形で、合成樹脂をインサート成形して上翼板２の上面に、図９に示すように成形樹脂体２５によって被覆する。この成形樹脂体２５は紐取付部１０の突出板１２の前部の空隙および後口側に設けたＴ字体形の突片２２の内側凹部２３内に、合成樹脂が充填し成形樹脂体２５を強固に固定し、胴体１に平紐３１を取付けたスライダーを作製することができる。
【００２３】
図１０に示す第４実施例のスライダーは、スライダー胴体１の上翼板２の上面における中央部分よりやや前方肩口側に、横長の細幅でかすがい状、すなわち伏コ字形の突出片１５を設け、この突出片１５は中央部分を切断しまたは分離させて切欠部１６を設けることによって紐取付部１０を形成する。切欠部１６はやや斜めに形成するのがかしめ加工の際変形し易いから便利である。
【００２４】
上翼板２の上面に形成した紐取付部１０の前方肩口側にＴ字体形を呈する突片２２を突設して成形樹脂体２５を固定するための固定部２０を形成し、また紐取付部１０の後方後口側に間隙をおいてＴ字体形の突片２２を突設して成形樹脂体２５の固定部２０を形成する。
【００２５】
上記のように形成されたスライダーの胴体１は、上翼板２の上面に形成された突出片１５の内側へ紐体３０として所要長さの平紐３１を挿入し、切欠部１６側を上方からかしめ加工して平紐３１の先端を固定させた後、この固定部分をはじめ前後の突片２２を埋装する形で合成樹脂をインサート成形して、上翼板２の上面を成形樹脂体２５によって被覆する。成形樹脂体２５は前後のＴ字体形の突片２２の凹部２３内に合成樹脂が充填することによって強固に固定され、胴体１に平紐３１を取付けたスライダーを作製することができる。
【００２６】
図１１に示す第５実施例のスライダーは、スライダー胴体１の略中央に縦長にアーチ形のアーチ片１７を突設して紐取付部１０を形成する。そして胴体１の上翼板２の上面における略四隅に対応する位置にアーチ片１７よりもやや高めの突起２１を突設し、この突起２１の表面は平滑であり、外側面は胴体１の外側縁と一致し、突起２１の内側基部をアンダーカットして凹部２３を形成して成形樹脂体２５を固定する固定部２０を形成する。
【００２７】
上記のように形成されたスライダーの胴体１は、上翼板２の上面に縦長に形成されたアーチ片１７の挿通孔１３に丸紐３２を挿通し、二つ折りに取付けた後に上翼板２の上面に形成した突起２１の表面を基準として、アーチ片１７に挿通した丸紐３２の挿通基部が埋装される形で合成樹脂をインサート成形し、上翼板２の上面を成形樹脂体２５によって被覆する。成形樹脂体２５は数個の突起２１の凹部２３内に合成樹脂が充填することによって強固に固定され、胴体１に丸紐３２からなる紐体３０を取付けたスライダーを作製することができる。
【００２８】
図１２に示す第６実施例のスライダーは、スライダー胴体１の上翼板２上の前端側と後端側に、それぞれ横方向に対向する一対の先細状の舌片１１を突設して紐取付部１０を形成し、その間の中央部分に舌片１１よりも丈が低いＴ字体形の突片２２を突設する。
【００２９】
上記のように形成されたスライダーの胴体１は、上翼板２上の前端側に突設された一対の舌片１１間に所要長さの丸紐３２の一端を介在させて、舌片１１を内側へ屈曲させるように上方からかしめ加工してかしめ部１４を形成し、後端側に突設された一対の舌片１１間に丸紐３２の他端を介在させて、舌片１１を内側へ屈曲させるように上方からかしめ加工してかしめ部１４を形成して、丸紐３２を胴体１に対してリング状に取付ける。
【００３０】
紐体３０を取付けた胴体１は、丸紐３２を前後で固定した部分と、中央の突片２２が埋装されるように合成樹脂をインサート成形して上翼板２の上面を成形樹脂体２５によって被覆する。成形樹脂体２５は突片２２の凹部２３内に合成樹脂が充填することによって強固に固定され、胴体１に丸紐３２をリング状に取付けたスライダーを作製することができる。
【００３１】
最後に図１３に示す第７実施例のスライダーについて説明すると、スライダー胴体１の上翼板２における上面中央部分に、前端から後端に向かう広幅のフック状を呈するフック板１８を縦長に配設して紐取付部１０を形成し、フック板１８の先端下側に紐体３０の脱出を阻止するように下向きの小突片１９が形成されている。フック板１８は前端から後端に向かうように形成するのがスライダーの機能上有利である。
【００３２】
この紐取付部１０としてのフック板１８に紐体３０を取付けるには、紐体３０として用いる平紐３１の先端にフック板１８に嵌入できる孔部３３を設け、孔部３３を備えた平紐３１は、フック板１８の小突片１９側から嵌入し保持した状態で、上翼板２上へフック板１８が埋装されるように合成樹脂をインサート成形して、上翼板２の上面を成形樹脂体２５によって被覆する。
【００３３】
成形樹脂体２５はフック板１８に紐体３０が存在しない部分と上翼板２との間隙に、合成樹脂が充填され紐体３０を強固に固定する。したがって上翼板２上に成形樹脂体２５を固定するための固定部２０を改めて配設する必要がなく、上翼板２上に設けたフック板１８が固定部２０を兼備し、固定部２０の機能を果たすものである。
【００３４】
【発明の効果】
この発明のスライドファスナー用スライダーは、以上説明したとおりの構成であり、この構成によって下記の効果を奏するものである。
【００３５】
この発明のうち請求項１記載の発明は、スライダー胴体の翼板の上面に引手用の紐体を取付ける紐取付部を突出状に配設し、該紐取付部に紐体の基部を固定し、紐取付部を合成樹脂で埋装して成形樹脂体を形成し、胴体上面を成形樹脂体で被覆したことによって、スライダー胴体上に設けた紐取付部に引手としての紐体の基部を的確に固定し、かつ埋装する形で胴体の表面を成形樹脂体で被覆しているので、胴体の表面が平滑で使用者に好感触を与え、また引手が紐体であるので、身体に損傷または危害を与える恐れがなく、しかもスライダーをデザイン的にも優れた形態、色彩に仕上げることができる効果がある。
【００３６】
請求項２記載の発明は、請求項１記載の発明の効果に加え、胴体の上面に成形樹脂体を固定する固定部を紐取付部とともに突出状に併設したことによって、スライダーの胴体の表面へ成形樹脂体を強固に固定し、如何なる使用に対しても胴体から成形樹脂体が剥離、脱落する恐れがなく、長期の使用に耐えられる効果があるなど、この発明が奏する効果はきわめて顕著である。
【図面の簡単な説明】
【図１】第１実施例のスライドファスナー用スライダーの作製時における斜視図である。
【図２】同上スライダーの紐体取付時における斜視図である。
【図３】同上スライダーの完成後のスライダーの側面図である。
【図４】同上スライダーの図３におけるＡ−Ａ断面図である。
【図５】同上スライダーの図３におけるＢ−Ｂ断面図である。
【図６】第２実施例のスライドファスナー用スライダーの紐体取付時における斜視図である。
【図７】第３実施例のスライドファスナー用スライダーの作製時における斜視図である。
【図８】同上スライダーの紐体取付時における斜視図である。
【図９】同上スライダーの完成後のスライダーの縦断面図である。
【図１０】第４実施例のスライドファスナー用スライダーの紐体取付時における斜視図である。
【図１１】第５実施例のスライドファスナー用スライダーの紐体取付時における斜視図である。
【図１２】第６実施例のスライドファスナー用スライダーの紐体取付時における斜視図である。
【図１３】第７実施例のスライドファスナー用スライダーの紐体取付時における斜視図である。
【図１４】公知のスライドファスナー用スライダーの縦断面図である。
【図１５】他の公知のスライドファスナー用スライダーの縦断面図である。
【符号の説明】
１ 胴体
２ 翼板（上翼板、下翼板）
１０ 紐取付部
１１ 舌片
１２ 突出板
１３ 挿通孔
１５ 突出片
１６ 切欠部
１７ アーチ片
１８ フック板
２０ 固定部
２１ 突起
２２ 突片
２３ 凹部
２５ 成形樹脂体
３０ 紐体
３１ 平紐
３２ 丸紐
３３ 孔部
Claims (2)
- スライダー胴体１の翼板２の上面に引手用の紐体３０を取付ける紐取付部１０を突出状に配設し、該紐取付部１０に紐体３０の基部を固定し、紐取付部１０を合成樹脂で埋装して成形樹脂体２５を形成し、胴体１上面を成形樹脂体２５で被覆してなることを特徴とするスライドファスナー用スライダー。
- 胴体１の上面に成形樹脂体２５を固定する固定部２０を紐取付部１０とともに突出状に併設してなる請求項１記載のスライドファスナー用スライダー。
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