JP3575208B2 - 骨接合用螺子 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、骨接合用螺子に係り、特に骨粗鬆症を合併した大腿骨頸部骨折に対する手術等における骨強化法の実施に用いて好適な骨接合用螺子に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、骨粗鬆症を合併する大腿骨頸部骨折に対する手術では、キャニュレイテッドスクリューと称される骨接合用螺子がしばしば用いられている。
これは、外周面に一端側から螺子部が形成された棒状の螺子本体に、該螺子本体を軸線方向に貫通するガイド孔と称する中空孔が形成されてなるもので、骨頭部に挿入したガイドピンにガイド孔を挿通し、レンチあるいはスクリュードライバーによって螺子本体を時計回りに回転させ、挿入し、骨頭部と骨幹部に生じた骨折部を圧迫固定するものである。
【０００３】
ところが、重度の骨粗鬆患者の場合など、大腿骨頭の骨質が脆弱化していると、キャニュレイテッドスクリューによる機械的な固定だけでは固定強度が不十分であった。このため、何等かの補強手術法が必要とされているが、その一つとして、近年、リン酸カルシウムセメントなどのバイオアクティブな骨セメントを併用する充填補強法が注目されている。
従来の骨セメントでは、重合時の発熱、未重合モノマーの循環系に対する影響、生体親和性などの点で使用に難があったが、リン酸カルシウムセメントは、発熱性、生体毒性の問題がない上に骨親和性に優れているため、かかる問題がなく、骨梁が粗となった骨にこれを注入し、脆弱化した骨を強化するとともに引き抜き強度を高めることが可能となる。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、骨セメントを併用する充填補強法を採用する場合、骨セメントとしてリン酸カルシウムセメントを用いるとしても、従来のキャニュレイテッドスクリューでは、本来その構造が骨セメントの併用を目的として作製されていないため、骨セメントを別個の手段で注入した後に、あらためてキャニュレイテッドスクリューにより固定を行う二段階の操作が必要であった。
【０００５】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、任意に骨セメントを注入することができる上、従来の骨接合螺子が有する固定強度を損なうことなく充分に螺子として機能する骨接合用螺子を提供することを目的とする。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
しかして、本発明は、外周面に一端側から螺子部が形成された棒状の螺子本体に、該螺子本体を軸線方向に貫通する中空孔が形成されてなり、螺子部側から骨内に挿入されて骨に螺合させられる骨接合用螺子において、上記螺子本体の周壁（螺子本体の径方向に向く壁部）に、内端が上記中空孔に連通し外端が外部に開放された複数の透孔を、該透孔の数および／または開口面積が螺子本体の上記一端に近付くにつれて大になるように、螺子本体の軸線方向及び周方向に離散して形成したことを特徴とする。
【０００７】
上記において、複数の透孔は、螺子部に形成されていることが好ましく、透孔の各々は、略円形の断面を有していても、スリット状の断面を有していても、略長円形の断面を有していても、さらにはこれら種々の形状を組合わせたものでも構わない。
また、透孔は螺子部の山部と谷部に渡って形成しても構わないし、細孔の場合は螺子部の谷部にのみ形成することもできる。
【０００８】
本発明の骨接合用螺子は、従来のキャニュレイテッドスクリューと同様にして使用することもできるが、重度の骨粗鬆患者の場合など、患者の大腿骨頭の骨質が脆弱化している場合には、従来のキャニュレイテッドスクリューと同様にして大腿骨頭に固定した後に、骨セメント、特にリン酸カルシウムセメントなどのバイオアクティブな骨セメントを、ガイドピンのガイド孔とのなる中空孔に注入する。注入された骨セメントは中空孔から周壁の透孔を通じて、粗鬆化した骨の骨梁間に入り込む。これにより、骨自体が強化されるとともに引き抜き強度も高められる。
また、本発明の骨接合用螺子では、周壁に形成されている透孔に骨セメントもしくは骨組織が侵入することになるため、固定後の螺子の回転も合わせて防止することができる。この回転防止の効果は、螺子を固定する部位に予め骨セメントを注入した場合においても発揮される。
また、骨内の挿入方向である一端側により多くの骨セメントを吐出させることができるので、挿入した螺子の固定がより強固になる。
【０００９】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る骨接合用螺子の好適な実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【００１０】
図１は、骨接合用螺子の全体を示す側面図であり、図中１は、螺子本体を示す。螺子本体１は、生体融和性、強度、剛性等を兼ね備えた材料であるチタン合金から形成されており、先端（一端）側に螺子部２を備え、基端（他端）側が非螺子部３とされ、他端には六角レンチあるいはスクリュードライバーの先端等が挿入係合される頭部４が設けられている。
ここで、螺子本体１の長さ、径、螺子部もしくは非螺子部の長さ、螺子山径等は、あらゆる患者に適応できるように種々のものが用意されることとなる。
上記螺子本体１には、該螺子本体１を軸線方向（長軸方向）に貫通する中空孔５が形成されており、該中空孔５に後記するガイドピンが挿入できるようになっている。また、螺子本体１の先端は凹状に切り欠かれて骨への挿入が容易となるようにされている。
【００１１】
上記の構成までは、基本的には従来のキャニュレイテッドスクリューと同様であるが、本発明に係る骨接合用螺子では、図２に拡大して示すように、上記螺子本体１の周壁で螺子部２の谷部２ａには、内端が上記中空孔５に連通し外端が外部に開放された複数の透孔６が、螺子本体１の軸線方向及び周方向に離散した状態で形成されている。そして、ガイドピンの挿通孔ともなる上記中空孔５に骨セメントを注入すると、この複数の透孔６を通じて、骨セメントが周壁から側方に放出させられるようになっている。
【００１２】
ここで、図１及び図２に示す例では、透孔６は、全て同一の径の略円形の断面のものとし、螺子部２の螺旋状の谷部２ａに等間隔に設けている。しかし、透孔６の形状、配置等は、この例に限るものではなく、種々の変形が可能である。
【００１３】
図３は、かかる変形例の一つを示すもので、上記螺子部２の谷部２ａに、同一の離間間隔を開けて、該谷部２ａの延びる方向に長い長円状の透孔６ａを設けている。この長円状の透孔６ａは、螺子本体１の先端に近接する位置では長径がかなり長い長円であるが、螺子本体１の基端に向かうにつれて、長円の長径が徐々に短くなっていっており、螺子部２の終端付近ではほぼ円形とされている。
このような構造では、螺子本体１の先端側になるほど透孔の開口面積が大きくなり、螺子本体１の先端寄りの周壁からより多くの骨セメントが放出されるようになる。
【００１４】
図４は他の変形例を示すもので、この例では、透孔６ｂは螺子部２の谷部２ａのみならず山部２ｂにも渡って形成されており、螺子本体１の周方向及び軸線方向に等間隔に配設されているが、螺子本体１の先端側では螺子本体１の軸線方向に延びるスリット状とされ、基端側になるにつれて短くされた形状とされている。この例でも、螺子本体１の先端側になるほど開口面積が大きくなり、螺子本体１の先端側の周壁からより多くの骨セメントが放出されるようになる。
【００１５】
このような複数の透孔の形状、大きさ、数及び配置は、上記以外にも種々の変形が可能である。特に、螺子部２に限って形成すべきものでもなく、骨中に挿入される部位ならば、螺子本体１の周壁のどこに形成してもよく、従って、非螺子部３に形成しても構わない。また、適応症例に応じて透孔の離散位置を変更して形成することもできる。
【００１６】
しかして、上記構成の骨接合用螺子を用いて骨接合手術を行う場合は、先ず、従来のキャニュレイテッドスクリューと同様にして骨接合用螺子を骨中に挿入する。すなわち、図５に示すように、アングルガイド７で骨接合用螺子を刺入する角度を決め、ガイドピン８を骨幹部外側から骨頭内に挿入する。ついで、図６に示すように、ガイドピンデプスゲージ９を用いて、ガイドピン８の骨内挿入部の長さを測定し、使用する骨接合用螺子の長さを決める。そして、図７に示すように、骨接合用螺子の中空孔５へガイドピン８を挿入することにより、骨接合用螺子の先端が骨幹部に至るまで挿入する。ついで、図８に示すように、六角レンチあるいはスクリュードライバー等により骨接合用螺子を螺入し、骨頭部と骨幹部に生じた骨折部を圧迫固定し、その後ガイドピン８を抜去する。図９は２本の骨接合用螺子の装着が完了した状態を示す。
なお、螺子本体１の頭部４が骨中に埋没する恐れのある場合は、頭部４の前にワッシャ（図示せず）を介在させる。
【００１７】
ついで、骨セメント、特にリン酸カルシウムセメントなどのバイオアクティブな骨セメントを各骨接合用螺子の基端側から中空孔５内に注入する。中空孔５内に注入された骨セメントは複数の透孔６、６ａ、６ｂを通じて粗鬆化した骨中に押し出される。このようにして、骨自体が強化されるとともに、骨接合用螺子の引き抜き強度も高められる。また、骨セメントもしくは骨組織が透孔６、６ａ、６ｂに進入するため、螺子の逆回転（もどり）も確実に防止できる。
【００１８】
上記構成の骨接合用螺子にあっては、中空孔５から周壁の透孔６、６ａ、６ｂを通じて、骨セメントを骨梁が粗となった大腿骨頸内に注入することができるので、骨セメントの注入手技を骨折固定手術と同時にしかも容易に実施することができる。
また、透孔６、６ａ、６ｂは、螺子本体１の軸線方向及び周方向に離散して形成されているので、骨中の必要な部位に骨セメントを満遍なくかつ的確に流し込むことが可能になる。
【００１９】
なお、本発明に係る骨接合用螺子の使用方法は、上記したものに限るものではなく、注入する骨セメントの種類、適用する症例、用途等についても任意である。また、単に従来のキャニュレイテッドスクリューの代替として使用することもできる。
【００２０】
【発明の効果】
本発明に係る骨接合用螺子では、患者の大腿骨頭等に固定した後に、骨セメント、特にリン酸カルシウムセメントなどのバイオアクティブな骨セメントを、中空孔と透孔を通じて骨内に注入することができるので、骨梁自体を強化できる上に引き抜き強度を高めることができる。特に、骨内の挿入方向である一端側により多くの骨セメントを吐出させることができるので、挿入した螺子の固定がより強固になる。
また、透孔を、螺子本体の軸線方向及び周方向に離散して形成しているので、骨中の必要な部位に骨セメントを満遍なくかつ的確に流し込むことができる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る骨接合用螺子の全体を示す一部破断側面図である。
【図２】図１の骨接合用螺子の要部の拡大図である。
【図３】図２と同様の図で、本発明の変形例を示す図である。
【図４】図２と同様の図で、本発明の他の変形例を示す図である。
【図５】本発明に係る骨接合用螺子の使用方法の一過程を示す概略図で、ガイドピンを挿入している状態を示す図である。
【図６】図５と同様の図で、ガイドピンの挿入長さを測定している状態を示す図である。
【図７】図５と同様の図で、骨接合用螺子をガイドピンに挿入している状態を示す図である。
【図８】図５と同様の図で、骨接合用螺子を螺入している状態を示す図である。
【図９】図５と同様の図で、骨接合用螺子を螺入した状態を示す図である。
【符号の説明】
１ 螺子本体
２ 螺子部
３ 非螺子部
５ 中空孔
６，６ａ，６ｂ 透孔

Claims (5)

1. 外周面に一端側から螺子部が形成された棒状の螺子本体に、該螺子本体を軸線方向に貫通する中空孔が形成されてなり、螺子部側から骨内に挿入されて骨に螺合させられる骨接合用螺子において、上記螺子本体の周壁には、内端が上記中空孔に連通し外端が外部に開放された複数の透孔が、該透孔の数および／または開口面積が螺子本体の上記一端に近付くにつれて大になるように、螺子本体の軸線方向及び周方向に離散して形成されてなることを特徴とする骨接合用螺子。
2. 上記複数の透孔が、前記螺子部に形成されていることを特徴とする請求項１に記載の骨接合用螺子。
3. 透孔が略円形の断面を有することを特徴とする請求項１または２に記載の骨接合用螺子。
4. 透孔がスリット状の断面を有することを特徴とする請求項１または２に記載の骨接合用螺子。
5. 透孔が略長円形の断面を有することを特徴とする請求項１または２に記載の骨接合用螺子。

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