JP3574292B2 - ゴム組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はゴム組成物に関し、詳しくは耐熱老化性、特に耐熱硬化性及び破壊特性に優れた、タイヤトレッド等に用いるゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車の高性能化、高速化とともに、タイヤ特にトレッド部材に、これまで以上に高い耐熱老化性、破壊特性が要求されている。
【0003】
この要求に対して、トレッドゴム組成物の各種配合剤が検討されている。この配合剤の中で本発明と関連して、ジチオリン酸金属塩に着目すると、ジチオリン酸金属塩を用いたゴム組成物に関し、米国特許第1,288,616号、米国特許第3,426,003号(米モンサント社、現FLEXSYS社)にはジチオリン酸亜鉛を用いたゴム組成物が加硫戻り防止効果を有する記載があり、特開昭54−85243号にはジチオリン酸金属塩が無硫黄架橋の成分として有効であるとされている。
【0004】
また、特公平6−29342号にはジチオリン酸金属塩とビスマレイミド、スルフェンアミドとの組合せのカーボン配合で、スコーチ安定性、耐加硫戻り性、耐熱劣化性、耐屈曲亀裂劣化性に優れているゴム組成物の提案がなされている。近年、ゴム補強用充填剤として、カーボンブラックの他にシリカ、水酸化アルミニウム等の充填剤が注目されている。そこで、本発明者はジチオリン酸亜鉛をシリカ配合に適用したがカーボン配合時のように耐熱老化性の改善されたゴム組成物を得ることができなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一方、未公知であるが出願人は、特定の三級アミンを用いたシリカ配合で、低発熱性のゴム組成物が得られる事を見出している(特願平8−166052号)が、ジエン系ゴムの加硫促進剤として通常用いられる、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾチアジルスルフェンアミドとこの三級アミンとを組み合わせても、耐熱老化性は、改善されない。
【0006】
本発明は、上記の事実に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は耐熱老化性、特に熱老化後のゴム硬化を抑制する特性すなわち耐熱硬化性、及び破壊特性が改良されたゴム組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者はシリカ系配合で、ジチオリン酸金属塩と各種添加剤に着目して鋭意検討を重ねた結果、下記の手段によって、課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、(1)本発明のゴム組成物は、天然ゴム及びジエン系合成ゴムからなる群より選ばれる少なくとも一種からなるゴム成分100重量部に対して、無機フィラーを15〜85重量部と、該ゴム成分100重量部に対して、下記一般式(I)で表されるジチオリン酸金属塩の少なくとも一種を0.1〜5重量部と、該無機フィラーに対して、下記一般式(II)で表される三級アミン化合物の少なくとも一種を0.5〜15重量%とを含むことを特徴とする。
【0009】
一般式(I)
【0010】
【化3】
【0011】
(式中、R1 及びR2 はそれぞれ独立にアルキル基又はシクロアルキル基を表し、Mは亜鉛原子、銅原子又は鉄原子を表し、nはMの原子価を表す。)
一般式(II)
【0012】
【化4】
【0013】
(式中、R3 、R4 及びR5 はそれぞれ独立にメチル基、炭素数8〜36のアルキル基、炭素数8〜36のアルケニル基、シクロヘキシル基又はベンジル基を表す。)
(2)本発明のゴム組成物は、前(1)項において、前(1)項に記載の一般式(I)で表されるジチオリン酸金属塩のR1 及びR2 がそれぞれ独立に炭素数2〜8のアルキル基であり、かつMが亜鉛原子であることを特徴とする。
【0014】
(3)本発明のゴム組成物は、前(1)項において、前(1)項に記載の一般式(I)で表されるジチオリン酸金属塩のR1 及びR2 がそれぞれ独立に炭素数3〜4のアルキル基であることを特徴とする。
【0015】
(4)本発明のゴム組成物は、前(1)項において、前(1)項に記載の一般式(I)で表されるジチオリン酸金属塩がジチオリン酸亜鉛であり、かつ2−ベンゾチアジルスルフェンアミド及び2−ベンゾチアジルスルフェンイミドからなる群より選ばれる少なくとも一種の加硫促進剤が含まれることを特徴とする。
【0016】
(5)本発明のゴム組成物は、前(1)項において、前記無機フィラーがシリカ又は水酸化アルミニウムであることを特徴とする。
【0017】
(6)本発明のゴム組成物は、前(1)項において、前記無機フィラーがシリカであることを特徴とする。
【0018】
(7)本発明のゴム組成物は、前(6)項において、シランカップリング剤がシリカ配合量に対して、1〜15重量%含まれることを特徴とする。
【0019】
(8)本発明のゴム組成物は、前(1)項において、カーボンブラックがゴム成分100重量部に対して、5〜80重量部含まれることを特徴とする。
【0020】
(9)本発明のゴム組成物は、前(1)項において、前(1)項に記載の一般式(II)で表される三級アミン化合物が180以上の分子量を有することを特徴とする。
【0021】
(10)本発明のゴム組成物は、前(1)項において、前(1)項に記載の一般式(II)で表される三級アミン化合物のR3 及びR4 がメチル基であり、かつR5 が炭素数12〜36のアルキル基であることを特徴とする。
【0022】
(11)本発明のゴム組成物は、前(1)項において、前記三級アミン化合物がジメチルステアリルアミンであることを特徴とする。
【0023】
(12)本発明のゴム組成物は、前(1)項において、前(1)項に記載の一般式(I)で表されるジチオリン酸金属塩のR1 及びR2 がそれぞれ独立に炭素数3〜4のアルキル基であり、前記三級アミン化合物がジメチルステアリルアミンであり、シランカップリング剤がシリカ配合量に対して、1〜15重量%含まれ、かつカーボンブラックがゴム成分100重量部に対して、5〜80重量部含まれることを特徴とする。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるゴム成分は天然ゴム及びジエン系合成ゴムからなる群より選ばれる少なくとも一種である。すなわち、天然ゴム(NR)及び多くのジエン系合成ゴムの中から、これを単独で用いてもよいし、これらの二種以上のブレンドで使用してもよい。ジエン系合成ゴムとしては、例えば合成ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)等を挙げることができる。
【0025】
本発明では、これらのゴム成分のうち、例えば、SBR単独、SBR/NRブレンド物、SBR/NR/BRブレンド物等が効果の点から好適に使用される。
【0026】
本発明に用いられるジチオリン酸金属塩は前記一般式(I)で表され、単独又は二種以上の混合物で使用される。式中R1 及びR2 はそれぞれ独立にアルキル基又はシクロアルキル基を表し、中でも炭素数2〜8のアルキル基が好ましく、炭素数3〜4のアルキル基がさらに好ましい。また、式中Mは亜鉛原子、銅原子又は鉄原子を表し、中でも亜鉛原子が好ましい。詳しくはジチオリン酸亜鉛がより高い耐熱老化性を示す点で好ましく、またR1 及びR2 がそれぞれ独立に炭素数2〜8のアルキル基を有するジチオリン酸亜鉛は高い耐熱老化性を示すので、最も好ましい。
【0027】
上記ジチオリン酸亜鉛としては、例えば、O,O−ジブチルジチオリン酸亜鉛、O,O−ジイソプロピルジチオリン酸亜鉛、O,O−ジプロピルジチオリン酸亜鉛、O,O−ジエチルジチオリン酸亜鉛、O,O−ジメチルジチオリン酸亜鉛、O,O−ビス(2−エチルヘキシル)ジチオリン酸亜鉛、O,O−ビス(4−メチルペンチル)ジチオリン酸亜鉛、O,O−オクタデシルジチオリン酸亜鉛等を挙げることができ、中でもO,O−ジブチルジチオリン酸亜鉛、O,O−ジイソプロピルジチオリン酸亜鉛、O,O−ビス(2−エチルヘキシル)ジチオリン酸亜鉛等を好ましい。
【0028】
上記ジチオリン酸銅としては、例えばO,O−オクタデシルジチオリン酸銅、O,O−ジブチルジチオリン酸銅、O,O−ジイソプロピルジチオリン酸銅、O,O−ジプロピルジチオリン酸銅、O,O−ジエチルジチオリン酸銅、O,O−ジメチルジチオリン酸銅、O,O−ビス(2−エチルヘキシル)ジチオリン酸銅、O,O−ビス(4−メチルペンチル)ジチオリン酸銅、等を挙げることができる。
【0029】
上記ジチオリン酸鉄としては、例えばO,O−ジブチルジチオリン酸鉄、O,O−ジイソプロピルジチオリン酸鉄、O,O−ジプロピルジチオリン酸鉄、O,O−ジエチルジチオリン酸鉄、O,O−ジメチルジチオリン酸鉄、O,O−ビス(2−エチルヘキシル)ジチオリン酸鉄、O,O−ビス(4−メチルペンチル)ジチオリン酸鉄、O,O−オクタデシルジチオリン酸鉄等を挙げることができる。
【0030】
ジチオリン酸金属塩の配合量はゴム成分100重量部に対して、0.1〜5重量部であり、好ましくは0.2〜2重量部である。配合量が0.1重量部未満では、ジチオリン酸金属塩による効果が十分ではなく、5重量部を越えると、ジチオリン酸金属塩の効果が飽和する上、ゴムのスコーチタイム(焦げ時間)が短縮され、作業性が低下するので好ましくない。
【0031】
本発明に用いられるジチオリン酸金属塩の製造方法は特に制限されないが通常、ジチオリン酸水溶液に、水酸化ナトリウムを徐々に加えて、系中でジチオリン酸ナトリウムとした後、亜鉛、銅、鉄のそれぞれの塩化物のアセトン溶液を滴下し、沈澱物として得られる、それぞれのジチオリン酸金属塩を精製し、乾燥して得られる。
【0032】
本発明では一般式(I)で表されるジチオリン酸金属塩を単独で用いてもよいがこれと、加硫促進剤のベンゾチアゾール誘導体、例えば2−ベンゾチアジルスルフェンアミド及び2−ベンゾチアジルスルフェンイミドからなる群より選ばれる少なくとも一種の加硫促進剤とを併用することは、ムーニースコーチタイムを長くし、ジチオリン酸金属塩単独使用時と同等の効果が得られるので、好ましい。
【0033】
このベンゾチアゾール誘導体としては、例えば2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンチアジルジスルフィド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンイミド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンイミド、等が挙げられる。中でも、効果の点からN−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンイミド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンイミド等が好ましい。
【0034】
本発明で用いられる三級アミン化合物は、前記一般式(II)で表され、単独又は二種以上の混合物で使用される。式中、R3 、R4 及びR5 はそれぞれ独立にメチル基、炭素数8〜36のアルキル基、炭素数8〜36のアルケニル基、シクロヘキシル基又はベンジル基を表す。
【0035】
式中、R3 及びR4 がメチル基であり、かつR5 が炭素数12〜36のアルキル基である三級アミン化合物が好ましく、中でも、引火点と低発熱性、分散改良の面からジメチルステアリルアミンが好ましい。
【0036】
三級アミン化合物としては、例えばトリオクチルアミン、トリラウリルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、ジメチルオクタデセニルアミン、ジメチルヘキサデセニルアミンなどが挙げられる。
【0037】
上記三級アミン化合物の配合量は、シリカ又は水酸化アルミニウムに対して0.5〜15重量%、好ましくは、2〜10重量%である。この配合量が0.5重量%未満では、目的である耐熱老化性の向上を発揮することができず、また、15重量%を越えると、効果が飽和し、逆に上記三級アミン化合物が可塑剤として働くため、耐摩耗性が低下するなど好ましくない。
【0038】
また、本発明で用いられる三級アミン化合物の分子量は、180以上であることが好ましい。この分子量が180より低いと引火点が100℃以下となり、加工工程で発火の恐れがあり、好ましくない。
【0039】
本発明で使用できる補強用充填材はシリカ、水酸化アルミニウムなどの無機フィラーから選ばれる少なくとも一種が用いられる。上記無機フィラーの中ではシリカが好ましい。また、通常のカーボンブラックも無機フィラーと併用できる。
【0040】
無機フィラーの配合量はゴム成分100重量部に対して、15〜85重量部であることが好ましく、カーボンブラックが存在しなければ、配合量が15重量部未満では補強性が得られず、また85重量部を越えると熱入れ、押し出し等の作業性の悪化を招くので好ましくない。この配合量は補強性、低発熱性、作業性の面から、20〜65重量部がさらに好ましい。
【0041】
カーボンブラックとしては、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPF等が好ましい。またカーボンブラック配合量はゴム成分100重量部に対して5〜80重量部が好ましく用いられる。この配合量が80重量部を越えると発熱性、作業性を大幅に悪化させるので好ましくない。この配合量は補強性、低発熱性の面から25〜60重量がさらに好ましい。
【0042】
本発明においては、補強用充填剤としてシリカが用いられる場合、シランカップリング剤を使用することが好ましい。
【0043】
シランカップリング剤として、例えばビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、中でもビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが好ましい。
【0044】
また、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、3−ニトロプロピルジメトキシメチルシラン、3−クロロプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド等も挙げることができる。
【0045】
シランカップリング剤の配合量はシリカに対し、1〜15重量%が好ましく用いられ、さらに好ましくは5〜12重量%である。シランカップリング剤の配合量が1重量%未満ではカップリング効果が小さく、15重量%を越えるとゲル化を引き起こし好ましくない。
【0046】
なお、本発明においては、上記のゴム成分、シリカ、三級アミン化合物、シランカップリング剤、補強充填材としてのカーボンブラック以外に、必要に応じて、軟化剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤等の通常ゴム工業で使用される配合剤を適宜配合することができる。
【0047】
本発明のゴム組成物は、上記ゴム成分、シリカ、三級アミン化合物、シランカップリング剤、補強充填材としてのカーボンブラックを、上記必要に応じて配合する上記ゴム配合剤等をバンバリーミキサーなどにより混合することにより調製される。
【0048】
ジチオリン酸金属塩は永年、潤滑油の老化防止剤として使用されており、その反応機構についてもS.AL−MALAIKAら(Atomospheric Oxidation and Antioxidants,vol I ,195(1993),G.Scott,editor ELSEVIER 社) により詳しく調べられており、ジチオリン酸金属塩は過酸化物を分解する能力を有することが知られている。
【0049】
さらにS.K.Mandel,R.N.Datta,D.K.Basuら(Rubber Chem.Technol.,62,569(1989))によりジチオリン酸ジスルフィドがNR配合系で、加硫物の網目構造として著しくモノスルフィド結合を増加させることが確認されている。
【0050】
これらの過去の知見からジチオリン酸金属塩は▲1▼老化防止剤としての効果▲2▼熱的に安定なモノスルフィド結合をつくる効果を有するため前述のようにカーボン配合では優れた耐熱老化性を示すと推察される。このジチオリン酸金属塩が補強用充填剤、特にシリカ又は水酸化アルミニウムのみの配合ではカーボン配合ほどの効果が得られにくいがその原因として、シリカ又は水酸化アルミニウム表面へのシチオリン酸金属塩の吸着が予想される。本発明では、使用する特定の三級アミンがシリカ周りをマスキングしてジチオリン酸金属塩の例えばシリカへの吸着を抑えるために、ジチオリン酸金属塩が持つ優れた耐熱老化性が発現するものと考えられる。
【0051】
本発明のゴム組成物は、使用中のゴム硬化により、運動性能が低下するタイヤトレッド及びサイドウォールへの適用等が特に好ましいが、その他にもコンベアベルト、ゴムホースなど、あらゆるゴム製品に適用することができる。
【0052】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明の主旨を越えない限り、本実施例に限定されるものではない。
【0053】
各種物性の測定方法は次の通りである。
・初期の破壊特性
熱老化前のサンプルについて、JIS K 6301(1975)に準拠して、硬さ(Hd、JIS A硬度)、次に引張試験を行い、引張強さ(Tb)、伸び(Eb)及び200%モジュラス(M200)を求めた。
【0054】
・熱老化後の破壊特性
熱老化は100℃ギヤオーブンで48時間行い、オーブンから取り出し後、室温で6時間放置後に、Hd、Tb、Eb及びM200を求めた。また、初期のHd、Tb、Eb及びM200に対する、熱老化48時間後のHd、Tb、Eb及びM200の変化率を示した。変化率は100%に近い程よい。
(実施例1〜20)(比較例1〜10)
表1に示す基本配合処方及び表2〜6に示す個別の配合処方に従って、通常のバンバリーミキサーを用いて、混練し、ゴム組成物を調製した。このゴム組成物を、米国フレキシス社(旧モンサント社)製MDR2000にて、145℃測定により得られたT90値の1.5〜2.0倍に相当する時間で、145℃で加硫を行った。この加硫物について、初期の破壊特性及び熱老化後の破壊特性、変化率を測定した。結果を表2〜6に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【0060】
【表6】
【0061】
表2〜6のゴム成分及び配合剤の説明
1)SBR:SBR1500(日本合成ゴム社製)
2)BR:BR01(日本合成ゴム社製)
3)シリカ:ニップシールAQ(日本シリカ社製)
4)三級アミンX:ジメチルステアリルアミン
5)三級アミンY:ジメチルデシルアミン
6)三級アミンZ:トリオクチルアミン
7)ジチオリン酸亜鉛A:O,O−ジイソプロピルジチオリン酸亜鉛
8)ジチオリン酸亜鉛B:O,O−ジブチルジチオリン酸亜鉛
9)ジチオリン酸亜鉛C:O,O−ビス(2−エチルヘキシル)ジチオリン酸亜鉛
表2〜6から次のことがわかる。
【0062】
比較例1(コントロール)に対して、ジチオリン酸亜鉛(比較例2)、ジメチルステアリルアミン(比較例3)のそれぞれ単独使用ではM200の増加も大きく変わらず、破壊伸びも改善されない。これに対して、ジチオリン酸亜鉛とジメチルステアリルアミンを併用した実施例3では、熱老化後のM200の増加が15%以上改善されており、老化後の破壊伸びも10%改良されていることが明らかである、アミンと併用することでジチオリン酸亜鉛塩の効果は0.2重量部から認められ、2重量部前後でほぼ一定の値を示すようになる(実施例1〜5)。O,O−ジイソプロピルジチオリン酸亜鉛塩でも、O,O−ジブチルジチオリン酸亜鉛塩でも、O,O−ビス(2−エチルヘキシル)ジチオリン酸亜鉛でも同様の効果が認められた(実施例3、6及び7)。また、ゴム成分をSBRからSBR/NRに変えたもの、SBR/NR/BRに変えたもの(比較例4、5と実施例14、15)あるいはシリカ量が変化しても(実施例16〜17)、また水酸化アルミニウム(水酸化アルミニウム)を用いた配合でも(実施例20)、同様にジチオリン酸亜鉛塩と三級アミンの組合わせでの耐熱老化性の改良効果が確認された。さらに、三級アミンの配合量を特許請求範囲内に変えても(実施例7〜11)、三級アミン種を変えても(実施例12〜13)、ポリマー配合比(実施例14と比較例4、実施例15と比較例5)、シリカ配合量やカーボン配合量(実施例16〜19、比較例6〜9)、シリカの代りに水酸化アルミニウムを用いても(実施例20と比較例10)、ジチオリン酸金属塩と三級アミンの併用効果が確認できた。
【0063】
以上のように、本発明によれば、シリカ配合での熱老化物性、特にモジュラスの増加を抑制し、破壊時の伸びが改良されたゴム組成物が提供される。
【0064】
【発明の効果】
本発明のゴム組成物は、上記のような構成としたので、耐熱老性、特に耐熱硬化性及び破壊特性が改良されるという優れた効果を奏する。
Claims (12)
- 天然ゴム及びジエン系合成ゴムからなる群より選ばれる少なくとも一種からなるゴム成分100重量部に対して、無機フィラーを15〜85重量部と、該ゴム成分100重量部に対して、下記一般式(I)で表されるジチオリン酸金属塩の少なくとも一種を0.1〜5重量部と、該無機フィラーに対して、下記一般式(II)で表される三級アミン化合物の少なくとも一種を0.5〜15重量%とを含むことを特徴とするゴム組成物。
一般式(I)
一般式(II)
- 前記請求項1に記載の一般式(I)で表されるジチオリン酸金属塩のR1 及びR2 がそれぞれ独立に炭素数2〜8のアルキル基であり、かつMが亜鉛原子であることを特徴とする請求項1記載のゴム組成物。
- 前記請求項1に記載の一般式(I)で表されるジチオリン酸金属塩のR1 及びR2 がそれぞれ独立に炭素数3〜4のアルキル基であることを特徴とする請求項1記載のゴム組成物。
- 前記請求項1に記載の一般式(I)で表されるジチオリン酸金属塩がジチオリン酸亜鉛であり、かつ2−ベンゾチアジルスルフェンアミド及び2−ベンゾチアジルスルフェンイミドからなる群より選ばれる少なくとも一種の加硫促進剤が含まれることを特徴とする請求項1記載のゴム組成物。
- 前記無機フィラーがシリカ又は水酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項1記載のゴム組成物。
- 前記無機フィラーがシリカであることを特徴とする請求項1記載のゴム組成物。
- シランカップリング剤がシリカ配合量に対して、1〜15重量%含まれることを特徴とする請求項6記載のゴム組成物。
- カーボンブラックがゴム成分100重量部に対して、5〜80重量部含まれることを特徴とする請求項1記載のゴム組成物。
- 前記請求項1に記載の一般式(II)で表される三級アミン化合物が180以上の分子量を有することを特徴とする請求項1記載のゴム組成物。
- 前記請求項1に記載の一般式(II)で表される三級アミン化合物のR3 及びR4 がメチル基であり、かつR5 が炭素数12〜36のアルキル基であることを特徴とする請求項1記載のゴム組成物。
- 前記三級アミン化合物がジメチルステアリルアミンであることを特徴とする請求項1記載のゴム組成物。
- 前記請求項1に記載の一般式(I)で表されるジチオリン酸金属塩のR1 及びR2 がそれぞれ独立に炭素数3〜4のアルキル基であり、前記三級アミン化合物がジメチルステアリルアミンであり、シランカップリング剤がシリカ配合量に対して、1〜15重量%含まれ、かつカーボンブラックがゴム成分100重量部に対して、5〜80重量部含まれることを特徴とする請求項1記載のゴム組成物。
Priority Applications (7)
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---|---|---|---|
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