JP3574097B2 - 射出成形装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は寸型開制御機能を備えた射出成形装置、特に成形の難しい植物性繊維系材料を成形する射出成形装置の改良に関する。なお、植物性繊維は紙繊維を含み、繊維性植物から直接的に得たバージン繊維及びこれの再生繊維を含む。
【0002】
【従来の技術】
プラスチックの成形に多用されている射出成形装置を、利用して紙繊維系材料の射出成形を実施する試みがなされている。しかし、紙繊維系材料は紙繊維に20〜50%もの水を混合したものであるため、成形段階で水を除去する工程が必須となる。例えば、特許第2916136号公報「紙繊維を利用した製品の成形方法」には、120〜220℃に金型を加熱して水分を蒸発させると共に、金型を0.02〜0.5mm開いて蒸気を逃す工程を少なくとも1回以上実施する製造方法が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記公報により、成形段階で金型を僅かに開けること(以下、寸(すん)型開と呼ぶことにする。)で蒸気を逃すことで、大量に水を含む紙繊維系材料の射出成形が可能になった。寸型開機構は、上記公報に図1によれば穴部26に制御ピン25を嵌合する構成の機構である。この様な機構であれば金型の開き量は一定になる。
【0004】
しかし、紙繊維系材料の射出成形実験を、含水量(射出開始時)をパラメータとしこれを変化させつつ多数実施したところ、1回の寸型開では蒸気の抜けが不十分であること、2回以上寸型開を実施するときには1回目の寸型開開き量を小さくし、2回目の寸型開開き量を大きくすると成形が良好になること、若しくは逆に1回目の寸型開開き量を大きくし、2回目の寸型開開き量を小さくすると成形が良好になること、が判明した。
すなわち、紙繊維系材料の性質に基づいて型寸開を細かく制御する必要が認められた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは更に実験を重ねて、多様な紙繊維系材料、すなわち植物性繊維材料に対応させ得る射出成形装置を確立することに成功した。
具体的には請求項1は、金型を型締する型締機と、金型へ成形材料を射出する射出機と、これらを制御する制御部とを主要素とし、制御部に、金型を僅かに開ける寸型開並びに寸型開した金型を再度閉じる再型締とからなる寸型開制御機能をもたせると共に、この寸型開制御を実施するために、型を開くときの寸型開速度と、型を閉じるときの再型締速度と、1回目の型開き位置に相当する1回目の寸型開位置と、この1回目の寸型開状態を保持する1回目の寸型開時間と、1回目の型締位置に相当する1回目の再型締位置と、この1回目の再型締状態を保持する1回目の再型締時間と、2回目の型開き位置に相当する2回目の寸型開位置と、この2回目の寸型開状態を保持する2回目の寸型開時間と、2回目の型締位置に相当する2回目の再型締位置と、この2回目の再型締状態を保持する2回目の再型締時間と、を人為的に設定できるようにした射出成形装置において、
前記寸型開位置、寸型開時間、再型締位置、再型締時間は各回毎に各々設定できるが、前記型を開くときの寸型開速度及び型を閉じるときの再型締速度は、回数に関係なく1つの値を設定できるようにし且つ寸型開速度と再型締速度とは互いに異なる値を設定できるようにしたことを特徴とする。
【0006】
寸型開速度は再型締速度とは別の要因で決定すべきであるとの考えから、型を開くときの寸型開速度と、型を閉じるときの再型締速度とを個別に設定可能にした。そして、計2回の寸型開を実施して蒸気の排出を促すときに、1回目と2回目とで寸型開位置、寸型開時間、再型締位置及び再型締時間を個別に設定可能にした。この結果、成形材料の性質などに応じて、適当な設定を行うことができ、成形時間の短縮や成形品の品質向上を容易に図れるようになった。
【0007】
そして、再型締位置を任意に設定できるため、再型締の際に型締力を増加又は減少させることができる。例えば、1回目より2回目の型締力を減少させれば、1,2回目共に同じ大きな型締力である場合に比べて、成形品のそり、歪み及び表面の毛羽立ちを防止することが出来るとともに型締機への負荷が軽減でき、型締機の長寿命化が達成できる。
さらには、寸型開速度若しくは再型締速度を回数に関係なく1つの値を設定するのは次の理由による。第1に1回目、2回目・・・の各回毎に個別に寸型開速度若しくは再型締速度を設定するには、設定値を表示するパネルに新たな窓を8個追加しなければならず、パネルが複雑になる。第2に寸型開速度若しくは再型締速度は寸型開時間や同位置に比較して細かく設定する必要性は少ない。これらのことから、寸型開速度若しくは再型締速度を回数に関係なく1つの値を設定することにした。
加えて、寸型開速度と再型締速度とを個別に設定できるようにしたのは次の理由による。蒸気の排出を促す上では寸型開速度は大きくし成形品の傷みを回避する上では寸型開速度は小さくする必要があり、成形品の大きさや形状、成形材料の性質により、好ましい寸型開速度を設定する必要がある。
また、再型締速度は成形を穏やかに実施するには遅くし、生産性を上げるには早くする必要があり、成形品の大きさや形状、成形材料の性質により、好ましい速度を設定する必要がある。
この様に寸型開速度は再型締速度とは別の要因で決定すべきであるから、両速度は個別に設定できるようにした。
【0008】
請求項2では、成形材料は植物性繊維に少なくとも水溶性結合材および水を添加した混合物であり、120℃〜220℃に金型を加熱する金型ヒーターを備えていることを特徴とする。
【0009】
水を大量に含有する植物性繊維系成形材料の場合は、水を蒸発させつつ、寸型開制御で蒸気を排出することで、良好な植物性繊維成形品を得ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る射出成形装置の側面図であり、射出成形装置10は、基台11に射出機20、不図示の同駆動装置及び型締機30を載せると共に、基台11に制御部の制御パネル12を備えた横型射出成形装置である。
【0011】
射出機20は、スクリューを内蔵した加熱筒21、この加熱筒21に成形材料を供給するホッパー22、スクリューを高速で押出すためのボールねじ機構23及び射出用モータ24などを備える。
【0012】
不図示の射出機駆動装置は、射出機20を一括して横移動する装置であり、シリンダ(電動シリンダ又は油圧シリンダ)がその主要素となるが、構造の説明は省略した。
【0013】
型締機30は、圧受盤31、固定盤32、タイバー33・・・(・・・は複数を示す。以下同じ)、可動盤34、この可動盤34を型締方向へ押出すトグルリンク35及び型締用モータ36とからなり、固定盤32に固定側金型37を固定し、可動盤34に可動側金型38を固定することにより、可動側金型38を型締方向及び型開き方向へ任意に移動させることができる。なお、この例ではトグルリンク式型締機を採用したが、シリンダで直接若しくは間接的に型締めするシリンダ式型締機であってもよく、型締機の形式は問わない。
【0014】
図2は本発明に係る寸型開制御の原理図であり、可動側金型38を移動する型締用モータ36、このモータ36の回転数を計測する回転計39及び型締用モータ36を駆動するモータドライバー41は、既存の型締機の構成要素であり、これらに本発明で、寸型開制御部42及び条件設定器43を付加したことを特徴とする。
【0015】
なお、寸型開制御部42は既存の制御部にその機能を追加し、及び/又は条件設定器43は図1の制御パネル12にその機能を追加すれば、機器の数を増す必要が無く、既存の射出成形装置(図1と同形)と同じ装置規模で本発明を実施することができる。
【0016】
図3は本発明に係る条件設定器のパネルイメージ図であり、制御パネル12には、次に述べるパラメータが表示でき、これらはキーボード、アイコン、マウス、タッチパネルなどの入力手段により人為的に設定できる。ここでは諸設定値の意味を説明する。理解が難しければ、図4〜図6の説明の後に図3に戻ることを推奨する。
【0017】
符号45は射出完了から1回目の寸型開を開始するまでの時間である寸型開開始時間の設定値である。
符号46は寸型開回数の設定値であり、基本的には2以上の整数値であるが、0又は1を設定することは可能である。「0」は寸型開を実行しないとき、「1」は寸型開を1回だけ実行することを意味する。
【0018】
符号47は寸型開時の速度に当る寸型開速度の設定値であり、設備上の最高速度を100%とし、これをベースに%表示で寸型開速度を定める。
符号48は再型締時の速度に当る再型締速度の設定値であり、同様に%で設定する。
【0019】
符号51は1回目の寸型開位置の設定値であり、型締状態から何mm寸開するかを定める。
符号52は1回目の寸型開時間の設定値であり、寸型開位置にて何s(秒)間保持するかを定める。
【0020】
符号53は1回目の再型締位置の設定値であり、寸型開から何mmの所まで閉じるかを定める。
符号54は1回目の再型締時間の設定値であり、再型締位置にて何s(秒)間保持するかを定める。
【0021】
符号61〜64は2回目のための設定値、符号71〜74は3回目のための設定値、符号81〜84は4回目のための設定値、符号91〜94は5回目を含むそれ以降のための設定値である。
【0022】
本発明の寸型開制御機能を作用図を用いて以下に説明する。
図4(a)〜(c)は本発明に係る型締機の作用説明図である。
(a)は固定側金型37から可動側金型38が十分に離れたところの型開き状態を示す。この状態から型締用モータ36を回転させることで、可動側金型38を型締方向へ移動させる。
【0023】
(b)は型締完了を示し、可動側金型38が所定の型締圧力で固定側金型37に密着している。
(c)において、固定側金型37に当てたノズル95から成形材料96を射出する。
【0024】
成形材料の成分例は次の通りである。
まず、新聞紙、紙パルプ、雑誌、段ボールなどから得た植物性繊維50〜90部と多価アルコール10〜50部とから配合物100部を得る。この配合物100部に水50〜100部を添加して混合物100部を得る。この混合物100部に非アルカリ金属の長鎖脂肪酸塩を0.3〜2.0部を添加した後に水分率を20〜32%に調整する。この調整物に含まれる多価アルコールのうちの10〜50%を生分解性樹脂により置換する。この一連の処理を施した植物性繊維を射出成形材料に適用する。
【0025】
成形条件は次の通りである。
加熱筒の温度:120℃
金型の温度:180℃
射出速度:70mm/s
射出圧力:1000kg/cm2
【0026】
図5(a),(b)は本発明に係る寸型開位置及び再型締位置の説明図であり、上述した通りに成形材料に多量の水を含むため、金型37,38内で蒸気化し、寸型開を行って蒸気を排出する。
(a)は寸型開速度V1(V1は図3の符号47で設定)で可動側金型38を開いて蒸気を排出している模様を示す。このときの開き位置を「寸型開位置」といい、これば図3の符号51,61,71,81,91で設定する。そして、図3の符号52,62,72,82,92で設定した「寸型開時間」だけ寸型開を継続する。
【0027】
(b)において、寸型開時間が経過したら可動側金型38を再型締速度V2(V1は図3の符号48で設定)で「再型締位置」まで閉じる。この「再型締位置」は図3の符号53,63,73,83,93で設定する。そして、図3の符号54,64,74,84,94で設定した「再型締時間」だけ再型締を継続する。
【0028】
図6は本発明に係る寸型開制御のタイムチャートであり、縦軸は時間、横軸は可動型(可動側金型)の位置を示す。1.や2.は図中の番号を示す。
1.射出完了信号を受ける若しくは射出完了を認識できたら、制御部は、2.寸型開開始時間の経過を待ち、この時間が経過したら3.寸型開速度で1回目の寸型開を始め、4.寸型開位置に達したら寸型開位置を保持し、5.寸型開時間だけ蒸気を排出する。
【0029】
この時間が経過したら6.再型締速度で可動側金型を閉じ始め、7.再型締位置に達したら8.再型締時間が経過するまで再型締状態を保つ。この間に乾燥を促す。
【0030】
この時間が経過したら9.寸型開速度で2回目の寸型開を始め、10.寸型開位置に達したら寸型開位置を保持し、11.寸型開時間だけ蒸気を排出する。
【0031】
この時間が経過したら12.再型締速度で可動側金型を閉じ始め、13.再型締位置に達したら14.再型締時間が経過するまで再型締状態を保つ。この間に乾燥を促す。
【0032】
以上の1.〜14.により、2回の寸型開閉が実施できた。同様にして、3回目以降の寸型開閉を任意に継続させることができ、その回数は、図3の符号46で人為的に定めことができる。
【0033】
なお、本発明で寸型開速度と再型締速度とを個別に設定できるようにしたのは次の理由による。蒸気の排出を促す上では寸型開速度は大きくし成形品の傷みを回避する上では寸型開速度は小さくする必要があり、成形品の大きさや形状、成形材料の性質により、好ましい寸型開速度を設定する必要がある。
また、再型締速度は成形を穏やかに実施するには遅くし、生産性を上げるには早くする必要があり、成形品の大きさや形状、成形材料の性質により、好ましい速度を設定する必要がある。
この様に寸型開速度は再型締速度とは別の要因で決定すべきであるから、両速度は個別に設定できるようにした。
【0034】
一方、寸型開速度若しくは再型締速度を回数に関係なく1つの値を設定するのは次の理由による。第1に1回目、2回目・・・の各回毎に個別に寸型開速度若しくは再型締速度を設定するには、図3に新たな窓を8個追加しなければならず、パネルが複雑になる。第2に寸型開速度若しくは再型締速度は寸型開時間や同位置に比較して細かく設定する必要性は少ない。これらのことから、寸型開速度若しくは再型締速度を回数に関係なく1つの値を設定することにした。
【0035】
尚、請求項1の射出成形装置では、取扱う成形材料は植物性繊維系材料に限らず、樹脂、ゴム、軽金属又はこれらの複合材若しくは混合材であってもよい。
また、請求項1では1回目と2回目の設定を規定したが、実施の形態で説明した通り、3回以上の寸型開を実施可能にすることは差支えない。
【0036】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1によれば、型を開くときの寸型開速度と、型を閉じるときの再型締速度とを個別に設定可能にした。そして、計2回の寸型開を実施して蒸気の排出を促すときに、1回目と2回目とで寸型開位置、寸型開時間、再型締位置及び再型締時間を個別に設定可能にした。この結果、成形材料の性質などに応じて、適当な設定を行うことができ、成形時間の短縮や成形品の品質向上を容易に図れる。
そして、再型締位置を任意に設定できるため、再型締の際に型締力を増加又は減少させることができる。例えば、1回目より2回目の型締力を減少させれば、1,2回目共に同じ大きな型締力である場合に比べて、成形品のそり、歪み及び表面の毛羽立ちを防止することが出来るとともに型締機への負荷が軽減でき、型締機の長寿命化が達成できる。
また、寸型開速度若しくは再型締速度を回数に関係なく1つの値を設定することとしたので、設定値を表示するパネルの簡略化を図ることができる。
そして、寸型開速度と再型締速度とを個別に設定できるようにしたので、一方の速度を上げることで生産性を確保し、他方の速度を下げることで成形品の品質を確保することが可能となる。
【0037】
請求項2では、成形材料は植物性繊維に少なくとも水溶性結合材および水を添加した混合物であり、120℃〜220℃に金型を加熱する金型ヒーターを備えていることを特徴とし、水を大量に含有する植物性繊維系成形材料の場合は、水を蒸発させつつ、寸型開制御で蒸気を排出することで、良好な植物性繊維成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る射出成形装置の側面図
【図2】本発明に係る寸型開制御の原理図
【図3】本発明に係る条件設定器のパネルイメージ図
【図4】本発明に係る型締機の作用説明図
【図5】本発明に係る寸型開位置及び再型締位置の説明図
【図6】本発明に係る寸型開制御のタイムチャート
【符号の説明】
10…射出成形装置、12…制御部の制御パネル、20…射出機、30…型締機、37,38…金型、51…1回目の寸型開位置の設定値、52…1回目の寸型開時間の設定値、53…1回目の再型締位置の設定値、54…1回目の再型締時間の設定値、61…2回目の寸型開位置の設定値、62…2回目の寸型開時間の設定値、63…2回目の再型締位置の設定値、64…2回目の再型締時間の設定値、96…成形材料。
Claims (2)
- 金型を型締する型締機と、金型へ成形材料を射出する射出機と、これらを制御する制御部とを主要素とし、制御部に、金型を僅かに開ける寸型開並びに寸型開した金型を再度閉じる再型締とからなる寸型開制御機能をもたせると共に、この寸型開制御を実施するために、型を開くときの寸型開速度と、型を閉じるときの再型締速度と、1回目の型開き位置に相当する1回目の寸型開位置と、この1回目の寸型開状態を保持する1回目の寸型開時間と、1回目の型締位置に相当する1回目の再型締位置と、この1回目の再型締状態を保持する1回目の再型締時間と、2回目の型開き位置に相当する2回目の寸型開位置と、この2回目の寸型開状態を保持する2回目の寸型開時間と、2回目の型締位置に相当する2回目の再型締位置と、この2回目の再型締状態を保持する2回目の再型締時間と、を人為的に設定できるようにした射出成形装置において、
前記寸型開位置、寸型開時間、再型締位置、再型締時間は各回毎に各々設定できるが、前記型を開くときの寸型開速度及び型を閉じるときの再型締速度は、回数に関係なく1つの値を設定できるようにし且つ寸型開速度と再型締速度とは互いに異なる値を設定できるようにしたことを特徴とする射出成形装置。 - 前記成形材料は植物性繊維に少なくとも水溶性結合材および水を添加した混合物であり、120℃〜220℃に金型を加熱する金型ヒーターを備えていることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
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