JP3573928B2 - 圧縮機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,圧縮機構を収納するケース等に融点の異なる材質からなる吸入管等を固着する際に,フラックス等を用いることなく,均一な固着が容易に行えるようにした圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
冷凍装置は,種々の技術分野に用いられ,圧縮機,凝縮器,膨張弁及び蒸発器等を主要構成として,冷凍サイクルやヒートポンプが運転されている。例えば,冷凍サイクルでは,冷媒を圧縮機で圧縮してホットガスとし,その後当該ホットガスを凝縮器で外気等と熱交換して液化冷媒にする。そして,液化冷媒を膨張弁で膨張させて低温化し,蒸発器で負荷と熱交換する。これにより負荷を冷却するようにしている。
【0003】
図5は,かかる圧縮機1の外観を示す斜視図で,当該圧縮機1には吸入管2を介して冷媒が吸入され,そして圧縮された冷媒は吐出管3を介して上述した凝縮器等に吐出される。
【0004】
一般的に吸入管2や吐出管3は,銅を材料とし,また圧縮機1のケース4は鉄を材料として,当該ケース4に吸入管2等の外形寸法と略同じ径の穴を形成し,そこに吸入管2等を銀ロウ付して固着している。図6はかかる吸入管2がケース4に銀ロウ5でロウ付された際の断面図を示したものである。
【0005】
銀ロウ付を行う際にはフラックスが用いられるが,当該フラックスは,摺動部分や圧縮部分に侵入して,その摺動面を傷つけたり,圧縮機1の潤滑に用いられているエーテル油やエステル油等を分解してしまう不都合があるため,ロウ付後は洗浄等により除去されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,ロウ付後のフラックスは,強固にロウ付面に付着しているため,単に洗浄しただけでは除去できず,ブラッシング等を併用して除去することが行われている。従って,ブラッシングが行い難いケース4内側や微少な隙間に当該フラックスが残留してしまう問題があった。
【0007】
また,ロウ付の段階で,吸入管2とケース4との間にフラックスが侵入し,その後の洗浄等により当該フラックスが除去されたために,結果として。
【0008】
また,銀ロウ付は一般に,ピンホールが多く発生して,ケース4内を気密に保つことが困難となり,リーク不良の発生が多い等の問題があった。
【0009】
このような銀ロウ付に対して,フラックスが不要で,機密性等に対して好適なアーク溶接等を利用することも考えられるが,かかる方法は融点の大きく違う部材を略同時に溶融させることができないため,当該部材間の溶接には利用できない問題がある。
【0010】
そこで,本発明は,融点の異なる金属からなる部材を接続する際に,フラックスを用いることなく,機密性が可能な方法により溶接できるようにして,信頼性の高い圧縮機を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために,請求項1にかかる発明は,圧縮機構を収納するケース,該ケースの底部となるボトム,ケースの頭部となるエンドキャツプの被固着物のうち少なくとも1つに穴を形成し,当該被固着物の材質と融点の異なる材質からなるパイプ状の固着物を穴に固着してなる圧縮機において,被固着物を塑性加工(例えば座押し座屈等)して平面部を形成し,当該平面部に穴を形成する。そして,固着物と被固着物とを一様に密接した状態にしてパルス溶接したことを特徴とする。
【0012】
請求項2にかかる発明は,圧縮機構を収納するケース,該ケースの底部となるボトム,ケースの頭部となるエンドキャツプの被固着物のうち少なくとも1つに穴を形成し,当該被固着物の材質と融点の異なる材質からなるパイプ状の固着物を穴に固着してなる圧縮機において,バーリング加工により穴を形成する。このとき,該穴形成と同時に当該穴の周辺部には,円環状のリブがバリのように形成される。そこで,固着物を当該リブに所定の力で付勢してパルス溶接したことを特徴とする。
【0013】
また,バーリング加工により穴を形成すると,穴と同時にリブが形成されるが,そのリブの穴内側の付け根は,所定の曲率を持つようになる。そこで,パルス溶接する際に被固着物に接続する電極の電極面を当該付け根の曲率と同じ曲率にして,固着物に対する所定の付勢力の支持をすると共に,電極とリブとの接触抵抗を小さくし,かつ,均一抵抗になるようにしたことを特徴とする。
【0014】
請求項3にかかる発明は,固着物における溶接部分の内側が,先端に行くに従い肉薄となる先広がり形状に面取りされて,パルス溶接開始時に固着物と被固着物とが点接触状態であっても,固着物に加えた力で点接触部の溶融物を横(外側)にはみ出させてスパッタ,バリ等の内側への発生を抑えると共に,均一強度の溶接を行うようにしたことを特徴とする。
【0015】
請求項4にかかる発明は,穴の径が固着物の内径より大きく,かつ,外径より小さく設定されて,冷媒ガスの余分な流動抵抗を生じさせないようにしたことを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態の説明に先立ち,本発明で用いる溶接技術について説明する。本発明で用いる溶接技術はパルス溶接とよばれ,被溶接物に溶接物を所定の力で付勢し,この間に4〜12ミリ秒/数万アンペア等のパルス電流を通電することにより溶接する抵抗溶接の一種であり,金属が瞬時に溶融するため異種金属の溶接が可能となる特徴を持っている。
【0017】
なお,後述する各実施の形態に於いては,ケース(被溶接物)に吸入管(溶接物)を溶接する場合について説明するが,本発明はこれに限定されるものではなく,例えばケースのボトムやエンドキャップ等に異種金属のパイプ等を溶接する場合にも適用可能である。
【0018】
また,一般にケースの材質として鉄等が用いられ,またパイプの材料として銅が用いられるが,本発明は,これらの材料に限定されるものではなく異種金属であることを要件としている。
【0019】
さらに,以下の説明では被溶接物に形成する穴を真円として説明するが,本発明は真円に限定する必要はなく楕円穴,四角穴等であっても一般性を失うものではない。同様なことは,溶接物についても言うことができる。従って,本明細書で単に「穴」と記載したときは,真円穴,楕円穴,四角穴等全ての穴を含むものである。
【0020】
本発明の第1の実施の形態を図を参照して説明する。図1は,本実施の形態にかかる圧縮機10における吸入管14を含む断面図を示したもので,内部に配設されているモータ等は図示省略している。
【0021】
ケース11は,当該ケース11の内側から外側に向ってバーリング加工されて穴12が形成される。当該バーリング加工により,穴12の周辺部には円環状のリブ13が形成される。このとき,リブ13のケース11内側の周辺部15は,所定の曲率を持つようになる。
【0022】
そして,パルス溶接の一方の電極をケース11内側から穴12の周辺部に接触させ,吸入管14を所定の力で押しつけながらパルス電流をケース11と吸入管14との間に流す。これにより,これらの接触面が溶融して溶接される。
【0023】
このとき,ケース11内側に接触させる電極を穴12から遠いところに接触したのでは,溶接部分以外のケース11が加熱されるようになるので電力の有効利用の観点等から好ましくない。また,当該電極とケース11との接触が点接触であったり,接触面積が小さいと,当該部分での電流密度が高くなって,電極自体が溶接される状況も生じ得る。
【0024】
これらの事情から,電極は穴12の周辺に一様に接触させる必要があり,図2に示すような電極16を用いてパルス溶接を行うのが好ましい。同図に示す電極16は,バーリング加工により形成された穴12のケース11内側における周辺部15の曲率と同じ曲率に設定された電極面17を有している。
【0025】
このような電極16を穴12に宛うと,当該電極16は穴12に挿入されるような状況となり,当該穴12の周辺部15と電極面17とが面接触するようになるので,電極16とケース11との接触抵抗を小さく,かつ,均一な抵抗分布とすることが可能になる。また,吸入管14に加える力は,リブ13と面接触する電極16により好適に支持することが可能になる。
【0026】
なお,バーリング加工によりリブ13を形成した場合には,当該リブ13の端面13aは,ケース11が円筒形状であるため,これに依存した鞍型形状を持つようになる。従って,吸入管14の溶接面が平であると,溶接開始時はリブ13と吸入管14とが点接触する。かかる状況は,被溶接物と溶接物との溶接面の一方が曲面である場合にも生じ,このような点接触状態でパルス溶接を行うと,溶接強度に分布が生じてしまうことが危惧される。
【0027】
しかし,点接触部の電流密度が大きくなること,リブ13の肉厚が薄いこと,吸入管14に所定の力が加えられること等の理由から,点接触部は瞬時に融点を越えて,吸入管4に加えられている力により吸入管4の径方向(横方向)に容易に押広められて面接触状態となる。従って,溶接強度分布は溶接部全体にわたり略均一と見なすことが可能になる。
【0028】
かかる溶接強度の均一性をより高度に確保するために,リブ13や吸入管14の溶接部にテーパを形成して,点接触部分での溶融を早める方法を併用してもよい。図3は,このような方法として,吸入管14の内側を先端に行くに従い肉薄となる先広がり形状に面取りした溶接部18を設けた場合を示している。
【0029】
なお,同図にかかる吸入管14は,溶接部18の内側を面取りした場合であるが,上記説明の趣旨に従うならば,吸入管14の外側を面取りした,あたかも鉛筆の芯のように先細り形状にすることも可能である。
【0030】
しかし,点接触した部分が先に溶融して,吸入管14に加えた力により横方向にはみ出す様になる結果,溶接部18の内側,即ち吸入管14の内側に溶融した溶融部がはみ出してしまうようになる。これは,当該吸入管14内を流動する冷媒の流動抵抗として作用するので好ましくない。また,長時間使用していると,はみ出した一部が欠け落ちて,圧縮機10等の可動部分に侵入して,当該可動部を破損させる事態も考えられる。
【0031】
そこで,本発明では,図3に示すような構成にして,はみ出した溶融部分が,溶融部18で覆われ,または面取りした溶接部18を面取り前の形状にあたかも復元するように作用させている。これにより,はみ出した溶融部分の除去作業を削減可能にしている。
【0032】
以上説明したように,上記構成によれば,溶接する面の一方が平面でなくとも,また溶接する部材が同種金属でなくても,一様の強度で溶接することができるようになるので,信頼性が向上すると共に,作業効率が向上する。
【0033】
次に本発明の第2の実施の形態を図を参照して説明する。なお,第1の実施の形態と同一構成に関しては,同一符号を用いて説明を適宜省略する。
【0034】
第1の実施の形態に於いては,バーリング加工によりリブ13を形成して,溶接強度等の均一化を図ったが,本実施の形態では,ケース11を内側から外側に座押し又は座押しとは反対に、外側から内側に座屈させて平面部を形成して,当該平面部に穴12を開けて吸入管14をパルス溶接するものである。
【0035】
即ち,図4に示すように,圧縮機20のケース21には,当該ケース21の内側から外側に差押しされて平面部23が形成されている。そして,当該平面部23にパンチや穿孔等の技術を用いて穴あけ加工して穴24が形成されている。
【0036】
このようにして形成された穴24には,バーリング加工で生じたようなリブ13が発生しないので,吸入管22の溶接部全体が溶接開始時から平面部23と密接させることが可能になる。従って,一様な溶接を行うことが可能になる。
【0037】
なお,この場合に,ケース21内側の電極は,第1の実施の形態に於いて説明したように所定の曲率を持つ電極面17でなく平面状の電極面でよい。従って,電極の汎用性を保つことが可能になる。
【0038】
さらに,第1の実施の形態で説明したように,吸入管22をケース21押しつけることによる溶融部分のはみ出しが生じるので,この場合には,穴24の直径D3を吸入管22の内径D1と外径D2との中間の大きさ,即ち,
D1<D3<D2 (1)
に設定することが好ましい。
【0039】
これにより,D3−D2の領域が溶接部となり,D3−D1の領域がはみ出した溶融部材を覆う領域となる。
【0040】
無論,このような構成でなく,図3に示したような面取り構成にすることも可能である。
【0041】
なお,先に述べたように,本明細書では,穴は真円に限定していない。従って,式1は穴24が真円である場合の条件であって,一般的な条件はパイプ状の溶接物における断面内に,穴が含まれる寸法関係を満たすことである。
【0042】
以上説明したように,上記構成によれば,被溶接物が平面でなくとも座押して平面を形成するので,溶接作業性が容易になって向上し,また溶接部材が同種金属でなくても,一様の強度で溶接することができるようになるので信頼性が向上する。
【0043】
【発明の効果】
以上に説明したように,請求項1にかかる発明によれば,穴を形成する部分を塑性加工により平面部を形成し,当該平面部に穴を形成してパルス溶接するようにしたので,溶接物と被溶接物との融点が異なる場合であっても,フラックス等を用いることなく,簡単,かつ,効率的に略一様の強度で溶接することができる。
【0044】
請求項2にかかる発明によれば,バーリング加工により穴あけ加工と同時にリブを形成し,そのリブに溶接物を所定の力で付勢してパルス溶接を行うので,溶接物に加えた力により点接触部分の溶融物がはみ出し,これにより均一強度の溶接が行えるようになる。
【0045】
更に,パルス溶接する際に被溶接物に接続する電極における電極面の形状をリブの付け根の曲率と同じ曲率にしたので,パルス溶接を行う際の当該電極とリブとの接触抵抗を小さくでき,かつ,電流密度分布の改善が図られると共に,溶接物に対する付勢力の支持も電極がリブと面接触しているため好適に行うことができ,均一強度の溶接が容易に行えるようになる。
【0046】
請求項3にかかる発明によれば,溶接物における溶接部分の内側を先広がり形状に形成したので,溶接物と被溶接物とが点接触状態であっても,溶接物に加えた力で点接触部の溶融物がはみ出して均一強度の溶接が行えるようになる。
【0047】
請求項4にかかる発明によれば,穴の径が溶接物の内径より大きく,かつ,外径より小さく設定したので,冷媒ガスの余分な流動抵抗を生じさせないようにできると共に,溶接物に加えられた力によりはみ出した溶融物が穴の側壁と当該穴より内側の溶接物の端面とで覆われるようになり,はみ出した溶融物の除去等が不要になって低コスト化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の説明に適用される圧縮機の断面図である。
【図2】パルス溶接の電極の側面図である。
【図3】吸入管の断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態の説明に適用される圧縮機の断面図である。
【図5】従来技術の説明に適用される圧縮の外観斜視図である。
【図6】従来技術の課題の説明に適用される圧縮機の断面図である。
【符号の説明】
10,20,30 圧縮機
12,24,33 穴
11,21,31 ケース
13 リブ
14,22,32 吸入管
15 リブ付け根
16 電極
17 電極面
18,34 溶接部
23 平面部
Claims (4)
- 圧縮機構を収納するケース,該ケースの底部となるボトム,前記ケースの頭部となるエンドキャツプの被固着物のうち少なくとも1つに穴を形成し,当該被固着物の材質と融点の異なる材質からなるパイプ状の固着物を前記穴に固着してなる圧縮機において,
前記被固着物に平面部を形成し,当該平面部に前記穴が形成され,かつ,前記固着物が当該穴にパルス溶接されてなることを特徴とする圧縮機。 - 圧縮機構を収納するケース,該ケースの底部となるボトム,前記ケースの頭部となるエンドキャツプの被固着物のうち少なくとも1つに穴を形成し,当該被固着物の材質と融点の異なる材質からなるパイプ状の固着物を前記穴に固着してなる圧縮機において,
バーリング加工により前記穴が形成されると共に,該穴形成と同時に当該穴の周辺部にリブが形成されて,前記固着物を当該リブに所定の力で付勢してパルス溶接してなり、
前記パルス溶接する際に前記被固着物に接続する電極が,前記円環状のリブにおける内側の付け根の曲率と同じ曲率の電極面を有して,当該電極面を前記リブの付け根に接触させてパルス溶接してなることを特徴とする圧縮機。 - 前記固着物における溶接部分の内側が,先広がり形状に面取りされてなることを特徴とする請求項1乃至2いずれか1項記載の圧縮機。
- 前記穴の径が前記固着物の内径より大きく,かつ,外径より小さく設定されていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の圧縮機。
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