JP3573482B2 - プロスタグランジン誘導体およびその使用 - Google Patents
プロスタグランジン誘導体およびその使用 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は新規なプロスタグランジン(以下PGと略称する)誘導体に関する。さらに詳しくは、優れた腎疾患改善作用、虚血性心疾患改善作用、心不全改善作用または眼圧下降作用を有するPG誘導体および薬剤としてのその使用に関する。
【0002】
【従来の技術】
PGおよびその誘導体は微量で種々の重要な生理作用を発揮することから、医薬への応用を意図して天然PG及び夥しい数のその誘導体について、それらの合成と生物活性の検討が行なわれてきた。これらの検討結果は、多数の文献をはじめ、例えば特開昭52−100446号公報、特表平2−502009号公報(WO89/00559号)などで報告されている。
PGおよびその誘導体の生理作用としては、血管拡張作用、起炎作用、血小板凝集作用、子宮筋収縮作用、腸管収縮作用、眼圧下降作用等が挙げられる。しかしPG誘導体は種々の作用を有するため、医薬としての使用に問題がある。例えば、1つの作用を薬効としてPG誘導体を投与した場合、同時に他の作用をも有するため、これら他の作用が副作用的に発現することが多い。そこで、主薬効として期待される作用の発現性を高める必要がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は強力な腎疾患改善作用、虚血性心疾患改善作用、心不全改善作用または眼圧下降作用を有する新規なPG誘導体の提供を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、式(I)
【0005】
【化4】
(Xはハロゲン原子、R1は水素原子あるいは炭素原子数1〜6、好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基、R2は炭素原子数3〜10、好ましくは炭素原子数5〜7のシクロアルキル基、炭素原子数4〜11、好ましくは炭素原子数5〜8のシクロアルキルメチル基、炭素原子数5〜12、好ましくは炭素原子数5〜9のシクロアルキルエチル基を示す。)で表されるPG誘導体またはその塩を提供する。本発明はさらに、上記PG誘導体またはその塩を有効成分として含有する腎疾患改善剤、または虚血性心疾患改善剤および心不全改善剤を提供する。
本発明の式(I)の化合物は、例えば以下に挙げる方法により製造できる。
【0006】
【化5】
(式中、TBSはt−ブチルジメチルシリル基を示し、Etはエチル基を示し、R2は式(I)と同じ意味を示し、EEはエトキシエチル基を示す)。
【0007】
【化6】
(式中、R3は式(I)のR1から水素原子を除いたものと同じ意味を示す)。
【0008】
すなわち,式(II)の化合物に式(III)の化合物を反応させてPGのω−側鎖を導入し式(IV)の化合物とする。一方、(Z)−ヨ−ド−3−(1−エトキシエチルオキシ)−1−プロペンにt−ブチルリチウムと2−チエニルシアノキュ−プレイトを反応させた化合物に先の式(IV)の化合物を反応させてPGのα−側鎖を導入し式(V)の化合物とする。次にこれをリチウムトリ−sec−ブチルボロハイドライドにて立体選択的に還元し、式(VI)の化合物とした後にエトキシエチル基を脱保護し式(VII)の化合物とする。式(VII)の化合物の1級水酸基をp−トルエンスルホニルクロライドでトシル化した後、これをナトリウムハイドライドを用いメルカプト酢酸エステルを反応させると式(VIII)の化合物が得られる。ついで、式(VIII)の化合物の水酸基をメタンスルスルホニルクロライドでメシル化した後、テトラn−ブチルアンモニウムクロライドと反応させクロル置換体とし、更にフッ化水素酸で保護基をはずし式(Ia)の化合物とする。ここで、ブロム化、フッ素化も通常の条件にて行いブロム、フルオロ置換体とすることができる。ブロム化は例えばアセトニトリル中四臭化炭素を用い、トリフェニルフォスフィン、ピリジン存在下反応することにより、またフッ素化は例えば、塩化メチレン中、ジメチルアミノサルファ−トフロリド(DAST)を反応させて得ることができる。式(Ia)の化合物は水酸化リチウムで加水分解することにより式(Ib)の化合物(式(I)でR1が水素原子の化合物)が得られる。
【0009】
本発明のPG誘導体は、塩であってもあるいはカルボキシル基が炭素原子数1〜6のアルキル基でエステル化されたものであってもよい。塩としては生理学的に許容しうる塩である。例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、シクロペンチルアミン、ベンジルアミン、ピペリジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノメチルモノエタノールアミン、トロメタミン、リジン、テトラアルキルアンモニウム等のアンモニウム塩が例示される。エステルとしては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル等の低級アルキルエステルが好ましいエステルとして例示される。
【0010】
本発明化合物は、経口的にまたは静脈内もしくは直腸内などの非経口的に投与される。経口投与の剤型としては、例えば錠剤、顆粒剤、カプセル剤などの固形製剤、溶液剤、脂肪乳剤、リポソ−ム懸濁剤などの液体製剤を用いることができる。静脈内投与の製剤としては、水性または非水性溶液剤、乳化剤、懸濁剤、使用直前に注射用溶媒に溶解して使用する固形製剤等を用いることができる。また、直腸内投与の製剤としては坐剤、膣内投与の製剤としてはペッサリ等の剤型を用いることができる。
本発明化合物は,α,β,もしくはγ−シクロデキストリンまたはメチル化シクロデキストリン等と包接化合物を形成させて製剤化することができる。
本発明化合物の臨床投与量は、適用される患者の症状、体重、年令、性別等を考慮して適宜決定される。通常成人1人当たり1日投与量は、静脈内投与または直腸内投与の場合は0.05〜60μg、経口投与の場合は1〜600μgであり、これを1回あるいは数回に分けて投与する。
【0011】
【発明の効果】
本発明化合物は、血小板凝集抑制作用が強く、また、腎血管拡張作用および冠血管拡張作用の選択性が、全身末梢血管拡張作用のそれに対して高く、作用持続時間が長い。さらに、本発明化合物は、優れた糸球体濾過促進作用及び利尿作用を示したことから、腎機能促進作用を有すると考えられる。
従って、本発明化合物は腎炎、腎不全などの各種腎疾患及び、虚血性心疾患(狭心症)、心不全、高血圧などの循環器疾患に対して有用である。
【0012】
【試験例】
試験例1[ヒト血小板凝集抑制試験]
ヒトより採血し、この血液9容を直ちに1容の3.8%クエン酸ナトリウム水溶液と混合した。室温下に、180×gで15分間遠心分離し、上層より多血小板血漿(PRP)を得た。
血小板凝集の測定はBornの方法(Nature,第194巻,第927ページ,1962年)に準じて行なった。PRP 100μlにエタノールに溶解した各種濃度の被検薬物溶液5μlを加え、37℃、1000rpm攪拌下、1分間インキュベートした後5μlの凝集惹起剤[ADP(最終濃度4.5〜12.5μM)]を添加した。これにより惹起した血小板凝集を、血小板凝集計(アグリゴメーター)により最大凝集率(血小板の凝集を惹起してから5分以内の光透過度の最大変化)として求めた。
被検薬物の凝集抑制率を、被検薬物溶液のかわりにエタノールを用いた場合の最大凝集率に対する被検薬物の最大凝集率から算出し、その用量反応曲線からIC50値を求め、同時に測定して得たPGE1のIC50値に対する相対値を凝集抑制活性とした。結果を表1に示す。
なお、化合物1は後記実施例1において製造したものであり、対照薬Aは次の構造を有する化合物である(以下の試験例において同じ)。
【0013】
表1
被験薬物 凝集抑制活性
PGE1 1
対照薬A 9.7
化合物1 28
【0014】
【化7】
【0015】
試験例2[腎血管拡張作用及び降圧作用]
雌雄ビーグル犬(7〜11kg,1群4匹)をペントバルビタールナトリウム(30mg/Kg i.v.)で麻酔し、血圧は大腿動脈より逆行性に挿入したカニューレから圧トランスデューサー(TP−400T 日本光電)を介して、歪圧力用アンプ(AP−630G 日本光電)に導いて測定した。心拍数は動脈波をトリガーパルスとして瞬時心拍計(AT−600G 日本光電)により測定した。左側復壁を切開し、左腎動脈に電磁血流計のプローブを装着し、これを電磁血流計(MFV−2100 日本光電)に接続し、各薬物投与により起こる反応のピーク時の腎血流量を測定した。測定方法はTsuchidaら,Arzneim.−Forsch.,第36巻,第1745ページ,1986年記載の方法に従った。なお、各薬物はエタノールにて溶解し、PGE1は300〜3000pmol/kg、対照薬Aは10〜3000pmol/Kg、本発明化合物は3〜1000pmol/Kgを大腿静脈内投与した。投与容量は各1μl/Kgとした。
各薬物の腎血流量増加作用または降圧作用は、腎血流量を15%増加させる用量または血圧を5%下降させる用量とし、これを対照薬Aを1とする効力比で示した。 結果を表2に示す。
【0016】
【0017】
【実施例】
以下、実施例および試験例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
実施例
(3−チア−9−デオキシ−9β−クロロ−13,14−ジデヒドロ−16,17,18,19,20−ペンタノル−15−シクロヘキシル−PGF2の製造注)化合物の命名中、「16,17,18,19,20−ペンタノル」の「ノル」とは、その位置の炭素鎖がないことを意味する(16〜20位の炭素鎖がないことを意味する。)。
【0018】
【化8】
【0019】
(1)(3S)−3−(t−ブチルジメチルシロキシ)−3−シクロヘキシルプロパ−1−イン(3.61g)をベンゼン28.8mlに溶解し、0℃でn−ブチルリチウム(1.95M、ヘキサン溶液、6.4ml)を加え、同温度で30分間攪拌した。この溶液に0℃でジエチルアルミニウムクロリド(0.97M,ヘキサン溶液、14.8ml)を加え、室温まで昇温後30分間攪拌した。
この溶液に室温で(4R)−2−(N,N−ジエチルアミノ)メチル−4−(t−ブチルジメチルシロキシ)ペント−2−エン−1−オン(0.25M,ヘキサン溶液、38.4ml)を加え、15分間攪拌した。
反応液をヘキサン(100ml)−飽和塩化アンモニウム水溶液(100ml)−塩酸水溶液(3M,30ml)の混合液に攪拌しながら注いだ後、有機層を分離し、飽和重曹水溶液(50ml)で洗浄した。得られた有機層の乾燥、濃縮して得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(展開溶媒;ヘキサン−エーテル=10:1)で精製して(3R,4R)−2−メチレン−3−[(3’S)−3’−(t−ブチルジメチルシロキシ)−3’−シクロヘキシルプロパ−1’−イニル]−4−(t−ブチルジメチルシロキシ)シクロペンタン−1−オン3.69gを得た。この化合物の分析値を次に示す。
【0020】
1H−NMR(CDCl3,300MHz)δppm:
0.07,0.08 and 0.12(3s,12H),0.88(s,18H),0.92−1.92(m,11H),2.32(dd,J=7.4Hz,17.8Hz,1H),2.71(dd,J=6.5Hz,17.8Hz,1H),3.48−3.58(m,1H),4.11(dd,J=1.4Hz,6.2Hz,1H),4.20−4.32(m,1H),5.55(d,J=2.6Hz,1H),6.13(d,J=3.0Hz,1H)。
IR(neat):
2930,2850,1735,1640,1470,1380,1255,1105,830,770cm−1。
【0021】
(2)(Z)−1−ヨード−3−(1−エトキシエチルオキシ)−1−プロペン(1.72g,6.42mmol)のエーテル(12.8ml)溶液に、−78℃でt−ブチルリチウムのペンタン溶液(7.55ml,1.7M,12.84mmol)を滴下し、40分間攪拌した後、続いて(2−チエニル)Cu(CN)Liのテトラヒドロフラン溶液(33.4ml,0.25M,8.35mmol)を加えた。−78℃で10分間攪拌した後、(1)で得た化合物(2.04g,4.28mmol)のエーテル溶液(20ml)を滴下した。攪拌しながら、約1時間かけて室温に昇温した後、反応液をヘキサン(100ml)−飽和塩化アンモニウム水溶液(100ml)の混合液中に攪拌しながら注いだ。有機層を分離し,水層をヘキサン(50ml)で抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、続いて濾過した。濾液を減圧下濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(展開溶媒;ヘキサン:エーテル=6:1)により精製し、2−デカルボキシ−2,3,16,17,18,19,20−ヘプタノル−4−(1−エトキシエチルオキシ)−15−シクロヘキシル−13,14−ジデヒドロ−PGE2 11,15−ビス(t−ブチルジメチルシリル エーテル)2.17gを得た。この化合物の分析値を次に示す。
【0022】
1H−NMR(CDCl3,300MHz)δppm:
0.07,0.09,0.10 and 0.12(4s,12H),0.89(s,18H),1.20(t,J=7.0Hz,3H),1.31(d,J=4.7Hz,3H),0.93〜1.91(m,11H),2.14(dd,J=7.3Hz,18.3Hz,1H),2.20〜2.36(m,1H),2.40〜2.58(m,2H),2.60〜2.77(m,2H),3.42〜3.70(m,2H),4.02〜4.21(m,3H),4.23〜4.32(m,1H),4.71(q,J=4.7Hz,1H),5.48〜5.72(m,2H)。
【0023】
(3)(2)で得た化合物(1.42g,2.29mmol)のテトラヒドロフラン(20ml)溶液を−78℃に冷却し、L−Selectride(2.97ml,1Mのテトラヒドロフラン溶液,2.97mmol)を滴下した。−78℃で1時間攪拌した後、約1時間かけて、室温に昇温した。これに、35%過酸化水素水溶液(3ml)を滴下した後、室温で15分間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)とエーテル(50ml)を加えた後、有機層を分離し、水層をエーテル(30ml)で抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した後、濾過した。濾液を減圧下、濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン:エーテル=2:1)により精製して2−デカルボキシ−2,3,16,17,18,19,20−ヘプタノル−4−(1−エトキシエチルオキシ)−15−シクロヘキシル−13,14−ジデヒドロ−PGF2α 11,15−ビス(t−ブチルジメチルシリル エーテル)870mgを得た。この化合物の分析値を次に示す。
【0024】
1H−NMR(CDCl3,300MHz)δppm:
0.08 and 0.10(2s,12H),0.88 and 0.89(2s,18H),1.00〜1.50(m,6H),1.21(t,J=7.1Hz,3H),1.32(d,J=5.3Hz,3H),1.50〜1.92(m,7H),2.00〜2.60(m,4H),3.01(t,J=7.8Hz,1H),3.40〜3.73(m,2H),3.92〜4.30(m,5H),4.65〜4.82(m,1H),5.50〜5.73(m,2H)。
【0025】
(4)(3)で得た化合物(727mg,1.19mmol)のi−PrOH(6ml)とエーテル(6ml)溶液に、ピリジウム p−トルエンスルホネート(15mg,0.06mmol)を加え、室温で10時間攪拌した。エーテル(20ml)続いて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)を加えた後、有機層を分離し、水層をエーテル(2×10ml)で抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過した。濾液を減圧下濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、2−デカルボキシ−2,3,16,17,18,19,20−ヘプタノル−4−ヒドロキシ−15−シクロヘキシル−13,14−ジデヒドロ−PGF2α 11,15−ビス(t−ブチルジメチルシリル エーテル)550mgを得た。この化合物の分析値を次に示す。
【0026】
1H−NMR(CDCl3,300MHz)δppm:
0.08,0.09,0.10 and 0.11(4s,12H),0.89 and 0.90(2s,18H),0.93〜1.32(m,5H),1.38〜1.52(m,1H),1.61〜1.93(m,7H),1.95〜2.07(m,1H),2.20〜2.30(m,1H),2.41〜2.75(m,4H),3.88(dd,J=6.2Hz,12.0Hz,1H),4.04〜4.13(m,2H),4.26〜4.33(m,1H),4.38(dd,J=8.8Hz,12.0Hz,1H),5.59(dt,J=5.0Hz,10.8Hz,1H),5.77〜5.88(m,1H)。
13C−NMR(CDCl3,75MHz)δppm:
132.2,129.3,85.5,83.7,80.5,83.7,73.9,67.9,57.4,53.1,45.0,44.9,42.8,28.7,27.0,26.5,26.0,25.8,18.3,17.9,−4.43,−4.77,−4.99
[α]D 36.0 −5.00°(c=1.786,クロロホルム)。
【0027】
(5)(4)で得た化合物(553.1mg,0.997mmol)とジイソプロピルエチルアミン(1.6ml)の塩化メチレン溶液(1.6ml)に氷冷攪拌下、p−トルエンスルホン酸クロリド(931mg,4.89mmol)を室温にて20時間攪拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、ヘキサンで抽出し、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。濾過して得られた濾液を減圧下濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン:エーテル=5:1)により精製して2−デカルボキシ−2,3,16,17,18,19,20−ヘプタノル−4−クロロ−15−シクロヘキシル−13,14−ジデヒドロ−PGF2α(480.6mg)を得た。
ソデウムハイドライド(137.6mg,2.58mmol)のTHF(4.0ml)溶液に氷冷攪拌下、メルカプト酢酸メチルエステル(0.16ml、1.72mmol)を加え室温にて30分間攪拌した。これに、氷冷攪拌下、上記方法で得られた2−デカルボキシ−2,3,16,17,18,19,20−ヘプタノル−4−クロロ−15−シクロヘキシル−13,14−ジデヒドロ−PGF2α(476.6mg,0.86mmol)のTHF(4.6ml)溶液を滴下し、室温にて3時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、ヘキサンで抽出し、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。濾過して得られた濾液を減圧下濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン:エーテル=5:1)により精製して3−チア−13、14−ジデヒドロ−16、17、18、19、20−ペンタノル−15−シクロヘキシル−PGF2α (t−ブチルジメチルシリルエーテル)(297mg)を得た。この化合物の分析値を次に示す。
【0028】
1H−NMR(CDCl3,300MHz)δppm:
0.07,0.09,0.10and0.11(4s,12H),0.88and0.89(2s,18H),0.93−1.30(m,5H),1.38−1.52(m,1H),1.61−1.90(m,7H),1.98−2.09(m,1H),2.28−2.99(m,2H),2.50−2.58(m,1H),2.68(d,J=8.8Hz,1H),3.22(s,2H),3.32(dd,J=7.6Hz,13.1Hz,1H),3.40(dd,J=8.0Hz,13.1Hz,1H),3.73(s,3H),4.04−4.12(m,2H),4.23−4.29(m,1H),5.44−5.74(m,2H)。
IR(neat):
3500,2940,2860,2225,1740,1440,1225,1100,1008,940,840,780cm−1。
【0029】
(6)(5)で得た化合物(278mg,0.44mmol)のピリジン(2.3ml)溶液に、氷冷攪拌下、メタンスルホニルクロリド(0.55μl,0.71mmol),を加え、室温に昇温した後、5時間攪拌した。反応液を、テトラブチルアンモニウムクロライド(2.0g)のトルエン溶液(2.3ml)に室温攪拌下滴下し、50℃に昇温しさらに4時間攪拌する。反応液を氷水にあけ、エーテルにて抽出した。抽出液を飽和食塩水にて洗浄の後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、濾過した。濾液を減圧下濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチルエステル=4:1)により精製して3−チア−9−デオキシ−9β−クロロ−13,14−ジデヒドロ−16,17,18,19,20−ペンタノル−15−シクロヘキシル−PGF2 メチルエステル 11、15−ビス(t−ブチルジメチルシリルエーテル)246.5mgを得た。この化合物の分析値を次に示す。
【0030】
1H−NMR(CDCl3,300MHz)δppm:
0.82−1.44(m,5H),1.45−1.98(m,6H),2.08−2.61(m,8H),3.17(s,2H),3.23−3.40(m,2H),3.70(s,3H),3.80−4.52(m,3H),5.32−5.84(m,2H)。
IR(neat):
3400,2925,2860,2670,2240,1725,1440,1278,1135,1010,890cm−1。
【0031】
(7)(6)で得られた化合物(227.4mg,0.353mmol)のTHF溶液(10ml)に、氷冷攪拌下、フッ化水素酸水溶液(3.2ml)−THF(3.5ml)の混合溶液を加え、室温に昇温しながら4時間攪拌した。反応液を酢酸エチル(30ml)−飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)中に攪拌しながら注いだ後、有機層を分離し、水層を酢酸エチル(20ml)で抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した後、濾過した。濾液を減圧下濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチルエステル:メタノール=50:1)により精製して3−チア−9−デオキシ−9β−クロロ−13,14−ジデヒドロ−16,17,18,19,20−ペンタノル−15−シクロヘキシル−PGF2 メチルエステル154.8mgを得た。この化合物の分析値を次に示す。
【0032】
1H−NMR(CDCl3,300MHz)δppm:
0.82−1.44(m,5H),1.45−1.98(m,6H),2.08−2.61(m,8H),3.17(s,2H),3.23〜3.40(m,2H),3.70(s,3H),3.80−4.52(m,3H),5.32−5.84(m,2H)。
IR(neat):
3400,2925,2860,2670,2240,1725,1440,1278,1135,1010,890cm−1。
【0033】
(8)(7)で得た化合物(87.5mg,10.21mmol)のメタノール(4.0ml)−水(0.22ml)溶液に、水酸化リチウム・1水和物(44.1mg,1.05mmol)を加え、室温で4時間攪拌した。酢酸エチル(18ml)を加えた後、0.1N塩酸水溶液を少しずつ加えてpH6.5にした。これに、硫酸アンモニウム(5g)を加えた後、酢酸エチル(2×18ml)で抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した後、濾過した。濾液を減圧下濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル:メタノール=3:1)により精製して標記化合物61.3mgを得た。この化合物の分析値を次に示す。
【0034】
1H−NMR(CDCl3,300MHz)δppm:
0.98−1.35(m,5H),1.45−1.52(m,1H),1.63−1.92(m,5H),2.02−2.60(m,9H),3.15−3.23(m,2H),3.24−3.34(m,1H),3.41−3.50(m,1H),3.98−4.07(m,1H),4.20−4.29(m,1H),4.30−4.39(m,1H),5.51−5.80(m,2H)。
13C−NMR(CDCl3,75MHz)δppm:
174.4,129.7,127.2,85.8,82.7,76.0,67.3,58.5,54.7,44.1,43.6,32.4,28.9,28.7,28.4,28.3,26.4,25.8。
【産業上の利用分野】
本発明は新規なプロスタグランジン(以下PGと略称する)誘導体に関する。さらに詳しくは、優れた腎疾患改善作用、虚血性心疾患改善作用、心不全改善作用または眼圧下降作用を有するPG誘導体および薬剤としてのその使用に関する。
【0002】
【従来の技術】
PGおよびその誘導体は微量で種々の重要な生理作用を発揮することから、医薬への応用を意図して天然PG及び夥しい数のその誘導体について、それらの合成と生物活性の検討が行なわれてきた。これらの検討結果は、多数の文献をはじめ、例えば特開昭52−100446号公報、特表平2−502009号公報(WO89/00559号)などで報告されている。
PGおよびその誘導体の生理作用としては、血管拡張作用、起炎作用、血小板凝集作用、子宮筋収縮作用、腸管収縮作用、眼圧下降作用等が挙げられる。しかしPG誘導体は種々の作用を有するため、医薬としての使用に問題がある。例えば、1つの作用を薬効としてPG誘導体を投与した場合、同時に他の作用をも有するため、これら他の作用が副作用的に発現することが多い。そこで、主薬効として期待される作用の発現性を高める必要がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は強力な腎疾患改善作用、虚血性心疾患改善作用、心不全改善作用または眼圧下降作用を有する新規なPG誘導体の提供を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、式(I)
【0005】
【化4】
(Xはハロゲン原子、R1は水素原子あるいは炭素原子数1〜6、好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基、R2は炭素原子数3〜10、好ましくは炭素原子数5〜7のシクロアルキル基、炭素原子数4〜11、好ましくは炭素原子数5〜8のシクロアルキルメチル基、炭素原子数5〜12、好ましくは炭素原子数5〜9のシクロアルキルエチル基を示す。)で表されるPG誘導体またはその塩を提供する。本発明はさらに、上記PG誘導体またはその塩を有効成分として含有する腎疾患改善剤、または虚血性心疾患改善剤および心不全改善剤を提供する。
本発明の式(I)の化合物は、例えば以下に挙げる方法により製造できる。
【0006】
【化5】
(式中、TBSはt−ブチルジメチルシリル基を示し、Etはエチル基を示し、R2は式(I)と同じ意味を示し、EEはエトキシエチル基を示す)。
【0007】
【化6】
(式中、R3は式(I)のR1から水素原子を除いたものと同じ意味を示す)。
【0008】
すなわち,式(II)の化合物に式(III)の化合物を反応させてPGのω−側鎖を導入し式(IV)の化合物とする。一方、(Z)−ヨ−ド−3−(1−エトキシエチルオキシ)−1−プロペンにt−ブチルリチウムと2−チエニルシアノキュ−プレイトを反応させた化合物に先の式(IV)の化合物を反応させてPGのα−側鎖を導入し式(V)の化合物とする。次にこれをリチウムトリ−sec−ブチルボロハイドライドにて立体選択的に還元し、式(VI)の化合物とした後にエトキシエチル基を脱保護し式(VII)の化合物とする。式(VII)の化合物の1級水酸基をp−トルエンスルホニルクロライドでトシル化した後、これをナトリウムハイドライドを用いメルカプト酢酸エステルを反応させると式(VIII)の化合物が得られる。ついで、式(VIII)の化合物の水酸基をメタンスルスルホニルクロライドでメシル化した後、テトラn−ブチルアンモニウムクロライドと反応させクロル置換体とし、更にフッ化水素酸で保護基をはずし式(Ia)の化合物とする。ここで、ブロム化、フッ素化も通常の条件にて行いブロム、フルオロ置換体とすることができる。ブロム化は例えばアセトニトリル中四臭化炭素を用い、トリフェニルフォスフィン、ピリジン存在下反応することにより、またフッ素化は例えば、塩化メチレン中、ジメチルアミノサルファ−トフロリド(DAST)を反応させて得ることができる。式(Ia)の化合物は水酸化リチウムで加水分解することにより式(Ib)の化合物(式(I)でR1が水素原子の化合物)が得られる。
【0009】
本発明のPG誘導体は、塩であってもあるいはカルボキシル基が炭素原子数1〜6のアルキル基でエステル化されたものであってもよい。塩としては生理学的に許容しうる塩である。例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、シクロペンチルアミン、ベンジルアミン、ピペリジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノメチルモノエタノールアミン、トロメタミン、リジン、テトラアルキルアンモニウム等のアンモニウム塩が例示される。エステルとしては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル等の低級アルキルエステルが好ましいエステルとして例示される。
【0010】
本発明化合物は、経口的にまたは静脈内もしくは直腸内などの非経口的に投与される。経口投与の剤型としては、例えば錠剤、顆粒剤、カプセル剤などの固形製剤、溶液剤、脂肪乳剤、リポソ−ム懸濁剤などの液体製剤を用いることができる。静脈内投与の製剤としては、水性または非水性溶液剤、乳化剤、懸濁剤、使用直前に注射用溶媒に溶解して使用する固形製剤等を用いることができる。また、直腸内投与の製剤としては坐剤、膣内投与の製剤としてはペッサリ等の剤型を用いることができる。
本発明化合物は,α,β,もしくはγ−シクロデキストリンまたはメチル化シクロデキストリン等と包接化合物を形成させて製剤化することができる。
本発明化合物の臨床投与量は、適用される患者の症状、体重、年令、性別等を考慮して適宜決定される。通常成人1人当たり1日投与量は、静脈内投与または直腸内投与の場合は0.05〜60μg、経口投与の場合は1〜600μgであり、これを1回あるいは数回に分けて投与する。
【0011】
【発明の効果】
本発明化合物は、血小板凝集抑制作用が強く、また、腎血管拡張作用および冠血管拡張作用の選択性が、全身末梢血管拡張作用のそれに対して高く、作用持続時間が長い。さらに、本発明化合物は、優れた糸球体濾過促進作用及び利尿作用を示したことから、腎機能促進作用を有すると考えられる。
従って、本発明化合物は腎炎、腎不全などの各種腎疾患及び、虚血性心疾患(狭心症)、心不全、高血圧などの循環器疾患に対して有用である。
【0012】
【試験例】
試験例1[ヒト血小板凝集抑制試験]
ヒトより採血し、この血液9容を直ちに1容の3.8%クエン酸ナトリウム水溶液と混合した。室温下に、180×gで15分間遠心分離し、上層より多血小板血漿(PRP)を得た。
血小板凝集の測定はBornの方法(Nature,第194巻,第927ページ,1962年)に準じて行なった。PRP 100μlにエタノールに溶解した各種濃度の被検薬物溶液5μlを加え、37℃、1000rpm攪拌下、1分間インキュベートした後5μlの凝集惹起剤[ADP(最終濃度4.5〜12.5μM)]を添加した。これにより惹起した血小板凝集を、血小板凝集計(アグリゴメーター)により最大凝集率(血小板の凝集を惹起してから5分以内の光透過度の最大変化)として求めた。
被検薬物の凝集抑制率を、被検薬物溶液のかわりにエタノールを用いた場合の最大凝集率に対する被検薬物の最大凝集率から算出し、その用量反応曲線からIC50値を求め、同時に測定して得たPGE1のIC50値に対する相対値を凝集抑制活性とした。結果を表1に示す。
なお、化合物1は後記実施例1において製造したものであり、対照薬Aは次の構造を有する化合物である(以下の試験例において同じ)。
【0013】
表1
被験薬物 凝集抑制活性
PGE1 1
対照薬A 9.7
化合物1 28
【0014】
【化7】
【0015】
試験例2[腎血管拡張作用及び降圧作用]
雌雄ビーグル犬(7〜11kg,1群4匹)をペントバルビタールナトリウム(30mg/Kg i.v.)で麻酔し、血圧は大腿動脈より逆行性に挿入したカニューレから圧トランスデューサー(TP−400T 日本光電)を介して、歪圧力用アンプ(AP−630G 日本光電)に導いて測定した。心拍数は動脈波をトリガーパルスとして瞬時心拍計(AT−600G 日本光電)により測定した。左側復壁を切開し、左腎動脈に電磁血流計のプローブを装着し、これを電磁血流計(MFV−2100 日本光電)に接続し、各薬物投与により起こる反応のピーク時の腎血流量を測定した。測定方法はTsuchidaら,Arzneim.−Forsch.,第36巻,第1745ページ,1986年記載の方法に従った。なお、各薬物はエタノールにて溶解し、PGE1は300〜3000pmol/kg、対照薬Aは10〜3000pmol/Kg、本発明化合物は3〜1000pmol/Kgを大腿静脈内投与した。投与容量は各1μl/Kgとした。
各薬物の腎血流量増加作用または降圧作用は、腎血流量を15%増加させる用量または血圧を5%下降させる用量とし、これを対照薬Aを1とする効力比で示した。 結果を表2に示す。
【0016】
【0017】
【実施例】
以下、実施例および試験例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
実施例
(3−チア−9−デオキシ−9β−クロロ−13,14−ジデヒドロ−16,17,18,19,20−ペンタノル−15−シクロヘキシル−PGF2の製造注)化合物の命名中、「16,17,18,19,20−ペンタノル」の「ノル」とは、その位置の炭素鎖がないことを意味する(16〜20位の炭素鎖がないことを意味する。)。
【0018】
【化8】
【0019】
(1)(3S)−3−(t−ブチルジメチルシロキシ)−3−シクロヘキシルプロパ−1−イン(3.61g)をベンゼン28.8mlに溶解し、0℃でn−ブチルリチウム(1.95M、ヘキサン溶液、6.4ml)を加え、同温度で30分間攪拌した。この溶液に0℃でジエチルアルミニウムクロリド(0.97M,ヘキサン溶液、14.8ml)を加え、室温まで昇温後30分間攪拌した。
この溶液に室温で(4R)−2−(N,N−ジエチルアミノ)メチル−4−(t−ブチルジメチルシロキシ)ペント−2−エン−1−オン(0.25M,ヘキサン溶液、38.4ml)を加え、15分間攪拌した。
反応液をヘキサン(100ml)−飽和塩化アンモニウム水溶液(100ml)−塩酸水溶液(3M,30ml)の混合液に攪拌しながら注いだ後、有機層を分離し、飽和重曹水溶液(50ml)で洗浄した。得られた有機層の乾燥、濃縮して得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(展開溶媒;ヘキサン−エーテル=10:1)で精製して(3R,4R)−2−メチレン−3−[(3’S)−3’−(t−ブチルジメチルシロキシ)−3’−シクロヘキシルプロパ−1’−イニル]−4−(t−ブチルジメチルシロキシ)シクロペンタン−1−オン3.69gを得た。この化合物の分析値を次に示す。
【0020】
1H−NMR(CDCl3,300MHz)δppm:
0.07,0.08 and 0.12(3s,12H),0.88(s,18H),0.92−1.92(m,11H),2.32(dd,J=7.4Hz,17.8Hz,1H),2.71(dd,J=6.5Hz,17.8Hz,1H),3.48−3.58(m,1H),4.11(dd,J=1.4Hz,6.2Hz,1H),4.20−4.32(m,1H),5.55(d,J=2.6Hz,1H),6.13(d,J=3.0Hz,1H)。
IR(neat):
2930,2850,1735,1640,1470,1380,1255,1105,830,770cm−1。
【0021】
(2)(Z)−1−ヨード−3−(1−エトキシエチルオキシ)−1−プロペン(1.72g,6.42mmol)のエーテル(12.8ml)溶液に、−78℃でt−ブチルリチウムのペンタン溶液(7.55ml,1.7M,12.84mmol)を滴下し、40分間攪拌した後、続いて(2−チエニル)Cu(CN)Liのテトラヒドロフラン溶液(33.4ml,0.25M,8.35mmol)を加えた。−78℃で10分間攪拌した後、(1)で得た化合物(2.04g,4.28mmol)のエーテル溶液(20ml)を滴下した。攪拌しながら、約1時間かけて室温に昇温した後、反応液をヘキサン(100ml)−飽和塩化アンモニウム水溶液(100ml)の混合液中に攪拌しながら注いだ。有機層を分離し,水層をヘキサン(50ml)で抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、続いて濾過した。濾液を減圧下濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(展開溶媒;ヘキサン:エーテル=6:1)により精製し、2−デカルボキシ−2,3,16,17,18,19,20−ヘプタノル−4−(1−エトキシエチルオキシ)−15−シクロヘキシル−13,14−ジデヒドロ−PGE2 11,15−ビス(t−ブチルジメチルシリル エーテル)2.17gを得た。この化合物の分析値を次に示す。
【0022】
1H−NMR(CDCl3,300MHz)δppm:
0.07,0.09,0.10 and 0.12(4s,12H),0.89(s,18H),1.20(t,J=7.0Hz,3H),1.31(d,J=4.7Hz,3H),0.93〜1.91(m,11H),2.14(dd,J=7.3Hz,18.3Hz,1H),2.20〜2.36(m,1H),2.40〜2.58(m,2H),2.60〜2.77(m,2H),3.42〜3.70(m,2H),4.02〜4.21(m,3H),4.23〜4.32(m,1H),4.71(q,J=4.7Hz,1H),5.48〜5.72(m,2H)。
【0023】
(3)(2)で得た化合物(1.42g,2.29mmol)のテトラヒドロフラン(20ml)溶液を−78℃に冷却し、L−Selectride(2.97ml,1Mのテトラヒドロフラン溶液,2.97mmol)を滴下した。−78℃で1時間攪拌した後、約1時間かけて、室温に昇温した。これに、35%過酸化水素水溶液(3ml)を滴下した後、室温で15分間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)とエーテル(50ml)を加えた後、有機層を分離し、水層をエーテル(30ml)で抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した後、濾過した。濾液を減圧下、濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン:エーテル=2:1)により精製して2−デカルボキシ−2,3,16,17,18,19,20−ヘプタノル−4−(1−エトキシエチルオキシ)−15−シクロヘキシル−13,14−ジデヒドロ−PGF2α 11,15−ビス(t−ブチルジメチルシリル エーテル)870mgを得た。この化合物の分析値を次に示す。
【0024】
1H−NMR(CDCl3,300MHz)δppm:
0.08 and 0.10(2s,12H),0.88 and 0.89(2s,18H),1.00〜1.50(m,6H),1.21(t,J=7.1Hz,3H),1.32(d,J=5.3Hz,3H),1.50〜1.92(m,7H),2.00〜2.60(m,4H),3.01(t,J=7.8Hz,1H),3.40〜3.73(m,2H),3.92〜4.30(m,5H),4.65〜4.82(m,1H),5.50〜5.73(m,2H)。
【0025】
(4)(3)で得た化合物(727mg,1.19mmol)のi−PrOH(6ml)とエーテル(6ml)溶液に、ピリジウム p−トルエンスルホネート(15mg,0.06mmol)を加え、室温で10時間攪拌した。エーテル(20ml)続いて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)を加えた後、有機層を分離し、水層をエーテル(2×10ml)で抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過した。濾液を減圧下濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、2−デカルボキシ−2,3,16,17,18,19,20−ヘプタノル−4−ヒドロキシ−15−シクロヘキシル−13,14−ジデヒドロ−PGF2α 11,15−ビス(t−ブチルジメチルシリル エーテル)550mgを得た。この化合物の分析値を次に示す。
【0026】
1H−NMR(CDCl3,300MHz)δppm:
0.08,0.09,0.10 and 0.11(4s,12H),0.89 and 0.90(2s,18H),0.93〜1.32(m,5H),1.38〜1.52(m,1H),1.61〜1.93(m,7H),1.95〜2.07(m,1H),2.20〜2.30(m,1H),2.41〜2.75(m,4H),3.88(dd,J=6.2Hz,12.0Hz,1H),4.04〜4.13(m,2H),4.26〜4.33(m,1H),4.38(dd,J=8.8Hz,12.0Hz,1H),5.59(dt,J=5.0Hz,10.8Hz,1H),5.77〜5.88(m,1H)。
13C−NMR(CDCl3,75MHz)δppm:
132.2,129.3,85.5,83.7,80.5,83.7,73.9,67.9,57.4,53.1,45.0,44.9,42.8,28.7,27.0,26.5,26.0,25.8,18.3,17.9,−4.43,−4.77,−4.99
[α]D 36.0 −5.00°(c=1.786,クロロホルム)。
【0027】
(5)(4)で得た化合物(553.1mg,0.997mmol)とジイソプロピルエチルアミン(1.6ml)の塩化メチレン溶液(1.6ml)に氷冷攪拌下、p−トルエンスルホン酸クロリド(931mg,4.89mmol)を室温にて20時間攪拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、ヘキサンで抽出し、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。濾過して得られた濾液を減圧下濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン:エーテル=5:1)により精製して2−デカルボキシ−2,3,16,17,18,19,20−ヘプタノル−4−クロロ−15−シクロヘキシル−13,14−ジデヒドロ−PGF2α(480.6mg)を得た。
ソデウムハイドライド(137.6mg,2.58mmol)のTHF(4.0ml)溶液に氷冷攪拌下、メルカプト酢酸メチルエステル(0.16ml、1.72mmol)を加え室温にて30分間攪拌した。これに、氷冷攪拌下、上記方法で得られた2−デカルボキシ−2,3,16,17,18,19,20−ヘプタノル−4−クロロ−15−シクロヘキシル−13,14−ジデヒドロ−PGF2α(476.6mg,0.86mmol)のTHF(4.6ml)溶液を滴下し、室温にて3時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、ヘキサンで抽出し、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。濾過して得られた濾液を減圧下濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン:エーテル=5:1)により精製して3−チア−13、14−ジデヒドロ−16、17、18、19、20−ペンタノル−15−シクロヘキシル−PGF2α (t−ブチルジメチルシリルエーテル)(297mg)を得た。この化合物の分析値を次に示す。
【0028】
1H−NMR(CDCl3,300MHz)δppm:
0.07,0.09,0.10and0.11(4s,12H),0.88and0.89(2s,18H),0.93−1.30(m,5H),1.38−1.52(m,1H),1.61−1.90(m,7H),1.98−2.09(m,1H),2.28−2.99(m,2H),2.50−2.58(m,1H),2.68(d,J=8.8Hz,1H),3.22(s,2H),3.32(dd,J=7.6Hz,13.1Hz,1H),3.40(dd,J=8.0Hz,13.1Hz,1H),3.73(s,3H),4.04−4.12(m,2H),4.23−4.29(m,1H),5.44−5.74(m,2H)。
IR(neat):
3500,2940,2860,2225,1740,1440,1225,1100,1008,940,840,780cm−1。
【0029】
(6)(5)で得た化合物(278mg,0.44mmol)のピリジン(2.3ml)溶液に、氷冷攪拌下、メタンスルホニルクロリド(0.55μl,0.71mmol),を加え、室温に昇温した後、5時間攪拌した。反応液を、テトラブチルアンモニウムクロライド(2.0g)のトルエン溶液(2.3ml)に室温攪拌下滴下し、50℃に昇温しさらに4時間攪拌する。反応液を氷水にあけ、エーテルにて抽出した。抽出液を飽和食塩水にて洗浄の後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、濾過した。濾液を減圧下濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチルエステル=4:1)により精製して3−チア−9−デオキシ−9β−クロロ−13,14−ジデヒドロ−16,17,18,19,20−ペンタノル−15−シクロヘキシル−PGF2 メチルエステル 11、15−ビス(t−ブチルジメチルシリルエーテル)246.5mgを得た。この化合物の分析値を次に示す。
【0030】
1H−NMR(CDCl3,300MHz)δppm:
0.82−1.44(m,5H),1.45−1.98(m,6H),2.08−2.61(m,8H),3.17(s,2H),3.23−3.40(m,2H),3.70(s,3H),3.80−4.52(m,3H),5.32−5.84(m,2H)。
IR(neat):
3400,2925,2860,2670,2240,1725,1440,1278,1135,1010,890cm−1。
【0031】
(7)(6)で得られた化合物(227.4mg,0.353mmol)のTHF溶液(10ml)に、氷冷攪拌下、フッ化水素酸水溶液(3.2ml)−THF(3.5ml)の混合溶液を加え、室温に昇温しながら4時間攪拌した。反応液を酢酸エチル(30ml)−飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)中に攪拌しながら注いだ後、有機層を分離し、水層を酢酸エチル(20ml)で抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した後、濾過した。濾液を減圧下濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチルエステル:メタノール=50:1)により精製して3−チア−9−デオキシ−9β−クロロ−13,14−ジデヒドロ−16,17,18,19,20−ペンタノル−15−シクロヘキシル−PGF2 メチルエステル154.8mgを得た。この化合物の分析値を次に示す。
【0032】
1H−NMR(CDCl3,300MHz)δppm:
0.82−1.44(m,5H),1.45−1.98(m,6H),2.08−2.61(m,8H),3.17(s,2H),3.23〜3.40(m,2H),3.70(s,3H),3.80−4.52(m,3H),5.32−5.84(m,2H)。
IR(neat):
3400,2925,2860,2670,2240,1725,1440,1278,1135,1010,890cm−1。
【0033】
(8)(7)で得た化合物(87.5mg,10.21mmol)のメタノール(4.0ml)−水(0.22ml)溶液に、水酸化リチウム・1水和物(44.1mg,1.05mmol)を加え、室温で4時間攪拌した。酢酸エチル(18ml)を加えた後、0.1N塩酸水溶液を少しずつ加えてpH6.5にした。これに、硫酸アンモニウム(5g)を加えた後、酢酸エチル(2×18ml)で抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した後、濾過した。濾液を減圧下濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル:メタノール=3:1)により精製して標記化合物61.3mgを得た。この化合物の分析値を次に示す。
【0034】
1H−NMR(CDCl3,300MHz)δppm:
0.98−1.35(m,5H),1.45−1.52(m,1H),1.63−1.92(m,5H),2.02−2.60(m,9H),3.15−3.23(m,2H),3.24−3.34(m,1H),3.41−3.50(m,1H),3.98−4.07(m,1H),4.20−4.29(m,1H),4.30−4.39(m,1H),5.51−5.80(m,2H)。
13C−NMR(CDCl3,75MHz)δppm:
174.4,129.7,127.2,85.8,82.7,76.0,67.3,58.5,54.7,44.1,43.6,32.4,28.9,28.7,28.4,28.3,26.4,25.8。
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