JP3572180B2 - インゴット切断用砥粒分散媒組成物及びインゴット切断用切削液 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インゴット切断用の砥粒分散媒として有用であり、かつ引火性の低い非水溶性分散媒組成物及びインゴット切断用切削液に関する。本発明の分散媒組成物から調整された切削液は、特にワイヤソーまたはバンドソーによるシリコンインゴットの切断に有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来、シリコン単結晶のインゴットを切断するための砥粒分散媒としては、鉱物油を主成分とする非水溶性の切削油が主に用いられている。この分散媒にSiCなどの砥粒を混合・分散させたスラリー状の切削液を、インゴット切断装置の刃の部分に供給しながらインゴットの切断が行われる。切断されたシリコンウエハは、切削により生成する切屑や付着した切削液を除去する洗浄工程を経て後続工程へと供される。一方、切断に用いられた後の切削液は廃棄物として処理される。
【0003】
しかし、鉱物油を主成分とする上記従来の分散媒は引火性の危険物であるため、消防法により貯蔵数量が制限されている。また、上記廃棄物についても取り扱いに注意を要する。
このため、切削液用の分散媒の分野において、非水溶性分散媒の代替品として水溶性の砥粒分散媒が種々提案されている。例えば、特開平8−57847号公報には、有機または無機ベントナイト水溶液にアルカノールアミンと高級脂肪酸とを反応させてなる脂肪酸アミンを均一に混合させた砥粒の分散媒が開示されている。上記公報では、この分散媒によると前記非水溶性分散媒の使用に起因する種々の問題が解決されるとともにウエハの反りなどが改善されると記載されている。
【0004】
インゴット形状物の切断装置としては、一般に内周刃または外周刃切断装置、バンドソー、ワイヤソーなどが使用されている。近年、半導体用シリコン単結晶インゴットの大径化に伴い、比較的大径の、例えば3インチ以上のインゴットの切断にはワイヤソーやバンドソーが多用される傾向にある。これは、上記ワイヤソーやバンドソーを用いると、内周刃または外周刃切断装置に比べてスライス厚さを均一化することができ、切断代が減少するので材料の利用率が高くなり、また一度に多数枚のスライスが可能なので作業効率の向上が図れるなどの理由による。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし従来の水溶性分散媒は、一般に非水溶性分散媒に比べて機械的安定性が低いなどの理由から、この水溶性分散媒に砥粒を分散させた切削液の粘度や密度が切断中に変動しやすい。このため、水溶性分散媒を用いた切削液によると切断が不安定になりやすいという問題がある。また、この切削液によると、分散媒中における砥粒の沈降・堆積が十分に防止されていないため、切削液中の砥粒濃度が加工中に低下するなど変動を起しやすい。さらに、水溶性分散媒を用いた切削液は非水溶性の分散媒を用いた場合に比べて、切断ワイヤやバンドなどの金属製切断部材に対する付着性が劣る。このため、この切削液を用いるとウエハなどのスライス品の反り量が増大する、スライス品の厚さのばらつき(Total Thickness Variation;以下、「TTV」という。)が増すなどの現象が生じる。
【0006】
特に、前述のようにワイヤソーやバンドソーを用いて比較的大径のシリコンインゴットを切断する場合には、水溶性分散媒を用いることによる上記現象が問題となりやすい。例えば、ワイヤソーやバンドソーによる直径6インチのシリコン単結晶の切断において上記水溶性分散媒からなる切削液を用いると、スライス品の中央部が凸状になる、いわゆる「反り」の量が20μmを超える場合がある。このような大きな反りは、シリコンウエハを製造加工する際の障害となるとともに、歩留り低下の原因ともなっている。
【0007】
上記のようにスライス品の大きな反りが発生しやすくなる一因は、切断速度、ワイヤまたはバンドの進行速度や張力などの加工条件にもある。しかし、切削液中の砥粒濃度の変動や、切断ワイヤや切断バンドなどの金属製切断部材に対する切削液の付着性不足によっても、スライス品の反りは増大する。すなわち、切削液に水溶性分散媒を用いたことに起因する砥粒分散性や金属付着性の不足が、スライス品に大きな反りを発生させているものと推察される。
【0008】
本発明の目的は、引火性の低い分散媒組成物であって、この分散媒組成物から調整された切削液の性能に優れたインゴット切断用砥粒分散媒組成物及びインゴット切断用切削液を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、非水溶性分散媒に水分を添加した組成物は、水分を添加しない組成物に比べて、加熱された場合にこの水分が発泡することにより引火性が著しく減少することを見出した。さらに、この組成物をインゴット切断用の砥粒分散媒に用いた切削液が従来の非水溶性分散媒による切削液とほぼ同等の切削性能を示し得る水分添加量を見出して、本発明を完成したのである。
【0010】
すなわち、本発明のインゴット切断用砥粒分散媒組成物は、砥粒分散媒組成物全体を100重量%とした場合、鉱油系潤滑油基油並びに/又はポリαオレフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリオールエステル、及び天然油脂から選ばれる合成系潤滑油基油40〜90重量%と、水分5を超え20重量%以下とを含有し、ノニオン系界面活性剤としてポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む湿潤剤1〜30%重量未満並びに無機及び/又は有機ベントナイトを含有し、且つ、HLB1.5〜12の脂肪酸エステルを含まないことを特徴とする。
【0011】
この組成物は、水分5を超え20重量%以下を含有するので、上述のように加熱時にこの水分が発泡することにより組成物の引火性が抑制され、例えばクリーブランド開放式測定法において引火点を生じない程度の低い引火性とすることができる。また、非水溶性の分散媒からなるので、従来の水溶性分散媒に比べてこの組成物から調整された切削液の切削性能に優れ、例えば従来の非水溶性分散媒からなる切削液とほぼ同等の切削性能を得ることが可能である。
【0012】
本発明の組成物は、保水剤、湿潤剤、防錆剤、非鉄金属防食剤、潤滑油添加剤、消泡剤、無機または有機ベントナイトから選択される一種または二種以上を添加剤として含有することが好ましい。
【0013】
この組成物は、ワイヤソーまたはバンドソーによるシリコンインゴット切断において特に好適に用いられる。この用途において、切削液として従来の水溶性分散媒を用いた場合には上述のようにスライス品の反りが問題となっていたが、本発明によればこの問題が解決されるためである。具体的には、ワイヤソーやバンドソーによる直径6インチのシリコン単結晶の切断において、本発明の組成物からなる切削液を用いると、スライス品の反り量については20μm以下とすることが可能であり、またスライス品のTTVについては25μm以下とすることが可能である。
【0014】
【発明の実施の形態】
(1)水分について
本発明のインゴット切断用砥粒分散媒組成物に含有される「水分」としては、通常は精製水が好ましく、脱イオン水がさらに好ましい。本発明の組成物における水分の含有量は、組成物全体に対して5を超え20重量%以下とする必要があり、5を超え15重量%以下とすることが好ましく、5を超え10重量%以下とすることがさらに好ましい。水分の含有量が少ないと、この水分による引火性抑制効果が不十分であり、クリーブランド開放式測定において組成物が引火点を生じる場合がある。一方、水分の含有量が20重量%を超えると、この組成物に砥粒を分散させた切削液の粘度が著しく高くなって流動性が失われるため、インゴット切断用の砥粒分散媒として用いるには不適当な組成物となる。
【0015】
(2)基油について
本発明の組成物の「基油」としては、一般的な鉱油系および/または合成系潤滑油基油を用いればよい。
鉱油系潤滑油基油としては、例えば原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られた潤滑油留分を溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理などの精製処理を組み合わせて精製したパラフィン系、ナフテン系などの油を使用することができる。
また、合成系潤滑油基油としては、例えばポリブテン、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマーなどのポリαオレフィン;アルキルベンゼン;アルキルナフタレン;ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケートなどのジエステル;トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴレート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサエート、ペンタエリスリトールペラルゴレートなどのポリオールエステル;ナタネ油などの天然油脂などを用いることができる。
【0016】
本発明の組成物の基油は、上記潤滑油基油のうち一種のみを用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
この基油としては、クリーブランド開放式測定法による引火点が100℃以上(より好ましくは120℃以上)のものが好ましく使用される。二種以上の潤滑油基油を用いる場合には、それらの混合物のクリーブランド開放式測定法による引火点が100℃以上(より好ましくは120℃以上)であることが好ましい。本発明の組成物全体に占める基油の割合は、40〜90重量%とすることが好ましく、45〜85重量%とすることがより好ましく、60〜80重量%とすることがさらに好ましい。
【0017】
(3)添加剤について
本発明のインゴット切断用砥粒分散媒組成物は、上記必須成分に加えて、一般的な砥粒分散媒組成物に添加される従来公知の各種添加剤を含有することができる。以下、これらの添加剤について説明する。
【0018】
(3−1)保水剤
保水剤は、本発明のインゴット切断用砥粒分散剤組成物中に含まれる水分が揮発することを防止する目的で用いられる。
保水剤の好ましい使用量は、分散剤組成物全体に対して0.1〜5重量%(より好ましくは0.5〜3重量%)である。この含有量が0.1重量%未満では、水分揮発抑制効果が不十分となるため保存中または使用中に組成物中の水分が失われやすいので、引火性の抑制効果が経時的に低下する恐れがある。一方、含有量が5重量%を超えると、この組成物に砥粒を分散させた切削液の粘度が著しく高くなって流動性が不足するため好ましくない。
この保水剤としては、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの炭素数2〜3の多価アルコールが好適に用いられる。
【0019】
(3−2)湿潤剤
湿潤剤は、本発明の分散媒組成物に砥粒を分散させて調整された切削液において、この砥粒の表面に湿潤性を付与したり、加工後の洗浄性を付与したりするなどの目的で用いられる。
湿潤剤の好ましい使用量は、組成物全体に対して1〜30重量%未満(より好ましくは3〜25重量%、さらに好ましくは5〜20重量%)である。使用量が1重量%未満では砥粒表面の湿潤性が不足するため、この砥粒を分散させた切削液の粘度が著しく高くなって流動性が不足するため好ましくない。一方、使用量が30重量%を超えると切削液を循環使用する際に泡が発生しやすくなり、ポンプにより循環させる場合にはポンプがこの泡をかみこむ恐れがあるので、切削液の円滑な循環が困難となる。
この湿潤剤としては、一般的なノニオン系、アニオン系またはカチオン系の界面活性剤を使用すればよい。例えば、石油スルフォン酸のアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどが好適に用いられる。
【0020】
(3−3)防錆剤
防錆剤は、この組成物から調整された切削液をワイヤソーまたはバンドソーによるインゴット切断に用いる場合において、ワイヤソーマシンまたはバンドソーマシンの鉄製部分を防錆する目的で使用される。
防錆剤の好ましい使用量は、組成物全体に対して0.01〜5重量%(より好ましくは0.1〜4重量%)である。使用量が0.01重量%未満では防錆効果が不十分となる場合がある。一方、使用量が5重量%を超えると切削液を循環使用する際に泡が発生しやすくなり、ポンプにより循環させる場合にはポンプがこの泡をかみこむ恐れがあるので、切削液の円滑な循環が困難となる。
この防錆剤としては、カプリル酸、ノナン酸などの中級脂肪酸;セバシン酸、ドデカン二酸などの二塩基酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの高級脂肪酸;p−t−ブチル安息香酸などの芳香族カルボン酸のアミン塩などを用いることができる。
【0021】
(3−4)非鉄金属防食剤
非鉄金属防食剤は、この組成物から調整された切削液をワイヤソーまたはバンドソーによるインゴット切断に用いる場合において、ワイヤソーマシンにおけるワイヤまたはバンドソーマシンにおけるバンドを被覆する銅、黄銅などの防食剤として作用する。
防食剤の好ましい使用量は、組成物全体に対して0.01〜0.5重量%(より好ましくは0.05〜0.3重量%)である。使用量が0.01重量%未満では防食効果が不十分となる場合がある。一方、使用量が0.5重量%を超えると、分散媒組成物の原料コストが嵩むため好ましくない。
この防食剤としては、ベンゾトリアゾールなどを用いることができる。
【0022】
(3−5)潤滑油添加剤
潤滑油添加剤は、インゴットの加工効率などをさらに高める目的で組成物に含有させるものである。好ましく使用される潤滑油添加剤の例とその好適な使用量を下記▲1▼〜▲5▼に示す。使用量が下記範囲未満ではその効果が不十分となる場合がある。一方、使用量が下記範囲を超えると、切削液の粘度が著しく上昇したり分散媒組成物の原料コスト増を招いたりする恐れがあるので好ましくない。
▲1▼摩擦低減剤;酸化パラフィン金属塩、金属セッケン、アルケニルコハク酸エステル、脂肪族アミンアルコール、脂肪酸アミドなど。好ましい使用量は、組成物全体に対して0.01〜5重量%である。
▲2▼酸化防止剤;フェノール系、アミン系、硫黄系、ジチオリン酸亜鉛系、フェノチアジン系など。好ましい使用量は、組成物全体に対して0.01〜1重量%である。
▲3▼極圧添加剤;硫化油脂、硫化オレフィン、リン酸エステル、ジチオリン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、ジチオリン酸モリブデン、二硫化モリブデン、グラファイトなど。好ましい使用量は、組成物全体に対して0.1〜10重量%である。
▲4▼粘度指数向上剤;ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテートなど。好ましい使用量は、組成物全体に対して0.1〜3重量%である。
▲5▼流動点降下剤;ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテートなど。好ましい使用量は、組成物全体に対して0.1〜3重量%である。
【0023】
(3−6)消泡剤
消泡剤としては、シリコーン系、フッ素系などを用いることができ、その好ましい使用量は組成物全体に対して0.01〜1重量%である。この使用量が0.01重量%未満では消泡効果が不十分となる場合があり、1重量%を超えると分散媒組成物の原料コストが嵩むため好ましくない。
【0024】
(3−7)無機または有機ベントナイト
本発明において使用する無機または有機ベントナイトは、高純度のソジウムモンモロナイトおよびその有機変性物であり、本発明の分散媒組成物に含有される水分または鉱物油と混合されて安定なゲルを生成する。このような状態において、この分散媒組成物中に砥粒を添加分散させて調整した切削液によると、砥粒の沈降を防止することができる。
この無機または有機ベントナイトは、一種のみを用いてもよいし二種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましい合計使用量は、組成物全体に対して0.1〜10重量%(より好ましくは2〜7重量%)である。使用量が0.1重量%未満では切削液における砥粒の沈降防止効果が不十分となる場合がある。一方、使用量が10重量%を超えると、切削液の粘度が著しく高くなる恐れがあり、また原料コストも増大するため好ましくない。
【0025】
(4)組成物の製造方法および使用方法
本発明のインゴット切断用砥粒分散媒組成物は、例えば、まず基油に上記(3−1)〜(3−7)の添加剤を必要に応じて所定量加え、次いで水分(好ましくはイオン交換水)を加えて混合することにより得られる。なお、本発明の組成物には、上記以外の添加剤をさらに加えてもよい。
また、本発明のインゴット切断用砥粒分散媒組成物からインゴット切断用の切削液を調整するには、この組成物に例えばSiCなどからなる砥粒を所定量混合して均一に分散させればよい。
本発明の組成物からなる切削液は、シリコン単結晶などの各種インゴットの切断において切断装置の切断刃に供給される切削液として好適である。本発明の組成物の効果が特に顕著に発揮される切断装置としては、ワイヤソー、バンドソー、およびこれらを多重化したマルチワイヤソー、マルチバンドソーなどが挙げられる。
【0026】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明する。
下記の材料を表1に示す割合で配合して、実施例1〜4、参考例1〜2および比較例1、2の分散媒組成物を調整した。得られた分散媒組成物につき、下記(1)〜(3)の評価試験を行った。その結果を表1に併せて示す。なお、比較例3には市販の水溶性分散媒を用いた。
【0027】
基油;パラフィン系鉱物油、%CN35、動粘度7mm2/s(40℃)、クリーブランド開放式測定法による引火点140℃
保水剤;エチレングリコール
湿潤剤a;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、HLB 5.7
湿潤剤b;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、HLB 12.6
湿潤剤c;石油スルフォン酸ナトリウム塩、平均分子量350
防錆剤;ノナン酸とトリエタノールアミンとのモル比1:1の混合物の中和塩
非鉄金属防食剤;ベンゾトリアゾール
潤滑油添加剤;酸化防止剤としてのブチルヒドロキシアニソール
消泡剤;メチルフェニルポリシロキサン、信越化学株式会社製、商品名「シリコンKF56」
無機ベントナイト;株式会社豊順洋行製、商品名「ベンゲル−FW」
有機ベントナイト;株式会社豊順洋行製、商品名「エスベン」
【0028】
(1)分散媒の引火点
得られた各分散媒組成物につき、クリーブランド開放式測定法により引火点を測定した。なお、表1において「〇」は引火しなかったことを示す。
【0029】
(2)ウエハの反り
各分散媒組成物100重量部に、市販のGC#100の砥粒(平均粒子径約20μm)125重量部を加えて切削液を調整した。この切削液を用いて、ワイヤソー・バンドソーマシンにより直径8インチのシリコンインゴットをワイヤソーで880μm厚に切断し、ウエハの反り量を測定した。測定結果は、◎;5〜10μm、〇;10〜15μm、△;15〜20μm、×;20μm以上、の4段階で示す。
【0030】
(3)ウエハのTTV
上記評価試験で切断したウエハにつき、一般的に使用されているADECorporation9500を使用してTTVを求めた。評価結果は、◎;20μm以下、〇;20〜25μm、△;25〜30μm、×;30μm以上、の4段階で示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表1に示すように、実施例1〜4の分散媒組成物はいずれも引火点を示さず、耐火性(難燃性)に優れていた。これに対して、水分含有量が本発明範囲に満たない比較例1では引火性の抑制効果が不十分であり、水分を含有しない比較例2とほぼ同程度の引火性を示した。
また、実施例1〜4の分散媒組成物から調整された切削液を用いると、水溶性分散媒である比較例3からなる切削液に比べて、反り量およびTTVが著しく少ないウエハを得ることができた。すなわち、実施例1〜4の分散媒組成物からなる切削液は、その切削性能が良好であった。
なお、水分含有量の多い実施例4から調整された切削液は、実施例1〜3を用いた切削液に比べて流動性がやや低いものの、実用上は問題のない程度であった。
【0033】
なお、本発明においては、前記具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
【0034】
【発明の効果】
本発明のインゴット切断用砥粒分散媒組成物は、水分5を超え20重量%以下を含有するので耐火性(難燃性)に優れる。これにより、従来の非水溶性分散媒における引火性の問題を解決することができる。また、本発明の分散媒組成物は非水溶性であるため、従来の水溶性分散媒とは異なり、この分散媒から調整された切削液における砥粒の分散安定性や金属製切断部材への付着性が良好である。したがって、従来の水溶性分散媒からなる切削液ではスライス品の反りやTTVが問題となっていた大径のインゴットの切断においても、本発明の分散媒組成物からなる切削液によれば反りおよびTTVの少ないスライス品を得ることができる。このように、従来の非水溶性分散媒を用いた切削液に匹敵する切削性能が得られ、かつ水溶性分散媒と同様に非引火性切削油として取り扱うことができるので、本発明の分散媒組成物は極めて有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、インゴット切断用の砥粒分散媒として有用であり、かつ引火性の低い非水溶性分散媒組成物及びインゴット切断用切削液に関する。本発明の分散媒組成物から調整された切削液は、特にワイヤソーまたはバンドソーによるシリコンインゴットの切断に有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来、シリコン単結晶のインゴットを切断するための砥粒分散媒としては、鉱物油を主成分とする非水溶性の切削油が主に用いられている。この分散媒にSiCなどの砥粒を混合・分散させたスラリー状の切削液を、インゴット切断装置の刃の部分に供給しながらインゴットの切断が行われる。切断されたシリコンウエハは、切削により生成する切屑や付着した切削液を除去する洗浄工程を経て後続工程へと供される。一方、切断に用いられた後の切削液は廃棄物として処理される。
【0003】
しかし、鉱物油を主成分とする上記従来の分散媒は引火性の危険物であるため、消防法により貯蔵数量が制限されている。また、上記廃棄物についても取り扱いに注意を要する。
このため、切削液用の分散媒の分野において、非水溶性分散媒の代替品として水溶性の砥粒分散媒が種々提案されている。例えば、特開平8−57847号公報には、有機または無機ベントナイト水溶液にアルカノールアミンと高級脂肪酸とを反応させてなる脂肪酸アミンを均一に混合させた砥粒の分散媒が開示されている。上記公報では、この分散媒によると前記非水溶性分散媒の使用に起因する種々の問題が解決されるとともにウエハの反りなどが改善されると記載されている。
【0004】
インゴット形状物の切断装置としては、一般に内周刃または外周刃切断装置、バンドソー、ワイヤソーなどが使用されている。近年、半導体用シリコン単結晶インゴットの大径化に伴い、比較的大径の、例えば3インチ以上のインゴットの切断にはワイヤソーやバンドソーが多用される傾向にある。これは、上記ワイヤソーやバンドソーを用いると、内周刃または外周刃切断装置に比べてスライス厚さを均一化することができ、切断代が減少するので材料の利用率が高くなり、また一度に多数枚のスライスが可能なので作業効率の向上が図れるなどの理由による。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし従来の水溶性分散媒は、一般に非水溶性分散媒に比べて機械的安定性が低いなどの理由から、この水溶性分散媒に砥粒を分散させた切削液の粘度や密度が切断中に変動しやすい。このため、水溶性分散媒を用いた切削液によると切断が不安定になりやすいという問題がある。また、この切削液によると、分散媒中における砥粒の沈降・堆積が十分に防止されていないため、切削液中の砥粒濃度が加工中に低下するなど変動を起しやすい。さらに、水溶性分散媒を用いた切削液は非水溶性の分散媒を用いた場合に比べて、切断ワイヤやバンドなどの金属製切断部材に対する付着性が劣る。このため、この切削液を用いるとウエハなどのスライス品の反り量が増大する、スライス品の厚さのばらつき(Total Thickness Variation;以下、「TTV」という。)が増すなどの現象が生じる。
【0006】
特に、前述のようにワイヤソーやバンドソーを用いて比較的大径のシリコンインゴットを切断する場合には、水溶性分散媒を用いることによる上記現象が問題となりやすい。例えば、ワイヤソーやバンドソーによる直径6インチのシリコン単結晶の切断において上記水溶性分散媒からなる切削液を用いると、スライス品の中央部が凸状になる、いわゆる「反り」の量が20μmを超える場合がある。このような大きな反りは、シリコンウエハを製造加工する際の障害となるとともに、歩留り低下の原因ともなっている。
【0007】
上記のようにスライス品の大きな反りが発生しやすくなる一因は、切断速度、ワイヤまたはバンドの進行速度や張力などの加工条件にもある。しかし、切削液中の砥粒濃度の変動や、切断ワイヤや切断バンドなどの金属製切断部材に対する切削液の付着性不足によっても、スライス品の反りは増大する。すなわち、切削液に水溶性分散媒を用いたことに起因する砥粒分散性や金属付着性の不足が、スライス品に大きな反りを発生させているものと推察される。
【0008】
本発明の目的は、引火性の低い分散媒組成物であって、この分散媒組成物から調整された切削液の性能に優れたインゴット切断用砥粒分散媒組成物及びインゴット切断用切削液を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、非水溶性分散媒に水分を添加した組成物は、水分を添加しない組成物に比べて、加熱された場合にこの水分が発泡することにより引火性が著しく減少することを見出した。さらに、この組成物をインゴット切断用の砥粒分散媒に用いた切削液が従来の非水溶性分散媒による切削液とほぼ同等の切削性能を示し得る水分添加量を見出して、本発明を完成したのである。
【0010】
すなわち、本発明のインゴット切断用砥粒分散媒組成物は、砥粒分散媒組成物全体を100重量%とした場合、鉱油系潤滑油基油並びに/又はポリαオレフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリオールエステル、及び天然油脂から選ばれる合成系潤滑油基油40〜90重量%と、水分5を超え20重量%以下とを含有し、ノニオン系界面活性剤としてポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む湿潤剤1〜30%重量未満並びに無機及び/又は有機ベントナイトを含有し、且つ、HLB1.5〜12の脂肪酸エステルを含まないことを特徴とする。
【0011】
この組成物は、水分5を超え20重量%以下を含有するので、上述のように加熱時にこの水分が発泡することにより組成物の引火性が抑制され、例えばクリーブランド開放式測定法において引火点を生じない程度の低い引火性とすることができる。また、非水溶性の分散媒からなるので、従来の水溶性分散媒に比べてこの組成物から調整された切削液の切削性能に優れ、例えば従来の非水溶性分散媒からなる切削液とほぼ同等の切削性能を得ることが可能である。
【0012】
本発明の組成物は、保水剤、湿潤剤、防錆剤、非鉄金属防食剤、潤滑油添加剤、消泡剤、無機または有機ベントナイトから選択される一種または二種以上を添加剤として含有することが好ましい。
【0013】
この組成物は、ワイヤソーまたはバンドソーによるシリコンインゴット切断において特に好適に用いられる。この用途において、切削液として従来の水溶性分散媒を用いた場合には上述のようにスライス品の反りが問題となっていたが、本発明によればこの問題が解決されるためである。具体的には、ワイヤソーやバンドソーによる直径6インチのシリコン単結晶の切断において、本発明の組成物からなる切削液を用いると、スライス品の反り量については20μm以下とすることが可能であり、またスライス品のTTVについては25μm以下とすることが可能である。
【0014】
【発明の実施の形態】
(1)水分について
本発明のインゴット切断用砥粒分散媒組成物に含有される「水分」としては、通常は精製水が好ましく、脱イオン水がさらに好ましい。本発明の組成物における水分の含有量は、組成物全体に対して5を超え20重量%以下とする必要があり、5を超え15重量%以下とすることが好ましく、5を超え10重量%以下とすることがさらに好ましい。水分の含有量が少ないと、この水分による引火性抑制効果が不十分であり、クリーブランド開放式測定において組成物が引火点を生じる場合がある。一方、水分の含有量が20重量%を超えると、この組成物に砥粒を分散させた切削液の粘度が著しく高くなって流動性が失われるため、インゴット切断用の砥粒分散媒として用いるには不適当な組成物となる。
【0015】
(2)基油について
本発明の組成物の「基油」としては、一般的な鉱油系および/または合成系潤滑油基油を用いればよい。
鉱油系潤滑油基油としては、例えば原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られた潤滑油留分を溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理などの精製処理を組み合わせて精製したパラフィン系、ナフテン系などの油を使用することができる。
また、合成系潤滑油基油としては、例えばポリブテン、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマーなどのポリαオレフィン;アルキルベンゼン;アルキルナフタレン;ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケートなどのジエステル;トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴレート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサエート、ペンタエリスリトールペラルゴレートなどのポリオールエステル;ナタネ油などの天然油脂などを用いることができる。
【0016】
本発明の組成物の基油は、上記潤滑油基油のうち一種のみを用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
この基油としては、クリーブランド開放式測定法による引火点が100℃以上(より好ましくは120℃以上)のものが好ましく使用される。二種以上の潤滑油基油を用いる場合には、それらの混合物のクリーブランド開放式測定法による引火点が100℃以上(より好ましくは120℃以上)であることが好ましい。本発明の組成物全体に占める基油の割合は、40〜90重量%とすることが好ましく、45〜85重量%とすることがより好ましく、60〜80重量%とすることがさらに好ましい。
【0017】
(3)添加剤について
本発明のインゴット切断用砥粒分散媒組成物は、上記必須成分に加えて、一般的な砥粒分散媒組成物に添加される従来公知の各種添加剤を含有することができる。以下、これらの添加剤について説明する。
【0018】
(3−1)保水剤
保水剤は、本発明のインゴット切断用砥粒分散剤組成物中に含まれる水分が揮発することを防止する目的で用いられる。
保水剤の好ましい使用量は、分散剤組成物全体に対して0.1〜5重量%(より好ましくは0.5〜3重量%)である。この含有量が0.1重量%未満では、水分揮発抑制効果が不十分となるため保存中または使用中に組成物中の水分が失われやすいので、引火性の抑制効果が経時的に低下する恐れがある。一方、含有量が5重量%を超えると、この組成物に砥粒を分散させた切削液の粘度が著しく高くなって流動性が不足するため好ましくない。
この保水剤としては、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの炭素数2〜3の多価アルコールが好適に用いられる。
【0019】
(3−2)湿潤剤
湿潤剤は、本発明の分散媒組成物に砥粒を分散させて調整された切削液において、この砥粒の表面に湿潤性を付与したり、加工後の洗浄性を付与したりするなどの目的で用いられる。
湿潤剤の好ましい使用量は、組成物全体に対して1〜30重量%未満(より好ましくは3〜25重量%、さらに好ましくは5〜20重量%)である。使用量が1重量%未満では砥粒表面の湿潤性が不足するため、この砥粒を分散させた切削液の粘度が著しく高くなって流動性が不足するため好ましくない。一方、使用量が30重量%を超えると切削液を循環使用する際に泡が発生しやすくなり、ポンプにより循環させる場合にはポンプがこの泡をかみこむ恐れがあるので、切削液の円滑な循環が困難となる。
この湿潤剤としては、一般的なノニオン系、アニオン系またはカチオン系の界面活性剤を使用すればよい。例えば、石油スルフォン酸のアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどが好適に用いられる。
【0020】
(3−3)防錆剤
防錆剤は、この組成物から調整された切削液をワイヤソーまたはバンドソーによるインゴット切断に用いる場合において、ワイヤソーマシンまたはバンドソーマシンの鉄製部分を防錆する目的で使用される。
防錆剤の好ましい使用量は、組成物全体に対して0.01〜5重量%(より好ましくは0.1〜4重量%)である。使用量が0.01重量%未満では防錆効果が不十分となる場合がある。一方、使用量が5重量%を超えると切削液を循環使用する際に泡が発生しやすくなり、ポンプにより循環させる場合にはポンプがこの泡をかみこむ恐れがあるので、切削液の円滑な循環が困難となる。
この防錆剤としては、カプリル酸、ノナン酸などの中級脂肪酸;セバシン酸、ドデカン二酸などの二塩基酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの高級脂肪酸;p−t−ブチル安息香酸などの芳香族カルボン酸のアミン塩などを用いることができる。
【0021】
(3−4)非鉄金属防食剤
非鉄金属防食剤は、この組成物から調整された切削液をワイヤソーまたはバンドソーによるインゴット切断に用いる場合において、ワイヤソーマシンにおけるワイヤまたはバンドソーマシンにおけるバンドを被覆する銅、黄銅などの防食剤として作用する。
防食剤の好ましい使用量は、組成物全体に対して0.01〜0.5重量%(より好ましくは0.05〜0.3重量%)である。使用量が0.01重量%未満では防食効果が不十分となる場合がある。一方、使用量が0.5重量%を超えると、分散媒組成物の原料コストが嵩むため好ましくない。
この防食剤としては、ベンゾトリアゾールなどを用いることができる。
【0022】
(3−5)潤滑油添加剤
潤滑油添加剤は、インゴットの加工効率などをさらに高める目的で組成物に含有させるものである。好ましく使用される潤滑油添加剤の例とその好適な使用量を下記▲1▼〜▲5▼に示す。使用量が下記範囲未満ではその効果が不十分となる場合がある。一方、使用量が下記範囲を超えると、切削液の粘度が著しく上昇したり分散媒組成物の原料コスト増を招いたりする恐れがあるので好ましくない。
▲1▼摩擦低減剤;酸化パラフィン金属塩、金属セッケン、アルケニルコハク酸エステル、脂肪族アミンアルコール、脂肪酸アミドなど。好ましい使用量は、組成物全体に対して0.01〜5重量%である。
▲2▼酸化防止剤;フェノール系、アミン系、硫黄系、ジチオリン酸亜鉛系、フェノチアジン系など。好ましい使用量は、組成物全体に対して0.01〜1重量%である。
▲3▼極圧添加剤;硫化油脂、硫化オレフィン、リン酸エステル、ジチオリン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、ジチオリン酸モリブデン、二硫化モリブデン、グラファイトなど。好ましい使用量は、組成物全体に対して0.1〜10重量%である。
▲4▼粘度指数向上剤;ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテートなど。好ましい使用量は、組成物全体に対して0.1〜3重量%である。
▲5▼流動点降下剤;ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテートなど。好ましい使用量は、組成物全体に対して0.1〜3重量%である。
【0023】
(3−6)消泡剤
消泡剤としては、シリコーン系、フッ素系などを用いることができ、その好ましい使用量は組成物全体に対して0.01〜1重量%である。この使用量が0.01重量%未満では消泡効果が不十分となる場合があり、1重量%を超えると分散媒組成物の原料コストが嵩むため好ましくない。
【0024】
(3−7)無機または有機ベントナイト
本発明において使用する無機または有機ベントナイトは、高純度のソジウムモンモロナイトおよびその有機変性物であり、本発明の分散媒組成物に含有される水分または鉱物油と混合されて安定なゲルを生成する。このような状態において、この分散媒組成物中に砥粒を添加分散させて調整した切削液によると、砥粒の沈降を防止することができる。
この無機または有機ベントナイトは、一種のみを用いてもよいし二種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましい合計使用量は、組成物全体に対して0.1〜10重量%(より好ましくは2〜7重量%)である。使用量が0.1重量%未満では切削液における砥粒の沈降防止効果が不十分となる場合がある。一方、使用量が10重量%を超えると、切削液の粘度が著しく高くなる恐れがあり、また原料コストも増大するため好ましくない。
【0025】
(4)組成物の製造方法および使用方法
本発明のインゴット切断用砥粒分散媒組成物は、例えば、まず基油に上記(3−1)〜(3−7)の添加剤を必要に応じて所定量加え、次いで水分(好ましくはイオン交換水)を加えて混合することにより得られる。なお、本発明の組成物には、上記以外の添加剤をさらに加えてもよい。
また、本発明のインゴット切断用砥粒分散媒組成物からインゴット切断用の切削液を調整するには、この組成物に例えばSiCなどからなる砥粒を所定量混合して均一に分散させればよい。
本発明の組成物からなる切削液は、シリコン単結晶などの各種インゴットの切断において切断装置の切断刃に供給される切削液として好適である。本発明の組成物の効果が特に顕著に発揮される切断装置としては、ワイヤソー、バンドソー、およびこれらを多重化したマルチワイヤソー、マルチバンドソーなどが挙げられる。
【0026】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明する。
下記の材料を表1に示す割合で配合して、実施例1〜4、参考例1〜2および比較例1、2の分散媒組成物を調整した。得られた分散媒組成物につき、下記(1)〜(3)の評価試験を行った。その結果を表1に併せて示す。なお、比較例3には市販の水溶性分散媒を用いた。
【0027】
基油;パラフィン系鉱物油、%CN35、動粘度7mm2/s(40℃)、クリーブランド開放式測定法による引火点140℃
保水剤;エチレングリコール
湿潤剤a;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、HLB 5.7
湿潤剤b;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、HLB 12.6
湿潤剤c;石油スルフォン酸ナトリウム塩、平均分子量350
防錆剤;ノナン酸とトリエタノールアミンとのモル比1:1の混合物の中和塩
非鉄金属防食剤;ベンゾトリアゾール
潤滑油添加剤;酸化防止剤としてのブチルヒドロキシアニソール
消泡剤;メチルフェニルポリシロキサン、信越化学株式会社製、商品名「シリコンKF56」
無機ベントナイト;株式会社豊順洋行製、商品名「ベンゲル−FW」
有機ベントナイト;株式会社豊順洋行製、商品名「エスベン」
【0028】
(1)分散媒の引火点
得られた各分散媒組成物につき、クリーブランド開放式測定法により引火点を測定した。なお、表1において「〇」は引火しなかったことを示す。
【0029】
(2)ウエハの反り
各分散媒組成物100重量部に、市販のGC#100の砥粒(平均粒子径約20μm)125重量部を加えて切削液を調整した。この切削液を用いて、ワイヤソー・バンドソーマシンにより直径8インチのシリコンインゴットをワイヤソーで880μm厚に切断し、ウエハの反り量を測定した。測定結果は、◎;5〜10μm、〇;10〜15μm、△;15〜20μm、×;20μm以上、の4段階で示す。
【0030】
(3)ウエハのTTV
上記評価試験で切断したウエハにつき、一般的に使用されているADECorporation9500を使用してTTVを求めた。評価結果は、◎;20μm以下、〇;20〜25μm、△;25〜30μm、×;30μm以上、の4段階で示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表1に示すように、実施例1〜4の分散媒組成物はいずれも引火点を示さず、耐火性(難燃性)に優れていた。これに対して、水分含有量が本発明範囲に満たない比較例1では引火性の抑制効果が不十分であり、水分を含有しない比較例2とほぼ同程度の引火性を示した。
また、実施例1〜4の分散媒組成物から調整された切削液を用いると、水溶性分散媒である比較例3からなる切削液に比べて、反り量およびTTVが著しく少ないウエハを得ることができた。すなわち、実施例1〜4の分散媒組成物からなる切削液は、その切削性能が良好であった。
なお、水分含有量の多い実施例4から調整された切削液は、実施例1〜3を用いた切削液に比べて流動性がやや低いものの、実用上は問題のない程度であった。
【0033】
なお、本発明においては、前記具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
【0034】
【発明の効果】
本発明のインゴット切断用砥粒分散媒組成物は、水分5を超え20重量%以下を含有するので耐火性(難燃性)に優れる。これにより、従来の非水溶性分散媒における引火性の問題を解決することができる。また、本発明の分散媒組成物は非水溶性であるため、従来の水溶性分散媒とは異なり、この分散媒から調整された切削液における砥粒の分散安定性や金属製切断部材への付着性が良好である。したがって、従来の水溶性分散媒からなる切削液ではスライス品の反りやTTVが問題となっていた大径のインゴットの切断においても、本発明の分散媒組成物からなる切削液によれば反りおよびTTVの少ないスライス品を得ることができる。このように、従来の非水溶性分散媒を用いた切削液に匹敵する切削性能が得られ、かつ水溶性分散媒と同様に非引火性切削油として取り扱うことができるので、本発明の分散媒組成物は極めて有用である。
Claims (3)
- 砥粒分散媒組成物全体を100重量%とした場合、鉱油系潤滑油基油並びに/又はポリαオレフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリオールエステル、及び天然油脂から選ばれる合成系潤滑油基油40〜90重量%と、水分5を超え20重量%以下とを含有し、ノニオン系界面活性剤としてポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む湿潤剤1〜30%重量未満並びに無機及び/又は有機ベントナイトを含有し、且つ、HLB1.5〜12の脂肪酸エステルを含まないことを特徴とするインゴット切断用砥粒分散媒組成物。
- ワイヤソー又はバンドソーによるシリコンインゴット切断に用いられる請求項1記載のインゴット切断用砥粒分散媒組成物。
- 請求項1又は2記載のインゴット切断用砥粒分散媒組成物と、砥粒とを含有するインゴット切断用切削液。
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