JP3571625B2 - 油煙処理装置およびフライヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フライヤから発生するオイルミスト、臭気を含む油煙を清浄にして排出する油煙処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
室内に設置されたフライヤから発生する油煙を排出するためには、フライヤの上方に排気フードを配し、排気フードから直接外部に油煙を排出したり、あるいは排気フードにダクトを連通して、ダクトから外部に排出している。この場合、排気フードの位置は決まっているので、フライヤを近くに配置できないと、油煙を完全に排出することができない。
【0003】
そこで、フライヤに油煙処理装置を内蔵させれば、このような問題は解消できる。このような油煙処理装置として、例えば水槽に吸引した油煙を通して、油脂分を気泡化し、この気泡と水との接触により油脂分を捕集するものがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記方法は、微小な気泡を安定的に発生させるために風量の制御が常に必要になるとともに、捕集した油脂分を含む排水をそのまま廃棄することができないので、排水の浄化といった2次処理が必要となる。そのため、ランニングコストや設備コストが高くなってしまう。また、油煙に含まれるガス状の臭気成分は気泡となり、水に捕集されることなく排出され、臭気を完全に除去することができない。
【0005】
そこで、本発明は、上記に鑑み、オイルミストだけでなく臭気も完全に除去でき、しかも2次処理を必要としない油煙処理装置の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明による課題解決手段は、キャビネット内に、オイルミストを除去するためのグリスフィルタ、HEPAフィルタ、多孔質フィルタを設け、これらのフィルタの下流側に、臭気を除去するための脱臭フィルタを設けたものである。
【0007】
キャビネット内に吸引された油煙に対して、まずグリスフィルタによって大粒のオイルミストを除去し、HEPAフィルタによって小粒のオイルミストを除去する。HEPAフィルタを通り抜けた微細なオイルミストは、多孔質フィルタに吸着されて除去される。ガス状の臭気成分の一部は多孔質フィルタによっても除去できるが、残りは脱臭フィルタによって除去する。
【0008】
ここで、脱臭フィルタは、油煙中の臭気成分を吸着することによって除去するものであるので、表面にオイルミストが付着すると、脱臭機能を十分に発揮できなくなる。そこで、オイルミストの影響を受けないように他のフィルタとは隔離して排気口に近傍に配置している。なお、吸気口はキャビネットの下面に設け、油煙の流れは原則的に下から上に向かうように、吸気口と排気口とを連通する吸引路を形成する。
【0009】
特に、脱臭フィルタとして、光触媒フィルタを用いる場合、表面にオイルミストが付着すると、臭気成分等の他の有機化合物の付着が妨げられ、脱臭機能を発揮できなくなり、寿命が短くなる。そのため、グリスフィルタ、HEPAフィルタ、多孔質フィルタが内装された捕集室とは完全に区画された脱臭室を設け、ここに光触媒フィルタが内装される。
【0010】
HEPAフィルタは高性能フィルタであるため、流れの圧力損失が大きくなる。そこで、油煙が効率よく通過するようにHEPAフィルタの下流側に吸引装置を配するとよい。また、脱臭フィルタにおいて、脱臭機能を高めるには油煙との接触機会を増やせばよく、脱臭フィルタの上流側に吸引装置を配し、吸引路を広げて、ここに脱臭フィルタを配置する。これによって、油煙は拡散して流速が低下し、脱臭フィルタとの接触時間が長くなって、臭気成分を効率的に吸着することができる。
【0011】
ここで、HEPAフィルタの前後において、吸引路内に静圧の差が生じるので、これを低減するためにHEPAフィルタよりも下流側の吸引路に外気導入口を形成する。ここから外気を導入することによって、HEPAフィルタの下流側での静圧が高まり、上流側での静圧との差をなくすことができる。これによって、HEPAフィルタの前後での静圧の差によって生じるHEPAフィルタの浮き上がりを防止でき、浮き上がったときにできる隙間からの油煙の漏れをなくすことができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態の油煙処理装置を備えたフライヤを図1に示す。フライヤは、調理台1とその上方に一体的に設けられた油煙処理装置2とからなる。調理台1は、油槽3とこれを加熱する電気あるいはガス式の加熱源4とを備えた一般的なものであり、キャスタ5が取り付けられ、移動可能とされる。
【0013】
油煙処理装置2は、図2に示すように、グリスフィルタ6、HEPA(High Efficiency Particle Air)フィルタ7、多孔質フィルタ8、脱臭フィルタ9、吸引装置10から構成され、これらが吸気口11および排気口12を有するキャビネット13に内装されている。
【0014】
調理台1とキャビネット13との間には調理をするための作業空間14が形成され、この作業空間14に面するキャビネット13の下面に吸気口11が形成され、油槽3から立ち昇った油煙を吸い込む。なお、作業空間14の前面に扉15が開閉自在に設けられ、調理中に扉15を閉じておくことにより、作業空間14が密閉され、油煙が外部に漏れることを防止できる。
【0015】
キャビネット13は、下部の捕集室20と、上部の脱臭室21との2つの互いに独立した部屋に区画されている。そして、脱臭室21の上面に排気口12が形成され、捕集室20と脱臭室21とが連通口22によって連通され、吸気口11から連通口22を通って排気口12に至る吸引路23が形成される。
【0016】
捕集室20内の連通口22近傍に吸引装置10としてのファンが装着され、捕集室20の吸引路23は、吸気口11から吸引装置10に達するようにコ字状に形成される。そして、吸引路23の水平部24から上昇部25に方向を変換する箇所にグリスフィルタ6が配置され、上昇部25にHEPAフィルタ7、多孔質フィルタ8が配置される。また、キャビネット13の捕集室20の前面に開口が形成され、この開口に蓋26が着脱自在に取り付けられている。
【0017】
このように吸引路23を曲折した経路とすることによって、少ないスペースで長い経路にすることができ、限られたスペースに複数のフィルタを配置することが可能となり、キャビネット13の小型化を図れる。
【0018】
グリスフィルタ6は、図3に示すように、油煙に含まれるオイルミストのうち大粒のものを捕集するために目の粗さの異なる2種類の金属製フィルタを組合わせてなり、平板状に形成された目の粗い金属繊維フィルタ27が上流側に配され、金属粒を接着剤等によって結合して目の細かい3次元網目構造の波形フィルタ28が下流側に配される。
【0019】
そして、グリスフィルタ6は、傾斜した状態でキャビネット13に着脱可能に設置され、その下方に、グリスフィルタ6から流下する油滴を受けるオイル受け皿29が着脱可能に設けられ、それぞれキャビネット13の開口から取り出すことができる。
【0020】
HEPAフィルタ7は、0.3μmの粒子を99.97%以上捕集できる高性能フィルタであり、オイルミストの大部分を捕集することができる。多孔質フィルタ8は、多数の多孔質の粒体を通気性を有するケースに収容したものであり、HEPAフィルタ7を通り抜けた微粒子を表面の凹凸に吸着して、オイルミストを捕集するとともに臭気成分の一部も除去することができる。なお、多孔質の粒体として、セピオライト、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、アルミナ、金属酸化物等を使用できる。
【0021】
そして、HEPAフィルタ7と多孔質フィルタ8とは、それぞれ枠体に装着され、1つのユニットとしてキャビネット13に着脱自在に設置され、開口から取り出すことができる。なお、HEPAフィルタ7と多孔質フィルタ8とは互いに独立させて設置してもよい。
【0022】
また、捕集室20の吸引路23では、上昇部25より下流側において広がっており、容積が大きくなる。すなわち、水平部24から上昇部25にかけては、吸引路23を狭くして、油煙の流速を速くして、各フィルタに勢いよく衝突させることによって、質量の重いオイルミストを効率的に捕集することができる。
【0023】
ところで、HEPAフィルタ7による圧力損失によって、この前後において静圧に差が生じ、上流側の圧力より下流側の圧力が低くなるので、HEPAフィルタ7が風圧に押されて浮き上がることがある。すると、HEPAフィルタ7と吸引路23の壁面との間に隙間が生じて、ここから油煙が通り抜けてしまうおそれがある。そこで、キャビネット13の捕集室20に外気導入口31が形成され、外気を吸引路23内に導くことによって、HEPAフィルタ7より下流側における静圧を高めて、HEPAフィルタ7の浮き上がりを防止している。
【0024】
脱臭室21に配された脱臭フィルタ9は、多孔質なセラミックスあるいは金属繊維等の担持体の表面に酸化チタン等の光触媒を担持させた光触媒フィルタ32と、光触媒フィルタ32に光を照射する光源33とを備え、これらがケースに一体的に着脱可能に装着されている。ケース34は、脱臭室21の排気口12に着脱可能に取り付けられ、傾斜した状態で設置されている。ケース34の上下面は開口され、開口を覆うように光触媒フィルタ32が配置される。このように、ケース34を傾斜して設置することにより、排気口12を特定の方向に向けることができ、フライヤと排気フードとの位置関係に応じて排気口12の向きを設定することが可能となる。
【0025】
脱臭室21は、捕集室20の上面と脱臭フィルタ9との挟まれた空間となり、吸引路23の一部をなす。捕集室20から連通口22を経て、この脱臭室21に達した油煙は分散され、光触媒フィルタ32との接触機会を増やすことができ、臭気成分の分解量の増大を図れる。また、連通口22に対して脱臭フィルタ9が傾斜して配置されているので、脱臭室21の空間を広く取ることができ、連通口22からの油煙が脱臭フィルタ9に沿って拡散しやすくいなり、脱臭効率が高まる。
【0026】
次に、この油煙処理装置の動作を説明する。フライヤで調理をしたときに発生した油煙は、吸引装置10の駆動によって生じた吸引力によって、吸気口11から捕集室20内に吸い込まれる。油煙が吸引路23を通ってグリスフィルタ6に達したとき、油煙は狭い吸引路23を通過するので、流速が速くなり、グリスフィルタ6に勢いよく衝突して、油煙中のオイルミストのうち質量の重い大粒のものが捕集される。油煙は、グリスフィルタ6を通過するとき2種類のフィルタの目の間を縫うように通過するので、頻繁に衝突が繰り返され、オイルミストが効率よく除去されていく。
【0027】
そして、グリスフィルタ6を通過した油煙は、HEPAフィルタ7に達し、オイルミストの大部分がHEPAフィルタ7に捕集される。さらに、油煙が多孔質フィルタ8を通過するとき、HEPAフィルタ7に捕集されなかった微小なオイルミストおよび臭気成分の一部が多孔質フィルタ7の表面の凹凸に吸着される。
【0028】
このように捕集室20において、3つのフィルタを通り抜けた油煙からはオイルミストが除去される。そのため、光触媒フィルタ32にオイルミストが付着することを防止でき、光触媒フィルタ32の機能低下を防げる。しかしながら、油煙には臭気成分がまだ含まれているので、臭気成分を含んだ油煙は、吸引装置10によって脱臭室21に送り込まれ、油煙が拡散され、流速が弱まる。脱臭室21に充満した油煙は、流速が弱いので光触媒フィルタ32と接触する時間が長くなって、光触媒フィルタ32にむらなく当たり、臭気成分は光触媒フィルタ32に捕捉される。このように臭気成分が除去されて、油煙は清浄な空気となり、外部に排出される。
【0029】
光触媒フィルタ32に捕捉された臭気成分および微細な汚染物質は、光触媒作用によって分解される。すなわち、光源33を点灯して光触媒に紫外線あるいは可視光線を当てると、表面に付着した有機化合物が酸化分解されることによって、臭気成分や汚染物質が水と二酸化炭素になり、油煙中から完全に除去される。
【0030】
ところで、上記のように油煙の浄化処理を行っていくにつれて、フィルタが目詰まりしたり、処理能力が低下する。そこで、キャビネット13の蓋26を開けて、グリスフィルタ6および多孔質フィルタ8を取り外して洗浄し、再使用する。HEPAフィルタ7は、再使用することができないので、新しいフィルタに交換する。光触媒フィルタ32は光を当てることによって再生可能なので、繰り返し使用することができる。
【0031】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正および変更を加え得ることは勿論である。脱臭フィルタとして、マンガン、銅、亜鉛、ニッケル、マグネシウム等の金属粒子あるいはこれらの金属酸化物粒子、さらには活性炭、ゼオライト、シリカゲル、アルミナ等の多孔質粒子を使用してもよい。
【0032】
【発明の効果】
以上の説明から明らかな通り、本発明によると、油煙からオイルミストを除去する複数のフィルタと臭気を除去するフィルタとに分けて設けることによって、長期にわたって安定した油煙処理性能を維持することができる。特に、光触媒を脱臭フィルタに用いると、オイルミストの影響を排除でき、光触媒の性能を維持しながら寿命を延ばすことができる。また、フィルタの交換あるいは洗浄することによって、油煙処理性能を再生することができ、2次処理が不要となり、メンテナンスの容易な油煙処理装置を提供することができる。
【0033】
そして、上記の油煙処理装置は複数のフィルタを組み合わせて構成されているので、キャビネットをコンパクトにすることが可能となり、フライヤに設置してもスペースを取らない。したがって、フライヤの設置場所が限定されることなく、厨房等のレイアウトの変更にも容易に対応できる。
【0034】
また、キャビネットをコンパクトにできるので、既存のフライヤに容易に後付けすることが可能となる。しかも、油煙処理装置として単独で設置することもでき、汎用性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の油煙処理装置を備えたフライヤの概略構成図
【図2】油煙処理装置の構成図
【図3】グリスフィルタの断面図
【符号の説明】
1 調理台
2 油煙処理装置
6 グリスフィルタ
7 HEPAフィルタ
8 多孔質フィルタ
9 脱臭フィルタ
10 吸引装置
11 吸気口
12 排気口
13 キャビネット
20 捕集室
21 脱臭室
23 吸引路
32 光触媒フィルタ
Claims (4)
- 吸気口および排気口を有するキャビネット内に、前記吸気口から排気口に至る吸引路が曲折して形成され、該吸引路に、グリスフィルタ、HEPAフィルタ、多孔質フィルタ、吸引装置が設けられ、これらのフィルタの下流側に脱臭フィルタが隔離されて設けられ、前記吸引路の狭い部分に、前記グリスフィルタ、HEPAフィルタ、多孔質フィルタが配され、前記HEPAフィルタの下流側に前記吸引装置が配され、前記吸引路の広くなった部分に、前記脱臭フィルタが配され、前記HEPAフィルタの前後における吸引路内の静圧の差を低減するために外気導入口が、前記HEPAフィルタよりも下流側の吸引路に形成されたことを特徴とする油煙処理装置。
- 吸気口および排気口を有するキャビネットが、前記吸気口が形成された捕集室と、前記排気口が形成され前記捕集室に連通した脱臭室とに区画され、前記吸気口から排気口に至る吸引路が曲折して形成され、前記捕集室内の吸引路に、グリスフィルタ、HEPAフィルタ、多孔質フィルタ、吸引装置が設けられ、前記脱臭室に脱臭フィルタが設けられ、前記吸引路の狭い部分に、前記グリスフィルタ、HEPAフィルタ、多孔質フィルタが配され、前記HEPAフィルタの下流側に前記吸引装置が配され、前記吸引路の広くなった部分に、前記脱臭フィルタが配され、前記HEPAフィルタの前後における吸引路内の静圧の差を低減するために外気導入口が、前記HEPAフィルタよりも下流側の前記捕集室内の吸引路に形成されたことを特徴とする油煙処理装置。
- 捕集室内の吸引路は、コ字状に形成され、水平部から上昇部に方向を変換する箇所にグリスフィルタが配置され、上昇部にHEPAフィルタ、多孔質フィルタが配置され、前記吸引路は、前記水平部から上昇部にかけて狭く、上昇部より下流側において広がるように形成されたことを特徴とする請求項2記載の油煙処理装置。
- 油槽の上方に、油煙中のオイルミストを捕集する捕集室が設けられ、該捕集室の上方に油煙中の臭気成分を除去する脱臭室が設けられ、前記捕集室に形成された吸気口から前記脱臭室に形成された排気口に至る吸引路が形成され、前記捕集室内の吸引路に、グリスフィルタ、HEPAフィルタ、多孔質フィルタ、吸引装置が設けられ、前記脱臭室に脱臭フィルタが設けられ、前記吸引路の狭い部分に、前記グリスフィルタ、HEPAフィルタ、多孔質フィルタが配され、前記HEPAフィルタの下流側に前記吸引装置が配され、前記吸引路の広くなった部分に、前記脱臭フィルタが配され、前記HEPAフィルタの前後における吸引路内の静圧の差を低減するために外気導入口が、前記HEPAフィルタよりも下流側の前記捕集室内の吸引路に形成されたことを特徴とするフライヤ。
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