JP3567121B2 - 「鉄・ムギネ酸アナログ」葉面散布剤 - Google Patents

「鉄・ムギネ酸アナログ」葉面散布剤 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アベニン酸若しくはその誘導体又はその塩を含有してなる肥料、好ましくは鉄分などの金属成分を含有してなる葉面散布用の肥料、これを用いた植物の育成方法などに関する。また、本発明は、アベニン酸の誘導体又はその塩、その製造方法、及びそのための中間体に関する。
【0002】
【従来の技術】
世界の石灰質土壌、いわゆるアルカリ土壌は、陸地の25%を占めている。この土壌は、炭酸カルシュウムを主成分とするので、土壌溶液のpHが8〜10を示している。この条件下では土壌中の鉄は不溶体化しており、植物は鉄を吸えないので、葉が黄白化症(クロロシス)を示しており、生育不良となる。したがって、この土壌は穀物生産力が非常に低く、穀物生産に適していないが、現在の人口問題を解決するには穀物生産を上げることが必要であり、このような土壌条件下においても穀物生産ができるようになることが望まれている。
【0003】
このようなアルカリ土壌においては土壌がアルカリ性であるために、肥料として鉄系肥料を土壌中に散布しても、土壌のアルカリ性により肥料中の鉄分が不溶化され、その結果植物は土壌中から鉄分を吸収できなくなってしまう。
このように、アルカリ土壌に施用するべき有効な鉄系肥料は、原理的にも不可能なと考えられることから、現在も開発されていない。したがって、植物に必要な鉄分を供給するためには有効な葉面散布剤の開発が望まれている。現在の葉面散布剤は、(旧)チバガイギー社のEDDHA、HEDTA、あるいは世界の各社が生産している試薬であるEDTAなどであるが、これらはいずれも大変高価なうえに鉄の吸収、鉄の体内移動性が充分ではなく、大量の散布が必要である。たとえば、イスラエルでは、キウイフルーツに対してFe−EDDHA原体として30kg/10aという膨大な量を散布している。これは窒素肥料と同等に近い施肥量であり、このような大量散布をすると作物の生産価格が高くなり、安価な穀物を提供することができない。
そこで、安価でかつ有効な鉄分の葉面散布剤の開発が望まれている。
【0004】
また、イネ科植物は、鉄欠乏条件下でムギネ酸類を分泌し、土壌中の3価鉄イオンをキレートして「鉄・ムギネ酸」とし、これを根からそのままの形で吸収している。この天然のムギネ酸類はこれまでにも種々の方法により合成されてきたが、それらはすべて非常に多伎なステップを必要としており、安価で大量合成する方法は未だ見い出されていない。
本発明者らは、必ずしも天然の化合物の合成にこだわらず、合成プロセスが少なく、かつ安価に製造することができる化合物で、しかも天然のムギネ酸と同等の鉄輸送活性を有する化合物の開発を試みた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは植物の鉄分の吸収代謝の機構を解明してきており、本発明は、この鉄分吸収機構の原理にのっとった、新たな鉄分の葉面散布剤を提供することを目的としている。本発明は、葉面から鉄分を供給することにより、植物をアルカリ土壌においても生育させる方法を提供するものである。
また本発明は、葉面から鉄分を吸収させるための新規な化合物、及びその製造方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、次式(I)、
【0007】
【化8】
Figure 0003567121
【0008】
で表されるアベニン酸若しくはその誘導体又はその塩を含有してなる肥料、好ましくはさらに鉄分などの金属成分を含有し、より好ましくはこれらの金属成分を錯体(キレート化物)として含有してなる肥料に関する。本発明の肥料は、葉面散布剤として散布され得る肥料が好ましい。
また、本発明は、前記肥料を散布してなる植物の生育方法、このようにして育成された植物、及び当該植物から得られる穀物に関する。
さらに、本発明は、次式(II)、
【0009】
【化9】
Figure 0003567121
【0010】
(式中、Rは置換基を有してもよい炭化水素基を示し、Rは水素原子又はアルキル基を示し、Rは水酸基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、又はジアルキルアミノ基を示す。)
で表される化合物又はその塩に関する。
また、本発明は、次式(III)
【0011】
【化10】
Figure 0003567121
【0012】
(式中、R、R、Rは、それぞれ同一又は異なって保護基を示し、Yは酸素原子又は窒素原子を示す。)
で表される化合物と、次式(IV)
【0013】
【化11】
Figure 0003567121
【0014】
(式中、Rは置換基を有してもよい炭化水素基又は保護されていてもよい水酸基を示し、Rは水素原子又はアルキル基を示す。)
で表される化合物とを反応させ、次いでアミド基のカルボニル基をメチレン基に還元した後、必要により保護基を除去することからなる次式(II)
【0015】
【化12】
Figure 0003567121
【0016】
(式中、Rは置換基を有してもよい炭化水素基を示し、Rは水素原子又はアルキル基を示し、Rは水酸基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、又はジアルキルアミノ基を示す。)
で表される化合物又はその塩を製造する方法、及び当該中間体に関する。
【0017】
本発明者らは植物の鉄分の吸収代謝の機構を解明してきた。例えば、イネ科植物は、鉄欠乏条件下でムギネ酸類を分泌し、土壌中の3価鉄イオンをキレートして「鉄・ムギネ酸」とし、これを根からそのままの形で吸収している。この天然のムギネ酸類はこれまで何人かの研究者によって合成されたが、それらはすべて非常に多伎なステップを必要としており、安価で大量に合成する方法は未だ成功していない。
そこで本発明者らは、必ずしも天然の化合物の合成にこだわらず、合成化合物よりも合成プロセスが少なく、しかも天然のものと同等の鉄輸送活性を有する化合物を見出すべく、このような化合物の化学構造のデザインを試みた。その結果、デザインされた化合物の中のいくつかのまったく新規なムギネ酸アナログが、デオキシムギネ酸やアベニン酸とまったく同等の鉄輸送活性を有することを見いだした。またこれらが、すべて、鉄の葉面散布剤として、デオキシムギネ酸やアベニン酸と同等のクロロシス治癒能を有していることが分かった。ほかのデザインされた化合物の中には、今回の実験においては充分な鉄輸送活性が見出されなかったが、これらの化合物も、施用方法を詳細に検討すれば、葉面散布剤としての可能性を有していると考えられる。
【0018】
本発明者らは、図1に示す10種の化合物を合成した。これを図1に従って4種類に分類する。化合物(1)はアベニン酸であり、これは次式、
【0019】
【化13】
Figure 0003567121
【0020】
で示される2’−デオキシムギネ酸の末端のアゼチジン環が開環した化合物である。
化合物(2)〜(4)は、アナローグ化合物1と分類される化合物で、前記アベニン酸の1位のカルボキシ末端部分を修飾したものである。
化合物(5)〜(6)は、アナローグ化合物2と分類される化合物で、前記アベニン酸の3”位の水酸基をアミノ基に修飾し、N(1)窒素原子を遊離型又はアルキル置換したものである。
化合物(7)〜(10)は、アナローグ化合物3と分類される化合物で、前記アベニン酸の3”位の水酸基、1位のカルボキシ末端部分、及びN(1)窒素原子を修飾したものである。
【0021】
本発明者らは、図1に示すムギネ酸アナログ化合物(1)〜(10)の鉄輸送活性が天然のムギネ酸と同等の生理活性を有するかどうかを検定するために、まず、59Fe・ムギネ酸アナログの鉄欠乏オオムギでの経根吸収実験を行い、根と茎葉部への短時間での鉄の移行量を測定した。対象として、2’−デオキシムギネ酸(化合物(A))及び次式
【0022】
【化14】
Figure 0003567121
【0023】
で表されるニコチアナミン(化合物(B))を使用した。
実験植物の育成オオムギ(品種:エヒメハダカ1号)を用いて、これをペーパータオルを敷き詰めたバットに播種し、20℃の暗所で発芽させた。春日井水耕液をいれたバットにサランのネットを浮かべたものに、発芽種子を移し、1週間19℃(明)/15℃(暗)条件で育てた。20Lのプラスチック製のボックスに春日井水耕液をいれ、プラスチック製カバーをし、その穴に1本ずつ移植した後、上記と同じ条件で1週間育てた。
【0024】
59Feの経根吸収実験を、あらかじめ59FeCl(比放射能 925MBq/mg)を0.925Beqを入れたものと1.5mgのムギネ酸誘導体(化合物(1)〜(10)、(A)、(B))を混合して反応させ、鉄キレート化合物を作成し1時間放置した。この全量を春日井水耕液100mLに入れ混合する。オオムギ幼植物1本を根部のみが水耕液に浸かるように入れ、19℃、10,000ルックス(Lux)の人工気象室の条件下で吸収をスタートさせた。
105分の吸収の後、植物体を取り出し、1mMのEDTA溶液に根を浸け、1分間緩やかに撹拌しながら根に吸着している放射能を洗い落とした。直ちに根と、茎葉部を切り放し、それぞれの生体重を測定し、それぞれを、ガラスチューブに詰め、シンチレーションカウンターでガンマー線量を測定した。化合物が合成された日時が異なるので、実験は、3回にわけて行われた。
【0025】
実験に使用した化合物別の実験結果を、図2、図3、図4に示した。化合物(2)、化合物(3)及び化合物(A)の結果を図2に、化合物(1)、化合物(4)、化合物(5)、化合物(6)及び化合物(A)の結果を図3に、化合物(7)、化合物(8)、化合物(9)、化合物(10)、化合物(A)及び化合物(B)の結果を図4にそれぞれ示す。図2、図3、及び図4の縦軸はいずれも59Feの吸収量(cpm)であるが、そのスケールはそれぞれの図で異なっている。また、図2、図3、及び図4のそれぞれの下段は根部での吸収量を示し、上段は茎葉部の吸収量を示している。両方の吸収量を併せたものが総吸収量(吸収活性)であり、根部と茎葉部の放射能の合量である。移行活性は、茎葉部の放射能量として示された。
【0026】
この結果から、各化合物におけるその定性的な序列を示すと次のとおりである。
吸収活性の序列は高いものからでは、
1,2,4>3,A>6>B>10>5>7,8,9
移行活性の序列は高いものからでは、
1,2,3,4,A>B>7,8,9>10>5,6
であることがわかった。
化合物(1)、(2)、(3)及び(4)はいずれも、対象の化合物(A)や化合物(B)よりも吸収活性及び移行活性において優れた活性を有していることがわかる。化合物(5)〜(10)も弱いながらもこれらの活性を有していることがわかる。
【0027】
ここで用いられた化合物のうち、デオキシムギネ酸(化合物(A))、アベニン酸(化合物(1))、ニコチアナミン(化合物(B))は天然に存在するものである。これまで同定された鉄の移行活性(実験的には茎葉部への移行量で代表される)を有するムギネ酸類の構造を総括して、野本らは、1,4’,4”位置のカルボキシル基(COOH)、N(1)、N(2)、及び3”−OHが、Fe3+との6つの結合座に必須であることを提唱している(Nomoto K et al., Plants and Animals. VCH publishers. 1987)。この仮定を参考にして、今回の実験結果を考察した。また、今回の考察においては、すべてのイネ科植物に存在しているデオキシムギネ酸の「鉄・デオキシムギネ酸」化合物(化合物(A))を鉄吸収活性の比較対照として、他の化合物(1)〜(10)の鉄錯体のオオムギにおける吸収活性を考察した。
【0028】
まず、3”−末端の官能基として、NH基とOH基を考察した。
化合物(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、及び(B)はいずれも3”−末端はNH基である。これらはいずれも移行活性がデオキシムギネ酸(化合物(A))と比べてきわめて低い。わずかに、化合物(B)のニコチアナミンが、50%の活性を有している。また、化合物(5)及び(6)は根への蓄積量が比較的多く化合物(12)とともに吸収活性が存在することが明らかである。すなわち化合物(5)及び(6)は吸収はするけれども茎葉部への移行はしない。それに対して、化合物(B)は多少は移行する。
一方、3”−末端にOH基をもつ化合物(1)、(2)、(3)、及び(4)はデオキシムギネ酸(A)とほぼ同等の吸収活性と移行活性を持っている。これらのことは、この位置のNH基はOH基よりも3価の鉄イオン(Fe3+)との結合力が強いために、細胞膜に存在するムギネ酸鉄トランスポーターを容易に通っていったん根の細胞内に吸収されるが、その後の茎葉部へのFe3+の移行のプロセスがうまくいっていないことを示唆している。
【0029】
茎葉部に移行するために、もしいったんクエン酸のような化合物にFe3+が受け渡されなければならないとするならば、化合物(B)のNH基の方が化合物(5)や(6)のNH基よりも、結合が弱いので、より容易に受け渡しが行われ、その結果、化合物(B)の茎葉部への移行(移行活性)が高まったのかも知れない。また、OH基を持つ一連のFe3+イオンとの錯化合物は容易に根の細胞膜のムギネ酸トランスポーターを通過するために、吸収活性が高い。またNH基に比べてOH基のほうがFe3+に対する結合力が弱いので、このOH基を持つ一連の化合物は最も容易にクエン酸のような化合物にFe3+イオンを受け渡して、結果的に移行活性も高かったとも考えられる。化合物(10)のようにOH基を持つにもかかわらず、活性の低いものについては、つぎに述べる左端の構造の違いによるものであると考えられる。
【0030】
次に、左端部分の構造、即ち、N(1)と1位のカルボキシル基の酸素原子(O(1))の周辺の構造について考察する。
前記した野本らの報告によれば、N(1)もO(1)のいずれもFe3+イオンとの錯化合物を形成するために必要な元素である。しかし、N(1)がアゼチジン環の環を構成する原子でなくてもよいことは、天然物であるデオキシムギネ酸(化合物(11))とアゼチジン環が開環したアベニン酸(化合物(1))が同様の移行活性をもつことから、以前から分かっていたことである。
実野らは、「ムギネ酸・コバルト」の立体構造はアゼチジン環のN(1)−C(2)−COO(1)の構成面に対して環の部分が外側に飛び出していると報告している(Mino Y et al. Inorg Chem. 20, 3440, 1981)。したがって、アゼチジン環が形成されている場合には、この環の部分は、Fe3+が配座を組むためにN(1)及びO(1)に接近する時の立体障害にならないと考えられる。一方、アベニン酸の場合は、アゼチジン環は形成されていないが、水溶液中では末端のOHのHがN(1)に接近して水素結合により緩い6員環を形成し、アゼチジン環が形成されている場合と同様な立体配置となり、この環化も、Fe3+がN(1)やO(1)に接近する時の立体障害にならないと考えられる。
【0031】
このように考えると、
(イ)化合物(2)は、末端のCH基がN(1)とO(1)に影響する距離にな いことがFe3+とこの2原子とのリガンド形成を妨害しない。
(ロ)化合物(3)は、末端OHとN(1)との間で緩い水素結合をすることによる外向きの緩い5員環を形成する。このことがリガンド形成を妨害しない。(ハ)化合物(4)も、化合物(3)と同じく、OHとN(1)との間で緩い水 素結合をすることによる外向きの緩い5員環を形成する。このときの末端C H基は更に外側に向いており、N(1)とO(1)に影響する距離にない。したがって、5員環もCH基もFe3+とこの2原子とのリガンド形成を妨害しない。これらのことが化合物(1)、(2)、(3)、及び(4)が、化合物(11)と等価な移行活性を有する理由と考えられる。これに対して、化合物(10)の場合は、N(1)にイオン半径の大きいCH基が直接ついているために、N(1)近傍は大きな立体障害がおこっており、Fe3+イオンの接近を妨げている。そのためにリガンド形成が起こらない。したがって吸収活性そのものが低いと考えられる。
【0032】
以上のことから、デオキシムギネ酸における3”位にはFe3+イオンと比較的弱い結合をしうる官能基(元素)が存在することが移行活性を高くするために重要であり、Fe3+イオンとN(1)及びO(1)が結合しうるための立体障害が存在しないことが吸収活性を活性を高めるために重要であることが分かった。
【0033】
次に、鉄分の経葉吸収について検討した。アルカリ土壌のように根部からの吸収が困難な場合には、土壌以外の葉などからの吸収が重要となってくるのであるが、葉などからの吸収が根部からの吸収と同様であるか否かということの詳細はわかっていない。
根部からの吸収が知られている「鉄(59Fe)・ムギネ酸」をオオムギの葉の切断面から吸収させると、速やかに数十分ですべての分岐根の先端に到達し、最新葉にも転流することが本発明者の研究で明らかにされている(Mori S: Iron transport in graminaceous plants. Metal Ions In Biological Systems. Marcel Dekker,Inc. 1998)。しかし、このような根からの吸収活性や移行活性が高い化合物が必ずしも葉面散布剤に適しているとはいえない。実用的な葉面吸収剤としての適性は、光分解しにくいこと、クチクラ層や細胞膜の透過性がいいこと。細胞内での実際上のキレーターとの鉄の交換反応がスムースにおこなわれる適度の鉄キレート力を持つこと、など、いくつもの難関をクリアーしなければならない。現段階の知見からでは、どういう構造が適しているかを理論的に詳細に詰めることは出来ない。結局、実用化のための散布試験を実際に行ってみるしかない。
【0034】
そこで、前記した化合物(1)〜(10)、(A)、及び(B)を用いて経葉吸収の実験をした。実験には、鉄欠乏クロロシスを呈するオオムギを用いた。
即ち、発芽後移植したオオムギ幼植物を通常の春日井水耕液(畑作用)組成で、人工気象室で1週間育てる。その後、鉄のみを抜いた春日井水耕液で2週間育てる。およそ第4葉まで生育し、第5葉が激しいクロロシスを呈している。このクロロフィル含量を、クロロフィルメーターで測っておく。
この植物に対して、展着剤(商品名ダイン:武田園芸株式会社)1mL/10L入りの1mMの試験溶液(「鉄・化合物(1)〜(10)、(A)、及び、(B)」溶液)を作成し、これを暗条件下で第2、3、4葉の裏表に噴霧器でていねいにスプレイする。散布後1日目、2日目、3日目、と順次クロロフィルメーターで第5葉を測定する。
結果を次の表1に示す。
【0035】
【表1】
Figure 0003567121
【0036】
表1にはクロロフィルメーターインデックスを示している。用いた化合物は図1に示す化合物(1)〜(10)、並びに対照化合物である化合物(A)及び化合物(B)である。
表1に示すように、化合物(1)、(2)、(3)、(4)、及び(A)のいずれの化合物も3日目で完全に最新葉のクロロシスを回復させた。これらの化合物間に差はなかった。これらの鉄・化合物が第2、第3、第4葉から吸収されて容易に最新葉である第5葉に移行し、鉄が有効利用されてクロロフィル合成に使われたことを示している。化合物(12)も多少の回復力を示した。
また、化合物(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)に関しては弱い効果しかみられなかったが、クロロシスを回復させる効果が示されている。対象作物を変えたり、展着剤の組成を変えたりしてより詳細な検討を行えば、有効な葉面散布剤としての可能性がまだ残されている。
【0037】
【発明の実施の態様】
本発明の一般式(II)や一般式(IV)のRにおける炭化水素基としては、一般式(II)で表される化合物がFe3+と配座を組むためにそのN(1)及びO(1)に接近する時の立体障害にならないものであれば特に制限はない。また、立体的に大きなものであっても、水素結合などにより環を形成して立体障害にならないようになるものであれば特に制限はない。例えば、炭素数1〜10、好ましくは1〜5程度の直鎖又は分枝した低級アルキル基、炭素数2〜10、好ましくは2〜5程度の直鎖又は分枝した低級アルケニル基や、環状の炭化水素基などが挙げられるが、合成上の観点などから低級アルキル基が好ましい。また、当該炭化水素基における置換基としては、N(1)原子と水素結合して形成される環が立体障害を起こさないようになるものが好ましい。例えば、水酸基、アミノ基などの水素原子を有する官能基や、N(1)原子に水素原子が結合している場合には、当該水素原子と水素結合を形成することができるメトキシ基、エトキシ基などの低級アルコキシ基や、ケトン基やアルデヒド基などのカルボニル基などであってもよいが、一般的には水酸基が好ましい置換基である。
【0038】
本発明の一般式(II)や一般式(IV)のR、Rにおけるアルコキシ基、アルキルアミノ基、又はジアルキルアミノ基の「アルキル基」としては、メチル基、エチル基などの炭素数1〜10、好ましくは1〜5の低級アルキル基が好ましい。
また、本発明の一般式(III)や一般式(IV)における「保護基」としては、ペプチド合成などに使用される保護基を用いることができるが、低級アルキル基などであってもよい。例えば、tert−ブチル基などが挙げられる。
【0039】
本発明の一般式(I)又は(II)で表される化合物の製造方法としては、種々の合成方法を採用することができるが、一般式(III)で表される化合物を中間体として合成するのが好ましい。保護基としてtert−ブチル基を用いた場合の一般式(III)で表される化合物のYが酸素原子の場合の製造例を次の反応式で例示する。
【0040】
【化15】
Figure 0003567121
【0041】
また、Yが窒素原子の場合のものも、対応する原子が窒素原子の原料を用いて前記の方法と同様にして製造することができる。その製造方法の具体例をつぎの反応式で例示する。
【0042】
【化16】
Figure 0003567121
【0043】
反応式中のBnはベンジル基を示し、t−Buはtert−ブチル基を示し、Btはブチル基を示す。
化合物(11)のベンジルエステルをイソブチレンを用いてtert−ブチル化しtert−ブチルエステル(12)とし、これを接触還元してベンジル基をはずして遊離ものカルボン酸(13)とする。これにメチル・tert−ブチルジエステル(14)を反応させてアミド体(15)とし、次いでメチルエステル部分を加水分解して目的の化合物(16)を得ることができる。
また、化合物(38)は、N−tert−ブトキシカルボニル(N−Boc)基を有する対応する化合物(36)を用いて同様に製造することができる。
一般式(III)で表される化合物、例えば化合物(16)又は(38)は末端に遊離のカルボキシル基を有するアミド体であり、比較的容易に合成することができる化合物であると同時に、当該アミド基はチオカルボニル化した後容易にメチレン基まで還元することができることから、優れた中間体である。さらにこの中間体は末端に遊離の反応性のカルボキシル基を有しており、アミノ基や水酸基を有する化合物と容易に反応することができる。
この中間体(16)を用いたアベニン酸の製造方法をつぎの反応式で例示する。
【0044】
【化17】
Figure 0003567121
【0045】
まず、アベニン酸のN末端側を製造する。L−4−ヒドロキシ−2−アミノブタン酸のN−ベンジルオキシカルボニル(Cbz)体(17)の末端水酸基をブトキシカルボニル(Boc)化して化合物(18)とした後、Cbz基を接触還元により脱離させて化合物(19)を得る。これを前記の化合物(16)を用いてアミド化してアミド体(20)とし、このアミド体をラウェソン試薬(Lawesson’s reagent)を用いてチオアミド体(21)した後、これをラネーニッケルを用いて還元してメチレン体(22)を得る。これの保護基を脱離させると目的のアベニン酸(1)を製造することができる。
化合物(16)又は化合物(38)の末端カルボキシル基と反応させるアミノ化合物として種々のものを用いることにより、各種のアベニン酸誘導体を製造することができる。
例えば、以下に前記した化合物(2)、(3)、(4)、(5)及び(6)を例示する。
【0046】
【化18】
Figure 0003567121
【0047】
【化19】
Figure 0003567121
【0048】
【化20】
Figure 0003567121
【0049】
【化21】
Figure 0003567121
【0050】
【化22】
Figure 0003567121
【0051】
本発明の化合物の製造方法を例示してきたが、本発明の化合物の製造方法としてはこれらの方法に限定されるものではなく、他の任意の方法によって製造してもよい。
また、本発明の化合物の製造条件としては、通常の合成化学又はペプチド合成の方法にしたがって、適宜選定することができる。
【0052】
本発明の肥料は、前記してきたムギネ酸若しくはアベニン酸又はこれらの誘導体と金属成分を含有するものである。金属成分としてはムギネ酸若しくはアベニン酸又はこれらの誘導体と錯体又はキレートを形成するものが好ましい。本発明における錯化は、錯体やキレート化物の形成を包含している。好ましい金属成分としては、鉄が挙げられる。より好ましくは3価鉄イオンが挙げられる。
これらの金属成分はムギネ酸若しくはアベニン酸又はこれらの誘導体と混合してもよいが、事前に錯体化又はキレート化しておくのが好ましい。
【0053】
一般に3価鉄イオンを抱えている化合物は、光により自動還元されて鉄が2価鉄イオン(Fe2+)となり、これが生体内で代謝的に発生した過酸化水素(H2O2)と反応して、以下のフェントン反応を起こし、ラジカル(・OH)を形成しやすく、このラジカルがムギネ酸若しくはアベニン酸又はこれらの誘導体そのものを破壊して葉面散布剤としての効果を短期間のうちに無効化する可能性がある。したがって、発生した、ラジカルを直ちに吸収するラジカルスカベンジャーを展着剤の中にいれて肥料成分の無効化を防ぐということも必要である。
【0054】
本発明の肥料は前記してきた成分のほかに展開剤、ラジカル補足剤、紫外線防止剤、分散剤、崩壊剤などの成分を必要に応じて添加することもできる。また、本発明の成分に悪影響を与えない範囲において、他の肥料成分や生長調整剤などを配合することもできる。
【0055】
【実施例】
以下に実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
実施例1 (3S,3’S)−3−(3−t−ブトキシ−3−t−ブトキシカルボニルプロピオンアミド)−3−t−ブトキシカルボニルプロピオン酸(化合物(16))の製造
(1) (S)−2−t−ブトキシ−3−ベンジルオキシカルボニルプロピオン酸 t−ブチルエステル(化合物(12))の製造
標記の化合物(12)を次に示す化学反応により製造した。
【0057】
【化23】
Figure 0003567121
【0058】
アルゴン雰囲気下、化合物(11)(T.Ouchi, A.Fujio, Malcromol. Chem. 1989, 19O, 1523.)(10.0g、44.6mmol)の塩化メチレン(30ml)溶液に、濃硫酸(1.5ml)を加えた後、イソブテン(25ml)の塩化メチレン(40ml)溶液を加えた。密栓をして室温で一晩攪拌した後、減圧濃縮した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=15:1)により精製し、8.19g(24.4mmol、54.6%)の12を無色油状物質として得た。
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
1.18(9H, s, −OBu), 1.44(9H, s, −COBu), 2.68(2H, m, H−3),
4.34(1H, dd, J=6.3Hz, 7.0Hz, H−2), 5.07(1H, d, J=11.3Hz, −CHPh),
5.18(1H, d, J=11.3Hz, −CHPh), 7.35(5H, m, −CHPh)
(2) (S)−3−t−ブトキシ−3−t−ブトキシカルボニルプロピオン酸t−ブチルエステル(化合物(13))の製造
標記の化合物(13)を次に示す化学反応により製造した。
【0059】
【化24】
Figure 0003567121
【0060】
前記(1)で得た化合物(12)(1.70g、5.06mmol)の酢酸エチル(20ml)溶液中にパラジウム活性炭(400mg)を懸濁し、水素雰囲気下、室温で3時間激しく攪拌した。反応混合物をセライトで濾過した後、濾液を減圧濃縮し、1.23g(5.00mmol、98.8%)の目的の化合物(13)を無色油状物質として得た。
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
1.19(9H, s, −OBu), 1.46(9H, s, −COBu), 2.62(1H, dd, J=7.4Hz, 14.8Hz, H−2a), 2.69(1H, dd, J=6.3Hz, 14.8Hz, H−2b), 4.31(1H, dd, J=6.3Hz, 7.4Hz, H−3)
【0061】
(3) (2S,3’S)− 2−(3−t−ブトキシ−3−t−ブトキシカルボニルプロピオンアミド)−3−メトキシカルボニルプロピオン酸 t−ブチルエステル(化合物(15))の製造
標記の化合物(15)を次に示す化学反応により製造した。
【0062】
【化25】
Figure 0003567121
【0063】
アルゴン雰囲気下、化合物(14)(M.Bergmann, L.Zervas Bet. 1932, 65, 1192.)(11.9g、58.6mmol)及び化合物(13)(12.2g、49.6mmol)の無水THF(500ml)溶液を入れた反応容器を0℃に冷却し、HOBt(8.11g、60.0mmol)、DCC(11.3g、60.0mmol)を加えた。室温で一晩攪拌した後、反応混合物をセライトを用いて濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣を酢酸エチルを用いて希釈し、これを飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、1N塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄した。さらに、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した後、減圧濃縮した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=4:1−3:1)により精製し、18.1g(42.0mmol、84.7%)の目的の化合物(15)を無色油状物質として得た。
[α] 23+3.91°(c 1.065, CHCl
IR(film) νmax(cm−1
3360(m), 2980(s), 1750(s), 1680(s), 1400(w), 1370(m), 1160(m), 1100(m), 850(m)H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
1.13(9H, s, −OBu), 1.41(18H, s, −COBu), 2.44(1H, dd, J=9.5Hz, 13.8Hz, H−2’a), 2.54(1H, dd, J=3.5Hz, 13.8Hz, H−2’b), 2.78(1H, dd, J=5.0Hz, 17.3Hz, H−3a), 2.97(1H, dd, J=4.5Hz, 17.3Hz, H−3b), 3.67(3H, s, −COMe), 4.30(1H, dd, J=3.5Hz, 9.5Hz, H−3’), 4.70(1H, dt, J=7.5Hz, 5.0Hz, H−2), 6.73(1H, d, J=7.5Hz, N−H)
(4) (3S,3’S)−3−(3−t−ブトキシ−3−t−ブトキシカルボニルプロピオンアミド)−3−t−ブトキシカルボニルプロピオン酸(化合物(16))の製造
標記の化合物(16)を次に示す化学反応により製造した。
【0064】
【化26】
Figure 0003567121
【0065】
前記の(3)で得た化合物(15)(1.00g、2.32mmol)のメタノール(10ml)溶液を0℃に冷却し、0.5N水酸化カリウム水溶液(6.6ml、3.3mmol)を滴下した。室温で5時間攪拌した後、減圧濃縮によりメタノールを除去した。残った粗生成物の水溶液を酢酸エチルで洗浄した後、水層を1N塩酸を用いてpH2とし、これをクロロホルムで抽出した。抽出液を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濾液を減圧濃縮した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)により精製し、697mg(1.67mmol、72.0%)の目的の化合物(16)を無色油状物質として得た。
[α] 23−4.52°(c 1.01, CHCl
IR(film) νmax(cm−1
3380(m), 2980(s), 1730(s), 1650(m), 1540(m), 1370(m), 1160(m), 1100(w), 960(m), 840(m), 760(m)
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
1.14(9H, s, −OBu), 1.41(9H, s, −COBu), 1.43(9H, s, −COBu), 2.46(1H, dd, J=2.8Hz, 13.0Hz, H−2’a), 2.64(1H, dd, J=3.5Hz, 17.8Hz, H−2a), 2.75(1H, dd, J=10.5Hz, 13.0Hz, H−2’b), 3.15(1H, dd, J=4.0Hz, 17.8Hz, H−2b), 4.42(1H, dd, J=2.8Hz, 10.5Hz, H−3’), 4.83(1H, dt, J=9.5Hz, 3.8Hz, H−3), 7.48(1H, d, J=9.5Hz, N−H)
【0066】
実施例2 アベニン酸(化合物(1))の製造
(1) N−Cbz−O−Boc−L−ホモセリン t−ブチルエステル(化合物(18))
標記の化合物(18)を次に示す化学反応により製造した。
【0067】
【化27】
Figure 0003567121
【0068】
アルゴン雰囲気下、化合物(17)(P.M.Valerio, P.F.Alewood, R.B.Johns, Synthesis 1988, 19, 786.)(400mg、1.29mmol)の塩化メチレン(20ml)溶液を0℃に冷却し、ピリジン(520μl、6.45mmol)、BocO(563mg、2.58mmol)、DMAP(10mg)を加えた。4℃で6時間攪拌した後、反応溶液に酢酸エチルを加え、これを1N塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた後、濾過し、減圧濃縮した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=9:1)により精製し、344mg(0.840mmol、65.0%)の目的の化合物(18)を無色油状物質として得た。
IR(film) νmax(cm−1
3350(s), 2980(s), 1740(s), 1520(m), 1370(w), 1280(m), 1160(m), 850(m), 750(m), 700(m)
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
1.46(18H, s, −COBu, Boc), 1.95−2.28(2H, m, H−3), 4.16−4.23(2H, m, H−4), 4.36(1H, q, J=6.0Hz, H−2), 5.10(2H, s, −CHPh), 5.42(1H, d, J=7.5Hz, N−H), 7.35(5H, m, −CHPh)
(2) O−Boc−L−ホモセリン t−ブチルエステル(化合物(19))の製造
標記の化合物(19)を次に示す化学反応により製造した。
【0069】
【化28】
Figure 0003567121
【0070】
化合物(18)(900mg、2.20mmol)の酢酸エチル(20ml)溶液中にパラジウム活性炭(300mg)を懸濁し、水素雰囲気下、室温で3時間激しく攪拌した。反応混合物をセライトで濾過した後、濾液を減圧濃縮し、605mg(2.20mmol、100%)の化合物(19)を無色油状物質として得た。
IR(film) νmax(cm−1
3390(m), 2980(s), 1740(s), 1460(m), 1370(m), 1280(m), 1160(m), 990(w), 850(m), 790(w)
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
1.46(18H, s, −COBu, Boc), 1.88(1H, m, H−3a), 2.15(1H, m, H−3b), 2.40(2H, br, NH), 3.55(1H, dd, J=4.8Hz, 7.8Hz, H−2), 4.23(2H, dd, J=6.0Hz, 7.2Hz, H−4)
(3) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−t−ブトキシ−3−t−ブトキシカルボニルプピオンアミド)−3−t−ブトキシカルボニルプロパノイル]−O−Boc−ホモセリン t−ブチルエステル(化合物(20))の製造
標記の化合物(20)を次に示す化学反応により製造した。
【0071】
【化29】
Figure 0003567121
【0072】
アルゴン雰囲気下、前記(2)で得た化合物(19)(600mg、2.18mmol)及び実施例1で得た化合物(16)(990mg、2.37mmol)の無水THF(50ml)溶液を入れた反応容器を0℃に冷却しHOBt(355mg、2.62mmol)、DCC(541mg、2.62mmol)を加えた。実施例1の(3)と同様の方法により粗生成物を得た。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1−2:1)により精製し、722mg(1.14mmol、52.5%)の化合物(20)を無色油状物質として得た。
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
1.18(9H, s, −OBu), 1.41(18H, s, −COBu or Boc), 1.43(18H, s, −COBu or Boc), 2.06(1H, dq, J=14.7Hz, 6.3Hz, H−3a), 2.19(1H, dq, J=14.7Hz, 6.3Hz, H−3b), 2.49(1H, dd, J=8.7Hz, 14.7Hz, H−2”a), 2.56(1H, dd, J=3.8Hz, 14.7Hz, H−2”b), 2.68(1H, dd, J=4.2Hz, 15.3Hz, H−2’a), 2.88(1H, dd, J=3.9Hz, 15.3Hz, H−2’b), 4.11(2H, m, H−4), 4.35(1H, dd, J=3.8Hz, 8.7Hz, H−3”), 4.51(1H, dt, J=7.5Hz, 6.3Hz, H−2), 4.70(1H, dt, J=8.4Hz, 3.9Hz, H−3’), 6.41(1H, d, J=7.5Hz, N−H), 7.04 (1H, d, J=8.4Hz, N’−H)
(4) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−t−ブトキシ−3−t−ブトキシカルボニルプロパノイルチオアミド)−3−t−ブトキシカルボニルプロパンチオオイル]−O−Boc−ホモセリン t−ブチルエステル(化合物(21))の製造
標記の化合物(21)を次に示す化学反応により製造した。
【0073】
【化30】
Figure 0003567121
【0074】
アルゴン雰囲気下、化合物(20)(750mg、1.11mmol)のベンゼン(15ml)溶液にLawesson試薬(540mg、1.33mmol)を加えた。反応溶液を2時間80℃で還流させた後、減圧濃縮した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:酢酸エチル=1:0−20:1)により精製し、630mg(0.891mmol、80.2%)の化合物(21)を黄色油状物質として得た。
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
1.18(9H, s, −OBu), 1.43(18H, s, −COBu or Boc), 1.45(9H, s, −COBu or Boc), 1.46(9H, s, −COBu or Boc), 2.25(1H, m, H−3a), 2.43(1H, dq, J=15.0Hz, 6.0Hz, H−3b), 2.97(1H, dd, J=8.7Hz, 12.9Hz, H−2”a), 3.05(1H, dd, J=3.9Hz, 12.9Hz, H−2”b), 3.22(1H, dd, J=7.5Hz, 14.4Hz, H−2’a), 3.46(1H, dd, J=3.0Hz, 14.4Hz, H−2’b), 4.14(2H, m, H−4), 4.36(1H, dd, J=3.9Hz, 8.7Hz, H−3”), 5.09(1H, dt, J=7.5Hz, 6.0Hz, H−2), 5.16(1H, dt, J=3.0Hz, 7.5Hz, H−3’), 8.66(1H, d, J=7.5Hz, N−H), 9.03(1H, d, J=7.5Hz, N’−H)
(5) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−t−ブトキシ−3−t−ブトキシカルボニルプロピルアミノ)−3−t−ブトキシカルボニルプロピル]−O−Boc−ホモセリン t−ブチルエステル(化合物(2 2))の製造
標記の化合物(22)を次に示す化学反応により製造した。
【0075】
【化31】
Figure 0003567121
【0076】
化合物(21)(410mg、0.580mmol)のエタノール(4ml)溶液にラネーニッケル(W2)のエタノール懸濁液(約0.5g/ml、20ml)を加えた。室温で30分攪拌した後、反応混合物をセライトを用いて濾過し、濾液を減圧濃縮した。
残渣を2度のシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1−2:1、塩化メチレン:酢酸エチル=5:1−0:1)により精製し、123mg(0.190mmol、32.8%)の化合物(22)を無色油状物質として得た。
IR(film) νmax(cm−1
3340(w), 2980(s), 1730(s), 1480(m), 1390(m), 1370(m), 1280(m), 1150(m), 960(w), 850(m), 790(m)
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
1.18(9H, s, −OBu), 1.42(27H, s, −COBu or Boc), 1.46(9H, s, −COBu or Boc), 1.55−1.79(6H, m, N−H, N’−H, H−2’, H−2”), 1.81(1H, dq, J=13.5Hz, 6.0Hz, H−3a), 1.95(1H, dq, J=13.5Hz, 6.0Hz, H−3b), 2.46−2.78(4H, m, H−1’, H−1”), 3.14(1H, t, J=6.0Hz, H−3” or H−2), 3.17(1H, t, J=6.0Hz, H−2 or H−3”), 3.92(1H, t, J=6.0Hz, H−3’), 4.16(2H, t, J=6.0Hz, H−4)
(6) アベニン酸(化合物(1))の製造
標記の化合物(1)を次に示す化学反応により製造した。
【0077】
【化32】
Figure 0003567121
【0078】
化合物(22)(40mg、0.062mmol)を0℃でトリフルオロ酢酸(10ml)に溶解させて、4℃で一晩攪拌した。減圧濃縮することにより、粗生成物をトリフルオロ酢酸塩として得た。
残渣をイオン交換クロマトグラフィーにより精製し、21mg(0.065mmol、quant.)の標記の化合物(1)を白色粉末として得た。
IR(film) νmax(cm−1
3420(s, −NH, −OH), 2850(m, −NH ), 1690(m, −COH), 1580(s, −CO ), 1400(m, −CO ), 1280(w), 1200(w), 1050(m), 800(m), 680(m)H−NMR (300MHz, 1N NaOD in DO) δ(ppm)
1.25−1.80(6H, m, H−2’, H−2”, H−3), 2.05−2.51(4H, m, H−1’, H−1”), 2.81(1H, dd, J=6.2Hz, 7.3Hz, H−2 or H−3’), 2.85(1H, t, J=6.8Hz, H−2 or H−3’), 3.35(2H, t, J=7.0Hz, H−4), 3.78(1H, dd, J=4.0Hz, 7.8Hz, H−3”)
13C−NMR (75MHz, 1N NaOD in DO) δ(ppm)
33.9, 34.9, 36.4(C−2’, C−2”, C−3), 45.1, 45.4(C−1’, C−1”), 60.2(C−4), 62.2, 63.3(C−2, C−3’), 72.1(C−3”), 182.5, 183.2(−COH)
【0079】
実施例3 (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−ヒドロキシ−3−カルボキシプロピルアミノ)−3−カルボキシプロピル] アラニン(化合物(2))の製造
(1) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−t−ブトキシ−3−t−ブトキシカルボニルプロピオンアミド)−3−t−ブトキシカルボニルプロパノイル]アラニン t−ブチルエステル(化合物(24))の製造
標記の化合物(24)を次に示す化学反応により製造した。
【0080】
【化33】
Figure 0003567121
【0081】
アルゴン雰囲気下、化合物(23)(G.W.Anderson, F.M.Callahan, J. Am. Chem. Soc. 1960, 82, 3359.)(460mg、3.23mmol)、及び実施例1で得た化合物(16)(690mg、1.65mmol)の無水THF(50ml)溶液を入れた反応容器を、0℃に冷却し、HOBt(250mg、1.85mmol)、DCC(370mg、1.79mmol)を加えた。実施例1の(3)と同様の方法により粗生成物を得た。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=2:1−1:1)により精製し、785mg(1.44mmol、87.2%)の化合物(24)を無色油状物質として得た。
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
1.17(9H, s, −OBu), 1.35(3H, d, J=7.5Hz, H−3), 1.44(27H, s, −COBu), 2.51(1H, dd, J=8.6Hz, 12.5Hz, H−2”a), 2.56(1H, dd, J=3.6Hz, 12.5Hz, H−2”b), 2.61(1H, dd, J=6.4Hz, 14.3Hz, H−2’a), 2.83(1H, dd, J=5.0Hz, 14.3Hz, H−2’b), 4.36(1H, dd, J=3.6Hz, 8.6Hz, H−3”), 4.41(1H, qui, J=7.5Hz, H−2), 4.72(1H, ddd, J=5.0Hz, 6.4Hz, 7.8Hz, H−3’), 6.33(1H, d, J=7.5Hz, N−H), 7.12(1H, d, J=7.8Hz, N’−H)
(2) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−t−ブトキシ−3−t−ブトキシカルボニルプロパンチオアミド)−3−t−ブトキシカルボニルプロパンチオオイル]アラニン t−ブチルエステル(化合物(25))の製造
標記の化合物(25)を次に示す化学反応により製造した。
【0082】
【化34】
Figure 0003567121
【0083】
アルゴン雰囲気下、化合物(24)(250mg、0.459mmol)のベンゼン(15ml)溶液に、Lawesson試薬(204mg、0.505mmol)を加えた。反応溶液を2時間80℃で還流させた後、減圧濃縮した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:酢酸エチル=1:0−20:1)により精製し、240mg(0.416mmol、90.7%)の化合物(25)を黄色油状物質として得た。
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
1.20(9H, s, −OBu), 1.43(9H, s, −COBu), 1.46(18H, s, −COBu), 1.52(3H, d, J=7.5Hz, H−3), 2.98(1H, dd, J=8.8Hz, 13.2Hz, H−2”a), 3.06(1H, dd, J=5.5Hz, 13.2Hz, H−2”b), 3.19(1H, dd, J=8.0Hz, 15.0Hz, H−2’a), 3.42(1H, dd, J=2.8Hz, 15.0Hz, H−2’b), 4.42(1H, dd, J=5.5Hz, 8.8Hz, H−3”), 4.95(1H, qui, J=7.5Hz, H−2), 5.26(1H, dt, J=2.8Hz, 8.0Hz, H−3’), 8.39(1H, d, J=7.5Hz, N−H), 9.20(1H, d, J=8.0Hz, N’−H)
(3) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−t−ブトキシ−3−t−ブトキシカルボニルプロピルアミノ)−3−t−ブトキシカルボニルプロピル]アラニン t−ブチルエステル(化合物(26))の製造
標記の化合物(26)を次に示す化学反応により製造した。
【0084】
【化35】
Figure 0003567121
【0085】
化合物(25)(450mg、0.780mmol)のエタノール(3ml)溶液にラネーニッケル(W2)のエタノール懸濁液(約0.5g/ml、9ml)を加えた。室温で30分攪拌した後、反応混合物をセライトを用いて濾過し、濾液を減圧濃縮した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1−0:1)により精製し、160mg(0.310mmol、39.7%)の化合物(26)を無色油状物質として得た。
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
1.16(9H, s, −OBu), 1.23(3H, d, J=7.4Hz, H−3), 1.45(27H, s, −COBu), 1.61−1.87(6H, m, N−H, N’−H, H−2’, H−2”), 2.47−2.78(4H, m, H−1’, H−1”), 3.15(1H, t, J=6.0Hz, H−3”), 3.18(1H, q, J=7.4Hz, H−2), 3.92(1H, t, J=7.0Hz, H−3’)
(4) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−ヒドロキシ−3−カルボキシプロピルアミノ)−3−カルボキシプロピル]アラニン(化合物(2)) の製造
標記の化合物(2)を次に示す化学反応により製造した。
【0086】
【化36】
Figure 0003567121
【0087】
化合物(26)(80mg、0.155mmol)を0℃でトリフルオロ酢酸(10ml)に溶解させて、4℃で一晩攪拌した。減圧濃縮することにより、目的の化合物(2)(82mg、quant.)をトリフルオロ酢酸塩として得た。
H−NMR (300MHz, DO) δ(ppm)
1.36(3H, d, J=7.3Hz, H−3), 1.80−2.23(4H, m, H−2’, H−2”), 3.02−3.18(4H, m, H−1’, H−1”), 3.76(1H, dd, J=5.3Hz, 8.0Hz, H−3’), 3.83(1H, q, J=7.3Hz, H−2), 4.25(1H, dd, J=4.7Hz, 8.9Hz, H−3”)
【0088】
実施例4 (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−ヒドロキシ−3−カルボキシプロピルアミノ)−3−カルボキシプロピル]セリン(化合物 (3))の製造
(1) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−t−ブトキシ−3−t−ブトキシカルボニルプロパンアミド)−3−t−ブトキシカルボニルプロパノイル]−O−t−ブチルセリン t−ブチルエステル(化合物(2 8))の製造
標記の化合物(28)を次に示す化学反応により製造した。
【0089】
【化37】
Figure 0003567121
【0090】
アルゴン雰囲気下、化合物(27)(H.C.Beyerman, J.S.Bontekoe, Proc. Chem. Soc. 1961, 249.)(600mg、2.76mmol)、及び実施例1で得た化合物(16)(800mg、1.92mmol)の無水THF(50ml)溶液を入れた反応容器を0℃に冷却し、HOBt(312mg、2.31mmol)、DCC(477mg、2.31mmol)を加えた。実施例1の(3)と同様の方法により、粗生成物を得た。
これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1−2:1)により精製し、832mg(1.35mmol、70.4%)の化合物(28)を無色油状物質として得た。
[α] 23+16.6° (c 0.352, CHCl
IR(film) νmax(cm−1
3330(s), 2980(s), 1730(s), 1680(s), 1500(m), 1370(m), 1160(w), 960(w), 850(m), 760(m)
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
1.10(9H, s, −OBu), 1.18(9H, s, −OBu), 1.42(27H, s, −COBu), 2.47(1H, dd, J=9.0Hz, 14.5Hz, H−2”a), 2.56(1H, dd, J=4.5Hz, 14.5Hz, H−2”b), 2.70(1H, dd, J=5.0Hz, 16.0Hz, H−2’a), 2.92(1H, dd, J=4.5Hz, 16.0Hz, H−2’b), 3.49(1H, dd, J=2.7Hz, 8.8Hz, H−3a), 3.75(1H, dd, J=2.7Hz, 8.8Hz, H−3b), 4.34(1H, dd, J=4.5Hz, 9.0Hz, H−3”), 4.56(1H, dt, J=8.0Hz, 2.7Hz, H−2), 4.70(1H, ddd, J=4.5Hz, 5.0Hz, 8.0Hz, H−3’), 6.32(1H, d, J=8.0Hz, N−H), 7.00(1H, d, J=8.0Hz, N’−H)
元素分析値 C315610として:
計算値 : C, 60.37; H, 9.15; N, 4.54.
実測値 : C, 60.10; H, 9.05; N, 4.68.
(2) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−t−ブトキシ−3−t−ブトキシカルボニルプロパンチオアミド)−3−t−ブトキシカルボニルプロパンチオオイル]−O−t−ブチルセリン t−ブチルエステル(化合物(29))の製造
標記の化合物(29)を次に示す化学反応により製造した。
【0091】
【化38】
Figure 0003567121
【0092】
アルゴン雰囲気下、化合物(28)(800mg、1.30mmol)のベンゼン(15ml)溶液に、Lawesson試薬(631mg、1.56mmol)を加えた。反応溶液を2時間80℃で還流させた後、減圧濃縮した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:酢酸エチル=1:0−10:1)により精製し、803mg(1.24mmol、95.4%)の化合物(29)を黄色油状物質として得た。また、化合物(29)はヘキサンを加えることで結晶化し、無色結晶とすることができた。
[α] 23+36.1° (c 1.00, CHCl
IR(film) νmax(cm−1
3290(s), 2980(s), 1730(s), 1500(m), 1400(w), 950(m), 850(m), 750(m)
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
1.12(9H, s, −OBu), 1.19(9H, s, −OBu), 1.45(9H, s, −COBu), 1.47(9H, s, −COBu), 1.48(9H, s, −COBu), 2.96(1H, dd, J=8.0Hz, 14.5Hz, H−2”a), 3.06(1H, dd, J=4.2Hz, 14.5Hz, H−2”b), 3.27(1H, dd, J=7.5Hz, 14.5Hz, H−2’a), 3.42(1H, dd, J=3.0Hz, 14.5Hz, H−2’b), 3.68(1H, dd, J=2.8Hz, 9.0Hz, H−3a), 3.82(1H, dd, J=2.8Hz, 9.0Hz, H−3b), 4.35(1H, dd, J=4.2Hz, 8.0Hz, H−3”), 5.11(1H, ddd, J=3.0Hz, 6.5Hz, 7.5Hz, H−3’), 5.14(1H, dt, J=7.8Hz, 2.8Hz, H−2), 8.53(1H, d, J=7.8Hz, N−H), 9.04(1H, d, J=6.5Hz, N’−H)
元素分析値 C3156として :
計算値 : C, 57.38; H, 8.70; N, 4.32.
実測値 : C, 57.17; H, 8.72; N, 4.46.
(3) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−t−ブトキシ−3−t−ブトキシカルボニルプロピルアミノ)−3−t−ブトキシカルボニルプロピル]−O−t−ブチルセリン t−ブチルエステル(化合物(30))の製造
標記の化合物(30)を次に示す化学反応により製造した。
【0093】
【化39】
Figure 0003567121
【0094】
化合物(29)(400mg、0.616mmol)のエタノール(7ml)溶液にラネーニッケル(W2)のエタノール懸濁液(約0.5g/ml、16ml)を加えた。室温で30分攪拌した後、反応溶液をセライトを用いて濾過し、濾液を減圧濃縮した。
残渣を2度のシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=2:1−1:1、塩化メチレン:酢酸エチル=10:1−0:1)により精製し、125mg(0.212mmol、34.4%)の化合物(30)を無色油状物質として得た。
IR(film) νmax(cm−1
3330(w), 2980(s), 1730(s), 1480(m), 1390(m), 1370(m), 1150(s), 960(w), 890(w), 850(m)
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
1.11(9H, s, −OBu), 1.16(9H, s, −OBu), 1.43(18H, s, −COBu), 1.45(9H, s, −COBu), 1.60−1.95(6H, m, N−H, N’−H, H−2’, H−2”), 2.45−2.85(4H, m, H−1’, H−1”), 3.14(1H, dd, J=5.5Hz, 7.3Hz, H−3”), 3.23(1H, t, J=5.0Hz, H−2), 3.45(1H, dd, J=5.0Hz, 8.0Hz, H−3a), 3.54(1H, dd, J=5.0Hz, 8.0Hz, H−3b), 3.90(1H, t, J=6.5Hz, H−3’)
(4) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−ヒドロキシ−3−カルボキシプロピルアミノ)−3−カルボキシプロピル]セリン(化合物(3)) の製造
標記の化合物(3)を次に示す化学反応により製造した。
【0095】
【化40】
Figure 0003567121
【0096】
化合物(30)(40mg、0.068mmol)を0℃でトリフルオロ酢酸(10ml)に溶解させて、4℃で一晩攪拌した。減圧濃縮することにより、目的の化合物(3)(37mg、quant.)をトリフルオロ酢酸塩として得た。
H−NMR (300MHz, DO) δ(ppm)
1.84−2.30(4H, m, H−2’, H−2”), 3.03−3.32(4H, m, H−1’, H−1”), 3.82−4.05(4H, m, H−2, H−3, H−3’), 4.25(1H, dd, J=4.8Hz, 8.2Hz, H−3”)
【0097】
実施例5 (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−ヒドロキシ−3−カルボキシプロピルアミノ)−3−カルボキシプロピル]トレオニン(化合物(4))の製造
(1) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−t−ブトキシ−3−t−ブトキシカルボニルプロパンアミド)−3−t−ブトキシカルボニルプロパノイル]−O−t−ブチルトレオニン t−ブチルエステル(化合物 (32))の製造
標記の化合物(32)を次に示す化学反応により製造した。
【0098】
【化41】
Figure 0003567121
【0099】
アルゴン雰囲気下、化合物(31)( H.C.Beyerman, J.S.Bontekoe, Proc. Chem. Soc. 1961, 249.)(650mg、2.80mmol)、及び実施例1で製造した化合物(16)(1.10g、2.64mmol)の無水THF(50ml)溶液を入れた反応容器を0℃に冷却し、HOBt(427mg、3.16mmol)、DCC(653mg、3.16mmol)を加えた。15の合成と同様の手法により、粗生成物を得た。
これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1−2:1)により精製し、1.18g(1.87mmol、71.0%)の化合物(32)を無色油状物質として得た。
IR(film) νmax(cm−1
3330(w), 2980(s), 1740(s), 1680(m), 1510(m), 1370(m), 1160(m), 950(w), 850(m), 750(m)
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
1.12(3H, d, J=5.5Hz, H−4), 1.13(9H, s, −OBu), 1.17(9H, s, −OBu), 1.46(27H, s, −COBu), 2.48(1H, dd, J=8.9Hz, 14.8Hz, H−2”a), 2.57(1H, dd, J=4.4Hz, 14.8Hz, H−2”b), 2.70(1H, dd, J=4.5Hz, 15.5Hz, H−2’a), 2.97(1H, dd, J=4.3Hz, 15.5Hz, H−2’b), 4.17(1H, dq, J=2.2Hz, 5.5Hz, H−3), 4.35(1H, dd, J=4.4Hz, 8.9Hz, H−3”), 4.37(1H, dd, J=2.2Hz, 9.0Hz, H−2), 4.73(1H, dt, J=7.8Hz, 4.3Hz, H−3’), 6.16(1H, d, J=9.0Hz, N−H), 7.05(1H, d, J=7.8Hz, N’−H)
元素分析値 C326210として :
計算値 : C, 60.93; H, 9.27; N, 4.44.
実測値 : C, 60.51; H, 9.22; N, 4.56.
(2) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−t−ブトキシ−3−t−ブトキシカルボニルプロパンチオアミド)−3−t−ブトキシカルボニルプロパンチオオイル]−O−t−ブチルトレオニン t−ブチルエステル(化合物(33))の製造
標記の化合物(33)を次に示す化学反応により製造した。
【0100】
【化42】
Figure 0003567121
【0101】
アルゴン雰囲気下、化合物(32)(810mg、1.28mmol)のベンゼン(20ml)溶液に、Lawesson試薬(600mg、1.48mmol)を加えた。反応溶液を2時間80℃で還流させた後、減圧濃縮した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:酢酸エチル=1:0−10:1)により精製し、825mg(1.24mmol、96.9%)の化合物(33)を白色泡状物質として得た。
IR(film) νmax(cm−1
3280(s), 2980(s), 1730(s), 1510(m), 1390(m), 1370(m), 1150(m), 960(m), 850(m), 760(m)
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
1.19(9H, s, −OBu), 1.19(3H, d, J=6.9Hz, H−4), 1.20(9H, s, −OBu), 1.45(9H, s, −COBu), 1.46(9H, s, −COBu), 1.48(9H, s, −COBu), 2.97(1H, dd, J=8.4Hz, 13.8Hz, H−2”a), 3.06(1H, dd, J=3.6Hz, 13.8Hz, H−2”b), 3.24(1H, dd, J=8.4Hz, 14.4Hz, H−2’a), 3.47(1H, dd, J=3.0Hz, 14.4Hz, H−2’b), 4.32(1H, dq, J=1.5Hz, 6.9Hz, H−3), 4.34(1H, dd, J=3.6Hz, 8.4Hz, H−3”), 4.98(1H, dd, J=1.5Hz, 8.7Hz, H−2), 5.09(1H, dt, J=3.0Hz, 6.9Hz, H−3’), 8.70(1H, d, J=8.7Hz, N−H), 9.04(1H, d, J=6.9Hz, N’−H)
(3) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−t−ブトキシ−3−t−ブトキシカルボニルプロピルアミノ)−3−t−ブトキシカルボニルプロピル]−O−t−ブチルトレオニン t−ブチルエステル(化合物(3 4))の製造
標記の化合物(34)を次に示す化学反応により製造した。
【0102】
【化43】
Figure 0003567121
【0103】
化合物(33)(808mg、1.22mmol)のエタノール(10ml)溶液にラネーニッケル(W2)のエタノール懸濁液(約0.5g/ml、45ml)を加えた。室温で30分攪拌した後、反応混合物をセライトを用いて濾過し、濾液を減圧濃縮した。
残渣を2度のシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=2:1−1:1、塩化メチレン:酢酸エチル=10:1−0:1)により精製し、480mg(0.796mmol、65.2%)の化合物(34)を無色油状物質として得た。
IR(film) νmax(cm−1
3340(w), 2980(s), 1730(s), 1460(m), 1370(m), 1150(m), 960(w), 850(w)
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
1.17(21H, s, H−4, −OBu), 1.44(18H, s, −COBu), 1.47(9H, s, −COBu), 1.55−1.74(6H, m, N−H, N’−H, H−2’, H−2”), 2.46−2.80(4H, m, H−1’, H−1”), 3.00(1H, d, J=4.9Hz, H−2), 3.17(1H, dd, J=5.6Hz, 7.0Hz, H−3”), 3.84(1H, dq, J=4.9Hz, 6.3Hz, H−3), 3.91(1H, t, J=6.7Hz, H−3’)
(4) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−ヒドロキシ−3−カルボキシプロピルアミノ)−3−カルボキシプロピル]トレオニン(化合物 (4))の製造
標記の化合物(4)を次に示す化学反応により製造した。
【0104】
【化44】
Figure 0003567121
【0105】
化合物(34)(410mg、0.680mmol)を0℃でトリフルオロ酢酸(20ml)に溶解させて、4℃で一晩攪拌した。減圧濃縮することにより、目的の化合物(4)(382mg、quant.)をトリフルオロ酢酸塩として得た。
H−NMR (300MHz, DO) δ(ppm)
1.18(3H, d, J=6.5Hz, H−4), 1.84−2.28(4H, m, H−2’, H−2”), 3.03−3.21(4H, m, H−1’, H−1”), 3.46(1H, d, J=7.0Hz, H−2), 3.72(1H, dd, J=4.0Hz, 7.8Hz, H−3’), 3.97(1H, qui, J=6.5Hz, H−3), 4.25(1H, dd, J=4.0Hz, 7.8Hz, H−3”)
【0106】
実施例6 (3S,3’S)−3−(3−t−ブトキシカルボニル−3−t−ブトキシカルボニルアミノプロパンアミド)−3−t−ブトキシカルボニルプロピオン酸(化合物(38))の製造
(1) (2S,3’S)−2−(3−t−ブトキシカルボニル−3−t−ブトキシカルボニルアミノプロパンアミド)−3−ベンジルオキシカルボニル−プロピオン酸 t−ブチルエステル(化合物(37))の製造
標記の化合物(37)を次に示す化学反応により製造した。
【0107】
【化45】
Figure 0003567121
【0108】
アルゴン雰囲気下、化合物(35)(R.W.Roeske, J. Org. Chem. 1963, 28, 1251.)(1.71g、6.19mmol)、及び化合物(36)(K.Ramsamy, R.K.Olsen, T. Emery Synthesis, 1982, 42.)(1.77g、6.19mmol)の無水THF(40ml)溶液を入れた反応容器を0℃に冷却し、HOBt(1.05g、7.80mmol)、DCC(1.61g、7.80mmol)を加えた。室温で一晩攪拌した後、反応混合物をセライトを用いて濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣を酢酸エチルを用いて希釈し、これを飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、1N塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄した。さらに、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した後、減圧濃縮した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1−2:1)により精製し、2.92g(5.36mmol、86.6%)の化合物(37)を無色油状物質として得た。
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
1.42(27H, s, −CO Bu, Boc), 2.63(1H, dd, J=4.5Hz, 15.9Hz, H−3a), 2.81(2H, m, H−2’), 2.98(1H, dd, J=4.2Hz, 15.9Hz, H−3b), 4.36(1H, m, H−3’), 4.67(1H, ddd, J=4.2Hz, 4.5Hz, 7.5Hz, H−2), 5.09(2H, m, −CHPh), 5.64(1H, d, J=8.4Hz, N−H), 6.45(1H, d, J=7.5Hz, N−H), 7.34(5H, m, −CHPh)
(2) (3S,3’S)−3−(3−t−ブトキシカルボニル−3−t−ブトキシカルボニルアミノプロパンアミド)−3−t−ブトキシカルボニルプロピオン酸(化合物(38))の製造
標記の化合物(38)を次に示す化学反応により製造した。
【0109】
【化46】
Figure 0003567121
【0110】
化合物(37)(2.92g、5.36mmol)の酢酸エチル(20ml)溶液中にパラジウム活性炭(10%、1.0g)を懸濁し、水素雰囲気下、室温で3時間激しく攪拌した。反応混合物をセライトで濾過した後、濾液を減圧濃縮し、2.16g(4.36mmol、88.9%)の化合物(38)を無色油状物質として得た。
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
1.42(27H, s, −COBu, Boc), 2.69(1H, dd, J=3.6Hz, 15.5Hz, H−3b), 2.76−2.92(2H, m, H−2’), 2.99(1H, dd, J=4.5Hz, 15.5Hz, H−3a), 4.38(1H, m, H−3’), 4.70(1H, m, H−2), 5.72(1H, d, J=8.4Hz, N−H), 6.62(1H, d, J=8.4Hz, N−H)
【0111】
実施例7 (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピルアミノ)−3−カルボキシプロピル]セリン(化合物 (5))の製造
(1) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−t−ブトキシカルボニル−3−t−ブトキシカルボニルアミノプロパンアミド)−3−t−ブトキシカルボニルプロパノイル]−O−t−ブチルセリン t−ブチルエステル(化合物(39))の製造
標記の化合物(39)を次に示す化学反応により製造した。
【0112】
【化47】
Figure 0003567121
【0113】
アルゴン雰囲気下、化合物(27)(450mg、1.98mmol)、及び化合物(38)(900mg、1.98mmol)の無水THF(30ml)溶液を入れた反応容器を0℃に冷却し、HOBt(340mg、2.49mmol)、DCC(510mg、2.49mmol)を加えた。37の合成と同様の手法により、粗生成物を得た。
これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1−2:1)により精製し、1.06g(1.60mmol、80.3%)の化合物(39)を無色油状物質として得た。
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
1.12(9H, s, −OBu), 1.42(36H, s, −COBu, Boc), 2.62(2H, m, H−2’), 2.86(2H, dd, J=3.9Hz, 15.2H, H−2”), 3.48(1H, dd, J=2.4Hz, 8.7Hz, H−3b), 3.76(1H, dd, J=2.7Hz, 8.7Hz, H−3a), 4.40(1H, m, H−3’), 4.55(1H, m, H−3’), 4.72(1H, m, H−2), 5.71(1H, d, J=8.7Hz, N’−H), 6.34(1H, d, J=7.4Hz, N−H)
(2) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−t−ブトキシカルボニル−3−t−ブトキシカルボニルアミノプロパンチオアミド)−3−t−ブトキシカルボニルプロパンチオオイル]−O−t−ブチルセリン T−ブチルエステル(化合物(40))の製造
標記の化合物(40)を次に示す化学反応により製造した。
【0114】
【化48】
Figure 0003567121
【0115】
アルゴン雰囲気下、化合物(39)(300mg、0.45mmol)のベンゼン(10ml)溶液に、Lawesson試薬(200mg、0.50mmol)を加えた。反応溶液を2時間80℃で還流させた後、減圧濃縮した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:酢酸エチル=1:0−10:1)により精製し、310mg(0.450mmol、Quant.)の化合物(40)を黄色油状物質として得た。
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
1.15(9H, s, −OBu), 1.42(36H, s, −COBu, Boc), 2.97−3.47(4H, m, H−2’, H−2”), 3.79−3.98(2H, m, H−3), 4.65(1H, m, H−3”), 5.10−5.46(2H, m, H−2, H−3’), 5.74(1H, d, J=8.6Hz, N”−H), 8.19(1H, d, J=8.4Hz, N−H or N’−H), 8.83(1H, d, J=7.9Hz, N−H or N’−H)
(3) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−t−ブトキシカルボニル−3−t−ブトキシカルボニルアミノプロピルアミノ)−3−t−ブトキシカルボニルプロピル]−O−t−ブチルセリン t−ブチルエステル (化合物(41))の製造
標記の化合物(41)を次に示す化学反応により製造した。
【0116】
【化49】
Figure 0003567121
【0117】
化合物(40)(340mg、0.49mmol)のエタノール(5ml)溶液にラネーニッケル(W2)のエタノール懸濁液(約0.5g/ml、10ml)を加えた。室温で30分攪拌した後、反応混合物をセライトを用いて濾過し、濾液を減圧濃縮した。
残渣を2度のシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1−1:2、塩化メチレン:酢酸エチル=5:1−0:1)により精製し、140mg(0.22mmol、45.2%)の化合物(41)を黄色油状物質として得た。
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
1.14(9H, s, −OBu), 1.45(36H, s, −COBu, Boc), 1.64−1.90(6H, m, N−H, N’−H, H−2’,H−2”), 2.45−2.76(4H, m, H−1’, H−1”), 3.14(1H, t, J=6.0Hz, H−3”), 3.25(1H, t, J=5.4Hz, H−2), 3.51(2H, m, H−3), 4.15(1H, q, J=5.4Hz, H−2”), 5.61(1H, d, J=7.8Hz, N’−H)
(4) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピルアミノ)−3−カルボキシプロピル]セリン(化合物(5))の製造
標記の化合物(5)を次に示す化学反応により製造した。
【0118】
【化50】
Figure 0003567121
【0119】
化合物(41)(140mg、0.22mmol)を0℃でトリフルオロ酢酸(10ml)に溶解させて、4℃で一晩攪拌した。減圧濃縮することにより、目的の化合物(5)(75mg、Quant.)をトリフルオロ酢酸塩として得た。
H−NMR (300MHz, DO) δ(ppm)
2.10−2.22(4H, m, H−2’, H−2”), 3.14−3.22(4H, m, H−1’, H−1”), 3.87(2H, dd, J=7.5Hz, 3.1Hz, H−3’, H−3”), 3.93−4.03(3H, m, H−2, H−3)
【0120】
実施例8 (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピルアミノ)−3−カルボキシプロピル]セリン(化合物 (6))の製造
(1) N−ベンジルオキシカルボニル−O−t−ブチルジメチルシリル−N−メチル−L−セリン(化合物(43))の製造
標記の化合物(43)を次に示す化学反応により製造した。
【0121】
【化51】
Figure 0003567121
【0122】
アルゴン雰囲気下、化合物(42)(Y.Nagao, T.Kumagai, S.Yamada, E.Fujita, Y.Inoue, Y.Nagase, S.Aoyagi,T.Abe, J. C. S. Perkin trans 1, 1985, 11, 2361.)(10.0g、28.3mmol)の無水THF(80ml)溶液を入れた反応容器を0℃に冷却し、水素化ナトリウム(2.04g、84.9mmol)とヨウ化メチル(32.1g、226.4mmol)を加えた。4℃で3日間攪拌した後、水を加え有機層を除去した。残った水層を1N塩酸を用いてpH3とし、これを酢酸エチルで抽出した。抽出液を水、5%チオ硫酸ナトリウムで洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濾液を濃縮し7.87g(21.4mmol、75.7%)の化合物(43)を無色油状物質として得た。
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
0.05(6H, s, TBS), 0.86(9H, s, TBS), 3.02(3H, s, N−Me), 3.96−4.15(2H, m, H−3), 4.65(1H, dd, J=6.1Hz, 7.2Hz, H−2), 5.17(2H, s, −CHPh), 7.30−7.45(5H, m, −CHPh)
(2) N−ベンジルオキシカルボニル−O−t−ブチルジメチルシリル−N−メチル−L−セリン t−ブチルエステル(化合物(44))の製造
標記の化合物(44)を次に示す化学反応により製造した。
【0123】
【化52】
Figure 0003567121
【0124】
アルゴン雰囲気下、化合物(43)(2.37g、6.45mmol)の塩化メチレン溶液を0℃に冷却し、t−ブチルアルコール(1.43g、19.35mmol)、DCC(2.0g、9.68mmol)、DMAP(0.07g、0.58mmol)を加えた。0℃で1時間、室温で2時間攪拌した後、反応混合物をセライトを用いて濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣を酢酸エチルを用いて希釈し、これを飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、1N塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄した。さらに、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した後、減圧濃縮した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=20:1)により精製し、1.95g(4.64mmol、72%)の化合物(44)を無色油状物質として得た。
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
0.02(6H, s, TBS), 0.82(9H, s, TBS), 1.40 (9H, s, −COBu), 2.92(3H, s, N−Me), 3.90(1H, dd, J=6.0Hz, 10.5Hz, H−3b), 3.98(1H, dd, J=6.9Hz, 10.5Hz, H−3a), 4.60(1H, dd, J=6.0Hz, 6.9Hz, H−2), 5.09(2H, m, −CHPh), 7.30(5H, m, −CHPh)
(3) O−t−ブチルジメチルシリル−N−メチル−L−セリン t−ブチルエステル(化合物(45))の製造
標記の化合物(45)を次に示す化学反応により製造した。
【0125】
【化53】
Figure 0003567121
【0126】
化合物(44)(2.00g、4.76mmol)の酢酸エチル(20ml)溶液中にパラジウム活性炭(10%、1.0g)を懸濁し、水素雰囲気下、室温で3時間激しく攪拌した。反応混合物をセライトで濾過した後、濾液を減圧濃縮し、1.35g(4.72mmol、99.3%)の化合物(45)を黄色油状物質として得た。
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
0.02(6H, s, TBS), 0.82(9H, s, TBS), 1.43(9H, s, −COBu), 1.64(1H, br, N−H), 3.07(1H, dd, J=4.2Hz, 4.8Hz, H−2), 3.71(1H, dd, J=4.8Hz, 9.8Hz, H−3a), 3.79(1H, dd, J=4.2Hz, 9.8Hz, H−3b)
(4) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−t−ブトキシカルボニル−3−t−ブトキシカルボニルアミノプロパンアミド)−3−t−ブトキシカルボニルプロパノイル]−O−t−ブチルジメチルシリル−N−メチル−セリン t−ブチルエステル(化合物(46))の製造
標記の化合物(46)を次に示す化学反応により製造した。
【0127】
【化54】
Figure 0003567121
【0128】
アルゴン雰囲気下、化合物(45)(1.29g、4.51mmol)及び実施例6で製造した化合物(38)(2.05g、4.51mmol)の無水THF(40ml)溶液を入れた反応容器を0℃に冷却し、HOBt(0.77g、5.68mmol)、DCC(1.17g、5.68mmol)を加えた。37の合成と同様の手法により、粗生成物を得た。
これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1−2:1)により精製し、2.32g(3.21mmol、71.2%)の化合物(46)を無色油状物質として得た。
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
0.01(6H, s, TBS), 0.82(9H, s, TBS), 1.38(36H, s, −COBu, Boc), 2.58(1H, dd, J=4.5Hz, 15.9Hz, H−2”a), 2.63(1H, dd, J=2.6Hz, 15.9Hz, H−2”b), 2.81(2H, m, H−2’), 3.04(3H, s, N−Me), 3.82(1H, dd, J=3.3Hz, 10.8Hz, H−3b), 4.05(1H, dd, J=6.3Hz, 10.8Hz, H−3a), 4.32(1H, m, H−3”), 4.70(1H, ddd, J=3.6Hz, 8.4Hz, 8.7Hz, H−3’), 4.90(1H, dd, J=3.3Hz, 6.3Hz, H−2), 5.63(1H, d, J=8.4Hz, N”−H), 6.74(1H, d, J=8.7Hz, N’−H)
(5) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−t−ブトキシカルボニル−3−t−ブトキシカルボニルアミノプロパンチオアミド)−t−ブトキシカルボニルプロパンチオオイル]−O−t−ブチルジメチルシリル−N−メチル−セリン t−ブチルエステル(化合物(47))の製造
標記の化合物(47)を次に示す化学反応により製造した。
【0129】
【化55】
Figure 0003567121
【0130】
アルゴン雰囲気下、化合物(46)(2.00g、2.77mmol)のベンゼン(25ml)溶液に、Lawesson試薬(1.23g、3.05mmol)を加えた。反応溶液を2時間80℃で還流させた後、減圧濃縮した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:酢酸エチル=1:0−10:1)により精製し、1.13g(1.50mmol、54.1%)の化合物(47)を黄色油状物質として得た。
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
0.01(6H, s, TBS), 0.81(9H, s, TBS), 1.42(36H, s, −COBu, Boc), 2.96−3.15(4H, m, H−2’, H−2”), 3.03(3H, s, N−Me), 3.81(1H, dd, J=3.3Hz, 10.8Hz, H−3b), 4.05(1H, dd, J=6.3Hz, 10.8Hz, H−3a), 4.46(1H, m, H−3”), 4.94(1H, dd, J=3.3Hz, 6.3Hz, H−2), 5.31(1H, m, H−3’), 5.73(1H, dd, J=8.7Hz N”−H), 8.42(1H, d, J=8.4Hz, N’−H)
(6) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−t−ブトキシカルボニル−3−t−ブトキシカルボニルアミノプロピルアミノ)−3−t−ブトキシカルボニルプロピル]−O−t−ブチルジメチルシリル−N−メチル−セリン t−ブチルエステル(化合物(48))の製造
標記の化合物(48)を次に示す化学反応により製造した。
【0131】
【化56】
Figure 0003567121
【0132】
化合物(47)(100mg、0.13mmol)のエタノール(3ml)溶液にラネーニッケル(W2)のエタノール懸濁液(約0.5g/ml、10ml)を加えた。室温で1時間攪拌した後、反応溶液をセライトを用いて濾過し、濾液を減圧濃縮した。
残渣を2度のシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=2:1、塩化メチレン:酢酸エチル=10:1−0:1)により精製し、83mg(0.12mmol、92.3%)の化合物(48)を黄色油状物質として得た。
H−NMR (300MHz, CDCl) δ(ppm)
0.05(6H, s, TBS), 0.91(9H, s, TBS), 1.45(36H, s, −COBu, Boc), 1.68−1.90(5H, m, H−2’, H−2”, N−H), 2.59−2.93(4H, m, H−1’, H−1”), 3.09(3H, s, N−Me), 3.52(1H, dd, J=6.5Hz, 5.7Hz, H−3’), 3.91(1H, dd, J=3.3Hz, 10.3Hz, H−3b), 4.11(1H, dd, J=6.0Hz, 10.3Hz, H−3a), 4.19(1H, m, H−3”), 5.10(1H, dd, J=3.3Hz, 6.0Hz, H−2), 5.62(1H, d, J=8.1Hz, N’−H)
(7) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピルアミノ)−3−カルボキシプロピル]セリン(化合物(6))の製造
標記の化合物(6)を次に示す化学反応により製造した。
【0133】
【化57】
Figure 0003567121
【0134】
化合物(45)(50mg、0.072mmol)を0℃でトリフルオロ酢酸(10ml)に溶解させて、4℃で一晩攪拌した。減圧濃縮することにより、目的の化合物(6)(33mg、Quant.)をトリフルオロ酢酸塩として得た。
H−NMR (300MHz, DO) δ(ppm)
2.12−2.13(4H, m, H−2’, H−2”), 2.91(3H, s, N−Me), 3.10−3.36(4H, m, H−1’, H−1”), 3.76−3.97(3H, m, H−3, H−3”), 3.90(1H, t, J=4.1Hz, H−3’), 4.67(1H, m, H−2)
【0135】
実施例9 (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピルアミノ)−3−カルボキシプロピル]アラニン(化合物(7))の製造
(1) (2S,3’S)−N−(3−ベンジルオキシカルボニルアミノ−3−t−ブトキシカルボニルプロパノイル)−アラニン メチルエステル(化合物(51))の製造
アルゴン雰囲気下、49(0.20g、1.41mmol)及び50(0.46g、1.41mmol)のMeCN(6ml)溶液を入れた反応容器を0℃に冷却し、BOP(0.81g、1.55mmol)、DIEA(0.74ml、4.23mmol)を加えた。室温で3時間攪拌した後、反応混合物を酢酸エチルを用いて希釈し、これを1N塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄した。さらに、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、0.41g(0.99mmol、70%)の化合物(51)を無色油状物質として得た。
H−NMR(500MHz, CDCl) δ(ppm)
1.38(3H, d, J=7.0Hz), 1.41(9H, s), 2.71(1H, s, dd, J=2.4Hz, 15.7Hz), 2.88(1H, dd, J=4.5Hz, 15.7Hz), 3.73(3H, s), 4.48(1H, m), 4.56(1H, q, J=7.5Hz), 5.12(2H, m), 5.96(1H, d, J=7.5Hz), 5.96(1H, d, J=6.5Hz,), 7.35(5H, m)
【0136】
(2) (2S,3’S)−N−(3−アミノ−3−t−ブトキシカルボニルプロパノイル)アラニン メチルエステル(化合物(52))の製造
化合物(51)(0.20g、0.49mmol)の酢酸エチル(5ml)溶液中にパラジウム活性炭(10%、0.04g)を懸濁し、水素雰囲気下、室温で3時間激しく攪拌した。反応混合物をセライトで濾過した後、濾液を減圧濃縮し、0.14g(0.49mmol、Quant)の化合物(52)を無色油状物質として得た。
【0137】
(3) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−t−ブトキシカルボニル−3−t−ブトキシカルボニルアミノ−プロパンアミド)−3−t−ブトキシカルボニルプロパノイル]アラニン メチルエステル(化合物(53)) の製造
アルゴン雰囲気下、化合物(52)(0.14g、0.49mmol)及び36(0.17g、0.59mmol)のMeCN(5ml)溶液を入れた反応容器を0℃に冷却し、HBTU(0.23g、0.59mmol)、N−Ethylmorpholine(0.01ml、0.74mmol)を加えた。室温で3時間攪拌した後、反応混合物を酢酸エチルを用いて希釈し、これを飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄した。さらに、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、0.23g(0.42mmol、84%)の化合物(53)を無色油状物質として得た。
H−NMR(500MHz, CDCl) δ(ppm)
1.45(30H, m), 2.65(2H, m), 2.81−2.93(2H, m), 3.76(3H, s), 4.46(1H, m), 4.56(1H, dq, J=7.5Hz, 7.0Hz), 4.72(1H, m), 5.84(1H, d, J=5.7Hz), 6.50(1H, m), 6.98(1H, m)
【0138】
(4) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−t−ブトキシカルボニル−3−t−ブトキシカルボニルアミノ−プロパンチオアミミド)−3−t−ブトキシカルボニルプロパンチオオイル]アラニン メチルエステル (化合物(54))の製造
アルゴン雰囲気下、化合物(53)(0.02g、0.04mmol)のベンゼン(5ml)溶液にLawesson試薬(0.03g、0.07mmol)を加えた。反応溶液を2時間80℃で還流させた後、減圧濃縮した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、0.016g(0.03mmol、76%)の化合物(54)を黄色油状物質として得た。
H−NMR(500MHz, CDCl) δ(ppm)
1.19(3H, s), 1.42−1.68(27H, s), 3.02(1H, m), 3.20(1H, m), 3.38(2H, m), 3.80(3H, s), 4.62(1H, m), 5.17(1H, m), 5.41(1H, m), 6.24(1H, m), 8.53(1H, m), 8.99(1H, m)
【0139】
(5) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−t−ブトキシカルボニル−3−t−ブトキシカルボニルアミノ−プロピルアミノ)−3−t−ブトキシカルボニルプロピル]アラニン メチルエステル(化合物(55))の製造
化合物(54)(80mg、0.14mmol)のエタノール(5ml)溶液にラネーニッケル(W2)のエタノール懸濁液(約0.5g/ml、10ml)を加えた。室温で30分攪拌した後、反応混合物をセライトを用いて濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、15mg(0.03mmol、20%)の化合物(55)を黄色油状物質として得た。
H−NMR(300MHz, CDCl) δ(ppm)
1.28(3H, m), 1.43(27H, m), 1.70(2H, m), 1.92(2H, m), 2.51(1H, dt, J=6.5Hz, J=18.5Hz), 2.59(1H, m), 2.68−2.77(2H, m), 3.16(1H, dd, J=5.5Hz, J=8.0Hz), 3.34(1H, dq, J=7.5Hz, J=10.5Hz), 3.73(3H, s), 4.18(1H, m), 5.66(1H, d, J=7.5Hz)
【0140】
(6) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピルアミノ)−3−カルボキシプロピル]アラニン(化合物(7))の製造
化合物(55)(15mg、0.03mmol)をトリフルオロ酢酸(3ml)に溶解させて室温で3時間攪拌した。減圧濃縮した後1%KOH−MeOHに溶解させ一晩攪拌した。残渣をイオン交換樹脂により精製し目的の化合物(7)(14mg、Quant)を得た。
【0141】
実施例10 (2S,3’S,3”S)−2−[3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピルアミノ)−3−カルボキシプロピルアミノ]酪酸(化合物(8))の製造
(1) (2S,3’S)−2−(3−ベンジルオキシカルボニルアミノ−3−t−ブトキシカルボニルプロパンアミド)酪酸 メチルエステル(化合物(57))の製造
アルゴン雰囲気下、化合物(56)(0.65g、4.20mmol)及び化合物(50)(1.38g、4.20mmol)のMeCN(15ml)溶液を入れた反応容器を0℃に冷却し、BOP(2.44g、4.62mmol)、DIEA(2.23ml、12.60mmol)を加えた。室温で3時間攪拌した後、反応混合物を酢酸エチルを用いて希釈し、これを1N塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄した。さらに、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、1.10g(2.60mmol、61%)の化合物(57)を無色油状物質として得た。
【0142】
H−NMR(300MHz, CDCl) δ(ppm)
0.89(3H, t, J=7.5Hz), 1.44(9H,s), 1.70(1H, m), 1.87(1H, m), 2.74(1H, dd, J=4.5Hz, J=15.8Hz), 2.91(1H, dd, J=4.0Hz, J=15.8Hz), 3.73(3H, s), 4.48(1H, t, J=7.5Hz), 4.55(1H, dt, J=5.5Hz, J=8.5Hz), 5.10(2H, s), 5.96(1H, d, J=8.3Hz), 6.11(1H, m), 7.34(5H, m)
【0143】
(2) (2S,3’S)−2−(3−アミノ−3−t−ブトキシカルボニルプロパンアミド)酪酸 メチルエステル(化合物(58))の製造
化合物(57)(0.55g、1.30mmol)の酢酸エチル(20ml)溶液中にパラジウム活性炭(10%、1.40g)を懸濁し、水素雰囲気下、室温で3時間激しく攪拌した。反応混合物をセライトで濾過した後、濾液を減圧濃縮し、0.38g(1.30mmol、Quant)の化合物(58)を無色油状物質として得た。
【0144】
(3) (2S,3’S,3”S)−2−[3−(3−t−ブトキシカルボニル−3−t−ブトキシカルボニルアミノ−プロパンアミド)−3−t−ブトキシカルボニルプロパンアミド]酪酸 メチルエステル(化合物(59))
アルゴン雰囲気下、化合物(58)(0.38g、1.30mmol)及び36(0.45g、1.56mmol)のアセトニトリル(15ml)溶液を入れた反応容器を0℃に冷却し、HBTU(0.59g、1.56mmol)、N−エチルモルフォリン(0.25ml、1.95mmol)を加えた。化合物(53)の合成と同様の手法により、粗生成物を得た。
これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、0.69g(1.22mmol、94%)の化合物(59)を無色油状物質として得た。
H−NMR(500MHz, CDCl) δ(ppm)
0.91(3H, t, J=7.0Hz), 1.45(27H, s), 1.72(2H, m), 1.90(2H, m), 2.65(2H, m), 2.81−2.90(2H, m), 3.76(3H, s), 4.49(1H, m), 4.72(1H, m), 5.83(1H, d, J=9.0Hz), 6.41(1H, m), 6.98(1H, m)
【0145】
(4) (2S,3’S,3”S)−2−[3−(3−t−ブトキシカルボニル−3−t−ブトキシカルボニルアミノ−プロパンチオアミド)−3−t−ブトキシカルボニルプロパンチオアミド]酪酸 メチルエステル(化合物(60))の製造
アルゴン雰囲気下、化合物(59)(0.68g、1.22mmol)のベンゼン(35ml)溶液にLawesson試薬(0.74mg、1.83mmol)を加えた。反応溶液を2時間80℃で還流させた後、減圧濃縮した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、0.52g(0.88mmol、73%)の化合物(60)を黄色油状物質として得た。
H−NMR(500MHz, CDCl) δ(ppm)
1.00(3H, t, J=6.5Hz), 1.45(27H, s), 2.08(2H, m), 3.02(1H, m), 3.21(1H, m), 3.39(2H, m), 3.83(3H, s), 4.62(1H, m), 5.07(1H, m), 5.43(1H, m), 6.21(1H, m), 8.50(1H, m)
【0146】
(5) (2S,3’S,3”S)−2−[3−(3−t−ブトキシカルボニル−3−t−ブトキシカルボニルアミノ−プロピルアミノ)−3−t−ブトキシカルボニルプロピルアミノ]酪酸 メチルエステル(化合物(61)) の製造
化合物(60)(0.52g、0.88mmol)のエタノール(20ml)溶液にラネーニッケル(W2)のエタノール懸濁液(約0.5g/ml、10ml)を加えた。室温で30分攪拌した後、反応混合物をセライトを用いて濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、0.23g(0.43mmol、48%)の化合物(61)を黄色油状物質として得た。
H−NMR(500MHz, CDCl) δ(ppm)
0.93(3H, t, J=7.0Hz), 1.46(27H, s), 1.60−1.79(5H, m), 1.92(1H, m), 2.48(1H, dt, J=6.5Hz, J=12.0Hz), 2.55(1H, dt, J=6.5Hz, J=12.0Hz), 2.69−2.78(2H, m), 3.17(2H, t, J=7.0Hz), 3.72(3H, s), 4.20(1H, m), 5.69(1H, d, J=7.0Hz)
【0147】
(6) (2S,3’S,3”S)−2−[3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピルアミノ)−3−カルボキシプロピルアミノ]酪酸(化合物(8)) の製造
化合物(61)(0.22g、0.41mmol)をトリフルオロ酢酸(6ml)に溶解させて、室温で3時間攪拌した。減圧濃縮した後1%KOH−MeOHに溶解させ一晩攪拌した。残渣をイオン交換樹脂により精製し目的の化合物(8)(0.113g、Quant)を得た。
【0148】
H−NMR(500MHz, DO) δ(ppm)
0.75(3H, t, J=7.0Hz), 1.65(2H, J=7.5Hz, J=7.0Hz), 1.87(2H, q, J=7.0Hz), 2.00−2.11(2H, m), 2.68(2H, t, J=7.0Hz), 2.97(2H, m), 3.44(2H, q, J=6.0Hz), 3.70(1H, t, J=6.0Hz)
【0149】
実施例11 (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピルアミノ)−3−カルボキシプロピル]−N−メチルアラニン(化合物(9))の製造
(1) (2S,3’S)−N−(3−ベンジルオキシカルボニルアミノ−3−t−ブトキシカルボニルプロパノイル)−N−メチルアラニン メチルエステル(化合物(63))の製造
アルゴン雰囲気下、化合物(62)(0.51g、3.32mmol)及び化合物(50)(1.07g、3.32mmol)のMeCN(10ml)溶液を入れた反応容器を0℃に冷却し、BOP(1.90g、3.65mmol)、DIEA(1.75ml、9.96mmol)を加えた。室温で3時間攪拌した後、反応混合物を酢酸エチルを用いて希釈し、これを1N塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄した。さらに、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した後、減圧濃縮した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、0.89g(1.99mmol、60%)の化合物(63)を無色油状物質として得た。
【0150】
H−NMR(500MHz, CDCl) δ(ppm)
1.38(3H, d, J=7.0Hz), 1.43(9H, s), 2.78(1H, dd, J=4.0Hz, J=17Hz), 2.92(3H, s), 3.12(1H, dd, J=4.0Hz, J=17Hz), 3.69(3H, m), 4.51(1H, m), 5.14(2H, m), 6.04(1H, d, J=8.5Hz), 7.35(5H, m)
【0151】
(2) (2S,3’S)−N−(3−アミノ−3−t−ブトキシカルボニルプロパノイル)−N−メチルアラニン メチルエステル(化合物(64))の製造
化合物(63)(0.42g、0.99mmol)の酢酸エチル(15ml)溶液中にパラジウム活性炭(10%、0.08g)を懸濁し、水素雰囲気下、室温で3時間激しく攪拌した。反応混合物をセライトで濾過した後、濾液を減圧濃縮し、0.29g(Quant)の化合物(64)を無色油状物質として得た。
【0152】
(3) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−t−ブトキシカルボニル−3−t−ブトキシカルボニルアミノ−プロパンアミド)−3−t−ブトキシカルボニルプロパノイル]−N−メチルアラニン メチルエステル (化合物(65))の製造
アルゴン雰囲気下、化合物(64)(0.29g、1.00mmol)及び36(0.35g、1.20mmol)のMeCN(10ml)溶液を入れた反応容器を0℃に冷却し、HBTU(0.45g、1.20mmol)、N−エチルモルフォリン(0.19ml、1.50mmol)を加えた。室温で3時間攪拌した後、反応混合物を酢酸エチルを用いて希釈し、これを飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄した。さらに、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、0.55g(Quant)の化合物(65)を無色油状物質として得た。
H−NMR(500MHz, CDCl) δ(ppm)
1.39(3H, d, J=7.0Hz), 1.44(27H, s), 2.65(1H, dd, J=4.5Hz, J=16Hz), 2.72(1H, dd, J=4.0Hz, J=16Hz), 2.81(3H, s), 2.84(1H, m), 3.10(1H, dd, J=4.0Hz, J=17Hz), 3.75(3H, m), 4.40(1H, m), 4.76(1H, m), 5.11(1H, q, J=7.0Hz), 5.70(1H, d, J=8.5Hz), 6.81(1H, d, J=9.0Hz)
【0153】
(4) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−t−ブトキシカルボニル−3−t−ブトキシカルボニルアミノ−プロパンチオアミド)−3−t−ブトキシカルボニルプロパンチオオイル]−N−メチルアラニン メチルエステル(化合物(66))の製造
アルゴン雰囲気下、化合物(65)(0.42g、0.99mmol)のベンゼン(30ml)溶液にLawesson試薬(0.56g、1.46mmol)を加えた。反応溶液を2時間80℃で還流させた後、減圧濃縮した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、0.39g(0.66mmol、76%)の化合物(66)を黄色油状物質として得た。
H−NMR(500MHz, CDCl) δ(ppm)
1.45(27H, s), 1.67(3H, m), 2.93(3H, s), 3.10(3H, m), 3.22(1H, m), 3.71(3H, m), 4.52(1H, m), 5.09(1H, m), 5.37(1H, m), 5.80(1H, m), 8.53(1H, m)
【0154】
(5) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−t−ブトキシカルボニル−3−t−ブトキシカルボニルアミノ−プロピルアミノ)−3−t−ブトキシカルボニルプロピル]−N−メチルアラニン メチルエステル(化合物(67))の製造
化合物(66)(0.32g、0.54mmol)のエタノール(10ml)溶液にラネーニッケル(W2)のエタノール懸濁液(約0.5g/ml、2ml)を加えた。室温で30分攪拌した後、反応混合物をセライトを用いて濾過し、濾液を減圧濃縮した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、0.21g(0.40mmol、76%)の化合物(67)を黄色油状物質として得た。
H−NMR (500MHz, CDCl) δ(ppm)
1.40(3H, d, J=7.0Hz), 1.44(27H, s), 1.70(3H, m), 1.82−1.93(2H, m), 2.59−2.66(4H, m), 2.93(3H, s), 3.57(1H, t, J=12Hz), 3.70(3H, s), 4.20(1H, m), 5.25(1H, m), 5.60(1H, d, J=8.0Hz)
【0155】
(6) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピルアミノ)−3−カルボキシプロピル]−N−メチルアラニン(化合物(9))の製造
化合物(67)(0.21g、0.40mmol)をトリフルオロ酢酸(6ml)に溶解させて、室温で3時間攪拌した。減圧濃縮した後1%KOH−MeOH(10ml)に溶解させ一晩攪拌した。残渣をイオン交換樹脂により精製し目的の化合物(9)(0.12g、Quant)を得た。
H−NMR(500MHz, DO) δ(ppm)
1.23(3H, d, J=7.5Hz), 2.09−2.17(4H, m), 2.85(3H, s), 3.01(2H, m), 3.19(2H, m), 3.73(1H, m), 3.83(1H, m), 4.68(1H, m)
【0156】
実施例12 (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−ヒドロキシ−3−カルボキシプロピルアミノ)−3−カルボキシプロピル]−N−メチルアラニン(化合物(10))の製造
(1) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−アセトキシ−3−メトキシカルボニルプロパンアミド)−3−t−ブトキシカルボニルプロパノイル]−N−メチルアラニン メチルエステル(化合物(69))の製造
アルゴン雰囲気下、化合物(64)(0.41g、1.40mmol)及び化合物(68)(0.32g、1.68mmol)のMeCN(15ml)溶液を入れた反応容器を0℃に冷却し、HBTU(0.64g、1.06mmol)、N−Ethylmorpholine(0.36ml、3.36mmol)を加えた。室温で3時間攪拌した後、反応混合物を酢酸エチルを用いて希釈し、これを飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄した。さらに、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、0.49g(1.06g、75%)の化合物(69)を無色油状物質として得た。
【0157】
H−NMR(500MHz, CDCl) δ5(ppm)
1.39(3H, d, J=7.5Hz), 1.44(9H, s), 2.10(3H, s), 2.78(4H, m), 3.10(1H, dd, J=3.5Hz, 17Hz), 3.71(3H, s), 3.77(3H, s), 4.79(1H, dt, J=3.5Hz, 9.0Hz), 5.14(1H, q, J=7.5Hz), 5.44(1H, t, J=6.0Hz), 6.93(1H, d, J=9.0Hz)
【0158】
(2) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−アセトキシ−3−メトキシカルボニルプロパンチオアミド)−3−t−ブトキシカルボニルプロパンチオオイル]−N−メチルアラニン メチルエステル(化合物(70)) の製造
アルゴン雰囲気下、化合物(69)(0.48g、1.04mmol)のベンゼン(30ml)溶液にLawesson試薬(0.63g、1.56mmol)を加えた。反応溶液を2時間80℃で還流させた後、減圧濃縮した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、0.36g(0.73mmol、69%)の化合物(70)を黄色油状物質として得た。
H−NMR (500MHz, CDCl) δ(ppm)
1.37(3H, d, J=7.0Hz), 1.46(9H, s), 2.04(3H, s), 2.92(3H, s), 3.05−3.26(4H, m), 3.70(3H, s), 3.77(3H, s), 5.12(1H, dt, J=7.0Hz, J=7.5Hz), 5.35(1H, q, J=3.5Hz), 5.51(1H, dd, J=4.0Hz, J=9.0Hz), 8.72(1H, d, J=7.5Hz)
【0159】
(3) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−アセトキシ−3−メトキシカルボニルプロピルアミノ)−3−t−ブトキシカルボニルプロピル]−N−メチルアラニン メチルエステル(化合物(71))の製造
化合物(70)(0.35g、0.70mmol)のエタノール(15ml)溶液にラネーニッケル(W2)のエタノール懸濁液(約0.5g/ml、4ml)を加えた。室温で30分攪拌した後、反応混合物をセライトを用いて濾過し、濾液を減圧濃縮した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、0.16g(0.37mmol、53%)の化合物(71)を黄色油状物質として得た。
H−NMR(500MHz, CDCl) δ(ppm)
1.36(3H, d, J=7.5Hz), 1.44(9H, s), 1.66(2H, m), 1.96(2H, q, J=6.5Hz), 2.11(3H, s), 2.60−2.70(3H, s), 2.77(1H, m), 2.91(3H, s), 3.50(1H, t, J=5,5Hz), 3.67(3H, s), 3.68(3H, s), 5.09(1H, t, J=6.5Hz), 5.18(1H, q, J=7.5Hz)
【0160】
(4) (2S,3’S,3”S)−N−[3−(3−ヒドロキシ−3−カルボキシプロピルアミノ)−3−カルボキシプロピル]−N−メチルアラニン(化合物(10))の製造
化合物(71)(30mg、0.07mmol)をトリフルオロ酢酸(2ml)に溶解させて、室温で3時間攪拌した。減圧濃縮した後1%KOH−MeOH(3ml)に溶解させ一晩攪拌した。残渣をイオン交換樹脂により精製し目的の化合物(10)(20mg、Quant)を得た。
【0161】
実施例13 59Fe・ムギネ酸誘導体の鉄欠乏オオムギでの経根吸収実験
(1)実験植物の育成
オオムギ(品種:エヒメハダカ1号)を、ペーパータオルを敷き詰めたバットに播種し、20℃の暗所で発芽させた。下記の春日井水耕液をいれた10Lのバットに、サランのネットを浮かべたものに、発芽種子を移し、1週間19℃(明)/15℃(暗)条件で育てた。
次いで、20Lのプラスチック製のボックスに同じ春日井水耕液をいれ、プラスチック製(直径2cmの穴が20穴あいたもの)カバーをし、その穴に1本ずつ移植した。その後上記と同じ条件で1週間育てた。59Feの吸収実験24時間前に水耕液からFe−クエン酸を除き、鉄欠乏処理で育てたものを実験に供した。
春日井水耕液(1L中各塩類の濃度)変法の組成は以下のとおりである。
【0162】
Figure 0003567121
【0163】
(2) 59Feの経根吸収実験
あらかじめ59FeCl(比放射能 925MBq/mg)を0.925Beqを入れたものと、1.5mgの試験化合物であるムギネ酸誘導体を混合して反応させ、鉄キレート化合物を作成し、1時間放置しておく。
この全量を春日井水耕液100mLに入れ混合する。オオムギ幼植物1本を根部のみが水耕液に浸かるように入れ、19℃、10000Luxの人工気象室の条件下で吸収をスタートした。105分の吸収の後、植物体を取り出し、1mMEDTA溶液に根を浸け、1分間緩やかに撹拌しながら根に吸着している放射能を洗い落とした。直ちに根と、茎葉部を切り放し、それぞれの生体重を測定した。それぞれを、ガラスチューブに詰め、シンチレーションカウンター(Aloka Auto Well Gamma System ARC−300)でガンマー線量を測定した。化合物が合成された日時が異なるので、実験は、3回にわけて行われた。
それぞれの日時に実験に使われた化合物の種類は図1に示される化合物(1)から(10)、並びに2’−デオキシムギネ酸(化合物(A))及びニコチアナミン(化合物(B))である。
【0164】
実験に使用した化合物の別に実験結果を、根部と茎葉部の放射能にわけて、図2(化合物(2)、(3)、及び(A))、図3(化合物(1)、(4)、(5)、(6)、及び(A))、及び図4(化合物(7)〜(10)、並びに(A)及び(B))に示す。
【0165】
実施例14 59Feの経葉吸収実験(葉面散布)
(1)鉄欠乏クロロシスオオムギの育成
発芽後移植したオオムギ幼植物を通常の春日井水耕液(畑作用)組成で、人工気象室で1週間育てる。その後、鉄のみを抜いた春日井水耕液で2週間育てる。およそ第4葉まで生育し、第5葉が激しいクロロシスを呈している。このクロロフィル含量を、クロロフィルメーター(SPAD−502,ミノルタ製)で測っておく。
【0166】
(2)「鉄・ムギネ酸アナログ」の葉面散布
前記(1)で育成した植物に対して、展着剤(商品名ダイン:武田園芸株式会社)1mL/10L入りの1mMの試験「鉄・ムギネ酸アナログ」溶液を作成する。
これを暗条件下で第2,3,4葉の裏表に噴霧器でスプレイする。散布後1日目、2日目、3日目、と順次クロロフィルメーターで第5葉を測定する。表1にはクロロフィルメーターインデックスを示している。
試験に用いた化合物は図1の化合物(1)〜(10)並びに2’−デオキシムギネ酸(化合物(A))及びニコチアナミン(化合物(B))である。結果を前記した表1に示す。
表1に示されるように、化合物(1)、(2)、(3)、(4)、及び(A)のいずれの化合物も3日目で完全に最新葉のクロロシスを回復させた。また、これらの化合物間に差はなかった。このことは、これらの鉄・化合物が第2、第3、第4葉から吸収されて容易に最新葉である第5葉に移行し、鉄が有効利用されてクロロフィル合成に使われたことを示している。化合物(B)も多少の回復力を示した。その他の化合物に関しては、この実験においては弱い効果しかみられなかったが、これらの化合物も対象作物を変えたり、展着剤の組成を変えたりしてより詳細な検討を行えば、有効な葉面散布剤としての可能性があると考えられる。
【0167】
【発明の効果】
本発明は植物の葉面から栄養素、例えば鉄分などの金属成分を吸収させるための化合物、それを含有してなる肥料を提供するものである。本発明の方法により植物の葉面から栄養素を与えることができるので、植物が根部から栄養素を吸収することができない場合においても、植物に必要な栄養素を葉面から吸収させることができ、アリカリ土壌などの不良土壌においても植物を生育させることができる。また、本発明の肥料に使用される化合物は、大量にかつ簡便に製造することができ、安価で有効な葉面散布用の肥料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の肥料に使用される化合物を例示したものである。
【図2】図2は、植物の根部からの吸収実験における、化合物(2)、(3)、及び(A)の吸収結果を根部と茎部とにわけて示したものである。
【図3】図3は、植物の根部からの吸収実験における、化合物(1)、(4)、(5)、(6)、及び(A)の吸収結果を根部と茎部とにわけて示したものである。
【図4】図4は、植物の根部からの吸収実験における、化合物(7)〜(10)、並びに(A)及び(B)の吸収結果を根部と茎部とにわけて示したものである。

Claims (13)

  1. 次式(II)
    Figure 0003567121
    (式中、Rは、水酸基、アミノ基、低級アルコキシ基、又はカルボニル基からなる1種以上の置換基を有してもよい炭化水素基を示し、Rは水素原子又はアルキル基を示し、Rは水酸基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、又はジアルキルアミノ基を示す。)
    で表される化合物又はその塩を含有してなる葉面散布剤として散布される肥料。
  2. さらに金属成分を含有してなる請求項1に記載の肥料。
  3. 前記式(II)で表される化合物又はその塩が、金属で錯化されている請求項2に記載の肥料。
  4. 金属が鉄である請求項2又は3に記載の肥料。
  5. 次式(II)、
    Figure 0003567121
    (式中、Rは、水酸基、アミノ基、低級アルコキシ基、又はカルボニル基からなる1種以上の置換基を有してもよいメチル基又はエチル基を示し、Rは水素原子を示し、Rは水酸基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、又はジアルキルアミノ基を示す。ただし、Rが2−ヒドロキシエチル基で、かつRが水酸基の場合を除く。)
    で表される化合物又はその塩。
  6. が、メチル基若しくはエチル基、又は水酸基で置換されたメチル基若しくはエチル基(但し、2−ヒドロキシエチル基の場合を除く。)である請求項5に記載の化合物又はその塩。
  7. 次式(III)
    Figure 0003567121
    (式中、R、R、Rは、それぞれ同一又は異なって保護基を示し、Yは酸素原子又は窒素原子を示す。)
    で表される化合物と、次式(IV)
    Figure 0003567121
    (式中、Rは置換基を有してもよい炭化水素基を示し、Rは水素原子又はアルキル基を示す。)
    で表される化合物とを反応させ、次いでアミド基のカルボニル基をメチレン基に還元した後、必要により保護基を除去することからなる次式(II)
    Figure 0003567121
    (式中、Rは置換基を有してもよい炭化水素基を示し、Rは水素原子又はアルキル基を示し、Rは水酸基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、又はジアルキルアミノ基を示す。)
    で表される化合物又はその塩を製造する方法。
  8. 植物に請求項1〜4のいずれかに記載の肥料を植物の葉面に散布してなる植物の生育方法。
  9. 植物が、穀物生産用の植物である請求項8に記載の方法。
  10. 植物が、稲科植物である請求項9に記載の方法。
  11. 請求項8〜11のいずれかに記載の方法で育成された植物。
  12. 請求項11に記載の植物から得られる穀物。
  13. 穀物が米である請求項12に記載の穀物。
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