JP3563468B2 - 重荷重用スタッドレス空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、氷雪路面での優れた走行性能を有する重荷重用スタッドレス空気入りタイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トレッド部の表面に突出したスパイク、またはスタッドによる粉塵公害をなくすため、スパイクタイヤの使用が禁止されて以来、スパイクを備えない、氷雪路面での走行性能に優れるタイヤを目差し種々の開発がなされてきた。これらはスタッドレスタイヤと総称されている。このスタッドレスタイヤにほぼ共通する特徴として、そのトレッド表面が多数のブロックに区画され、更に多数のサイプが施されていることが挙げられる。このサイプには様々な態様が可能であって、これまでにも各種提案されてきているが、何れもサイプによるブロック角部のエッジ効果によって氷上摩擦係数を高めることを狙いとしている。
【0003】
図2はスタッドレスタイヤの一例として示すトレッドの平面図である。
図2においてトレッド1は、赤道面O上とその両側に2対周方向に向かって変形クランク状、または変形ジグザグ状に延びる主溝2を設け、これら主溝2およびトレッド端Eによって6本の陸部3を区画し、更にそれらを横断する多数のラグ溝4によって独立ブロック5に区分し、この場合、雪上走行に備えネガティブ率(トレッド面積に対する溝部分の合計面積の比率)を大きく与えられている。一方氷上走行のために、ブロック5は駆動・制動、およびコーナリング時に作用する外力に備え、これら力が作用する方向と実質上直交する方向のエッジ効果を付与すべく横向き、並びに縦向きサイプ6、7が多数設けられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような構造のトレッドは、走行を通じてほぼ一定荷重を受ける乗用車用タイヤの場合は問題ないが、重荷重用タイヤは、荷重積載条件に対応する必要性から高内圧が適用されるが、空車時には荷重が著しく軽減し、積載時と空車時とでタイヤの荷重負担の変動が甚だしい。その結果、積載時において全幅に亙り接地するトレッドは、空車時には僅かしか撓まないため、それに伴い接地長と共に接地幅が短くなって接地面積が著しく減少することとなる。
【0005】
このような空車時においては、接地領域が減少することによってトレッドは部分的に機能するに止まり、特に氷上性能を効果的に発揮することができない。この点につき発明者等が積載時と空車時とで荷重変動が取り分け著しい小型トラック用タイヤの場合を調べたところによると、荷重積載時には接地したトレッドのブロックが受ける接地圧は、総ての列に亙りほぼ均等な分布がみられたところ、空車時においてはトレッド端に近接するショルダーブロックと、これに隣合った中間ブロックの軸方向外側部分は全く接地せず、トレッド中央部の限られた領域の接地面を通じ機能していることが分かった。このような状態では雪上ではともかく氷上走行において、ネガティブ率が大きいスタッドレスタイヤは到底予期した性能を発揮することはできない。またこのような接地状態のため中間ブロックにヒールアンドトウ摩耗(偏摩耗)が多発する。
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、優れた氷雪路走行性能を有すると共に、ヒールアンドトウ摩耗を低減したスタッドレス空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の重荷重用スタッドレス空気入りタイヤは、円筒状の踏面部に少なくとも4本の周方向主溝によって区画された、中央陸部、踏面の両端に近接する一対のショルダー陸部、および、これらの陸部間の中間陸部を夫々有するトレッドを備えたタイヤにおいて、それぞれの周方向主溝を、直線的に引いた溝中心線を越えない左右の振り幅で延在させ、上記トレッドの中央並びにショルダー陸部に、これらを横切る多数のラグ溝によって区分されたブロックの列を形成する一方、上記中間陸部を、接地面内で前後方向の力が作用したときに閉じる程度の細溝によって見掛け上のブロックに区分したリブとするとともに、その細溝を、長手方向の中央部で屈曲させて軸方向に延在させ、これらブロックおよびリブに、ジグザグ状に延びる複数の横向きサイプを形成し、リブに形成した全てのサイプの両端を周方向主溝に開口させるとともに、中央陸部のブロックに、一端が周方向主溝に開口し、他端がブロック内に終端する複数のサイプを周方向に互い違いに配置したことを特徴とするものである。
【0008】
【作用】
本発明における重荷重用スタッドレスタイヤは、直線的に引いた溝中心線を越えない左右の振り幅で延在させたそれぞれの周方向主溝によって区画された中央並びにショルダー陸部に、これらを横切る多数のラグ溝によって区分されたブロックの列を形成する一方、上記中間陸部を、接地面内で細溝が閉じることによって周方向に機能的に連なるリブとするとともに、その細溝を、長手方向の中央部で屈曲させて軸方向に延在させ、これらブロックおよびリブに、ジグザグ状に延びる複数の横向きサイプを形成し、リブに形成した全てのサイプの両端を周方向主溝に開口させるとともに、中央陸部のブロックに、一端が周方向主溝に開口し、他端がブロック内に終端する複数のサイプを周方向に互い違いに配置したことを構造上の特徴とする。
ここでは、中間陸部は周方向に向かって機能的に連なるリブをなしているため、ラグ溝で区分されたブロックと異なり横向きサイプを多用しても、懸念される陸部剛性の低下を来すことが少ない。そのため空車状態での走行においてもトレッドの有効接地面積、即ち氷面に実際に接する陸部の面積が横向きサイプを伴って増加し、その結果増加したサイプによるエッジ効果によって、特に駆動・制動性能が著しく向上するのである。
一方雪上空車走行においては、雪面が軟弱なためラグ溝によって区分されたショルダーブロックが機能し、ロードホールディングの点では従来通り発揮することができ走行に支障を来すことはない。
【0009】
中間陸部は接地面内で前後方向の力が作用したとき閉じる程度の細溝によって見掛け上ブロックに区分した場合、互いに独立したブロックの機能と、前後方向の力に対してはこれらブロックの協働によりリブとしての機能を併せもつこととなり、また設けた細溝によるエッジ効果を得ることができる。
また中間陸部がエンドレスリブの場合は、横向きサイプを多用しても不所望な剛性の低下が少ないため、増加したサイプの分陸部のエッジ効果が向上する訳である。
中間陸部の上記リブとしての機能は、接地面内での不要な動き、またはこの動きに惹起される滑りが制限されるため、ヒールアンドトウ摩耗が効果的に低減する。
【0010】
【実施例】
以下図面に基づき説明する。図1は本発明における一実施例を示すトレッドの平面図である。
本発明におけるスタッドレスタイヤは、円筒状の踏面部に少なくとも4本の周方向主溝2によって区画された、中央陸部3C、踏面部の両端Eに近接する一対のショルダー陸部3S、および、これらの陸部3C、3S間の中間陸部3Mを有するトレッド1を備えている。そして上記中央陸部3Cならびにショルダー陸部3S に、これらを横切る多数のラグ溝4によって区分されたブロック5の列を形成する一方、中間陸部3Mは、周方向に機能的に連なるリブ8をなし、これらブロック5およびリブ8を、ジグザグ状に延びる複数の横向きサイプ6を有するものとする。
【0011】
中間陸部3Mは、前後方向の力が作用したとき閉じる程度に幅が狭い細溝9によって見掛け上ブロックに区分したり、細溝9を横向きまたは類似のサイプに置き換えることにより、接地面内において作用する力の方向次第では少なくともリブとして機能する必要がある。
なお、図示を省略しているが本発明におけるスタッドレスタイヤは、左右サイドウォールと、両サイドウォール間に跨がってトレッド1を備えるクラウン部がトロイダルに連なり、一方のサイドウォールからクラウン部を通り他方のサイドォール間に亙ってナイロン、ポリエステルで代表される繊維コードラジアルプライの少なくとも1枚(通常2枚)、或はスチールコードラジアルプライの1枚から成るカーカスによって、またスチールコード層の複数枚を含む非伸長性ベルト層をカーカスとトレッド1間に配置した補強構造を適用することができる。
【0012】
図1に示す実施例においてトレッド1は、赤道面Oを挟み左右一対、その外側に一対周方向に連なる主溝2を設け、赤道面O上に中央部陸部3C、その両側にこれとほぼ幅が等しい中間陸部3M、更にその両側に、端Eに近接する広幅のショルダー陸部3Sを区画している。中央部陸部3Cに隣合った主溝2は、その中心線jを越えることなく左右に出入りが小さい変形クランク状をなし周方向に延びている。ショルダー陸部3Sに隣合った主溝2も、左右の振り幅が比較的大きいとは云え溝の中心線kを越えることなく同様に延びている。主溝2の幅はトレッドの踏面部幅の2〜6%の範囲が適当である。
なお中央陸部は、中間陸部間に1列に限ることなく複数列設けることもできる。
【0013】
中央部およびショルダー陸部3C、3Sは、ほぼ中央で屈曲し軸方向を横切る多数のラグ溝4によって、陸部3C位置では多少縦長の、陸部3Sでは多少横長のブロック5に区分している。一方中間陸部3Mは、同様に長手方向のほぼ中央で屈曲し軸方向に延びる、幅1.5mmの細溝9によって見掛け上のブロック5’に区分している。細溝9の幅は、本発明の目的に照らし0.7〜2.0mm、また深さは主溝2の深さの60〜75%の範囲が夫々好ましい。
【0014】
細溝によって区分されたブロック5’は、細溝と同様に両主溝間をジグザグに横断する横向きサイプ61を6本ずつ実質上等間隔に設け、7つの部分10に細分している。ブロック5’はこのように細分されても、ジグザグ成分によって走行時に作用する外力、特に横力に対しては部分10は互いに影響し合い対応し得るよう配慮している。
【0015】
中央陸部のブロック5は、軸方向両端からジグザグに延びブロック内に終端する横向きサイプ62を等間隔に、且つ互い違いに4本設けている。またショルダー陸部の広幅ブロック5には、その軸方向両端から内側へジグザグに延びる横向きサイプ62を4本ずつ配置し、中央部に残されたスペースにブロックを縦断する縦向きのジグザグサイプ7を2本お互い平行に設けている。
【0016】
【効果】
このようにして成る本発明のタイヤの効果を確かめるため、650R16 10PRサイズのラジアル構造を適用し、図1に示す実施例のタイヤと図2に示す比較例のタイヤとの間で小型トラックによる空車条件での氷雪上実車テスト、とアスファルト舗装路上の13,000粁走行(速度80km/h)によるヒールアンドトウ摩耗テストを行い評価した。
これら両種タイヤのトレッド上に形成された横力に対するエッジ成分の長さの合計を表1に、前後力に対するエッジ成分の長さの合計を表2に夫々指数にて示している。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
テスト条件として、タイヤは夫々16×5.50Fリムに組み、5.5Kgf/cm2の内圧を充填した。
テスト方法は次の通りである。
氷上(雪上)操縦安定性:
氷結フィールド(雪上の場合は圧雪フィールド)にコーナリング性、旋回性にポイントを置き設定した特設コースをパネラーの運転技量に応じて走行(20〜60Km/h)し、決められた区間の通過タイムを測定した。
氷上(雪上)加速性:
氷結路上(雪上の場合は圧雪路上)で加速がスムーズに行えるかどうか、またその時のふらつきの度合いをフィーリングで評価した。
氷上(雪上)制動性:
氷結路上(雪上の場合は圧雪路上)において直進初速30Km/hでタイヤにブレーキをかけ、その地点から停止地点までの距離を測定した。
【0020】
【表3】
【0021】
ヒールアンドトウ摩耗は、比較例のタイヤが中間ブロックを中心に著しく発生したのに対し、実施例のタイヤには殆ど認められなかった。
【0022】
このように、中央陸部並びにショルダー陸部につき多数のラグ溝によって区分されたブロックの列を形成する一方、中間陸部は周方向に機能的に連なるリブをなし、これらブロックおよびリブに、ジグザグ状に延びる複数の横向きサイプを備えた本発明の重荷重用スタッドレス空気入りタイヤは空車時における、特に氷上性能を有利に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示すトレッド平面図。
【図2】比較例のトレッド平面図。
【符号の説明】
1 ドレッド
2 周方向主溝
3 陸部
4 ラグ溝
5 ブロック
6 横向きサイプ
8 リブ
Claims (1)
- 円筒状の踏面部に少なくとも4本の周方向主溝によって区画された、中央陸部、踏面の両端に近接する一対のショルダー陸部、および、これらの陸部間の中間陸部を夫々有するトレッドを備えたタイヤにおいて、それぞれの周方向主溝を、直線的に引いた溝中心線を越えない左右の振り幅で延在させ、上記トレッドの中央並びにショルダー陸部に、これらを横切る多数のラグ溝によって区分されたブロックの列を形成する一方、上記中間陸部を、接地面内で前後方向の力が作用したときに閉じる程度の細溝によって見掛け上のブロックに区分したリブとするとともに、その細溝を、長手方向の中央部で屈曲させて軸方向に延在させ、これらブロックおよびリブに、ジグザグ状に延びる複数の横向きサイプを形成し、リブに形成した全てのサイプの両端を周方向主溝に開口させるとともに、中央陸部のブロックに、一端が周方向主溝に開口し、他端がブロック内に終端する複数のサイプを周方向に互い違いに配置したことを特徴とする重荷重用スタッドレス空気入りタイヤ。
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