JP3562397B2 - 電気角計測装置、電動回転機の制御装置、電気角計測方法、電動回転機の制御方法 - Google Patents

電気角計測装置、電動回転機の制御装置、電気角計測方法、電動回転機の制御方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動回転機の回転子と固定子との間の電気角を計測する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
交流モータ等の電動回転機は、産業機械、輸送機器、あるいは家電製品等の動力源として広く使用されている。交流モータには、回転速度や発生トルクを精度良く制御することが困難であるという欠点があったが、近年の半導体技術の発達によってこれら欠点が克服され、現在では信頼性の高い動力源として広く使用されるようになっている。また、半導体技術の進歩によって、整流子とブラシを使用しないいわゆるブラシレス直流モータも実用化され、動力源として広く使用されている。
【0003】
これら電動回転機の一般的な構成は、例えば永久磁石を貼付した回転子と、多相のコイルをY結線あるいはデルタ結線した固定子とからなっている。また、電動回転機は各相コイルに印加する電圧を切り換えるインバータを介して駆動されている。インバータは、モータの回転子の電気的な回転位置(電気角)に基づいて、各相コイルへの電圧を切り替えている。電気角は、ホール素子を使用して検出することもできるが、ホール素子等の専用のセンサを使用せずに電気角を算出する、いわゆるセンサレス方式も提案されている(例えば、特開平7−177788)。センサレス方式によって電気角を検出すれば、センサを使用しない分だけ故障に対する信頼性が増し、電動回転機の耐久性が更に向上するという利点がある。
【0004】
センサレス方式では次のようにして電気角を検出している。電動回転機のコイルにパルス電圧を印加して、印加によってコイルに流れる電流を検出する。パルス電圧の印加によりコイルを流れる電流値は電気角に依存することが分かっている。そこで、パルス電圧を印加したときにコイルに流れる電流値と電気角との間の対応関係を予め調べておき、パルス電圧印加により流れる電流値を検出して、検出した電流値から電気角を決定するのである。
【0005】
かかるセンサレス方式を用いて電気角を計測する場合、電気角を正確に検出するためには、パルス電圧の印加によってコイルに流れる電流を精度良く検出しなければならない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、電動回転機の回転速度の変動や電源から供給される電圧値の変動等、電動回転機の駆動条件の変動に応じて、パルス電圧を印加したときにコイルを流れる電流の値が変動するために、正確な電流値を計測できない場合がある。
【0007】
更には、パルス電圧の印加による異音の発生や、パルス電圧印加に伴う渦電流によって電動回転機が加熱することを避けるために、印加する電圧値を変更しなければならない場合もあり、このような場合にもコイルを流れる本来の電流値を計測することはできない。正確な電流値を計測することができなければ電気角を精度良く検出することはできず、延いては電動回転機を適切に運転することが困難となる。
【0008】
この発明は上述の課題を解決するためになされたものであり、パルス電圧を印加したときに多相コイルに流れる電流値が電動回転機の駆動条件によって変動する場合でも、あるいは電動回転機の異音発生や加熱防止等の要請から定格の電流をコイルに流すことができない場合でも、正確な電流値を計測して電気角を精度良く検出することができ、延いては電動回転機を好適に制御することが可能な技術を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の電気角計測装置は、次の構成を採用した。すなわち、
電動回転機の多相コイルに任意の時間幅のパルス電圧を印加し、該パルス電圧の印加により該コイルに流れる電流の変化を検出することによって、前記電動回転機の回転子と固定子との間の電気角を計測する電気角計測装置であって、
前記電動回転機の駆動条件を検出する駆動条件検出手段と、
前記コイルにパルス電圧を印加するパルス電圧印加手段と、
前記コイルに流れる電流の変化を検出する時期としてのパルス電圧印加開始からの相対時期を、前記回転機の駆動条件に応じて前記パルス電圧印加中の時間内の所定の時期に決定する検出時期決定手段と、
該決定された検出時期に前記コイルに流れる電流変化を検出する電流変化検出手段と、
該検出された電流変化に基づいて前記電気角を決定する電気角決定手段と
を備えることを要旨とする。
【0010】
また、上記の電気角計測装置に対応した本発明の電気角計測方法は、
電動回転機の多相コイルに任意の時間幅のパルス電圧を印加し、該パルス電圧の印加により該コイルに流れる電流変化を検出することによって、前記電動回転機の回転子と固定子との間の電気角を計測する電気角計測方法であって、
前記電動回転機の駆動条件を検出しておき、
前記コイルにパルス電圧を印加し、
前記コイルに流れる電流の変化を検出する時期としてのパルス電圧印加開始からの相対時期を、前記回転機の駆動条件に応じて前記パルス電圧印加中の時間内の所定の時期に決定し、
該決定された検出時期に前記コイルに流れる電流変化を検出し、
該検出された電流変化に基づいて前記電気角を決定することを要旨とする。
【0011】
かかる電気角計測装置および電気角の計測方法においては、パルス電圧を印加する前に予め電動回転機の駆動条件を検出しておき、コイルに流れる電流の変化の相対的な検出時期を、前記回転機の駆動条件に応じて決定する。相対的な検出時期とは、パルス電圧の印加開始時期を基準とした相対的な検出時期であることを意味する。すなわち、電動回転機の回転子の回転角度に基づいた絶対的な時期には限られないという意味において、相対的であるという意味である。従って、相対的な検出時期を決定することには、パルス電圧の印加開始時期を固定しておき、電流変化の適切な検出時期を決定することの他に、電流変化の検出時期を固定しておき、パルス電圧の印加開始時期を適切な時期に設定することも含まれている。このように決定された相対的な検出時期における電流の変化を検出して、検出した電流の変化に基づいて電気角を決定する。
【0012】
このようにして電気角を計測すれば、電動回転機の駆動条件に応じた適切な検出時期を設定するだけで、駆動条件による影響が補償された正確な電流値を検出することができるので、電気角を精度良く計測することができて好適である。
【0013】
かかる電気角計測装置においては、電流変化の検出時期を、検出された駆動条件と所定の閾値との大小関係に基づいて変更するようにしても良い。かかる方法において適切な閾値の値を設定しておけば、検出した駆動条件と閾値とを比較するという単純な方法によって電流変化の検出時期を設定しても、実用上は充分な精度で電気角を検出することができるので好適である。
【0014】
かかる電気角計測装置においては、予め定められた一定時間幅のパルス電圧をコイルに印加しても良い。パルス電圧の時間幅を多少長めに設定しておくといったことにより、適切な検出時期に電流変化を検出することが可能である。従って、電気角を簡便に計測することができるので好適である。
【0015】
かかる電気角計測装置においては、コイルに印加するパルス電圧の時間幅を可変としてもよい。こうすれば、電流変化の検出時期を大きく遅らせる必要がある場合でも、パルス電圧の印加時間を必要なだけ延長して、適切な時期に電流変化を検出することができるので好適である。
【0016】
更に、かかる電気角計測装置においては、コイルに印加するパルス電圧の時間幅を可変とするとともに、パルス電圧の印加終了時期を電流変化の検出時期に一致させるようにしても良い。電流変化の検出後はコイルにパルス電圧を印加する必要はないので、電流変化の検出時期とパルス電圧の印加終了時期とを一致させれば、電力を節約してもっとも効率よく電流変化を検出することができて好適である。
【0017】
かかる電気角計測装置においては、電動回転機の回転速度を検出し、電流変化の検出時期を、電動回転機の回転速度の影響を補償するようなタイミングに設定しても良い。こうすれば、電動回転機の回転速度によらず電流変化を正確に検出することができるので好適である。
【0018】
また、かかる電気角計測装置においては、検出された電動回転機の回転速度が所定の閾値より小さな場合に、電流変化の検出時期を所定量だけ遅らせるようにしても良い。かかる方法において閾値の回転速度を適切に設定しておけば、検出した回転速度と閾値回転速度とを比較するという単純な方法により電流変化の検出時期を設定しても、実用上は充分な精度で電気角を検出することができるので好適である。
【0019】
かかる電気角計測装置においては、電動回転機に供給される電圧を検出し、検出した電圧値に基づいて、コイルに流れる電流変化の検出時期を設定しても良い。こうすれば、電動回転機に供給される電圧によらず電流変化を正確に検出することができるので好適である。
【0020】
また、かかる電気角計測装置においては、電動回転機に供給される電圧値が低くなるほど電流変化の検出時期を遅らせるようにしても良い。電流の変化は供給される電圧値が低いほど小さくなるため、検出時期を遅くすることで、この影響を補償することができるので好ましい。
【0021】
更に、かかる電気角計測装置においては、供給される電圧値が所定の閾値より低い場合に、電流変化の検出時期を所定量だけ遅らせるようにしても良い。かかる方法において閾値の電圧値を適切に設定しておけば、検出した電圧値と閾値の電圧値とを比較するという単純な方法によって電流変化の検出時期を設定しても、実用上は充分な精度で電気角を検出することができるので好適である。
【0022】
また、かかる電気角計測装置においては、次のようにして、電動回転機の駆動条件に応じてパルス電圧の電圧値を可変とし、パルス電圧の電圧値に応じて電流変化の検出時期を設定してもよい。すなわち、電動回転機の駆動条件とパルス電圧の電圧値との対応関係を予め記憶しておき、この対応関係を参照して、駆動条件の検出結果に基づいてパルス電圧の電圧値を決定する。こうして決定された電圧値の影響を補償するように、電流変化の検出時期を設定する。
【0023】
このようにすれば、電動回転機の駆動条件に応じて適切な電圧値のパルス電圧を印加しつつ、電流変化を正確に検出して電気角を精度よく計測することが可能となるので好適である。
【0024】
かかる電気角計測装置においては、パルス電圧の電圧値に加えて時間幅も可変とし、電流変化の検出時期として設定された時期に、パルス電圧の印加が終了するようにしてもよい。
【0025】
このように、電流変化の検出時期に合わせてパルス電圧を印加する時間幅を変更すれば、効率よくパルス電圧を印加することができるので好適である。
【0026】
かかる電気角計測装置においては、電動回転機の温度が所定温度より高い場合に、パルス電圧の電圧値が低くなるような対応関係を記憶しておき、電動回転機の温度を検出して、検出された温度から対応関係を参照してパルス電圧の電圧値を決定する。こうして、電動回転機の温度が所定温度より高い場合には、コイルに印加するパルス電圧の電圧値を低くする。
【0027】
コイルにパルス電圧を印加するとコイルの磁束密度が急激に変化し、この影響で電動回転機に渦電流が発生して、電動回転機が加熱される。電動回転機が加熱されて温度が高くなると電動回転機が焼き付いたり、焼き付きに至らなくても永久磁石が消磁するなどによって電動回転機の寿命が短くなるといった弊害が生じる。これに対して前述の方法によれば、電動回転機の温度が高い場合には、パルス電圧の電圧値を低く設定することによって、渦電流による発熱を抑制して電動回転機の寿命が短くなることを回避するとともに、電圧値を低くしたことによる影響を補償するような電流検出時期に設定することによって、電流変化を正確に検出することができるので好適である。
【0028】
かかる電気角計測装置においては、次のように電圧値を設定することによって電動回転機の異音の発生を回避しつつ、電気角を正確に計測することも可能である。すなわち、コイルに印加したときに電動回転機から異音が発生する電圧値を、電動回転機の駆動条件に対応付けて予め記憶しておく。電動回転機の駆動条件を検出して、該検出結果に対応付けて記憶されている異音発生電圧値より、コイルに印加しようとするパルス電圧の電圧値が高い場合には、該電圧値を異音発生電圧値よりも低い電圧値に修正し、修正された電圧値のパルス電圧を印加する。こうして修正された電圧値の影響を補償するように電流検出時期を設定し、設定された検出時期で電流変化を検出する。
【0029】
このようにすれば、電動回転機から異音が発生しないような適切な電圧値のパルス電圧を印加しつつ、電流変化を正確に検出して精度良く電気角を計測することができるので好適である。
【0030】
本発明は、上述した電気角計測装置を用いて電動回転機を制御する制御装置、あるいは制御方法としての態様をとることも可能である。すなわち、本発明の電動回転機の制御装置は、
電動回転機の多相コイルに任意の時間幅のパルス電圧を印加し、該パルス電圧の印加により該コイルに流れる電流の変化を検出することによって、前記電動回転機の回転子と固定子との間の電気角を計測する電動回転機の制御装置であって、
前記電動回転機の駆動条件を検出する駆動条件検出手段と、
前記コイルにパルス電圧を印加するパルス電圧印加手段と、
前記コイルに流れる電流の変化を検出する時期としてのパルス電圧印加開始からの相対時期を、前記回転機の駆動条件に応じて前記パルス電圧印加中の時間内の所定の時期に決定する検出時期決定手段と、
該決定された検出時期に前記コイルに流れる電流変化を検出する電流変化検出手段と、
該検出された電流変化に基づいて前記電気角を決定する電気角決定手段と、
該決定された電気角に基づいて前記電動回転機を制御する電動回転機制御手段と
を備えることを要旨とする。
【0031】
また、上述した電動回転機の制御装置に対応する本発明の電動回転機の制御方法は、
電動回転機の多相コイルに任意の時間幅のパルス電圧を印加し、該パルス電圧の印加により該コイルに流れる電流の変化を検出することによって、前記電動回転機の回転子と固定子との間の電気角を計測する電動回転機の制御方法であって、
前記電動回転機の駆動条件を検出しておき、
前記コイルにパルス電圧を印加し、
前記コイルに流れる電流の変化を検出する時期としてのパルス電圧印加開始からの相対時期を、前記回転機の駆動条件に応じて前記パルス電圧印加中の時間内の所定の時期に決定し、
該決定された検出時期に前記コイルに流れる電流変化を検出し、
該検出された電流変化に基づいて前記電気角を決定し、
該決定された電気角に基づいて前記電動回転機を制御することを要旨とする。
【0032】
かかる電動回転機の制御装置および電動回転機の制御方法においては、電動回転機の駆動条件を検出し、該検出した駆動条件に応じて、電流変化の検出時期を設定する。このように設定された検出時期における電流変化を検出し、検出した電流変化に基づいて電気角を決定して、決定した電気角を用いて電動回転機を制御する。このようにして電動回転機を制御すれば、パルス電圧を印加したときにコイルに流れる電流の変化を、駆動条件によらず正確に検出することができるので、電気角を精度良く計測することができ、延いては電動回転機を好適に制御することができるので好ましい。
【0033】
【発明の実施の形態】
以上に説明した本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下本発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。
【0034】
A.装置構成:
(1)モータ制御の概要:
図1は、本発明の一実施例としての電気角検出装置を含んだモータ制御装置10の概略構成を示す機能ブロック図である。モータ制御装置10における本実施例の電気角検出装置の役割の概要を説明するために、先ず、図1のモータ制御装置10がモータの回転を制御する概要について簡単に説明する。
【0035】
図1に例示したモータ制御装置10は、三相同期モータ60と,三相同期モータ60の各相コイルに流れる電流を制御するインバータ30と,インバータ30に電力を供給する電源80と,インバータ30の動作を制御する制御部20と,同期モータ60の電気角を検出する電気角検出部40と,同期モータ60が発生しているトルクを検出するトルク検出部50と、各相コイルの電流値を検出して電気角検出部40およびトルク検出部50に出力する電流検出器12,14等から構成されている。
【0036】
電気角検出部40およびトルク検出部50は、各相コイルの電流値から電気角とモータの発生トルクとをそれぞれ検出し、制御部20に出力する。制御部20は、電気角検出部40から受け取った電気角に基づいて各相コイルに印加する電圧の切り替え時期を制御するとともに、トルク検出部50から受け取った発生トルクがトルク指令値に一致するように発生トルクのフィードバック制御を行う。
【0037】
同期モータの制御では回転子の回転とともに各相コイルに印加する電圧をスムーズに切り替えてやる必要があり、本実施例の電気角検出装置は回転子62の電気的な回転位置(電気角)を検出して制御部に供給する役割を果たしている。
【0038】
(2)電気角検出装置の概要:
図2は、上述したモータ制御装置10のハードウェア構成の概要を示した説明図である。モータ制御装置10は三相同期モータ60を駆動する装置であり、制御を行うための各種演算を司る電子制御ユニット(以下、ECUと呼ぶ)200と、電力を供給する電源80と、ECU200の制御の下で三相同期モータ60の各相コイルに流れる電流を制御するインバータ30と、各相コイルに流れる電流を検出する電流検出器12,14と、バッテリ電圧を検出する電圧センサ109と、三相同期モータ60の温度を検出するサーミスタ110等から構成されている。電流検出器12,14や、電圧センサ109,サーミスタ110の出力は、それぞれアナログデジタル変換器(以下、ADCと呼ぶ)106,108,111,112を介してコンピュータ200に入力されている。
【0039】
ECU200は、CPU202と、ROM204と、RAM206と、タイマ212と、外部からデータを受け取る入力ポート208と、外部にデータを出力する出力ポート210等を備えた周知の算術論理演算回路として構成されており、ECU200内のCPU202等は互いにバス214で接続され、データをやり取りすることが可能となっている。
【0040】
本実施例のインバータ30は、パワートランジスタやダイオードなどの電力制御用半導体で構成された、いわゆるパワートランジスタ式インバータである。もちろん、サイリスタ等を使用した他の方式のインバータを適用することもできる。インバータ30は、ECU200からの制御信号に基づいて動作し、各トランジスタを所定のタイミングでスイッチング動作させることによって、三相同期モータ60の各相コイルに流れる電流をPWM制御している。
【0041】
電流検出器12,14は、電磁誘導作用を利用して、モータのU相コイルおよびV相コイルに流れる電流をそれぞれ検出する。検出した電流は、電気角の検出(詳細は後述)やモータが発生するトルクの検出(後述)等に使用される。モータの各相コイルを流れる電流は時間とともに変動しており、変動する電流の所定範囲の周波数成分を取り出して、電気角やトルクの検出に使用する。フィルタ102,104は電流検出器12,14で検出された電流から不要な周波数成分を取り除くために設けられている。ADC106,108は、フィルタ102,104のアナログ出力をコンピュータが取り扱うことのできるデジタルデータに変換する。ADC106,108の出力は、入力ポート208を経由してECU200に取り込まれる。
【0042】
電圧センサ109は、バッテリから供給される電圧を所定の割合で分圧して、アナログ電圧として出力する。出力された電圧値は、ADC111でデジタル値に変換された後、入力ポート208を経由してECU200に取り込まれる。
【0043】
サーミスタ110は計測した温度によって出力する電圧値が変化する素子である。サーミスタ110からアナログ値として出力された電圧値は、ADC112でデジタル値に変換された後、入力ポート208を経由してECU200に取り込まれる。
【0044】
図2に示すモータ制御装置10に電力を供給する電源80は、複数のバッテリを接続した直流電源を使用している。もちろん、これに限定されるものではなく、例えば商用の交流電源から直流電圧を発生させるコンバータを用いても良く、あるいは燃料電池を利用して直流電圧を発生させる電源装置を用いても良い。
【0045】
本実施例における電気角検出は、モータ制御に使用されるECU200や、インバータ30、電流検出器12,14、電圧センサ109、サーミスタ110、フィルタ102,104、ADC106,108,111,112の機能を利用して行われる。すなわち、本実施例の電気角検出装置100は、モータ制御装置10に内包される形態で存在している。
【0046】
(3)同期モータの構造の概要:
図3および図4は、本実施例で使用されている三相同期モータ60の構造の概要を示す説明図である。図3はモータの回転軸を含む断面における断面図であり、図4は回転軸に直交する断面における断面図である。図3に示すとおり、三相同期モータ60は、固定子61と回転子62と、これらを収納するケース63とから構成される。回転子62は、外周に永久磁石64aないし64dが貼付されており、その回転軸65をケース63に設けられた軸受66a,66bによって回転自在に保持されている。
【0047】
回転子62は、電磁鋼板を打ち抜いて形成した板状回転子67を複数枚積層したものである。板状回転子67は、図4に示すように、直交する位置に4つの突極68aないし68dを備えている。回転子62の外周面であって突極68aないし68dの中間位置には、永久磁石64aないし64dが回転軸方向にそって貼付されている。永久磁石64aないし64dは、回転子62の半径方向に磁化されており、その極性は隣り合う磁石同士が互いに異なる磁極となっている。例えば、永久磁石64aは外周面がN極であり、その隣の永久磁石64bは外周面がS極となっている。この永久磁石64a,64bは、回転子62に組み付けた状態では、板状回転子67および板状固定子69を貫く磁路Mdを形成する(図4参照)。
【0048】
固定子61は、電磁鋼板の薄板を打ち抜いて形成した板状固定子69を積層して形成されている。板状回転子67は、図4に示すように12個のティース70を備えている。ティース70間に形成されたスロット71には、固定子61に回転磁界を発生させるコイル72が巻回されている。尚、板状固定子69の外縁部には固定用のボルト73を通すボルト孔が設けられているが、図4では図示を省略してある。
【0049】
固定子61をケース63に組み付け、ボルト孔に固定用のボルト73を通し、これを締め付けて全体を固定する。こうして形成した固定子61の中に、回転子62を軸受66a,66bで回転自在に組み付けることによって、三相同期モータ60が完成する。
【0050】
固定子61のコイル72に電流を流すと、図4に示すように、隣接する突極および板状回転子67と板状固定子69とを貫く磁路Mqが形成される。尚、上述した永久磁石64aにより形成される磁束が、回転子62をその回転軸中心を通って径方向に貫く軸をd軸と呼び、回転子62の回転面内において前記d軸に電気的に直交する軸をq軸と呼ぶ。つまり、d軸およびq軸は回転子62の回転に伴って回転する軸である。本実施例の三相同期モータ60では、回転子62に貼付された永久磁石64aおよび永久磁石64cは外周面がN極となっており、永久磁石64bおよび永久磁石64dは外周面がS極となっていることから、図4に示すように、幾何学的にはd軸と45度方向にある軸がq軸となる。
【0051】
B.モータ制御処理の概要:
図5は、本実施例のモータ制御装置10が三相同期モータ60の運転を制御する処理の流れを示したフローチャートである。電気角検出処理は、図5に示したモータ制御処理の一部として、ECU200内のCPU202によって実施される。電気角の検出について説明する準備として、モータ制御処理の概要を、図5のフローチャートに従って以下に説明する。
【0052】
CPU202は、モータ制御処理を開始すると初めに電気角検出処理を行う(ステップS100)。前述したように、三相同期モータ60の制御では回転子62の回転に合わせて、U・V・W相の各端子に印加する電圧を次々と切り替えながらモータを運転しているので、モータ制御処理の基本となる変数である電気角を初めに検出するのである。電気角検出処理の詳細については後述する。
【0053】
電気角を検出すると、CPU202は検出した電気角から、固定子61内に形成する回転磁界の向きを決定し、決定した向きの磁界が形成されるよう、U・V・W相の各端子の電圧状態、すなわち電源80から供給される電圧の高電圧側に接続するのかあるいは低電圧側に接続するのかを決定する。この処理が、端子電圧決定処理である(ステップS102)。
【0054】
端子電圧決定処理を終了すると、CPU202はトルク制御処理を開始する(ステップS104)。モータの発生するトルクは各相のコイルに流れる電流と比例するので、各相のコイルに流れる電流を電流検出器12,14で検出すれば、モータの発生トルクを検出することができる。この発生トルクとトルク指令値とを比較し、発生トルクが小さければコイルに流す電流を増加させ、発生トルクが大きければ電流を減少させる。こうして、モータが発生するトルクがトルク指令値と一致するように制御する処理がトルク制御処理(ステップS104)である。本実施例では、いわゆるPWM制御を行うことによってコイルに流れる電流値を制御している。尚、各相コイルを流れる電流値の総和は常に値ゼロとなる関係がある。そこで、本実施例ではU相コイルとV相コイルの2つのコイルに流れる電流Iu,Ivのみを検出し、W相コイルに流れる電流Iwはこの関係を利用して計算によって求めている。もちろん、電流検出器を3つ設け、U・V・Wの各相コイルに流れる電流を直接検出してもよい。
【0055】
回転子62は連続して回転しているので、トルク制御処理S104を終了すると、再びステップS100の処理に戻って電気角を検出し、新たに検出した電気角に基づいて、以降の一連の処理を繰り返す。すなわち、本実施例で用いられるモータ制御装置10は、図5に示すモータ制御処理をメインルーチンとして絶えず実行しており、他の処理を行う場合には割り込みを発生させて必要な処理を行い、その後、再びメインルーチンに復帰してモータの制御を継続する。本実施例のモータ制御装置10では、メインルーチンが1回まわるための時間は平均して200μsec前後である。
【0056】
C.電気角検出処理:
本実施例で行っている電気角検出処理について、以下に詳細に説明するが、理解を容易にするために、初めに電気角の検出原理について簡単に説明する。
【0057】
(1)電気角の検出原理:
一例として三相モータのu相端子に高電圧を印加し、v相端子とw相端子に低電圧を印加すると、U相コイルには電流が流れ出す。この時のU相−VW相間の回路のインダクタンスLは、回転子62のd軸が回転磁界のq軸と電気的になす角度(電気角)によって変化することが知られている。図6は、電気角によって各相間のインダクタンスLが変化する様子を示した説明図である。図6中にL1とあるのは、U相−VW相間の回路のインダクタンスを示し、L2とあるのはV相−WU相間の回路のインダクタンスを示す。図6に示されているように、インダクタンスL1とインダクタンスL2とは、位相が120度異なっている。この関係は、次のように考えると理解しやすい。U相コイルとV相コイルとはコイルの向きが120度異なっているので、磁界がある方向を向いた瞬間のV相コイルの状態と、その瞬間から電気角が120度進んだU相コイルの状態とが同じになる。従って、V相−WU相間のインダクタンスL2は、U相−VW相間のインダクタンスL1に対して電気角120度分だけ位相が進んだ関係となるのである。
【0058】
図6に示した関係に基づいて、インダクタンスL1およびL2から電気角を求めることができる。すなわち、インダクタンスL1の値が求まると、そのようなインダクタンスとなる電気角は図6中に示したα1〜α4のいずれかであることがわかる。インダクタンスL1のみからは、4つのうちのいずれであるかは判断できないが、更にインダクタンスL2を求めれば、L2との関係から、電気角がα1ないしα4のいずれであるかを決定することができる。
【0059】
インダクタンスは、電気回路にステップ状の電圧を印加したときの過渡的な電流変化から、次のようにして求めることができる。回路のインピーダンスをR、インダクタンスをLとして、印加するステップ状の電圧の電圧値をE1とすると、電流値I(t)は次式によって求められる。
I(t)={1−exp(−Rt/L)}E1/R … (1)
ここで、exp()は指数関数を表す。
【0060】
図7は、インダクタンスLに対する電流値I(t)の変化を示す説明図である。電流値は、電圧の印加直後には直線的に増加するが、しばらくすると増加割合が鈍くなり、やがては定常的な電圧E1/Rに安定するという変化を示す。インダクタンスの値が大きい場合には、電圧印加直後の電流値は緩やかに増加して電流値が安定するまでに長い時間を要するが、インダクタンスの値が小さい場合には、電圧印加直後の電流値は急激に増加して電流値が安定するまでに要する時間は短くなる。また、図7(a)と図7(b)とは電圧値E1の値を変えた場合を比較したものである。電圧値E1の値を増加させと、電流値の傾きが急になると同時に、電流が安定する値も増加するが、電流が安定するまでに要する時間は、電圧値E1を変化させても変わらない。
【0061】
図7から明らかなように、印加する電圧値が既知であれば、電圧印加から所定時間t0だけ経過したときの電流値I(t0)は、インダクタンスLの値によって決定される(上述の(1)式を参照)。このことから、所定電圧E1における時間t0での電流値I(t0)を計測し、電流値I(t0)とインダクタンスLとの関係からインダクタンスLを求めることが可能である。
【0062】
このようにしてU相とV相のコイルについてそれぞれのインダクタンスを求めれば、図6に示したインダクタンスと電気角との関係から電気角を決定することができる。
【0063】
(2)電気角検出処理(第1の実施態様):
図8は、本実施例における第1の実施態様における電気角検出処理の流れを示すフローチャートである。本実施例の第1の実施態様においては、コイルに流れる電流を精度よく計測するために、バッテリ電圧およびモータ回転速度を考慮したタイミングで電流値を検出している。バッテリ電圧およびモータ回転速度によって、電流値の検出タイミングを補償する必要がある理由については後述する。以下、図8のフローチャートに従って、処理の内容について説明する。この処理は、ECU200のCPU202が図5に示すメインルーチンの中で実行する処理である。
【0064】
CPU202は、電気角検出処理を開始すると、先ずバッテリ電圧Vbを検出する(ステップS200)。バッテリ電圧Vbは、電圧センサ109の出力をADC111でデジタル値に変換された後、CPU202に読み込まれる(図2参照)。
【0065】
CPU202は、バッテリ電圧Vbを検出すると、次にモータの回転速度ωm を検出する(ステップS202)。本実施例ではモータの回転速度を検出するセンサは特に設けられていないので、CPU202は、計算によって回転速度を求めている。回転速度の詳細な算出方法についての説明は省略するが、おおまかには次のように考えておけばよい。
【0066】
詳細は後述するが、本実施例の電気角検出処理ではコイルを流れる電流値から電気角を検出している。電気角は前述したd・q軸上での角度であって、モータの回転子と固定子間の機械的な角度と同じではないが、適当な座標変換を行うことによって電気角を回転子の機械的な角度に変換することができる。従って、検出した電気角の微分値に座標変換を施すことによって、モータの回転速度を求めることができるのである。
【0067】
このように、本実施例ではコイルを流れる電流値からモータの回転速度を算出しているが、もちろん回転数センサ等によりモータ回転速度を直接検出しても構わない。
【0068】
バッテリ電圧Vbおよびモータ回転速度ωm を検出すると、CPU202は、次のようにして電流検出タイミングtsを設定する(ステップS204)。
【0069】
先ず、基準状態として、パルス電圧の基準電圧値Vstとモータ回転速度の基準回転速度ωstとを決めておき、基準状態における電流検出タイミングts0を設定しておく。そして、ステップS200およびステップS202で検出したバッテリ電圧Vbおよびモータ回転速度ωm に基づいて、次式によって電流検出タイミングを算出する。
ts=K×Ts0 …(2)
ここで、Kは補正係数であり、次式によって求める。
K=(Vb+β×ωm )/(Vst+β×ωst) …(3)
式(2)および式(3)を用いて電流検出タイミングを設定している理由については後述する。
【0070】
尚、次式を用いて補正係数Kを求めることもできる。
K=Kv ×Kω …(4)
ここで、Kv はバッテリ電圧の影響を補正する補正係数であり、Kωはモータ回転速度の影響を補正する補正係数である。各補正係数の値は次のようにして求める。図9に示すように、バッテリ電圧Vbと補正係数Kv との対応関係、およびモータ回転速度ωm と補正係数Kωとの対応関係を予めマップとして記憶しておき、検出されたバッテリ電圧Vbあるいはモータ回転速度ωm の値からそれぞれのマップを参照することにより、補正係数Kv ,Kωを求める。こうすれば、各補正係数の設定自由度が増大するので、更に正確な補正を行うことも可能となる。
【0071】
以上のようにして電流検出タイミングを設定すると、CPU202は、コイルに流れている初期電流値I0 を検出する(ステップS206)。すなわち、コイルにパルス電圧を印加する前に、コイルに流れている電流の値を電流検出器12,14を用いて予め検出しておくのである。
【0072】
CPU202は初期電流値I0 を検出すると、インバータ30を制御することによってコイルにパルス電圧を印加する(ステップS208)。本実施例では、電源80は通常400V前後の電圧を供給しており、この電圧を60%程度に降圧して、250V程度のパルス電圧を印加している。降圧方法としては、周知の各種方法を適用することができる。例えば、電源80に対して2つの抵抗を直列に接続し、抵抗の中間位置の電圧を使用すれば、2つの抵抗値の比率によって決まる割合に降圧された電圧を得ることができる。また、DCチョッパと呼ばれる回路を使用したり、あるいはPWM制御等の手法を利用すれば、電圧の減少比率を自由に変更することが可能である。本実施例では、DCチョッパを用いて降圧している。
【0073】
印加するパルス電圧のパルス幅はステップS204で設定した時間tsに設定される。すなわち、電流値を検出した後は、コイルに電圧を印加しても無駄に電力を消費するだけなので、電流検出と同時にパルス電圧の印加が終了するようにしている。もちろん、パルス幅の長さを長めの値に固定しておき、電流値の検出タイミングのみを変更するようにしても構わない。
【0074】
パルス電圧を印加すると、ステップS204で設定した所定時間tsが経過するのを待ち(ステップS210)、所定時間ts経過後のコイルの電流値I1 を検出する(ステップS212)。具体的には、ステップS204で設定された電流検出タイミングtsを、ECU200に内蔵されたタイマ212に設定しておき、パルス電圧を印加してからの経過時間をタイマで計時することによって、電流検出タイミングを検出する。電流検出器12,14を用いて、U相コイルを流れる電流値とV相コイルの流れる電流値とを計測する。
【0075】
尚、本実施例では電流値の検出タイミングとパルス電圧の印加終了タイミングが同時に設定されているので、パルス電圧の印加によって流れた最大電流値を検出することになる。従って、電流の最大値を保持する素子を設けておき、素子に保持されている値を後から読み出して、電流値I1 を検出しても構わない。
【0076】
次にCPU202は、パルス電圧の印加によって流れた電流変化量を算出する(ステップS214)。ステップS206で、パルス電圧の印加前にコイルに流れている初期電流値I0 を予め計測してあるので、電流値I1 から初期電流値I0 を減算することで、印加によって流れた電流変化量を算出することができる。
【0077】
こうして求めた電流変化量から、図6を用いて説明したようにして電気角を算出する(ステップS216)。図10を用いて簡単に説明すれば、求められた電流変化量Irに対して、可能性のある電気角としてβ1ないしβ4の4つの電気角が求まる。U相コイルに流れる電流のみからは4つの電気角のいずれであるかを特定することはできないが、他相(V相)のコイルに流れる電流についても同様の方法により電気角を算出すれば、U相コイル・V相コイルのいずれの条件も満たす電気角に特定することができる。
【0078】
以上のようにして電気角検出処理が終了すると、図5に示したモータ制御処理に戻って、端子電圧決定処理S102以降の処理を実行する。
【0079】
上述したように、第1の実施態様における電気角検出処理では、適切なタイミングを設定することで、バッテリ電圧Vbやモータの回転速度ωm の影響を補償して正確な電流変化量を検出することが可能である。
【0080】
次に、第1の実施例においては、式(3)を用いて補正係数Kを算出している理由について説明する。尚、説明の都合上、先ずバッテリ電圧Vbやモータ回転速度ωm が変動するとその影響で電流変化量が変動する理由について簡単に説明し、その後、式(3)を用いて補正係数を算出することができる理由について説明する。
【0081】
U相コイルに印可する電圧をVuとして、U,V,Wの各相コイルに流れる電流をそれぞれIu,Iv,Iwとすると、電圧VuとIu,Iv,Iwとの間には次のような関係が成り立つ。
Vu={R+△(L)}×Iu − △(M)×Iv/2− △(M)×Iw/2 + Eu … (5)
ここで、△()は微分演算子(d/dt)を表し、LはU相コイルの自己インダクタンスを、Mはコイル同士の相互インダクタンスを表す。また、Euはコイルに生じる速度起電力である。この速度起電力Euは、モータが回転して、回転子に貼付された永久磁石の磁界がコイルをよぎることによってコイルに生じる起電力であり、
Eu=△(φ)=−ω×φmax ×sinθ … (6)
で与えられる。φは、コイルを貫く磁束数を表し、φmax は磁束数の最大値を表す。ωはモータの回転速度、θは回転子の回転角度である。
【0082】
V相コイル、W相コイルについても(5)式と同様の式が成り立つ。各相コイルを流れる電流値と印加する電圧との関係は、これら3つの式からなる連立微分方程式によって与えられ、この連立微分方程式は回路方程式あるいは電圧方程式と呼ばれる。
【0083】
ここでは、モータ回転速度がU相コイルの流れる電流値Iuに与える影響について考えることにする。相互インダクタンスMは自己インダクタンスLに比べて小さいので、Iv,Iwの影響を無視できると考える。このとき(5)式は、
Vu={R+△(L)}×Iu + Eu と単純化され、これを解いて
Iu=(Vu−Eu){1−exp(−Rt/L)}/R
を得る。(6)式を代入して、
Iu=(Vu+ωφmax sinθ){1−exp(−Rt/L)}/R…(7)
を得る。
【0084】
式(7)から明らかなように、電流値Iuは、印加電圧Vuとモータ回転速度ωの変動によって変動する。ここで、前述したように第1の実施例ではバッテリから供給された電圧を一定割合で降圧してコイルに印可しているので、式(7)の印加電圧Vuの値はバッテリ電圧Vbに比例している。従って、式(7)から明らかなように、コイルに流れる電流値は、バッテリ電圧Vbおよびモータ回転速度ωm によって変動するのである。
【0085】
前述の式(3)と式(7)とを比較すると、式(3)で求めている電流検出タイミングの補正係数Kは、検出した電流値が基準状態でコイルに流れる電流値に対する割合(すなわち電流値に対する補正係数)であることがわかる。すなわち、本実施例では、電流値に対する補正係数により、電流検出タイミングを補正しているのである。このようにすることで、正確な電流値を検出することができる理由を以下に説明する。
【0086】
図11は、パルス電圧を印加したときにコイルに流れる電流の様子を概念的に示した説明図である。本実施例の電気角検出処理では、コイルにパルス電圧を印加してから電流を検出するまでの時間がコイルの時定数に比べてかなり短く、10分の1以下の領域を用いているので、図11に示すようにコイルを流れる電流はほぼ直線的に増加している。例えば、バッテリ電圧もモータ回転速度も基準状態の時に図11の実線で示すような電流がコイルに流れるとする。また、バッテリ電圧の変動やモータ回転速度の変動によってコイルに流れる電流値が10%少なくなって、図11の破線で示すような電流が流れるとする。パルス電圧印加後、基準の検出タイミングtsで電流を検出した場合、基準状態であれば電流値Isを検出するところを、10%少ない電流値Idを検出してしまう。これを補償するためには、電流検出タイミングを基準のタイミングIsより10%だけ遅らせて、タイミングIdで電流を検出すればよい。
【0087】
以上説明したように、本実施例では、図11に示すように、パルス電圧印加後、電流が時間とともにほぼ直線的に増加している領域を使用して、電流値を検出している。そのため、電流値に対する補正係数によって電流検出タイミングを補正することで、正しい電流値を検出することができるのである。
【0088】
以上、説明した第1の実施態様の電気角検出処理では、バッテリ電圧の変動によって印加するパルス電圧の値が変動することによる影響や、あるいはモータ回転速度の影響によって、コイルに生じる電流値が変動することを、電流値の検出タイミングを適切な時期に設定することによって補償している。このため、パルス電圧の印加によって各相コイルに流れる電流値を精度良く検出することができ、延いては電気角を精度良く検出することが可能となっている。
【0089】
(3)電気角検出処理(第2の実施態様):
上述した第1の実施態様の電気角検出処理では、モータの回転速度を検出し、モータが如何なる速度で回転している場合でも、その影響を考慮したタイミングで電流値を検出した。しかし、モータの回転速度が極端に遅くなった場合だけ、その影響を補償するという簡易的な方法によっても、実用上の影響はないことが実験的に確かめられている。この一因としては、回転速度にかかる係数(φmax sinθ)の値が小さく、回転数の影響が現れにくいことが考えられる(前述の(7)式参照)。所定回転速度以下の時にのみ、回転速度を補償することにすれば、前述の電流検出タイミング設定に要する時間を短縮化することができる。更に、こうして生まれた時間を電気角検出精度を向上させるために使用すれば、モータを更になめらかに運転することも可能となる。以下に説明する第2の実施態様の電気角検出処理では、このようにして、モータを更になめらかに運転することが可能となっている。
【0090】
図12は、第2の実施態様の電気角検出処理の流れを示すフローチャートである。第2の実施態様の電気角検出処理においても、第1の実施態様における場合と同様に、初めにバッテリ電圧Vbを検出する(ステップS300)。
【0091】
次いで、検出したバッテリ電圧Vbが基準のパルス電圧より大きいか否かを判断し(ステップS302)、バッテリ電圧Vbが基準のパルス電圧より大きければ電圧補正係数kvを算出する(ステップS304)。バッテリ電圧Vbの検出方法は、前述の第1の実施態様と同様な方法を使用している。
【0092】
電圧補正係数kvとは、バッテリ電圧Vbに乗算することによって、基準のパルス電圧値が得られるような補正係数のことであり、kv=(基準電圧値)/(バッテリ電圧Vb)によって算出する。例えば、基準電圧値250Vに対してバッテリ電圧400Vの場合は、電圧補正係数kvの値は、250/400=0.625となる。
【0093】
次いで、電流検出タイミングtsに、基準の検出タイミングとして予め定められている値ts0を設定する(ステップS306)。すなわち、バッテリ電圧Vbが基準のパルス電圧の値よりも大きい場合は、バッテリ電圧VbはDCチョッパ回路で基準のパルス電圧まで降圧された後、コイルに印加される。従って、印加するパルス電圧の変動を考慮して電流検出タイミングtsを設定する必要はない。そのため、基準の検出タイミングとして予め設定されている値を電流検出タイミングtsとして設定するのである。
【0094】
逆に、ステップS302の判断において、バッテリ電圧Vbが基準のパルス電圧よりも小さいと判断された場合は、電圧補正係数kv=1と設定する(ステップS308)。バッテリ電圧Vbがパルス電圧の基準電圧値より小さければ、バッテリ電圧Vbを降圧させるわけにはいかないので、バッテリ電圧Vbのパルス電圧をコイルに印加するのである。このように、バッテリ電圧Vbがそのままの電圧値でコイルに印加される状態が、電圧補正係数kv=1の状態である。
【0095】
次いで、電流検出タイミングtsを、バッテリ電圧Vbの変動を補償するようなタイミングに設定する(ステップS310)。すなわち、バッテリ電圧Vbが基準のパルス電圧の値よりも小さい場合は、バッテリ電圧Vbがそのままパルス電圧として印加されるので、印加するパルス電圧の偏差を電流検出タイミングで補償する必要が生じる。そこで、前述の第1の実施態様における場合と同様の方法により、適切な電流検出タイミングを設定するのである。
【0096】
但し、第2の実施態様における補償量は、第1の実施態様における場合に比べて小さな補償量となる点が異なっている。これは次の理由による。第1の実施態様においては、コイルに印加するパルス電圧の電圧値はバッテリ電圧の値とともに変動しており、この変動分を電流検出タイミングの設定によって補償している。例えば、通常は400V前後のバッテリ電圧Vbが200Vまで低下した場合、コイルの印加するパルス電圧も半分になってしまうので、この電圧低下分を全て電流検出タイミングの設定で補償しなければならない。これに対して第2の実施態様では、400Vのバッテリ電圧Vbが200Vに低下しても、パルス電圧の基準電圧値である250Vに足りない50V分だけを補償すればよい。補償する電圧が小さければ、電流検出タイミングを設定する際の補償誤差も少なくなるので、電流値の検出精度を向上させることができる。
【0097】
補償する電圧値が小さくなると、電流値の検出精度が向上する理由について、若干補足して説明する。電圧の変動を電流検出タイミングによって補償する場合、図11を用いて前述したように、パルス電圧印加後、電流値は直線的に増加するものと近似している。このように近似する結果、電圧値が5%減少、すなわち電流値が5%減少する場合は、電流検出タイミングを5%だけ遅くすればよいことになるので、簡単な計算によって補償することができる。しかし厳密には、パルス電圧の印加後、電流値は直線的に増加するわけではない(式(1)参照)。従って、補償すべき電圧値が大きくなる程、直線と近似することによる誤差が大きくなり、補償する際の誤差が大きくなってしまうのである。これに対し、第2の実施態様のように、補償する電圧値が小さければ、パルス電圧印加後、電流が直線的に増加すると近似することができるので、電圧値の変動を電流検出タイミングの設定によって精度良く補償することが可能となる。
【0098】
以上のようにして電流検出タイミングを設定すると、次に、モータ回転速度ωm を検出する(図12のステップS312)。モータ回転速度ωm は、第1の実施態様と同様、電流値から算出して求めている。もちろん回転数センサ等によりモータ回転速度を直接検出しても構わない。
【0099】
次いで、検出したモータ回転速度ωm が回転速度の閾値ωthより大きいか否かを判断する(ステップS314)。前述したように、モータ回転速度ωm がコイルに流れる電流値に与える影響はパルス電圧の影響に比べて小さく、モータ回転数ωm が所定の回転速度より小さくなったときにだけ、その影響を考慮すればよいことが実験的に確かめられている。そこで、検出したモータ回転速度ωm を、予め実験的に求めておいた閾値となる回転速度ωthと比較して、モータ回転速度の影響を補償する必要があるか否かを判断するのである。第2の実施態様において使用された閾値回転速度ωthの値は10rpm前後の値に設定されている。
【0100】
検出したモータ回転速度ωm が閾値の回転速度ωthよりも小さい場合は、モータ回転速度の影響を補償する必要があると判断して、先に設定した電流検出タイミングtsを修正する(ステップS316)。具体的には、第2の実施例では、固定の修正係数kをかけることにより、電流検出タイミングtsが2割程度遅くなるように修正している。
【0101】
厳密には、修正量はモータ回転速度ωm の値によって異なるはずであるが、そもそもモータ回転速度の影響が小さいため、実際には厳密に補正してもさほど大きな効果は得られない。そのため、第2の実施態様においては固定の補正係数kをかけて電流検出タイミングを修正しているのである。もちろん、モータ回転速度ωm の値に応じて電流検出タイミングtsを修正しても構わない。
【0102】
ステップS312で検出したモータ回転速度ωm が閾値の回転速度ωthよりも大きい場合は、モータ回転速度の影響を考慮して電流検出タイミングtsを修正する必要はない。
【0103】
以上のようにして電流検出タイミングtsが設定されたら、コイルに流れている初期電流値I0 を検出して(ステップS318)、パルス幅tsのパルス電圧を印加する(ステップS320)。バッテリ電圧Vbがパルス電圧の基準電圧値よりも大きい場合は、電圧補正係数kvの設定に従って降圧させ、基準電圧値のパルス電圧を印加する。バッテリ電圧Vbが基準電圧値よりも小さい場合は、バッテリ電圧Vbをパルス電圧として印加する。
【0104】
パルス電圧の印加後は、電流検出タイミングtsが経過するのを待って(ステップS322)、コイルに流れている電流値I1 を検出し(ステップS324)、初期電流値I0 との差から電流変化量を算出する(ステップS326)。こうして求めた電流変化量に基づいて、電気角を算出する(ステップS328)。
【0105】
以上説明してきた第2の実施態様の電気角検出処理では、モータの回転速度が極端に遅くなった場合にだけモータ回転速度の影響を補償しており、通常の運転条件では、回転速度の補償に要する時間を節約することができる。こうして節約した時間を利用して、バッテリ電圧Vbを基準電圧値まで降圧してからコイルに印加している。すなわち、バッテリ電圧Vbが基準電圧値より大きい場合は、基準電圧値のパルス電圧が印加されるので、電流変化量を精度良く検出することができる。バッテリ電圧Vbが基準電圧値より小さい場合には、電圧差の分だけを電流検出タイミングで補償すればよいので、補償する際の誤差が小さくなり、電流変化量を精度良く検出することが可能となる。このように、第2の実施態様の電気角検出処理においては、電流変化量を精度良く検出することができるので、電気角の検出精度を向上させることができるようになり、その結果、モータをよりなめらかに運転することが可能となる。
【0106】
(4)電気角検出処理(第3の実施態様):
前述した第1の実施態様の電気角検出処理においては、パルス電圧の電圧値を制御することなく、バッテリ電圧Vbを一定割合で降圧させた電圧をコイルに印加している。従って、バッテリ電圧Vbの変動に伴ってコイルに印加されるパルス電圧の値も変動するので、電流検出タイミングを適切に設定することによってこの影響を補償している。また、第2の実施態様の電気角検出処理においては、印加するパルス電圧の電圧値は、原則として基準電圧値に固定されていて、印加する電圧値を積極的には制御していない。これに対し、第3の実施態様の電気角検出処理では、印加する電圧の変動を電流検出タイミングの設定により補償することができることを利用して、コイルに印加するパルス電圧の電圧値を、モータの動作条件に応じて積極的に制御している。以下、第3の実施態様の電気角検出処理について説明する。
【0107】
図13は、第3の実施態様の電気角検出処理の一例を示すフローチャートである。例示した第3の実施態様の電気角検出処理は、前述の第2の実施態様に対して、コイルに印加するパルス電圧の電圧値と電流検出タイミングとをモータ温度Tm によって切り換えている部分が大きく異なっている。他の処理内容については、第2の実施態様とほぼ同様なので、第3の実施態様に特徴的な部分を中心に以下に説明する。
【0108】
第3の実施態様の電気角検出処理を開始すると、バッテリ電圧Vbに続いて、モータの温度Tm を検出する(ステップS400、S402)。本実施例では、モータに内蔵されたサーミスタ110(図2参照)から出力される電圧値に基づいてモータ温度Tm を検出している。
【0109】
次いで、検出したモータ温度Tm を閾値温度と比較する(ステップS404)。閾値温度とは次のような温度である。運転中のモータ60は、絶えず発熱しながら回転している。モータが発熱するのは、回転する際の機械摩擦によって、あるいは電流がコイルを流れる際のコイルの内部抵抗による発熱などによるものである。このように発熱しながら回転していても、回転によって生じる風や自然対流によってモータは冷やされているので、通常は、発熱と冷却がバランスする温度でモータは回転している。しかし、例えば雰囲気温度が高くなるなどの原因で、充分な冷却効果が得られなくなると、モータの温度が増加して、モータが焼き付いたり、あるいは焼き付きに至らなくとも永久磁石が消磁し易くなり、モータの性能が劣化する現象が発生する。このようなことが起きないように、モータには閾値温度が設定されている。閾値温度以下の温度であれば、長期間使用していても、モータが急激に劣化することはない。本実施例では閾値温度は150℃に設定されている。
【0110】
モータ温度Tm が閾値温度より低い場合には、コイルに印加するパルス電圧の目標電圧値Vtを基準電圧値に設定する(ステップS406)。モータ温度Tm の値が閾値温度より低ければ、通常通りの制御によってモータを運転すればよいと判断できるからである。ここで設定する目標電圧値Vtは、前述の第2実施態様の印加電圧値と同様、250Vに設定される。
【0111】
次いで、目標電圧値Vtとバッテリ電圧Vbとの比を計算して電圧補正係数kvを求め、電流検出タイミングtsを設定する(ステップS408,S410)。すなわち、前述の第2の実施態様と同様に、バッテリ電圧Vbの値が目標電圧値Vtより小さい場合は、バッテリ電圧Vbをそのままコイルに印加(すなわち電圧補正係数kv=1)し、電圧値の変動を補償するように適切な電流検出タイミングtsを設定する。
【0112】
ステップS404において、モータ温度Tm が閾値温度より高い場合には、目標電圧値Vtを正常値(250V)より低く設定する(ステップS412)。具体的には、モータ温度Tm が正常温度の場合に設定される目標電圧値Vtの約半分程度の値(130V前後)に設定される。モータ温度が高い場合に目標電圧値Vtを低く設定するのは次の理由による。コイルにパルス電圧を印加すると、コイルに生じる磁束が急激に増加するので渦電流が発生し、この渦電流による発熱によってモータ温度が更に増加する。印加するパルス電圧の値が大きくなるほど、大きな渦電流が発生するので、これによる発熱も大きくなる。従って、モータ温度Tm が閾値温度より高い場合には、渦電流による発熱を抑える意味からパルス電圧の値は低い方が望ましいのである。
【0113】
こうして設定された目標電圧値Vtに対して、電圧補正係数kvを算出する(ステップS414)。すなわち、モータ温度Tm が正常範囲にある場合には、目標電圧値Vt=250Vに対して電圧補正係数kvを算出したが、ステップS414では目標電圧値Vt=130Vに対して電圧補正係数kvを算出する。
【0114】
電圧補正係数kvを算出すると、次に電流検出タイミングtsを設定する(ステップS416)。ここでは目標電圧値Vtが通常の半分程度に設定されているので、これを補償するために電流検出タイミングtsは通常の約倍の値に設定される。このように、第3の実施態様においては、モータの劣化回避のためにコイルに印加するパルス電圧の電圧値を低く設定しているが、これを補償するような電流検出タイミングの設定しているので、モータの劣化を回避しながら電流変化量を精度良く検出することが可能となっている。
【0115】
また、バッテリ電圧Vbが目標電圧値Vtより低くなった場合には、コイルに印加するパルス電圧の値は目標電圧値Vtより小さくなってしまうので、この電圧差も電流検出タイミングtsの設定によって補償する。
【0116】
こうしてモータ温度Tm に応じて電流検出タイミングtsを設定した後、最後にモータ回転速度に基づいて電流検出タイミングtsを補正する(ステップS418)。モータ回転速度による補正は、第2の実施態様における補正と同様にして行う。すなわち、モータ回転速度を検出して、回転速度が閾値回転数より低い場合にだけ、電流検出タイミングtsに補正係数kをかけて、検出タイミングが2割程度遅くなるように補正する。
【0117】
以上のようにして、電流検出タイミングtsが設定された後は、第1あるいは第2の実施態様と同様にして電気角を算出する。概要のみ説明すると、先ず初期電流値I0 を検出してから(ステップS420)、パルス幅tsのパルス電圧をコイルに印加し(ステップS422)、電流検査タイミングを検出して(ステップS424)、電流値I1 を測定する(ステップS426)。初期電流値I0 と測定した電流値I1 との差から電流変化量を算出して(ステップS428)、電気角を決定する(ステップS430)。
【0118】
上述の第3の実施態様の電気角検出処理においては、モータ温度Tm と閾値温度とを比較して、モータ温度Tm が閾値温度より高い場合にのみコイルに印加するパルス電圧の電圧値を低い値に設定しているが、モータ温度Tm の値が高くなるにつれて電圧値の設定を徐々に低い値に設定することもできる。
【0119】
また、上述の第3の実施態様においては、モータ温度Tm によって、印加するパルス電圧の値を変更したが、他の条件を考慮して電圧値を変更しても構わない。例えば、コイルにパルス電圧を印加すると、印加の瞬間に衝撃的な電磁力が作用するので、鋭い異音が発生することがある。この異音は、モータの回転速度が低いほど耳に付きやすい傾向があるので、印加する電圧値を、モータの回転速度に応じて異音が耳に付きにくい電圧値に抑制するようにしても良い。
【0120】
モータ回転速度が高いほど異音が耳に付きにくくなるのは、次の理由によるものである。モータの回転速度が高い場合は、回転にともなって発生する機械的な騒音が大きくなるので異音は騒音に紛れやすくなる。しかし、モータ回転速度が低くなれば機械的な騒音が小さくなるので、パルス電圧の印加による異音が耳に付きやすくなるのである。
【0121】
図14は、コイルに印加したときに発生する異音が気にならない電圧値を、モータ回転速度に対して設定している様子を概念的に示す説明図である。モータ回転速度が高い領域では、印加電圧の設定値は基準のパルス電圧の値である250Vに設定されているが、モータ回転速度が低くなってパルス電圧の印加による異音が耳に付きやすくなると、印加電圧の値が徐々に低下していき、モータ回転速度が最も低くなったときの電圧値は130Vとなっている。
【0122】
電気角検出処理中において、コイルの印加するパルス電圧の値をこのように設定するためには、次のようにすればよい。先ず、図14に示すような関係を実験によって予め求めておき、RAM206にマップデータとして記憶しておく。次いで、電気角検出処理中でモータ回転数を検出し、マップデータを参照して、モータ回転数に対して設定されている印加電圧値を求める。求めた印加電圧値が、基準のパルス電圧値より小さい場合には、その電圧差を電流検出タイミングを適切に設定することで補償する。こうすれば、パルス電圧の印加によって生じる異音の発生を避けながら、コイルに流れる電流変化量を精度良く検出することが可能となる。
【0123】
以上、各種の実施例について説明してきたが、本発明は上記すべての実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することができる。例えば、以上の説明においては、モータは交流同期モータであるとしたが、これに限られず、例えばブラシレス直流モータなどの他のモータに適用することができる。また、電気角検出装置はモータ制御に使用されている場合を説明したが、電気角を検出するものであればモータ制御に限らず他の用途に使用されるものであっても構わない。
【0124】
また、以上に説明した実施例においては、パルス電圧の印加開始時期が固定されていて、電流変化の検出時期を可変としているが、電流変化の検出時期を固定として、パルス電圧の印加開始時期を可変としても構わない。
【0125】
更に、パルス電圧を印加したときにコイルに流れる電流の変化は、コイルのパルス電圧を印加している期間内に検出するものとして説明したが、必ずしも電圧印加期間中に限定されるものではない。すなわち、電流変化を実質的に検出することができればよく、例えば、パルス電圧印加終了後に検出するものであっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の電気角検出装置が用いられているモータ制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】本実施例の電気角検出装置が用いられているモータ制御装置の装置構成を示す説明図である。
【図3】本実施例の電気角検出装置を利用して制御される三相同期モータの構造を示す縦断面図である。
【図4】本実施例の電気角検出装置を利用して制御される三相同期モータの構造を示す横断面図である。
【図5】本実施例の電気角検出装置を利用して行われるモータ制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】同期モータにおいては電気角とインダクタンスとが所定の対応関係にあることを説明する説明図である。
【図7】ステップ状の電圧を印加したときにコイルに過渡的な電流変動が生じる様子を示す説明図である。
【図8】第1の実施態様の電気角検出処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】電流検出タイミングの補正係数を算出する他の方法を示す説明図である。
【図10】電流変化量から電気角を求める方法を概念的に示す説明図である。
【図11】電流値の変動量を電流検出タイミングによって補償する原理を概念的に示す説明図である。
【図12】第2の実施態様の電気角検出処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】第3の実施態様の電気角検出処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】コイルに印加したときに異音の発生しない印加電圧値がモータ回転速度に対して設定されている様子を概念的に示す説明図である。
【符号の説明】
10…モータ制御装置
12,14…電流検出器
20…制御部
30…インバータ
40…電気角検出部
50…トルク検出部
60…三相同期モータ
61…固定子
62…回転子
63…ケース
64aないし64d…永久磁石
65…回転軸
66a,66b…軸受
67…板状回転子
68aないし68d…突極
69…板状固定子
70…ティース
71…スロット
72…コイル
73…ボルト
80…電源
100…電気角検出装置
102,104…フィルタ
106,108…ADC
109…電圧センサ
110…サーミスタ
111,112…ADC
200…ECU
202…CPU
204…ROM
206…RAM
208…入力ポート
210…出力ポート
212…タイマ
214…バス

Claims (20)

  1. 電動回転機の多相コイルに任意の時間幅のパルス電圧を印加し、該パルス電圧の印加により該コイルに流れる電流の変化を検出することによって、前記電動回転機の回転子と固定子との間の電気角を計測する電気角計測装置であって、
    前記電動回転機の駆動条件を検出する駆動条件検出手段と、
    前記コイルにパルス電圧を印加するパルス電圧印加手段と、
    前記コイルに流れる電流の変化を検出する時期としてのパルス電圧印加開始からの相対時期を、前記回転機の駆動条件に応じて前記パルス電圧印加中の時間内の所定の時期に決定する検出時期決定手段と、
    該決定された検出時期に前記コイルに流れる電流変化を検出する電流変化検出手段と、
    該検出された電流変化に基づいて前記電気角を決定する電気角決定手段と
    を備える電気角計測装置。
  2. 請求項1記載の電気角計測装置であって、
    前記検出時期決定手段は、前記検出された駆動条件と所定の閾値との大小関係に基づいて、前記電流変化の検出時期を変更する手段である電気角計測装置。
  3. 請求項1記載の電気角計測装置であって、
    前記パルス電圧印加手段は、予め定められた一定時間幅の前記パルス電圧を印加する手段である電気角計測装置。
  4. 請求項1記載の電気角計測装置であって、
    前記パルス電圧印加手段は、前記コイルに印加するパルス電圧の時間幅を変更可能な手段である電気角計測装置。
  5. 請求項1記載の電気角計測装置であって、
    前記パルス電圧印加手段は、前記コイルに印加するパルス電圧の時間幅を変更可能な手段であるとともに、該パルス電圧の印加終了時期と前記決定された電流変化の検出時期とを一致させて、前記パルス電圧を印加する手段である電気角計測装置。
  6. 請求項1記載の電気角計測装置であって、
    前記決定された電流変化の検出時期に前記パルス電圧の印加が終了するように、前記パルス電圧の時間幅を決定するパルス幅決定手段を備えるとともに、
    前記パルス電圧印加手段は、該決定された時間幅の前記パルス電圧を印加する手段である電気角計測装置。
  7. 請求項1記載の電気角計測装置であって、前記駆動条件検出手段は、前記電動回転機の回転速度を検出する手段である電気角計測装置。
  8. 請求項7記載の電気角計測装置であって、
    前記検出時期決定手段は、前記電動回転機の回転速度が所定の閾値より小さな場合に、前記電流変化の検出時期を所定量だけ遅らせる手段を備える電気角計測装置。
  9. 請求項1記載の電気角計測装置であって、前記駆動条件検出手段は、前記電動回転機に供給される電圧値を検出する手段である電気角計測装置。
  10. 請求項9記載の電気角計測装置であって、
    前記検出時期決定手段は、前記検出された電圧値が低いほど前記電流変化の検出時期を遅らせる手段を備える電気角検出装置。
  11. 請求項9記載の電気角計測装置であって、
    前記検出時期決定手段は、前記検出された電圧値が所定の閾値より低い場合に、前記電流変化の検出時期を所定量だけ遅らせる手段を備える電気角検出装置。
  12. 請求項1記載の電気角計測装置であって、
    前記駆動条件と前記コイルに印加すべきパルス電圧の電圧値との対応関係を記憶しているパルス電圧値記憶手段と、
    前記記憶されている対応関係を参照することにより、前記検出された駆動条件に基づいてパルス電圧の電圧値を決定するパルス電圧値決定手段と
    を備えるとともに、
    前記検出時期決定手段は、前記決定されたパルス電圧に応じて前記電流変化の検出時期を決定する手段であり、
    前記パルス電圧印加手段は、前記決定された電圧値の前記パルス電圧を印加する手段である電気角計測装置。
  13. 請求項12記載の電気角計測装置であって、
    前記パルス電圧印加手段は、前記コイルに印加するパルス電圧の時間幅を変更可能な手段であるとともに、該パルス電圧の印加終了時期と前記決定された電流変化の検出時期とを一致させて、前記パルス電圧を印加する手段である電気角計測装置。
  14. 請求項12記載の電気角計測装置であって、
    前記決定された電流変化の検出時期に前記パルス電圧の印加が終了するように、前記パルス電圧の時間幅を決定するパルス幅決定手段を備えるとともに、
    前記パルス電圧印加手段は、該決定された時間幅を有し、かつ前記決定された電圧値の前記パルス電圧を印加する手段である電気角計測装置。
  15. 請求項12記載の電気角計測装置であって、
    前記電動回転機の温度を検出する回転機温度検出手段を備えるとともに、
    前記パルス電圧値記憶手段は、前記検出された電動回転機の温度が所定温度より高い場合に前記パルス電圧値が小さくなるような前記対応関係を記憶している手段である電気角計測装置。
  16. 請求項12記載の電気角計測装置であって、
    前記パルス電圧を印加したときに異音が発生する異音発生電圧値を、前記電動回転機の駆動条件に対応付けて記憶している異音発生電圧値記憶手段を備えるとともに、
    前記パルス電圧値決定手段は、前記決定されたパルス電圧の電圧値が、前記検出された駆動条件に対応付けられた前記異音発生電圧値よりも高い場合に、該決定された電圧値を前記異音発生電圧値よりも低い電圧値に修正する電圧値修正手段を備える電気角計測装置。
  17. 電動回転機の多相コイルに任意の時間幅のパルス電圧を印加し、該パルス電圧の印加により該コイルに流れる電流変化を検出することによって、前記電動回転機の回転子と固定子との間の電気角を計測する電気角計測方法であって、
    前記電動回転機の駆動条件を検出しておき、
    前記コイルにパルス電圧を印加し、
    前記コイルに流れる電流の変化を検出する時期としてのパルス電圧印加開始からの相対時期を、前記回転機の駆動条件に応じて前記パルス電圧印加中の時間内の所定の時期に決定し、
    該決定された検出時期に前記コイルに流れる電流変化を検出し、
    該検出された電流変化に基づいて前記電気角を決定する電気角計測方法。
  18. 請求項17記載の電気角計測方法であって、
    前記パルス電圧の印加終了時期が、前記決定された電流変化の検出時期と一致するように、該パルス電圧を印加する時間幅を決定し、
    該決定された時間幅の前記パルス電圧を前記コイルに印加する電気角計測方法。
  19. 電動回転機の多相コイルに任意の時間幅のパルス電圧を印加し、該パルス電圧の印加により該コイルに流れる電流の変化を検出することによって、前記電動回転機の回転子と固定子との間の電気角を計測する電動回転機の制御装置であって、
    前記電動回転機の駆動条件を検出する駆動条件検出手段と、
    前記コイルにパルス電圧を印加するパルス電圧印加手段と、
    前記コイルに流れる電流の変化を検出する時期としてのパルス電圧印加開始からの相対時期を、前記回転機の駆動条件に応じて前記パルス電圧印加中の時間内の所定の時期に決定する検出時期決定手段と、
    該決定された検出時期に前記コイルに流れる電流変化を検出する電流変化検出手段と、
    該検出された電流変化に基づいて前記電気角を決定する電気角決定手段と、
    該決定された電気角に基づいて前記電動回転機を制御する電動回転機制御手段と
    を備える電動回転機制御装置。
  20. 電動回転機の多相コイルに任意の時間幅のパルス電圧を印加し、該パルス電圧の印加により該コイルに流れる電流の変化を検出することによって、前記電動回転機の回転子と固定子との間の電気角を計測する電動回転機の制御方法であって、
    前記電動回転機の駆動条件を検出しておき、
    前記コイルにパルス電圧を印加し、
    前記コイルに流れる電流の変化を検出する時期としてのパルス電圧印加開始からの相対時期を、前記回転機の駆動条件に応じて前記パルス電圧印加中の時間内の所定の時期に決定し、
    該決定された検出時期に前記コイルに流れる電流変化を検出し、
    該検出された電流変化に基づいて前記電気角を決定し、
    該決定された電気角に基づいて前記電動回転機を制御する電動回転機制御方法。
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