JP3562156B2 - 車両のシートベルト構造 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両のシートベルト構造に関し、特に跳ね上げ移動自在に設けられたシートの近傍部に設けられてなるシートベルトの構造に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
一般に、車両外側方側のピラー部分に設けられるシートベルトはその非装着状態でシートとの干渉が起こらないよう配設することが好ましいが、実開平１−９８０５２号には、シートベルト位置をシートバックより車両前方もしくは車両外側に向けて離間した位置に保持してシートバックとの干渉を防止したものが開示されている。
また、実公平３−４４６０３号には、アンカー部上方側のシートベルト部分にミシン縫目を設けて該部分に自立性を付与させたものが開示されている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、荷室空間を拡大する為に、シートを車両前方側もしくは車両後方側に跳ね上げ移動自在に設けたものにおいては、シートの該跳ね上げ格納時に、ピラー部分に沿って配設されているシートベルトが前記シートのシートバックとシートクッションとの間に挟まれる等して、前記格納されるシート方向に変位される可能性がある。
【０００４】
そして、前記のようなシートにおいては、シートクッション側に設けられた係合部材に係合してシートクッションを着座可能状態に車体側に固定する係止部材が車体フロア等に設けられるが、特に前記のように、シート格納時にシートベルトが格納されるシート方向に変位された状態のままになっていると、シートを着座可能状態に戻すときに前記係合部材と係止部材との間にシートベルトが挟まれ易くなり確実に両者の係合が行われなくなるという問題がある。
【０００５】
しかしながら、前記従来例においては、上述のように跳ね上げ格納自在に設けられるシートの前記係合部材と係止部材との間にシートベルトが挟まれるのを防止することを意図したものではなく、上述のような技術課題を解決し得るものではない。
【０００６】
本発明は、前記従来技術の問題点を解決するために提案されたもので、その目的は、前記のような跳ね上げ格納式のシートを備えたものにおいて、シートベルトが特に前記のような状態になった場合においても、簡単な構造にて前記係合部材と係止部材との間にシートベルトが挟まれるのを防止して、両者の係合が確実に行われるようにした車両のシートベルト構造を提供することである。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決し、目的を達成するために、この発明に係わる車両のシートベルト構造は、次のような構成を備える。即ち、
請求項１に係る構成は、車両前方側もしくは車両後方側に跳ね上げ移動自在に設けられると共に、車体側に設けられた係止部材に係合して着座可能状態に車体側に固定される係合部材が車両外側方側に設けられたシートクッションを備えたシートの前記係止部材の車両外側方側の近傍部にアンカー部が設定され、前記アンカー部から該アンカー部上方のシートベルトガイド方向に設けられてなるシートベルトにおいて、
前記シートベルトのアンカー部は該シートベルト端部が挿通されてなる取付金具を介して車体側に固定される一方、前記シートベルト端部の互いのシートベルト同志の重ね合せ部分はそのシートベルト長さ方向の略全域に亘って縫合されて自立性が付与され、前記縫合部によりシートベルト端部の前記係止部材部への倒れ込み防止部が設定されてなる。
これにより、特に前記のように、シート格納時にシートベルトが格納されるシート方向に変位された状態のままになっているような場合においても、シートを着座可能状態に戻すときに前記係合部材と係止部材との間にシートベルトが挟まれてしまうのが防止でき、確実に両者の係合を行うことができる。
【０００８】
また、請求項２に係る構成は、請求項１に記載の構成において、前記シートは、シートクッション上にシートバックが倒伏した状態で、シートクッション前方側を中心として前記シートクッション及びシートバックが車両前方側に跳ね上げ移動自在に設けられる後席側のシートであるものである。
これにより、前記効果に加え、車両前方側に跳ね上げ移動した後席側のシート後方の広い車室空間を荷室等に有効利用できる。
【０００９】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態につき、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図１は、自動車の車室内を示し、本発明に係る実施の形態の車両のシートベルト構造の取付け位置を示す図である。また、図２は、図１のリヤシートを、シートクッション上にシートバックが倒伏した状態で、シートクッション前方側を中心として前記シートクッション及びシートバックを車両前方側に跳ね上げ格納した状態を示す図である。
【００１０】
先ず、図１に示すように、車室内１０において、シートクッション１ａ、シートバック１ｂ及びヘッドレスト１ｃを備えるフロントシート１は、運転席側と助手席側とに夫々設けられている。また、シートクッション２ａ、シートバック２ｂ及びヘッドレスト２ｃを備えるリヤシート２は、車体の幅方向に一体となって設けられている。ヘッドレスト１ｃ、２ｃは、各シートバック１ｂ、２ｂの最上端にその高さ調整が可能に設けられる。これらのフロントシート１及びリヤシート２は、フロアＦに設けられたシートレール（不図示）により前後方向Ｓ１にスライド可能に設けられる。
【００１１】
一方、図２に示すように、リヤシート２は、シートバック２ｂを前方に倒し込んでシートクッション２ａに重ね合せると共に、シートバック２ｂを含むシートクッション２ａをシートレール４の一端で回動、即ち前方側に跳ね上げ、フロントシート１の後方に略垂直に立てることにより格納状態にすることができる。この格納状態にするには、先ず、リヤシート２のヘッドレスト２ｃを取り外した後、シートバック２ｂを前方に倒し込んでシートクッション２ａに重ね合せると同時に、リヤシート２を最前端までスライドさせてシートクッション２ａをシートレール４毎フロントシート１の後方に倒立させる。このように、格納状態では、車室内の後方部分を荷室等として有効利用できる。
【００１２】
次に、シートレールの構造について説明する。図６はリヤシート２のシートレールの構造を示す図である。
前述の図２において、シートレール４は、車室内のフロアＦ及びリヤのシートクッション２ａの裏面の両側に固定され、リヤシート２を前後方向にスライド可能とすると共に、シートクッション２ａをシートレール４の一端４２で矢印Ｓ５方向に回動させ、略垂直に立てることにより格納状態にすることができる。
【００１３】
リヤシート２は、シートクッション２ａをスライド部材４４に固定することにより前後方向にスライド可能となる。スライド部材４４は、レール本体４１上を矢印Ｓ７方向にスライド可能に設けられる。また、シートレール４は、その回動部４２をフロアＦ側に軸支することにより矢印Ｓ５方向に回動可能に支持されるので、シートクッション２ａを含むシートレール全体を矢印Ｓ６方向に回動させることができる。
【００１４】
また、シートクッション２ａ下方の車体フロアＦ上には、上方に凸状のストライカ部材５ａを備えた係止部材５（図面手前側は図示略）が設けられている。そして、係止部材５に対応するシートクッション２ａ部の車両外側方側には、前記ストライカ部材５ａに係合してシートクッション２ａを着座可能状態、即ち略水平状態に車体フロアＦ上に固定する係合部材としてのロック部材６が設けられている。
【００１５】
加えて、図２、並びにその詳細を図３に示すように、シートクッション２ａ中央側下方の車体フロアＦ上には、後席中央側乗員用のバックル側シートベルト７ａ、タング側シートベルト７ｂ、及び後席サイド側乗員用の各バックル側シートベルト８ａ、８ｂが、その各端部ループ内に挿通されるアンカープレート９、９を介して各ボルト１１により取付けられている。なお、これらシートベルト７ａ、７ｂ、８ａ、及び８ｂは、シートクッション２ａに夫々対応して開口されたスリット部２ｄ、２ｄから図１に示すように（図面手前側は図示略）、シートクッション２ａ上に引出されて使用できるようになっている。
【００１６】
一方、係止部材５の車両外側方側の車体下部には、後席サイド側乗員用のタング側シートベルト１２のアンカー部１３が設定されている。このアンカー部１３には、金属製の取付部材１４が車体下部にボルト１５にて取付けられている。取付部材１４の上部には開口部１４ａが形成されており、シートベルト１２の端部は前記開口部１４ａ内に挿通されて、その端部同士が互いに重ね合わされていると共に、該重ね合せ部分１２ａはそのシートベルト１２の長さ方向の略全域に亘って縫合されて縫合部１２ｂが設けられている。そして、この縫合部１２ｂにより当該部分に自立性が付与されると共に、当該部分の剛性が他の非縫合部よりも高められており、該縫合部１２ｂによってシートベルト１２端部の前記係止部材５部への倒れ込み防止部１２ｃが設定されている。
【００１７】
即ち、特に図２に示されるように、シート２の跳ね上げ格納時に、シートベルト１２が前記シート２のシートバック２ｂとシートクッション２ａとの間に挟まれる等して、前記格納されるシート２方向に変位される可能性があるが、上記のように倒れ込み防止部１２ｃが設定されていることにより、シート２を図１のような着座可能状態に戻すときに前記係合部材と係止部材との間にシートベルト２が挟まれるのが有効に防止される。結果、両者の係合が確実に行われることとなる。
【００１８】
尚、前記シートベルト１２は上方部においてシートベルトガイド１６内に挿通されており、引出し並びに引込み時においてガイドされるようになっている。また、１７は前記取付部材１４、ボルト１５、及びシートベルト１２の端部をカバーすると共に、アンカー部１３から延びるシートベルト１２に方向性を持たせるブーツである。尚、このブーツの長さを長くして当該部分のシートベルト１２に自立性を付与することも考えられるが、このようにすると、リヤシート２が特に最後端に位置した状態でのシートベルト１２使用時に、ブーツによって当該部分のシートベルト１２が乗員に沿って回り込みにくくなり好ましくないものである。
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態を修正又は変形したものに適用可能である。
【００１９】
【発明の効果】
以上説明のように、本発明の車両のシートベルト構造によれば、跳ね上げ移動自在に設けられると共に、車体側に設けられた係止部材に係合して車体側に固定される係合部材が設けられたシートクッションを備えたシートの前記係止部材の近傍部に配設されてなるシートベルトにおいて、前記シートベルトのアンカー部は該シートベルト端部が挿通されてなる取付部材を介して車体側に固定される一方、前記シートベルト端部の互いのシートベルト同士の重ね合せ部分はそのシートベルト長さ方向の略全域に亘って縫合されて自立性が付与され、前記縫合部によりシートベルト端部の前記係止部材部への倒れ込み防止部を設定したことにより、特に前述のようにシートの該跳ね上げ格納時に、シートベルトが前記シートのシートバックとシートクッションとの間に挟まれる等して、前記格納されるシート方向に変位されるような状態になっても、シートを着座可能状態に戻すときに前記係合部材と係止部材との間にシートベルトが挟まれるのを簡単な構造により防止できる。結果、前記両者の係合が確実に行われるようになる。
【００２０】
また、前記シートは、シートクッション上にシートバックが倒伏した状態で、シートクッション前方側を中心として前記シートクッション及びシートバックが車両前方側に跳ね上げ移動自在に設けられる後席側のシートであることにより、前記効果に加え、車両前方側に跳ね上げ移動した後席側のシート後方の広い車室空間を荷室等に有効利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明を適用する車両の車室内を示す斜視図である。
【図２】図１の車両において本発明に係る実施の形態の車両のシートベルト構造を示す斜視図である。
【図３】図２の要部拡大斜視図である。
【図４】図２のＡ−Ａ断面図である。
【図５】図４の正面図である。
【図６】シートレール部の詳細構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
２・・・・シート
２ａ・・・シートクッション
２ｂ・・・シートバック
５・・・・係止部材
６・・・・ロック部材（係合部材）
１２・・・シートベルト
１２ａ・・シートベルト同士の重ね合せ部分
１２ｂ・・縫合部
１２ｃ・・倒れ込み防止部
１３・・・アンカー部
１４・・・取付部材
１６・・・シートベルトガイド

Claims (2)

1. 車両前方側もしくは車両後方側に跳ね上げ移動自在に設けられると共に、車体側に設けられた係止部材に係合して着座可能状態に車体側に固定される係合部材が車両外側方側に設けられたシートクッションを備えたシートの前記係止部材の車両外側方側の近傍部にアンカー部が設定され、前記アンカー部から該アンカー部上方のシートベルトガイド方向に配設されてなるシートベルトにおいて、
   前記シートベルトのアンカー部は該シートベルト端部が挿通されてなる取付部材を介して車体側に固定される一方、前記シートベルト端部の互いのシートベルト同士の重ね合せ部分はそのシートベルト長さ方向の略全域に亘って縫合されて自立性が付与され、前記縫合部によりシートベルト端部の前記係止部材部への倒れ込み防止部が設定されてなることを特徴とする車両のシートベルト構造。
2. 前記シートは、シートクッション上にシートバックが倒伏した状態で、シートクッション前方側を中心として前記シートクッション及びシートバックが車両前方側に跳ね上げ移動自在に設けられる後席側のシートであることを特徴とする請求項１記載の車両のシートベルト構造。

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