JP3561306B2 - スパナとボルト及びナット - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、部材を締結するために用いられるボルト及びナットとその専用スパナに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、この種のボルトやナットは、外周部を六角形などの多角形や、溝もしくは切り欠き部を設けることにより、スパナの引っ掛け部としてボルトやナットを回転させて締め付けおよび緩め作業を行っていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ボルトやナットにスパナの引っ掛け部を設けることにより、繰り返しの使用により、引っ掛け部がつぶれてくる。引っ掛け部を設けるための製作コストがアップする。引っ掛け部を設けるために、強度が低下する。引っ掛け部を設けるために、外径が大きくなる。スパナを引っ掛け部に合わせるために、操作性が悪い。サイズ毎に合った各サイズのスパナが必要になる。装飾品などに使用する場合には、外観が損なわれる。回転体に使用する場合には、アンバランスの要因になる。など数多くの問題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
以上のような問題を解決する手段として、本発明は、頭部の外周部に先端側が先細りとなるフラットなテーパ面が形成されたボルトまたは外周部に一端が先細りとなるフラットなテーパ面が形成されたナットを回転させて締結するためのスパナと、前記テーパ面が前記頭部の外周部に形成されたボルトとを備えたスパナ及びボルトであって、内周面が前記ボルトの頭部のテーパ面またはナットのテーパ面と合致した角度のテーパを有するスパナ本体と、このスパナ本体に回転自在に保持され、このスパナ本体の内周面と前記ボルトの頭部のテーパ面またはナットのテーパ面との間に配置され、傾斜角を持って転動する転動部材と、前記転動部材が左右両方向に傾斜角を持って転動可能となるようにこの転動部材を保持する保持部材とを備え、前記スパナ本体の一方向またはその逆方向への回転により、その回転方向に対応した向きの傾斜角で前記転動部材が前記テーパ面とスパナ本体の内周面との間で拘束されることにより、前記スパナ本体の回転力が前記ボルトまたはナットに伝達される回転伝達部を持つことを特徴とする。
【0005】
また本発明は、頭部の外周部に先端側が先細りとなるフラットなテーパ面が形成されたボルトまたは外周部に一端が先細りとなるフラットなテーパ面が形成されたナットを回転させて締結するためのスパナと、前記テーパ面が前記外周部に形成されたナットとを備えたスパナ及びナットであって、内周面が前記ボルトの頭部のテーパ面またはナットのテーパ面と合致した角度のテーパを有するスパナ本体と、このスパナ本体に回転自在に保持され、このスパナ本体の内周面と前記ボルトの頭部のテーパ面またはナットのテーパ面との間に配置され、傾斜角を持って転動する転動部材とを備え、前記転動部材が左右両方向に傾斜角を持って転動可能となるようにこの転動部材を保持する保持部材とを備え、前記スパナ本体の一方向またはその逆方向への回転により、その回転方向に対応した向きの傾斜角で前記転動部材が前記テーパ面とスパナ本体の内周面との間で拘束されることにより、前記スパナ本体の回転力が前記ボルトまたはナットに伝達される回転伝達部を持つことを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、スパナ本体の内周部をボルトやナットの外周部に嵌装し、スパナ本体を一方向に回転することにより、傾斜角を持って転動する転動部材が、ボルトやナットの外周面とスパナ本体の内周面との間で拘束され、これにより、スパナとボルトやナットは当該方向について一体化され、スパナ本体を介して当該方向にボルトやナットを回転することができる。従って、ボルトやナットの締め付け部に、スパナの引っ掛け部などを設ける必要はなく、その形状をフラット面で形成される円錐状にすることができる。
【0007】
また、前記スパナは、前記転動部材が左右両方向に傾斜角を持って転動可能となるようにこの転動部材を保持する保持部材を備え、スパナ本体の一方向またはその逆方向への回転により、その回転力が伝達される回転伝達部を持つようにすることにより、操作性はより良くなる。
【0008】
【実施例】
以下、本発明を図面に示す実施例に基づいて説明する。図1は本発明を、頭部4を持つボルト1に適用した実施例である。このボルト1の基端部には、ボルト1の取り付けに必要な座面6と、スパナの引っ掛け部を設けるために、ネジ部5の外径より大きくなった頭部4が形成されている。従来はこの頭部4をスパナで締め付けるために、図8のような六角形14などの多角形や、他の方法としては内周部に六角形などの多角形や、プラスやマイナス形状の凹部を形成して、スパナの引っ掛け部としていた。本発明においては、前記スパナの引っ掛け部にあたる頭部4の外周部に、先端側が先細りとなるフラットなテーパ面7を形成し、該テーパ面7は専用スパナ3の締め付け部とする。
【0009】
図2に示した実施例は、本発明をナット2に適用した実施例である。このナット2の外周には、従来はスパナで締め付けるために、図9のような6角形15などの多角形や、引っ掛け溝を形成して、スパナの引っ掛け部としていた。本発明においては、前記スパナの引っ掛け部にあたる外周部に、一端が先細りとなるフラットなテーパ面7を形成し、該テーパ面7は専用スパナ3の締め付け部とする。
【0010】
図3は前記のボルト1やナット2のテーパ面7に嵌挿して、ボルト1やナット2を回転させて締結するための専用スパナ3を示す。このスパナ本体10の内周面12は前記テーパ面7と合致する角度のテーパ面を有し、内周部には周方向に適宜間隔をおいて、複数配置された円筒状の転動部材8が介装されている。この転動部材8は保持部材9によって回転自在にスパナ本体10に保持され、このスパナ本体10に一体的に設けられたハンドル11とによって構成されている。
【0011】
次に本実施例の動作をナット1とスパナ3の例により説明する。まず、図4に示すようにスパナ本体10の開口部をナット2の外周テーパ面7に嵌装する。この際、スパナ本体10の開口部はナット2の挿入側テーパ部より大きいため容易に装着でき、ナット2のテーパ面7はフラットに形成されているため、従来のスパナのように円周上の位置を合わせる必要もない。
【0012】
スパナ3を装着後、スパナ本体10を時計回りに回転することにり、転動部材8は自転しつつテーパ面7に対して公転する。転動部材8は図6のように傾斜角を持って配置されているため、転がりながらテーパ面7を螺旋状に上がっていく形となり、ナット2に対してスパナ本体10は図5の左方向に移動する。
【0013】
スパナ本体10の内周面12とナット2の外周テーパ面7は合致した角度のテーパ面であるため、スパナ本体10が図5の左方向に移動することにより、転動部材8はスパナ本体10の内周面12とナット2の外周テーパ面7との間でくさび効果により拘束され、スパナ本体10とナット2は一体化しスパナ本体10の回転がナット2に伝達される。
【0014】
スパナ3をナット2から取り外す場合には、前記の状態からスパナ本体10を反時計回りに回転することにより、転動部材8は転がりながらテーパ面7を螺旋状に下がっていく形となり、ナット2に対してスパナ本体10は図5の状態より右方向に移動するため、スパナ本体10の内周面12とナット2の外周テーパ面7の間に空間が生まれ、くさび効果により拘束されていた転動部材8はフリーとなり、スパナ3とナット2は分離状態になる。
【0015】
なお、前記の動作はナット2を時計回りに回転させて、締め込む場合の動作であるが、反時計回りに回転させて緩める場合には、図6とは逆の傾斜角を持った転動部材8を配置することにより、反時計回りでの回転時においても、同様の原理でスパナ本体10とナット2は一体化し、スパナ本体10の回転がナット2に伝達される。
【0016】
転動部材8の保持方法としては、保持部材9によりあらかじめ一方向に傾斜させた状態で保持させておき、図6のような傾斜角の転動部材8を配置したスパナ3は、時計回りに回転させて使用する「締め込み用」とし、図6とは逆の傾斜角の転動部材8を配置したスパナ3は、反時計回りに回転させて使用する「緩め用」のスパナ3として、使い分ける方法がある。
【0017】
別の転動部材8の保持方法としては、図7のように転動部材8を保持するための保持部材9の切り欠き部13を扇形に形成し、スパナ本体10を一方向に回転することにより、転動部材8が扇形の切り欠き部13の根元を起点に一方向に傾斜して自転しつつ、テーパ面7に対して螺旋状に公転し、またスパナ本体10を逆方向に回転することにより、転動部材8が逆方向に傾斜して公転するため、1本のスパナで締め込み作業と緩め作業を共用することができる。
【0018】
以上のように本実施例によれば、ナット2の締め付け部をテーパ状にすることにより、装着が容易になるだけでなく、転動部材8を介してナット2とスパナ本体10のテーパ部が噛み合う範囲であれば、異なったサイズのナット2も1本のスパナ3で締め付けることができる。また、繰り返しの使用によりナット2やスパナ3のテーパ部が摩耗しても、転動部材8を介してナット2とスパナ本体10のテーパ部が噛み合う範囲であれば、締め付けが可能である。
【0019】
また、スパナの引っ掛け部を設ける場合には「形状が複雑になり加工コストが上がる」「スパナの引っ掛け部の肉厚が薄くなり強度が低下する」「強度を保つために外径が必要以上に大きくなる」「装飾品などに使用する場合には、スパナの引っ掛部を設けるために、形状的な制約を受け外観を損なう」など、数多くの問題があるが、ナット2の締め付け部をフラットなテーパ面7にすることにより、これらの諸問題を全て解決することができる。
【0020】
さらに、ナット2を回転体に取り付けて使用する場合には、スパナの引っ掛け部を設けるために左右対称形状にしても、加工精度の誤差により円筒や円錐形状に比べてバランス精度は悪くなり、特に高速回転での使用においては、緩みや振動の原因となるが、ナット2の締め付け部をフラットなテーパ面7にすることにより、アンバランスの要因はなくなり、高速回転でも問題なく使用できる。
【0021】
なお、本実施例においてはスパナ本体10を回転するためのハンドル11をスパナ本体10に1か所設けたが、スパナ本体10を回転することができればこれに限定する必要はなく、2か所以上設けても良い。また、本実施例においては転動部材8を円柱状に形成したが、これに限定する必要はなく、転動するものであれば、例えば球状にしても良い。
【0022】
さらに、本実施例においては、ナット2のテーパ面7はフラットに形成し、ローレット加工などを施さなかったが、これに限定する必要はなく、転動部材8の転動に支障がない程度の凹凸があっても良い。また、本実施例においては切り欠き部13を扇形に形成した保持部材9を用いたが、これに限定する必要はなく、転動部材8が傾斜した状態を保ち、スパナ3の回転により転動部材8が自転しつつナットのテーパ面7に対して螺旋状に公転する機能を果たせばいかなる方法でもよい。
【0023】
以上の実施例では一般的なボルト1やナット2を例にとったが、これに限定する必要はなく、例えば袋状のナットや、図11のような内径部にネジの代わりに、ニードルローラ16を配置し、相手部材のテーパ面17を転動する特殊なナット18においても、回転力を伝達するためのものであれば全てに適用できる。
【0024】
【発明の効果】
以上のように本発明は、ボルトやナットへのスパナの取り付けが容易で操作性がよく、締め付け部の加工も簡素化される上に強度もアップし、さらには、外観形状もよくなり、高速回転体への使用も可能になるボルトやナットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のボルトの側面図である。
【図2】本発明のナットの側面の半断面図である。
【図3】本発明のスパナの側面の断面図である。
【図4】本発明のスパナをナットに取付けた状態の側面の断面図である。
【図5】本発明のスパナでナットを締め付けた状態を表す側面の断面図である。
【図6】本発明のスパナでナットを締め付けた際の転動部材の状態を表す図である。
【図7】本発明のスパナの転動部材を左右に傾斜して保持する方法を表す図である。
【図8】従来のボルトの斜視図である。
【図9】従来のナットの斜視図である。
【図10】内径部にネジの代わりにニードルローラを有した、従来のナットの図である。
【符号の説明】
1 ボルト
2 ナット
3 スパナ
7 テーパ面
8 転動部材
9 保持部材
10 スパナ本体
16 ニードルローラ
【発明の属する技術分野】
本発明は、部材を締結するために用いられるボルト及びナットとその専用スパナに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、この種のボルトやナットは、外周部を六角形などの多角形や、溝もしくは切り欠き部を設けることにより、スパナの引っ掛け部としてボルトやナットを回転させて締め付けおよび緩め作業を行っていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ボルトやナットにスパナの引っ掛け部を設けることにより、繰り返しの使用により、引っ掛け部がつぶれてくる。引っ掛け部を設けるための製作コストがアップする。引っ掛け部を設けるために、強度が低下する。引っ掛け部を設けるために、外径が大きくなる。スパナを引っ掛け部に合わせるために、操作性が悪い。サイズ毎に合った各サイズのスパナが必要になる。装飾品などに使用する場合には、外観が損なわれる。回転体に使用する場合には、アンバランスの要因になる。など数多くの問題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
以上のような問題を解決する手段として、本発明は、頭部の外周部に先端側が先細りとなるフラットなテーパ面が形成されたボルトまたは外周部に一端が先細りとなるフラットなテーパ面が形成されたナットを回転させて締結するためのスパナと、前記テーパ面が前記頭部の外周部に形成されたボルトとを備えたスパナ及びボルトであって、内周面が前記ボルトの頭部のテーパ面またはナットのテーパ面と合致した角度のテーパを有するスパナ本体と、このスパナ本体に回転自在に保持され、このスパナ本体の内周面と前記ボルトの頭部のテーパ面またはナットのテーパ面との間に配置され、傾斜角を持って転動する転動部材と、前記転動部材が左右両方向に傾斜角を持って転動可能となるようにこの転動部材を保持する保持部材とを備え、前記スパナ本体の一方向またはその逆方向への回転により、その回転方向に対応した向きの傾斜角で前記転動部材が前記テーパ面とスパナ本体の内周面との間で拘束されることにより、前記スパナ本体の回転力が前記ボルトまたはナットに伝達される回転伝達部を持つことを特徴とする。
【0005】
また本発明は、頭部の外周部に先端側が先細りとなるフラットなテーパ面が形成されたボルトまたは外周部に一端が先細りとなるフラットなテーパ面が形成されたナットを回転させて締結するためのスパナと、前記テーパ面が前記外周部に形成されたナットとを備えたスパナ及びナットであって、内周面が前記ボルトの頭部のテーパ面またはナットのテーパ面と合致した角度のテーパを有するスパナ本体と、このスパナ本体に回転自在に保持され、このスパナ本体の内周面と前記ボルトの頭部のテーパ面またはナットのテーパ面との間に配置され、傾斜角を持って転動する転動部材とを備え、前記転動部材が左右両方向に傾斜角を持って転動可能となるようにこの転動部材を保持する保持部材とを備え、前記スパナ本体の一方向またはその逆方向への回転により、その回転方向に対応した向きの傾斜角で前記転動部材が前記テーパ面とスパナ本体の内周面との間で拘束されることにより、前記スパナ本体の回転力が前記ボルトまたはナットに伝達される回転伝達部を持つことを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、スパナ本体の内周部をボルトやナットの外周部に嵌装し、スパナ本体を一方向に回転することにより、傾斜角を持って転動する転動部材が、ボルトやナットの外周面とスパナ本体の内周面との間で拘束され、これにより、スパナとボルトやナットは当該方向について一体化され、スパナ本体を介して当該方向にボルトやナットを回転することができる。従って、ボルトやナットの締め付け部に、スパナの引っ掛け部などを設ける必要はなく、その形状をフラット面で形成される円錐状にすることができる。
【0007】
また、前記スパナは、前記転動部材が左右両方向に傾斜角を持って転動可能となるようにこの転動部材を保持する保持部材を備え、スパナ本体の一方向またはその逆方向への回転により、その回転力が伝達される回転伝達部を持つようにすることにより、操作性はより良くなる。
【0008】
【実施例】
以下、本発明を図面に示す実施例に基づいて説明する。図1は本発明を、頭部4を持つボルト1に適用した実施例である。このボルト1の基端部には、ボルト1の取り付けに必要な座面6と、スパナの引っ掛け部を設けるために、ネジ部5の外径より大きくなった頭部4が形成されている。従来はこの頭部4をスパナで締め付けるために、図8のような六角形14などの多角形や、他の方法としては内周部に六角形などの多角形や、プラスやマイナス形状の凹部を形成して、スパナの引っ掛け部としていた。本発明においては、前記スパナの引っ掛け部にあたる頭部4の外周部に、先端側が先細りとなるフラットなテーパ面7を形成し、該テーパ面7は専用スパナ3の締め付け部とする。
【0009】
図2に示した実施例は、本発明をナット2に適用した実施例である。このナット2の外周には、従来はスパナで締め付けるために、図9のような6角形15などの多角形や、引っ掛け溝を形成して、スパナの引っ掛け部としていた。本発明においては、前記スパナの引っ掛け部にあたる外周部に、一端が先細りとなるフラットなテーパ面7を形成し、該テーパ面7は専用スパナ3の締め付け部とする。
【0010】
図3は前記のボルト1やナット2のテーパ面7に嵌挿して、ボルト1やナット2を回転させて締結するための専用スパナ3を示す。このスパナ本体10の内周面12は前記テーパ面7と合致する角度のテーパ面を有し、内周部には周方向に適宜間隔をおいて、複数配置された円筒状の転動部材8が介装されている。この転動部材8は保持部材9によって回転自在にスパナ本体10に保持され、このスパナ本体10に一体的に設けられたハンドル11とによって構成されている。
【0011】
次に本実施例の動作をナット1とスパナ3の例により説明する。まず、図4に示すようにスパナ本体10の開口部をナット2の外周テーパ面7に嵌装する。この際、スパナ本体10の開口部はナット2の挿入側テーパ部より大きいため容易に装着でき、ナット2のテーパ面7はフラットに形成されているため、従来のスパナのように円周上の位置を合わせる必要もない。
【0012】
スパナ3を装着後、スパナ本体10を時計回りに回転することにり、転動部材8は自転しつつテーパ面7に対して公転する。転動部材8は図6のように傾斜角を持って配置されているため、転がりながらテーパ面7を螺旋状に上がっていく形となり、ナット2に対してスパナ本体10は図5の左方向に移動する。
【0013】
スパナ本体10の内周面12とナット2の外周テーパ面7は合致した角度のテーパ面であるため、スパナ本体10が図5の左方向に移動することにより、転動部材8はスパナ本体10の内周面12とナット2の外周テーパ面7との間でくさび効果により拘束され、スパナ本体10とナット2は一体化しスパナ本体10の回転がナット2に伝達される。
【0014】
スパナ3をナット2から取り外す場合には、前記の状態からスパナ本体10を反時計回りに回転することにより、転動部材8は転がりながらテーパ面7を螺旋状に下がっていく形となり、ナット2に対してスパナ本体10は図5の状態より右方向に移動するため、スパナ本体10の内周面12とナット2の外周テーパ面7の間に空間が生まれ、くさび効果により拘束されていた転動部材8はフリーとなり、スパナ3とナット2は分離状態になる。
【0015】
なお、前記の動作はナット2を時計回りに回転させて、締め込む場合の動作であるが、反時計回りに回転させて緩める場合には、図6とは逆の傾斜角を持った転動部材8を配置することにより、反時計回りでの回転時においても、同様の原理でスパナ本体10とナット2は一体化し、スパナ本体10の回転がナット2に伝達される。
【0016】
転動部材8の保持方法としては、保持部材9によりあらかじめ一方向に傾斜させた状態で保持させておき、図6のような傾斜角の転動部材8を配置したスパナ3は、時計回りに回転させて使用する「締め込み用」とし、図6とは逆の傾斜角の転動部材8を配置したスパナ3は、反時計回りに回転させて使用する「緩め用」のスパナ3として、使い分ける方法がある。
【0017】
別の転動部材8の保持方法としては、図7のように転動部材8を保持するための保持部材9の切り欠き部13を扇形に形成し、スパナ本体10を一方向に回転することにより、転動部材8が扇形の切り欠き部13の根元を起点に一方向に傾斜して自転しつつ、テーパ面7に対して螺旋状に公転し、またスパナ本体10を逆方向に回転することにより、転動部材8が逆方向に傾斜して公転するため、1本のスパナで締め込み作業と緩め作業を共用することができる。
【0018】
以上のように本実施例によれば、ナット2の締め付け部をテーパ状にすることにより、装着が容易になるだけでなく、転動部材8を介してナット2とスパナ本体10のテーパ部が噛み合う範囲であれば、異なったサイズのナット2も1本のスパナ3で締め付けることができる。また、繰り返しの使用によりナット2やスパナ3のテーパ部が摩耗しても、転動部材8を介してナット2とスパナ本体10のテーパ部が噛み合う範囲であれば、締め付けが可能である。
【0019】
また、スパナの引っ掛け部を設ける場合には「形状が複雑になり加工コストが上がる」「スパナの引っ掛け部の肉厚が薄くなり強度が低下する」「強度を保つために外径が必要以上に大きくなる」「装飾品などに使用する場合には、スパナの引っ掛部を設けるために、形状的な制約を受け外観を損なう」など、数多くの問題があるが、ナット2の締め付け部をフラットなテーパ面7にすることにより、これらの諸問題を全て解決することができる。
【0020】
さらに、ナット2を回転体に取り付けて使用する場合には、スパナの引っ掛け部を設けるために左右対称形状にしても、加工精度の誤差により円筒や円錐形状に比べてバランス精度は悪くなり、特に高速回転での使用においては、緩みや振動の原因となるが、ナット2の締め付け部をフラットなテーパ面7にすることにより、アンバランスの要因はなくなり、高速回転でも問題なく使用できる。
【0021】
なお、本実施例においてはスパナ本体10を回転するためのハンドル11をスパナ本体10に1か所設けたが、スパナ本体10を回転することができればこれに限定する必要はなく、2か所以上設けても良い。また、本実施例においては転動部材8を円柱状に形成したが、これに限定する必要はなく、転動するものであれば、例えば球状にしても良い。
【0022】
さらに、本実施例においては、ナット2のテーパ面7はフラットに形成し、ローレット加工などを施さなかったが、これに限定する必要はなく、転動部材8の転動に支障がない程度の凹凸があっても良い。また、本実施例においては切り欠き部13を扇形に形成した保持部材9を用いたが、これに限定する必要はなく、転動部材8が傾斜した状態を保ち、スパナ3の回転により転動部材8が自転しつつナットのテーパ面7に対して螺旋状に公転する機能を果たせばいかなる方法でもよい。
【0023】
以上の実施例では一般的なボルト1やナット2を例にとったが、これに限定する必要はなく、例えば袋状のナットや、図11のような内径部にネジの代わりに、ニードルローラ16を配置し、相手部材のテーパ面17を転動する特殊なナット18においても、回転力を伝達するためのものであれば全てに適用できる。
【0024】
【発明の効果】
以上のように本発明は、ボルトやナットへのスパナの取り付けが容易で操作性がよく、締め付け部の加工も簡素化される上に強度もアップし、さらには、外観形状もよくなり、高速回転体への使用も可能になるボルトやナットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のボルトの側面図である。
【図2】本発明のナットの側面の半断面図である。
【図3】本発明のスパナの側面の断面図である。
【図4】本発明のスパナをナットに取付けた状態の側面の断面図である。
【図5】本発明のスパナでナットを締め付けた状態を表す側面の断面図である。
【図6】本発明のスパナでナットを締め付けた際の転動部材の状態を表す図である。
【図7】本発明のスパナの転動部材を左右に傾斜して保持する方法を表す図である。
【図8】従来のボルトの斜視図である。
【図9】従来のナットの斜視図である。
【図10】内径部にネジの代わりにニードルローラを有した、従来のナットの図である。
【符号の説明】
1 ボルト
2 ナット
3 スパナ
7 テーパ面
8 転動部材
9 保持部材
10 スパナ本体
16 ニードルローラ
Claims (2)
- 頭部の外周部に先端側が先細りとなるフラットなテーパ面が形成されたボルトまたは外周部に一端が先細りとなるフラットなテーパ面が形成されたナットを回転させて締結するためのスパナと、
前記テーパ面が前記頭部の外周部に形成されたボルトとを備えたスパナ及びボルトであって、
内周面が前記ボルトの頭部のテーパ面またはナットのテーパ面と合致した角度のテーパを有するスパナ本体と、
このスパナ本体に回転自在に保持され、このスパナ本体の内周面と前記ボルトの頭部のテーパ面またはナットのテーパ面との間に配置され、傾斜角を持って転動する転動部材と、
前記転動部材が左右両方向に傾斜角を持って転動可能となるようにこの転動部材を保持する保持部材とを備え、
前記スパナ本体の一方向またはその逆方向への回転により、その回転方向に対応した向きの傾斜角で前記転動部材が前記テーパ面とスパナ本体の内周面との間で拘束されることにより、前記スパナ本体の回転力が前記ボルトまたはナットに伝達される回転伝達部を持つことを特徴とするスパナ及びボルト。 - 頭部の外周部に先端側が先細りとなるフラットなテーパ面が形成されたボルトまたは外周部に一端が先細りとなるフラットなテーパ面が形成されたナットを回転させて締結するためのスパナと、
前記テーパ面が前記外周部に形成されたナットとを備えたスパナ及びナットであって、
内周面が前記ボルトの頭部のテーパ面またはナットのテーパ面と合致した角度のテーパを有するスパナ本体と、
このスパナ本体に回転自在に保持され、このスパナ本体の内周面と前記ボルトの頭部のテーパ面またはナットのテーパ面との間に配置され、傾斜角を持って転動する転動部材とを備え、
前記転動部材が左右両方向に傾斜角を持って転動可能となるようにこの転動部材を保持する保持部材とを備え、
前記スパナ本体の一方向またはその逆方向への回転により、その回転方向に対応した向きの傾斜角で前記転動部材が前記テーパ面とスパナ本体の内周面との間で拘束されることにより、前記スパナ本体の回転力が前記ボルトまたはナットに伝達される回転伝達部を持つことを特徴とするスパナ及びナット。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP30719094A JP3561306B2 (ja) | 1994-11-04 | 1994-11-04 | スパナとボルト及びナット |
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JP30719094A JP3561306B2 (ja) | 1994-11-04 | 1994-11-04 | スパナとボルト及びナット |
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1994
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