JP3559892B2 - 光触媒皮膜およびその形成方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、消臭、抗菌、および防かび機能を有しかつ加工性・耐光性に優れた光触媒皮膜およびその形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、二酸化チタン等の光触媒に紫外線を含む光を照射すると、有機物が酸化分解することは古くから知られている。近年このような二酸化チタンの効果を利用した消臭、抗菌、防かび等の用途への応用が検討されている。二酸化チタンを基材に固定する方法として、基材に二酸化チタン粒子が水や有機溶媒に分散されたゾルを塗布し乾燥後、高温で処理し焼結させる方法と、二酸化チタン粒子をバインダーに混入する方法とがあるが、前者の焼結させる場合は、基材がタイルなどの高温焼成に耐えられるものに限定される。一方、バインダーを用いる方法では、比較的低温での焼成が可能であるため、様々な基材に塗布することができる。アルコキシシランやクロロシラン等の加水分解・重縮合生成物は、低温焼成が可能で、様々な基材に塗布することができ、比較的安価であるため、二酸化チタン粒子のバインダーとして優れている。
【0003】
そこで、従来、特開平8−164334号公報記載の光触媒用酸化チタン塗膜形成性組成物及びその製法の発明では、アルコキシシランやクロロシラン等の加水分解性ケイ素化合物を二酸化チタンのバインダーに用い、特許第2618287号公報記載の光反応性有害物質除去剤及びこれを用いる有害物質除去方法では、アルコキシシラン等の金属アルコキシドの加水分解生成物を二酸化チタンのバインダーに用いることにより、優れた光触媒効果を持つ皮膜が得られることが報告されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前者の皮膜は、成分のすべてもしくはほとんどが無機成分からなるため、加工性に乏しく、また後者においても加工性に優れた皮膜が得られるという記載は見当たらない。また、加工性を必要としない用途においても、例えば従来の無機成分からなるバインダーと二酸化チタン粒子とを含んだ塗料は、薄く均一に塗布した場合は剥離しないが、膜厚が0.5〜1μm程度になるとクラックが生じ剥離しやすいため、皮膜を塗布する成形体の形状が複雑かもしくは平板への塗布でも均一な皮膜の形成が困難な方法の場合、膜が厚くなった部分からクラックが生じ剥離しやすいため、ポストコートへの利用も難しいという問題点があった。
【0005】
このようなアルコキシシランやクロロシラン等の加水分解性ケイ素化合物を二酸化チタンのバインダーの原料として用いた従来法の場合、加工性に優れた皮膜が得られないという問題点を解決するため、本発明者らは先に、式RSi(X)(式中、Rはアルキル基、フェニル基、またはビニル基よりなる炭化水素基、Xはアルコキシル基、またはハロゲンである)で表される3官能シランと、式Si(X)(式中、Xはアルコキシル基、またはハロゲンである)で表される4官能シランとの加水分解・重縮合物を、光触媒としての二酸化チタン粒子のバインダー原料とした加工性・耐光性に優れた光触媒皮膜の発明を提案した(例えば特願平10−183631号参照)。
【0006】
しかしながら、光触媒としての二酸化チタン粒子にバインダーを加えて作製した先提案の光触媒皮膜では、使用環境と用途によっては光触媒機能が不充分な場合が生じることも考えられ、特に紫外線量が少ない環境では、抗菌力が発揮でないという問題があった。
【0007】
一方、例えばP.Pichat,M.-N.Mozzanega,J.Disdier,and J.-M. Herrmann,Nouv.J.Chim.,6,559,(1982),やH.Harada,Chem.Express,6[12],961(1991),等の研究のように、光触媒に適当な金属を少量担持することにより、光触媒機能が向上することが既に知られている。ここで、光触媒に少量担持する金属としては、白金、銀、銅、鉄、コバルト等多数挙げられるが、これらのうち、銀、銅等は金属自体の抗菌力が大変強いことが古くから知られている。二酸化チタンによる光触媒反応は、太陽光、蛍光灯、紫外線ランプ等に含まれる紫外線を必要とするため、暗所においては抗菌効果を発揮することができないが、銀や銅を添加することにより、暗所における抗菌力を付与することができる。
【0008】
ところで、二酸化チタンによる光触媒反応は、二酸化チタン表面で起こるため、防かびに利用した場合、二酸化チタンと接しているかびの部分は分解されるが、表面から少し離れた位置では、かびは分解せず、成長し続けるため、光照射下においても二酸化チタンのみで防かび効果を発揮するのは非常に困難である。これに対し、銀は、抗菌のみならず、防かびにも非常に効果があることから、防かびのために銀を添加して二酸化チタンを含む光触媒皮膜を作製することは非常に好ましい。
【0009】
二酸化チタンを含む光触媒皮膜に銀や銅を担持する場合、銀や銅は金属塩として原料に添加されるのが一般的であるが、銀イオンは光化学反応や酸化により金属銀の凝集体あるいは酸化物となり、褐色あるいは黒色に変化するという性質を有するため、防かび効果を発揮できる程度の銀を添加した場合には、皮膜焼成時の熱や皮膜使用時の紫外線により変色するという問題があり、特に美観を重視する用途においては使用できないという問題があった。一方、銅塩を使用した場合には、皮膜使用時の変色は小さいものの、防かび効果を発揮するのが困難であるという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、上記の本発明者らの先提案の発明技術の問題点を解決し、式RSi(X)(式中、Rはアルキル基、フェニル基、またはビニル基よりなる炭化水素基、Xはアルコキシル基、またはハロゲンである)で表される3官能シランと、式Si(X)(式中、Xはアルコキシル基、またはハロゲンである)で表される4官能シランとの加水分解・重縮合物を、光触媒としての二酸化チタン粒子のバインダー原料とした加工性・耐光性に優れた光触媒皮膜において、原料に銀塩と共に銅塩を添加することにより、作製した皮膜の抗菌、防かび、消臭などの光触媒機能を大幅に向上させ、光照射環境あるいは暗所のいずれにおいても、優れた抗菌、防かび、および消臭機能を有しかつ加工性・耐光性に優れた光触媒皮膜を提供すること、さらに、防かび効果を発揮できる程度の銀塩を添加した場合にも皮膜焼成時の熱や皮膜使用時の紫外線による変色が小さく、特に美観を重視する用途にも使用できるうえに、金属、プラスチックス等のあらゆる基材の表面に形成することができ、加工性に優れた基材であれば、プレコートにより光触媒皮膜の形成が可能である、光触媒皮膜およびその形成方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明による消臭、抗菌、および防かび機能を有しかつ加工性・耐光性に優れた光触媒皮膜は、式RSi(X)(式中、Rはアルキル基、フェニル基、またはビニル基よりなる炭化水素基、Xはアルコキシル基、またはハロゲンである)で表される3官能シランと、式Si(X)(式中、Xはアルコキシル基、またはハロゲンである)で表される4官能シランとの加水分解・重縮合物と、光触媒としての二酸化チタン粒子とを含みかつ二酸化チタン濃度が皮膜中濃度において5〜80重量%であり、膜厚が0.05〜5μmである光触媒皮膜であって、抗菌剤・防かび剤としての銀と、抗菌剤としての銅とを含み、かつ皮膜中の銀成分として銀イオンおよび/または金属銀を含み、銀イオン、金属銀および/または銀化合物の濃度が金属銀換算にして二酸化チタンの0.01〜5重量%であり、皮膜中の銅成分として銅イオンおよび/または金属銅を含み、銅イオン、金属銅および/または銅化合物の濃度が金属銅換算にして二酸化チタンの0.1〜40重量%であることを特徴としている。
【0012】
つぎに、本発明による光触媒皮膜の形成方法は、式RSi(X)(式中、Rはアルキル基、フェニル基、またはビニル基よりなる炭化水素基、Xはアルコキシル基、またはハロゲンである)で表される3官能シランと、式Si(X)(式中、Xはアルコキシル基、またはハロゲンである)で表される4官能シランとを、アルコールもしくはその他の有機溶媒、水、および酸触媒、抗菌剤・防かび剤としての銀塩、抗菌剤としての銅塩の存在下で、加水分解・重縮合して光触媒皮膜形成用ゾルを形成し、この光触媒皮膜形成用ゾルを光触媒としての二酸化チタン粒子と混合するか、または上記シラン化合物の反応開始時から二酸化チタン粒子を混合し、二酸化チタン粒子含有ゾルを基材に塗布し、乾燥するか、または乾燥後さらに500℃以下の温度で熱処理させることを特徴とし、上記二酸化チタン、銀塩および銅塩以外の光触媒皮膜形成用ゾルの原料の比率を、3官能シラン:4官能シラン:アルコールもしくはその他の有機溶媒:水:酸触媒=x:(1−x):y:z:aのモル比で表すと、x、y、z、aの値がそれぞれ0.3≦x<0.7、0.5≦y≦1000、0.5≦z≦1000、0.00001≦a≦1であり、かつ二酸化チタン濃度が皮膜中濃度において5〜80重量%であり、さらに銀塩濃度が金属銀換算にして二酸化チタンの0.01〜5重量%であり、銅塩濃度が金属銅換算にして二酸化チタンの0.1〜40重量%であることを特徴としている。
【0013】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
まず、本発明による消臭、抗菌、および防かび機能を有しかつ加工性・耐光性に優れた光触媒皮膜は、二酸化チタンと3官能シランと4官能シランと、抗菌剤・防かび剤としての銀と、抗菌剤としての銅とを含んでいる。
【0015】
本発明で用いられる二酸化チタンは、硫酸法、塩素法等の工業的手法により調製された粒子あるいは水熱法、ゾル−ゲル法により得られた粒子などのあらゆる手法で調製された物が用いられ、粒子の状態としては、粉末状あるいは粉末を液体に分散させた状態のいずれでもよい。
【0016】
なお、硫酸法および塩素法では、調製条件により一次粒子径が0.2〜0.3μm程度の顔料用二酸化チタンと、一次粒子径が100nm未満の微粒子二酸化チタンが得られるが、一次粒子が小さく比表面積が大きい塩素法により調製した微粒子二酸化チタンが特に好ましい。
【0017】
工業的に調製される二酸化チタンの結晶形は、ルチル型、アナターゼ型、あるいはルチル型とアナターゼ型の混合物であり、水熱法では、ブルカイト型の結晶が析出する場合がある。本発明では、いかなる結晶形の二酸化チタン粒子をも用いることができるが、場合によっては、無定形の酸化チタンが含まれていても良い。結晶形としては、アナターゼ型、あるいはルチル型とアナターゼ型との混合物が好ましく、量子効率の高いアナターゼ型を結晶成分中の比率で30重量%以上含む物が、さらに好ましい。
【0018】
また、二酸化チタンは必要な皮膜特性に従って皮膜中濃度で80重量%以下の好適な量が添加されるが、二酸化チタン粒子濃度が低い場合には光触媒効果が小さく、二酸化チタン粒子濃度が高い場合には皮膜の加工性が劣るため、二酸化チタン濃度は、皮膜中濃度において5〜60重量%であるのが、好ましい。
【0019】
また上記において、本発明で用いる3官能シランは、式RSi(X)(式中、Rはアルキル基、フェニル基、またはビニル基よりなる炭化水素基、Xはアルコキシル基、またはハロゲンである)で表されるものである。
【0020】
具体的には、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリクロロエシラン、エチルトリクロロエシラン、ビニルトリクロロエシラン等が挙げられ、少なくとも1種類以上用いられる。
【0021】
本発明で用いる4官能シランは、式Si(X)(式中、Xはアルコキシル基、またはハロゲンである)で表されものである。
【0022】
具体的には、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラクロロシシラン等が挙げられ、少なくとも1種類以上用いられる。
【0023】
本発明においては上記3官能シランと4官能シランとを混合した後、加水分解・重縮合させた物をバインダーとして用いる場合と、上記3官能シランと4官能シランをそれぞれ加水分解・重縮合させた物、あるいはこれらのシラン化合物のオリゴマーを混合して加水分解・重縮合させた物を用いる場合がある。
【0024】
本発明で用いる3官能シランと4官能シランの混合比は、3官能シラン:4官能シラン=x:(1−x)のモル比で表すと、0.3≦x<0.7、好ましくは0.4≦x≦0.6である。なお、上記シラン化合物のオリゴマーをバインダーの原料に用いる場合には、上記モル比はモノマー換算値に相当する。ここで、xの範囲を上記のように限定したのは、xが小さすぎると、皮膜中にR(炭化水素基)が少なくなるため皮膜の加工性が低下し、xが大きすぎると、二酸化チタン粒子表面が親水性である場合、上記シラン化合物より生成したバインダーを含んだゾル中での二酸化チタン粒子の分散性が低下するからである。
【0025】
本発明において用いる銀塩および銅塩は、特に限定されないが、例えば硝酸銀、硫酸銀、硝酸銅、硫酸銅、塩化第一銅、塩化第二銅、炭酸銅があげられる。これらの中から少なくとも1種の銀塩および銅塩が用いられる。
【0026】
本発明による光触媒皮膜中における銀塩および銅塩の金属の存在状態は、不明であるが、銀成分として少なくとも銀イオンおよび/または金属銀を含み、さらに、酸化銀も含まれる場合もあると思われる。また、皮膜中の銅成分として少なくとも銅イオンおよび/または金属銅を含み、さらに、酸化銅も含まれる場合もあると思われる。作製した皮膜において、銀イオンおよび/または金属銀は抗菌剤・防かび剤として働き、銅イオンおよび/または金属銅は抗菌剤として働く。
【0027】
上記組成において、銀塩を、金属銀換算にして二酸化チタンの0.01〜5重量%、また銅塩を、金属銅換算にして二酸化チタンの0.1〜40重量%添加する。
【0028】
上記のように、金属塩として銀塩と銅塩を同時に添加するのは、銀塩のみを添加した場合には、抗菌、防かび力は充分であるが、皮膜が焼成あるいは使用時に変色するのに対し、銅塩のみを添加した場合には、皮膜の焼成あるいは使用時に変色が小さくかつ抗菌力はあるものの、充分な防かび効果が得られないからである。
【0029】
銀塩の添加量が上記のように限定されるのは、下限未満の添加量では、防かび力が充分に発揮されず、上限より多量に添加すると、皮膜焼成および使用時の変色が大きいからである。
【0030】
銅塩の添加量が上記のように限定されるのは、下限未満の添加量では、銀塩の添加による皮膜焼成時あるいは使用時における変色を抑制することができず、上限より多量に添加すると、銅塩自体の添加による皮膜焼成時あるいは使用時における変色が大きくなるからである。
【0031】
本発明の光触媒の原料として、皮膜の結合力、および耐熱性を向上させるため、水酸化アルミニウムを添加するのが好ましい。水酸化アルミニウムは、これを多く添加しすぎると、皮膜中の二酸化チタンの比率が小さくなり、光触媒効果が低下するため、二酸化チタンに対して水酸化アルミニウムが50重量%以下の割合で含まれている。
なお、本発明による光触媒皮膜の膜厚は、0.05〜5μmである。
つぎに、本発明の光触媒皮膜の形成方法は、光触媒皮膜形成用ゾルの調製と皮膜形成とからなる。
【0032】
A. 光触媒皮膜形成用ゾルの調製
本発明における光触媒皮膜形成用ゾルは、二酸化チタン粒子、3官能シランと、4官能シランとを、アルコールもしくはその他の有機溶媒、水、酸触媒、銀塩、および銅塩を、所定の比率で混合、攪拌することにより得られる。なお、上記原料に加えて、皮膜の結合力、および耐熱性を向上させるため、水酸化アルミニウムを添加することが好ましい。
【0033】
ここで、酸触媒は、硫酸、硝酸、塩酸などの無機酸、酢酸、シュウ酸などの有機酸が用いられる。
【0034】
なお、二酸化チタンのバインダーの原料である3官能シランと4官能シランとは、それぞれ加水分解・重縮合させたものあるいはこれらシラン化合物のオリゴマーを混合して用いても良く、二酸化チタン粒子はシランの反応前、反応後のいずれのタイミングで添加しても良い。
【0035】
上記ゾル原料の中で二酸化チタン、銀塩、銅塩および水酸化アルミニウム以外の原料の比率を、3官能シラン:4官能シラン:アルコールもしくはその他の有機溶媒:水:酸触媒=x:(1−x):y:z:aのモル比で表すと、x、y、z、aの値がそれぞれ0.3≦x<0.7、0.5≦y≦1000、0.5≦z≦1000、0.00001≦a≦1である。
【0036】
上記組成において、まずxの値については前掲の通りである。yが0.5未満であれば、粒子を分散させるのが困難であり、yが1000を越えると、調製した光触媒皮膜形成用ゾルの固形成分濃度が低すぎるため均一な皮膜形成が困難であるので、好ましくない。また、zが0.5未満であれば、シランの加水分解に時間がかゝり、zが1000を越えると、ゾルが流動性を失い、ゲル化する可能性があるので、好ましくない。またaが0.00001未満であれば、シランの加水分解反応の進行が遅くなり、aが1を越えると、反応が早く進みすぎ、光触媒皮膜形成用ゾルを均一に塗布できる期間が短くなるため、好ましくない。
【0037】
上記光触媒皮膜形成用ゾルの調製に用いる二酸化チタンの製法は、とくに限定されないが、一次粒子が小さく比表面積が大きい塩素法により調製した微粒子二酸化チタンがとくに好ましい。
【0038】
なお、液体に分散させた二酸化チタン粒子を用いる場合には、分散媒の液体も上記組成に含まれる。
【0039】
上記光触媒皮膜形成用ゾルの調製に用いる二酸化チタンは、あらゆる結晶形の粒子を用いることができ、無定形の酸化チタンが含まれていても良いが、結晶形としては、アナターゼ型、あるいはルチル型とアナターゼ型との混合物が好ましく、量子効率の高いアナターゼ型を結晶成分中の比率で30重量%以上含む物が、さらに好ましい。
【0040】
また、二酸化チタンは必要な皮膜特性に従って皮膜中濃度で80重量%以下の好適な量が添加されるが、二酸化チタン粒子濃度が低い場合には光触媒効果が小さく、二酸化チタン粒子濃度が高い場合には皮膜の加工性が劣るため、二酸化チタン濃度は、皮膜中濃度において5〜60重量%であるのが、好ましい。
【0041】
なお、上記組成においてシラン中のSi1個あたりのR(炭化水素基)の平均数が0.3個以上0.7個未満の範囲内であれば、本発明で用いる上記3官能シランの組成の一部を、一般式RSi(X)(式中、Rはアルキル基、フェニル基、またはビニル基よりなる炭化水素基、Xはアルコキシル基、またはハロゲンである)で表される2官能シランにしても良い。
【0042】
B. 皮膜形成
本発明において、上記光触媒皮膜形成用ゾルは、金属板、パネル、タイル、プラスチックス等の基材に、直接あるいはバリヤー層を介して塗布される。塗布方法は、ディップコート、スプレーコート、バーコート、ロールコートなどいかなる方法をも用いることができる。
【0043】
上記光触媒皮膜形成用ゾルを塗布した基材を、室温以上の温度で乾燥することにより、光触媒膜を得ることができる。短時間で皮膜を形成する場合には、乾燥に加えて500℃以下で熱処理しても良いが、400〜500℃で長時間熱処理した場合、Si原子に結合したR(炭化水素基)が焼成脱離し、皮膜の柔軟性が低下するため、加工性を保つためには300℃以下の熱処理が好ましい。
【0044】
光触媒皮膜の膜厚が0.05μm未満の場合、欠陥の無い皮膜の形成が困難であり、また必要以上に厚い場合は、厚さに見合う光触媒効果の向上がなく、不経済なため、膜厚は、0.05〜5μmである。ただし、二酸化チタンによる紫外線遮蔽などの機能も兼ねて使用する場合には、5μm以上の膜厚でも差し支えない。
【0045】
なお、上記の皮膜形成において、基材がプラスチックスの場合は、二酸化チタンにより基材が分解されるため、一般的には基材と光触媒皮膜の間にバリヤー層を設けるが、光触媒皮膜中の二酸化チタン粒子が基材に触れる箇所が少なく、実際の使用においてチョーキングが起こらない場合には、バリヤー層を設けなくてもよい。
【0046】
本発明による光触媒皮膜の製造は、光触媒ゾルの調製と皮膜作製とからなる。
【0047】
なお、光触媒皮膜をプラスチックス基材に塗布する場合には、プラスチックスが直接二酸化チタンに触れて分解されるのを防止ぐため、プラスチックスと二酸化チタンを含む皮膜との間にバリヤー層を設ける。さらに、基材がソーダライムガラスの場合には、光触媒皮膜焼成時にナトリウムが光触媒膜中に拡散し、光触媒活性が低下するのを防止するため、バリヤー層を設けるものである。
【0048】
上記バリヤー層としては、主として二酸化ケイ素、無定形二酸化チタン等の無機物が利用できるが、本発明者らが先に提案した特願平10−183632号に記載の光触媒皮膜用下地膜は、表面に凹凸を有する無機−有機複合体であることから、表面の凹凸により光触媒皮膜の密着性を向上させることができ、加工性に優れていることから、本発明の光触媒皮膜のバリヤー層として好適に利用でき、特に加工性を必要とする場合には、最適である。
【0049】
上記において、本発明による光触媒皮膜が、優れた加工性を有しているのは、3官能シランに由来するSiに結合したR(炭化水素基)が、皮膜中に残留し柔軟性を与えるからである。また、本発明による光触媒皮膜が耐光性に優れているのは、皮膜中のRよりなる有機基成分が、Si−O−Si成分よりなる無機骨格成分に比べて少なく、仮にバインダー中の有機基成分が二酸化チタンの光触媒効果により酸化分解されたとしても、皮膜中のバインダーの大部分は、二酸化チタンの光触媒効果によって分解されないSi−O−Si成分からなり、チョーキングが起こらないからである。
【0050】
本発明による光触媒皮膜は、加工性・耐光性に優れ、しかも光照射下および光なしのいずれの環境においても優れた消臭、抗菌、および防かび機能を有するため、あらゆる環境下での使用に耐え得るものである。
【0051】
また本発明による光触媒皮膜は、皮膜焼成時あるいは使用時において、変色が小さいため、特にパネル材等の美観を保つ必要のある用途の基材に塗布して、好適に用いることができる。
【0052】
なお、本発明による光触媒皮膜をパネル表面材等の基材に塗布し、光を照射すると、酸化チタンの光触媒効果により臭気成分等有害物質を酸化分解して、空気清浄を図ることができる。また本発明による光触媒皮膜は、無機成分を主とするため、例えば厨房等の壁や備品に本発明による光触媒皮膜を塗布した場合、汚れが付着しにくく、水洗いなどで残留した調味料などの汚れも光触媒効果により酸化分解できるため、長期において美しさを保つことができる。
【0053】
【実施例】
つぎに、本発明の実施例を比較例と共に説明する。
【0054】
実施例1
基材として、アルミニウム表面にポリエステルを主成分とする塗膜を設けたパネル表面材を用意した。まずこの基材の表面に光触媒皮膜用下地膜を、つぎのようにして形成させた。
【0055】
すなわち、メチルトリエトキシシランと、溶媒である2−プロパノールと、水と、塩酸と、2−プロパノールに分散させた粒径0.01〜0.02μmのSiO粒子を原料として用意した。なお、SiO粒子を分散させている2−プロパノールは溶媒の一部として用いた。メチルトリエトキシシラン、溶媒(2−プロパノール)、水、塩酸のモル比が1:5:4:0.005、粒子濃度が10重量%となるように原料を混合し、メチルトリエトキシシランを加水分解、縮合重合させることによりゾルを得た。ついで、このゾル中にアルミニウム表面にポリエステルを主成分とする皮膜を塗布したパネル表面材を浸漬し、2mm/秒の引き上げ速度で引き上げ、乾燥させた後、200℃で5分間熱処理し、アルミニウム表面にポリエステルを主成分とする塗膜を設けたパネル表面材上に、膜厚0.6μmの光触媒皮膜用下地膜を形成した。
【0056】
ついで、この下地膜上に、以下の方法により光触媒皮膜を形成した。
【0057】
二酸化チタン(商品名P−25、日本アエロジル株式会社製)、その他の原料としてメチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、2−プロパノール、水、硝酸、水酸化アルミニウム、硝酸銅3水和物、硝酸銀を用意した。これらの割合は、メチルトリエトキシシラン:テトラエトキシシラン:2−プロパノール:水:硝酸=0.5:0.5:5:4:0.005(モル比)(水には硝酸銅の水和水も含まれる)とし、二酸化チタン濃度5重量%、水酸化アルミニウム濃度1重量%、硝酸銅濃度2重量%(水和水は除いた濃度)、硝酸銀濃度0.1重量%になるように混合し、攪拌して、光触媒皮膜形成用ゾルを調製した。
【0058】
つぎに、このゾルに上記下地膜付きパネル表面材を浸漬し、2mm/秒の引き上げ速度で引き上げ、5分間室温で乾燥させた後、5分間200℃で熱処理し、光触媒皮膜を形成した。得られた光触媒皮膜の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、膜厚は0.5μmであった。
【0059】
実施例2
実施例1と同じパネル表面材上に、実施例1と同じ方法で光触媒皮膜用下地膜を形成した。ついで、ゾル中の硝酸銀濃度が0.075重量%であること以外は実施例1と同じ方法で下地膜付きパネル表面材上に、光触媒皮膜を形成した。得られた光触媒皮膜の膜厚は0.5μmであった。
【0060】
実施例3
実施例1と同じパネル表面材上に、実施例1と同じ方法で光触媒皮膜用下地膜を形成した。ついで、ゾル中の硝酸銀濃度が0.05重量%であること以外は実施例1と同じ方法で下地膜付きパネル表面材上に、光触媒皮膜を形成した。得られた光触媒皮膜の膜厚は0.5μmであった。
【0061】
実施例4
実施例1と同じパネル表面材上に、実施例1と同じ方法で光触媒皮膜用下地膜を形成した。ついで、ゾル中の硝酸銀濃度が0.025重量%であること以外は実施例1と同じ方法で下地膜付きパネル表面材上に、光触媒皮膜を形成した。得られた光触媒皮膜の膜厚は0.5μmであった。
【0062】
実施例5
実施例1と同じパネル表面材上に、実施例1と同じ方法で光触媒皮膜用下地膜を形成した。ついで、熱処理温度が100℃であること以外は実施例3と同じ方法で下地膜付きパネル表面材上に、光触媒皮膜を形成した。得られた光触媒皮膜の膜厚は0.5μmであった。
【0063】
実施例6
実施例1と同じパネル表面材上に、実施例1と同じ方法で光触媒皮膜用下地膜を形成した。ついで、熱処理を行なわずに24時間乾燥させたこと以外は実施例3と同じ方法で下地膜付きパネル表面材上に、光触媒皮膜を形成した。得られた光触媒皮膜の膜厚は0.5μmであった。
【0064】
実施例7
実施例1と同じパネル表面材上に、実施例1と同じ方法で光触媒皮膜用下地膜を形成した。ついで、ゾル中の硝酸銅濃度が1重量%であること以外は実施例4と同じ方法で下地膜付きパネル表面材上に、光触媒皮膜を形成した。得られた光触媒皮膜の膜厚は0.5μmであった。
【0065】
比較例1
実施例1と同じパネル表面材上に、実施例1と同じ方法で光触媒皮膜用下地膜を形成した。ついで、ゾル中に硝酸銅を添加しないこと以外は実施例5と同じ方法で下地膜付きパネル表面材上に、光触媒皮膜を形成した。得られた光触媒皮膜の膜厚は0.5μmであった。
【0066】
比較例2
実施例1と同じパネル表面材上に、実施例1と同じ方法で光触媒皮膜用下地膜を形成した。ついで、ゾル中に硝酸銀を添加しないこと以外は実施例5と同じ方法で下地膜付きパネル表面材上に、光触媒皮膜を形成した。得られた光触媒皮膜の膜厚は0.5μmであった。
【0067】
比較例3
実施例1と同じパネル表面材上に、実施例1と同じ方法で光触媒皮膜用下地膜を形成した。ついで、ゾル中に硝酸銀および硝酸銅を添加しないこと以外は実施例5と同じ方法で下地膜付きパネル表面材上に、光触媒皮膜を形成した。得られた光触媒皮膜の膜厚は0.5μmであった。
【0068】
評価試験
上記実施例と比較例で得られた光触媒皮膜について、耐屈曲性(加工性)試験、皮膜熱処理時の変色試験、耐光性試験、抗菌力試験および消臭試験を行なった。
【0069】
まず耐屈曲性(加工性)試験は、JIS K5400の方法に従い、直径2mmの心棒を用いて180°曲げ、目視により割れ、剥がれがないかを確認して、評価した。得られた耐屈曲性試験の結果を下記表1にまとめて示した。
【0070】
つぎに、皮膜熱処理時の変色試験は実施例および比較例における光触媒皮膜の熱処理前後の基材のLab系における色差ΔEを、スガ試験器株式会社製カラーテスターSC−3−CH型を用いて測定することにより評価した。なお実施例6は熱処理を行なわず24時間乾燥させているため、本試験は実施しなかった。得られた皮膜熱処理時の変色試験の結果を下記表1にまとめて示した。
【0071】
つぎに、耐光性試験は、JIS B7751規定の紫外線カーボンアーク燈式耐光試験機を用いて光触媒を塗布した基材に紫外線を300時間照射した後、皮膜にチョーキングが起こっていないかを確認するとともに、紫外線照射前後の基材のLab系における色差ΔEを、スガ試験器株式会社製カラーテスターSC−3−CH型を用いて測定し評価した。得られた耐光性試験の結果を下記表1にまとめて示した。
【0072】
抗菌力試験は、大腸菌(Escherichia coil IFO 3972)、クロカワカビ(Cladosporium cladosporioides IFO 6348)について行なった。菌液は大腸菌に関しては、普通寒天培地で37℃、16〜24時間前培養した試験菌液を普通寒天培地に再度接種し、37℃、16〜20時間培養した菌体をリン酸緩衝液に均一に分散差せ、1ml当たりの菌数が2.0×10〜1.0×10となるように調製し、クロカワカビに関しては、ポテトデキストロース寒天培地で25℃、7〜10日間培養した後、胞子(分生子)を0.005%スルホコハク酸ジオクチルナトリウム溶液に浮遊させ、ガーゼで濾過後、1ml当たりの菌数が2.0×10〜1.0×10となるように調製し、下地膜を塗布した後さらに最表面に光触媒皮膜を塗布した基材(大きさ:5cm×5cm)を、予め99.5%エタノールをしみこませた脱脂綿でかるく拭いたのち、風乾したものを試料とした。
【0073】
各試料の表面にそれぞれ菌液1mlを添加した。これらを昼白色蛍光灯照射下あるいは光を完全に遮断して、細菌は35℃、カビは25℃で保存した。なお、蛍光灯で光を照射する場合は照度計で試験面が1000ルクスとなるように照射位置を調整した。またポリエチレンフィルムを対照試料として、同様に試験した。4時間後にSCDLP培地で試料から生残菌を洗い出し、この洗い出し液の生菌数を、大腸菌は標準寒天培地、クロカワカビはを用いた寒天平板培養法(大腸菌は35℃、2日間培養、クロカワカビは25℃、7日間培養)により測定し、試料1個当たりに換算した。また接種直後の測定は対照試料で行なった。抗菌力試験の結果を、下記表2に示した。
【0074】
消臭試験は、光触媒皮膜を塗布した基材(有効面積200cm)をポリフッ化ビニル製の袋に固定した後、袋をヒートシールにより密封し、ついでアンモニア100ppmを含んだ空気3リットルを封入し、この上から20Wブラックライトにより光を照射し、光照射下開始から24時間後にガス検知管により袋内のガス濃度を測定する方法により行ない、24時間後のアンモニア除去率%を測定した。
【0075】
なお、基材とブラックライトの距離は30cmとし、光触媒皮膜を塗布した基材を入れずに同様に光照射後のガス濃度を測定し、これを空試験とした。また、光を完全に遮断すること以外は上記と同様にして皮膜の消臭試験を行なった。形成した皮膜の消臭試験の結果を、下記表3に示した。
【0076】
【表1】
Figure 0003559892
【表2】
Figure 0003559892
【表3】
Figure 0003559892
上記表1〜3から明らかなように、実施例1〜7による光触媒皮膜は、耐屈曲性(加工性)、耐光性にも優れており、かつ光照射下および光なしのいずれの環境においても優れた消臭、抗菌、および防かび機能を有するものであった。また光触媒皮膜を熱処理した実施例1〜5および実施例7の基材は熱処理前後の変色が非常に小さいものであった。なお、光を照射した場合には、光触媒効果が発揮されるため、光照射なしの場合に比べ消臭力がより優れた結果となった。これに対し、比較例1による光触媒皮膜は、耐屈曲性(加工性)、消臭、抗菌、および防かび効果には優れており、耐光性試験後にチョーキングは起こらなかったものの、銅塩を添加せずに銀塩を添加したため、耐光性試験前後の色差や皮膜熱処理前後の色差が大きくなった。また比較例2による光触媒皮膜は、耐屈曲性(加工性)、耐光性、消臭、抗菌効果は優れており、皮膜熱処理前後の色差も小さいが、銀塩を添加せずに銅塩を添加したため、防かび効果がほとんど見られなかった。比較例3による光触媒皮膜は、耐屈曲性(加工性)、耐光性、消臭効果は優れており、皮膜熱処理前後の色差も小さいが、銀塩および銅塩を添加していないため、今回の試験条件では、抗菌および防かび効果はほとんど見られなかった。
【0077】
なお、消臭試験において、空試験では、アンモニアの除去率が34%であった。これは試験に用いた袋に、アンモニアが吸着するためと考えられる。
【0078】
【発明の効果】
本発明による光触媒皮膜は、上述のように、式RSi(X)(式中、Rはアルキル基、フェニル基、またはビニル基よりなる炭化水素基、Xはアルコキシル基、またはハロゲンである)で表される3官能シランと、式Si(X)(式中、Xはアルコキシル基、またはハロゲンである)で表される4官能シランとの加水分解・重縮合物と、光触媒としての二酸化チタン粒子とを含みかつ二酸化チタン濃度が皮膜中濃度において5〜80重量%であり、膜厚が0.05〜5μmである光触媒皮膜であって、抗菌剤・防かび剤としての銀と、抗菌剤としての銅とを含み、かつ皮膜中の銀成分として銀イオンおよび/または金属銀を含み、銀イオン、金属銀および/または銀化合物の濃度が金属銀換算にして二酸化チタンの0.01〜5重量%であり、皮膜中の銅成分として銅イオンおよび/または金属銅を含み、銅イオン、金属銅および/または銅化合物の濃度が金属銅換算にして二酸化チタンの0.1〜40重量%であるもので、加工性・耐光性に優れ、しかも光照射下および光なしのいずれの環境においても優れた消臭、抗菌、および防かび機能を有するため、あらゆる環境下での使用に耐え得るものである。また本発明による光触媒皮膜は、皮膜焼成時あるいは使用時において、変色が小さいため、特にパネル材等の美観を保つ必要のある用途の基材に塗布して、好適に用いることができるという効果を奏する。
【0079】
また本発明による光触媒皮膜の形成方法は、上述のように、式RSi(X)(式中、Rはアルキル基、フェニル基、またはビニル基よりなる炭化水素基、Xはアルコキシル基、またはハロゲンである)で表される3官能シランと、式Si(X)(式中、Xはアルコキシル基、またはハロゲンである)で表される4官能シランとを、アルコールもしくはその他の有機溶媒、水、および酸触媒、抗菌剤・防かび剤としての銀塩、抗菌剤としての銅塩の存在下で、加水分解・重縮合して光触媒皮膜形成用ゾルを形成し、この光触媒皮膜形成用ゾルを光触媒としての二酸化チタン粒子と混合するか、または上記シラン化合物の反応開始時から二酸化チタン粒子を混合し、二酸化チタン粒子含有ゾルを基材に塗布し、乾燥するか、または乾燥後さらに500℃以下の温度で熱処理させることを特徴とし、上記二酸化チタン、銀塩および銅塩以外の光触媒皮膜形成用ゾルの原料の比率を、3官能シラン:4官能シラン:アルコールもしくはその他の有機溶媒:水:酸触媒=x:(1−x):y:z:aのモル比で表すと、x、y、z、aの値がそれぞれ0.3≦x<0.7、0.5≦y≦1000、0.5≦z≦1000、0.00001≦a≦1であり、かつ二酸化チタン濃度が皮膜中濃度において5〜80重量%であり、さらに銀塩濃度が金属銀換算にして二酸化チタンの0.01〜5重量%であり、銅塩濃度が金属銅換算にして二酸化チタンの0.1〜40重量%であることを特徴とするもので、本発明の方法によれば、加工性・耐光性に優れかつ消臭、抗菌、および防かび効果を持った光触媒皮膜を、金属、プラスチックス等のあらゆる基材の表面に形成することができ、また基材自体が加工性の良いものであれば、プレコートにより光触媒皮膜の形成が可能であるという効果を奏する。

Claims (8)

  1. 式RSi(X)(式中、Rはアルキル基、フェニル基、またはビニル基よりなる炭化水素基、Xはアルコキシル基、またはハロゲンである)で表される3官能シランと、式Si(X)(式中、Xはアルコキシル基、またはハロゲンである)で表される4官能シランとの加水分解・重縮合物と、光触媒としての二酸化チタン粒子とを含みかつ二酸化チタン濃度が皮膜中濃度において5〜80重量%であり、膜厚が0.05〜5μmである光触媒皮膜であって、抗菌剤・防かび剤としての銀と、抗菌剤としての銅とを含み、かつ皮膜中の銀成分として銀イオンおよび/または金属銀を含み、銀イオン、金属銀および/または銀化合物の濃度が金属銀換算にして二酸化チタンの0.01〜5重量%であり、皮膜中の銅成分として銅イオンおよび/または金属銅を含み、銅イオン、金属銅および/または銅化合物の濃度が金属銅換算にして二酸化チタンの0.1〜40重量%である、消臭、抗菌、防かび機能を有しかつ加工性・耐光性に優れた光触媒皮膜。
  2. 二酸化チタンの結晶形としてアナターゼ型、ルチル型、ブルカイト型よりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の型が含まれている、請求項1記載の光触媒皮膜。
  3. 二酸化チタンの結晶形としてアナターゼ型、あるいはルチル型とアナターゼ型とが含まれており、かつアナターゼ型が二酸化チタンの結晶成分中の比率で30重量%以上含まれている、請求項記載の光触媒皮膜。
  4. さらに酸化チタンに対して水酸化アルミニウムが50重量%以下の割合で含まれている、請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の光触媒皮膜。
  5. 式RSi(X) (式中、Rはアルキル基、フェニル基、またはビニル基よりなる炭化水素基、Xはアルコキシル基、またはハロゲンである)で表される3官能シランと、式Si(X) (式中、Xはアルコキシル基、またはハロゲンである)で表される4官能シランとを、アルコールもしくはその他の有機溶媒、水、酸触媒、抗菌剤・防かび剤としての銀塩、抗菌剤としての銅塩の存在下で、加水分解・重縮合して光触媒皮膜形成用ゾルを形成し、この光触媒皮膜形成用ゾルを光触媒としての二酸化チタン粒子と混合するか、または上記シラン化合物の反応開始時から二酸化チタン粒子を混合し、二酸化チタン粒子含有ゾルを基材に塗布し、乾燥するか、または乾燥後さらに500℃以下の温度で熱処理させることを特徴とし、上記二酸化チタン、銀塩および銅塩以外の光触媒皮膜形成用ゾルの原料の比率を、3官能シラン:4官能シラン:アルコールもしくはその他の有機溶媒:水:酸触媒=x:(1−x):y:z:aのモル比で表すと、x、y、z、aの値がそれぞれ0.3≦x<0.7、0.5≦y≦1000、0.5≦z≦1000、0.00001≦a≦1であり、かつ二酸化チタン濃度が皮膜中濃度において5〜80重量%であり、さらに銀塩濃度が金属銀換算にして二酸化チタンの0.01〜5重量%であり、銅塩濃度が金属銅換算にして二酸化チタンの0.1〜40重量%であることを特徴とする、消臭、抗菌、防かび機能を有しかつ加工性・耐光性に優れた光触媒皮膜の形成方法
  6. 二酸化チタンの結晶形としてアナターゼ型、ルチル型、ブルカイト型よりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の型が含まれている、請求項9記載の光触媒皮膜の形成方法
  7. 酸化チタンの結晶形としてアナターゼ型、あるいはルチル型とアナターゼ型とが含まれており、かつアナターゼ型が二酸化チタンの結晶成分中の比率で30重量%以上含まれている、請求項記載の光触媒皮膜の形成方法
  8. さらに二酸化チタンに対して水酸化アルミニウムが50重量%以下の割合で含まれている、請求項5記載の光触媒皮膜の形成方法
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