JP3559158B2 - 近磁界プローブによる電磁ノイズ測定装置及び電磁ノイズ測定方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、PCB(プリント配線基板)またはこれと同等の電気部品から発生する電磁ノイズを計測するための近磁界プローブ(電流を検知するもの)に関するものであり、検査対象である電気部品に対するプローブの位置決めを簡単容易かつ正確に行うことができ、これによって電磁ノイズを能率的かつ高精度に計測することができるものである。
【0002】
【従来の技術】
電子式複写機、FAX、印刷機、パソコン等の事務機器、家庭用電気機器、産業機器等、各種電気機器等にPCB(プリント配線基板)またはこれと同等の電気部品が多数使用されているが、これらの電気機器から発せられる電磁ノイズは一定の限度内になければならない(EMC)ように規制されている。
従来、EMC対策には、法的規制で定めているオープンサイトや電波暗室内で10m、30m等の遠方での電磁波を定められたアンテナを用いて計測した結果に基づいて対策を講じるやり方があり、またこれとは別にこのような認証サイト等での計測に供される前に近接させたプローブで検査対象である電気部品からの電磁界を検知し、これに基づいて対策を講じるやり方がある。そのために従来技術として、XYZテーブルに検査対象とするPCBをセットし、センサーで走査して不要輻射を測定してデータを格納して後、PCBを裏返して再度測定し、両測定結果を比較するもの(3次元妨害測定装置)があり(特開平6−58969号公報)、また、アレー状センサーテーブルとセンサー移動手段とを併用し、上記3次元妨害測定装置におけるような裏返操作を不要にしたもの(両面妨害測定装置)があり(特開平6−58970号公報)、さらに、対称なループコイルとそれに続くシールドボックス内の回路で磁界のみにより生じた信号を検出する構成としたもの(磁界測定プローブ)がある(特開昭62−106379号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
例えば上記特開平6−58970号公報に記載されているものは、図27に示す機構を有するものであり、アレー状にセンサーを形成した妨害測定用アンテナ5に載せたプリント配線基板3に対する近磁界プローブ1の測定位置をXYZ直交型ロボット4によって3次元的に位置決めし、多数の測定点での測定データを子細に得ることができるものである。しかしこのものは、測定点にプローブを位置決めするための機構がロボットであり、また、微弱な電磁波を高精度で正確に測定するためには、電気部品に対するプローブのセンサーの位置決めが一層精密であることが求められる。
また、上記特開昭62−106379号公報に記載されている従来技術はプローブを手持ちで操作してセンサーの位置決めを行うものである。このものは、プローブのコイルをPCB基板上に構成しており、1mm角以下の微小なコイル寸法を構成することは難しいので、比較的大きな部分の検知には適するとしても、精密な位置決めが求められるような電子部品等についての妨害電磁波の測定には適しない。また、電磁ノイズ測定装置は、測定作業の能率性確保の観点から正確な位置決めが簡単、容易に行えるものであることが必要である。
本発明は電磁ノイズ測定の対象とする電気部品に対する近磁界プローブの位置決め精度を高めるとともに、その位置決めを簡単な機構で、簡単、容易に行えるように、近磁界プローブ装置の機構構造及びその位置決め法を工夫することをその課題とするものである。
【0004】
【課題解決のために講じた手段】
ループコイルを検知部として持つ近磁界プローブ部による、電気部品に対する電磁ノイズ測定装置を前提として、上記課題解決のための本発明の解決手段の基本は、導電性薄膜または導電性金属箔で近磁界プローブ部のループコイル部を構成し、位置決めのための基準となる磁界信号を、電気部品固定用台に固定した基準磁界信号発振部から発信させ、当該基準磁界信号を近磁界プローブ部のループコイル部によって検知し、これに基づいてプローブを所定の測定位置に位置決めすることである。
【0005】
【作用】
電気部品固定用台上の所定の測定位置における上記基準磁界信号を、導電性薄膜または導電性金属箔でループコイル部を構成した小型の近磁界プローブ部を備えたプローブ装置によって測定して、各測定点における当該測定値を基準値としてメモリに記憶させておく。
電気部品固定用台上に固定した電気部品に上記プローブ装置を近接させて上記基準磁界信号を測定し、その測定値をメモリに記憶させた上記基準値と照合させ、両値が一致した点を測定点としてこの点にプローブ装置を位置決めし、その測定点で電気部品からの電磁ノイズを測定する。基準磁界信号発振部から発信される基準電磁波の既知の強さ、各測定点における基準値と、電気部品からの電磁ノイズの測定値とから、当該測定点における電磁ノイズの強さを計測することができる。
複数のループコイルを併用することによって、上記の位置決め精度および電磁波の測定精度が一層向上する。また、基準電磁波の測定と電気部品からの電磁ノイズの測定とを同時に行うことができるから、電磁ノイズの測定を簡単、容易かつ迅速に行うことができる。
基準磁界信号発振部から発信された基準電磁波を基準にして所定の測定点にプローブを位置決めするものであるから、位置決めのための機構は極めて簡単であり、また、プローブ部のループコイルを導電性薄膜または導電性金属箔で構成したものであるから、ループコイルを微小にすることができ、したがって多数のループコイルを密集させて併用することができ、また、微小なループコイルによって上記の基準電磁信号及び電磁ノイズを検知するものである。したがって上記のとおり位置決め精度および電磁波の測定精度を一層向上させることができる。
また、微小なループコイルによって基準電磁波を検知するとともに電磁ノイズを検知するものであるから、位置決め精度が極めて高くかつ至近距離で被検体からの電磁ノイズを検知できるので、微弱な電磁ノイズでも高精度で測定することができる。
【0006】
【実施態様1】
上記解決手段において、基準信号をアンプ部またはインピーダンス変換器部に導き、これを表示器に表示させること。
【実施態様2】
上記解決手段において、複数の面を持つ支持部材の少なくとも2つ以上の面に上記プローブ部を張付けたプローブ装置を用いること。
【作用】
複数面にそれぞれ張付けたプローブ部からの信号を分析し、組み合わせることによって、磁界のベクトルを検知することが可能であり、また微小な信号を高精度で検知することが可能である。
【実施態様3】
上記解決手段における近磁界プローブ部を複数のプローブ部としたこと。
【実施態様4】
実施態様2において、上記複数面にそれぞれ複数のプローブ部を設けたこと。
【作用】
多面的に、かつ各面において複数のプローブ部によって計測することができるから、これによって被検体の磁界分布を3次元的に計測することができる。
【実施態様5】
上記解決手段におけるループコイルを導電性金属箔または導電性薄膜で構成し、このループコイルを複数設けて、解決手段における近磁界プローブ部をユニット化し、または実施態様3の複数のプローブ部をユニット化したこと。
【実施態様6】
実施態様4の複数のループコイルをアレイ化してユニット化したこと。
【実施態様7】
上記解決手段におけるループコイル部を導電性金属箔または導電性薄膜で構成し、これを概略同一位置で、絶縁性箔または薄膜を介して積層してプローブ部をユニット化したこと。
【実施態様8】
上記解決手段におけるプローブ部を複数設ける場合に、その複数個のプローブ部のループコイルの大きさを互いに異ならせたこと。
【作用】
大きさが異なるループコイルによって、それぞれ磁界を検知することにより、磁界分解能を向上させることができる。
【実施態様9】
実施態様1におけるアンプ部またはインピ一ダンス変換器部を、プローブ部を作製する基板上にパッドを設けてチップ部品で構成したこと。
【実施態様10】
上記実施態様9において表示部をも基板上に設けたこと。
【実施態様11】
実施態様1におけるアンプ部またはインピーダンス変換器部を、プローブ部を作製する基板上にコイル、伝送路とともに半導体プロセスで構成したこと。
【実施態様12】
上記解決手段におけるプローブ部(またはプローブユニット部)を3次元に移動させる3次元移動手段と、プローブ部(またはプローブユニット部)で得られた信号を検知する計測部とを有し、外部より与えられた位置決めのための磁界信号を検知し、これに基づいて近磁界プローブの位置決めを行うようにした計測システム。
【作用】
プローブの位置決めを簡単、容易に3次元的に行うことができるので、プローブの位置決めが一層高精度になり、計測結果の信頼度を向上させることができる。
【実施態様13】
上記解決手段および実施態様1乃至実施態様12におけるループコイルに代えて検知部をMR素子、GMR素子またはホール素子で構成したこと。
【0007】
【実施例】
次いで図面を参照しながら実施例を説明する。
【実施例1】
図1に示すものは本発明のプローブの実施例である。この実施例のプローブは、そのコイル、伝送路、接続用パッド部を導電性箔(図1(a))により作製したものである。コイルおよび平行線路部、パッド接続部の作製は一枚のシートを目的の形に切断し(図1(b))、その後、パッド接続部に同軸ケーブル等の接続用ケーブルを接続し、さらに、スペクトラムアナライザー等の計測器に接続する(図2)。PCB固定用台の縁にマイクロストリップラインを高周波の基準磁界発生源として固定し、基準磁界発生源からの基準電磁波を多数の所定測定位置における電磁波の強さをプローブ部で予め測定して、これを基準値としてメモリに記憶(ないしは登録)しておく。PCB固定用台に測定対象であるPCBを所定の位置に固定し、基準磁界発生源から基準電磁波を発信させながらPCB通電して電磁ノイズを発生させる。この状態で、登録されている基準値と基準電磁波の測定値とが一致する位置にプローブ部を位置決めし、この位置での電磁ノイズを計測する。このように登録されている基準値と基準電磁波の測定値とが一致するようにプローブ部を位置決めしているので、位置決めされた位置での支持機構として、バランスアームやスペーサ等の簡便な支持機構によることができ、ロボットやXYZテーブルのような特に精密な機構を必要としない。なお、高周波の基準磁界発生源はコプレーナ線路、あるいはコイル等でもよい。上記の基準値の登録はこの電磁ノイズ測定装置を製品として出荷する前に行うこともできるが、プローブを複数用意しその各プローブの使用に先立つて登録することもできる。
上記の基準値の設定法の概略を図3(a)に示している(ただし高周波発振器部は省略)。また、この基準値は次のとおりである。標準測定位置にプローブを固定し、その時の磁界発生源からの磁界信号強度を、予め接続しておいたスペクトラムアナライザーで検知する。出荷前に予め位置と検知した信号強度およびプローブの感度の関係を得ているときは、プローブの感度補正を行うとともに、位置の校正を行うことができる。これを複数点で行うことでさらに校正精度を高めることができる。また、より高精度に位置決めを行う際には、位置決め信号の発信源を複数用意し、この強度の比較で位置決めを行うようにすればよい。
図4に2個の発信源を持つ構成を示している。プローブと発信源Aからの所定の測定位置での基準電磁波の強度を検知し、その後、発信源Bからの所定の測定位置での基準電磁波の強度を検知する。発振源Aと発振源Bを交互に発振させることで、発振源A、発振源Bからの信号を容易に区別できる。
登録された基準値と、その位置での測定対象物からの電磁ノイズの測定データとを一緒にメモリに記憶させることにより、簡単に測定対象物からの放射磁界強度が計測することができ、またその電磁ノイズの発生源の特定に役立てることもできる。
上記の各基準電磁波発振源の周波数をいくつか用意することで、位置決め及び電磁ノイズ計測のための信号処理を容易にすることができる。その場合、基準電磁波の周波数を測定対象からの電磁ノイズの周波数帯域と異なる値に設定することが望ましい。発信源を2個以上にすればより測定精度が一層向上することはいうまでもない。
以上のように比較的簡便な構成の電磁ノイズ測定装置で高精度な位置決めが可能であり、ひいては高精度で電磁ノイズを測定することができる。
なお、導電性箔は銅、Al、Ag、Au、Pt等の金属材料やその他の導電性材料でもよい。また、絶縁性基板としてはポリエチレンテレフタレートやポリイミドなどのフレキシブル基板やガラスや石英等の絶縁基板でもよく、接着材はエポキシ系接着剤等でよい。
また、Al箔等を予め形成した絶縁性基板でも同様にして構成することができる。基準電磁波発振源としては市販の標準信号発生器でもよく、専用の発振器でもよい。
【0008】
【実施例2】
図5に他の実施例を示している。この実施例はコイルを2個備えているものである。
作製方法の例としては、まず、プローブのコイルを2個、それぞれの伝送路である平行線路部、接続用パッド部を導電性箔により作製する。コイルおよび平行線路部、パッド接続部の作製は絶縁シートに導電性箔を接着し、その後コイル、平行線路部、パッド接続部をエッチングで形成する。他の作製法として、絶縁シートと導電性箔一枚を目的の形に切断し、その後で支持部材に固定する構成も採れる。その後、それぞれのパッド接続部に同軸ケーブル等の接続用ケーブルを接続し、さらに切り替えスイッチ部に接続し、スペクトラムアナライザー等の計測器に接続する。測定をPCB等の平面性の高いものとする場合には、PCBの固定用台の上にマイクロストリップ線路を高周波磁界発生源として用意し、これからの電磁波を所定の測定点で予め測定してこれをメモリに登録し、これを電磁ノイズ測定のためのプローブ部の位置決めの基準とする。この場合、二つの検出コイルを切り替えることが可能である。二つのコイルは高周波磁界発生源に対して微小に異なる位置関係を有し、したがって計測される基準磁界の値には微小な差異を生じる。電磁ノイズ測定においては、それぞれのコイルを基準磁界検知に用い、二つのコイルのそれぞれに対する基準値とそれぞれの測定値との一致をもってプローブ部の測定位置の判別基準とする。これはいわば位置決め条件を二つの基準値によるAND条件とするものであるから、プローブ部の位置決めがより高精度でかつ確実になされることになる。なお、高周波磁界発生源としてはコプレーナ線路、あるいはコイル等でもよく、また、発振部としては市販の標準信号発生器を用いることもでき、専用の発振器を用いることもできる。図8にその使用例を示している(ただし、図示のプローブ部は紙面に垂直な方向に2個重なっている。また高周波発振器部は省略)。二つのコイルを位置決め信号検出に同時に用い、二つのコイルのうちの1個を被検体からの電磁ノイズ測定用に用いる。この場合、位置決め用高周波磁界発生源からの基準磁界がコイルに鎖交して発生する電圧を、平行線路部を介してパッド部の両端で検出できる。接続用導線をパッド部に接続して切り替えスイッチおよびオシロスープヘ接続する。1個の位置決め用高周波磁界発生源からの基準磁界を接近した微小な二つのコイルで計測できるので、位置決め精度がさらに上がることは上記のとおりである。
この例では、二つの微小コイルのうちの1つを被検体からの磁界ノイズの計測に用いたが、2つのコイルを共に用いてもよい。2つのコイルを共に被検体からの磁界ノイズの計測に用いることにより、測定の高速化が計られる。また、コイルの数をさらに増やすことで、位置決め用高周波磁界発生源が1個でも位置決め精度をさらに高めることができ、測定の精度を向上させることができる。
また、位置決め法としては、位置決め用の高周波磁界発生源からの基準電磁波の強度をそのまま使うというやり方の外に、二つのコイルによる基準電磁波の測定値の差をとって、これを電磁ノイズ測定における位置決め基準値とすることもでき、この方が位置決め操作が容易になる。図9に示すようにPCB(プリント基板)の配線を電磁ノイズ測定の対象とする場合には、予めプローブの前面に設けたスペーサで所定の間隔を保ちながらプローブを2次元で移動させるとよい。
また、プローブ内に差動検知部を設け、これを表示し、あるいは外部にデータとして出力する。そのとき同時に配線からの磁界信号と検知したデータを表示し、あるいは外部出力することで、プローブ部の所定測定点への位置決めを容易にすることができる。
【0009】
【実施例3】
図10乃至図12に他の実施例を示している。この実施例はプローブ部にコイルを3個備えた例である(ただし、図示のコイル1、2、3は紙面に垂直な方向に3個重なっている)。
このプローブ部の作製方法として次ぎのような方法を採用する。
まず、石英基板上に、第1のコイルおよび伝送路およびパッド部を形成するため、スパッタ法によりAl薄膜(導電性薄)の成膜を行い、その後、一般的なフオトリソグラフィ技術とウエットエッチングにより引出し線の第1のコイルおよび第1の伝送路および第1のパッド部を形成し、次にスパッタ法によるSi02膜の成膜と一般的なフォトリソグラフィ技術とRIE(リアクティブ イオン エッチング)により、第1のコイル、第1の伝送路および第1の絶縁層を形成する(図10(d)参照)。
第1の導電性薄膜と同様に、第1の絶縁層の上にA1で第2の導電性薄膜を成膜し、同様に一般的なフォトリソグラフィ技術とウェットエッチングにより第2のコイルおよび第2の伝送路および第2のパッド部を形成し、さらに第1の絶縁層と同様に第2の絶縁層をSi02で成膜して、第2の絶縁層を第2のコイルおよび第2の伝送路の上に設ける。次に第1、第2の導電性薄膜と同様に第2の絶縁層の上にA1成膜で第3の導電性薄膜を形成し、一般的なフォトリソグラフィ技術とウエットエッチングにより第3のコイルおよび第3の伝送路および第3のパッド部を形成する。なお、必要に応じて、絶縁層とコイル、伝送路、パッド部を形成する。
これにより小さな寸法でコイルを形成でき、絶縁層も薄く形成できるため、より狭い間隔で微小コイルを積層できるから、この実施例は実施例1、実施例2と同様により高い精度で位置決めを行うことができる。プローブのコイルの直径をPCBの配線の最小ピッチ程度にするか、あるいはそれ以下にし、さらに、プローブ間の厚みをPCBの配線のピッチよりも小さくすれば、被検体であるPCBの配線からの電磁ノイズを測定しながら、PCBの配線ピッチレベルでの極めて高い精度での位置決めを容易に実現することができる。
また、このものにおいては、各パッド部上も含めて第1、第2の絶縁層を形成して後、第1、第2の絶縁層にスルーホールを設け、各パッド部に導通させるようにすることもできる。
コイル、引出し線、パッド部を形成する材料としてはAg、Au、Pt等の金属材料が望ましいが、その他の導電性材料でもよい。また、基板としては石英が望ましいが、石英以外の絶縁基板でもよく、またポリエチレンテレフタレートやポリイミドなどのフレキシブル絶縁基板でもよい。Alの成膜法は蒸着法などの他の成膜方法でもよく、またAlのエッチング法はRlE等のドライエッチング法でもよい。また、Si02の成膜はEB蒸着法やCVD法など他の成膜方法でもよく、絶縁層材料はSi3N4などの他の絶縁材料でもよい。さらに、絶縁層のエッチングとしてウエットエッチングでもよいが、エッチング剤で基板もエッチングされる場合は基板の裏面をレジストなどで保護する必要がある。
導電性箔によるプローブ部の作製方法としては、図13乃至図15に示す作製法を採用できる。この製作法においては、導電性箔を絶縁シートを介して積層して後、コイルおよび平行線路部、パッド接続部をまとめた形に切断する。積層においては、パッド接続部を除いて、エポキシ系接着剤によって接着し、プローブ部を実施例1、実施例2と同様の測定系に組み込む(図16参照)。
【0010】
【実施例4】
プローブ部の他の例を図17に示している。この例においては実施例2の第1のプローブ部のパッド部1に同軸ケーブルの内部導体部を接続し、同様にパッド部2に同軸ケーブルの外部導体部を接続し、これをさらにアンプ部1に接続する。このアンプ部1の中にAD変換部が含まれており、AD変換部の出力がスイッチを介して表示装置に表示されるようにしている。
アンプ部1を設けてプローブからの信号を増幅し、AD変換することにより微小な信号が検知される。このため、実施例2に示した機能を簡便なプローブ部だけで実現でき、可搬性に優れ、操作性に富むシステムとなる。
プローブ部のパッド部1とアンプ部の接続は、通常のケーブル等でもでき、表示装置としては通常の液晶パネルを採用でき、また、各プローブ部の切り替えは表示装置の前、あるいはアンプ部1の前で行うようにすればよい。被検体からの電磁ノイズを測定をしながら、位置決め用基準電磁波の測定値の差を増幅することで、位置決めを容易に行うことができる。
本発明のプローブ部のさらに他の例を図18に示している。この例では図17に示すものと同様に3個のプローブ部で構成し、それぞれのプローブのパッド部1に同軸ケーブルの内部導体部を接続し、同様にパッド部2に同軸ケーブルの外部導体部を接続する(ただし、図示の第1、第2、第3の伝送路は紙面に垂直な方向に重なっている)。アンプ部1には上部および下部のプローブの出力の差を得るための差動アンプを設け、二つのプローブのコイルの出力差を増幅させるアンプをアンプ部1に含めて構成している。その差動アンプのパッド部3に同軸ケーブルを接続し、これを中心のプローブに図17と同様に接続する。さらにアンプ部1の中にAD変換部を含めている。上部および下部のプローブの出力の差のAD変換部の出力と中心のプローブのAD変換部の出力をそれぞれ表示装置に表示させる。被検体からの電磁ノイズを測定をしながら、位置決め用基準電磁波を測定した出力の差を増幅することにより、微細な位置決めを高精度で行える。
なお、アンプ部1はインピーダンス変換器部1としてもよく、その中にAD変換部を含めてもよい。インピーダンス変換器部1によってS/Nを向上させることができる。
【0011】
【実施例5】
図19に本実施例のプローブ部の他の例を示している。この例は実施例1のプローブ部を支持部材の少なくとも2つ以上の面に張付けたものであり、面の法線方向が一致しない面に張付けている。張付けたそれぞれのプローブ部で多方面に向けて電磁界を検知することにより、高精度の位置決めに基づいて高精度で電磁ノイズを計測でき、かつ電磁ノイズの磁界のベクトルを検知できる。
【0012】
【実施例6】
図20に実施例3のプローブ部を複数配置した例を示している。この例では、複数配置した各プローブ部で電磁界を計測することにより、一度に磁界分布を計測することが可能であり、多数のコイルで位置決め用電磁波を検知できるので、高い精度の位置決めに基づいて電磁ノイズを計測することができる。
【0013】
【実施例7】
図21にプローブ部のさらに他の例を示している。この例は実施例1で作製したプローブ部にアンプ部2を接続し、増幅した出力をスペクトラムアナラィザーに接続したものである。プローブ部からの信号を増幅することにより、高精度の位置決めが可能で、かつ、微小な電磁ノイズを検知できる。
なお、アンプ部1はインピーダンス変換器部1と一体にしてもよく、その中にAD変換部を含めてもよい。インピーダンス変換器部1によってS/Nを向上させることができる。
【0014】
【実施例8】
図22にプローブ部のさらに他の例を示している。この例は実施例3で作製したプローブ部に、チップ部品で構成されたアンプ部1を接続するパッドを設けたものである。この例は実施例1と同様な機能をよりコンパクトな構成で実現でき、アンプ部により微小コイルの近傍で増幅できるので、さらにS/N比を向上でき、微小電磁ノイズを確実、正確に測定できる。なお、アンプ部はインピーダンス変換器部1としてもよく、その中にAD変換部を含めてもよい。インピーダンス変換器によってS/Nを向上させることができる。また、図示の「アンプ部1またはインピーダンス変換器部1のチップ」は各パッドとバンプで接続されており、また、第1、第2、第3の伝送路は紙面に垂直な方向に重なっている。
【0015】
【実施例9】
図23及び図24にプローブ部のさらに他の例を示している。この実施例は実施例3のプローブ部を、絶縁層を形成したSi基板上に構成したものである。アンプ部1はこのSi基板を用いて構成してあり、プローブ部とアンプ部1とを通常の半導体プロセスにおける配線プロセスで接続している。なお、このものにおいては、パッド部はスルーホールを介してSi基板に接続されており、また、第1、第2、第3のコイルは紙面に垂直な方向に重なっている。
この実施例は実施例2と同様な機能をさらにコンパクトな構成で実現でき、また、アンプ部により信号源の近傍で増幅できるので、さらに、S/N比を向上させることができるとともに、微小電磁ノイズを正確、確実に測定できる。
なお、アンプ部1はインピーダンス変換器部1と一体にしてもよく、その中にAD変換部を含めてもよく、インピーダンス変換器によってS/Nを向上できる。
【0016】
【実施例10】
図25に本発明の他の実施例を示している(ただし、高周波発振器部は省略)。
この実施例は実施例1のプローブ部をXYZステージに接続し、かつ信号出力をスペクトラムアナライザーに接続したものである。目的の位置に3次元(1次元、2次元でも可)でプローブを移動させて計測することにより、高精度で位置決めでき、電磁ノイズの磁界分布を計測できる。
【0017】
【実施例11】
図26に本発明のプローブ部の他の例を示している。この例は実施例1のプローブ部において、コイル寸法の異なる複数個のプローブを設けたものである。高い精度で位置決めし、かつそれぞれのコイル寸法に応じた空間分解能で電磁ノイズを計測することができる。
以上の実施例ではプローブ部の検知部としてコイルを用いているが、コイルに代えて、MR素子(磁気抵抗効果素子)、GMR素子(巨大磁気抵抗効果素子)、ポールホール素子等の微小な磁気センサーを用いることもできる。
【0018】
【効果】
本発明により、簡便な電磁ノイズ測定装置のコイルまたはコイル以外の磁気センサーで基準電磁波(基準信号)と電磁ノイズ測定とを同時に検知し、予め登録した基準値と比較することによって所定の測定位置に高精度で位置決めでき、この高精度の位置決めに基づいて電気部品の電磁ノイズを高精度で測定できる。
また、電磁ノイズの磁界のベクトルを検知すること、また、微小磁界を検知すること、複数のコイル寸法で計測することが可能であり、さらに磁界分布の3次元計測が可能である。したがって、プリント基板等の電気部品のEMC対策上有用な情報をより高精度で得ることができ、EMC対策がより容易となり、ひいては製品開発期間を大きく短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は導電性箔の平面図、(b)は実施例1のプローブ部の平面図。
【図2】は実施例1の測定概略図。
【図3】(a)は実施例1の校正法を示す側面図、(b)は実施例1の校正後の測定側面図。
【図4】は実施例1の他の測定概略図。
【図5】(a)は実施例2におけるプローブ部製作手順1の平面図、(b)は実施例2におけるプローブ部製作手順2の平面図、(c)は実施例2におけるプローブ部製作手順3の平面図。
【図6】(a)は実施例2におけるプローブ部の平面図、(b)は実施例2におけるプローブ部の側面図。
【図7】は実施例2の測定概略図。
【図8】は実施例2の測定側面図。
【図9】は実施例2の他の測定概略図。
【図10】(a)は実施例3におけるプローブ部の一例の製作手順1の平面図、(b)は(a)のaーa断面図、(c)は実施例3におけるプローブ部の一例の製作手順2の平面図、(d)は(c)のbーb断面図。
【図11】(a)は実施例3におけるプローブ部の一例の製作手順3の平面図、(b)は(a)のcーc断面図、(c)は実施例3におけるプローブ部の一例の製作手順4の平面図、(d)は(c)のdーd断面図。
【図12】(a)は実施例3の平面図、(b)は(a)のeーe断面図。
【図13】は実施例3におけるプローブ部の他の例の製作手順1の平面図。
【図14】(a)は実施例3におけるプローブ部の他の例の製作手順2の平面図、(b)は実施例3におけるプローブ部の他の例の製作手順3の平面図。
【図15】(a)は実施例3のプローブの平面図、(b)は実施例3のプローブの側面図。
【図16】は実施例3の測定概略図。
【図17】(a)は実施例2のプローブ部をシステム化した実施例4の平面図、(b)は(a)の一部正面図。
【図18】は実施例3のプローブ部をシステム化した実施例4の平面図。
【図19】は実施例5の側面図。
【図20】は実施例6の測定概略図。
【図21】は実施例7の側面図。
【図22】は実施例8の平面図。
【図23】(a)は実施例9のプローブ部の作成手順1の平面図、(b)は(a)のfーf断面図、(c)は実施例9のプローブ部の作成手順2の平面図、(d)は(c)のgーg断面図。
【図24】(a)は実施例9のプローブ部の作成手順3の平面図、(b)は(a)のhーh断面図、(c)は実施例9のプローブ部の作成手順4の平面図、(d)は(c)のiーi断面図。
【図25】は実施例10の測定概念図。
【図26】は実施例11におけるプローブ部の平面図。
【図27】は従来例の斜視図。
Claims (15)
- ループコイルを検知部として持つ近磁界プローブ部による、電気部品に対する電磁ノイズ測定装置において、
導電性薄膜または導電性金属箔で近磁界プローブ部のループコイル部を構成し、
位置決めのための基準となる磁界信号を発信する基準磁界信号発振部を電気部品固定用台の所定の位置に備え、
前記基準磁界信号発振部から発信させた当該基準磁界信号を近磁界プローブ部のループコイル部によって検知し、
前記電気部品を測定する前にあらかじめ測定し記憶した基準値と前記基準磁界信号の測定値が一致する位置にプローブの位置決めをした後、前記電気部品からの電磁ノイズを計測することを特徴とする近磁界プローブによる電磁ノイズ測定装置。 - 上記基準磁界信号をアンプ部またはインピーダンス変換器部に導き、これを表示器に表示させるようにした請求項1の近磁界プローブによる電磁ノイズ測定装置。
- 複数の面を持つ支持部材の少なくとも2つ以上の面に上記近磁界プローブ部を張付けた近磁界プローブ装置を用いた請求項1の電磁ノイズ測定装置。
- 近磁界プローブ部を複数のプローブ部とした請求項1の近磁界プローブによる電磁ノイズ測定装置。
- 上記複数面にそれぞれ複数のプローブ部を設けた請求項3の近磁界プローブによる電磁ノイズ測定装置。
- 請求項1におけるループコイルを導電性金属箔または導電性薄膜で構成し、このループコイルを複数設けて、請求項1における近磁界プローブ部をユニット化し、または請求項4における複数のプローブ部をユニット化した、請求項1または請求項4の近磁界プローブによる電磁ノイズ測定装置。
- 複数のループコイルをアレイ化してユニット化した請求項5の電磁ノイズ測定装置。
- ループコイル部を導電性金属箔または導電性薄膜で構成し、これを概略同一位置で、絶縁性箔または薄膜を介して積層してプローブ部をユニット化した請求項1の近磁界プローブによる電磁ノイズ測定装置。
- プローブ部を複数設け、その複数個のプローブ部のループコイルの大きさを互いに異ならせた請求項1の電磁ノイズ測定装置。
- 請求項2におけるアンプ部またはインピ一ダンス変換器部を、プローブ部を作製する基板上にパッドを設けてチップ部品で構成した請求項2の近磁界プローブによる電磁ノイズ測定装置。
- 表示部をも基板上に設けた請求項10の電磁ノイズ測定装置。
- 請求項2におけるアンプ部またはインピーダンス変換器部を、プローブ部を作製する基板上にコイル、伝送路とともに半導体プロセスで構成した請求項2の近磁界プローブによる電磁ノイズ測定装置。
- 請求項1におけるプローブ部またはプローブユニット部を3次元に移動させる3次元移動手段と、プローブ部またはプローブユニット部で得られた信号を検知する計測部とを有し、外部より与えた位置決めのための磁界信号を検知し、これに基づいて近磁界プローブの位置決めを行うようにした近磁界プローブによる電磁ノイズ計測装置。
- ループコイルに代えて検知部をMR素子、GMR素子またはホール素子で構成した、請求項1乃至請求項13の電磁ノイズ計測装置。
- ループコイルを検知部として持つ近磁界プローブ部による、電気部品に対する電磁ノイズ測定方法であって、
前記近磁界プローブ部の位置決めをするための基準となる磁界信号を、前記電気部品固定用台の所定の位置から発信し、
前記基準磁界信号を近磁界プローブ部のループコイル部によって検知し、
前記電気部品を測定する前にあらかじめ測定し記憶した基準値と前記基準磁界信号の測定値が一致する位置にプローブの位置決めをした後、
その位置において前記電気部品からの電磁ノイズを計測することを特徴とする近磁界プローブによる電磁ノイズ測定方法。
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