JP3558212B2 - インクセット - Google Patents
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Description
【発明の背景】
発明の分野
本発明は、色再現性および耐光性に優れたカラーインクセットに関する。
【0002】
背景技術
一般的に、インク組成物により形成された画像が、長時間、屋内外の光線や外気等に曝されると、紫外線、可視光もしくは大気中の様々なガス等の影響により、画像が劣化してしまうことが多い。特に、複数のインク組成物で形成されるカラー画像にあっては、一色でも耐光性に劣るものが存在すると画像の色相が変わりカラー画像の品質が極端に劣化することとなる。このため、長期保存しても画像劣化が起こり難い、耐候性に優れた画像を形成できるインク組成物が求められている。
【0003】
また、近年、インクジェット記録方法が注目されている。インクジェット記録方法は、インク組成物の小滴を飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行う印刷方法である。この方法は、比較的安価な装置で高解像度かつ高品位な画像を、高速で印刷可能であるという特徴を有する。そして、この方法を利用したインクジェット記録装置は、印字品質、低コスト、比較的静かな動作、グラフィック形成能により、商業的に広く受け入れられている。中でも、サーマル(バブルジェット)および圧電ドロップ・オン・デマンドプリンターは、市場でとりわけ成功し、オフィスおよび家庭でのパソコン用プリンターとして広く用いられてきている。
【0004】
最近では、複数のカラーインク組成物を用意し、インクジェット記録によってカラー画像を形成することが行われている。一般に、カラー画像の形成は、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、およびシアンインク組成物の三色、さらに場合によってブラックインク組成物を加えた四色によって行われている。さらに、これらの四色にライトシアンインク組成物およびライトマゼンタインク組成物を加えた六色によってカラー画像形成を行う場合もある。このようなカラー画像の形成に用いられるインク組成物には、それ自体が良好な発色性を有していることに加え、複数のインク組成物と組み合わせたときに、良好な中間色を発色することが求められる。
【0005】
また、このようなインクジェット記録方法に用いられるインクセットのインク組成物には、例えば、粘度、表面張力等の物性値が適当であること、光学濃度が高く、鮮明な色調および画像を与えること、耐水性、耐光性等の堅牢性に優れた画像を与えること、保存安定性に優れること、ノズルの目詰まりを生じにくいこと、さらに臭気および消防上の危険性等における安全性などの性能が要求される。これらの性能の多くを満たすために、水溶性染料を水または水と水溶性有機溶剤との混合液に溶解した水性インクが使用される。このとき、種々の色相のインク組成物が種々の色相の染料から調製される。
【0006】
色調、耐光性、耐水性といった種々の画像特性は、インク組成物中の着色剤の性能に左右されるところが大きく、従来より様々な染料が検討されている。
【0007】
【発明の概要】
本発明者等は、今般、特定の染料系カラーインク組成物を組み合わせたインクセットが、極めて色再現性に優れ、かつ耐光性にも優れた画像が実現できるとの知見を得た。本発明は、このような知見に基づくものである。
よって、本発明は、色再現性優れた画像を実現できるインクセットの提供をその目的としている。
【0008】
従って、本発明のインクセットは、 イエローインク組成物、色濃度の異なる二種のマゼンタインク組成物、および色濃度の異なる二種のシアンインク組成物を含んでなるインクセットであって、
【0009】
イエローインク組成物が着色剤として下記式(I)または(II):
【化8】
【化9】
[式中、
R1、R1’、R2、およびR2’は独立してCH3 またはOCH3 を表し、
AおよびA’は、
【化10】
のいずれかの構造を有する基であり、
Mは、H、Li、Na、K、アンモニウムまたは有機アミン類を表し
nは1または2の整数である。]
で表される化合物を含んでなるものであり、
【0010】
濃度の濃い方のマゼンタインク組成物が着色剤として下記式(III):
【化11】
[式中、
BおよびB’は、独立してHまたは次式で表される基を表し、
【化12】
(ただし、BおよびB’は同時にHではない)
R1は、C1〜C4のアルキル基もしくはアルコキシ基、またはOH、SO3M、またはCOOHを表し、
R2は、OH、COOM、またはNHR5を表し、
R3は、H、またはOHもしくはCOOHで置換されたC1〜C4のアルキル基を表し、
R4は、OH、OCH3、OC2H5、SO3M、またはCOOMで置換されたC1〜C4のアルキル基もしくはフェニル基を表し、
R5は、SO3MまたはCOOHで置換されたC1〜C4のアルキル基を表し、
Mは、H、Li、Na、K、アンモニウムまたは有機アミン類を表す)]
で表される化合物を含んでなるものであり、
【0011】
濃度の薄い方のマゼンタインク組成物が着色剤として下記(V):
【化13】
[式中、
Xは、少なくとも1つのSO3Mで置換されたアニリノ基を表し、
Yは、OH、Cl、またはモルホリノ基を表し、
Mは、H、Li、Na、K、アンモニウムまたは有機アミン類を表す。]
で表される化合物を含んでなるものであり、
【0012】
濃度の濃い方のシアンインク組成物および濃度の薄い方のシアンインク組成物がそれぞれ着色剤として下記式(IV):
【化14】
[式中、
R6は、OH、またはCOOMを表し、
l、m、およびnは、それぞれ0〜4であり、かつ(l+m+n)=4である]
で表される化合物を含んでなるものである。
【0013】
本発明によるインクセットは、このように各インク組成物の着色剤としてそれぞれ特定の化合物を含むことにより、形成される画像の色再現性を顕著に向上させることでき、かつその画像の耐光性の向上を図ることができる。
【0014】
【発明の具体的説明】
インクセット
本発明によるインクセットは、インク組成物を用いた記録方式に用いられる。インク組成物を用いた記録方式とは、例えば、インクジェット記録方式、ペン等による筆記具による記録方式、その他各種の印字方式が挙げられる。本発明によるインク組成物は、インクジェット記録方法に好ましく用いらる。
【0015】
本発明によるインクセットは、基本的に、イエローインク組成物、色濃度の異なる二種のマゼンタインク組成物、および色濃度の異なる二種のシアンインク組成物を含んでなる。ここで、色濃度の異なる二種のインク組成物は、濃度の濃いものと濃度の薄いものとに分けることができる。
【0016】
イエローインク組成物
本発明において用いられるイエローインク組成物は、着色剤として上記式(I)または(II)で表される化合物を含んでなるものである。本発明において、着色剤として、式(I)または(II)に表される化合物は、単独であってもよく、また複数種混合し用いてもよい。
【0017】
式(I)または(II)に表される化合物の具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0018】
【化15】
【0019】
【化16】
【0020】
イエローインク組成物中における着色剤濃度は適宜選択することができるが、通常、該インク組成物が式(I)または(II)で表される化合物を1.5〜6.0重量%含むことが好ましい。このような範囲の濃度であることは、マゼンタインクおよびシアンインクとのバランスの点からも好ましい。また、いわゆる普通紙にベタ印刷(100% Dutyの塗りつぶし印刷)したときにイエローOD値が1.0〜1.5の範囲であることが好ましいため、イエローインク組成物が式(I)または(II)で表される化合物を1.5〜4.0重量%含むことがより好ましい。
【0021】
マゼンタインク組成物
本発明によるインクセットにおいて使用される色濃度の異なる二種のマゼンタインク組成物は、濃度の濃い方のマゼンタインク組成物(以下において必要により濃マゼンタインクともいう)と、濃度の薄い方のマゼンタインク組成物(以下において必要により淡マゼンタインクともいう)とからなる。このように濃淡色のマゼンタインクを用いてインクジェット記録を行うことにより、鮮明性が高く、耐光性に優れた記録画像を得ることができる。
【0022】
本発明において用いられる濃度の濃い方のマゼンタインク組成物は着色剤として上記式(III)で表される化合物を含んでなるものである。この化合物を含むインク組成物は、単色での鮮明性、耐光性に優れたものである。
【0023】
式(III)で表される化合物の具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0024】
【化17】
【0025】
【化18】
【0026】
【化19】
【0027】
本発明において、式(III)に表される化合物を単独で用いてもよく、また複数種混合して用いてもよい。濃マゼンタインクとしては、式(III)で表される化合物を0.5〜4.0重量%含むことが好ましい。いわゆる普通紙にベタ印刷(100% Dutyの塗りつぶし印刷)したときに、マゼンタOD値が1.0〜1.5の範囲となる。
【0028】
本発明において、濃度の薄い方のマゼンタインク組成物に用いられる着色剤は式(V)に示される化合物である。
【0029】
この式(V)に表される化合物の具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0030】
【化20】
【0031】
【化21】
【0032】
【化22】
【0033】
【化23】
【0034】
本発明において、式(V)に表される化合物を単独で用いてもよく、また複数種混合して用いてもよい。
【0035】
濃度の薄い方のマゼンタインク組成物中における着色剤濃度は、前記の濃色マゼンタインクとを組み合わせたときのカラーバランスに従って適宜選択することができるが、通常、該インク組成物が式(V)で示される化合物を1〜3重量%含むことが好ましい。このような濃度範囲にあることにより、式(III)で表される化合物を含んでなる濃マゼンタインクと組み合わせたときのバランスが良好となる。
【0036】
シアンインク組成物
本発明によるインクセットにおいて使用される色濃度の異なる二種のシアンインク組成物は、濃度の濃い方のシアンインク組成物(以下において必要により濃シアンインクともいう)と、濃度の薄い方のシアンインク組成物(以下において必要により淡シアンインクともいう)とからなる。
【0037】
本発明において用いられる濃シアンインク組成物および淡シアンインク組成物は、それぞれ着色剤として上記式(IV)で表される化合物を含んでなるものである。
【0038】
色濃度の異なるインク組成物の色濃度差は、染料濃度の大小により生じさせてもよく、また用いる着色剤の種類を適宜選択することで生じさせてもよい。
【0039】
上記式(IV)で表される化合物の具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0040】
【化24】
【0041】
【化25】
【0042】
本発明において、濃シアンインク組成物および淡シアンインク組成物にそれぞれ用いられる着色剤としては、それぞれ式(IV)に表される化合物を単独で用いてもよく、複数種混合して用いてもよい。
【0043】
濃シアンインク組成物中における着色剤濃度は適宜選択することができるが、通常、該インク組成物が式(IV)で表される化合物を2.0〜6.0重量%含むことが好ましい。また、いわゆる普通紙にベタ印刷(100% Dutyの塗りつぶし印刷)したときにシアンOD値が1.0〜1.5の範囲であることが好ましいため、濃度の濃い方のシアンインク組成物が式(IV)で表される化合物を2.5〜4.5重量%含むことがより好ましい。
【0044】
淡シアンインク組成物中における着色剤濃度は、着色剤として使用される式(IV)で表される化合物と、前記の濃色シアンインクとを組み合わせたときのカラーバランスに従って適宜選択することができるが、通常、該インク組成物が式(IV)で表される化合物を0.4〜1.5重量%含むことが好ましい。このような濃度範囲にあることにより、濃シアンインクと組み合わせたときのバランスが良好となる。
【0045】
ブラックインク組成物
本発明においては、イエローインク組成物、色濃度の異なる二種のマゼンタインク組成物、および色濃度の異なる二種のシアンインク組成物を含んでなるインクセットに、さらにブラックインク組成物を包含させることができる。
【0046】
本発明において使用可能なブラックインク組成物に含まれる着色剤としては、黒色を印刷することができる染料または顔料であればいずれのものも使用可能である。例えば、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料、可溶性建染染料、反応分散染料、など通常インク組成物、とりわけインクジェット記録に使用される各種染料が使用可能である。またこのような顔料としては、カーボンブラック等の黒顔料が使用可能である。
【0047】
本発明において用いられるブラックインク組成物は、安全性等の問題から水性インクであることが好ましい。
本発明において、ブラックインク組成物に含まれる染料は単独または複数種混合して用いることができる。
【0048】
水、水溶性有機溶媒、およびその他の任意の成分
本発明に用いられるインク組成物において、主溶媒は水または水と水溶性有機溶媒の混合液が好適である。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。また、紫外線照射、または過酸化水素添加などにより滅菌した水を用いることにより、インク組成物を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
【0049】
本発明に用いられるインク組成物においては、主溶媒として使用される場合の水の含有量は、インク組成物に対して50〜90重量%であるのが好ましく、また、60〜80重量%であるのがさらに好ましい。
【0050】
本発明の好ましい態様によれば、本発明に用いられるインク組成物の溶媒は、水と水溶性有機溶媒の混合液であり、高沸点有機溶媒からなる湿潤剤をさらに含んでなることが好ましい。高沸点有機溶媒剤の好ましい例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテルの多価アルコールのアルキルエーテル類;尿素;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホランなどが挙げられ、これら一種または二種以上の混合物として用いることができる。
【0051】
本発明において用いられるアセチレングリコール系界面活性剤の好ましい具体例としては、下記の式(a)で表わされる化合物が挙げられる。
【0052】
【化26】
[上記式中、0≦m+n≦50、R1、R2、R3、およびR4は独立してアルキル基(好ましくは炭素数1〜6のアルキル基)を表す]
【0053】
上記の式(a)で表される化合物の中で特に好ましくは2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。上記の式(a)で表されるアセチレングリコール系界面活性剤として市販品を利用することも可能であり、その具体例としてはサーフィノール82、104、440、465、485、またはTG(いずれもAir Products and Chemicals.Inc.より入手可能)、オルフィンSTG、オルフィンE1010(商品名)(以上、日信化学社製)が挙げられる。
【0054】
界面活性剤の添加量はインク組成物に対して0.1〜3重量%程度の範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜2重量%程度の範囲である。なお、本発明に用いられるインク組成物の表面張力は、45mN/m以下であり、好ましくは25〜40mN/m範囲程度が好ましい。
【0055】
本発明に用いられるインク組成物は、さらにノズルの目詰まり防止剤、防腐剤または防かび剤、酸化防止剤、導電率調整剤、pH調整剤、溶解助剤、粘度調整剤、浸透促進剤、表面張力調整剤、酸素吸収剤などを必要に応じて添加することができる。
【0056】
防腐剤または防かび剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン(Zeneca社のプロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルTN)などがあげれる。
【0057】
さらに、pH調整剤、溶解助剤、または酸化防止剤の例としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリンなどのアミン類およびそれらの変成物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどの無機塩類、水酸化アンモニウム、四級アンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウムなど)、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどの炭酸塩類その他燐酸塩など、あるいはN−メチル−2−ピロリドン、尿素、チオ尿素、テトラメチル尿素などの尿素類、アロハネート、メチルアロハネートなどのアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類など、L−アスコルビン酸およびその塩を挙げることができる。
【0058】
本発明においてはまた、前記した他の任意の成分は、単独または各群内および各群間において複数種選択して混合して用いることもできる。
【0059】
本発明においては、インク組成物のすべての成分の量は、インク組成物の粘度が20℃で10mPa・s未満であるように選択されるのが好ましい。
【0060】
記録方法
本発明によるインクセットは、インク組成物を付着させて記録媒体に印字を行う記録方式に用いられる。
【0061】
本発明の別の態様によれば、本発明によるインクセットに含まれるインク組成物の液滴を吐出し記録媒体に付着させて印字を行うインクジェット記録方法が提供される。
さらに本発明によれば、これらの記録方法により記録された記録物も提供される。
【0062】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0063】
インクセットの調製
以下の表に表される組成のインク組成物を調製し、インクセット1〜6を作成した。なお、表中に示すインクの各成分量はインク全重量に対する各成分のwt%を示し、残量はイオン交換水である。また、染料Y−1〜Y−8、M−1〜M−10、LM−1〜LM−12、およびC−1〜C−6は上記した具体的な構造の染料を意味する。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】
【表6】
【0070】
インクセットの評価試験
次に得られたインクセットについて、以下に示す記録媒体(1)〜(4)を用いて、以下の試験1〜3について評価した。(1)はいわゆる普通紙であり、(2)〜(4)はインクジェットプリンタ専用記録媒体である。
(記録媒体)
(1)Xerox 4024 (米国 Xerox.Co.製)
(2)EPSON スーパーファイン用紙 (エプソン販売株式会社製)
(3)EPSON 専用写真光沢紙 (エプソン販売株式会社製)
(4)EPSON 専用光沢フィルム (エプソン販売株式会社製)
【0071】
また、評価試験においては、インクジェットプリンタPM−770C(セイコーエプソン株式会社製)を用いた。
また、耐光性試験には、耐光性の加速試験機として、キセノンフエザオメーターCi35W(アトラス・エレクトリック・デバイス社製)を用い、評価を行った。
【0072】
試験1:耐光性
PM−770C用インクカートリッジ(型番:IC5CL02 セイコーエプソン社製)に実施例および比較例のインクセットを充填し、記録媒体(1)〜(4)に対して、レツド、ブルー、グリーンと、コンボジットブラツク70%濃度のベタ印刷を行った。
70%濃度のレツドは、濃マゼンタ、淡マゼンタ、イエローのインクで構成され、70%濃度のブルーは濃マゼンタ、淡マゼンタ、濃シアン、淡シアンのインクで構成され、70%濃度のグリーンはイエロー、濃シアン、淡シアンのインクで構成され、70%濃度のコンポジットブラックは濃マゼンタ、淡マゼンタ、濃シアン、淡シアン、イエロー、ブラックのインクで構成されるよう、印刷方法を調整した。なお、ブラックインクはPM−770C用のオリジナルインクを用いた。
【0073】
この印刷サンプルについて、キセノンフエザオメーターCi35W(アトラス・エレクトリック・デバイス社製)を用いて、60時間の耐光性試験を行い、試験前後における色差(ΔE*ab)を式(i)から求め、以下の基準で判定した。
ΔE*ab=[(ΔL*)2 + (Δa*)2 + (Δb*)2]1/2 (i)
【0074】
評価A:色差ΔE*ab が5以下である
評価B:色差ΔE*ab 5を越え10以下である
評価C:色差ΔE*ab 10を越え20以下である
評価D :色差ΔE*ab 20を越える
【0075】
結果は表7に示される通りであった。
【0076】
【表7】
【0077】
試験2:色再現範囲
PM−770C用インクカートリッジに前記の各インクセットを充填し、記録媒体(3)に対して、前記インクセットからなるイエロー、マゼンタ、シアン、レッド、ブルー、グリーンの各色の100階調濃度のパッチパターンを印刷した。得られたパッチのそれぞれの明度(L*)、色相(a*,b*)を測定し、X軸にa*、Y軸にb*、Z軸にL*をプロットすることで、色の立体空間(色再現範囲)を求めた。
PM−770Cのオリジナルインクセツトの色再現範囲を100%とし、前記の各インクセットの色再現範囲と比較した。
【0078】
試験3:目詰まり回復性
前記各インクセットをPM−770Cのプリントヘッドに充填し、キャップをしない状態で40℃の環境に1ケ月間放置し、放置後、全ノズルが正常と吐出するまでに要するクリーニングの動作回数行った。以下の基準でその評価した。
評価A:2回以内で復帰する
評価B:3〜5回で復帰する
評価C:6〜10回で復帰する
評価D :10回の操作でも復帰しない
【0079】
試験2および試験3の評価結果は表8に示される通りであった。
【0080】
【表8】
Claims (10)
- イエローインク組成物、色濃度の異なる二種のマゼンタインク組成物、および色濃度の異なる二種のシアンインク組成物を含んでなるインクセットであって、
イエローインク組成物が着色剤として下記式(I)または(II):
R1、R1’、R2、およびR2’は独立してCH3 またはOCH3 を表し、
AおよびA’は、
Mは、H、Li、Na、K、アンモニウムまたは有機アミン類を表し
nは1または2の整数である。]
で表される化合物を含んでなるものであり、
濃度の濃い方のマゼンタインク組成物が着色剤として下記式(III):
BおよびB’は、独立してHまたは次式で表される基を表し、
R1は、C1〜C4のアルキル基もしくはアルコキシ基、またはOH、SO3M、またはCOOHを表し、
R2は、OH、COOM、またはNHR5を表し、
R3は、H、またはOHもしくはCOOHで置換されたC1〜C4のアルキル基を表し、
R4は、OH、OCH3、OC2H5、SO3MまたはCOOMで置換されたC1〜C4のアルキル基もしくはフェニル基を表し、
R5は、SO3MまたはCOOHで置換されたC1〜C4のアルキル基を表し、
Mは、H、Li、Na、K、アンモニウムまたは有機アミン類を表す)]
で表される化合物を含んでなるものであり、
濃度の薄い方のマゼンタインク組成物が着色剤として下記(V):
Xは、少なくとも1つのSO3Mで置換されたアニリノ基を表し、
Yは、OH、Cl、またはモルホリノ基を表し、
Mは、H、Li、Na、K、アンモニウムまたは有機アミン類を表す。]
で表される化合物を含んでなるものであり、
濃度の濃い方のシアンインク組成物および濃度の薄い方のシアンインク組成物がそれぞれ着色剤として下記式(IV):
R6は、OH、またはCOOMを表し、
l、m、およびnは、それぞれ0〜4であり、かつ(l+m+n)=4である]
で表される化合物を含んでなるものである、インクセット。 - イエローインク組成物が、式(I)または(II)で表される化合物を1.5〜4重量%含んでなる、請求項1に記載のインクセット。
- 濃度の濃い方のマゼンタインク組成物が、式(III)で示される化合物を0.5〜4重量%含んでなり、かつ濃度の薄い方のマゼンタインク組成物が、式(V)で示される化合物を1〜3重量%含んでなる、請求項1または2に記載のインクセット。
- 濃度の濃い方のシアンインク組成物が、式(IV)で表される化合物を2.5〜 4.5重量%含んでなり、かつ濃度の薄い方のシアンインク組成物が、式(IV)で表される化合物を0.4〜1.5重量%含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクセット。
- ブラックインク組成物を更に含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクセット。
- インク組成物が界面活性剤をさらに含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクセット。
- インクジェット記録方法に用いられる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインクセット。
- インク組成物を付着させて記録媒体に印字を行う記録方法であって、インク組成物として請求項1〜7のいずれか一項に記載のインクセットのインク組成物を用いる、方法。
- インク組成物の液滴を吐出し記録媒体に付着させて印字を行うインクジェット記録方法であって、インク組成物として請求項1〜7のいずれか一項に記載のインクセットのインク組成物を用いる、インクジェット記録方法。
- 請求項8または9のいずれか一項に記載の方法によって記録が行われた、記録物。
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