JP3553539B2 - 路面摩擦係数推定方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、路面の摩擦係数を推定する路面摩擦係数推定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、車両においては駆動方式により異なった特有の運動性能になることが知られている。ここで、センターディファレンシャルを備えたフルタイム式4輪駆動車では、常に4輪を駆動することで、FR車やFF車のようなスリップやスキッドが回避されて駆動、制動、旋回の走行時の限界性能が向上する。また、スロットルオン、オフ時の影響が前、後輪に分散して作用するので、アンダステアやオーバステアの傾向が共に弱くなって両者の中間的な特性になるのであり、このような利点から近年通常の車両においても、この種の4輪駆動車が大幅に普及しつつある。また、このセンターディファレンシャルを備えた4輪駆動車においては、前後輪や左右後輪のトルク配分が更に旋回性能や車両挙動変化に対して影響を与え、これらのトルク配分を適正化することで運動性能、動的安定性を一層向上することが可能である。そこで、前後輪等のトルク配分を運転、走行条件に応じて最適に可変制御することが研究開発されている。
【0003】
従来、上述したようなセンターディファレンシャルを備えた4輪駆動車の前後輪のトルク配分制御に関しては、例えば特開昭63−13824号公報の先行技術がある。ここで、センターディファレンシャルに対して油圧式多板クラッチを、その差動制限トルクによりトルク移動して前後輪のトルク配分を可変することが可能に構成する。また、車両の旋回状態は横Gにより検出することが可能であり、この横Gの値が大きくなると、漸次タイヤのグリップ力が限界状態に近付き車両のスピンやドリフトを生じるようになる。そこで、横Gの値に応じて多板クラッチの差動制限トルクを設定し、前後輪のトルク配分をスピンやドリフトを生じないように可変制御することが示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記先行技術のものにあっては、横Gの値のみで旋回状態を判断する構成であるから、タイヤの横すべり角に対して横力が比例的に変化する線形のグリップ領域に限定される。即ち、低μ路においてタイヤのグリップ力が限界に達して車両がスピン等を始める限界状態では、横力が非線形に変化して実際の横Gの値は車両がスピンする挙動に基づいて任意に変化してしまい、旋回状態を正確に判断することができなくなるからである。一方、限界状態のスピン等を防止するには、非線形のスリップ領域の車両の挙動を正確に判断して前後輪のトルク配分を制御することが必要になり、この点で先行技術のものでは不充分である。
【0005】
本発明は、このような点に鑑み、グリップ領域、スリップ領域を問わず逐次路面摩擦係数を検出或いは推定することによって、非線形なスリップ領域での車両の運動特性を正確に把握することのできる路面摩擦係数推定方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため本発明は、路面の摩擦係数を推定する路面摩擦係数推定方法であって、少なくとも舵角、車速、実ヨーレイトの各種パラメータと車両の運動方程式とに基づき、前後輪のコーナリングパワを非線形域に拡張して推定し、この前後輪の推定コーナリングパワと高μ路でのコーナリングパワとを比較して前後輪毎の路面摩擦係数推定値を算出し、これらの路面摩擦係数推定値のうち大きい方を路面摩擦係数推定値の代表値として設定することを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、前記車両の運動方程式を状態変数表現で示し、パラメータ調整則を設定して適応制御理論を展開することによって推定されたパラメータと実車のパラメータとから前記前後輪の推定コーナリングパワが推定されることを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明は、路面の摩擦係数を推定する路面摩擦係数推定方法であって、少なくとも舵角、車速、推定された前後輪のコーナリングパワと車両の線形領域の運動方程式とに基づき車体のヨーレイトと横加速度とを演算し、演算されたヨーレイトおよび実ヨーレイトの偏差と、演算された横加速度および実横加速度の偏差とを演算し、これらの両偏差に基づいて前後輪のコーナリングパワを非線形域まで拡張して推定し、この前後輪の推定コーナリングパワと高μ路でのコーナリングパワとを比較して前後輪毎の路面摩擦係数推定値を算出し、これらの路面摩擦係数推定値のうち大きい方を路面摩擦係数推定値の代表値として設定することを特徴とする。
【0009】
【作用】
上記構成による本発明では、少なくとも舵角、車速、実ヨーレイトのパラメータと車両の運動方程式とによって車両の挙動が常に監視される。そして、たとえば、低μ路の旋回加速時にタイヤのグリップ力が限界に達して車両がスピン等を始める限界状態では、タイヤ横力が低下し非線形に変化するが、車両の運動方程式を低μ路の非線形領域まで拡張して解析することによって、この車両の限界挙動のタイヤ横力の低下を前後輪のコーナリングパワの低下として扱うことができて路面摩擦係数をほぼ正確に推定することができる。
【0010】
【実施例】
以下、本発明の摩擦係数推定方法を適用した4輪駆動車のトルク配分制御装置の実施例を図面に基づいて説明する。なお、本発明の摩擦係数推定方法は、4輪駆動車のみならず左右輪のトルク配分制御が可能な2輪駆動車に適用しても良い。まず、前後輪と左右後輪とのトルク配分制御が可能な4輪駆動車の駆動系の概略について図2を用いて説明する。符合1はエンジン、2はクラッチ、3は変速機であり、変速機出力軸4がセンターディファレンシャル20に入力している。センターディファレンシャル20から前方に向かってフロント駆動軸5が、後方に向かってリヤ駆動軸6が出力され、フロント駆動軸5はフロントディファレンシャル7、車軸8を介して左右の前輪9L,9Rに、リヤ駆動軸6はプロペラ軸10、リヤディファレンシャル11、車軸12を介して左右の後輪13L,13Rにそれぞれ連結して伝動構成されている。
【0011】
リヤディファレンシャル11はベベルギヤ式であり、このリヤディファレンシャル11の例えばデフケース11aと一方のサイドギヤ11bとの間に、差動制限装置として油圧多板式リヤクラッチ28がバイパスして付設されている。そして、リヤクラッチ28のリヤ差動制限トルクTdが零の場合は、左右後輪13L,13Rに等しくトルク配分し、所定のリヤ差動制限トルクTdを生じるとこのトルクTdの分だけ高速輪から低速輪にトルク移動し、最も大きいリヤ差動制限トルクTdでデフロックする場合は左右後輪13L,13Rにかかる荷重Wと路面摩擦係数μとの積W・μに応じてトルク配分するようになっている。
【0012】
センターディファレンシャル20は複合プラネタリギヤ式であり、変速機出力軸4と一体の第1サンギヤ21、リヤ駆動軸6と一体の第2サンギヤ22、及びこれらのサンギヤ21,22の周囲に複数個配置されるピニオン23を有し、ピニオン23の第1ピニオンギヤ23aが第1サンギヤ21に、第2ピニオンギヤ23bが第2サンギヤ22にそれぞれ噛合っている。また、変速機出力軸4にはリダクションのドライブギヤ25が回転自在に設けられ、このドライブギヤ25と一体のキャリヤ24にピニオン23が軸支され、ドライブギヤ25はフロント駆動軸5と一体のドリブンギヤ26に噛合って構成される。これにより、第1サンギヤ21に入力する変速動力をキャリヤ24と第2サンギヤ22とに、所定の基準トルク配分で分けて伝達し、旋回時の前後輪の回転差をピニオン23の遊星回転により吸収するようになっている。ここで、基準トルク配分は、2つのサンギヤ21,22と2つのピニオンギヤ23a,23bとの4つのギヤ噛合いピッチ円半径で自由に設定される。そこで、前輪トルクTFと後輪トルクTRとの基準トルク配分etを例えば、
【数1】
Figure 0003553539
のように充分に後輪偏重に設定することが可能になる。
【0013】
また、上記センターディファレンシャル20の直後方には油圧多板式センタークラッチ27が、ドラム27aをキャリヤ24に、ハブ27bを第2サンギヤ22と一体的なリヤドライブ軸6に結合して同軸上に配置される。そして、センタークラッチ27のセンター差動制限トルクTcによりセンターディファレンシャル20の差動を制限すると共に、後輪側から前輪側にトルク移動することが可能になっている。ここで、フロントエンジン搭載の場合は、車両の前輪重量WFと後輪重量WRとの静的重量配分ewが例えば、
【数2】
Figure 0003553539
であり、センタークラッチ27による直結の場合は、前後輪の路面摩擦係数μが等しいとすると、この重量配分ewに応じて前輪偏重にトルク配分される。従って、センタークラッチ27のセンター差動制限トルクTcにより前後輪のトルク配分を、後輪偏重の基準トルク配分etと、前輪偏重の重量配分ewとの広い範囲で制御することが可能とされている。
【0014】
次に、センタークラッチ27とリヤクラッチ28との油圧制御系について説明する。先ず、変速機3が自動変速機の場合は、その油圧制御系のオイルポンプ30の油圧をレギュレータ弁31で調圧したライン圧を利用して構成される。そこで、センタークラッチ油圧制御手段32はライン圧油路33と連通するクラッチ制御弁34を有し、このクラッチ制御弁34が油路35を介してセンタークラッチ27に連通する。また、ライン圧油路33はパイロット弁36及びオリフィス37を有する油路38によりソレノイド弁40に連通し、ソレノイド弁40によるデューティ圧が油路39を介してクラッチ制御弁34の制御側に作用する。ソレノイド弁40は制御ユニット50からの各走行条件に応じたデューティ信号が入力すると、それにより油圧をドレンしてデューティ圧Pdを生じるものであり、このデューティ圧Pdに応じてクラッチ制御弁34を動作し、センタークラッチ27のセンター差動制限トルクTcを可変制御する。また、リヤクラッチ油圧制御手段32’は同様に油路33,39’と連通したクラッチ制御弁34’、油路35’、ソレノイド弁40’を有し、ソレノイド弁40’のデューティ圧Pdによりリヤクラッチ28のリヤ差動制限トルクTdを可変制御するように構成される。
【0015】
次いで、前後輪トルク配分制御装置の制御系について説明する。先ず、基本的制御原理について説明する。タイヤ特性が線形領域では前後輪のコーナリングパワが一定であるが、低μ路での旋回加速時にタイヤグリップが限界に達して車両スピンするように限界挙動する場合は、タイヤ横力が低下する。そこで、車両の限界挙動のタイヤ横力の低下を前後輪のコーナリングパワの低下として扱うことにより、路面μを正確に推定でき、且つ車両の運動方程式を低μ路の非線形領域まで拡張して解析できる。また、摩擦円の理論により駆動力もタイヤ横力に影響を与える。更に、非線形なスリップ領域での車両の安定性の目安は、ステア特性のスタビリティファクタにより判断できる。
【0016】
そこで、種々のパラメータにより非線形領域の前後輪のコーナリングパワを求めて路面μを推定し、車両の限界挙動をスタビリティファクタにより数値化する。また、駆動力、走行状態、路面μ、スタビリティファクタにより車両の運動方程式を解析することで、非線形領域での車両の運動特性を正確に把握できる。このため、前後輪トルク配分を常に一定のスタビリティファクタを得るように制御することで車両スピン等を防止して安定性を向上できる。
【0017】
従って、種々のパラメータにより非線形領域の前後輪のコーナリングパワを求めて路面μを推定することが重要であり、舵角、車速、実際のヨーレイト(ヨー角速度)により求めることができる。この場合の路面μの推定方法としては、例えば車両の運動方程式に基づくヨーレイト応答と実際のヨーレイトとを比較し、タイヤの等価コーナリングパワを未知パラメータとしてその値をオンラインで推定する方法がある。具体的には、以下の適応制御理論によるパラメータ調整則で算出される。
【0018】
図3の車両運動モデルを用いて、車両の横運動の運動方程式を立てる。横方向の並進運動の運動方程式は、前後輪のコーナリングフォースCf,Cr、車体質量M、横加速度Gyにより以下である。
【数3】
Figure 0003553539
【0019】
一方、重心回りの回転の運動方程式は、重心から前後輪までの距離Lf,Lr、車体のヨーイング慣性モーメントIz、ヨー角加速度γにより以下である。
【数4】
Figure 0003553539
【0020】
車速Vと重心点の横方向への並進速度(横すべり速度)Vyを用いると、横加速度Gyは、次式で表わされる。
【数5】
Figure 0003553539
【0021】
コーナリングフォースはタイヤの横すべり角に対し1次遅れに近い応答をするが、この遅れを無視すると、前後輪のコーナリングパワKf,Kr、前後輪の横すべり角αf,αrにより以下となる。
【数6】
Figure 0003553539
【0022】
コーナリングパワの中でロールやサスペンションの影響を考慮するものとして等価コーナリングパワを用いると、横すべり角αf,αrは、前輪舵角δf、後輪舵角δr、ステアリングギヤ比nにより以下のように簡略化できる。
【数7】
Figure 0003553539
以上が基本的な運動方程式である。
【0023】
そこで、上記運動方程式を状態変数表現で示し、パラメータ調整則を設定して適応制御理論を展開することで種々のパラメータが推定される。次に、推定されたパラメータから実車のコーナリングパワKf,Krを求める。実車のパラメータとしては、車体質量Mやヨーイング慣性モーメントIz等があるが、これらは一定と仮定し、タイヤのコーナリングパワのみが変化するものとする。タイヤのコーナリングパワが変化する要因としては、すべり角に対する横力の非線形性、路面μの影響、荷重移動の影響等がある。ヨーレイトγの変化により推定されるパラメータa、前輪舵角δfにより推定されるパラメータb、ステアリングギヤ比nにより、前後輪のコーナリングパワKf,Krを求めると、例えば以下になる。
【数8】
Figure 0003553539
【0024】
ここで、前後輪のコーナリングパワKf,Krを求める過程について詳細に説明する。上記の運動方程式をまとめると以下の状態方程式となる。
【数9】
Figure 0003553539
【0025】
次に、パラメータ調整則を考えるにあたり、車速は既知であるとして、車速と固定パラメータとを分離すると以下となる。
【数10】
Figure 0003553539
【0026】
このとき、ヨー角速度γは、以下のように表される。
【数11】
Figure 0003553539
【0027】
ここで、車両の横運動の次数が2なので、安定多項式Q(p),D(p)を以下のようにおく。
【数12】
Figure 0003553539
この多項式を用いると、Gp(p)γ(t)=Hf(p)θ(t)+Hr(p)δr(t)の非最小実現は以下のように得られる。
【数13】
Figure 0003553539
これと等価的に次式をおく。
【数14】
Figure 0003553539
【0028】
ここで、車速Vはξ(t)に含まれており、パラメータのベクトルζは車速を含まない。η(t)=ζξ(t)に対応してパラメータ同定器を設定する。
【数15】
Figure 0003553539
パラメータ調整則として次のものを用いる。
【数16】
Figure 0003553539
各パラメータは、
【数17】
Figure 0003553539
を用いて、
【数18】
Figure 0003553539
から導くようにすると、
【数19】
Figure 0003553539
が保証される。
【0029】
次に、固定されたパラメータから実車のコーナリングパワを求める。
実車のパラメータは、上述したように、車体重量Mやヨーイング慣性モーメントIz等があるが、今回はこれらを既知、且つ一定であると仮定し、前後輪のコーナリングパワのみが変化するものとする。後輪舵角が0である場合、同定されるパラメータは以下の5つである。
【数20】
Figure 0003553539
したがって、(1−1)〜(1−5)式のうちの2式(ただし、(1−2),(1−5)式の組み合わせは除く)を用いれば実車のコーナリングパワが求まる。ここでは、(1−3),(1−4)式を用いて前後輪のコーナリングパワK^f,K^rを求めるものとする。
【数21】
Figure 0003553539
ところで、a^y1(t),a^y2(t),a^y3(t)は、ヨー角速度の変化によって同定され、b^y1(t),b^y0(t)は、ドライバのハンドル入力によって同定される性質がある。また、a^y3(t)およびb^y1(t)以外は、式の中に車体質量Mが入っており、今回のようにヨー角速度応答のみ(横加速度を用いない)を用いた同定では充分な精度が期待できない。
したがって、ドライバの操舵力が充分な頻度で加えられる状況ではb^y1(t)の同定結果を元にK^fを求め、更に、a^y3(t)の同定結果を用いてK^rを求めるのが最も好ましい。
以上、前後輪のコーナリングパワKf,Krを求める過程について詳細に説明した。
【0030】
従って、(数8)に示された数式により、車速V、舵角δf、ヨーレイトγで演算して非線形域の前後輪のコーナリングパワKf,Krが推定される。そして推定された前後輪のコーナリングパワKf,Krは、例えば前後輪毎に高μ路のコーナリングパワと比較することで、路面μが算出され、路面μに基づいて非線形域の路面μ推定値Eが高い精度で設定される。
【0031】
次に、前後輪にトルク配分する場合について説明する。車両の運動方程式は、車速V、ヨーレイトγ、入力トルクNi、目標スタビリティファクタAt、路面μ推定値E等により非線形領域まで拡張して解析することができる。そこで、車両の運動方程式により前後輪トルク配分比αは、以下のような式により算出される。ただし、Gx’:前後加速度推定値、Gy’:横加速度推定値、W:車体重量、h:重心高、L:ホイールベース、Lf:Lr:重心から前後輪までの距離、Kfo:Kro:線形域の等価コーナリングパワ、Kfc:Krc:Kf,Krを接地荷重で偏微分したコーナリングパワの荷重依存性、Gt:ファイナルギヤ比、Rt:タイヤ径、Ti:入力トルクである。
【0032】
【数22】
Figure 0003553539
【0033】
【数23】
Figure 0003553539
【0034】
【数24】
Figure 0003553539
【0035】
【数25】
Figure 0003553539
【0036】
【数26】
Figure 0003553539
【0037】
そこで、上記基本的制御原理に基づき図1の制御系について説明する。入力情報として舵角δfを検出する舵角センサ42、車速Vを検出する車速センサ43、実ヨーレイトγを検出するヨーレイトセンサ44を有する。また、センターディファレンシャル20の入力トルクを推定するため、エンジン回転数センサ45、アクセル開度センサ46、ギヤ位置センサ47を有する。
【0038】
制御ユニット50は、舵角δf、車速V、実ヨーレイトγが入力する路面μ推定手段51を有し、上述のように適応制御理論により前後輪のコーナリングパワKf,Krを推定する。そして、前後輪の路面μは、高μ路(μ=1.0)での前後輪の等価コーナリングパワKfo,Kroに対する推定した前後輪のコーナリングパワKf,Krの比で算出する。また、ハンドルを切っても曲がらないドリフト状態では前輪のコーナリングパワが、逆に車両のスピン状態では後輪のコーナリングパワが極端に小さい値に推定される不具合を回避するため、前輪と後輪の路面μの大きい方を路面μ推定値Eとして設定する。
【0039】
また、舵角δfと車速Vとが入力する目標ヨーレイト設定手段52を有し、高μ路での車両の旋回特性を基準として目標ヨーレイトγtを設定する。目標ヨーレイトγtと実ヨーレイトγとは目標ステア特性設定手段53に入力し、両ヨーレイトγt,γの偏差に応じてステア特性の目標スタビリティファクタAtを設定、修正する。ここで、ステア特性のスタビリティファクタは、予め弱アンダステアの一般的な特性に設定される。そのため、車両がスピンまたはドリフトアウトすると、実ヨーレイトγが増減することで目標スタビリティファクタAtがそのスピンやドリフトアウトの状態に応じ数値化して設定される。
【0040】
一方、エンジン回転数N、アクセル開度φ、ギヤ位置Pが入力する入力トルク推定手段54を有し、エンジン出力特性を参照してエンジン回転数Nとアクセル開度φとによりエンジン出力Teを推定し、このエンジン出力Teにギヤ位置Pのギヤ比gを乗算することによって、センターディファレンシャル入力トルクTiを算出する。
【0041】
これら車速V、実ヨーレイトγ、入力トルクTi、目標スタビリティファクタAt、路面μ推定値Eは、前後トルク配分比算出手段55に入力し、上述の式を用いて前後トルク配分比αを算出する。この前後トルク配分比α、入力トルクTiは、センター差動制限トルク算出手段56に入力して、センター差動制限トルクTcを以下のように算出する。即ち、前後トルク配分比αがRWDの0とFWDの1との間で設定されており、基準トルク配分比Diが実施例のように後輪偏重で設定されている場合は、センター差動制限トルクTcを、Tc=(α−Di)Tiにより算出する。ここで、計算値が負の場合には、センター差動制限トルクTcの値を0とする。尚、基準トルク配分比Diが前輪偏重に設定される場合は、上述と逆に減算すれば良い。このトルク信号は、デューティ比変換手段57に入力して所定のデューティ比Dに変換され、このデューティ信号をソレノイド弁40に出力するように構成される。
【0042】
次に、この実施例の作用を説明する。先ず、車両走行時にエンジン1の動力がクラッチ2を介して変速機3に入力し、変速動力がセンターディファレンシャル20の第1サンギヤ21に入力する。ここでセンターディファレンシャル20の各歯車諸元により基準トルク配分et が後輪偏重に設定されているため、このトルク配分でキャリヤ24と第2サンギヤ22とに分配して動力が出力される。このときセンタークラッチ27が解放されていると、上記基準トルク配分et で更に前後輪側に動力伝達して、4輪駆動でありながらFR的な動力性能になる。また、センターディファレンシャル20がフリーのため、前後輪の回転差を吸収しながら自由に旋回することが可能になる。また、制御ユニット50からのデューティ信号がソレノイド弁40に出力すると、油圧制御手段32によりセンタークラッチ27に差動制限トルクTcを生じる。このため、差動制限トルクTcに応じて第2サンギヤ22とキャリヤ24との間で更にバイパスしてトルク移動し、後輪偏重から直結時の重量配分に応じた前輪偏重のトルク配分に可変制御される。
【0043】
このとき、舵角δf、車速V、実ヨーレイトγの信号が制御ユニット50に入力して、車両の挙動が常に監視される。そして、高μ路では、目標ヨーレイト設定手段52で舵角δfと車速Vとにより設定される目標ヨーレイトγtに対して実ヨーレイトγが略一致することによって目標スタビリティファクタAtが弱アンダステアの一般的な値に設定され、常に弱アンダステアのステア特性が確保される。また、路面μ推定手段51で設定される路面μ推定値Eが1.0になる。そこで、前後トルク配分比算出手段55では前後トルク配分比αが、車速V、実ヨーレイトγ、入力トルクTiにより算出され、直進走行では、主として入力トルクTi、車体重量等による前後加速度推定値Gx’に基づきトルク配分されて操縦安定性を向上する。旋回走行では、主として車速Vと実ヨーレイトγによる横加速度推定値Gy’に基づきトルク配分されて旋回性を向上し、特に実ヨーレイトγのフィードバック制御を含むことで、外乱や制御誤差に強い制御となる。
【0044】
低μ路での旋回加速時に後輪寄りにトルク配分されていると、駆動力が大きくてタイヤ横力の小さくなった後輪が先に横すべりする。そして、タイヤグリップ限界で車両がスピンし始めると、路面μ推定手段51で舵角δf、車速V、実ヨーレイトγにより前後輪のコーナリングパワKf,Krがその挙動に対応して推定される。そして、推定されたコーナリングパワKf,Krと高μ路での前後輪のコーナリングパワとを前後輪毎に比較して路面μを算出し、この路面μの大きい方を選択することで、路面μ推定値Eが車両の挙動の状態にかかわず高い精度で設定される。
【0045】
また、目標ステア特性設定手段53では、実ヨーレイトγが目標ヨーレイトγtより大きくなって、車両スピンに応じた目標スタビリティファクタAtが設定される。そこで、前後トルク配分比算出手段55では、路面μ推定値E、目標スタビリティファクタAt等によりトルク配分比αを前輪寄りに算出して制御され、このため、後輪のタイヤ横力が増して車両スピンが防止される。このとき、実ヨーレイトγが目標ヨーレイトγtに一致するようにフィードバック制御されて、車両の挙動が弱アンダステアの良好なステア特性となる。
【0046】
図4において、本発明の第2の実施例として、路面μ推定手段51の他の実施例について説明する。先ず、制御原理について説明すると、適応制御理論により、横加速度偏差と実ヨーレイト偏差とで適応機構を構成することにより、前後輪のコーナリングパワを非線形域に拡張して推定できる。また、舵角、車速、推定される前後輪のコーナリングパワで適応観測器を構成することにより、線形領域の車両運動モデルをベースとしてヨーレイトと横加速度とを非線形域に拡張して演算できる。
【0047】
そこで、車速センサ43、舵角センサ42、ヨーレイトセンサ44、及び横加速度Gyを検出する横Gセンサ48を有し、これらセンサ信号が路面μ推定手段51に入力する。路面μ推定手段51は、舵角δf、車速V、推定される前後輪のコーナリングパワKf,Krが入力する演算手段(適応観測器)61を有し、これらパラメータにより線形領域の車両運動モデルに基づき車体のヨーレイトγnと横加速度Gynとを演算する。この演算手段61のヨーレイトγn、横加速度Gyn、センサ44,48等による実ヨーレイトγと実横加速度Gyとは、偏差演算手段62に入力し、演算されたヨーレイトγnから実ヨーレイトγを減算してヨーレイト偏差Δγを算出し、同様に演算された横加速度Gynから実横加速度Gyを減算して横加速度偏差ΔGを算出する。
【0048】
これら偏差Δγ、ΔGは、タイヤ特性制御手段(適応機構)63に入力し、両偏差Δγ,ΔGにより限界挙動での前後輪のコーナリングパワKf,Krを推定する。ここで、実横加速度Gyが減じてΔG>0の場合は、限界域での車両のドリフトアウトやスピンを判断して前後輪のコーナリングパワKf,Krを共に減じれば良い。ΔG<0の場合は、タックイン等を判断して前後輪のコーナリングパワKf,Krを共に増せば良い。実ヨーレイトγが減じてΔγ>0の場合は、ドリフトアウトを判断して前輪コーナリングパワKfは減じ、後輪コーナリングパワKrは増せば良い。実ヨーレイトγが増してΔγ<0の場合は、スピンを判断して前輪コーナリングパワKfは増し、後輪コーナリングパワKrは減じれば良い。両偏差Δγ,ΔGの正、負に対するコーナリングパワKf,Krの補正状態をまとめて示すと、以下の表1のようになる。
【0049】
【表1】
Figure 0003553539
【0050】
そこで、両偏差Δγ,ΔGにより表1を参照して前後輪のコーナリングパワKf,Krを定めることで、限界域での車両のドリフトアウトやスピンに応じた前後輪のコーナリングパワKf,Krが、図5のように精度良く推定される。尚、コーナリングパワKf,Krの値を増減する場合は、例えば前回の値に補正量を増減して積分動作により時々刻々定める。
【0051】
また、前後輪のコーナリングパワKf,Krは、路面μ推定値設定手段64に入力し、上記実施例の場合と同様に高μ路のものと比較して前後輪の路面μを推定する。更に前後輪の路面μの大きい方を選択して路面μ推定値Eを設定する。
【0052】
そこで、この実施例では、路面μ推定手段51の演算手段61で舵角δf、車速V、推定される前後輪のコーナリングパワKf,Krによりヨーレイトγn、横加速度Gynを演算し、偏差演算手段62で演算されたヨーレイトγn、横加速度Gynと実際の実ヨーレイトγ、実横加速度Gyの偏差Δγ,ΔGとを演算し、タイヤ特性制御手段63で両偏差Δγ,ΔGにより前後輪8,9のコーナリングパワKf,Krを推定することが、車両運動モデルに基づく適応制御理論の制御方法で行われる。そして、低μ路で車両がドリフトアウトやスピンを生じると、この限界挙動がヨーレイト偏差Δγと横加速度偏差ΔGとにより適確に検出され、前後輪のコーナリングパワKf,Krが前後輪の横すべり状態に対応して高い精度で推定される。このため種々の車両の限界挙動において、路面μ推定値Eが更に高い精度で設定される。
【0053】
図6において、本発明の第3の実施例として、左右後輪トルク配分制御装置のヨーレイトを用いた制御系について説明する。
先ず、制御原理について説明すると、高速旋回中のアクセルオフ時にリヤ差動制限トルクTdを増大すると、外輪の制動力が内輪の制動力より大きくなり、この制動力の差により車両を直進させようとするヨーモーメントMが発生して、タックイン防止に有効であることが知られている。一方、ドライバによる旋回走行時の車速Vと舵角δfとにより目標ヨーレイトγtを設定でき、この目標ヨーレイトγtと実ヨーレイトγとの偏差によりタックイン強さを判断できる。そこで、タックイン強さをスタビリティファクタの変化として数値化し、このスタビリティファクタの変化を打ち消すようなヨーモーメントMを発生するようにリヤ差動制限トルクTdを決定すれば良い。
【0054】
そこで、車速Vと舵角δfとにより目標ヨーレイトγtを設定する方法について説明する。
先ず、車両を図7のように前後2輪でモデル化し、自由度として実ヨーレイトγと車体すべり角βとをとる。また、車速Vを一定とすると、車速V、車体質量m、ヨーイング慣性モーメントI、前後輪のコーナリングフォースCf,Cr、重心から前後輪までの距離Lf,Lrにより、運動方程式は以下となる。
【数27】
Figure 0003553539
【0055】
ここで、コーナリングフォースがタイヤのスリップ角αf、αrに対して線形で扱える領域を考え、Cf=2Kf・αf、Cr=2Kr・αr(ただし、Kf、Krは前後輪の等価コーナリングパワ)を導入すると、以下となる。
【数28】
Figure 0003553539
以上の車両の基本的な運動方程式に基づいて、目標ヨーレイトγtが設定される。
【0056】
次いで、ヨーレイト偏差Δγによりスタビリティファクタを数値化してヨーモーメントM、リヤ差動制限トルクTdを算出する方法について説明する。
先ず、図7の2輪モデルについての運動方程式は、ヨーレイトγと車体すべり角βを変数とすると、車体質量m、車速V、前後輪のコーナリングフォースCf,Cr、ヨー慣性I、重心から前後輪までの距離Lf,Lr、リヤ差動制限によるヨーモーメントMにより、次のように表わされる。
【数29】
Figure 0003553539
【0057】
ここで、前後輪のコーナリングフォースCf,Crをタイヤの等価コーナリングパワKf,Kr、タイヤのすべり角αf,αrを用いて表すと、以下のようになる。
【数30】
Figure 0003553539
【0058】
式(3)を式を(1),(2)式に代入し、更にタイヤのすべり角αf,αrを前輪舵角δf、後輪舵角δrを用いて書き直して整理すると、以下の式になる。
【数31】
Figure 0003553539
【0059】
次に、車両が定常円旋回する場合の特性を説明する。この場合に車体すべり角β、ヨーレイトγは共に一定で、その変化量は零になる。従って、式(4),(5)は、以下のようになる。ただし、δr=0とする。
【数32】
Figure 0003553539
【0060】
ここで式(7)を次のように変形する。
【数33】
Figure 0003553539
【0061】
式(6),(8)をヨーレイトγについて解くと、次式になる。ただしMに付随するγは残す。また、Lはホイールベース(Lf+Lr)である。
【数34】
Figure 0003553539
【0062】
ここで、(9)式が物理的に意味を持つ(安定なヨーレイトγが存在する)には、以下の条件が必要である。
【数35】
Figure 0003553539
【0063】
ここで、リヤ差動制限制御車に拡張したスタビリティファクタA’を導入すると、以下になる。ただし、A:リヤ差動制限制御無しのスタビリティファクタである。
【数36】
Figure 0003553539
【0064】
従って、タックインによってヨーレイトγがΔγ(Δγ>0)増加する場合に、これをスタビリティファクタの変化ΔAとして表すと、以下になる。
【数37】
Figure 0003553539
【0065】
尚、Gγは前輪舵角δfに対するヨーレイトゲインであり、以下により算出される。
【数38】
Figure 0003553539
【0066】
よってタックインを打ち消すために必要なヨーモーメントMは、以下となる。
【数39】
Figure 0003553539
【0067】
更に、ヨーモーメントM、タイヤ径R、トレッドdによりリヤ差動制限トルクTdは、以下の式で算出される。
【数40】
Figure 0003553539
【0068】
そこで、上記制御原理に基づき、図6の制御系について説明する。車速センサ43、舵角センサ42、ヨーレイトセンサ44を有し、これらセンサ信号が制御ユニット70に入力する。制御ユニット70は、車速Vが入力するヨーレイトゲイン設定手段71を有し、車速Vの関数で予め設定される前輪舵角δfに対するヨーレイトゲインGγを、上述の式またはマップにより設定する。車速Vと舵角δfとは目標ヨーレイト演算手段72に入力し、上述の式による運動方程式に基づいて高μ路の走行状態に応じた目標ヨーレイトγtを演算する。目標ヨーレイトγtとセンサ44による実ヨーレイトγは偏差演算手段73に入力して、両者の偏差Δγを、Δγ=γ−γt(Δγ>0)により算出する。即ち、タックインを実ヨーレイトγの増加により検出し、且つ偏差Δγにより実際のタックイン強さを求める。
【0069】
ヨーレイトゲインGγとタックイン強さに応じたヨーレイト偏差Δγとは、ヨーモーメント演算手段74に入力し、上述の式による運動方程式に基づきヨーレイトゲインGγを用いて、ヨーレイト偏差Δγをステア特性のスタビリティファクタの変化ΔAとして数値化して求める。ここで、スタビリティファクタは予め一般的な弱アンダステアに設定されており、タックインによりヨーレイト偏差Δγを生じると、スタビリティファクタの変化ΔAはその偏差Δγに応じた負の値(オーバステア側)になり、このスタビリティファクタの変化ΔAを打ち消すのに必要なヨーモーメントMを演算する。
【0070】
ヨーモーメントMは、リヤ差動制限トルク演算手段75に入力し、上述の式によりヨーモーメントMに応じたリヤ差動制限トルクTdを算出する。そして、トルク信号をデューティ比変換手段76で所定のデューティ比Dに変換し、このデューティ信号をソレノイド弁40’に出力するように構成される。
【0071】
そこで、この実施例では、4輪駆動走行時にセンターディファレンシャル20とセンタークラッチ27とによりトルク配分して後輪側に伝達する動力は、リヤディファレンシャル11に入力する。そして、リヤクラッチ28が解放すると、リヤディファレンシャル11がフリーになって、その歯車諸元により駆動力またはアクセルオフ時の制動力が、左右後輪13L,13Rに等しく配分して伝達される。また、油圧制御手段32’によりリヤクラッチ28にリヤ差動制限トルクTdを生じると、差動制限すると共に左右後輪13L,13Rの配分が変化する。
【0072】
即ち、駆動の場合は、リヤ差動制限トルクTdに応じて高速輪から低速のグリップ車輪に有効にトルク移動する。一方、旋回時のアクセルオフの際に路面により外輪の方が内輪より高速で回される場合は、リヤ差動制限トルクTdに応じて外輪の方に多く制動力がかかるように配分される。
【0073】
このとき舵角δf、車速V、ヨーレイトγの信号が制御ユニット70に入力して、車両の挙動が監視される。そこで、直進や旋回時に車両の挙動が変化しない場合は、目標ヨーレイト演算手段72で舵角δfと車速Vとにより演算される目標ヨーレイトγtと実ヨーレイトγとが略一致してスタビリティファクタの変化も無く、リヤ差動制限トルクTdが零となる。一方、高速旋回時のアクセルオフの際に車両が内側に切れ込むように挙動変化してタックインし始めると、実ヨーレイトγが増加することで、偏差演算手段73で実ヨーレイトγと目標ヨーレイトγtの偏差Δγとによりタックイン強さが正確に検出される。そして、ヨーモーメント演算手段74でこの偏差Δγがスタビリティファクタの変化ΔAとして換算され、更にスタビリティファクタの変化ΔAを打ち消すようにヨーモーメントMが演算される。
【0074】
そして、リヤ差動制限トルク算出手段75でヨーモーメントMに応じたリヤ差動制限トルクTdを演算して、このトルクTdがリヤクラッチ28にかかる。そこで、高速旋回時のアクセルオフの際に、左右後輪13L,13Rではリヤ差動制限トルクTdにより外輪の制動力の方が内輪の制動力より大きくなるように配分され、この制動力の差により車両にタックインと逆方向のヨーモーメントMが発生して、タックイン現象が防止される。このとき、実ヨーレイトγが目標ヨーレイトγtと一致するようにフィードバック制御されるため、逆の強いアンダステアになることを回避して、旋回中のタックイン現象のみが適確に防止される。また、ヨーレイト偏差Δγをスタビリティファクタの変化ΔAに換算して制御することで、弱アンダステアのステア特性が確保される。
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によると、少なくとも舵角、車速、実ヨーレイトのパラメータと車両の運動方程式とによって車両の挙動が常に監視される。そして、たとえば、低μ路の旋回加速時にタイヤのグリップ力が限界に達して車両がスピン等を始める限界状態では、タイヤ横力が低下し非線形に変化するが、車両の運動方程式を低μ路の非線形領域まで拡張して解析することによって、この車両の限界挙動のタイヤ横力の低下を前後輪のコーナリングパワの低下として扱うことができる。そのため、少なくとも舵角、車速、実ヨーレイトの各種パラメータと車両の運動方程式とに基づき、前後輪のコーナリングパワを非線形域に拡張して推定し、この前後輪の推定コーナリングパワを高μ路のコーナリングパワと比較することにより前後輪毎の路面摩擦係数推定値を算出し、これらの路面摩擦係数推定値のうち大きい方を路面摩擦係数推定値の代表値として設定することによって路面摩擦係数をほぼ正確に推定することができる。そして、推定された路面摩擦係数に基づいて車両の限界挙動をスタビリティファクタにより数値化して車両の運動特性を正確に把握できるとともに、一定のスタビリティファクタを得るように前後輪トルク配分を制御することによって、車両スピン等を的確に防止して良好なステア特性を確保することができて走行安定性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の路面摩擦係数推定方法を適用した4輪駆動車のトルク配分制御装置を説明するためのブロック図である。
【図2】本発明を適応した4輪駆動車の駆動系および油圧制御を説明するための構成図である。
【図3】同例における車両の横運動の2輪モデルを示す図である。
【図4】同例とは異なる路面摩擦係数推定方法を適用した4輪駆動車のトルク配分制御装置における路面μ推定手段を説明するためのブロック図である。
【図5】同例の推定される前後輪のコーナリングパワの説明図である。
【図6】本発明に係る4輪駆動車のトルク配分制御装置における左右後輪トルク配分制御を説明するためのブロック図である。
【図7】同例の車両における旋回運動の2輪モデルを示す説明図である。
【符号の説明】
27 センタークラッチ
28 リヤクラッチ
32,32’ 油圧制御手段
42 舵角センサ
43 車速センサ
44 ヨーレイトセンサ
50 制御ユニット
51 路面μ推定手段
52 目標ヨーレイト設定手段
53 目標ステア特性設定手段
54 入力トルク推定手段
55 前後トルク配分比算出手段
56 センター差動制限トルク算出手段

Claims (3)

  1. 路面の摩擦係数を推定する路面摩擦係数推定方法であって、少なくとも舵角、車速、実ヨーレイトの各種パラメータと車両の運動方程式とに基づき、前後輪のコーナリングパワを非線形域に拡張して推定し、この前後輪の推定コーナリングパワと高μ路でのコーナリングパワとを比較して前後輪毎の路面摩擦係数推定値を算出し、これらの路面摩擦係数推定値のうち大きい方を路面摩擦係数推定値の代表値として設定することを特徴とする路面摩擦係数推定方法。
  2. 前記車両の運動方程式を状態変数表現で示し、パラメータ調整則を設定して適応制御理論を展開することによって推定されたパラメータと実車のパラメータとから前記前後輪の推定コーナリングパワが推定されることを特徴とする請求項1に記載の路面摩擦係数推定方法。
  3. 路面の摩擦係数を推定する路面摩擦係数推定方法であって、少なくとも舵角、車速、推定された前後輪のコーナリングパワと車両の線形領域の運動方程式とに基づき車体のヨーレイトと横加速度とを演算し、演算されたヨーレイトおよび実ヨーレイトの偏差と、演算された横加速度および実横加速度の偏差とを演算し、これらの両偏差に基づいて前後輪のコーナリングパワを非線形域まで拡張して推定し、この前後輪の推定コーナリングパワと高μ路でのコーナリングパワとを比較して前後輪毎の路面摩擦係数推定値を算出し、これらの路面摩擦係数推定値のうち大きい方を路面摩擦係数推定値の代表値として設定することを特徴とする路面摩擦係数推定方法。
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