JP3553224B2 - ポリオレフィン系高分子材料組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィン系高分子材料組成物に関し、詳しくは、可塑剤として2−位に分岐を有する長鎖エステル化合物を配合したポリオレフィン系高分子材料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体等のポリオレフィン系高分子材料は、機械的強度、伸び、電気的性質、耐水性、耐薬品性等に優れているばかりでなく、熱分解時あるいは焼却時に腐蝕性あるいは有毒性のガスを発生しない特徴を有しており、フィルム、シート、被覆材料あるいは各種成形材料として広く使用されている。
【0003】
特に、エチレン−プロピレン共重合体エラストマー、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体エラストマー等のポリオレフィン系エラストマーあるいはこれらのポリオレフィン系エラストマーをソフトセグメントとし、結晶性ポリオレフィン樹脂をハードセグメントとして用いたオレフィン系熱可塑性エラストマーは、上記のようなポリオレフィン系高分子材料の特性を保ったまま、反発弾性、衝撃強度等のエラストマー的性質を改良した材料として注目を集めている。
【0004】
しかしながら、ポリオレフィン系高分子材料は溶融流動性に劣り加工が困難であるばかりでなく、成形品とした場合にも成形品表面にフローマークが発生したり表面の光沢が劣る欠点があり、また、柔軟性に劣る欠点もあった。このため、ポリオレフィン系高分子材料に各種の可塑剤を配合することも提案されており、例えば、フタル酸エステル、アジピン酸エステル等のエステル系可塑剤、水素化ターフェニル、ナフテン系炭化水素油、パラフィン系炭化水素油、芳香族系炭化水素油などが提案されていたが、これらを用いた場合にはその改善効果は満足できるものではなく、また、表面へブリードしたり、臭気が大きい等の欠点もあった。また、特公昭61−46014号公報には、少なくとも3個のシクロヘキサン環を有する液状の脂肪族炭化水素を用いることにより、ブリード性や臭気を改善することも提案されているが、溶融流動性の改善効果はまだ不十分であり、更に改善することが望まれていた。
【0005】
従って、本発明の目的は、溶融流動性に優れ、且つ常温または低温時の柔軟性に優れたポリオレフィン系高分子材料組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、特定の化合物がポリオレフィン系高分子材料に対する相溶性に優れ、また、溶融流動性の改善効果が著しく大きいばかりでなく、色調に優れ、揮発性が小さく、臭気も極めて少ない利点を有しており、ポリオレフィン系高分子材料の可塑剤として好適であることを見出した。そして、該化合物をポリオレフィン系高分子材料に配合してなるポリオレフィン系高分子材料組成物が、上記目的を達成しうることを知見した。
【0007】
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、ポリオレフィン系高分子材料100重量部に、下記〔化2〕(前記〔化1〕と同じ)の一般式(I)で表される2−位に分岐を有する長鎖エステル化合物の少なくとも一種5〜60重量部を配合してなるポリオレフィン系高分子材料組成物を提供するものである。
【0008】
【化2】
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のポリオレフィン系高分子材料組成物について詳細に説明する。
【0010】
本発明に用いられるポリオレフィン系高分子材料としては、(1)結晶性ポリオレフィン:低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレンと少割合のエチレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1等の他のオレフィンとのランダムまたはブロック共重合体、ポリブテン−1、ブテン−1と少割合の他のオレフィンとの共重合体等、(2)オレフィン系エラストマー:エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ブタジエン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン(エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン等)共重合ゴム、ノルボルネンゴム等、および(3)オレフィン系熱可塑性エラストマー:上記(1)成分をハードセグメントとし上記(2)成分をソフトセグメントとした任意の比率の混合物、上記(1)成分と上記(2)成分との溶融混練時に有機過酸化物等の架橋剤を添加して部分的〜完全に架橋させたものおよびこの架橋物と上記(1)成分の任意の比率の混合物等があげられる。特に、本発明においては、上記ポリオレフィン系高分子材料として上記(2)オレフィン系エラストマーまたは上記(3)オレフィン系熱可塑性エラストマーを用いた場合に本発明の効果が顕著である。
【0011】
また、本発明に用いられる前記一般式(I)で表される2−位に分枝を有する長鎖エステル化合物(以下、「エステル化合物(I)」という)は、可塑剤として用いられるものである。上記エステル化合物(I)は、上記ポリオレフィン系高分子材料を成形する任意の段階で配合することができ、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマーに配合する場合には、結晶性ポリオレフィンとオレフィン系エラストマーを溶融混練してペレットを作成する際に同時に配合することができる。
【0012】
前記一般式(I)中、R1 およびR 2 で示されるアルキル基としては、例えば、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシルなどの直鎖または分岐のアルキル基があげられ、R3で示されるアルキル基としては、例えば、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘンエイコシル、ドコシルなどの直鎖または分岐のアルキル基があげられ、R3で示されるアルキレン基としては、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、トリデシレン、テトラデシレン、ペンタデシレン、ヘキサデシレン、ヘプタデシレン、オクタデシレン、ノナデシレン、エイコサデシレン、ヘンエイコサデシレン、ドコシレンなどの直鎖または分岐のアルキレン基があげられる。
【0013】
また、上記エステル化合物(I)のうち、モノエステル化合物は直鎖もしくは分岐のアルコールおよび直鎖もしくは分岐のカルボン酸から容易に得ることができるものであるが、少なくとも一方は特定の分岐を有したものが使用される。また、ジエステル化合物は特定の分岐を有するアルコールおよび直鎖もしくは分岐のジカルボン酸、または特定の分岐を有するカルボン酸および直鎖もしくは分岐のグリコールから容易に得ることができる。このとき上記の各原料成分(上記アルコール成分とカルボン酸成分、上記アルコール成分とジカルボン酸成分、または上記カルボン酸成分とグリコール成分)は、得られるエステル化合物の1分子中の総炭素原子数が20以上となるように、適宜選択した組み合わせで使用される。
【0014】
ここで、上記の特定の分岐を有するアルコールとしては、例えば、下記〔化3〕〜〔化12〕の化合物ALC−1〜10などがあげられる。
【0015】
【化3】
【0016】
【化4】
【0017】
【化5】
【0018】
【化6】
【0019】
【化7】
【0020】
【化8】
【0021】
【化9】
【0022】
【化10】
【0025】
また、上記の特定の分岐を有するカルボン酸としては、例えば、下記〔化13〕〜〔化19〕の化合物CA−1〜7などがあげられる。
【0026】
【化13】
【0027】
【化14】
【0028】
【化15】
【0029】
【化16】
【0030】
【化17】
【0031】
【化18】
【0032】
【化19】
【0033】
また、上記の直鎖もしくは分岐のアルコールとしては、例えば、プロパノール、ブタノール、ヘプタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノールなどの直鎖もしくは分岐のアルコールがあげられ、上記の直鎖あるいは分岐のカルボン酸としては、例えば、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ベヘニン酸などの直鎖もしくは分岐のカルボン酸があげられ、上記の直鎖もしくは分岐のグリコールとしては、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ヘプチレングリコール、オクチレングリコール、ノニレングリコール、デシレングリコール、ウンデシレングリコール、ドデシレングリコール、トリデシレングリコール、テトラデシレングリコール、ペンタデシレングリコール、ヘキサデシレングリコール、ヘプタデシレングリコール、オクタデシレングリコール、ノナデシレングリコール、エイコシレングリコール、ヘンエイコシレングリコール、ドコシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、トリブチレングリコールなどの直鎖もしくは分岐のグリコールがあげられ、上記の直鎖もしくは分岐のジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ヘンエイコサン二酸、ドコサン二酸などの直鎖もしくは分岐のジカルボン酸があげられる。
【0034】
上記エステル化合物(I)の配合量は、前記ポリオレフィン系高分子材料100重量部に対して5〜60重量部、好ましくは10〜50重量部である。上記エステル化合物(I)の配合量が5重量部未満であると、加工性の改善あるいは柔軟性に優れる等の可塑剤としての効果が充分に発揮されず、60重量部を超えると、ブリードを生じたり成形品の物性を損なうおそれがある。
【0035】
また、本発明のポリオレフィン系高分子材料組成物には、ポリオレフィン系高分子材料に配合される他の添加剤、例えば、フェノール系抗酸化剤、ホスファイト系またはホスホナイト系抗酸化剤、チオエーテル系抗酸化剤、ベンゾフェノン系またはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、造核剤、帯電防止剤、滑剤、加工助剤、酸中和剤、顔料、充填剤等を配合することができる。
【0036】
本発明のポリオレフィン系高分子材料組成物は、フィルム、シート、被覆材料または各種成形材料などとしての用途に用いられる。
【0037】
【実施例】
以下、実施例をもって本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではない。
【0038】
また、実施例で使用するエステル化合物を形成するアルコール成分およびカルボン酸成分を下記〔表1〕に示す。これら両者を各1モル(2モルと示したものは2モル)用いてエステル化することで容易にエステル化合物は得られる。なお、下記〔表1〕中の化合物ALCおよびCAは前述した構造の化合物である。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例1
ミラストマー 8030N(三井石油化学製ポリオレフィン系エラストマー)100重量部、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)・ペンタエリスリトールジホスファイト0.2重量部および試験化合物(下記〔表2〕参照)を15重量部を、185℃、20回転で8分間ロール混練し、約0.7mmのシートを作成し、さらにこれを180℃、250kg/cm2 で5分間加圧して1mmの貼り合わせプレスシートを作成した。
【0041】
このプレスシートについてJIS K 6301に従って硬度および100%モジュラスを測定した。また、室温および70℃で水張り状態で10日間放置して、ブリード状況(ブリード性)を下記評価基準に従って確認した。それらの結果を下記〔表2〕に示す。
【0042】
〔ブリード評価基準〕
○ : ブリードなし
△ : 若干ブリード見られる
× : ブリード大
【0043】
【表2】
【0044】
実施例2
エチレン含有量70モル%、沃素価15、ムーニー粘度ML1+4 (100℃)60のエチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体ゴム60重量部、MFR25のエチレン−プロピレンブロック共重合体(エチレン含有量8%)40重量部および試験化合物(下記〔表3〕参照)をバンバリーミキサーを用いて180℃で5分間混練した後、2,5−ジメチル−2,5−ビス(第三ブチルパーオキシ)ヘキサン1重量部を加え、210℃で押出加工してペレットを作成した。
【0045】
このペレットについてMFRを測定した。また、このペレットを用い、温度200℃、射出圧力(一次圧力1300Kg/cm2 、二次圧力700Kg/cm2 )の条件で射出成形し、厚さ3mmの試験片を作成し、フローマークの有無(目視)および光沢(60度グロス)を測定した。それらの結果を下記〔表3〕に示す。
【0046】
【表3】
【0047】
実施例3
エチレン含有量71モル%、沃素価0、ムーニー粘度ML1+4 (100℃)60のエチレン−プロピレン共重合体ゴム50重量部、MFR13のポリプロピレン40重量部、ムーニー粘度ML1+4 (100℃)45、不飽和度1モル%のブチルゴム10重量部および試験化合物(下記〔表4〕参照)30重量部をバンバリーミキサーを用いて180℃で5分間混練した後、2,5−ジメチル−2,5−ビス(第三ブチルパーオキシ)ヘキサン1重量部を加え、210℃で押出加工してペレットを作成した。
【0048】
このペレットについてMFRを測定した。また、このペレットを用い、温度200℃、射出圧力(一次圧力1300Kg/cm2 、二次圧力700Kg/cm2 )の条件で射出成形し、厚さ3mmの試験片を作成し、フローマークの有無(目視)および光沢(60度グロス)を測定した。それらの結果を下記〔表4〕に示す。
【0049】
【表4】
【0050】
実施例4
未安定化ポリプロピレン(ハーキュレス社製プロファックス6501)100重量部に、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン0.1重量部および試験化合物(下記〔表5〕参照)20重量部を添加し、充分混合した後、押出加工してペレットを作成した。
【0051】
このペレットについてMFRを測定し、また、このペレットを用い、温度200℃で射出成形し厚さ1mmの試験片を作成し、低温脆化温度を測定した。それらの結果を下記〔表5〕に示す。
【0052】
【表5】
【0053】
上記の各実施例の結果より、以下のことが判る。
前記エステル化合物(I)を配合した本発明のポリオレフィン系高分子材料組成物(実施例 1−1〜1−12,2−1〜2−12,3−1,3−2,4−1,4−2)は、溶融流動性が優れており、成形品にフローマークが全く認められないばかりでなく、成形品表面の平滑性も良好で優れた光沢を有している。また、前記エステル化合物(I)を配合した本発明のポリオレフィン系高分子材料組成物は、常温あるいは低温時の柔軟性にも優れ、低温脆化温度が著しく低下している。
【0054】
これに対し、可塑剤を使用しない場合や前記エステル化合物(I)以外の可塑剤を配合した場合(比較例 1−1〜1−3, 2−1〜2−4, 3−1〜3−3, 4−1,4−2)は、溶融流動性の改善効果が不十分であり、成形品にフローマークが認められ、また、表面光沢も劣るばかりでなく、常温あるいは低温時の柔軟性も不十分である。
【0055】
【発明の効果】
本発明のポリオレフィン系高分子材料組成物は、溶融流動性に優れ、且つ常温または低温時の柔軟性に優れたものである。
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