JP3552076B2 - ロボット制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、教示再生形の工業用ロボットに用いて好適なロボット制御装置及びその制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の工業用ロボット制御においては、消費電力を低減する手法として、ロボットの動作停止時に発生する熱エネルギーを電力に変換するものが提案されている。又、特開平5−138562号公報では、ロボットの静止状態において、その待機姿勢を重力トルクが小さい姿勢とすることによって消費電力を低減するロボット制御方法が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述の熱エネルギーを電力に変換するものにおいては、積極的な発電を行うために、モータアンプ部に各々発電機を設けなければならない。このため、コントローラが大形化する上に、コスト上昇にもつながるという問題点を有していた。
【0004】
一方、待機姿勢を変更するロボット制御方法では、待機姿勢を重力トルクが小さい姿勢とするために、ワークやその供給装置又はその他の周辺機器等の環境と干渉する場合がある。従って、かかる場合には特開平5−138562号公報に開示された方法は適用することができない。又、このような方法においては、ロボットが、教示者が教示した姿勢と異なる姿勢をとることにもなるという問題点を有していた。
【0005】
更に、一般の工業用ロボットに用いる減速機は、回転開始時の摩擦抵抗により起動トルクが非常に大きくなるという問題もある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、減速機の摩擦抵抗を逆に利用し、ロボットの動作停止時における待機姿勢を教示された姿勢に保ちつつ、そのときの保持トルクを減少させ、消費電力を低減してランニングコストを下げることができるロボット制御装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記問題点の解決のために、本発明を次のように構成した。
【0008】
請求項1記載の発明は、減速機を介して伝達されるモータのトルクによって可動部分を動作させるロボットを、教示データに基づいて制御するロボット制御方法において、前記ロボットに対して前記教示データに基づく第1の指令信号を出力する第1の指令信号出力手段と、前記第1の指令信号に基づく前記ロボットの動作中において、前記ロボットの動作が一定の待機姿勢を保持する待機状態か否かを判断する判断処理手段と、前記判断処理手段により待機状態であると判断されたときに、前記モータのトルクを、当該トルクと前記減速器の摩擦トルクとによって前記可動部分が静止状態に維持される範囲で減少させる第2の指令信号を出力する第2の指令信号出力手段とを有するロボット制御装置によるロボット制御方法であって、前記教示データの教示点へ前記ロボットを移動させる第1の過程と、前記ロボットが教示点へ移動してきたときに、当該教示点が待機姿勢をとるべき位置であるか否か判断する第2の過程と、前記第2の過程において待機姿勢をとるべき位置と判断された場合に、前記モータのトルクを一定方向に微小量ずつ変化させる第3の指令信号を出力する第3の過程と、前記第3の指令信号により、前記可動部分が静止状態から動作した直前の当該第3の指令信号を記憶する第4の過程と、前記モータのトルクを前記第3の過程における一定方向と逆の方向に微小量ずつ変化させる第4の指令信号を出力する第5の過程と、前記第4の指令信号により、前記可動部分が静止状態から動作した直前の当該第4の指令信号を記憶する第6の過程と、前記第4及び第6の過程において記憶した当該第4及び第5の指令信号のうち、前記モータに対して少ないトルクを指示する指令信号を当該教示点における前記第2の指令信号とする第7の過程とにより決定された前記第2の指令信号に基づいて前記ロボットを制御することを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のロボット制御方法において、前記ロボットを各教示点へ移動させて前記第2〜第7の過程を繰り返し、待機姿勢を保持するすべての教示点における前記第2の指令信号を決定して記憶し、前記教示データ及び記憶した前記第2の指令信号に基づいて前記ロボットを制御することを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記第1及び第2の指令信号は、前記モータに対する前記可動部分の動作速度を指示する速度指令信号である請求項1記載のロボット制御方法であって、前記判断処理手段により待機状態であると判断されたときに、前記可動部分の動作量に基づいて前記可動部分を静止状態に維持させるに必要な前記モータのトルクを求める第10の過程と、前記第10の過程において求めた前記必要な前記モータのトルクが0であった場合、前記可動部分を微小範囲で動作させて静止状態における前記モータのトルクを0とする前記微小範囲の動作における前記可動部分の動作速度を指示する前記第2の指令信号を出力し、前記可動部分を前記微小範囲で動作させる第11の過程と、前記第10の過程において求めた前記必要な前記モータのトルクが0でなかった場合、前記モータのトルクが減少して前記可動部分が動作する直前まで前記第2の指令信号を微小量ずつ変更する第12の過程とを有することを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
<構成>
A.全体構成
以下に図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の一実施形態によるロボット制御装置を適用した塗装ロボットシステムの構成を示す図である。
【0012】
図において、1はコントローラであり、ティーチングペンダント2からの指示データを受けると共に、ケーブル3を介してマニピュレータ4と動作信号及び電流の授受を行い、これによりマニピュレータ4を制御する。このコントローラ1は、マニピュレータ4の制御プログラム、教示データ、各種制御パラメータ等を記憶する記憶装置と、それらプログラム等と前記指示データとに基づいて各種演算処理を行う演算処理装置とを有しており、該演算処理装置による演算処理の結果に基づいてマニピュレータ4への各種動作指令信号及び電流の供給を行う。尚、ここにいう演算処理の具体的内容については、後述の動作説明において明らかにする。
【0013】
ティーチングペンダント2は、操作者がマニピュレータ4の動作を指示するための指示データを入力する入力装置であり、入力された指示データをコントローラ1へ出力する。又、ケーブル3は、コントローラ1とマニピュレータ4とを接続する部材であり、上記動作信号及び電流を伝達する。
【0014】
マニピュレータ4は、本塗装ロボットシステムにおける塗装ロボットの主要部であって、床面に固定された固定ベース5によって床面の所定位置に取り付けられており、図中の符合6〜17で示す旋回ベース、モータ、アーム等の構成要素によって構成されている。以下にこれらの各構成要素について説明する。尚、この図においては、各モータの出力軸の連結部分(マニピュレータ4の関節部分)に設けた減速機は省略することとし、減速機を設けた連結部分の構造の詳細については後述することとする。
【0015】
6は固定ベース5に取り付けられた第1モータであり、その出力軸が減速機を介して旋回ベース7と連結されている。この第1モータ6は、コントローラ1から供給される動作指令信号に基づいて駆動され、旋回ベース7を図中の矢印θ1方向に回動させる。
【0016】
又、旋回ベース7の図中上側部分には、第2モータ8が取り付けられており、この第2モータ8の出力軸が減速機を介して第1アーム9の一端と連結されている。そして、第2モータ8がコントローラ1から供給される動作指令信号に基づいて駆動され、第1アーム9が第2モータ8の回転軸を中心に図中の矢印θ2方向に回動移動するようになっている。
【0017】
一方、第1アーム9の先方端側には、第3モータ10が取り付けられており、この第3モータ10の出力軸が減速機を介して第2アーム11と連結されている。そして、第3モータ10がコントローラ1から供給される動作指令信号に基づいて駆動され、第2アーム11が第3モータ10の回転軸を中心に図中の矢印θ3方向に回動移動するようになっている。
【0018】
第2アーム11には、上記第3モータ10の回転軸との連結部側に手首モータケース12が取り付けられており、先方端側に第1手首ユニット13、第2手首ユニット14及び第3手首ユニット15が取り付けられている。
【0019】
ここで、手首モータケース12内には、第4、第5及び第6モータ(図示略)が収納されており、これら第4、第5、第6モータの各駆動力をそれぞれ第1手首ユニット13、第2手首ユニット14、第3手首ユニット15へ伝達する伝達機構(図示略)が第2アーム11の内部に設けられている。又、第1手首ユニット13、第2手首ユニット14、第3手首ユニット15は、それぞれ、図中の矢印θ4、θ5、θ6方向に回動自在な連結軸を介して順次取り付けられている。そして、上記同様、第4、第5、第6モータがコントローラ1から供給される動作指令信号に基づいて駆動され、これにより、第1手首ユニット13、第2手首ユニット14、第3手首ユニット15が、それぞれθ4、θ5、θ6方向に回動する。
【0020】
16は第3手首ユニット15に取り付けられたブラケットであり、このブラケット16を介して塗装ガン17が取り付けられている。塗装ガン17は、一定の方向へ一定の広がりをもって塗料を噴射する塗装用具であり、上記第1、第2アーム及び第1、第2、第3手首ユニットの回転角度θ1〜θ6に基づく所定位置及び所定方向にて塗料を噴射し、ワーク(図示略)を塗装する。
【0021】
このように、本塗装ロボットシステムにおいては、第1アーム9、第2アーム11、第1手首ユニット13、第2手首ユニット14及び第3手首ユニット15の回転角度θ1〜θ6によって、塗装ガン17の位置(x)とマニピュレータ4の姿勢(R)とが決定される。そして、これらの位置、姿勢及び回転角度等は、コントローラ1における演算処理により決定され、その決定に基づく第1〜第6モータへの動作指令信号によって制御される。
【0022】
B.関節部分の構造
ここで、減速機を設けたモータ出力軸の連結部分、すなわち、マニピュレータ4の関節部分の構造について説明する。図2にその関節部分の一例としてθ2方向に回動する第2モータ8と第1アーム9との関節部分の構造を示す。尚、この図はマニピュレータ4を図1中の矢印A方向から見たものに相当する。
【0023】
図2において、18は第2モータ8の出力軸である。そして、19が出力軸18に取り付けられた減速機である。この減速機19は、出力軸18の回転速度(角速度)を所定の比率で減速(例えば1/100に減速)して第1アーム9へ増幅した(例えば100倍とした)トルクを伝達し、これにより、第1アーム9の回転角度θ2を所定量変位させる。尚、マニピュレータ4の他の関節部分(θ1、θ3〜θ6方向に回動する関節部分)についても同様に減速機が設けられている。
【0024】
<保持トルク>
ここでは、まず、上記減速機の起動トルク及びランニングトルクについて、図3を参照して説明する。この図において、横軸のθ′は減速機を介して伝達される回転速度を、縦軸のτはそのときに必要とされるモータトルクを表している。
【0025】
このグラフに示すように、伝達回転速度θ′=0(静止時)におけるモータトルク(保持トルク)は、+τa〜−τaの間のどの値でもよい。ここで、τaは減速機の摩擦抵抗による摩擦トルクの大きさである。又、θ′がある所定の範囲+θ′c〜−θ′cを越えると、ランニングトルクτは、
【数1】
と表すことができる。
【0026】
続いて、上記マニピュレータ4の関節におけるアーム及び手首ユニットの保持トルクについて説明する。ここでは、図4に示すように、第1アーム9と第2アーム11が90°をなす状態(θ3=90°)において、第1アーム9の回転角度θ2が−20°(図中一点鎖線Ι)から+90°(一点鎖線Π)まで変化する場合の第2モータ8の保持トルクを例として説明する。尚、ここでの回転角度は、図中鉛直方向から左側への回転角度を+、右側への回転角度を−としている。
【0027】
図において、20は第1モータ6と旋回ベース7の連結部分の関節を、21は第2モータ8と第1アーム9の連結部分の関節を、22は第3モータ10と第2アーム11の連結部分の関節を、それぞれ表している。以下においては、便宜上、これらの関節をそれぞれの回転角度θ1、θ2、θ3に付した添え字に応じて第1関節、第2関節、第3関節と呼ぶこととする。又、上記第4〜第6モータと第1〜第3手首ユニットの連結部分についても同様に第4関節、第5関節、第6関節と呼ぶ。
【0028】
23は第2及び第3関節間のアームの質量中心を表す。ここで、質量中心23と第2関節との間の距離はg2とし、このアームの質量はm2、長さはl2とする。24は第3及び第4関節間のアームの質量中心を表す。ここで、この質量中心24のx,z方向における位置はそれぞれxm3,zm3、第3関節との間の距離はg3とし、このアームの質量はm3、長さはl3とする。25は第4関節前方のアームの質量中心を表す。この質量中心25のx,z方向における位置はそれぞれxm4,zm4とする。
【0029】
このように各距離や質量等を設定すると、マニピュレータ4の姿勢を保持するために必要な対重力トルクτgは、
【数2】
と表すことができる。尚、ここで、
【数3】
であり、G=−9.8m/s2(重力加速度)である。
【0030】
数2の対重力トルクτgをグラフに示すと、図5の実線▲1▼のようになる。そして、この実線▲1▼に上述の摩擦トルク+τa、−τa(図3参照)を加えると、図5の点線▲2▼、▲3▼に示すトルク曲線となる。すなわち、この2つの点線▲2▼及び▲3▼で囲まれた領域が、第1アーム9を静止させてマニピュレータ4の姿勢を保持するために第2モータ8に要求される保持トルクとなる。この保持トルクの最小値は、実線▲4▼で示すような曲線となる。
【0031】
ここで、モータによるマニピュレータの動作や姿勢の保持に必要な電流は、トルクτと比例関係にあるので、トルクτの絶対値又は実効値が小さいほど消費電力は少なくなる。従って、マニピュレータ4の静止時においては、第2モータ8を上述の実線▲4▼上のトルクにて駆動させることが消費電力を必要最小限に抑えることになる。
【0032】
尚、ここでは、回転角度θ2、θ3が所定の範囲内である場合の第2モータ8の保持トルクについて説明したが、他の回転角度範囲及び他のモータについても、上記同様の幾何学的解析によって、静止時における必要最小限の保持トルクを求めることができる。
【0033】
<動作>
A.教示データ及び目標位置
次に、本塗装ロボットシステムの動作について説明する。まず、動作説明の前提となるロボットの教示データについて説明する。通常、ロボットの教示データは、軌道の折り返し点又は代表点と、連続した複数の教示点間の補間条件と、移動速度とにより決定される。例えば、図6の軌道では、P0、P1、P2、…で示す点が教示点である。本塗装ロボットシステムにおいては、塗装ガン17の軌道上の点を教示者がティーチングペンダント2から入力し、これを教示点としてコントローラ1の記憶装置に記憶する。
【0034】
又、塗装ロボットの実際の動作においては、コントローラ2の演算処理装置によって、図6中にk、k+1、…で示したような目標位置を単位時間毎に算出して動作制御が行われる。ここにいう単位時間とは、離散時間形の制御系では現在位置等の信号と指令信号の授受が行われるサンプリングタイムがこれに当たり、本塗装ロボットシステムにおいては、コントローラ1の演算処理装置により、5msのサンプリングタイム毎に目標位置を算出することとする。
【0035】
又、以下においては、教示点のカウンタをi(i=0、1、2、…、n)、目標位置のカウンタをk(k=0、1、2、…、N)とし、教示点PiとPi+1との間の目標位置xrを5ms毎にコントローラ1の演算処理装置によって求めるものとする。尚、カウンタkの最大値Nは、教示点PiからPi+1までの移動時間をT、サンプリングタイムをTsとすると、N=T/Tsとなる。これは、教示点間を分割する目標位置の総数(以下、総分割数という)に相当する。
【0036】
B.第1動作モード
次に、本塗装ロボットシステムにおいて実際にモータの保持トルクを減少させる手法による動作について説明する。まず、第1の動作モードとして、コントローラ1が第1〜第6の各モータから各関節の現在位置回転角度θf(θf=[θf1,θf2,…,θf6]T)及び各モータのトルクτf(τf=[τf1,τf2,…,τf6]T)の信号を受けると共に、コントローラ1が第1〜第6の各モータへ回転速度指令θr′(θr′=[θr1′,θr2′,…,θr6′]T)及びトルク指令τr(τr=[τr1,τr2,…,τr6]T)の指令信号を出力する場合について説明する。
【0037】
(1)動作制御の態様
図7に第1動作モードにおける塗装ロボットの制御ブロック図を示す。この図に示すように、本動作モードにおいては、目標位置回転角度θr(θr=[θr1,θr2,…,θr6]T)に現在位置回転角度θf(θf=[θf1,θf2,…,θf6]T)を、目標トルク指令τr(τr=[τr1,τr2,…,τr6]T)に現在モータトルクτfを、それぞれフィードバックし、以下のように各モータへの動作指令信号及び電流値を算出する。
【0038】
まず、現在位置回転角度θfの目標位置回転角度θrからの偏差に基づき、位置補償器Gp(z)において目標位置回転角度θrに各関節を保持するような回転速度指令θr′を算出する。そして、この回転速度指令θr′からの現在回転速度θf′の偏差により、各関節を回転速度θr′で回転させるために各モータへ供給すべき電流値を速度補償器Gv(z)にて算出し、モータ及びアーム等からなる制御対象へ出力する。
【0039】
一方、図中のトルク補償器は、必要に応じて現在モータトルクτfの目標トルクτrからの偏差に基づく電流指令を算出し、各モータへ出力する。尚、積分演算器z/z−1では、各モータからの回転速度θf′(θf′=[θf1′,θf2′,…,θf6′]T)が積分され、現在位置回転角度θfとしてフィードバックされる。本動作モードにおいてはこのようにして塗装ロボットの動作を制御する。
【0040】
(2)目標保持トルクの算出
ここでは、教示データに対する待機時の待機姿勢における目標トルクτrを算出する処理手法について説明する。ここで、待機姿勢とは、所定時間、一定姿勢を保持することをいい、該所定時間中位置フィードバック値に変化がない状態である。以下、かかる待機姿勢を保持するに必要な最小限の目標トルクを目標保持トルクといい、符合τgr(τgr=[τgr1,τgr2,…,τgr6]T)で表す。この目標保持トルクτgrを求める処理は、教示者により与えられた教示データに基づき、以下に述べるように教示点間の移動及び待機時における待機姿勢を上記制御態様によって制御しつつ行う。
【0041】
図8に目標保持トルクτgrの算出処理方法の手順を示す。図示のように、まず、コントローラ1の演算処理装置にて記憶装置内の教示データの読み込みを行い(ステップS1)、教示点総数nを決定する(ステップS2)。そして、初期位置(P0)から最終教示点(Pn)までの各教示点Pi(i=0、1、2、…、n)について、順次ステップS3以下に示す手順による処理を行う。
【0042】
ステップS3では、教示点Piの位置及び該位置での姿勢へ塗装ロボットを移動させる。尚、この移動は、5msのサンプリングタイム毎に目標位置xrを算出して上記制御態様により行われるが、詳細は目標保持トルクτgr算出後の確定した動作制御(後述の(3))において説明する。そして、教示点Piにおいて塗装ロボットの姿勢変化が一定時間ない場合には、ステップS4で塗装ロボットが待機する位置であると判断し、ステップS5へ進む。
【0043】
ステップS5では、各関節の目標位置回転角度を微小量ずつ変化させることにより、塗装ロボットの姿勢を静止状態からゆっくりと前後(正方向及び負方向)に動作させ、このときの動作する直前のモータトルクにより、姿勢保持トルクτa+(τa+=[τa1+,τa2+,…,τa6+]T)及びτa−(τa−=[τa1−,τa2−,…,τa6−]T)を求める。この姿勢保持トルクτa+、τa−は、正方向、負方向についての姿勢を保持し得る限界のモータトルクである。
【0044】
ここで、上記姿勢保持トルクτa+及びτa−を求める処理について、図9を参照して詳述する。尚、図9においては、第1、第2、…、第6の関節番号をj(j=1、2、…、6)で表す。
【0045】
まず、ステップS10で教示点Piの位置及び該位置での姿勢を目標値xr0、Rr0とし、この目標値により各関節の目標位置回転角度θr1,θr2,…,θr6を算出する(ステップS11)。そして、第1〜第6のぞれぞれの関節について、順次、ステップS12〜S15の処理を行う。
【0046】
初めに、第j関節が正方向へ動作し始めるまで(θf>0となるまで)目標位置回転角度θrjを微小量dθjずつ増加させ(ステップS12)、動作直前の保持トルクτfjを正方向の姿勢保持トルクτaj+として記憶する(ステップS13)。
【0047】
次いで、同関節が負方向へ動作し始めるまで(θf<0となるまで)目標位置回転角度θrjを微小量dθjずつ減少させ(ステップS14)、動作直前の保持トルクτfjを負方向の姿勢保持トルクτaj−として記憶する(ステップS15)。このようにして、第1〜第6関節それぞれについて正方向及び負方向の姿勢保持トルクτa+及びτa−を求め、図8のステップS6へと進む。
【0048】
次に、上述のようにして求めた姿勢保持トルクτa+及びτa−の大きさについてステップS6で大小比較を行う。つまり、各関節における正方向と負方向の姿勢保持トルクの絶対値|τaj+|及び|τaj−|を比較するのである。そして、|τaj+|の方が大きい場合には、この点(教示点Pi)における第j関節の目標保持トルクτgr(i)jをτaj−とし(ステップS7)、|τaj−|の方が大きい場合には、目標保持トルクτgr(i)jをτaj+とする(ステップS8)。ここに、目標保持トルクτgr(i)jの添え字(i)は、教示点Piにおける目標保持トルクであることを表す。このように、教示点Piにおける目標保持トルクτgr(i)([τgr(i)1,τgr(i)2,…,τgr(i)6]T)を求める。
【0049】
尚、ステップS4において、教示点Piで塗装ロボットの姿勢が変化する場合には、塗装ロボットが待機する場合でないと判断し、ステップS5以降の処理は行わない。
【0050】
以上述べた処理により、塗装ロボットが待機するすべての教示点における目標保持トルクτgrを求める。尚、上述の処理は、所定時間(例えば100時間)毎に行い、適宜τgr(i)の値を更新する。これにより、部材の摩耗による摩擦トルク(τa)の減少に対しての補正をする。
【0051】
(3)目標保持トルクτgrを取り入れた動作制御
次に、上記目標保持トルクτgrを取り入れた本動作モードにおける動作制御方法について、図10を参照して説明する。尚、この図は、上記5msのサンプリングタイム毎に行われる動作制御の処理手順を示したものである。
【0052】
まず、ステップS20で教示点間を分割した目標位置のカウンタkを1増加させ、ステップS21へ進む。そしてこのときにkの値が上記教示点間の総分割数Nと等しくなったとすると、ステップS22へ進む。この場合は、既に通過した教示点Piの次の教示点Pi+1にマニピュレータ4が移動してきた場合である。
【0053】
ステップS22では、教示点に対応するカウンタiを1増加させる。次いで、ステップS23で現在通過中の教示点Pi及び次の教示点Pi+1の目標位置と補間情報とにより、教示点Pi、Pi+1の2点間を結ぶ目標位置xrの補間式を決定する。この補間式は通常時刻tの多項式で
【数4】
のように表される。
【0054】
更に、ステップS23では、次の教示点Pi+1までの移動時間Tを本制御系における単位時間、すなわち、サンプリングタイムTsで除し、その値を新たな総分割数Nとする。又、ステップS24でkに0を代入し、教示点間の目標位置のカウンタkをリセットする。
【0055】
一方、ステップS21でkの値が未だ総分割数Nに満たなかったとすると、ステップS22〜S24の処理は行わず、ステップS25へ進む。これは、既に通過した教示点Piと次の教示点Pi+1の間をマニピュレータ4が移動している場合である。この場合には、ステップS25で現在通過中の教示点間の補間式において時刻tをk/N × Tとして目標位置xrを算出する。
【0056】
続いて、ステップS26で塗装ロボットを目標位置及び該位置での姿勢へ移動する。ここでは、ステップS22〜S24の処理を経た場合には、塗装ガン17を教示点Piの位置として姿勢を保持し、ステップS25の処理を経た場合には、補間式から導かれる目標位置及び該位置での姿勢に塗装ガン17の位置及び塗装ロボットの姿勢を移動させる。
【0057】
次に、ステップS27でkの値が0であるか否か、すなわち、マニピュレータ4が教示点上にあるか否かを判断する。そして、kの値が0であった場合、その教示点が待機姿勢をとるべき位置であるか否かを判断し(ステップS28)、待機姿勢をとるべき位置であった場合にはステップS29へ進む。
【0058】
ステップS29では、各関節における各モータのトルクが、上述の求めた目標保持トルクτgrのうち、当該教示点Piにおける目標保持トルクτgr(i)となるように、上記トルク補償器によってトルク指令τrを変更し、すべての関節における保持トルクを必要最小限の保持トルクとする。これにより、最小限の消費電力によって当該教示点Piでの待機姿勢を保持するようにする。尚、kの値が0でなかった場合は、ステップS28、S29の処理は行わない。
【0059】
このようにして1サンプリングタイムの動作制御が終了する。以後においては、サンプリングタイムTs毎に上記ステップS20以下の処理手順による動作制御を繰り返し行い、これにより、塗装ロボットの動作制御を行う。
【0060】
C.第2動作モード
次に、第2の動作モードとして、コントローラ1が第1〜第6の各モータから各関節の回転角度θfのみのフィードバック信号を受けると共に、コントローラ1が第1〜第6の各モータへ回転速度指令θr′のみの指令信号を出力する場合について説明する。
【0061】
(1)動作制御の態様
図11に第2動作モードにおける塗装ロボットの制御ブロック図を示す。この図に示すように、本動作モードにおいても、目標位置回転角度θrに現在位置回転角度θfをフィードバックし、位置補償器Gp(z)及び速度補償器Gv(z)によって上記第1動作モード同様に各モータへの供給電流値を算出して出力する。そして、本動作モード特有の制御態様は、かかる第1動作モード同様の制御に加え、塗装ロボットが待機姿勢にあるときにのみ、図中の点線で囲まれた部分の制御機構f(θr,θf)により算出された回転角度を指令信号に加えて制御を行うところにある。
【0062】
(2)第2動作モードにおける動作制御
図12に第2動作モードにおける動作制御方法の処理手順を示す。この図は、図10同様、サンプリングタイム毎に行われる動作制御の処理手順を示したものである。
【0063】
まず、図12のステップS30で目標位置のカウンタkを1増加させ、ステップS31へ進み、このときにkの値が総分割数Nと等しくなっていたとすると、ステップS32へ進む。これは、上記ステップS20〜S22の場合同様、既に通過した教示点Piの次の教示点Pi+1にマニピュレータ4が移動してきた場合である。
【0064】
ステップS32では、教示点に対応するカウンタiを1増加させる。次いで、現在通過中の教示点Piと次の教示点Pi+1との位置関係を判断し(ステップS33)、両教示点の位置が異なる場合にはステップS34へ進む。そして、ステップS34では、教示点Pi、Pi+1の位置と補間情報とにより、両教示点を結ぶ目標位置xrの補間式を決定する。尚、この補間式は、上記数4同様、時刻tの多項式で表される。
【0065】
一方、ステップS33で教示点Pi、Pi+1の位置が同一であった場合には、この位置で姿勢を保持するものと判断し(ステップS35)、ステップS36へ進んでkに0を代入してカウンタkをリセットする。
【0066】
続いて、ステップS37でカウンタkに対応した塗装ロボットの目標位置xr及び姿勢Rrを算出する。ここでの目標位置及び姿勢の算出は、ステップS34の処理を経た場合(教示点間移動中の場合)には上記補間式に基づいて算出し、ステップS35の処理を経た場合(当該教示点で姿勢保持の場合)には教示点Piを目標位置とする。そして、ステップS38で、塗装ガン17の位置が算出した目標位置となるように塗装ロボットの姿勢を移動させる。
【0067】
次に、現在の塗装ロボットが待機姿勢にある場合、すなわち、上記ステップS33からS35の処理を行い、姿勢を保持することとされている場合には、ステップS39からS40へと進み、以下に述べる処理によって待機姿勢を保持するようにする。尚、ここでの処理は、上記制御機構f(θr,θf)によるものに相当する。
【0068】
まず、ステップS40において、現在の塗装ガン17の位置xf及びマニピュレータ4の姿勢Rfにより各関節の回転角度θ1〜θ6を算出し、それらの算出した値に基づき、上記数2及び数3により、各関節(j)の対重力トルクτgjを算出する。次いで、それぞれの関節について、必要とされるモータトルクτjが0であるか否か、すなわち、対重力トルクτgjが減速器の摩擦トルクの範囲内にあるか否かを判断し(ステップS41)、その判断結果に応じた以下の処理へと進む(ステップS42又はS43)。
【0069】
ここで、第j関節のモータトルクτjが0であったとすると、ステップS42の処理Aが行われる。図13に処理Aの手順を示す。この図に示すように、処理Aにおいては、まず、1サンプリングタイム前の目標位置回転角度(θrj(k−1)とする)と現在の目標位置回転角度(θrj(k)とする)から塗装ロボットの動作制動方向を求める。この演算処理では、目標位置回転角度θrj(k−1)からθrj(k)を減算し、それによって得られた値の符合を変数signとして記憶する(ステップS50)。ここに、signの符合は、塗装ロボットが停止するための角加速度の方向(制動方向)となる。尚、1サンプリングタイム前の目標位置回転角度θrj(k−1)は、例えば、コントローラ2の記憶装置の1つのアドレスに順次上書きする形で記憶する等、適宜参照できるようにしておき、上記演算処理において使用する。
【0070】
次に、ステップS51へ進み、目標位置回転角度をθrj−signΔθrjとして制動方向を微小量逆方向に戻し、第j関節の回転角度を制動方向と反対の方向へ微小角度Δθrjだけ戻してステップS52へ進む。
【0071】
ステップS52では、ステップS51で回転角度を変化させた状態から待機姿勢における真の目標位置回転角度まで第j関節を移動させる場合の摩擦トルク(τa)を含まないモータトルクτjを算出し、その算出したモータトルク値により、制動時の角加速度、角速度(回転速度)を算出する。そして、ステップS53で該角速度を積分して目標位置回転角度の時間的変化を算出し、この算出した目標位置回転角度に従って待機姿勢までの移動を行う(ステップS54)。これにより、真の待機姿勢へ移動してきた状態におけるモータトルクτjを0とする。
【0072】
一方、図12のステップS41において、第j関節のモータトルクτjが0でなかったとすると、ステップS43の処理Bが行われる。図14に処理Bの手順を示す。この図に示すように、処理Bにおいては、まず、重力トルクの符合(0−τgjの符合)を求め、変数signとして記憶する(ステップS60)。
【0073】
次いで、ステップS61で目標位置回転角度θrj(k−1)からθrj(k)を減算した値の符合がsignと同一か否か判断する。すなわち、重力トルクと制動方向とが同じかどうかを判断するのである。そして、両者が異なる場合にはステップS62へ進み、制御系の積分演算器による積分演算を省くこととする。
【0074】
ステップS62で積分演算を省くこととしたあとは、現在位置回転角度が変動するまで(ステップS63)、目標位置角度θrjを重力トルクと反対方向に微小量Δθjずつ変化させる(ステップS64)。これにより、徐々にモータトルクτを減少させ、第j関節の回転角度を保つことができる最小のモータトルクで待機姿勢を保持するようにする。尚、このようなトルク制御を行ったときには、モータトルクτが0を越えて変化する場合もあるので、モータトルクτをモニタリングしてτ=0となったときに処理Bを終了するものとしてもよい。
【0075】
このようにして1サンプリングタイムの動作制御が終了する。以後においては、サンプリングタイムTs毎に上記同様の処理手順による動作制御が繰り返し行われ、塗装ロボットの動作制御がなされる。
【0076】
C.第3動作モード
次に、第3の動作モードとして、上記第2動作モード同様、コントローラ1が各関節の回転角度θfのみのフィードバック信号を受け、回転速度指令θr′のみの指令信号を出力する場合(図11の制御ブロック図参照)において、待機姿勢の目標位置回転角度を微小に変化させて保持トルクを少なくする動作モードについて説明する。
【0077】
(1)目標位置回転角度の決定
ここでは、待機時の回転速度指令を微小に変化させて保持トルクを減少させる場合の目標位置回転角度の決定方法について説明する。ここで決定される目標位置回転角度は、教示データに基づく塗装ロボットの姿勢に対し、微小量ずれた目標姿勢における目標位置回転角度となる。以下、このずれた目標位置回転角度を符合θrpaus(θrpaus=[θrpaus1,θrpaus2,…,θrpaus6]T)で表す。
【0078】
図15に目標位置回転角度決定の処理手順を示す。図示のように、まず、コントローラ1の演算処理装置にて記憶装置内の教示データの読み込みを行い(ステップS70)、教示点総数nを決定する(ステップS71)。そして、初期位置(P0)から最終教示点(Pn)までの各教示点Piについて、順次ステップS72以下に示す手順による処理を行う。尚、これらの処理の流れは、上記第1動作モードにおける目標保持トルクの算出と同様である。
【0079】
ステップS72では、教示点Piの位置及び該位置での姿勢へ塗装ロボットを移動させる。尚、この移動は、サンプリングタイム毎に目標位置を算出して行われるが、詳細は目標位置回転角度θr決定後の確定した動作制御(後述の(2))において説明する。そして、教示点Piにおいて塗装ロボットの姿勢変化が一定時間ない場合には、ステップS73で塗装ロボットが待機する位置であると判断し、ステップS74へ進む。
【0080】
ステップS74では、各関節の目標位置回転角度を微小量ずつ変化させることにより、塗装ロボットの姿勢を静止状態からゆっくりと前後に動作させ、このときの動作を開始する直前までの起動時間T+(正方向)及びT−(負方向)を求める。
【0081】
ここで、この起動時間T+及びT−を求める処理について、図16を参照して詳述する。尚、図16においては、第1、第2、…、第6の関節番号をj(j=1、2、…、6)で表し、時間計測のためのカウンタをCとする。
【0082】
まず、ステップS80で教示点Piの位置及び該位置での姿勢を目標値xr0、Rr0とし、この目標値により各関節の目標位置回転角度θr1,θr2,…,θr6を算出する(ステップS81)。そして、第1〜第6のぞれぞれの関節について、順次、ステップS82〜S92の処理を行い、正方向及び負方向の起動時間Tj+及びTj−を求める。尚、ここでの処理においては、上記積分演算器による積分演算を行わないものとする。
【0083】
初めに、第j関節が正方向へ動作し始めるまで目標位置回転角度θrjを微小量dθjずつ増加させる(ステップS82)。その後、第j関節を、動作した直前の姿勢に保持すると共に、カウンタCに0を代入してリセットする(ステップS83)。
【0084】
次に、同関節が負方向へ動作し始めるまで目標位置回転角度θrjを微小量dθjずつ減少させ(ステップS84)、減少の度にカウンタCを1増加させる(ステップS85)。そして、該関節が動作したときのカウンタCの値を負方向の起動時間Tj−として記憶し、その後、カウンタCを0としてリセットする(ステップS86)。又、この動作直前(微小量変化ステップにおける1ステップ前)の目標位置回転角度をθrj−とする。
【0085】
続いて、該関節が上記負方向への動作直前の状態から正方向へ動作し始めるまで目標位置回転角度θrjを微小量dθjずつ増加させ(ステップS87)、増加の度にカウンタCを1増加させる(ステップS88)。そして、該関節が動作したときのカウンタCの値を正方向の起動時間Tj+として記憶する(ステップS89)。又、この動作直前の目標位置回転角度をθrj+とする。このようにして、第1〜第6関節それぞれについて正方向及び負方向の起動時間T+及びT−を求め、図15のステップS75へと進む。
【0086】
次に、上述のようにして求めた起動時間Tj+及びTj−の大きさについてステップS75で大小比較を行う。そして、起動時間Tj+の方が大きい場合には、この点(教示点Pi)における第j関節の目標位置回転角度θrpaus(i)jを負方向動作直前の回転角度θrj−とし(ステップS76)、起動時間Tj−の方が大きい場合には、目標位置回転角度θrpaus(i)jを正方向動作直前のθrj+とし(ステップS77)、両起動時間が等しい場合には、目標位置回転角度θrpaus(i)jを教示データに基づく目標位置回転角度θr(i)jとする(ステップS78)。ここに、目標位置回転角度θrpaus(i)jの添え時(i)は、教示点Piにおける目標位置回転角度であることを表す。このように、教示点Piにおける目標位置回転角度θrpaus(i)が求まる。
【0087】
尚、ステップS73において、教示点Piで塗装ロボットの姿勢が変化する場合には、塗装ロボットが待機する場合でないと判断し、ステップS74以降の処理は行わない。以上述べた処理により、塗装ロボットが待機するすべての教示点における目標位置回転角度θrpausを求める。
【0088】
(2)目標位置回転角度θrpausを取り入れた動作制御
次に、上記目標位置回転角度θrpausを取り入れた本動作モードにおける動作制御方法について、図17を参照して説明する。尚、この図は、上記サンプリングタイム毎に行われる動作制御の処理手順を示したものであり、該処理の流れは、上記第1動作モードにおける動作制御と同様なものとなっている。
【0089】
まず、ステップS90で教示点間を分割した目標位置のカウンタkを1増加させ、ステップS91へ進み、このときのkの値が上記総分割数Nと等しくなっていたとすると、ステップS92へ進む。この場合は、次の教示点Pi+1にマニピュレータ4が移動してきた場合である。
【0090】
ステップS92では、教示点に対応するカウンタiを1増加させると共に、現在通過中の教示点Pi及び次の教示点Pi+1の目標位置と補間情報とにより、教示点Pi、Pi+1の2点間を結ぶ目標位置xrの補間式を決定する。この補間式は上記数4同様、時刻tの多項式で表される。又、ステップS93でkに0を代入し、教示点間の目標位置のカウンタkをリセットする。
【0091】
一方、ステップS91でkの値が未だ総分割数Nに満たなかったとすると、ステップS92及びS93の処理は行わず、ステップS94へ進む。これは、既に通過した教示点Piと次の教示点Pi+1の間をマニピュレータ4が移動している場合である。この場合には、ステップS94で現在通過中の教示点間の補間式により、目標位置xrを算出する。
【0092】
続いて、ステップS95で塗装ロボットを目標位置及び該位置での姿勢へ移動する。ここでは、ステップS92、S93の処理を経た場合には、塗装ガン17を教示点Piの位置として姿勢を保持し、ステップS94の処理を経た場合には、補間式から導かれる目標位置及び該位置での姿勢に塗装ガン17の位置及び塗装ロボットの姿勢を移動させる。
【0093】
次に、ステップS96でkの値が0であるか否か、すなわち、マニピュレータ4が教示点上にあるか否かを判断する。そして、kの値が0であった場合、その教示点が待機姿勢をとるべき位置であるか否かを判断し(ステップS97)、待機姿勢をとるべき位置であった場合にはステップS98へ進む。
【0094】
ステップS98では、各関節のモータに対し、上述の求めた目標位置回転角度θrpausのうち、当該教示点Piにおける目標位置回転角度θrpaus(i)に基づく回転速度指令を出力するようにする。すなわち、制御系における積分演算器を取り除いた後で各関節の目標位置回転角度θrを上記θrpaus(i)とし、塗装ロボットの姿勢を微小速度で移動させるのである。これにより、最小限の消費電力によって当該教示点Piでの待機姿勢を保持するようにする。尚、kの値が0でなかった場合は、上記ステップS97、S98の処理は行わない。
【0095】
このようにして1サンプリングタイムの動作制御が終了する。以後においては、サンプリングタイムTs毎に上記ステップS90以下の処理手順による動作制御を繰り返し行い、これにより、塗装ロボットの動作制御を行う。
【0096】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、判断処理手段により待機状態であると判断されたときに、可動部分における摩擦抵抗を利用してモータのトルクを減少させることとしたので、教示データに基づくロボットの位置及び姿勢を変えることなく、当該待機状態を保持するモータのトルクを減少させることができる。これにより、消費電力を少なくすることができ、ロボットを動作させて各種処理を行うときのランニングコストを低減することができるという効果が得られる。
【0097】
特に、請求項2又は4記載の発明によれば、実際にロボットを動作させた時の必要かつ最小限のモータトルクを求めて待機姿勢の制御がなされるので、低減可能な極限における消費電力、ランニングコストによってロボットの制御を行うことができる。
【0098】
又、本発明によれば、待機姿勢の保持時に姿勢が変化しないことから、ロボットの動作環境に制約がある場合にあっても干渉を生ずることなく適用することができる。これにより、低コストで、かつ、各種動作環境に応じた柔軟なロボット制御が可能となるという効果が得られる。ここで、請求項3記載の発明によれば、各種動作環境に応じて、その動作範囲全体についての第2の指令信号が記憶されて待機状態の制御が行われる。
【0099】
更に、本発明によるロボット制御は、特別な装置を新たに必要とせずに実現することができるので、装置自体の費用が増加することはない。
【0100】
加えて、本発明によれば、消費電力が低減することから発熱量も少なくなり、モータの温度上昇を抑制することができるので、防爆性が向上するという効果が得られる。そしてこれと同時に、モータへの電流供給を担う制御装置内のアンプの温度上昇も抑制することができるので、制御装置のCPUの誤動作を防止すると共に、ハードウェア部品の耐久性を向上させるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態によるロボット制御装置を適用した塗装ロボットシステムの構成を示す図である。
【図2】第2モータ8と第1アーム9との関節部分の構造を示す図である。
【図3】減速機を介して伝達される回転速度θ′とモータトルクτとの関係を示す図である。
【図4】第1アーム9と第2アーム11が90°をなす状態で第1アーム9が−20°〜+90°まで変化する場合を示す図である。
【図5】回転角度θ2と対重力トルクτg(保持トルク)との関係を示す図である。
【図6】目標位置の軌道及び教示点の一例を示す図である。
【図7】第1動作モードにおける塗装ロボットの制御ブロック図である。
【図8】第1動作モードにおける目標保持トルクτgrの算出処理手順を示す図である。
【図9】図8のステップS5における姿勢保持トルクτa+及びτa−を求める処理手順を示す図である。
【図10】第1動作モードにおける目標保持トルクτgrを取り入れた動作制御方法を示す図である。
【図11】第2及び第3動作モードにおける塗装ロボットの制御ブロック図である。
【図12】第2動作モードにおける動作制御方法を示す図である。
【図13】図12のステップS42における処理Aを示す図である。
【図14】図12のステップS43における処理Bを示す図である。
【図15】第3動作モードにおける微小量ずれた目標位置回転角度の決定処理手順を示す図である。
【図16】図15のステップS74における起動時間T+及びT−を求める処理手順を示す図である。
【図17】第3動作モードにおける目標位置回転角度θrpausを取り入れた動作制御方法を示す図である。
【符号の説明】
1 コントローラ
2 ティーチングペンダント
4 マニピュレータ
6 第1モータ
7 旋回ベース
8 第2モータ
9 第1アーム
10 第3モータ
11 第2アーム
12 モータケース
13 第1手首ユニット
14 第2手首ユニット
15 第3手首ユニット
17 塗装ガン
Claims (3)
- 減速機を介して伝達されるモータのトルクによって可動部分を動作させるロボットを、教示データに基づいて制御するロボット制御方法において、前記ロボットに対して前記教示データに基づく第1の指令信号を出力する第1の指令信号出力手段と、前記第1の指令信号に基づく前記ロボットの動作中において、前記ロボットの動作が一定の待機姿勢を保持する待機状態か否かを判断する判断処理手段と、前記判断処理手段により待機状態であると判断されたときに、前記モータのトルクを、当該トルクと前記減速器の摩擦トルクとによって前記可動部分が静止状態に維持される範囲で減少させる第2の指令信号を出力する第2の指令信号出力手段とを有するロボット制御装置によるロボット制御方法であって、前記教示データの教示点へ前記ロボットを移動させる第1の過程と、前記ロボットが教示点へ移動してきたときに、当該教示点が待機姿勢をとるべき位置であるか否か判断する第2の過程と、前記第2の過程において待機姿勢をとるべき位置と判断された場合に、前記モータのトルクを一定方向に微小量ずつ変化させる第3の指令信号を出力する第3の過程と、前記第3の指令信号により、前記可動部分が静止状態から動作した直前の当該第3の指令信号を記憶する第4の過程と、前記モータのトルクを前記第3の過程における一定方向と逆の方向に微小量ずつ変化させる第4の指令信号を出力する第5の過程と、前記第4の指令信号により、前記可動部分が静止状態から動作した直前の当該第4の指令信号を記憶する第6の過程と、前記第4及び第6の過程において記憶した当該第4及び第5の指令信号のうち、前記モータに対して少ないトルクを指示する指令信号を当該教示点における前記第2の指令信号とする第7の過程とにより決定された前記第2の指令信号に基づいて前記ロボットを制御することを特徴とするロボット制御方法。
- 請求項1記載のロボット制御方法において、前記ロボットを各教示点へ移動させて前記第2〜第7の過程を繰り返し、待機姿勢を保持するすべての教示点における前記第2の指令信号を決定して記憶し、前記教示データ及び記憶した前記第2の指令信号に基づいて前記ロボットを制御することを特徴とするロボット制御方法。
- 前記第1及び第2の指令信号は、前記モータに対する前記可動部分の動作速度を指示する速度指令信号である請求項1記載のロボット制御方法であって、前記判断処理手段により待機状態であると判断されたときに、前記可動部分の動作量に基づいて前記可動部分を静止状態に維持させるに必要な前記モータのトルクを求める第10の過程と、前記第10の過程において求めた前記必要な前記モータのトルクが0であった場合、前記可動部分を微小範囲で動作させて静止状態における前記モータのトルクを0とする前記微小範囲の動作における前記可動部分の動作速度を指示する前記第2の指令信号を出力し、前記可動部分を前記微小範囲で動作させる第11の過程と、前記第10の過程において求めた前記必要な前記モータのトルクが0でなかった場合、前記モータのトルクが減少して前記可動部分が動作する直前まで前記第2の指令信号を微小量ずつ変更する第12の過程とを有することを特徴とするロボット制御方法。
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