JP3547602B2 - ソレノイドの特性補正装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はソレノイドの特性補正装置に関し、詳しくは、例えば車両用自動変速機において作動油圧を制御するためなどに用いられるソレノイドにおける特性ばらつきをライン工程上で補償するための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、車両用自動変速機において、ソレノイドによってプランジャを変位させることで油経路の開口面積を変化させ、以って、各種摩擦係合要素(クラッチ,ブレーキ等)に対する油圧を調整する機構が知られている。
【0003】
ここで、前記ソレノイドによるプランジャの駆動においては、一般に、プランジャを一方向に付勢するリターンスプリング(弾性部材)を設け、該リターンスプリングの付勢力に抗してソレノイドの磁気力が与えられるよう構成されるが、前記リターンスプリングのセット荷重には大きなばらつきが生じるため、前記セット荷重を調整するための調整機構(調整ネジ)を設け、該調整機構によってセット荷重を個別に手作業で調整して基準値に揃えることが、製造組み立て時のライン工程において行われていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のようにソレノイドに調整機構を設けることは、コストを増大させ、また、ソレノイドのサイズを大型化させることにもなってしまうという問題があった。更に、個々に調整機構を手作業で操作してセット荷重を調整する構成では、調整工数が嵩むという問題もあった。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、ソレノイドに調整機構を設けることなく、セット荷重のばらつきをライン工程で補償できるソレノイドの特性補正装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そのため請求項1記載の発明にかかるソレノイドの特性補正装置は、可動鉄心を付勢する弾性部材を備えてなるソレノイドと、前記弾性部材のセッ ト荷重を、前記ソレノイドの特性を示すパラメータとして検出する特性パラメータ検出手段と、基準セット荷重を予め記憶した基準値記憶手段と、前記特性パラメータ検出手段で検出されたセット荷重と、前記基準値記憶手段に記憶された基準セット荷重とを比較して、前記ソレノイドの制御における校正情報を求め、該校正情報を前記ソレノイドの制御装置の記憶媒体に書き込む校正情報出力手段と、を含んで構成される。
【0007】
かかる構成によると、ソレノイドにおける弾性部材(一般にはコイルスプリング)のセット荷重を検出し、これと基準セット荷重との比較から、個々のソレノイドのセット荷重のばらつきを検出する。
【0008】
そして、セット荷重を基準値に調整するのではなく、セット荷重のばらつきに応じた制御が行われるように、セット荷重の実際値と基準値との比較結果から、前記ソレノイドの制御における校正情報を求めて制御装置に記憶させ、実際の制御時に前記セット荷重のばらつきに応じて個々のソレノイドが制御されるようにする。
【0009】
請求項2記載の発明では、前記制御装置の記憶媒体に、前記校正情報出力手段によって前記校正情報が書き込まれるときに、同時に、前記ソレノイドの制御プログラムを前記記憶媒体に書き込むよう構成した。
【0010】
かかる構成によると、制御装置の記憶媒体(一般にはROM)に制御プログラムが書き込まれるときに同時に校正情報を書き込む構成とすることで、校正情報を制御プログラムと同じ不揮発性の情報として記憶させておくことができる。
【0011】
請求項3記載の発明では、前記校正情報出力手段により前記記憶媒体に書き込まれる校正情報を、前記ソレノイドにおける操作量と制御量との相関を補正するための補正量とする構成とした。
【0012】
かかる構成によると、制御装置が、操作量(例えば駆動電流など)と制御量(例えば流体圧力や流体流量など)との相関の基本値を参照して目標値に対応する制御量を求めるときに、目標値の補正又は基本特性から決定された操作量の補正を行うことで、ソレノイドの特性ばらつきが補正されることになる。
【0013】
請求項4記載の発明では、前記校正情報出力手段により前記記憶媒体に書き込まれる校正情報を、前記ソレノイドにおける操作量と制御量との校正された相関とする構成とした。
【0014】
かかる構成によると、制御装置がソレノイドの制御において参照する操作量と制御量との相関が、予めソレノイドの特性ばらつきに応じて校正されているから、該校正されている相関をそのまま参照して操作量を決定することで、前記特性ばらつきが補正されることになる。
【0015】
請求項5記載の発明では、前記特性パラメータ検出手段で検出されたセット荷重が、前記基準値記憶手段に記憶された基準セット荷重を含む所定範囲内であるときにのみ、前記校正情報出力手段が前記校正情報の書き込みを行うよう構成した。
【0016】
かかる構成によると、基準値記憶手段に記憶されている基準セット荷重を含む所定範囲を、予測される特性ばらつきの範囲とすれば、実際のセット荷重の検出結果が前記所定範囲内から外れる場合には、セット荷重が誤検出された可能性が高いものと判断できる。
【0017】
そこで、前記所定範囲内であるときにのみ、ソレノイドの特性ばらつきが正しく検出されたものと判断して、校正情報の書き込みを行わせ、前記所定範囲から外れる場合には、ソレノイドの特性ばらつき(セット荷重)が誤検出されたものと判断して、そのときのセット荷重の検出結果に基づく校正情報の書き込みを禁止して、例えば再度の検出を行わせるなどの処置を施す。
【0018】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によると、セット荷重を実際に検出して、基準のセット荷重と比較させることで、セット荷重のばらつきによる特性ばらつきを補償した制御が可能になるという効果がある。
【0019】
請求項2記載の発明によると、制御装置の記憶媒体に対する制御プログラムの書き込みと同時に、校正情報を同じ記憶媒体に書き込むので、制御プログラムが記憶されるROM等の不揮発性メモリに校正情報を格納させることができるという効果がある。
【0020】
請求項3記載の発明によると、校正情報を操作量と制御量との相関の補正量として制御装置の記憶媒体に書き込むことで、前記相関の基本特性を前記補正量で補正して、ソレノイドの特性ばらつきがあっても目標値が得られる操作量をソレノイドに出力することが可能になるという効果がある。
【0021】
請求項4記載の発明によると、操作量と制御量との相関をソレノイドの特性ばらつきに応じて補正した結果を校正情報として制御装置の記憶媒体に書き込むことで、個々のソレノイドの特性に見合った相関に基づいて精度良く目標値に制御できるという効果がある。
【0022】
請求項5記載の発明によると、校正情報を得るために検出したセット荷重が所定範囲内であるときにのみ校正情報を制御装置に出力する構成としたので、誤った校正情報が、制御装置の記憶媒体に書き込まれてしまうことを未然に防止できるという効果がある。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明にかかるソレノイドの特性補正装置によって、ライン工程上において特性補正が行われるソレノイドを含んで構成される車両用の油圧式自動変速機を示すものである。
【0024】
この図1において、図示しない車両に搭載されるエンジン1のトルクが、自動変速機2を介して駆動輪(図示省略)に伝達される構成となっている。尚、自動変速機2は無段変速機,有段変速機のいずれであっても良い。
【0025】
また、自動変速機2の変速制御を行う制御装置3(図中には、A/T C/Uと記してある)は、CPU,RAM,ROM等を含んで構成されるマイクロコンピュータを内蔵し、自動有段変速機2の各摩擦係合要素(クラッチ,ブレーキ等)に対する油圧を調整するための複数のソレノイドを制御することで、変速段を自動制御する。
【0026】
該制御装置3は、前記複数のソレノイドと共に、自動有段変速機2のケース内のATF(自動変速機油)雰囲気中にユニットとして取り付けられる。
【0027】
前記ソレノイドは、リターンスプリング(弾性部材)によって付勢されるプランジャ(可動鉄心)を、前記リターンスプリングの付勢力に抗して磁気力によって変位させることで、油経路の開口面積を変化させ、以って、各摩擦係合要素に対して供給される油圧を制御するものであり、前記制御装置3は、目標油圧を決定すると共に、ソレノイドに与える駆動電流i(操作量)と油圧(制御量)との相関に基づいて前記目標油圧に対応する駆動電流iを求めてソレノイドに出力するようになっている。
【0028】
ここで、前記リターンスプリングのセット荷重にはばらつきがあり、このセット荷重のばらつきによって前記電流iと油圧との相関(ソレノイド特性)にばらつきが生じ、基準のセット荷重に基づき設定される相関に基づいて駆動電流iを出力すると目標油圧が精度良く得られないことになってしまう。
【0029】
そこで、本実施の形態では、図2に示すような構成のソレノイドの特性補正装置としての検査機11によって、ライン工程上で前記ソレノイド特性のばらつきを補償するための処理を行う。
【0030】
但し、前記ソレノイド特性のばらつきの補正は、前記セット荷重を基準値に揃える調整作業を行うのではなく、後述するように、前記ばらつきに対応した校正情報を制御装置3に与えて、ばらつきを見込んだ駆動電流iが与えられるようにするものである。従って、本実施の形態におけるソレノイドには、セット荷重を調整するための調整機構は設けられていない。
【0031】
図2に示す検査機11には、後工程で自動変速機2のケース内に一体的に取り付けられることになる複数のソレノイド5と前記制御装置3とからなるA/Tユニット6がセットされ、該検査機11による検査工程を経た後に前記A/Tユニット6が自動有段変速機2のケース内に取り付けられる。
【0032】
前記検査機11には、前記A/Tユニット6の各ソレノイド5に対して一定の油圧を供給するための油圧源12が付設される。そして、各ソレノイド5で圧力調整された油が、個別に油圧導入口11aを介して検査機11内に導入され、検査機11に内蔵された油圧センサ(図示省略)によって各ソレノイド毎に調整結果の油圧(制御量)が検出し得るようになっている。
【0033】
前記ソレノイド5の特性ばらつきは、前述のように、セット荷重のばらつきを主な要因とするので、本実施形態では、図3又は図4に示すように、検査機11にソレノイド5がセットされたときに、個々のソレノイド5のセット荷重が測定されるようにして、該測定結果と予め記憶しておいた基準のセット荷重との比較から、駆動電流iと油圧(又は流量)との相関の校正情報を求めるよう構成される。
【0034】
図3又は図4に示すソレノイド5は、図5に示すように、自動有段変速機2の摩擦係合要素(クラッチ等)30に対して供給される油圧を、元圧のドレンによって調整するためのものであって、ドレン通路23を開閉するバルブを駆動して油圧を調整する構成である。
【0035】
図3に示すソレノイド5は、ドレン経路23を閉じる方向にバルブ(可動鉄心)22がリターンスプリング21によって付勢される構成(常閉型)であって、コイル24に通電されると、コイル24の磁気力によって前記バルブ22がリターンスプリング21の付勢力に抗して図で上方に変位することで、前記ドレン通路23が開く構成となっている。
【0036】
そして、係るソレノイド5が検査機11にセットされると、荷重センサ25のロッド24aの先端が前記バルブ22の先端に当接してバルブ22に変位を与え、該変位分の荷重が荷重センサ25(特性パラメータ検出手段)で計測されて検査機11に入力されるようにしてある。
【0037】
この場合、ソレノイド5に対する油圧の供給及び駆動電流の供給は必要なく、図6のフローチャートに示すように、まず、ソレノイド5が検査機11にセットされたか否かを判断し(ステップ21)、ソレノイド5がセットされると、各ソレノイド5のセット荷重を荷重センサ25により計測し(ステップ22:特性パラメータ検出手段)、該計測結果と予め記憶しておいた基準のセット荷重(基準値記憶手段)とを比較して校正情報を演算する(ステップ23)。
【0038】
次に、前記セット荷重の計測結果が、基準のセット荷重を含む所定範囲内であるか否かを判別し(ステップ24)、所定範囲内であれば、前記制御装置3の記憶媒体としてのROM(フラッシュEEPROM)に対して、前記ソレノイド5の制御プログラムと前記校正情報とを同時に書き込む(ステップ25:校正情報出力手段)。
【0039】
ここで、校正情報は、駆動電流と電圧又は電流との相関における補正量又は前記校正された前記相関として制御装置3に記憶させることができる。
【0040】
図4に示す場合は、ソレノイド5は、ドレン経路23を開く方向にバルブ(可動鉄心)22がリターンスプリング21によって付勢される構成(常開型)であって、コイル24に通電されると、コイル24の磁気力によって前記バルブ22がリターンスプリング21の付勢力に抗して図で下方に変位することで、前記ドレン経路23を閉じる構成となっている。
【0041】
そして、係るソレノイド5が検査機11にセットされる場合には、ソレノイド5に対して最大電流(又は所定電流)を与えてバルブ22を下方に変位させるようにし、この状態で、荷重センサ25に加わる荷重を、ソレノイド5のセット荷重相当分として荷重センサ25(特性パラメータ検出手段)で計測するようにする。
【0042】
即ち、図7のフローチャートに示すように、ソレノイド5が検査機11にセットされたことを確認すると(ステップ31)、まず、ソレノイド5に対して最大電流(又は所定電流)を与えてバルブ22を下方に変位させる(ステップ32)。
【0043】
そして、このときの荷重を荷重センサ25でセット荷重相当分として検出し(ステップ33)、該検出されたセット荷重と予め記憶された基準値とを比較することで、校正情報を演算する(ステップ34)。
【0044】
ここで、前記計測された荷重が基準値を含む所定範囲内であることを確認し(ステップ35)、所定範囲内であれば、前記校正情報を前記制御装置3の記憶媒体としてのROM(フラッシュEEPROM)に対して、前記ソレノイド5の制御プログラムと前記校正情報とを同時に書き込む(ステップ36:校正情報出力手段)。
【0045】
尚、前記ステップ32における最大電流の印加は、前記制御装置3を校正モードへ移行させて、前記移行指示を受けた前記制御装置3によって行わせても良いし、又は、ソレノイド5を直接検査機11に接続して、検査機11から最大電流を印加させる構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により特性補正が行われるソレノイドを含む車両用自動変速機を示す図。
【図2】実施形態における特性補正装置としての検査機を示す図。
【図3】第1の実施形態におけるソレノイドの検査機へのセット状態を示す図。
【図4】第2の実施形態におけるソレノイドの検査機へのセット状態を示す図。
【図5】第1,第2の実施形態におけるソレノイドの自動変速機における配置を示す図。
【図6】第1の実施形態における特性補正のための処理内容を示すフローチャート。
【図7】第2の実施形態における特性補正のための処理内容を示すフローチャート。
【符号の説明】
3…制御装置
5…ソレノイド
6…A/Tユニット
…検査機
…リターンスプリング
…バルブ
…ドレン通路
…コイル
…荷重センサ
Claims (5)
- 可動鉄心を付勢する弾性部材を備えてなるソレノイドと、
前記弾性部材のセット荷重を、前記ソレノイドの特性を示すパラメータとして検出する特性パラメータ検出手段と、
基準セット荷重を予め記憶した基準値記憶手段と、
前記特性パラメータ検出手段で検出されたセット荷重と、前記基準値記憶手段に記憶された基準セット荷重とを比較して、前記ソレノイドの制御における校正情報を求め、該校正情報を前記ソレノイドの制御装置の記憶媒体に書き込む校正情報出力手段と、
を含んで構成されたことを特徴とするソレノイドの特性補正装置。 - 前記制御装置の記憶媒体に、前記校正情報出力手段によって前記校正情報が書き込まれるときに、同時に、前記ソレノイドの制御プログラムを前記記憶媒体に書き込むよう構成されたことを特徴とする請求項1記載のソレノイドの特性補正装置。
- 前記校正情報出力手段により前記記憶媒体に書き込まれる校正情報が、前記ソレノイドにおける操作量と制御量との相関を補正するための補正量であることを特徴とする請求項1又は2記載のソレノイドの特性補正装置。
- 前記校正情報出力手段により前記記憶媒体に書き込まれる校正情報が、前記ソレノイドにおける操作量と制御量との校正された相関であることを特徴とする請求項1又は2記載のソレノイドの特性補正装置。
- 前記特性パラメータ検出手段で検出されたセット荷重が、前記基準値記憶手段に記憶された基準セット荷重を含む所定範囲内であるときにのみ、前記校正情報出力手段が前記校正情報の書き込みを行うよう構成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のソレノイドの特性補正装置。
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