JP3543751B2 - 連続気孔多孔体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は連続気孔多孔体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
濾過材、散気材、型材等に使用される連続気孔多孔体を製造する手段として従来から金属粉の焼結、熱可塑性樹脂粉末の焼結、無機粉体の焼結、セメント類の水和硬化、熱可塑性樹脂と充填材の混合プレス成形、またはスタンプ成形、造孔剤を含んだ樹脂液を硬化させ造孔剤を溶解抽出または蒸発により除去する方法、発砲剤の利用、含水ポリエステル樹脂のようにW/O型エマルジョンを硬化重合させたのち、水を蒸発させる方法等、多数の方法が提案されている。しかし、これらの方法で連続気孔多孔体を製造する場合、製品の形状や寸法が著しく制限されること、しばしば高温の熱処理や高圧プレスが必要なこと、あるいは製造工程が複雑であるといった成形上の問題があった。さらにこれらの方法では、多孔体を濾過材、散気材として利用する場合に、最も大切な気孔径のコントロールが非常に困難であった。
【0003】
これらの諸問題を解決し、大型で複雑な形状の連続気孔多孔体を寸法よくしかも所望の気孔径をもたせて製造する方法としては、エポキシ樹脂、硬化剤、充填材及び水を含む混合物を攪拌してエマルジョンスラリーを得、これを含水状態のまま硬化させることにより、水の部分を気孔とする方法がある。例えば、特開昭50−116598号公報ではグリシジル系エポキシ樹脂と、重合脂肪酸ポリアミド硬化剤と充填材と水の混合物からなるO/W型エマルジョンスラリーを調製し、このスラリーを不透水性の型に鋳込み、含水状態のまま硬化させ、しかる後に脱水することにより、所期の目的が達成されている。この方法によれば、大型で複雑な形状の連続気孔多孔体を寸法精度よくつくることができ、充填材の粒度、反応性希釈剤の量及びエポキシ樹脂、硬化剤、充填材、水の調合割合等を変えることにより、気孔径をコントロールすることができる。しかし、この方法で得られた多孔体は、気孔径が1.5μm以下の非常に細かいところに片寄り、濾過材、散気材、型材としての実用性が乏しいものであった。
【0004】
この問題を解決した方法が、モノマー脂肪酸とエチレンアミン〔H2N−(CH2−CH2−NH)n−H(ただしnは3〜5である)〕との反応により得られるアミド化合物と重合脂肪酸と上記エチレンアミンとの反応によって得られる重合脂肪酸ポリアミドとの混合物、または該モノマー脂肪酸と該重合脂肪酸と該エチレンアミンとを混合し、反応させて得られる混合反応物を硬化剤とし、ビスフェノール型エポキシ樹脂と上記硬化剤と充填材と水とを含む混合物を強く攪拌してエマルジョンスラリーを得、これを不透水性の型に鋳込み、含水状態のまま硬化させ、しかる後に脱水することを特徴とする連続気孔多孔体の製造方法(特開昭59−71339号公報)である。この方法により0.5〜10μmの平均気孔径を有する連続気孔多孔体、好ましくは0.5〜5μmの平均気孔径を有する大型で複雑な形状の連続気孔多孔体を寸法精度よく成形し、特に好ましくは1.5〜5μmの間の希望する平均気孔径のものを精度よく製造することが可能となった。また特開昭63−75044号公報には、グリシジル系エポキシ樹脂とポリアミド硬化剤と変性ポリアミン硬化剤及びまたはアミン硬化剤と充填材と水との混合物からエマルジョンスラリーを得、これを不透水性の型に鋳込み、含水状態のまま硬化させることにより、0.2〜10μmの範囲の気孔を有する連続気孔多孔体の製法も開示されている。
【0005】
しかし、前記型材の材料を使用すると、硬化中にエマルジョンスラリーから析出してきた樹脂粒子が、充填材と結合せず独立した微粒の状態で重合し、その樹脂成分が多孔体の気孔内で目詰まりを起こすものと考えられており、多孔体を濾過材、散気材、型材を使用する場合に重要である通水、通気性のバラツキが発生し、多孔体の寿命が低下するといった問題がある。
【0006】
そこで気孔径の維持および、通水、通気性のバラツキをなくす手段として、特許第2592366号公報においては、硬化終了後、気孔内を加圧水及び/または加圧空気で洗浄する方法が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の方法では水の表面張力が大きいため微細である気孔内に入り込まず残存している樹脂成分の除去に時間と手間を有しており、また、残存している樹脂粒子が完全に除去できず、気孔内に目詰まりが発生し、通水および通気のバランスが悪くなり、多孔体の寿命低下に繋がっていた。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、連続多孔体の気孔内を効率よく、十分に洗浄することができ、常に安定した通水および通気性を持たせた連続気孔多孔体を得るための製造方法を提供するを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明では、エポキシ樹脂及び充填材からなる連続気孔を有する多孔体形成用の原料を準備する工程、前記原料を用いて前記多孔体を形成する工程、前記形成された多孔体の気孔内を洗浄する洗浄工程を含む連続気孔多孔体の製造方法であって、前記洗浄工程では、前記気孔内に残存する樹脂成分に可溶である溶液及び/または表面張力が水よりも小さい溶液を前記気孔内に導入して洗浄を行うことを特徴とする連続気孔多孔体の製造方法を提供する。含水状態のまま硬化させた連続気孔多孔体の気孔内には、アルカリ性の樹脂成分を含んだ液が含有されているが、前記洗浄溶液を使用することにより、連続気孔多孔体内の樹脂成分を完全に除去でき、常に安定した通水および通気性を得ることが可能になる。
【0010】
本発明の好ましい態様においては、前記洗浄工程では、前記溶液と空気を交互に導入するようにする。
溶液と空気を交互に入れ替えることで、多孔体内は飽水状態と無水状態が繰り返され気孔内の樹脂成分を効率よく洗い出すことができる。
【0011】
本発明の好ましい態様においては、前記洗浄工程では、前記溶液と空気を交互に導入するようにする。
溶液による洗浄後は、気孔内には洗浄溶液が含侵されており、例えば陶磁器の加圧鋳込成形用型に使用する場合においては、陶磁器の成形体に欠点が発生する。洗浄溶液での洗浄後は水または水及び空気により、洗浄することが望ましい。
【0012】
本発明の好ましい態様においては、前記洗浄工程の後に、前記気孔内に洗浄水を導入してすすぎ洗浄するすすぎ洗浄工程を含むようにする。
溶液による洗浄後は、気孔内には溶液が含浸されており、例えば陶磁器の加圧鋳込成形用型に使用する場合おいては陶磁器の成形体に欠点が発生する。溶液での洗浄後は水または水及び空気により気孔内を洗浄することが望ましい。
【0013】
本発明の好ましい態様においては、前記溶液、洗浄水及び空気は、フィルターを通した後前記気孔内に導入するようにする。
一般に用いられる水及び空気には、微細な汚れ及び鉄粉等の固形物が存在しており、多孔体自体がフィルターの役目を果たし、気孔を詰まらせる可能性がある。これを実施することで、多孔体の気孔内をバランスよく洗浄できる。
【0014】
本発明の好ましい態様においては、前記溶液、洗浄水及び空気は、0.1〜0.7MPaに加圧調整した状態で前記気孔内に導入するようにする。
加圧調整された水及び/または空気を使用することにより、多孔体の微細な気孔にも、水及び/または空気が入り込む。設定圧力としては、圧力が低すぎると気孔内に浸透しないため、加圧力は高い程洗浄には効果的であるが、多孔体の強度等を考慮すると、0.2〜0.5MPaの圧力が好ましい。
【0015】
本発明の好ましい態様においては、前記溶液、洗浄水及び空気は、10〜55℃に温度調整した状態で前記気孔内に導入するようにする。
水は温度を高くすることで表面張力が低下し、気孔内への浸透性及び流動性が向上し洗浄効率が上昇するため、水温は高いほど好ましい。しかしながら上記エマルジョンスラリーの硬化物は熱により、変形または収縮を起こす可能性がある。また低温過ぎると多孔体が冷やされ、樹脂成分が気孔内に吸着しやすくなる。このため、水温は10〜55℃に設定することが好ましい。
【0016】
本発明の好ましい態様においては、前記連続気孔多孔体の内部に若しくは外接して水及び空気を通すための中空路を形成する。
前記中空路は、連続気孔多孔体表面(着肉面)から均一に溶媒及び空気がしみ出すように配置されているため大型で複雑な形状のものでもバランスよく洗浄できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
ここでいう連続気孔多孔体とは、エポキシ樹脂、ポリアミド硬化剤、充填材及び水等を含む混合物を攪拌してエマルジョンスラリーを得、これを不透水性の型に鋳込み、含水状態のまま硬化させたものをいう。
【0018】
以下、連続気孔多孔体の原料について説明する。エポキシ樹脂としては、常温で液体であり、かつ粘性の低いものを用いるのがエマルジョンスラリーを作るのに便利であり、好適なものとして、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型等のビスフェノール型エポキシ樹脂があげられる。
【0019】
硬化剤としては、ポリアミド系のもの、ポリアミン系のもの、変性ポリアミン系のもの、またはこれらの混合物により粘度が低いエマルジョンスラリーを作る上で好適である。その中でも特に好適なものとしては、ポリアミド系の硬化剤であって、モノマー脂肪酸とエチレンアミン〔H2N−(CH2−CH2−NH)n−H(ただしnは3〜5である)〕との反応で得られるアミド化合物と重合脂肪酸と上記エチレンアミンとの反応によって得られる重合脂肪酸ポリアミドとの混合物、または該モノマー脂肪酸と該重合脂肪酸と該エチレンアミンを混合し反応させて得られる反応混合物であるものがあげられる。
【0020】
充填剤としては特に制限はないが、エポキシ樹脂で接着できる材質を有し、且つ粒度をコントロールできる材料が好ましく、例として珪石粉または珪砂粉があげられる。また、硬化物が軽量であることが望ましい場合には、有機粉体やマイクロバルーンを用いることもできる。
【0021】
また、本発明におけるエマルジョンスラリーの原料として、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の反応性希釈剤や、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの硬化促進剤や、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化亜鉛、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化チタン、塩化鉄、塩化ニッケル、塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウムアンモニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸カリウム、硫酸コバルト、硫酸鉄、硫酸銅、硫酸ナトリウム、硫酸ニッケル、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の可溶性無機塩類を加えることもできる。
【0022】
次に、連続気孔多孔体の形成方法について説明する。エマルジョンスラリーを構成する各原料を樹脂(エポキシ樹脂及び硬化剤、反応性希釈剤や硬化促進剤を添加する場合にはこれも含むものとする)、充填材、水の3相に分類すると、それぞれの好ましい構成体積比は、エマルジョンスラリー全体を100容量%とすると、樹脂8〜45容量%、充填材20〜65容量%、水20〜60容量%である。
【0023】
前記樹脂、充填材、水を高速攪拌機、往復回転式攪拌機等により攪拌して、得られたエマルジョンスラリーを不透水性の型に鋳込み、それを含水状態のまま硬化させ、不透水性の型から脱型すると、連続気孔多孔体が形成される。
【0024】
上記で得られた連続気孔多孔体は、エマルジョンスラリーが硬化していく過程で、充填材に樹脂が接着されて、水は気孔を形成していくが、エマルジョンスラリーの凝集力が弱いものは、充填材に接着せずに単独のまま樹脂成分が形成される。硬化が終了すると、樹脂成分は気孔内に浮遊或いは吸着された状態で存在しているため、水及び空気により多孔体内を洗浄する工程が必要とされている。
【0025】
しかし、水及び空気の洗浄では、水の表面張力が大きく、微細な気孔内までの浸透に時間を要するため、樹脂成分に可溶なもの若しくは/及び水よりも表面張力が小さい溶液を用いる。この洗浄溶液または、洗浄溶液及び空気により、水を使用する場合より効率のよい洗浄が可能となり、樹脂成分の除去が容易となる。
【0026】
樹脂成分に可溶なものとして、酢酸、塩酸、次亜塩素酸塩があげられる。樹脂成分を構成するものとして、脂肪族アミン類が含有されており、脂肪族アミンは上記酸により可溶性となり、水中で解離して陽イオン活性となる。よって、気孔内の樹脂成分は水溶性となり溶液とともに排水される。上記酸の濃度は0.005〜5.0重量部であるが、好ましくは0.05〜0.5重量部である。
【0027】
また、水の表面張力より小さい溶液として、界面活性剤があげられる。界面活性剤の種類としては、好ましくはアニオン系界面活性剤が望ましい。アニオン系界面活性剤の種類として、高級脂肪酸アルカリ金属塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩等があげられる。界面活性剤の濃度として、0.001〜0.5mol/lであるが、好ましくは0.03〜0.2mol/lが望ましい。
【0028】
前記溶液及び空気による洗浄の後に、洗浄水にてすすぎ洗浄を行う。溶液による洗浄後は気孔内には溶液が含侵されており、例えば陶磁器の加圧鋳込成形用型に使用する場合においては、陶磁器の成形体に欠点が発生するため洗浄水による洗浄が必要となる。
【0029】
前記連続気孔多孔体の洗浄において、溶液、洗浄水および空気の洗浄時間はそれぞれ2〜30分/回であり、交互に繰り返し洗浄する。洗浄水における洗浄初期の洗浄排水は樹脂成分が多量に含有されており、繰り返し洗浄を行っていくと、徐々に洗浄排水中の樹脂成分の含有量は減少していく。洗浄回数は多孔体の形状、寸法等により異なるが、最終的には多孔体の気孔内は充分に洗浄されたことになる。
【0030】
前記溶液、洗浄水及び空気については、多孔体内に送入されるまでに、フィルター及び/またはミスト等により、汚れ、固形分(鉄粉等)を取り除いたものを使用する。
【0031】
また、溶液、洗浄水及び空気は、加圧調整されたものを使用する。水圧及び空気圧は0.05〜0.7MPaであるが、好ましくは0.2〜0.5MPaの圧に設定し、多孔体内へ注入する。
【0032】
また、洗浄溶液、洗浄水及び空気は、10〜55℃に設定されたものを使用する。通常は常温で構わないが、特に水は気孔内への浸透性及び流動性から考えて、高温にすることが望ましい。しかし、高温過ぎると多孔体の変形及び収縮が起きる可能性があるので、55℃以下にする必要がある。
【0033】
本発明における連続気孔多孔体の応用例の一つとして、陶磁器の加圧鋳込成形用型への応用を挙げることができる。陶磁器の加圧鋳込成形とは粘土等の素地粒子と水等の溶媒からなるスラリーを多孔質の型に鋳込み、スラリーに圧力をかけることによって、型に溶媒を吸収させてスラリーを固化させ、その後に、固化した成形品を脱型する方法がある。なお、この成形方式には、成形品の両側から型が溶媒を吸収する固形鋳込みと、成形品の片側から型が溶媒を吸収し、所定の厚みがついた後に、余剰のスラリーを排出する排泥鋳込みがあるが、いずれの方式においても本発明における陶磁器の加圧鋳込成形用型を応用することができる。
【0034】
この加圧鋳込成形用型の好ましい実施態様として、成形品を脱型する際の通気・通水手段を設けることが挙げられる。これは、成形品を型から外す際に、型の裏面(着肉面と反対側の面)から圧力をかけて型が吸収したスラリーからの溶媒及び空気を型の着肉面と成形品との間にしみ出させ、スムーズな脱型を行うために設けられる。その通気・通水手段の好ましい例として、連続気孔多孔体内部に中空路を設けることが挙げられる。この中空路は、連続気孔多孔体表面(着肉面)から均一に溶媒及び空気がしみ出すように配置されており、またその中空路は1本または複数の型外へ通じる通路に連結している。そして脱型の際には、加圧空気を型外へ通じる通路から中空路を通じて吹き込むと、溶媒及び空気を型の着肉面と成形品の間にしみ出させることができる。このような中空路を連続気孔多孔体内部に形成する方法は、特開昭63−428043号、特開昭−31711号等に開示されている。よって、この中空路を利用して多孔体の気孔内を洗浄することができる。
【0035】
【実施例1】
表1に示すような調合割合で調合した材料を蓋なしのステンレス容器に入れ、常温で10分間激しく攪拌して、均一なエマルジョンスラリーを得た。このエマルジョンスラリーを、形状は200×300×20mmの直方体で、中空路部にチューブを張り、塩化ビニル制の板で四方を囲んだ不透水性の型に鋳込み、水が蒸発しないように被いをし、30℃の室内に42時間放置して含水状態のまま硬化させ、チューブを除去し、硬化体を脱型した。しかる後に図1のように、連続気孔多孔体1に中空路入り口2を塞ぎ、中空路面及び側面をシール用エポキシ樹脂3で密封した。なお図示していないが、多孔体内部に設けられた中空路はすべてつながっており、それぞれの中空路は型外に連結し、脱型時に空気を送り込むための管4につながっている。
【表1】
【0036】
その試験体を2つ用意し、洗浄用水について、試験体1は酢酸溶液、試験体2は水によって洗浄する。酢酸溶液の濃度は0.05〜0.5重量部であり、酢酸溶液及び水及び空気をフィルターによって汚れ及び固形物を除去し、水圧及び空気圧を0.25Mpa、酢酸溶液の温度を25℃にそれぞれ設定し、酢酸溶液を注入する時間すなわち通液時間を5分、空気を注入する時間すなわち通気時間を7分として、それぞれ洗浄24回実施した。洗浄回数は通水、通気1回づつで1回とし、通水および通気を繰り返し実施した回数である。上記の条件で初期及び最終通水量を回数ごとに測定した。
試験結果は表2に示す。
【表2】
【0037】
表2に示されるように、試験体1の通気量は試験体2に比べ、格段に上昇していることがわかる。試験体2は充分に多孔体の気孔内を洗浄されている。
【0038】
通常、洗浄の進行を確認するための指標として、洗浄元水と多孔体から排出される洗浄排水のpHで確認するが、酢酸溶液等、何らかの溶液で洗浄する場合、溶液の種類によりpHが違うため、洗浄度合いの指標としてpHを用いることは好ましくない。よって、通常の水及び空気による洗浄のときの通気量に注目し、pHとの相関を見た。結果は図2に示す。図2の結果、pHと通気量には強い相関があることがわかる。よって洗浄度合いの指標として通気量を採用した。
【0039】
【実施例2】
次に、実施例1と同様の試験体を再び作製し、洗浄用水について、試験体3は界面活性剤、試験体4は水によって、洗浄する。界面活性剤の種類としては、アルキル硫酸エステルナトリウム塩を使用した。濃度は0.03〜0.1mol/lに調整し、洗浄溶液及び空気をフィルターによって汚れ及び固形物を除去し、水圧及び空気圧を0.25Mpa、洗浄溶液の温度を25℃に設定し、洗浄溶液を注入する時間すなわち通液時間を5分、空気を注入する時間すなわち通気時間を7分として、洗浄を24回として、初期通気量と最終通気量を測定した。結果は表3に示す。
【表3】
【0040】
実施例1と同様に、試験体3は4に比べ、通気量が上昇した。よって、界面活性剤においても、多孔体の洗浄には有効であることがわかった。
【0041】
【実施例3】
次に、実施例1のエマルジョンスラリーから、図3に示す陶磁器の加圧鋳込成形用型の型を造った。図中5は上型、6は下型であり、両方の型を組み合わせて、鋳込空間8を構成する。1は着肉面9を持つ連続気孔多孔体であり、実施例1のエマルジョンスラリーから硬化されたものである。3はシール用エポキシ樹脂であり、2は水および空気を通す中空路である。なお図示していないが、上型および下型の中空路はすべてつながっており、それぞれの中空路は型外に連結し、脱型時に空気を送り込むための管4につながっている。鋳込空間8にはそれぞれ、泥漿スラリーの注入及び排出に用いられる送泥管7が設けられている。
【0042】
本発明の実施は図3に示す上型について、洗浄水として、試験体5は実施例2と同様の界面活性剤溶液、試験体6については水にて洗浄を24回実施し、試験体5については、界面活性剤溶液から水に切り替えて、試験体6は水のまま再度10回洗浄した。界面活性剤溶液、水及び空気はフィルターによって汚れ及び固形物を除去し、水圧および空気圧をそれぞれ0.25Mpaに設定し、洗浄水を注入する時間すなわち通水時間を5分、空気を注入する時間すなわち通気時間を7分として、界面活性剤溶液及び水の温度を25℃に設定して、初期通気量と切替前の通気量、及び最終通気量を測定した。結果は表4に示す。
【表4】
【0043】
試験体5は界面活性剤溶液で洗浄すると、実施例2と同様、試験体6に比べ格段に上昇している。また水に切り替えた後も通気量は減少せず、最終通気量も試験体5が良好であった。よって、溶液から水に切り替えても通気量に変化が見られないことがわかった。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、多孔体の気孔内が十分に洗浄することができ、常に安定した通水および通気性をもたせた連続気孔多孔体を得るための洗浄方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1、2で使用された試験体の断面図である。
【図2】本発明のpHと通気量の相関図である。
【図3】本発明の実施例3で使用された陶磁器の加圧鋳込成形用型の断面図である。
【符号の説明】
1…連続気孔多孔体
2…中空路
3…シール用エポキシ樹脂
4…送気管
5…上型
6…下型
7…送泥管
8…鋳込空間
9…着肉面
Claims (12)
- エポキシ樹脂及び充填材からなる連続気孔を有する多孔体形成用の原料を準備する工程、前記原料を用いて前記多孔体を形成する工程、前記形成された多孔体の気孔内を洗浄する洗浄工程を含む連続気孔多孔体の製造方法であって、前記洗浄工程では、酢酸、塩酸、次亜塩素酸から選ばれるいずれかの酸を前記気孔内に導入して洗浄を行い、前記酸の濃度は0.005〜5.0重量部であることを特徴とする連続気孔多孔体の製造方法。
- エポキシ樹脂及び充填材からなる連続気孔を有する多孔体形成用の原料を準備する工程、前記原料を用いて前記多孔体を形成する工程、前記形成された多孔体の気孔内を洗浄する洗浄工程を含む連続気孔多孔体の製造方法であって、前記洗浄工程では、酢酸、塩酸、次亜塩素酸から選ばれるいずれかの酸を前記気孔内に導入して洗浄を行い、前記酸の濃度は0.05〜0.5重量部であることを特徴とする連続気孔多孔体の製造方法。
- エポキシ樹脂及び充填材からなる連続気孔を有する多孔体形成用の原料を準備する工程、前記原料を用いて前記多孔体を形成する工程、前記形成された多孔体の気孔内を洗浄する洗浄工程を含む連続気孔多孔体の製造方法であって、前記洗浄工程では、高級脂肪酸アルカリ金属塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩から選ばれるいずれかのアニオン系界面活性剤を前記気孔内に導入して洗浄を行い、前記アニオン系界面活性剤の濃度は0.001〜0.5 mol/l であることを特徴とする連続気孔多孔体の製造方法。
- エポキシ樹脂及び充填材からなる連続気孔を有する多孔体形成用の原料を準備する工程、前記原料を用いて前記多孔体を形成する工程、前記形成された多孔体の気孔内を洗浄する洗浄工程を含む連続気孔多孔体の製造方法であって、前記洗浄工程では、高級脂肪酸アルカリ金属塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩から選ばれるいずれかのアニオン系界面活性剤を前記気孔内に導入して洗浄を行い、前記アニオン系界面活性剤の濃度は0.03〜0.2 mol/l であることを特徴とする連続気孔多孔体の製造方法。
- 前記洗浄工程では、前記酸又はアニオン系界面活性剤と空気を交互に導入することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の連続気孔多孔体の製造方法。
- 前記洗浄工程の後に、前記気孔内に洗浄水を導入してすすぎ洗浄するすすぎ洗浄工程を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに連続気孔多孔体の製造方法。
- 前記すすぎ洗浄工程では、前記洗浄水と空気を交互に導入することを特徴とする請求項6に記載の連続気孔多孔体の製造方法。
- 前記酸又はアニオン系界面活性剤、洗浄水及び空気は、フィルターを通した後前記気孔内に導入することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の連続気孔多孔体の製造方法。
- 前記酸又はアニオン系界面活性剤、洗浄水及び空気は、0.1〜0.7MPaに加圧調整した状態で前記気孔内に導入することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の連続気孔多孔体の製造方法。
- 前記酸又はアニオン系界面活性剤、洗浄水及び空気は、10〜55℃に温度調整した状態で前記気孔内に導入することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の連続気孔多孔体の製造方法。
- 前記連続気孔多孔体の内部に若しくは外接して水及び空気を通すための中空路が形成されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の連続気孔多孔体の製造方法。
- 前記連続気孔多孔体は陶磁器の加圧鋳込成形用型を形成する部材であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の連続気孔多孔体の製造方法。
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