JP3541296B2 - 腫瘍血管内皮細胞に特異的に結合するモノクローナル抗体とその利用方法 - Google Patents
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Description
発明の分野
本発明は、腫瘍学及び免疫学の分野、より詳しくは、腫瘍血管内皮細胞に特異的に結合するモノクローナル抗体と、これらモノクローナル抗体の製造及び使用方法に関する。
【0002】
背景及び従来技術
発癌現象には、腫瘍遺伝子及び腫瘍抑制遺伝子の構造及び/又は発現に影響を与える一連の身体遺伝子的変化が関連している。更に、悪性腫瘍細胞の小さな集合が診断上明白な原発のそして転移した腫瘍を形成するには二次的な遺伝子変化及び後成的メカニズムが必要とされることもある。例えば、固形の新生腫瘍の場合、それが1〜2mmの直径を越えて成長するためには、通常は反応性ストロマ線維芽細胞、リンパ系食細胞浸潤物及び細胞外マトリクスタンパク質とともに、新たに形成された血管の支持ストロマが形成される必要があることがよく知られている。反応性腫瘍ストロマの細胞は形質転換しないが、これらは、調節ペプチド、タンパク質分解酵素、ECMタンパク質及び細胞表面抗原の発現におけると同様に、その増殖活動において対応する正常な細胞と異なっている可能性がある。従って、これらは、癌の薬学的及び免疫学的研究及び阻害に於ける新たなターゲットを提供する可能性がある。
【0003】
このようなターゲットの一例は、F19細胞表面糖タンパク質であり、これは胸、結腸、肺、膀胱、すい臓等の一般的な上皮癌の90%以上の反応性ストロマ線維芽細胞において発現し、他方、正常な成人細胞においてはほとんど、あるいは全く発現しないものである。このF19細胞表面糖タンパク質とそれに関する様々な教示は、ギャリン−チェサ(Garin−Chesa)他、Proc.Natl.Acad.USA87:7235〜7239(1990);レティッヒ他(Rettig)他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:3110〜3114(1998)及び米国特許第5,059,523号に記載されており、これら3件の全部をここに参考文献として添付する。最近のフェーズI研究に於いて、F19に対する131I標識化モノクローナル抗体が腫瘍部位において蓄積し、これによって、患者の結腸直腸癌から転移した肝臓癌の画像化を可能にすることが判った。この画像化技術の研究に関しては、ウェルト(Welt)他、Proc.Am.Assoc.Cancer Res.33:319(1992)参照。
【0004】
腫瘍血管内皮細胞の免疫学的ターゲット化はまだ達成されてはいないが、これは次に述べるいくつかの理由によって魅力的な研究対象である。その第1の理由は、内皮細胞表面抗原が、血液中に循環する抗体又は抗原に対して高いアクセス性を有していることにある。第2の理由は、腫瘍に関係する血管の破壊又は損傷によって、固形腫瘍の広範囲に渡る壊死、又はその成長の抑制が生じることが期待されることにある。腫瘍壊死因子(TNF−瘁j、ガンマインターフェロン(IFN−γ)、及びメルファラン(melphalan)等のいくつかの抗ガン剤の活性は、癌を直接的に殺傷するのではなく、むしろ血管上皮細胞を損傷させることによるものである可能性がある。これらの研究に関する情報については、オールド(Old)、Science 230:630〜632(1985);リーナルド(Lienard)他、J.Clin.Oncol.10:52〜60(1992);レジョーヌ(Lejeune)、Eur.Cytok.Net.2:124(1992)を参照。
【0005】
上述した腫瘍血管内皮細胞のターゲット化のためには、これらの細胞に対する特異性を有するモノクローナル抗体(“mAb")が入手可能であることが必要である。モノクローナル抗体の生産に関する免疫学の分野はコーラー(Kohler)とミルスタイン(Milstein)とがハイブリドーマの生成に初めて成功した時以来、大きな進展があったが、所望の細胞タイプに対する特異性を備えたモノクローナル抗体を作ることは容易でもルーチン的作業ではない。例えば、必要な特異性を備えた抗原が存在するか、あるいは、ターゲットとする細胞中においてその抗原が発現するもの仮定しなければならないが、現実には必ずしもそうとは限らない。これは特異性一般において必須要件であり、血管細胞において不可欠のものである。というのは、腫瘍血管内皮細胞に対して特異的に結合するというよりもむしろ血管細胞一般に結合するモノクローナル抗体はすべて、正常な血管細胞を標的としてしまい、その結果、明らかな不都合が生じるからである。
【0006】
内皮細胞及びこれらから発生する腫瘍に対するモノクローナル抗体は知られているが、他の非形質転換細胞を除外して腫瘍血管内皮細胞に対して特異的なモノクローナル抗体はまだ知られていない。しかし、本発明によって、このようなモノクローナル抗体が作られ、これらの抗体が向けられる細胞表面抗原の同定、分離及び特徴付けが達成された。これらと、それらから派生する内容とが以下の開示の主題である。
【0007】
【図面の簡単な説明】
図1(A),(B),(C)及び(D)は、様々な腫瘍血管内皮細胞中においてFB5抗原(エンドシアリン)を検出するための免疫組織化学的染色の研究を示すものである。ここで、それぞれ、図1(A)は平滑筋肉腫、図1(B)は腎臓細胞癌、図1(C)は骨肉腫、図1(D)は結腸癌、に関する。これらの研究は、アビジン−ビチオン免疫ペルオキシダーゼ染色に関するものであり、ヘマトキシリン対比染色を使用し、10x(1A)又は20x(B〜D)の倍率を使用した。
図2(A)は、様々なタイプの細胞を使用した。FB5抗原(エンドシアリン)の免疫化学的分析を示し、
図2(B)は、細胞ラインLA1−5sの抽出物の免疫ブロット分析を示し、
図2(C)は、FB抗原(エンドシアリン)のレクチン結合及び炭水化物分析を示し、
図3は、特定の染色体フラグメントへのFB5抗原(エンドシアリン)に対する遺伝子の指定に結び付く研究結果を集約するものである。
【0008】
好適実施例の詳細説明
例1
モノクローナル抗体FB5を以下のようにして製造した。燐酸バッファ塩類液中で培養したヒト胎児線維芽細胞を、2x107細胞/mlの濃度に結合させることによって免疫原を調製した。この免疫原を、腹膜内注射(100ml)によって複数のマウス(株(BALB/CxA)F1)に投与した。同じ免疫原を使用して、2〜4週間の間隔で4回の追加抗原刺激注射を行った。最後の免疫処置の3日後、これらのマウスを処理し、その脾臓を切除して、これらを標準的方法によってRPMI1640培地中の単細胞懸濁液に分散させた。次に、再び標準的方法に従って、これらの脾臓細胞を、ポリエチレングリコール(PEG)を使用してHPGRT欠失X63−Ag8.653マウス骨髄腫細胞と融合させた。
【0009】
次に、これらの細胞を、ミクロ培養プレート中に分散させ、HAT培地の存在下において成長させ、融合細胞を非融合細胞から選択した。
【0010】
培養が得られた後、その上清を、周知の混合血球吸着("MHA")ロゼット化アッセイを使用してスクリーニングし、免疫化細胞タイプ、即ち、培養ヒト胎児線維芽細胞に対しては反応するが、上皮細胞(乳ガン、結腸ガン、腎臓ガン)群や、神経外胚葉細胞ライン(メラノーマ、グリオーマ)群に対しては反応しない抗体を得た。
【0011】
所望の反応の上清を生成する細胞を、制限的希釈技術を利用してクローン化した。各サブクローン化工程の後、その上清を、MHAを使用して再スクリーニングした。これらを4回繰り返して、確実に単一のハイブリッドクローンが分離されるようにした。
【0012】
例2
上述のプロトコルを使用して、ハイブリドーマ細胞ラインFB5とそれによって生成されるモノクローナル抗体とを分離した。次に、このモノクローナル抗体を、多数の細胞ライン、正常細胞、及び癌サンプルに対するスクリーニングに使用した。FB5が結合した細胞表面抗原の発現の測定は、前記モノクローナル抗体の5倍までの一連の希釈溶液(開始希釈度:20μg/ml)を使用して混合MHAロゼット化アッセイによって行った。この使用したプロトコルは、レティッヒ(Rettig)他、J.Immunol.138:4484〜4489(1987)及びレティッヒ(Rettig)他、Canc.Res.45:815〜821(1985)に記載されている。次の表1にこれらの結果を示す。
【0013】
【表1】
【0014】
次にこれらのデータの解釈に関していくつかコメントする。先ず、線維芽細胞は、胎児(W1−38,GM05387及びF135−35−18)、新生(Hs27,Hs68)、及び成人(FA537,2KF−AH)細胞からのものであり、線維芽細胞上のターゲット抗原ユビキチーにあることを証明した。
【0015】
神経芽腫細胞ラインLA1−5sに関しては、これらは、テスト済みで未処理のものか、あるいは、ノイラミニダーゼによる処理(0.1U/ml、37℃で1時間)、又は、レティッヒ(Rettig)他、J.Histochem.Cytochem.37:1777〜1786(1989)に従って、沸騰燐酸バッファ塩類液中で5分間処理した後のものであった。
【0016】
"HUVEC"細胞は、パッセージ2〜4を使用して様々な個体から得たものであった。活性化HUVEC細胞は、TNFα(50ng/ml),IL−1β(0.5ng/ml),TGF−β1(2ng/ml)、TPA(5μg/ml),フォルスコリン(50mM)、IFN−γ(200U/ml)、bFGF(5〜25ng/ml),IL−4(1ng/ml)又はIL−6(20ng/ml)のいずれか一つによって6又は24時間、前処理しておいたものである。
【0017】
これらの細胞に関して、更に、免疫ペルオキシダーゼ染色及び/又は免疫沈降アッセイを使用してFB結合についてテストした。これらのアッセイによって、細胞表面及び細胞間抗原の検出が可能となる。使用したプロトコルの詳細を下記の例3において説明する。
【0018】
例3
免疫沈降アッセイを行うにあたって、細胞を、[35S]−メチオニンと[35S]−システイン(Trans35S標識化ICN;40μCi/ml)との混合物で、18〜24時間で標識化し、その後、溶解バッファ(0.01 M Tris−HCl,0.15 M NaCl,0.01 M MgCl2,0.5% Nonidet P−40,アプロチニン20μg/ml及び2mMのフェニールメチルスルフォニルフルオライド)中にて抽出を行った。次に、これらの溶解分離物を使用して免疫沈降アッセイを行い、その後、レティッヒ(Rettig)他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:3110〜3114(1988)に従って、NaDodSO4/ポリアクリルアミドゲル電気泳動及び蛍光間接撮影を行った。所望の場合には、精製抗原/細胞抽出物を、ノイラミニダーゼ、エンドグリコシダーゼH,(25mIU/ml),N−グリカナーゼ(10U/ML)、又はO−グリカナーゼ(0.1U/ml)で消化した。タンパク質グリコシレート化インヒビタ、即ち、フェニールN−アセチル−α−ガラクトサミニド(5mM)、モネンシン(10μg/ml)及びツニカマイシン(5μg/ml)をも使用した。
【0019】
免疫ペルオキシダーゼを固定、透過細胞に使用した時には、ギャリン−チェサ(Garin−Chesa)他、PNAS 87:7235〜7239(1990)及びレティッヒ(Rettig)他、PNAS 85:3110〜3114(1988)に従って、10〜20μg/mlの濃度のモノクローナル抗体を使用した。
【0020】
例4
上述の免疫ペルオキシダーゼ法を使用して、一群の正常な成人組織をテストした。これらの組織は、イソペンタン中にて冷凍し、液体窒素中にて予備冷却し、−70℃にて保存しておいた検死又は外科標本から得たものであった。5ミクロン厚の部分を切取り、ポリ−L−リジン被覆スライド上に配置し、風乾し、アセトン中(4℃、10分間)にて固定した。
【0021】
骨髄サンプルは、異なった方法によってテストした。即ち、細胞をガラススライド上において広げ、ストレプトアビジン−アルカリフォスファターゼ法を使用してアッセイを行った。
【0022】
その結果を表2に示す。これは、テストされたすべての正常な組織が陰性であることを示している。
【0023】
【表2】
【0024】
例5
細胞ライン及び正常組織に関して得られた結果に鑑みて、正常細胞のテストに使用したものと同じ方法を使用して一群のヒト腫瘍をテストした。腫瘍血管の内皮細胞において抗原が検出された。これらの結果を表3に示す。ここで、"A/B"という表示に関して、"A"は血管末端細胞の陽性表現型を示すサンプルの数を示し、"B"はテストされた異なるサンプルの数を示す。ここに使用した略称は次の通りである。ASPS(Alveolar soft part sarcoma)−歯槽(胞巣状)軟質部肉腫;PNET−原始神経外胚葉性腫;MPNT−悪性末梢神経鞘腫。
【0025】
【表3】
【0026】
血管に抗原に対して陰性であった正常組織に対して、腫瘍の太部分において、血管内皮細胞に於けるターゲット抗原の発現が見られた。腫瘍血管構造に関して、発現は、小血管、主として毛細血管、に限られ、大きな腫瘍管の内皮細胞には発現はなかった。抗原を示す管の数は、小さなサブセットから、特定の腫瘍に於けるすべての毛細血管床にまで様々であった。高発現と低発現を区別する識別可能なパラメータは無かった。
【0027】
例6
神経芽細胞腫ラインと生体外培養線維芽細胞に対する抗原の発現は、容易に生化学分析が可能な材料を提供するものである。前述の例2において記載した免疫沈降プロトコルを、細胞タイプLA1−5s(神経芽細胞腫)、F135−35−18,W1−38,FA−334及びGM01398(線維芽細胞)、"HUVEC"(ヒト臍帯内皮細胞)、平滑筋腫細胞ライン(SW872)、骨肉腫(TE85)、メラノーマ(SK−MEL−198)及びグリオーマ(SX−MG−28)に対して行った。図2Aは、免疫沈降研究において、抗原がNaDodSO4PAGEに結合した165kdのバンドとしてマイグレーション(migrate:移動)したことを示している。
【0028】
更に、細胞ラインLA1−5s抽出物を使用して免疫ブロット研究も行った。これには、フェリンガー(Fellinger)他、Cancer Res.51:336〜340(1991)のアルカリフォスターゼ検出システムを使用した。この結果は図2Bに示され、ここにも165kdのターゲット抗原が示されている。
【0029】
例7
上述の諸研究の後、前述の酵素群を使用して、酵素消化、代謝抑制研究を行った。図2Cはこれらの研究の結果を示している。これらの結果から、前記165kd抗原が、高度にシアル酸結合Oリンクされたオリゴサッカライドを多量に含む、95kd核ポリペプチドから構成されたものであると結論付けられる。これは、ノイラミニダーゼ(脱シアル酸結合120kdタンパク質)及びノイラミニダーゼとOグリカナーゼとの組合わせでの処理後の95kdタンパクの生成から得られた結果において見られる。酵素エンドグリコシダーゼH及びN−グリカナーゼは抗原に対してなんの影響も及ぼさなかった。N−リンクグリコシレート化を阻止するツニカマイシンと、ゴルジ体タンパク質処理を妨害するモネンシンとも、又、前記分子には影響を与えなかった。同様に、5mMのフェニール−α−GalNAcを細胞に添加した時にも、120kdのタンパク質種の分子が得られた。この添加分子は、Oグリコシレート化のインヒビタと推定されるが、その正確な活性態様は未知である(クアン(Kuan)他、J.Biol.Chem.264:19271〜19277(1989))。
【0030】
例8
前記分子のレクチン結合パターンを調べるために更に研究を行った。これらの実験において、原始及び非グリコシレート化分子が、麦菌アグルチニンに結合するか否かを調べるためのテストを行った。というのは、そのような結合によって、分子のグリコシレート化に於けるシアル酸の存在を確認できるからである。これをテストするために、トラン(Tran)35S標識化LA1−5s細胞抽出物と無細胞培養上清とを、ConAの研究においては溶出剤として250mMのα−D−メチルマンノピラノサイドを、又、WGAの場合には250mMのガラクトースアミンを使用して、麦菌アグルチニン(WGAセファロース、及びコンカナバリンAセファロース("Con A")に添加した。図2Cにこれらの実験の結果を示す。原始抗原は、WGA−セファロースに結合するが、他方、上述の脱シアル酸された抗原は結合しない。原始抗原においては、ConAセファロースに対する部分的結合が観察された。
【0031】
例9
FB5によって結合される抗原をコード化する遺伝子の染色***置を特定する研究を行った。一群のげっ歯類−ヒトハイブリッドの血清分子を、レティッヒ(Rettig)他、J.Immunol.138:4484〜4489(1987);レティッヒ(Rettig)他、PNAS 81:6437〜6441(1984);レティッヒ(Rettig)他、Genomlcs 6:176−183(1991)に従って行った。分析用に選択した細胞は、FB5+ヒト神経芽腫細胞とマウスFB5-神経芽腫細胞からのハイブリッドであった。このハイブリッドは、ヒト染色体補体の異なった部分を有していた。これらの結果を、レティッヒ(Rettig)他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA81:6437〜6441(1984)に従って分析し、図3に示したように、該抗原がヒト染色体領域11q13−qterによってコード化されるものであると結論される。このような分析は当該技術において周知であるので、ここではこれ以上の説明を省略する。以上は、他の正常細胞を除外して、癌組織の血管内皮細胞に特異的に結合するモノクローナル抗体の生成を説明するものである。これらのモノクローナル抗体は、更に、肉腫組織のサンプルにも結合するので、これらのモノクローナル抗体を肉腫に関しても様々な方法で使用することが可能である。以下の記載において、腫瘍血管内皮細胞が強調されてはいるが、肉腫の診断、モニタリング、治療も本発明に含まれる。従って、本発明の一態様は、腫瘍の血管内皮細胞に特異的に結合するモノクローナル抗体と、これらのモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマとに関する。一好適実施例において、前記ハイブリドーマ細胞ラインは、細胞ラインFB5であり、モノクローナル抗体はこの細胞ラインによって生成される。この細胞ラインは、ブタペスト条約に基づいて既に寄託され、1992年11月12日にメリーランド州、ロックビル、パークローンドライブ12301のATCCで受け容れ番号ATCC HB1 1190を付与されている。一好適実施例において、前記モノクローナル抗体は、SDS−PAGE測定による分子量が165キロダルトンのシアル酸結合糖タンパク質であり、前記抗原は、腫瘍に関連する血管内皮細胞において存在する。尚、前述のように、以下「エンドシアリン」と呼称する分子は、それに結合する本発明のモノクローナル抗体によって改変可能である。このような改変としては、例えば、部分又は全シアル酸化がある。
【0032】
ここでいう「モノクローナル抗体」とは、ハイブリドーマによって直接的に作り出されるモノクローナル抗体に限られない。この用語は、例えば、Fab,F(ab)2やその他の結合フラグメント等の周知の結合フラグメント、互いに複合した複数のモノクローナルを含むオリゴメリック又はポンメリメリック構造物、2又はそれ以上のスピーシーズ(例えば、ヒトとマウス)からの免疫グロブリンを含有するキメラモノクローナル抗体、再結合モノクローナル抗体、人体に適応化させた物質、等をも含むものである。更に、この用語には、まだ骨髄腫には融合したものではないが、他の方法、例えばヒトB細胞のエプスタイン バー(Epstein Barr)ウイルス("EBV")による形質転換、又はその他の形質転換手段により培養可能とされたヒトB細胞によって作られたモノクローナル抗体も含まれる。
【0033】
本発明の抗体は、腫瘍に関係する血管内皮細胞の位置を同定する診断方法に使用可能であり、これによって、モノクローナル抗体をアッセイ対象サンプルに接触させ、その結合をモニタする。この結合は、放射免疫アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ、サンドイッチアッセイ、競合アッセイ等の当業者に知られた標準的な免疫アッセイプロトコルを使用して検出することが出来るが、その具体的方法はこれらに限られるものではない。これらのアッセイの多くにおいて、抗体に付着される検出可能な標識の使用が必要であるが、ここで、放射性、発色性、蛍光性、酵素的、磁気的及び金属粒子の公知の標識のいずれも使用可能である。これらのアッセイを行うに当たって、対象となるサンプルとしては、例えば、組織サンプルや体液サンプル等がある。更に、そのモノクローナル抗体の特異性によって、当業者は、これを、ウェルト(Welt)他の上記に記載のものと類似の方法で生体内診断に使用することができる。使用可能な種々の生体内診断方法の内、放射化画像化法が特に好適である。
【0034】
本発明のモノクローナル抗体は、例えば、腫瘍関連血管内皮細胞をターゲットとすることが出来るので、これらの抗体は治療において特に有用である。あらゆる血管床と同様に、腫瘍の血管床がそれに関連する組織に栄養を提供する。従って、抗腫瘍治療方法も、本発明発明の一部をなすものである。この治療方法は、本発明のモノクローナル抗体を、腫瘍の増殖を抑止する、又は腫瘍を実際に壊死させるのに十分な量で投与する工程を有する。モノクローナル抗体を、腫瘍に対する抑止的又は壊死的効果を有する薬剤と組み合わせることによって、抑止又は壊死を引き起こすことができる。このような薬剤としては、例えば、周知の凝血カスケードの血塊形成酵素等の血塊形成剤等、腫瘍部位への血液循環を抑止する薬剤がある。細胞を破壊し、従って、腫瘍に関連する血管上皮細胞を破壊する他の薬剤としては、マイトマイシンC、金属含有化合物、酵素、リシン鎖、放射性同位元素等のすべての細胞毒性剤が含まれる。そして、これらの薬剤のいずれかを周知の方法によって前記モノクローナル抗体と複合させることができる。従って、これらのモノクローナル抗体は、ターゲット細胞の破壊のためのキャリアとして作用する。更に、これらモノクローナル抗体は、リポソーム配送システムと組み合わせて使用できる。この場合、リポソームに抑止又は壊死性剤を含ませ、モノクローナル抗体がこれらを血管新生部位を標的とする。更に、これらのモノクローナル抗体を、その特異性を維持しつつ、かつ、補体結合性、又は炎症誘発性を有するように改造すれば、これらのモノクローナル抗体を、第2薬剤無しで、単独で使用することが可能となる。このような補体結合性又は炎症誘発性を有するモノクローナル抗体は、患者において生体内反応を引き起こし、この反応によってターゲット細胞が破壊される。
【0035】
前記モノクローナル抗体を、単体で、あるいは上述の種々の物質との組合せで、種々の試薬として調合することができる。例えば、前記モノクローナル抗体をそのままの状態、あるいは、補体結合/炎症誘発性にしたものを、薬剤として許容できるキャリアと組み合わせることができる。ここに記載した様々な物質と組み合わせて使用する場合は、これらをモノクローナル抗体に付着させて接合体を形成し、次に、この接合体を、薬剤的に許容可能なキャリアと組み合わせることができる。更に、キットタイプの試薬を作ることも可能であり、この場合、モノクローナル抗体と第2物質とをそれぞれ別の部分(Portion)として提供し、これらの両方を一つの容器手段に収納する。
【0036】
本発明の特に好適な実施例において、ここに記載した新規なモノクローナル抗体は、第2のモノクローナル抗体と組み合わされる。好ましくは、この第2モノクローナル抗体は、腫瘍細胞、あるいは、腫瘍の反応性ストローマ線維芽細胞に直接的に結合するものであり、その一例は前述したモノクローナル抗体F19である。この第2モノクローナル抗体も、更に、前述した新規なモノクローナル抗体のすべての調製方法によって処方することが可能である(例えば、接合化、補体結合/炎症誘発性化への処理、等)。
【0037】
ここでいう「モノクローナル抗体」とは、全体としての前記モノクローナル抗体だけでなく、ここに記載した結合特異性を保持可能なこれらモノクローナル抗体のフラグメント、非限定的に一例を挙げればFabフラグメン等、をも含むものである。又、これらモノクローナル抗体のキメラ及び二機能型も含まれ、ターゲット抗原に対する特異性を備えた前記モノクローナル抗体のいずれの部分でも他のモノクローナル抗体分子の一部と組み合わせることが可能であることが判っている。これらの他の分子としては、例えば、他のスピーシーズ(ヒト又は他の霊長類や、げっ歯類)から得られる抗体がある。これらのキメラモノクローナル抗体は、好ましくは、生成するハイブリッド又は二機能抗体に対して細胞毒性活性を付与するように製造される。
【0038】
そのような構造物の一例は、FB5に特有の結合ドメインと、T細胞又はマクロファージに対する付着部位との両方を備えた形状改造モノクローナル抗体である。その結果、このモノクローナル抗体は、二つの結合特性を有し、T細胞に関係する活動のカスケード、あるいはモノクローナル抗体が結合する細胞に対するマクロファージ反応と、更に、隣接する細胞に対する二次的免疫反応との両方を引き起こすことができる。
【0039】
前述したように、上述の種々の処方は、いずれも、ターゲット療法においてのみならず、肉腫に対する平行したアプローチにおいても腫瘍血管内皮細胞の同定に有効である。
【0040】
本発明は、更に、腫瘍関連内皮細胞に特徴的な分離糖タンパク質分子にも関する。この分子は、原始状態であるグリコシル化状態において、SDS−PAGE測定で約165キロダルトンの分子量を有し、その95キロダルトンの部分が該分子のタンパク質「核」として作用する。ここでエンドシアリンと呼称されるこの分子は、それ自身で、前述した特異性を備えたモノクローナル抗体を得るための免疫原として有効であり、更に、保護モノクローナル抗体を生成するワクチンとしても有効である。このワクチンは、有効量の前記表面抗原エンドシアリンと、更に、当該技術分野において公知でワクチンの処方において使用される薬剤的に許容可能なアジュバントとを含む。
【0041】
上述したようにエンドシアリンのタンパク質部分のための遺伝子をヒト染色体の特定のアーム部に局在化することによって、それをコード化する核酸配列の同定と分離が容易になる。本発明のその他の態様は、当業者にとって明らかであるのでここは詳述しない。
【0042】
使用した用語及び表現は記載のためのものであり限定的なものではなく、これらの用語及び表現の使用は図示及び記載した特徴構成の均等物を除外するものではなく、本発明の範囲内においてその他の様々な改変が可能であると理解される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(A),(B),(C)及び(D)は、様々な腫瘍血管内皮細胞中においてFB5抗原(エンドシアリン)を検出するための免疫組織化学的染色の研究を示すものであり、ここで、それぞれ、図1(A)は平滑筋肉腫、図1(B)は腎臓細胞癌、図1(C)は骨肉腫、図1(D)は結腸癌、に関し、これらの研究は、アビジン−ビオチン免疫ペルオキシダーゼ染色に関するものであり、ヘマトキシリン対比染色を使用し、10x(1A)又は20x(B〜D)の倍率を使用した。
【図2】図2(A)は、様々なタイプの細胞を使用した、FB5抗原(エンドシアリン)の免疫化学的分析を示し、図2(B)は、細胞ラインLA1−5sの抽出物の免疫ブロット分析を示し、図2(C)は、FB抗原(エンドシアリン)のレクチン結合及び炭水化物分析を示す。
【図3】特定の染色体フラグメントへのFB5抗原(エンドシアリン)に対する遺伝子の指定に結び付く研究結果を集約するものである。
Claims (24)
- 腫瘍に関連する血管内皮細胞によって発現される抗原に対して特異的に結合し、正常な血管内皮細胞には結合しないモノクローナル抗体であって、前記抗原が、SDS−PAGE測定で約165キロダルトンの分子量を有するシアル酸結合糖タンパク質であり、そのタンパク質部分が、SDS−PAGE測定で約95キロダルトンの分子量を有するモノクローナル抗体。
- 請求項1のモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマ細胞ライン。
- 請求項1のモノクローナル抗体の抗原結合フラグメント。
- 請求項1のモノクローナル抗体であって、該モノクローナル抗体の少なくとも一部はキメラ化されている。
- 腫瘍を同定する方法であって、患者から採取されたサンプルを、腫瘍関連血管内皮細胞の結合に有利な条件下において、請求項1のモノクローナル抗体と接触させる工程と、前記結合を検出して前記腫瘍を同定する工程とを有する方法。
- 請求項5の方法であって、前記モノクローナル抗体は、検出可能な標識で標識化される。
- 請求項6の方法であって、前記検出可能標識は、放射性、発色性、蛍光性、酵素又は金属性粒子、あるいは磁性粒子である。
- 請求項5の方法であって、前記サンプルは組織サンプルである。
- 請求項5の方法であって、前記サンプルは体液サンプルである。
- 腫瘍を有する患者を治療するための薬剤であって、
前記薬剤は、前記腫瘍の発育を抑止するか、もしくは、該腫瘍の細胞壊死を引き起こすのに十分な量、前記患者に投与されるものであり、
請求項1のモノクローナル抗体を含む、薬剤。 - 請求項10に記載の薬剤であって、前記モノクローナル抗体が血塊形成剤と複合される。
- 請求項10に記載の薬剤であって、前記モノクローナル抗体が金属含有化合物と複合される。
- 請求項10に記載の薬剤であって、前記モノクローナル抗体が、リポソーム配送システムと複合される。
- 請求項10に記載の薬剤であって、前記モノクローナル抗体が、細胞毒剤と複合される。
- 請求項10に記載の薬剤であって、前記モノクローナル抗体が炎症誘発又は補体結合形態で投与される。
- 請求項10に記載の薬剤であって、前記モノクローナル抗体が、酵素と複合される。
- 腫瘍の診断用の組成物であって、
(i)請求項1のモノクローナル抗体と、
(ii)腫瘍の細胞に特異的に結合する第2のモノクローナル抗体、との混合物を含む、組成物。 - 請求項17の組成物であって、更に、薬剤的に許容可能なキャリアを有する。
- 請求項17の組成物であって、前記第2モノクローナル抗体はF19である。
- 請求項17の組成物であって、前記第1及び第2モノクローナル抗体は、キットの形態として、別々の容器に分離収納されている。
- 腫瘍関連血管内皮細胞に見いだされ、正常な血管内皮細胞には見いだされない単離シアル酸結合糖タンパク質であって、該単離シアル酸結合糖タンパク質は、SDS−PAGE測定で約165キロダルトンの分子量を有し、そのタンパク質部分は、SDS−PAGE測定で約95キロダルトンの分子量を有する。
- 腫瘍関連血管内皮細胞に見いだされ、正常な血管内皮細胞には見いだされない単離シアル酸結合糖タンパク質であって、該単離シアル酸結合糖タンパク質は、SDS−PAGE測定で約165キロダルトンの分子量を有し、そのタンパク質部分は、SDS−PAGE測定で約95キロダルトンの分子量を有し、かつ、請求項1に記載のモノクローナル抗体と結合する、糖タンパク質。
- 請求項1のモノクローナル抗体であって、ハイブリドーマ細胞ラインATCC HB11190によって生成される。
- 寄託受け入れ番号ATCC HB11190を付与された請求項2のハイブリドーマ細胞ライン。
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