JP3503310B2 - 耐プレッシャーマーク性に優れたプレコート鋼板とその製造方法 - Google Patents

耐プレッシャーマーク性に優れたプレコート鋼板とその製造方法

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JP3503310B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐プレッシャーマ
ーク性に優れたプレコート鋼板とその製造方法に関し、
より詳しくは、家庭用電気機器、屋内外器物等に使用す
ることができる耐プレッシャーマーク性に優れたプレコ
ート鋼板とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】鋼板に予め塗料を塗布し、塗膜を乾燥ま
たは焼付けることにより樹脂被覆を施したプレコート鋼
板は、作業および環境面で問題の多い塗布作業を行わず
にユーザーが直ちに成形加工でき、かつ表面が美麗であ
ることから、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ等の屋内で使
用される家電製品や、エアコン室外機、自動販売機等の
屋外で使用される家電製品等に多用されるようになって
きた。
【0003】プレコート鋼板は、通常は鋼帯 (コイル)
または切板で出荷されるが、製造後に使用されるまで、
数日ないしは数カ月間保管されるのが一般的である。例
えばコイルの場合、約1〜5トンのコイル重量で切断
し、保管することが多いが、使用時に巻き戻してみる
と、保管中のコイル下側の自重のかかった部分の表側塗
膜には、プレッシャーマーク (裏面塗膜の凹凸が表面に
転写された転写模様) が発生することがある。切板の場
合には1ロットにつき2トン前後を積み重ねることが多
いが、この場合も、ロットの下側に積まれていた切板の
表側塗膜には、同様なプレッシャーマークが発生するこ
とがある。
【0004】このプレッシャーマークが発生したプレコ
ート鋼板は、性能上は特に問題がないが、プレコート鋼
板が本来有する美麗な光沢が失われ、肉眼でも健全部と
明確に区別されることから、家電製品のように外観品質
の厳しい用途には使用できない。従って、プレコート鋼
板の商品価値が大きく低下する。
【0005】プレッシャーマークの防止策としては、プ
レコート鋼板の塗膜表面に厚さ60μm低度の保護フィル
ムを被覆する方法があるが、コスト高になるうえ、ユー
ザーにおける成形加工の後に保護フィルムを除去すると
いう手間のかかる工程が加わるという難点がある。
【0006】また、プレッシャーマーク発生防止の対策
ではないが、プレッシャーマークの発生後に、加温によ
り元の光沢を復元させる方法がある。しかし、この方法
においても、加温工程の追加によりコスト高を招くとい
う問題点がある。
【0007】一方、プレコート鋼板の塗膜の改良による
プレッシャーマーク発生の防止策としては、特開昭59−
118452号公報に、表面塗膜のTg (ガラス転移点) を裏面
塗膜より10℃以上高くする方法が提案されているが、塗
膜のTgを単に高くするだけでは、加工性の低下が避けら
れず、とうてい採用し難い。
【0008】特開平5−185030号公報には、裏面側にTg
が0℃以上であって、表面塗膜のTgより低く、かつ厚み
が3〜40μmのクリアー塗膜 (顔料を含まない) を設け
る方法が開示されている。この方法は、該クリアー塗膜
により表面塗膜に加わる圧力を吸収し、緩和するという
ものであり、顔料を加えるとこの効果が少なくなるた
め、クリアー塗膜に限定されている。ところが、実際の
プレコート鋼板の裏面側は、サービスコートと呼ばれる
5μm程度の有色塗膜 (顔料入り) が設けられるのが通
常であり、クリアー塗膜では下地の色が露出するため、
ユーザーに敬遠されがちである。また、この公報に記載
されているような、サービスコートの上層にさらにクリ
アー塗膜を塗布することは、コスト高を招く。
【0009】特開平6−170334号公報には、表面と裏面
の表面粗さの差が中心線平均粗さRaで0.7 μm以下であ
り、裏面の塗膜が、モース硬度4以下の非金属化合物を
該塗膜の顔料全体に対して20wt%以上の割合で含有し、
かつ裏面塗膜の厚さが3〜20μm であることを特徴とす
るプレコート鋼板が提案されている。これは、表裏塗
膜の粗さの差を小さくする、軟質化合物添加によるク
ッション効果、という2点によりプレッシャーマークの
発生を防止しようとするものである。に関しては、裏
面塗膜の凹凸が転写されるのがプレッシャーマークであ
るから、表裏の粗さの差を小さくするというのはある程
度の効果があるが、塗膜の本質的な改善にはつながらな
い。また、の軟質非金属化合物としては、体質顔料の
炭酸カルシウム、カオリン、タルク等の例が挙がってい
るが、このような軟質材料を塗膜中に多く含有させる
と、当然のことながら塗膜硬度が低下し、疵が付きやす
くなるなどの不具合を生じやすくなることから、万全の
対策とは言い難い。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】このようにプレッシャ
ーマーク発生の防止策は未だ満足できる方法が得られて
いないのが現状である。本発明の目的は、従来のプレッ
シャーマークの対策・改善方法が持つ上記のような問題
点を解消し、コスト高および手間の増大を招くことなく
プレッシャーマークの発生を抑制し得る、耐プレッシャ
ーマーク性に優れたプレコート鋼板とその製造方法を提
供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成すべく検討を重ねた。プレッシャーマークによる
光沢低下は、前述したように、裏面塗膜の凹凸の転写に
由来する表面塗膜の凹凸 (表面の粗さ) 変化に原因があ
る。これを塗膜物性の観点から防止するには、バルク
(塗膜全体) の押し込み硬度を高める方法が一般的であ
るが、この方法では加工性の低下が避けられない。
【0012】そこで、本発明者らは、表面押し込み硬度
と加工性を高度にバランスさせる方法を鋭意検討した結
果、塗膜の厚み方向にいわゆる傾斜機能を持たせること
でこれを実現できることを見出した。即ち、最上層とな
るトップコート (上塗り) 塗膜において、その最表層に
ついては架橋密度を高めて、プレッシャーマーク発生の
防止に十分な硬い構造とするが、プライマー(下塗り)
に近い側であるトップコートの内層については、比較的
軟質で加工性に富む樹脂構造にすれば、加工性の低下が
避けられる。
【0013】この知見に基づく本発明は、下記のプレ
コート鋼板およびのプレコート鋼板の製造方法であ
る。最上層の樹脂層が、数平均分子量 8,000〜25,000
の共重合ポリエステル樹脂とアルキルエーテル化アミノ
ホルムアルデヒド樹脂 (AEAFA樹脂と略記)とを重
量比率90/10〜80/20の割合で含有するプレコート鋼板
であって、X線光電子分光法で測定したこの樹脂層の最
表層の組成が、次式により算出した表面AEAFA樹脂
濃度で40〜60%であることを特徴とする、耐プレッシャ
ーマーク性に優れたプレコート鋼板。
【0014】
【数2】
【0015】式中、N1 は、該樹脂層のX線光電子分光
法で測定した最表層のN濃度(at%) 、N0 はAEAFA
樹脂のみからなる樹脂層のX線光電子分光法で測定した
最表層のN濃度(at%) である。
【0016】数平均分子量 8,000〜25,000の共重合ポ
リエステル樹脂とアルキルエーテル化アミノホルムアル
デヒド樹脂とを重量比率90/10〜70/30の割合で含有す
る塗料から最上層の樹脂層を形成するプレコート鋼板の
製造方法において、前記塗料を塗布した後、板面での風
速が 0.5〜3.0 m/sec の範囲内となるように制御した熱
風乾燥により塗膜を焼付けることを特徴とする、耐プレ
ッシャーマーク性に優れたプレコート鋼板の製造方法。
【0017】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の構成について詳
述する。
【0018】(1) 母材鋼板 プレコート鋼板の母材として使用される鋼板の種類は特
に限定されない。冷延鋼板、亜鉛系めっき鋼板やアルミ
系めっき鋼板等の表面処理鋼板などが好適に使用され
る。
【0019】(2) 下地処理 通常のプレコート鋼板の下地処理に用いられるものであ
れば特に限定されないが、通常は塗布型クロメート処
理、電解クロメート処理、反応型クロメート処理、リン
酸塩処理等が使用されることが多い。この際、クロメー
ト処理であれば、金属Cr換算付着量で片面15〜100 mg/m
2 が好ましく、リン酸塩 (リン酸亜鉛) 処理であれば、
片面の付着量が0.2 〜1.5 g/m2であるのが好ましい。
【0020】(3) 下塗り樹脂被覆層 (プライマー層) 下塗り樹脂被覆層は必ずしも必須ではないが、密着性向
上や隠ぺい性向上、また耐食性確保のために設けておく
のが好ましい。下塗り樹脂被覆層に使用される樹脂系は
特に限定されないが、加工性と密着性とのバランスか
ら、ポリエステル樹脂系、ポリウレタン樹脂系、エポキ
シ樹脂系あるいはこれらの樹脂系の混合物が好ましい。
【0021】(4) 上塗り樹脂被覆層 (最上層樹脂層) 本発明の目的であるプレッシャーマーク発生の防止に
は、最上層樹脂層となる上塗り樹脂被覆層の物性が重要
となる。本発明では、最上層を構成するベース樹脂とし
て、加工性に優れた共重合ポリエステル樹脂を使用し、
その架橋剤として自己縮合性を有し、表面濃化が可能な
アルキルエーテル化アミノホルムアルデヒド樹脂を併用
することで、最上層の樹脂層を架橋剤が表面側に濃化し
た傾斜組成とする。それにより、最上層樹脂層の表面
は、架橋密度が高くプレッシャーマーク発生を防止する
のに十分な高い押込み硬度を持つが、この樹脂層の内側
は架橋密度が低く、比較的軟質であるため、共重合ポリ
エステル樹脂の優れた加工性が保持される。
【0022】共重合ポリエステル樹脂 本発明で最上層塗膜のベース樹脂として用いる共重合ポ
リエステル樹脂は、多塩基酸成分と多価アルコール成分
との縮重合により得られる重合体である。多塩基酸成分
としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ア
ジピン酸、コハク酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル
酸、シクロヘキサンジカルボン酸などのジカルボン酸、
ならびにそのエステル形成性誘導体 (低級アルキルエス
テル、酸無水物等) が挙げられる。多価アルコールとし
ては、エチレングリコール、 1,2−プロパンジオール、
1,3−プロパンジオール、 1,4−ブタンジオール、ネオ
ペンチルグリコール、 1,6−ヘキサンジオール、ジエチ
レングリコール等が挙げられる。各成分とも1種もしく
は2種以上を使用できる。また、所望により3価以上の
多塩基酸 (例、トリメリット酸、ピロメリット酸等) お
よび/または3価以上の多価アルコール (例、ペンタエ
リスリトール、トリメチロールプロパン、グリセリン
等) も使用できる。
【0023】共重合ポリエステル樹脂は数平均分子量が
8,000〜25,000のものを使用する。数平均分子量が8,00
0 を下回ると、樹脂皮膜の加工性が低下し、25,000を超
えると、塗料の粘度が上昇し、塗装性が低下する。加工
性と塗装性の観点から好ましい共重合ポリエステルの数
平均分子量は10,000〜20,000である。
【0024】アルキルエーテル化アミノホルムアルデ
ヒド樹脂 (架橋剤) 共重合ポリエステル樹脂と焼付け時に縮合反応して樹脂
皮膜を硬化させる架橋剤として、アルキルエーテル化ア
ミノホルムアルデヒド樹脂 (以下、AEAFA樹脂と略
記する) を使用する。
【0025】AEAFA樹脂としては、アルキルエーテ
ル化メチロールメラミン樹脂、メトキシ化メチロールメ
ラミン、メトキシ化ブトキシ化混合型メチロールメラミ
ン、さらにはアルキルエーテル化量の比較的少ないメト
キシ化メラミンもしくはイミノ基型メラミン等を用いる
ことができ、これらを単独で使用しても、または2種以
上を併用してもよい。
【0026】従って、最上層樹脂層の形成に用いる塗料
は、ベース樹脂の共重合ポリエステル樹脂と架橋剤のA
EAFA樹脂とを必須成分として含有する。共重合ポリ
エステル樹脂/AEAFA樹脂の割合は、固形分基準の
重量比率で90/10〜70/30、好ましくは85/15〜75/25
とする。即ち、両者の合計量に基づいて架橋剤のAEA
FA樹脂の濃度は、樹脂層全体の平均値で10〜30重量%
となる。AEAFA樹脂の割合が10重量%未満では、こ
の樹脂層全体の架橋度が不足し、二次密着性や耐食性の
低下を来たす。一方、AEAFA樹脂の割合が30重量%
を超えると、架橋剤が過剰となって、この樹脂層全体が
高硬度化し、加工性が低下する。
【0027】使用する塗料は、共重合ポリエステルとA
EAFA樹脂以外に、塗料に慣用される他の成分を含有
しうる。かかる成分としては、溶媒、顔料、縮合反応触
媒、他の樹脂、消泡剤、レベリング剤、表面硬化調整
剤、艶消し剤、ワックス成分などが挙げられる。溶媒と
しては共重合ポリエステル樹脂とAEAFA樹脂の両者
を溶解できる有機溶媒がよく、適当な溶媒の例はシクロ
ヘキサノン、イソホロン、ソルベッソ、N−メチル−2
−ピロリドンなどである。縮合反応触媒としては酸触媒
(例、p−トルエンスルホン酸などの有機酸)が好まし
い。他の樹脂を併用する場合には、焼付け硬化後に後述
する表面AEAFA樹脂濃度が得られるように、その種
類と量を選択する。
【0028】共重合ポリエステル樹脂にAEAFA樹脂
を配合して塗布し、塗膜を焼付け硬化させると、表面自
由エネルギーが相対的に小さいAEAFA樹脂が焼付け
中に塗膜表面に移行して濃化する傾向がある。また、A
EAFA樹脂は自己縮合性があり、共重合ポリエステル
樹脂と縮合反応しなくても、AEAFA樹脂どうしの縮
合反応で架橋硬化できる。
【0029】このAEAFA樹脂の自己縮合性により、
塗膜の焼付け中に上記の表面自由エネルギー差によるA
EAFA樹脂の表面濃化が強く起こるようになり、樹脂
組成(ポリエステル樹脂と架橋剤の存在比率) が塗膜の
厚み方向に変化 (表面から内部に向かってAEAFA樹
脂濃度が減少) する傾斜機能が塗膜に付与される。例え
ばイソシアネート化合物などの他の架橋剤では、自己縮
合性がないため、架橋剤は必ず共重合ポリエステル樹脂
と反応しなければならず、表面濃化が起きてもその程度
は小さく、表面濃化による傾斜機能を発現させにくい。
【0030】このように、架橋剤として用いたAEAF
A樹脂が自己縮合性であって (完全メトキシ化メチロー
ルメラミンはそれ自身は自己縮合性が小さいが、酸触媒
を併用する事により自己縮合反応が促進される) 、しか
も表面自由エネルギーが共重合ポリエステルより小さい
ため、焼付け硬化中に架橋剤のAEAFA樹脂が最上層
樹脂層の表面に濃化するため、表面近傍での架橋密度が
高くなる。この緻密な架橋構造により、樹脂層の表面近
傍のみが選択的に高硬度化し、裏面塗膜の凹凸の転写に
よるプレッシャーマークの発生を抑制できる。しかし、
最上層樹脂層の内側は、逆に架橋剤のAEAFA樹脂の
濃度が低くなり、共重合ポリエステルがAEAFA樹脂
によって適度に架橋することにより、加工性を保持した
まま、二次密着性や耐食性が確保される。
【0031】AEAFA樹脂の表面濃化は、次式により
算出した表面AEAFA樹脂濃度が30〜80%、好ましく
は40〜60%となるような程度とする。この濃度が30%未
満では、最上層樹脂層の表面の架橋密度 (従って、押込
み硬度) がプレッシャーマーク発生の防止に十分な程度
に達しない。一方、この濃度が80%を越えると、表面が
脆くなり割れやすくなる。AEAFA樹脂の表面濃化の
程度は、後述するように、熱風乾燥による焼付け中の熱
風の風速によって制御することができる。
【0032】
【数3】
【0033】式中、N1 は、該樹脂層のX線光電子分光
法で測定した最表層のN (窒素) 濃度、N0 はAEAF
A樹脂のみからなる樹脂層のX線光電子分光法で測定し
た最表層のN濃度 (単位はいずれもat%) である。つま
り、上式で規定される表面AEAFA樹脂濃度は、最上
層樹脂層の表面でのAEAFA樹脂の占有率 (at%基
準) を意味する。前述したように、最上層樹脂層のAE
AFA樹脂濃度は平均で10〜30重量%である。AEAF
A樹脂の表面濃化が全くない (組成が厚み方向で均一)
であると仮定すると、10〜30重量%のAEAFA樹脂濃
度に対応する上式で規定されるAEAFA樹脂濃度は、
計算上10〜30%になるはずである。従って、本発明では
最表層のAEAFA樹脂濃度がこの樹脂層全体の平均値
より高く、AEAFA樹脂が表面濃化している。
【0034】なお、X線光電子分光法 (XPS) の測定
はVG社製ESCA3MKIIを使用して行った。X線源
はAlKα(hν=1486.6 eV)であり、アナライザーは純金
のAu4f7/2の結合エネルギーを83.7 eV(半値幅1.25 eV)
として校正した。塗膜は絶縁物であるため、XPS測定
時に結合エネルギーの増大(charge up) を生じる。その
補正には、共重合ポリエステル樹脂とAEAFA樹脂の
それぞれ単独皮膜に金蒸着し、そのAu 4f7/2の結合エネ
ルギーを83.7 eV として校正したC1s、N1sの結合エネ
ルギーを使用した。即ち、ポリエステルC−H基のC1s
結合エネルギーを284.7 eV、AEAFA樹脂のN1s結合
エネルギーを399.3 eVとして、試料のXPSスペクトル
を補正した。
【0035】測定は、試料表面と検出される光電子とが
なす角度である光電子取り出し角を70°に固定して行っ
た。検出深さ3λ sinθについては、Ashleyによるポリ
エチレン中での運動エネルギー約1200 eV に対するC1s
光電子の非弾性散乱電子平均自由行程λの計算値4nmを
用いると、11.3 nm であると推定される。
【0036】窒素濃度 (at%) は、測定したXPSスペ
クトルの面積強度より次式から計算した。 CN = (IN /SN ) /Σ (Ii /Si ) ここで、CN は窒素の原子濃度、IN は窒素のピーク面
積強度、SN は窒素の相対感度係数、Ii は樹脂層に存
在する水素以外の各元素 (C、N、O) のピーク面積強
度、Si はこの各元素の相対感度係数である。各元素の
相対感度係数は、 [C]1s :1.0 、 [O]1s :2.6l、
[N]1s :1.71を用いた。
【0037】(5) 塗装焼付方法 上記塗料の塗装方法は、通常のプレコート鋼板の製造に
使用される方法であれば特に限定されない。ロールコー
ト法、リンガーロール法、カーテンフローコート法、ス
プレー法等のいずれでもよい。
【0038】塗装後の焼付けは、熱風オーブン (即ち、
熱風乾燥) により行い、その際の熱風の風速によって、
最上層樹脂層の表面に濃化するAEAFA樹脂の量を制
御する。具体的には、板面での熱風の風速が 0.5 m〜3.
0 m/sec となる条件で塗膜の焼付けを行う。風速が0.5
m/sec 未満では、AEAFA樹脂の表面濃化が十分に起
こらず、上記の表面AEAFA樹脂濃度を得ることがで
きない恐れがある。風速が3m/sec を超えると、AEA
FA樹脂の表面濃化が過剰になり、この樹脂層の表面で
架橋が進行しすぎて、脆くなり、成形性が低下する。
【0039】風速の測定には、熱式流速計の1種である
熱線式流速計、サーミスター流速計等の慣用の測定機を
用いればよい。焼付け温度は、通常のプレコート鋼板の
焼付け温度と同様でよく、特に限定されないが、PMT
(最高到達板温度) で 200〜250 ℃程度であれば一般に
十分である。
【0040】
【実施例】厚さ0.6 mmの溶融亜鉛めっき鋼板 (めっき付
着量:片面60 g/m2)を母材鋼板とし、その表面を清浄化
した後、下地処理としてまず燐酸亜鉛溶液への浸漬によ
り燐酸亜鉛化成皮膜 (燐酸亜鉛付着量0.8 g/m2) を形成
した。次いで、下塗り樹脂被覆用の塗料として、大日本
インキ化学製のプライマー塗料PB10Pを、乾燥膜厚が
7μmになるようロールコーターで片面に塗布した後、
PMTが210 ℃になるように50秒で焼付け硬化させた。
この下塗り樹脂被覆層の上に、次に述べるようにして上
塗り樹脂被覆層を形成して、プレコート鋼板を作製し
た。
【0041】上塗り樹脂被覆用の塗料としては、下記表
1に示す4種類の共重合ポリエステル樹脂と、下記表2
に示す7種類の架橋剤とを組合わせた塗料を用いた。こ
の塗料は溶媒としてシクロヘキサノンを、顔料として酸
化チタンを、酸触媒としてp−トルエンスルホン酸を含
有していた。この塗料を乾燥膜厚18μmになるようにロ
ールコーターで塗布した後、熱風オーブン (熱風温度28
0 ℃) 中で熱風の風速(板面) を 0.3〜6 m/sec に制御
しながら焼付け硬化を行った。この焼付け時のPMT
は、 220〜240 ℃の範囲であった。
【0042】
【表1】共重合ポリエステル樹脂 記 号 数平均分子量 A 5,000 B 12,000 C 22,000D 30,000
【0043】
【表2】架 橋 剤 記号 名 称 P ヘキサメトキシメチロールメラミン Q メトキシ化ブトキシ化混合メチロールメラミン R ブトキシ化メチロールメラミン S イミノ基型メチロールメラミン T メトキシ化メチロールベンゾグアナミン U ヘキサメチレンジイソシアナートV ビスフェノールAのジグリシジルエーテル 上記の架橋剤のうち、P〜TがAEAFA樹脂であり、
UおよびVはAEAFA樹脂以外の比較用の架橋剤であ
る。作製したプレコート鋼板の性能を次のようにして評
価した。
【0044】耐プレッシャーマーク性 上で作製したプレコート鋼板(Aとする)の塗装面を、
プレコート鋼板の裏面側を想定して作製した別のプレコ
ート鋼板(Bとする)の塗装面と加圧下に面接触させ
て、耐プレッシャーマーク性を評価した。具体的には、
上記と同様に下地処理した鋼板の片面に、通常のプレコ
ート鋼板の裏面塗装 (サービスコート) に用いられるエ
ポキシ系塗膜を乾燥膜厚6μmで塗装焼付けして、裏面
側を想定した別のプレコート鋼板Bを作製した。
【0045】プレコート鋼板AとBの同寸法の試験片
を、塗装面どうしが面接触するように重ねて、40℃で10
0 kg/cm2×24時間の熱プレスを施し、熱プレス後のプレ
コート鋼板Aの塗膜表面を目視で観察し、プレッシャー
マークの発生状況を下記基準により評価した。 ○:プレッシャーマークの発生が全くない、 △:プレッシャーマークの発生が軽度、 ×=プレッシャーマーク発生が著しい。
【0046】折曲げ加工性 プレコート鋼板の試験片を、塗装面を外側にして板挟み
枚数を少なくしながら180°折曲げ加工した後、折曲げ
部の塗膜を10倍ルーペで観察し、塗膜に亀裂の確認でき
ない最小の板挟み枚数で折曲げ加工性を表示した。
【0047】例えば、0Tは密着曲げ可能を示し、1T
は折曲げられた板間間隔が、同じ厚みの板1枚分となる
まで、塗膜に亀裂を生ずることなく折曲げが可能である
ことを示す。従って、表示した数値が大きい程、加工性
が低い。この折曲げ加工性は温度依存性があるが、本実
施例では23℃ (常温) で試験した。この折曲げ加工性が
2T以内、特に1T以内であれば、折曲げ加工性は十分
に良好である。
【0048】塗装作業性 塗料パン内に塗料を入れ、塗料のピックアップ性を次の
基準で評価した。 ○:液膜が完全に持ち上がる、 △:部分的に液膜がとぎれるが、アプリケータロールに
液膜が完全に転写される、 ×:転写された液膜がとぎれ、いわゆるソロが発生。
【0049】試験結果を、塗料に用いた共重合ポリエス
テルおよび架橋剤の種類、塗料中のポリエステル/架橋
剤の重量比率 (固形分基準) 、板面での熱風風速、およ
び上記方法で求めた表面AEAFA樹脂濃度と共に、表
3にまとめて示す。
【0050】
【表3】
【0051】表3からわかるように、本発明に従って、
共重合ポリエステル/AEAFA樹脂の重量比率が90/
10〜70/30である塗料を塗布した後、熱風風速が 0.5〜
3.0m/sec の範囲で熱風乾燥して塗膜を焼付け硬化する
と、表面AEAFA樹脂濃度が30〜80%の範囲内となる
ように架橋剤のAEAFA樹脂が表面濃化した樹脂層を
形成することができた。この架橋剤の表面濃化により表
面のみ高硬度化することができ、共重合ポリエステル樹
脂皮膜の固有の優れた加工性を保持しながら、プレコー
ト鋼板のプレッシャーマーク発生を防止することが可能
となった。
【0052】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明によれ
ば、コスト高を招く別工程を必要とせずに、加工性や耐
疵つき性を良好に保持したまま、耐プレッシャーマーク
性が改善されたプレコート鋼板を得ることができ、この
プレコート鋼板は家庭用電機機器、屋内外器物等の用途
に好適に使用することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−168723(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 1/00 - 35/00 B05D 1/00 - 7/26

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 最上層の樹脂層が、数平均分子量 8,000
    〜25,000の共重合ポリエステル樹脂とアルキルエーテル
    化アミノホルムアルデヒド樹脂 (AEAFA樹脂と略
    記)とを重量比率90/10〜80/20の割合で含有するプレ
    コート鋼板であって、X線光電子分光法で測定したこの
    樹脂層の最表層の組成が、次式により算出した表面AE
    AFA樹脂濃度で40〜60%であることを特徴とする、耐
    プレッシャーマーク性に優れたプレコート鋼板。 【数1】 式中、N1 は、該樹脂層のX線光電子分光法で測定した
    最表層のN濃度(at%) 、N0 はAEAFA樹脂のみから
    なる樹脂層のX線光電子分光法で測定した最表層のN濃
    度(at%) である。
  2. 【請求項2】 数平均分子量 8,000〜25,000の共重合ポ
    リエステル樹脂とアルキルエーテル化アミノホルムアル
    デヒド樹脂とを重量比率90/10〜70/30の割合で含有す
    る塗料から最上層の樹脂層を形成するプレコート鋼板の
    製造方法において、前記塗料を塗布した後、板面での風
    速が 0.5〜3.0 m/sec の範囲内となるように制御した熱
    風乾燥により塗膜を焼付けることを特徴とする、耐プレ
    ッシャーマーク性に優れたプレコート鋼板の製造方法。
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