JP3486714B2 - 可逆式熱間圧延機の保熱炉内コイラードラム鋳造用耐肌荒れ性等にすぐれた耐熱鋳鋼 - Google Patents

可逆式熱間圧延機の保熱炉内コイラードラム鋳造用耐肌荒れ性等にすぐれた耐熱鋳鋼

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Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【発明の属する技術分野】本発明は、可逆式熱間圧延装
置におけるコイラードラムの胴部構成材料として使用さ
れる耐肌荒れ性、高温強度等にすぐれた耐熱鋳鋼に関す
る。
【０００２】
【従来の技術】可逆式熱間圧延装置（ステッケルミル）
は、比較的設備費の少ないホットストリップミルとし
て、主にステンレス鋼，特殊鋼等のスラブの熱間圧延に
使用されている。その圧延スタンドの左右両側に、コイ
ラードラムが配置されている。コイラードラムは、被圧
延材が所定の圧延温度に保持されるように、保熱炉（約
900 〜1100℃）内に設置されており、スラブ（厚さ約10
0 〜200 mm）は左右のコイラードラムに交互に巻き取ら
れながら、板厚約 2〜10mmの鋼帯に圧延される。上記コ
イラードラムは、外径 1000 mm以上, 胴長 2000 〜3000
mm, 肉厚 50 mmを超える大型厚肉の円筒体であり、その
ドラム材料として従来より、0.35C-24Cr-14Ni-1.4Nb-Fe
系耐熱合金材が多く使用されている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】保熱炉（約900 〜1100
℃）内のコイラードラムは、高温に加熱された鋼帯（表
面に酸化皮膜が生成している）の巻き取り過程で、鋼帯
表面の酸化皮膜がドラムの胴部表面に強く押し付けられ
る。このため、鋼帯の巻き取りの繰り返しに伴って、胴
部表面に、肌荒れと称する表面劣化を生じる。ドラムに
肌荒れが発生すると、巻き取られる鋼帯の表面に転写さ
れ、製品鋼帯の表面品質が著しく損われる。コイラード
ラムの耐肌荒れ性を強化することは、鋼帯の表面品質の
確保、該ドラムの耐久性の改善・メンテナンスの軽減に
不可欠である。また、コイラードラムの胴部は、高温環
境での鋼帯の巻き取りに伴う強い締付け力が反復作用
し、このため変形（鼓状変形）・疲労割れ（亀甲状亀
裂）を生じ易く、このこともコイラードラムの耐久性や
製品鋼帯の品質に悪影響を与える。本発明は上記に鑑
み、コイラードラムの構成材料等として有用な、改良さ
れた耐肌荒れ性および機械的特性を備えた耐熱鋳鋼を提
供するものである。
【０００４】
【課題を解決するための手段】本発明に係る可逆式熱間
圧延機の保熱炉内コイラードラム鋳造用耐熱鋳鋼は、重
量％で、 Ｃ：０.２〜０.４％、 Ｓｉ：２％以下、 Ｍｎ：４％以下 Ｃｒ：２６％を超え、３２％以下、 Ｎｉ：１３〜２５％、 Ｎｂ：０.５〜２％、 Ｎ：０．１〜０．２５％、 を含有し、残部は実質的にＦｅからなる化学組成を有し
ている。本発明の耐熱鋳鋼は、所望により、上記諸元素
のほか、Ａｌ：０．０２〜０．２％と、Ｔｉ：０．０１
〜０．２％,Ｚｒ：０．０１〜０．２％の元素群から選
ばれる１種ないし２種以上の元素を含有する化学組成が
与えられる。
【０００５】
【発明の実施の形態】本発明の耐熱鋳鋼の成分限定理由
は次のとおりである。明細書中、合金元素の含有量を示
す％は全て重量基準である。 Ｃ: ０．２〜０．４％ Ｃは、Ｎｂと結合して粒界にＮｂＣを析出して高温クリ
ープ破断強度を高めると共に、基地中の固溶Ｃ量を低減
させる効果として、高温使用における二次析出物の生成
を抑制し、時効後の延性低下の抑制防止に寄与する。１
１００℃前後の高温環境での使用を考慮した上記ＮｂＣ
の効果を得るために、Ｃは０．２〜０．４％の含有量を
必要とする。
【０００６】Ｓｉ: ２．０％以下 Ｓｉは鋼の溶製工程での流動性の確保および脱酸に必要
な元素である。しかし、過剰に添加すると、溶接性の低
下、クリープ破断強度の低下等をきたすので、２％以下
の範囲内で添加される。 Ｍｎ: ４％以下 Ｍｎは溶鋼の脱酸作用を有し、またＳを固定（ＭｎＳの
形成）し、溶接性を高める効果を有する。更に、Ｍｎの
増量により、鋳放し材の引張破断延性が高められる。し
かし、４．０％を超えると、クリープ破断強度が低下す
るので、これを上限とする。
【０００７】Ｃｒ: ２６％を超え，３２％以下 Ｃｒは、耐酸化性および高温強度を高め、また耐肌荒れ
性の強化に有効な元素である。１０００〜１１００℃の
使用環境に必要な耐酸化性および高温強度は、２２％程
度の含有量で確保することができるが、２６％を超える
量とすることにより、耐肌荒れ性を大きく高めることが
可能となる。好ましくは、２７％以上であり、Ｃｒの増
量に伴って肌荒れの抑制防止効果は増強される。しか
し、その反面、引張延性の低下傾向を付随し、３２％を
超えるとクリープ破断寿命の低下が大きくなるので、こ
れを上限とする。２６％超のＣｒ含有により、引張延性
が多少犠牲にされるが、耐肌荒れ性の向上に伴うコイラ
ードラムの耐久性，圧延材品質の改善効果は、引張延性
の低下の不利を補って十分に余りあるものである。
【０００８】Ｎｉ: １３〜２５％ Ｎｉは、耐酸化性および組織の安定化に必要な元素であ
る。含有量が１３％に満たないと、約９００℃程度の温
度域でシグマ相の析出による時効脆化を生じ、他方２５
％を超えると、鋳放し材の引張破断延性が低くなるの
で、１３〜２５％とする。好ましくは、１５〜２０％で
ある。
【０００９】Ｎｂ: ０．５〜２％ Ｎｂは、Ｃと結合してＮｂＣを析出してクリープ破断強
度を高め、また固溶Ｃの低減効果として、時効後の延性
を高める。この効果は、０．５％以上の添加により得ら
れる。好ましくは、０．８％以上である。しかし、２％
を超えると、鋳放し材の延性及びクリープ破断強度の低
下をきたすので、これを上限とする。
【００１０】Ｎ: ０．１〜０．２５％ Ｎは、オーステナイト基地中に固溶して高温引張強度を
高める効果を有する。また、Ｎはオーステナイト相を安
定化する。０．１％未満のＮｉ量では、高温引張強度の
向上効果は得られないが、０．１％以上の添加により顕
著に現れる。しかし、過度に増量すると、引張破断伸び
の低下が大きくなるので、０．２５％以下に規制され
る。
【００１１】Ａｌ: ０．０２〜０．２％ Ａｌは耐酸化性を高める元素である。この効果を得るに
は、０．０２％以上を必要とする。０．２％を超える
と、酸化物の生成量の増大により、引張延性が悪くなる
ので、これを上限とする。 Ｔｉ: ０．０１〜０．２％ Ｔｉはクリープ破断強度の改善に寄与する。この効果を
得るために、０．０１％以上が必要である。０．２％を
超えると、窒化物の増量により、クリープ破断強度の低
下をきたすので、これを上限とする。 Ｚｒ: ０．０１〜０．２％ Ｔｉと同じく、クリープ破断強度の改善に寄与する。こ
の効果を得るために、０．０１％以上が添加される。多
量に添加すると、窒化物の増量に伴うクリープ破断強度
の低下をきたすので、０．２％を上限とする。
【００１２】本発明の耐熱鋳鋼は、通常の溶製技術上不
可避の不純分の混在が許容される。例えば０．０４％以
下のＰ，０．０４％以下のＳの混入によって本発明の趣
旨を損なわれることはない。
【００１３】本発明の耐熱鋳鋼からなる部材は、所定組
成に調製された鋳鋼溶湯を遠心鋳造または置注ぎ鋳造す
ることにより製造される。鋳造体は、特別の調質熱処理
を必要とせず、そのまま使用することができる。
【００１４】
【実施例】表１に供試鋳鋼の化学組成、表２に、各供試
材の機械性質および肌荒れ試験結果を示す。表中，比較
例No.11 は従来材, No.12 及びNo.13 は発明例に類似す
る組成を有しているが、前者はＣｒ量が不足し、後者は
過剰の例である。クリープ破断試験、耐肌荒れ性試験の
試験条件は次のとおりである。
【００１５】〔耐肌荒れ性試験〕図１参照。供試鋳鋼の
鋳造ブロックに機械加工を施して作製した中空筒体
（１）（外径 60,内径 40,幅 30,mm）に軸材（２）を嵌
めてロール（３）を構成し、ロール表面に、別途用意し
たステンレス鋼丸棒（４）（外径75, 長さ100,mm）を、
軸線が一致する向きに押圧接触させる。ロールの中空筒
体（１）及びステンレス丸棒（４）を加熱保持してロー
ルを回転させる。ステンレス鋼丸棒の表面は酸化皮膜で
覆われている。ロールの回転を所定時間継続した後、中
空筒体（１）表面の肌荒れ発生状況を肉眼観察する。 試験温度：１０００℃、 回転速度： 試験時間：１００Ｈｒ 表中「耐肌荒れ性」欄の符号は次のとおりである。 ○…肌荒れの発生なし，×…肌荒れの発生顕著
【００１６】〔クリープ破断試験〕 試験片: 平行部径 8 mm, 標点間距離 40 mm 試験温度: 982 ℃, 荷重: 3.5 kgf/mm2 (JIS Z 2272)
【００１７】
【表１】
【００１８】
【表２】
【００１９】発明例は、従来材のNo.11 に比し、常温お
よび高温の機械性質、および耐肌荒れ性にすぐれてい
る。比較例No.12 は、Ｃｒ量の不足により、耐肌荒れ性
の改善効果が少なく、比較例No.13 は、耐肌荒れ性にす
ぐれているが、Ｃｒ量が過剰のため、クリープ破断寿命
が劣っている。
【００２０】
【発明の効果】本発明の耐熱鋳鋼は、高温環境での耐肌
荒れ性，機械性質にすぐれ、殊に可逆式熱間圧延装置の
コイラードラムの材料として、耐用寿命の向上・メンテ
ナンスの軽減，製品鋼帯の表面品質の向上安定化等の効
果をもたらすものである。
【図面の簡単な説明】
【図１】肌荒れ試験要領の説明図である。 １：被験材中空筒体 ４：相手材

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 重量％で、 Ｃ：０.２〜０.４％、 Ｓｉ：２％以下、 Ｍｎ：４％以下、 Ｃｒ：２６％を超え、３２％以下、 Ｎｉ：１３〜２５％、 Ｎｂ：０.５〜２％、 Ｎ：０．１〜０．２５％、 を含有し、残部は実質的にＦｅからなる、可逆式熱間圧
    延機の保熱炉内コイラードラム鋳造用耐肌荒れ性等にす
    ぐれた耐熱鋳鋼。
  2. 【請求項２】 重量％で、 Ｃ：０.２〜０.４％、 Ｓｉ：２％以下、 Ｍｎ：４％以下 Ｃｒ：２６％を超え、３２％以下、 Ｎｉ：１３〜２５％、 Ｎｂ：０.５〜２％、 Ｎ：０．１〜０．２５％、 およびＡｌ,Ｔｉ,Ｚｒから選ばれる1種ないし２種以上
    の元素、 Ａｌ：０.０２〜０.２％、 Ｔｉ：０.０１〜０.２％、 Ｚｒ：０.０１〜０.２％、 を含有し、残部は実質的にＦｅからなる、可逆式熱間圧
    延機の保熱炉内コイラードラム鋳造用耐肌荒れ性等にす
    ぐれた耐熱鋳鋼。
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