JP3486202B2 - 透光性表面保護積層膜およびその製造方法 - Google Patents

透光性表面保護積層膜およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光透過率が高く低反射
率であり、高い表面硬度および機械的強度を有し、耐水
性および耐紫外線性に優れた、透光性表面保護積層膜、
特に太陽電池または電子写真感光体などの表面保護に好
適な、透光性表面保護積層膜およびその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】透光性の表面保護膜は、太陽電池や電子
写真などの、光を利用する分野で広く用いられており、
透明樹脂や透明ガラスなどが用いられている。
【0003】太陽電池は、現在、広い範囲で利用されて
いる。そのモジュール(目的に応じた数量の太陽電池セ
ルを直列および並列に配線し封入したユニット)の構造
としては、サブストレート方式(下部基板の上にモジュ
ールを並べ、透明樹脂で太陽電池を封入する方式)や、
スーパーストレート方式(太陽電池の受光面側にガラス
などの透明基板を置いてモジュールの支持板とし、その
周囲に透明樹脂を充填し、さらに裏面コートを用いて太
陽電池を封入する方式)が用いられている。太陽電池は
太陽光の受光による起電力を用いるので、高い受光効
率、すなわち高い光透過率および低い反射率が要求され
る。しかし、ここで用いられる透明樹脂や透明ガラス
は、光反射率が高く、さらに太陽光線の光透過率が不十
分であり、しかもこの光透過率は露光時間の長期化と共
に低下するため低い有効起電力しか得られない。さら
に、紫外線による酸化によって耐水性の低下や絶縁不良
が起こり、機械的強度や硬度が不足となるため、実用
上、障害が多い。例えば、太陽電池においては、透明樹
脂として、紫外線による光透過率低下の少ないポリビニ
ルブチラールや、耐湿性に優れたエチレンビニルアセテ
ートなどが使用され、透明ガラスとして、光透過率や耐
衝撃強度に優れた、白板ガラスを熱強化した強化ガラス
などが用いられている。しかし、太陽電池は太陽光に常
時暴露されるため、これらの材料はいずれも、その耐紫
外線性、耐水性、および耐候性共に急速に低下し、その
結果太陽電池素子が作動し難くなる。さらに太陽電池に
使用するためには、理想的には光透過率100%、反射
率5%以下が要求されるが、上記材料ではこの要求に程
遠い。
【0004】電子写真感光体についても、その表面保護
に関して、光透過率、反射率および表面硬度など、太陽
電池の場合と共通する改善要求がある。しかし上記のよ
うな樹脂による保護膜では受光効率が悪い。さらに電子
写真感光体の場合、特に機械的強度を要求される度合が
高いため、樹脂などの場合、表面が傷付きやすいという
問題もある。
【0005】従って、太陽電池セルや電子写真感光体な
どを保護するために、上記の欠点を克服するような、透
光性に優れた保護膜の開発が進められている。
【0006】理論的には保護膜の光透過性および硬度は
膜の組成(例えば保護膜が金属酸化物からなる場合には
その組成および酸化状態)と空孔率に依存すると考えら
れている。すなわち、組成が一定であれば膜密度が増加
すると膜の空孔率は減少し、光透過性および膜硬度が上
昇する。しかし、保護膜を形成する場合には基材の熱変
形点、保護膜の膜厚、保護膜形成時の乾燥温度などの種
々のファクターを考慮する必要がある。特に蒸着により
膜を形成する場合には蒸着温度および真空度の考慮も必
要である。このため硬度、耐久性(特に耐紫外線性およ
び耐水性)および保護膜と基材との接着性の点で満足し
得る保護膜を製造することは容易ではない。
【0007】物質に光が当たると、反射、吸収、屈折、
散乱、および分散などの現象が起こる。この光の挙動は
理論的には屈折率、消衰係数などの、物質の光学定数に
支配される。特に太陽電池に光学的に応用される物質の
場合は、太陽光の可視光部分を透過させることが必要で
あり、反射光を最小にするために光の干渉効果が利用さ
れる。
【0008】一般にガラスは可視光線に対して表裏両面
で合計約8%の反射率を有する。低屈折率膜、多層干渉
膜、または多孔質層膜のいずれかをガラスにコーティン
グすることによりこの反射率を低減させ得ることが理論
的に知られている。
【0009】上記低屈折率膜は光の干渉効果を利用す
る。ガラスより低屈折率の薄膜を用いることにより反射
率を低減し得る。低屈折率物質としては各種フッ化物
(例えば、MgF2およびAlF3・3NaFすなわち氷
晶石)などが挙げられるが実用上問題が多い。これらは
組成が一定であれば空孔率が大きいほど、低屈折率の膜
となるが、前記したように光透過性は空孔率が小さいほ
ど向上するため、要求される性能を満たすのは困難であ
る。
【0010】前記多層干渉膜は、光の干渉理論に基づい
て高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に積層したもので、
単層膜に比べ反射率が低く層数に応じた広い低反射域を
有している。例えば、TiO2とSiO2との交互多層膜
は層数により分光特性が大きく異なっている。
【0011】前記多孔質層膜にはスケルトン層などがあ
る。これはガラスの表面を酸処理して得られるスポンジ
状多孔質層である。この場合、光の波長より小さい孔径
(300オングストローム以下)の多孔質層と基材ガラ
スとの屈折率の差、および多孔質層の空孔率により反射
防止作用を有するものと考えられる。
【0012】以上のように種々の反射率低減の方法があ
るが、膜厚やひび割れなどの問題があり、実用化は困難
である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来の欠
点を解決するものであり、その目的とするところは、光
透過率が高く低反射率であり、高い表面硬度および機械
的強度を有し、耐水性および耐紫外線性に優れた透光性
表面保護積層膜を提供することにある。本発明の他の目
的は該透光性表面保護積層膜の製造方法を提供すること
にある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の透光性表面保護
積層膜は、基材の少なくとも片面に積層された、少なく
とも2層からなる透光性表面保護積層膜であって、該基
材上に形成された第1の層が、マグネシウムアルコキシ
ドを含む少なくとも2種の金属アルコキシド、アルコキ
シシラン、およびシランカップリング剤を含有する組成
物をゾル−ゲル法によって加水分解および重縮合して得
られる、主成分が無機質である複合ポリマーで形成さ
れ、該第1の層の表面に形成された第2の層が、金属ア
ルコキシドおよびシランカップリング剤を含有する組成
物をゾル−ゲル法によって加水分解および重縮合して得
られる、主成分が有機質である複合ポリマーで形成さ
れ、そのことにより上記目的が達成される。
【0015】本発明の透光性表面保護積層膜の製造方法
は、マグネシウムアルコキシドを含む少なくとも2種の
金属アルコキシド、アルコキシシラン、シランカップリ
ング剤、鉱酸、塩基触媒、水および有機溶媒を含有する
第1の塗工液を基材の少なくとも片面に塗布・乾燥する
工程;金属アルコキシド、シランカップリング剤、水お
よび有機溶媒を含有する第2の塗工液を該第1の塗工層
表面に付与する工程;および該第1の塗工層および第2
の塗工層からなる積層膜を120℃以上で熱処理する工
程;を包含し、そのことにより上記目的が達成される。
光の反射率を低減させるためには、さらに上記積層工程
を繰り返して行い、所望の透光性と反射率を有する表面
保護積層膜を形成することが可能である。
【0016】本発明の透光性表面保護積層膜を形成し得
る基材の素材は特に限定されないが、各種樹脂、特に熱
可塑性樹脂製の、もしくはそれを主成分とする基材、ガ
ラス板、または金属板が好適に用いられる。基材の形態
はフイルム、シート、板状をはじめとする各種成形体で
あり得る。熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート系
樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポ
リエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニル系樹脂、
セルロース系樹脂などがある。これらの樹脂は単独重合
体であっても共重合体であってもよい。ガラス板として
は透明度が高く、基板に適した強度を有するシリカガラ
ス、ホウケイ酸ガラスなどがある。金属板としてはアル
ミニウム板、ジュラルミン板,SUS板などがある。
【0017】本発明に用いられるアルコキシシランは、
Si(OR14で表され、R1は、低級アルキル基(炭
素数1〜4)である。例えばSi(O−CH34、Si
(O−C254が用いられる。これらのアルコキシシ
ランは混合して使用されてもよい。
【0018】本発明に用いられる金属アルコキシドとし
ては、マグネシウムアルコキシド、アルミニウムアルコ
キシド、チタニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコ
キシドなどがある。2種以上のこれらの金属アルコキシ
ドを混合して用いてもよい。これらの金属アルコキシド
は低級アルコキシ基を有する。例えばマグネシウムアル
コキシドは、Mg(OR22で表され、R2は低級アル
キル基である。具体的には、Mg(OCH32、Mg
(OC252、Mg(OC372、Mg(OC49
2などが用いられ得る:アルミニウムアルコキシドは、
Al(OR33で表されR3は低級アルキル基 である。
例えば、Al(OCH33、Al(OC253、Al
(OC373、Al(OC493が用いられる:チ
タニウムアルコキシドは、Ti(OR44で表され、R
4は低級アルキル基である。例えば、Ti(O−CH3
4、Ti(O−C254、Ti(O− C374、Ti
(O−C494が用いられる:ジルコニウムアルコキ
シドは、Zr(OR54で表され、R5は低級アルキル
基である。具体的には、Zr(O−CH34、Zr(O
−C254、Zr(O−C374、Zr(O−C
494などが用いられ得る:各金属アルコキシドは2
種以上を混合して用いてもよい。
【0019】基材上に形成される第1の層を形成するた
めの金属アルコキシドには、マグネシウムアルコキシド
が含有される。その使用量は、第1の層を形成するため
の塗工液の総重量の0.01〜3重量%であり、好まし
くは0.01〜0.03重量%である。マグネシウムア
ルコキシドの添加によって、微量のMgOが生成し、ゾ
ル−ゲル法加水分解時のアルミナ粒子の成長を防いで、
皮膜内部のアルミナ粒子の大きさが可視光線の波長以下
に保たれる。このことにより可視光の透過性を良好にし
得る。
【0020】該第1の層を形成するための金属アルコキ
シドには、好ましくは、さらにアルミニウムアルコキシ
ドおよび/またはチタニウムアルコキシドが含有され
る。
【0021】アルミニウムアルコキシドを用いることに
よって、得られる保護膜の硬度が上がり、基材の表面硬
度が向上する。その使用量は、第1の層を形成するため
の塗工液中においては、上記アルコキシシラン100重
量部に対して50重量部以下の範囲であり、好ましくは
約30重量部である。50重量部を上回ると、形成され
る複合ポリマーの剛性および脆性が大きくなり、その結
果該コーティング膜が亀裂し、あるいは剥離しやすくな
る。
【0022】チタニウムアルコキシドを用いることによ
って、得られる保護膜の硬度が上がり、基材の表面硬度
が著しく向上する。その使用量は、上記アルコキシシラ
ン100重量部に対して30重量部以下の範囲であり、
好ましくは約20重量部である。30重量部を上回る
と、形成される該複合ポリマーの剛性および脆性が大き
くなり、その結果該コーティング膜が剥離しやすくな
る。
【0023】該第1の層を形成するための金属アルコキ
シドには、さらにジルコニウムアルコキシドがふくまれ
ていてもよい。ジルコニウムアルコキシドは、ジルコニ
ウムアルコキシドを用いることによって、得られる保護
膜の靭性や耐熱性が向上する。その使用量は、上記アル
コキシシラン100重量部に対して10重量部以下の範
囲であり、好ましくは約5重量部である。10重量部を
上回ると、形成される複合ポリマーはゲル化しやすく、
脆性が大きくなり、その結果該保護膜が剥離しやすくな
る。
【0024】第1の層の上に形成される第2の層を形成
するための金属アルコキシドには好ましくはマグネシウ
ムアルコキシドが含有される。第2の層を形成するため
の、マグネシウムアルコキシドの使用量は上記の第1の
層の場合と同様であり、第2の層を形成するための塗工
液の総重量の0.01〜3重量%であり、好ましくは
0.01〜0.03重量%である。
【0025】該第2の層を形成するための金属アルコキ
シドには、好ましくは、さらにアルミニウムアルコキシ
ドが含有される。その使用量は、第2の層を形成するた
めの塗工液中においては、塗工液の総重量の3〜20重
量%であり、好ましくは約8.5重量%である。
【0026】上記アルコキシドと共に用いられるシラン
カップリング剤は、既知の反応性有機置換基を含有する
オルガノアルコキシシランを包含する。特に、エポキシ
基を含有するオルガノアルコキシシランが好適である。
その例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキ
シシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシ
シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチ
ルトリメトキシシラン、などがある。このようなシラン
カップリング剤の2種以上を混合して用いてもよい。そ
の使用量は、第1の層を形成するための塗工液中におい
ては、アルコキシシラン100重量部に対して10〜5
0重量部の範囲内である。50重量部以上を使用すると
形成される該複合ポリマーの硬度が低下する。第2の層
を形成するための塗工液中においては、アルミニウムア
ルコキシド100重量部に対して400〜700重量部
の割合で用いられ、該第2の層を形成するための塗工液
の全体に対して30〜60重量%の割合で用いられる。
【0027】本発明の方法に用いられ、主として重縮合
触媒として作用する塩基触媒は、水に実質的に不溶であ
り、かつ有機溶媒に可溶である第三アミンを包含する。
その例としては、N,N−ジメチルベンジルアミン、ト
リプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルア
ミンがあり、特にN,N−ジメチルベンジルアミンが好
適である。その使用量は、該アルコキシシラン、該金属
アルコキシド、および該シランカップリング剤の合計量
100重量部あたり0.1〜1重量部であり、好ましく
は約0.3重量部である。
【0028】本発明の方法に用いられる鉱酸は、ゾル−
ゲル法の酸触媒として作用するとともに、アルミニウム
アルコキシドを溶解させる働きを有する。その例として
は硫酸、塩酸、硝酸などがあげられる。該鉱酸の使用量
は、アルコキシシラン、金属アルコキシド、およびシラ
ンカップリング剤のアルコキシド部分(アルコキシシラ
ンおよび金属アルコキシドの場合OR1、OR2、O
3、OR4またはOR5に相当する部分)100重量部
に対し1〜10重量部であり、好ましくは約5.0重量
部である。
【0029】本発明の方法で用いられる第1および第2
の塗工液においては、それぞれ、アルコキシシランおよ
び金属アルコキシドの合計100重量部に対して、1〜
30重量部の水が用いられる。水の量が30重量部を上
回ると、アルコキシシランや金属アルコキシドの加水分
解が過剰に進むため、該加水分解物が重縮合して得られ
る複合ポリマーは、高度に架橋し、多孔性で密度の低い
ポリマーとなる。その結果、基材の表面硬度を向上させ
ることができない。水の量が1重量部を下回ると、加水
分解反応が進行しにくくなる。
【0030】本発明の方法に用いられる有機溶媒として
は、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチ
ルアルコールなど、水と相溶性のある溶媒が用いられ
る。その使用量は、通常は、上記アルコキシシラン、金
属アルコキシド、シランカップリング剤、水、鉱酸およ
び塩基触媒の合計100重量部あたり50〜150重量
部である。
【0031】本発明の方法によれば、本発明の透光性積
層表面保護膜は、例えば以下のようにして形成される。
まず、上記アルコキシシラン、金属アルコキシド(マグ
ネシウムアルコキシドおよび必要に応じて他の金属アル
コキシドを含む)、シランカップリング剤、鉱酸、ゾル
−ゲル法(塩基)触媒および有機溶媒を混合して塗工液
を調製する(これを塗工液Aとする)。同様に、金属ア
ルコキシド、シランカップリング剤、水、有機溶媒、お
よび必要に応じて酸触媒および/または塩基触媒を混合
して第2の塗工液を調製する(これを塗工液Bとす
る)。塗工液Aは塗工液Bに比べて無機成分の含有量が
多い。塗工液AおよびBを用いて後述のように透光性表
面保護積層膜を調製したときに、塗工液Aから調製され
る第1の層においては、無機質と有機質との構成成分比
(重量比)が95:5〜60:40の範囲であり、好ま
しくは80:20である。塗工液Bから調製される第2
の層においては無機質と有機質との構成成分比(重量
比)が30:70〜50:50の範囲であり、好ましく
は40:60である。ここで無機質とは、塗工液に含ま
れるアルコキシシラン、金属アルコキシドおよびシラン
カップリング剤がすべて縮合して、生成したアルコール
などが系から除かれたと考えた場合の、SiO2および
Al23などの金属酸化物の形に換算される部分をい
う。ここで有機質とはシランカップリング剤のアルコキ
シ基以外の置換基の部分をいう。上記塗工液Aを基材の
表面に塗工し常温にて風乾し、指触乾燥状態とした時点
で、その表面に塗工液Bを塗布する。これを乾燥させた
後、120℃〜150℃の範囲の温度で、1分〜10分
間加熱すると、本発明の積層保護膜が得られる。必要に
応じて、塗工液AおよびBをこの順序で順次塗工して積
層を繰り返し、上記加熱処理を行い、所望の表面硬度を
有する積層保護膜を得る。
【0032】以上のようにして得られる本発明の透光性
表面保護積層膜は、基材の表面に所望の硬度を付与し、
また該保護膜の基材に対する接着性に優れる。基材表面
の耐水性、特に耐温水性も飛躍的に上昇する。
【0033】
【作用】本発明の方法においては、塗工液A中のアルコ
キシシランおよび金属アルコキシドが加水分解され(主
として酸触媒が働く)水酸基を生じる。次いでゾル−ゲ
ル法触媒(塩基触媒)の働きによって、該水酸基の脱プ
ロトン化がおこり、加水分解生成物同士が脱水重縮合す
る。このとき、同時に前記シランカップリング剤のアル
コキシ基も加水分解されて水酸基を生じ、また塩基触媒
の働きによりエポキシ基の開環も起こり、やはり水酸基
を生じる。加水分解された該シランカップリング剤と加
水分解された該アルコキシシランおよび該金属アルコキ
シドとの重縮合反応も進行する。生成する重縮合物は、
Si−O−Si、Si−O−Al、Si−O−Tiなど
の結合からなる無機質部分と、シランカップリング剤の
アルコキシ基以外の置換基、例えばエポキシ基を含む部
分に起因する有機質部分とを含有する複合ポリマーであ
る。
【0034】上記反応においては、例えば、(I)式に
示される部分構造式に加えて、さらにシランカップリン
グ剤に起因する部分を有する網目状3次元のポリマーが
まず生成する。該ポリマーは網目状の構造の中にアルコ
キシ基を有する。該アルコキシ基は、存在する鉱酸の触
媒作用によって加水分解されて水酸基を生じ、該水酸基
がさらに結合を形成して、(II)式に示される複合ポリ
マーが生じると考えられる。上記重縮合反応において
は、ゾル−ゲル法触媒(塩基触媒)の働きにより先ず水
酸基が脱プロトン化し、次いで重縮合が進行する。ここ
で、下記(I)式および(II)式は、連続的な3次元架
橋構造の一部分を例示したものであり、この構造に限定
されない。(II)式中の波線(〜)は、使用されたシラ
ンカップリング剤の分子中の反応性有機置換基、例えば
エポキシ基と、該シランカップリング剤の分子中のケイ
素との間の有機鎖に由来する部分である。例えば、シラ
ンカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリ
メトキシシランを使用する場合は、この波線部分は−C
2OCH2CH2CH2−に対応する。
【0035】
【化1】
【0036】本発明の方法においては、上記塗工液調製
の過程で加水分解および重縮合反応が進行する。例え
ば、上記塗工液Aは、主成分としてSiO2、Mg2O、
Al23および TiO2などを含有し得る無機質成分
と、シランカップリング剤のアルコキシ基以外の置換基
に起因する有機質成分とからなる複合ポリマーを生成
し、該複合ポリマーは常温風乾で簡単に指触乾燥状態と
なって軟らかい膜を形成する。その上層に塗布される上
記塗工液Bも、シランカップリング剤と金属アルコキシ
ドとの間で加水分解および重縮合反応によって複合ポリ
マーを生成する。塗工液AおよびBにより形成される該
膜においては、120℃〜150℃の温度で加熱乾燥す
ることにより重縮合が完全に進行して硬化する。
【0037】その際、該塗工液Bより形成される第2の
層(上層)の複合ポリマーは、シランカップリング剤に
起因する反応性有機置換基、例えばエポキシ基を多く含
む。シランカップリング剤のエポキシ基は、上述したよ
うに塩基触媒により開環し、加熱により重合し、硬化し
て高密度のポリマーとなる。その結果、塗膜が熱収縮を
起こし、エポキシ基を硬化させたときに特有の圧縮応力
を生じる。一方、該塗工液Aにより形成される第1の層
(下層)の複合ポリマーは内部において比較的ゆっくり
と乾燥収縮するために、第2の層からの圧縮応力が加わ
りやすく、これにより第1の層の無機質部分の密度が上
昇する。冷却固化の過程で第1の層の内部の密度が高く
なることによる圧縮応力が硬化した第2の層に働き、そ
の硬度が更に向上される。このように、強い圧縮応力層
(第2の層)を作ることにより張力破壊に対して圧縮応
力分だけ密度が向上し、分子配列や硬度が強化されると
共に、第1の層の空孔率が減少し、かつ密度上昇に伴い
緻密な透光層となる。さらに、第1の層と第2の層との
屈折率の差により、高屈折率の膜と低屈折率の膜とが交
互に積層した多層干渉膜となり、その表面はスケルトン
層のような、光の波長より小さい孔径の多孔質層となっ
て反射率を低減する。
【0038】上記表面強度向上のメカニズムはガラスの
表面高度を高くするための物理強化法および化学強化法
の原理とも通じるところがある。物理強化法(風冷強化
法)は、ガラスをその軟化温度近くまで加熱後、急冷す
る方法である。急冷によりガラス表面は直ちに固化する
ため強い圧縮応力層を形成し、内部は比較的ゆっくり冷
却収縮するために、表面層に圧縮応力がかかる。このこ
とにより、張力破壊に対して圧縮応力分だけ強化され
る。化学強化法(イオン強化法)は、ガラス中のアルカ
リイオン(ナトリウムイオン)をより大きい一価イオン
で置換し、その容積増加によって圧縮応力を発生させる
方法である。
【0039】上記塗工液Aのみを基材に塗布し120〜
150℃で乾燥固化した場合、特に基材が樹脂の場合、
生成する被膜は全面に細かい亀裂を有し該基材への接着
性も悪い。これは、該基材の樹脂と、該塗工液Aより生
成する複合ポリマーとの熱膨張率および収縮度の差によ
る。これに対して、該塗工液Aを常温風乾することによ
り軟らかい第1の層を形成し、該第1の層を、有機質を
より多く含有する塗工液Bによる第2の層で被覆して、
同じ条件で乾燥固化した場合は、まず固化熱収縮される
該第2の層の複合ポリマーの有機質成分による靭性によ
り保護されつつ、発生した内部応力により該第1の層の
無機質成分の密度が増加するため亀裂は発生しない。
【0040】本発明の方法によって、例えばガラス板上
およびSUS板上に太陽電池素子を置いて、該積層保護
膜をコートした場合、紫外・可視光領域の分光吸収、す
なわち光透過率は100%、反射率は5%以下となる。
さらに耐候性、表面硬度、密着性、耐衝撃性、耐火災性
などの面でも優れた性能を示し、太陽電池や電子写真感
光体などに好適な表面保護膜として、半恒久的な保護性
能を示すに至った。
【0041】本発明の透光性表面保護積層膜の使用目的
は、上述の太陽電池および電子写真感光体に限定され
ず、高光透過率、低反射率などの性能が要求される広い
分野への応用が可能である。例えば、光学レンズ、計器
類のカバーグラス、太陽光集熱板、または、反射防止用
表面コート剤などに、好適に用いられ得る。
【0042】
【実施例】以下に本発明を実施例に基づいて説明する。
【0043】 表1に示す成分(各々重量部)に従って
チタニウムテトライソプロポキシド、マグネシムエト
キシド、アルミニウムイソプロポキシド、エチルシリケ
ート、エタノール、塩酸(表1および表2のHClは乾
燥HCl換算の塩酸の量である)、および水を混合し、
常温(約25℃)で攪拌した。約30分から2時間の攪
拌の後、あらかじめ調製したシランカップリング剤SH
6040(東レダウコーニング社製)およびN,N−ジ
メチルベンジルアミンのエタノール溶液を加えて更に攪
拌し、塗工液Aを得た。
【0044】次に表2に示す成分(各々重量部)に従っ
て、アルミニウムイソプロポキシド、マグネシウムエト
キシド、塩酸、エタノール、および水を混合し、常温
(約25℃)で攪拌した。約30分の攪拌の後、あらか
じめ調製したSH6040(東レダウコーニング社製)
のエタノール溶液を加えて更に攪拌し、塗工液Bを得
た。
【0045】基材として、ガラス板またはSUS板を用
いた。該塗工液Aを該基材の表面に均等の厚さに塗布
し、風乾で2〜3分間乾燥した。指触乾燥状態となった
時点で、その表面に該塗工液Bを均等の厚さに塗布し、
150℃の乾燥炉中で3〜10分間熱処理した。
【0046】得られた積層膜の紫外・可視領域の分光吸
収を測定した結果、この段階では、可視光吸収100%
および反射率5%以下であった。さらに耐候性試験のた
めXeサンシャインウェザーメーターを用いて外観変化
を観察したところ10,000時間で黄変し始め、2
0,000時間で褐色となった。これは耐候性としては
10年以上の信頼性にあたる。硬度は鉛筆硬度で4H、
密着性はクロスハッチテストで100/100であっ
た。耐衝撃性を試験するために500gを430mmの
高さから落下させたところわずかに剥離したのみであっ
た。耐火災性を試験するために炎を近付けたところ、無
着火であった。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【発明の効果】本発明によれば、マグネシウムアルコキ
シドを含む少なくとも2種の金属アルコキシド、アルコ
キシシラン、およびシランカップリング剤を含有する第
1の塗工液、および金属アルコキシドおよびシランカッ
プリング剤を含有する第2の塗工液を基材上に順次塗布
して硬化させることにより、透光性表面保護積層膜が形
成される。この透光性表面保護積層膜は、光透過性が高
く低反射率であり、かつ高い表面硬度および機械的強度
を有し、耐水性および耐紫外線性に優れており、太陽電
池や電子写真感光体などの表面保護のために好適に用い
られる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C09D 183/00 C09D 183/00 G02B 1/04 G02B 1/04 (72)発明者 吉田 重夫 滋賀県野洲郡野洲町大字大篠原6番地 株式会社中戸研究所内 (56)参考文献 特開 平5−179027(JP,A) 特開 昭61−142605(JP,A) 特開 昭55−21251(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 1/00 - 35/00 C08J 7/04 - 7/06

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基材の少なくとも片面に積層された、少な
    くとも2層からなる透光性積層膜であって、 該基材上に形成された第1の層が、マグネシウムアルコ
    キシドを含む少なくとも2種の金属アルコキシド、アル
    コキシシラン、およびシランカップリング剤を含有する
    組成物をゾル−ゲル法によって加水分解および重縮合し
    て得られる、無機質と有機質との重量比が95:5〜6
    0:40の範囲である複合ポリマーで形成され、 該第1の層の表面に形成された第2の層が、金属アルコ
    キシドおよびシランカップリング剤を含有する組成物を
    ゾル−ゲル法によって加水分解および重縮合して得られ
    る、主成分が有機質である複合ポリマーで形成される、 透光性表面保護積層膜。
  2. 【請求項2】前記第2の層を形成するための金属アルコ
    キシドが、マグネシウムアルコキシドを含む少なくとも
    2種の金属アルコキシドである、請求項1に記載の透光
    性表面保護積層膜。
  3. 【請求項3】前記第1の層を形成するための、マグネシ
    ウムアルコキシド以外の金属アルコキシドとして、少な
    くともアルミニウムアルコキシドおよびチタニウムアル
    コキシドを含有し、かつ前記第2の層を形成するため
    の、マグネシウムアルコキシド以外の金属アルコキシド
    として少なくともアルミニウムアルコキシドを含有す
    る、請求項2に記載の透光性表面保護積層膜。
  4. 【請求項4】マグネシウムアルコキシドを含む少なくと
    も2種の金属アルコキシド、アルコキシシラン、シラン
    カップリング剤、鉱酸、塩基触媒、水および有機溶媒を
    含有する第1の塗工液を基材の少なくとも片面に塗布・
    乾燥する工程; 金属アルコキシド、シランカップリング剤、水および有
    機溶媒を含有する第2の塗工液を該第1の塗工層表面に
    付与する工程;および 該第1の塗工層および第2の塗工層からなる積層膜を1
    20℃〜150℃で熱処理する工程; を包含する、透光性表面保護積層膜の製造方法。
  5. 【請求項5】前記第2の塗工液に含有される金属アルコ
    キシドが、マグネシウムアルコキシドを含む少なくとも
    2種の金属アルコキシドである、請求項4に記載の透光
    性表面保護積層膜の製造方法
  6. 【請求項6】前記第2の塗工液中に、前記シランカップ
    リング剤が該第2の塗工液の全体に対して30重量%〜
    60重量%の割合で含有される、請求項4に記載の透光
    性表面保護積層膜の製造方法。
  7. 【請求項7】前記第1の塗工液に含有される、マグネシ
    ウムアルコキシド以外の金属アルコキシドとして、少な
    くともアルミニウムアルコキシドおよびチタニウムアル
    コキシドを含有し、かつ前記第2の塗工液に含有される
    マグネシウムアルコキシド以外の金属アルコキシドとし
    て、少なくともアルミニウムアルコキシドを含有する、
    請求項5に記載の透光性表面保護積層膜の製造方法。
  8. 【請求項8】前記塩基触媒が、水に実質的に不溶で、か
    つ有機溶媒に可溶な第三アミンである、請求項4に記載
    の透光性表面保護積層膜の製造方法。
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