JP3480568B2 - 冷間鍛造用高速度工具鋼素材、高速度工具鋼製中空品及びその製造方法 - Google Patents

冷間鍛造用高速度工具鋼素材、高速度工具鋼製中空品及びその製造方法

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JP3480568B2 JP2001031465A JP2001031465A JP3480568B2 JP 3480568 B2 JP3480568 B2 JP 3480568B2 JP 2001031465 A JP2001031465 A JP 2001031465A JP 2001031465 A JP2001031465 A JP 2001031465A JP 3480568 B2 JP3480568 B2 JP 3480568B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高強度で耐摩耗性
を要求される高速度工具鋼製機械部品を得るための冷間
鍛造用高速度工具鋼素材、高速度工具鋼製中空品及びそ
の製造方法に関し、特に、リング状又はカップ状の冷間
鍛造用高速度工具鋼素材、高速度工具鋼製中空品及びそ
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】高速度工具鋼は、焼きなまし処理した状
態でも強度が高く且つ延性が極めて低い。従って、冷間
鍛造による部品の製造が極めて困難で、特に中空品を冷
間鍛造により加工することは不可能である。このため、
高速度工具鋼の中空品は棒材等の素材から切削加工によ
り製造されている。
【0003】一方、高速度工具鋼でも高温に加熱するこ
とによって、強度が低下し、また延性の向上も図れるた
め、素材を高温に加熱した後鍛造する所謂熱間鍛造で中
空品を製造することも行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、高速度
工具鋼の中空品を棒材等の素材から切削加工により製造
する方法では、製造する中空品の最大外径より大きな直
径を有する素材が必要であり、中空品の中空部分等の部
品にならない部分は全て切削屑として捨てられる。この
ため加工歩留まりが極めて悪い。高速度工具鋼は極めて
高価な材料であり、加工歩留りが悪いと、製造する中空
品は極めて高価になってしまうという問題点がある。ま
た、切削加工そのものが極めて生産性が悪い加工方法で
あるという問題点もある。
【0005】更に、切削加工で製造された中空品表面
は、表面粗さが中心線平均粗さ(Ra)で2乃至10μ
mと極めて粗く、後工程の熱処理の後、研磨工程におけ
る負荷が大きく、研磨時間が増加すると共にコストアッ
プになるという問題点がある。
【0006】更にまた、高速度工具鋼の内部には粗大共
晶炭化物が多く存在しており、切削加工で製造された中
空品の表面には、この粗大共晶炭化物が多く露出してい
る。切削加工は、素材のごく表面層に極めて大きなひず
みと引張応力とを発生させるため、この大きなひずみ及
び引張応力によって表面に露出した粗大共晶炭化物に割
れが発生していることが多い。このような中空品に焼入
れ処理を行うと、処理中の熱応力の発生によって表面の
共晶炭化物の割れが内部へ進展し、割れの深いものでは
後工程の研磨加工でも割れを除去しきれないことがあ
り、中空品の信頼性を著しく低下させるという問題点が
ある。
【0007】また、高速度工具鋼の中空品を熱間鍛造で
製造する方法では、素材を高温で加熱するため、表面に
脱炭層が形成され、この表面層では高速度工具鋼として
必要な硬さ及び耐摩耗性等の特性が得られず、また、鍛
造ままでは寸法精度が高い中空品が得られない。このた
め、熱間鍛造による方法においては、表面脱炭層の除去
が必要になると共に、寸法精度を向上させるために後加
工として切削加工が必要になる。
【0008】この熱間鍛造で製造する方法では、高速度
工具鋼の中空品を棒材等の素材から切削加工で製造する
方法に比べて材料の歩留まりは向上するものの、寸法精
度を向上させるために後加工として必要な切削加工に関
わる歩留りの悪化は避けられず、また、鍛造後の急冷に
より材料が硬化するため、切削加工前に焼きなまし処理
が必要になる等、製造コストが高くなるという問題点が
ある。
【0009】更に、製造された中空品の表面が切削加工
面となることは、高速度工具鋼の中空品を棒材等の素材
から切削加工で製造する方法と同様であり、上述した如
く製造された中空品の表面に関する諸問題が中空品を棒
材等の素材から切削加工で得た場合と同様に生じるとい
う問題点がある。
【0010】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、外表面が極めて平滑で、後工程の熱処理後
の研磨時間を短縮でき、且つ、少なくとも外周面に粗大
共晶炭化物の有害な割れの発生がなく、熱処理と研磨工
程とを経た後の中空品の信頼性を著しく向上させること
ができる高速度工具鋼製中空品及びその製造方法を提供
すると共に、このような高速度工具鋼製中空品の製造を
可能にする冷間鍛造用高速度工具鋼素材を提供すること
を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明に係る冷間鍛造用
高速度工具鋼素材は、素材硬さが102HRB以下であ
り、内部に長径で25μm以上の粗大共晶炭化物がな
く、且つ、表面に長径で15μm以上の粗大共晶炭化物
及び粗大共晶炭化物片が露出していないことを特徴とす
る。
【0012】高速度工具鋼は焼きなまし処理した状態で
も延性が極めて低いため、押出加工に際して押出側端面
に半径方向の大きな割れが発生し、また外周面には円周
方向及び軸方向の大きな割れが発生し、従来健全な中空
品が得られなかったが、本発明においては、硬度が低
く、内部に長径で25μm以上の粗大共晶炭化物がな
く、且つ表面に長径で15μm以上の粗大共晶炭化物及
割れた粗大共晶炭化物(粗大共晶炭化物片)が露出して
いないため、冷間鍛造しても中空品に割れが生じること
がない。なお、粗大共晶炭化物片とは、粗大共晶炭化物
が割れた状態のものを示す。
【0013】本発明に係る高速度工具鋼製中空品は、請
求項1に記載の冷間鍛造用高速度工具鋼素材がリング状
又はカップ状に冷間鍛造されたものであって、内外周面
の表面粗さが中心線平均粗さ(Ra)で1μm以下であ
ると共に、外周面に長径で15μm以上の粗大共晶炭化
物及び粗大共晶炭化物片が露出していないことを特徴と
する。
【0014】表面が粗く、粗大共晶炭化物片が露出して
いる中空品に焼入れ処理を行うと、処理中の熱応力の発
生によって表面の粗大共晶炭化物の割れが内部へ進展
し、割れの深いものでは後工程の研磨加工でも割れを除
去しきれないことがあり、中空品の信頼性を著しく低下
させるが、本発明においては、中空品は内外周面の表面
粗さが中心線平均粗さ(Ra)で1μm以下であるた
め、焼入前の内外径の切削加工が不要であり、また後工
程の熱処理後の研磨時間を短縮できると共に、少なくと
も外周面に粗大共晶炭化物による有害な割れの発生がな
いため、熱処理及び研磨工程を経た後の中空品の信頼性
を著しく向上させることができる。
【0015】本発明に係る高速度工具鋼製中空品の製造
方法は、請求項1に記載の冷間鍛造用高速度工具鋼素材
から、側面から中心軸に向く方向の欠陥部の最大深さが
0.5mm以下である円柱状素材を形成する工程と、加
工用ダイスの成形部の内径と前記円柱状素材の直径との
差が0.5mm以下であるダイスを使用して前記円柱状
素材を押出加工する工程と、を有することを特徴とす
る。
【0016】本発明においては、冷間鍛造用高速度工具
鋼素材からなる円柱状の素材を使用してカップ状中空品
へ押出加工する際に、側面から中心軸に向く方向の欠陥
部の最大深さが0.5mm以下である円柱状素材と、加
工用ダイスの円柱状素材を挿入する成形部の内径と円柱
状素材の直径との差が0.5mm以下であるダイスとを
使用するため、押出の端面及び外周面に割れが発生せ
ず、健全な高速度工具鋼製冷間鍛造中空品を冷間鍛造に
より製造できる。この際、押出ポンチ材に硬さ(ロック
ウエル硬さ)89HRA以上の超硬工具材を使用するこ
とが好ましい。押出加工においては、素材表面は、滑ら
かな塑性加工用工具の表面上を潤滑皮膜を介して滑り変
形させるため、製造された中空品の内外周面は表面粗さ
が中心線平均粗さ(Ra)1μm以下となり、極めて平
滑な内外周面を得ることができる。なお、欠陥部とは、
冷間鍛造用高速度工具鋼素材から円柱状の素材加工する
際に特に端部等に形成されるだれ及び欠肉等を示す。
【0017】また、本発明においては、予め形成した高
速度工具鋼からなる円柱状素材に冷間押出加工を施し、
内径側が中空のカップ状中空品を得る。又は、更にこの
カップ状中空品の内径側底部を打ち抜いてリング状中空
品を得る。このように、冷間押出加工によりカップ状中
空品又はリング状中空品を形成することにより、材料屑
の発生が切削加工又は熱間鍛造及び切削加工の組合わせ
の場合に比べて格段に少なくなる。従って、高価な高速
度工具鋼素材の必要量を最小限にできるので、材料費を
大幅に低減できる。また、冷間鍛造加工は切削加工に比
べて加工能率が格段に高いので中空品の生産性を大きく
向上できる。これにより、高速度工具鋼製中空品を低コ
ストで提供することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例に係る冷間
鍛造用高速度工具鋼素材について更に詳細に説明する。
冷間鍛造時に被加工材に発生する割れの素材側の原因と
しては、素材の表面傷、組織不良、及び延性不足等が挙
げられる。表面傷及び組織不良は、素材製造時に適正化
を図れば改善できるが、素材の延性は材質によってほぼ
決まってしまう。一般的な冷間鍛造用鋼の場合は、球状
化された2次炭化物の量及びその大きさ並びに素地(マ
トリックス)の強度で延性が決まる。しかし、高速度工
具鋼の場合、組織内にそれ以外の粗大な共晶炭化物(1
次炭化物)が多く存在しており、延性低下に及ぼすこの
粗大共晶炭化物の影響は、2次炭化物及び素地の影響よ
りもはるかに大きい。これは、材料が塑性加工を受けた
とき、粗大共晶炭化物の周りの素地は塑性変形するが、
粗大共晶炭化物にはせん断力が働き、脆い粗大共晶炭化
物に割れが発生するからであり、この粗大共晶炭化物の
割れが起点となって材料の広い範囲に割れが進展してし
まう。一方、粗大共晶炭化物が十分小さければ、素地の
塑性変形に伴って粗大共晶炭化物の移動又は回転が起こ
り、粗大共晶炭化物に割れが発生せず、材料の割れ発生
加工限界が高くなる。
【0019】粗大共晶炭化物の面積率は含まれる合金成
分によってほぼ決まるので、高速度工具鋼の延性を向上
するには、個々の粗大共晶炭化物の大きさをできるだけ
小さくすることが有効である。高速度工具鋼で一般的な
冷間鍛造の加工率で割れが発生しないためには、粗大共
晶炭化物の大きさは長径で25μm以下であることが必
要で、より望ましくは20μm以下である。
【0020】しかし、粗大共晶炭化物の大きさを長径で
25μm以下とするのみでは高速度工具鋼から押出加工
用の円柱状素材を形成し、この円柱状素材から健全なカ
ップ状中空品へ押出加工することはできない。押出加工
に際し、カップ状中空品は、その円筒部が円柱状素材よ
り長くなる。この時、カップ状中空品の円筒部では外周
面側と内周面側とで軸方向の変形量に差が生じ、内周面
側の材料の軸方向へ伸びようとする変形に外周面側の材
料が引張られる状態となる。ここで外周面では引延ばし
変形及び引張応力が作用し、外周面に何らかの表面欠陥
が存在すると、この表面欠陥から割れが発生する。そし
て、この外周面に脆い粗大共晶炭化物が露出している
と、粗大共晶炭化物が割れの起点となってカップ状中空
品の外周面に円周方向の割れが発生する。従って、内部
に存在する粗大共晶炭化物の大きさを長径で25μm以
下、より望ましくは20μm以下とすると共に、少なく
とも外周面に長径で15μm以上の割れた粗大共晶炭化
物(以下、粗大共晶炭化物片ともいう)及び15μm以
上の粗大共晶炭化物が露出していない素材を使用するこ
とが必要であり、望ましくは長径で10μm以上の粗大
共晶炭化物及び粗大共晶炭化物片が露出していない素材
を使用する。
【0021】このように、内部に存在する粗大共晶炭化
物の大きさを長径で25μm以下、より望ましくは20
μm以下とし、粗大共晶炭化物の大きさをできるだけ小
さくすることにより、高速度工具鋼の延性を向上するこ
とができ、高速度工具鋼のカップ状中空品が一般的な冷
間鍛造の加工率で割れが発生することを防止すると共
に、外周面に露出する粗大共晶炭化物及び露出する粗大
共晶炭化物片を長径で15μm未満とすることにより、
カップ状中空品の外周面に発生する割れを防止すること
ができる。
【0022】本発明の共晶炭化物の大きさは、素材の縦
断面をミクロ顕微鏡にて観察して測定することができ
る。また、素材表面に露出した粗大共晶炭化物は、断面
の外側表面を観察することにより測定できる。その際、
観察面内で最も大きい共晶炭化物の長径を測定するもの
とする。共晶炭化物とそうではないものとは、腐食液を
選択することにより見分けることができる。なお、2乃
至3μm以上の大きさのものは、ほぼ共晶炭化物であ
る。
【0023】また、本発明の冷間鍛造用高速度工具鋼素
材は、その硬さが102HRB以下である。素材硬さが
102HRBを超えると、粗大共晶炭化物の大きさを上
述の如く制御しても押出加工に使用する押出ポンチが早
期に圧壊又は座屈して押出加工することができない。
【0024】次に、本発明の実施例に係る冷間鍛造用高
速度工具鋼素材の製造方法について説明する。高速度工
具鋼素材内の小さな共晶炭化物の形成は、造塊時の鋳造
条件及びその後の熱間加工条件の適正化により達成する
ことができる。即ち、共晶炭化物は、鋼塊の凝固中に形
成されるため、鋼塊の凝固速度(凝固中の冷却速度)を
速くすることにより、形成される粗大共晶炭化物の大き
さを小さくすることができる。一方、一旦形成された粗
大共晶炭化物は、再度溶解しない限り、加熱で小さくす
ることはできない。また、粗大共晶炭化物を機械的に破
壊すれば、熱間加工中に小さくすることも可能である。
【0025】鋳造条件を制御する方法においては、小さ
い鋼塊に鋳込むほど凝固が速くなり、例えば500kg
以下の鋼塊に鋳込むと熱間加工後の素材の粗大共晶炭化
物をほぼ25μm以下にすることができる。また、一方
凝固速度を速くする他の方法として、例えばESR(エ
レクトロスラグ再溶解法(electroslag remelting))
等の方法もあり、このESRにおいては、一旦鋳造した
円柱状の鋼塊を電極として部分的に再溶解と凝固とを随
時行い、例えば1トン程度で粗大共晶炭化物が長径で2
5μm以下の鋼塊を得ることができる。また、熱間加工
にて粗大共晶炭化物を小さくするためには、例えば90
0℃以下の低温で、大きな加工率にて行うことが必要で
ある。
【0026】通常、押出加工して中空品を形成するため
には、円柱状素材を形成する。円柱状素材は、鋼塊から
圧延等の熱間加工で棒材又は線材を形成した後、焼きな
ましする。その後、棒材においては、真っ直ぐなものを
得るために矯正し、また、線材においては、引き抜き加
工するか又は焼きなましままとするが、上述の圧延等の
熱間加工時の加熱及び加工は、一般に大気中にて行われ
るため、素材の表面には酸化スケールが形成されたり、
素材表面が脱炭され脱炭層が形成されたりする。従っ
て、素材表面には、深い脱炭層又は酸化スケールが形成
される等して表面品質の不具合が生じている。従って、
このような脱炭層及び酸化スケール等の不具合部分を除
去するために、素材表面を切削又は研削等の加工で除去
することが必要になる。素材表面を脱炭層等の不具合部
分が取り除かれるまで削り取ることにより表れる新しい
表面には、元々素材内部に存在する25μm以下の粗大
共晶炭化物又は切削加工により強加工を受けて割れた粗
大共晶炭化物が露出する。こうして、鋳造及び熱間加工
後においては存在しない外周面の15μm以上の粗大共
晶炭化物が、内部の粗大共晶炭化物の大きさを25μm
以下としても、脱炭等の他の表面不具合を除去するため
に必要な切削又は研削加工によって表面に露出してしま
う。
【0027】従って、外周面に長径で15μm以上の粗
大共晶炭化物及び粗大共晶炭化物片が露出していない素
材を得るための方法として、例えば、上述した如く素材
表面の不具合部分を除去する切削又は研削加工を行った
後、例えば、焼きなましの際、炉内を1.33Pa程度
の真空度にすることにより弱酸化性雰囲気にして、温度
を例えば840℃にする。このような条件で焼きなまし
することにより、素材の表面において、中空品の製造過
程の最終研磨工程で十分除去可能であるごく表面層のみ
を弱脱炭させることができ、深い脱炭層は形成されず、
従って、表面の不具合部分を取り除くための切削又は研
削加工を行っても、外周面に長径で15μm以上の粗大
共晶炭化物及び粗大共晶炭化物片が露出していない素材
を得ることができる。なお、このような外周面に長径で
15μm以上の粗大共晶炭化物及び粗大共晶炭化物片が
露出していない素材を製造する方法はこの限りではな
い。また、内部に析出する粗大共晶炭化物の大きさを長
径で15μm以下にすることができれば、上述のような
工程は必要ない。
【0028】なお、円柱状素材において、中空品の外周
面とならない部分、即ち押出ポンチが接触する中空部分
の表面には長径で15μm以上の粗大共晶炭化物及び粗
大共晶炭化物片が露出していてもよい。即ち、本発明の
冷間鍛造用高速度工具鋼から得られたカップ状又はリン
グ状等の中空品においては、外周面以外の上下端面及び
内周面の表面には長径で15μm以上の粗大共晶炭化物
及び粗大共晶炭化物片が露出していてもよい。この理由
は、円柱状素材が押出加工される際、素材の端面部分は
ほとんど変形せず、また、内周面においては素材が押出
によって変形している間の表面部は、押出ポンチに拘束
されて高い圧縮静水圧応力を受けているからで、粗大共
晶炭化物及び粗大共晶炭化物片が長径で25μm以下、
より望ましくは20μm以下の大きさであれば割れが発
生しないからである。
【0029】また、素材硬さを102HRB以下にする
方法としては、焼きなまし条件及び焼きなまし後の矯正
条件等を制御するか、又は焼きなまし後の引き抜き加工
の減面率を5%以下にする等することにより、硬度を低
く抑えることができる。
【0030】次に、本発明の高速度工具鋼製中空品の製
造方法について説明する。冷間鍛造による中空品の製造
は、一般に円柱状素材の一端面に中空品の内径面を成形
する押出ポンチを押し込んで、中空部に位置する素材を
円筒部側に押し出してカップ状の中空品に成形する。し
かし、高速度工具鋼は焼きなまし処理した状態でも強度
が高く且つ延性が極めて低いため、押出加工に際して押
出ポンチが圧壊又は座屈してしまい、従来、冷間鍛造に
よる中空品の製造が極めて困難であった。この理由は、
高速度工具鋼の強度と押出ポンチの強度とのバランスに
十分な検討がなされていなかったからである。本願発明
者等は鋭意研究を重ねた結果、焼きなましままの状態
か、焼きなまし後に矯正するか、又は焼きなまし後に減
面率5%以下の引抜き加工を行うかにより、硬さが10
2HRB以下に制御されている高速度工具鋼を素材とし
て、所定の条件を満たす押出ポンチにより押出加工する
ことによって、高速度工具鋼素材の冷間押出加工が可能
となることを見い出した。
【0031】本発明の冷間鍛造用高速度工貝鋼素材を使
用する場合であっても、円柱状素材からカップ状中空品
へ押出加工する際の加工条件の設定は重要である。本発
明の冷間鍛造用高速度工具鋼素材が長径で25μmを超
える粗大共晶炭化物を含まず、延性に優れているとはい
え、一般的な冷間鍛造用鋼に比べて延性は遥かに低く、
従来の押出技術をそのまま適用すると押出側端面に簡単
に半径方向の割れが発生してしまう。
【0032】高速度工具鋼素材を円柱状素材からカップ
状中空品へ押出加工する際は、中空部に位置する素材を
押出ポンチにより円筒部側に押し出してカップ状の中空
品に成形する。このとき、使用する加工用ダイスを不用
意にカップ状中空品の外径が加工する円柱状素材の直径
よりも大きくなるように設計すると、押出初期、即ち円
柱状素材の一方の端面に押出ポンチ先端を押し込む際
に、円柱状素材の押出側の円筒状に成形される端面に割
れが発生する。これは、押出初期において、円柱状素材
の押出側端面の外周部が拡径変形されて引き延ばされる
と同時に外周部に引張応力が作用することにより、高速
度工具鋼に存在する脆い粗大共晶炭化物を起点とした割
れが発生しやすくなるためである。
【0033】押出加工における押出側端面割れを発生さ
せないためには、押出初期において、円柱状素材の円筒
部外周側が拡径変形を起こさず、且つ同時に外周部に引
張応力を作用させないことが重要である。このため、円
柱状素材の直径と、押出後のカップ状中空品の外径とが
ほぼ等しくなるか、円柱状素材の直径よりカップ状中空
品の外径が小さくなるように成形する。具体的には、押
出加工用ダイスにおいて中空品を形成する加工用ダイス
の成形部の内径を円柱状素材の直径にほぼ等しくする
か、又は成形部の内径が円柱状素材の直径より幾分小さ
くなるようにする。また、円柱状素材の直径に対し、押
出加工用ダイスの成形部の内径が僅かに大きい場合で
も、成形部内径と円柱状素材の直径との差は0.5mm
以下とする必要がある。
【0034】また、円柱状素材に部分的な欠肉及びだれ
等の欠陥部が存在する場合でも、円柱状素材の正常な側
面から中心軸に向く方向の欠陥部の最大深さは0.5m
m以下とする。0.5mmより大きい欠陥部が存在する
と、押出加工の際、この欠陥部が起点になり、成形され
た中空品の外周面に割れが発生してしまう。
【0035】これにより押出初期において円筒部外周面
は直ちにダイスの成形面で強く拘束されることになり、
円筒部外周部側の拡径変形と、外周部に作用する引張応
力とを防止して端面割れのない健全なカップ状中空品を
得ることができる。
【0036】更に、押出ポンチ材に硬さ89HRA以上
の超硬工具材を使用することが好ましい。押出ポンチ材
として、硬さが89HRA以上の超工具材を使用するこ
とにより、押出ポンチの早期破損を防止することができ
る。
【0037】こうして得られる中空品は、内外周面の表
面粗さが中心線平均粗さ(Ra)で1μm以下と極めて
平滑で、焼入前の内外径の切削加工が不要であると共
に、後工程の熱処理後の研磨時間を短縮できる。更に、
少なくとも外周面に粗大共晶炭化物の有害な割れの発生
がなく、熱処理と研磨工程とを経た後の中空品の信頼性
を著しく向上させることができる。
【0038】
【実施例】以下、本発明の高速度工具鋼製冷間鍛造中空
品を実際に製造し、その特性を比較例と比較して、本発
明の効果について説明する。
【0039】第1実施例 モリブデン系高速度工具鋼材SKH51(JIS G
4403)を使用し、300kgの鋼塊を熱間圧延する
ことにより、内部に長径で25μmを超える粗大共晶炭
化物がない素材と、1トンの鋼塊を熱間圧延することに
より、長径で25μmを超える粗大共晶炭化物を有する
素材を形成した。これらの素材の硬さはいずれも95H
RBであった。
【0040】図1(a)及び図1(b)は、カップ状中
空品の鍛造工程をその工程順に示す断面図である。先
ず、図1(a)に示すように、素材4を切削加工により
円柱状素材1に加工した。加工した円柱形状素材1の縦
断面を1000倍で16視野のミクロ組織観察をするこ
とにより、円柱状素材の内部の共晶炭化物の大きさを測
定した。この結果を下記表1に示す。次いで、鍛造工程
を実施した。鍛造工程では、図1(b)に示すように、
円柱状素材1に対して冷間押出加工を施し、中空部2c
を有する中空のカップ状中空品2を製造した。中空品2
の底面部2aには、中空部2cとは反対側に浅い穴2b
が形成されている。
【0041】内部に長径で25μmを超える粗大共晶炭
化物がない素材及び内部に長径で25μmを超える粗大
共晶炭化物を有する素材から円柱状素材を形成し、これ
らの円柱状素材から、円柱状素材1の直径より、成形部
の内径の方が0.1mm大きい加工用ダイスにより、冷
間鍛造して、夫々比較例No.1及び比較例No.2の
カップ状中空品を製造した。この比較例No.1及び比
較例No.2のカップ状中空品の外観品質を下記表1に
示す。
【0042】なお、実施例No.1及び比較例No.2
の中空品の断面減少率はいずれも45.4%であった。
断面減少率とは、円柱状素材の断面積(中空品の底面部
の断面積とほぼ等しい)をA、中空品の中空部の断面
積をaとしたとき、断面減少率=(a/A)×1
00(%)で求められる値である。
【0043】
【表1】
【0044】比較例No.1のカップ状中空品は、切削
加工により円柱状素材を形成したため、円柱素材の表面
には粗大共晶炭化物及び粗大共晶炭化物片が露出し、外
周面には微少な割れが発生したが、内部に長径で25μ
mを超える粗大共晶炭化物がない円柱状素材を使用して
いるため外周部以外の部位に割れは発生しなかった。ま
た、比較例No.2のカップ状中空品は、表面には粗大
共晶炭化物及び粗大共晶炭化物片が露出し、且つ内部に
長径で25μmを超える粗大共晶炭化物を有する円柱状
素材を使用して冷間押出加工したため、外周面及び端面
に割れが発生した。
【0045】第2実施例 次に、第1実施例で比較例No.1を形成するために使
用した円柱状素材と同一ものを用意し、この円柱状素材
に対して、更に弱酸化性雰囲気の炉内で840℃で球状
化焼きなましを行った。この際、炉内を1.33Pa程
度の真空度に制御することにより、弱酸化性雰囲気とし
た。この円柱状素材の外周面全周をミクロ組織観察した
結果、外周の最表面から最大で0.02mm程度の脱炭
層が形成されているのが見られ、且つこの円柱状素材表
面には、長径で15μm以上の粗大共晶炭化物又は割れ
た粗大共晶炭化物(粗大共晶炭化物片)は認められなか
った。こうして、内部に長径で25μm以上の粗大共晶
炭化物がなく、且つ表面に15μm以上の粗大共晶炭化
物及び割れた粗大共晶炭化物が露出していない円柱状素
材を得た。なお、球状化焼きなまし後の円柱状素材の硬
さは95乃至94HRB程度であった。
【0046】この円柱状素材に、図1に示す鍛造工程を
実施して、本実施例のカップ状中空品を製造した(以
下、実施例No.3という)。その際、加工用ダイス
は、円柱状素材の直径より、加工用ダイスの成形部の内
径の方が0.1mm大きいものとした。押出加工時の断
面減少率は、第1実施例と同一の45.4%であった。
実施例No.3の中空品は内周面の表面粗さは0.1μ
m以下であり、外周面の表面粗さは0.5μm以下であ
った。
【0047】一方、同様の内部に長径で25μm以上の
粗大共晶炭化物がなく、且つ表面に15μm以上の粗大
共晶炭化物及び割れた粗大共晶炭化物が露出していない
円柱状素材を使用し、冷間押出加工でカップ状中空品を
成形するためのダイス成形部内径より円柱状素材の直径
を0.8mm小さくしたものを使用して比較例のカップ
状中空品を製造した(以下、比較例No.4という)。
比較例No.4の押出加工の断面減少率は、実施例N
o.1と同様に45.4%であった。これらの結果を下
記表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】表2に示すように、実施例No.3のカッ
プ状中空品の外周面及び端面には有害な割れは発生しな
かった。これに対して、比較例No.4のカップ状中空
品は、加工用ダイスの成形部の内径が円柱状素材の直径
より0.8mmも大きく本発明範囲を超えるため、押出
側端面に大きな割れが発生した。
【0050】第3実施例 第1実施例とほぼ同様の方法で、内部に長径で25μm
を超える粗大共晶炭化物がない線材を形成し、この線材
の全長を切削加工して表面層の欠陥部を除去したもの
に、弱酸化性雰囲気の炉内にて840℃で球状化焼きな
ましを行い、内部に長径で25μm以上の粗大共晶炭化
物がなく、且つ表面に長径で15μm以上の粗大共晶炭
化物及び割れた粗大共晶炭化物が露出していない冷間鍛
造用線材を製造した。
【0051】この線材をせん断加工して円柱状ブランク
を形成し、この円柱状ブランクを据え込み加工して押出
用の円柱状素材を形成した。図2は、円柱状ブランクの
据え込み工程をその工程順に示す模式図である。図2
(a)に示すように、円柱状ブランク5を据え込み加工
して円柱状素材を形成する。このとき、図2(b)に示
すように、せん断加工において、欠肉6及びだれ7等の
形状的欠陥が発生する。しかし、図2(c)に示すよう
に、この欠陥を有する円柱状ブランク5から据え込み加
工により形成される円柱状素材8は、その欠陥部9が矯
正される。この後、この円柱状素材を図1に示す鍛造工
程によりカップ状中空品又はリング状中空品を製造し
た。
【0052】据込み加工で充分に欠陥部9を矯正した円
柱状素材は、欠陥部9における円柱状素材の正常な側面
から中心軸に向く方向の欠陥部の最大深さは0.2mm
以下であった。この円柱状素材から、(ダイス成形部の
内径)−(円柱状素材の直径)が0.1mmであるダイ
スを使用して冷間押出を行ってカップ状中空品を形成し
た(以下、実施例No.5という)。得られた実施例N
o.5のカップ状中空品に割れ等の有害な表面欠陥は発
生しなかった。また、実施例No.5のカップ状中空品
の表面粗さは0.2μm以下であった。
【0053】一方、据込み加工が不十分な円柱状素材
は、欠陥部9における円柱状素材の正常な側面から中心
軸に向く方向の欠陥部の最大深さは0.8mmであっ
た。そして、この円柱状素材から、(ダイス成形部の内
径)−(円柱状素材の直径)が0.1mmであるダイス
を使用して冷間押出し、カップ状中空品を形成した(以
下、比較例No.6という)。この比較例No.6の中
空品の表面粗さは0.2μm以下であったが、欠陥部の
最大深さが0.8mmと大きかったため、端面部に大き
な割れが発生した。
【0054】第4実施例 第3実施例の実施例No.5と同様の方法により、線材
の硬さが95HRBの冷間鍛造用線材から円柱状素材を
作製し、押出加工を行いカップ状中空品を形成した(以
下、実施例No.7という。)。また、同様の冷間鍛造
用線材に更に減面率6%で引き抜き加工を行い、硬さを
103HRBとした線材から第3実施例と同様に円柱状
素材を形成し、押出加工を行いカップ状中空品を形成し
た(以下、比較例No.8という。)。
【0055】本実施例の押出加工に使用する金型につい
て説明する。図3は、本実施例の押出加工に使用する金
型を示す断面図である。金型は、ダイス15とこのダイ
ス15内の成形部15aに挿入された素材10をその上
方から押し込む押込みポンチ11及び素材10をその下
方から押し出す押出ポンチ16を有している。更に、押
出ポンチ16の周囲に設けられ、押出成形後の素材を取
り出すための素材けりだしスリーブ17を有し、このス
リーブ17の下方に設けられスリーブ17を押し上げる
ピン18が設けられている。押込みポンチ11は、形成
されるカップ状又はリング状中空品とほぼ同一の形を有
する大径部12と、カップ状中空品の底部に浅い穴2b
を形成するための突部13とから構成されている。そし
て、この押込みポンチ11と押出ポンチ16との間に円
柱状素材10を挿入して押出加工してカップ状の中空品
を得る。
【0056】図3に示す形状の金型を使用し、実施例N
o.7及び比較例No.8の中空品を形成した。実施例
No.7は、硬さ89HRA又は90HRAの超硬工具
材からなる押出ポンチ16を使用し、比較例No.8
は、硬さ89HRAの超硬工具材からなる押出ポンチ1
6を使用した。なお、全ての押出加工において、(ダイ
ス成形部の内径)−(円柱状素材の直径)は0.1mm
である。下記表3に押出ポンチ硬さ及び線材の硬さ、並
びに各鍛造条件における鍛造結果を示す。
【0057】
【表3】
【0058】実施例No.7は、硬さ89HRA以上の
超硬工具材を使用し、硬さが95HRBの素材(線材)
を使用して中空品を形成したため、5000個を鍛造し
ても押出ポンチが圧壊せず、押出ポンチの早期破損を防
止できた。一方、素材硬さが103HRBの線材を使用
した比較例No.8においては、中空品を約100個成
形した時点で押出ポンチが圧壊した。なお、本実施例で
得られた中空品の内外周面の表面粗さは全て中心線平均
粗さRaが0.2μm以下であった。
【0059】第5実施例 第3実施例の実施例No.5と同様の方法により押出加
工して形成したカップ状中空品の内側底部を打抜いてリ
ング状中空品を製造した。図1(c)は、リング状中空
品を示す断面図である。なお、カップ状中空品2には、
その底部2aを打ち抜く際に端面側にバリが発生しない
ように素材1の押出側とは反対側に浅い穴2bが形成さ
れている。
【0060】このリング状中空品の内外周面の表面粗さ
を測定した結果、その中心線平均粗さ(Ra)は、内周
面が粗さ0.06μm程度、外周面は粗さが0.14μ
m程度であり、研磨仕上げ面に近く、極めて平滑であっ
た(以下、実施例No.9という)。
【0061】また、実施例No.9と同一成分の素材か
ら切削加工により、実施例No.9と同一寸法のリング
状中空品を形成した(以下、比較例No.10とい
う)。このときの比較例No.10の表面粗さは切削後
で5μmであった。そして、本願発明の冷間鍛造による
実施例No.9のリング状中空品と、比較例No.10
のリング状中空品を焼入れ焼戻し処理した後、内外周面
を研磨仕上げした。研磨仕上げ後は、実施例No.9及
び比較例No.10のいずれも表面粗さは0.06μm
であった。これらの研磨仕上げした実施例No.9及び
比較例No.10のリング状中空品において、圧懐試験
を行った。
【0062】図4は、本実施例の圧壊試験の様子を示す
断面図である。圧壊試験は、台座30上に、試験片であ
るリング状中空品31の円周部が台座30に接するよう
に載置し、このリング状中空品31の側面から加圧部3
2により荷重Fをリング状中空品31の中心に付加し
た。この圧壊試験の荷重を測定した結果、実施例No.
9のリング状中空品は、切削加工で製造した比較例N
o.10のリング状中空品に対し、圧壊強度が約1.2
倍と優れた特性を示した。
【0063】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の冷間鍛造
用高速度工具鋼素材によれば、従来、焼きなまし処理し
た状態でも強度が高くかつ延性が極めて低いため、中空
品の冷間鍛造は不可能とされている高速度工具鋼を、そ
の内部の粗大共晶炭化物の大きさを制御し、硬さを制御
することにより、中空品の冷間鍛造を可能にする冷間鍛
造用高速度工具鋼素材を得ることができる。
【0064】また、本発明の高速度工具鋼製中空品及び
その製造方法によれば、高速度工具鋼素材から冷間鍛造
して得られるため、中空品の外表面が極めて平滑であ
る。このため、後工程の熱処理後の研磨時間を短縮で
き、且つ、少なくとも外周面に粗大共晶炭化物の有害な
割れの発生がなく、熱処理と研磨工程とを経た後の中空
品の信頼性を著しく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)及び(b)は、カップ状中空品の鍛造工
程をその工程順に示す断面図であり、(c)は、リング
状中空品を示す断面図である。
【図2】円柱状ブランクの据え込み工程をその工程順に
示す模式図である。
【図3】第4実施例の押出加工に使用する金型を示す断
面図である。
【図4】第5実施例の圧壊試験の様子を示す断面図であ
る。
【符号の説明】
1;円柱状素材 2;カップ状中空品 3;リング状中空品 4;素材 10;素材 11;ポンチ 12;大径部 13;凸部 15;ダイス 16;押出ポンチ 17;スリーブ 18;ピン
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 西川 秀成 富山県新湊市八幡町3丁目10番15号 日 本高周波鋼業株式会社内 (72)発明者 海老 雅幸 富山県高岡市石丸708番地の16 エヌケ イ精圧株式会社内 (56)参考文献 特開2000−71046(JP,A) 特開 昭53−135876(JP,A) 特開2000−94080(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21J 1/00 - 13/14 B21J 17/00 - 19/04 B21K 1/00 - 31/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 素材硬さが102HRB以下であり、内
    部に長径で25μm以上の粗大共晶炭化物がなく、且
    つ、表面に長径で15μm以上の粗大共晶炭化物及び粗
    大共晶炭化物片が露出していないことを特徴とする冷間
    鍛造用高速度工具鋼素材。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の冷間鍛造用高速度工具
    鋼素材がリング状又はカップ状に冷間鍛造されたもので
    あって、内外周面の表面粗さが中心線平均粗さ(Ra)
    で1μm以下であると共に、外周面に長径で15μm以
    上の粗大共晶炭化物及び粗大共晶炭化物片が露出してい
    ないことを特徴とする高速度工具鋼製中空品。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の冷間鍛造用高速度工具
    鋼素材から、側面から中心軸に向く方向の欠陥部の最大
    深さが0.5mm以下である円柱状素材を形成する工程
    と、加工用ダイスの成形部の内径と前記円柱状素材の直
    径との差が0.5mm以下であるダイスを使用して前記
    円柱状素材を押出加工する工程と、を有することを特徴
    とする高速度工具鋼製中空品の製造方法。
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