JP3454224B2 - コイルドチュービング用ステンレス鋼 - Google Patents
コイルドチュービング用ステンレス鋼Info
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Description
スを含有する石油、天然ガスを生産する際に使用できる
シームレス鋼管、電縫管、レーザー溶接鋼管等のコイル
ドチュービング用ステンレス鋼に関するものである。
に成型して、シーム溶接する方法があるが、これにより
製造される溶接鋼管の材料としても本発明にかかるステ
ンレス鋼は使用できる。
油井の掘削からケーシング (以下C/S)、チュービング
(以下T/B)の敷設までの油井の現地での作業時間に依存
している。そこで、経費削減のために、掘削時間やC/S
、T/B の敷設時間の低減が望まれている。
ついては、コイル状に巻いたパイプを連続的に油井内に
挿入するコイルドチュービングという技術が採用され始
めている。
管をネジ継ぎする必要がないので、従来の油井管のネジ
継ぎ手による連結に比べ、地表と坑底間における鋼管の
揚管、降下の各作業を迅速に行うことができるため、C/
S やT/B の敷設時間が短縮できること、さらに、地表に
おける鋼管の装脱着のための起重機 (リグ) 使用が不要
になることで、ランニングコストを大幅に削減できる。
決すべき技術課題が多く残っている。それは、コイルド
チュービング用の鋼の耐疲労特性および耐食性である。
ここで、耐食性とは耐炭酸ガス腐食性や耐硫化物応力腐
食割れ性を含む耐食性能である。
ばしの塑性変形が数回加えられ、さらに、1つの井戸で
使用が終わると他の井戸で使用されるので、複数回の低
サイクル疲労に耐える必要がある。
るための井戸の環境がますます過酷なものになってお
り、これらの流体をC/S およびT/B で生産すると、ある
いはこれらの環境でドリリングすると腐食が大きな問題
となってくる。従来のコイルドチュービングでは、過酷
な環境で石油または天然ガスの流体を生産する配管およ
びドリルパイプとして十分な耐食性が得られないという
問題があった。
は、特開平7−214143号公報にCr−Ni合金鋼と炭素鋼の
二重管の製造方法が開示されているが、耐食性と疲労特
性について具体的に説明されていないばかりか、二重管
では、製造時に手間がかかる。また、海水中下での耐食
性と疲労特性を向上させた高強度マルテンサイト圧延鋼
板として第2667538 号特許があるが、鋼組織のマルテン
サイト率の規定がないため、十分な耐炭酸ガス腐食性能
および耐硫化物腐食割れ性能が得られない。さらに、、
疲労特性については、高サイクル疲労特性について言及
しているのみで、コイルドチュービングに必要な靱性、
変形を伴う低サイクル疲労特性について何ら言及されて
いない。
の事情の下、石油または天然ガスの流体を生産用のコイ
ルドチュービングとして使用できるように耐疲労特性
と、耐硫化物応力腐食割れ性および耐炭酸ガス腐食性を
含む耐食性に優れたコイルドチュービング用ステンレス
鋼を提供することである。
題を達成すべく、鋼の添加元素を変化させて、低サイク
ル疲労特性と耐硫化物応力腐食性能、耐食性能を調査し
た結果、C、Cr、Ni、Al、Mn、N等の特定の元素を適切
なバランスで添加し、かつ組織に体積分率で2%以上の
残留オーステナイトを含み、残りは主にマルテンサイト
にすることが重要であることを新らたに見出し、本発明
に至った。
%以下、Mn:0.1 〜3.0 %、P:0.04%以下、S:0.00
5 %以下、Cr:9〜15%、Ni:0.7 〜8%、Al:0.001
〜0.20%、N:0.05%以下を含有し、鋼組織が体積分率
で2%以上の残留オーステナイト、残りは主にマルテン
サイトからなることを特徴とする耐疲労特性および耐食
性に優れたコイルドチュービング用ステンレス鋼。 (2) 質量%で、鋼組成がC:0.001 〜0.04%、Si:1.0
%以下、Mn:0.1 〜3.0 %、P:0.04%以下、S:0.00
5 %以下、Cr:9〜15%、Ni:0.7 〜8%、Al:0.001
〜0.20%、N:0.05%以下を含有するとともに、Nb:0.
005 〜0.10%、V:0.005 〜0.10%、Ti:0.005 〜0.10
%、Zr:0.005〜0.10のうちから選ばれた1種または2
種以上を含有し、Mo+W/2:0.2 〜3.0 %を満たすよう
にMo、Wのうちから1種または2種を含有し、鋼組織が
体積分率で2%以上の残留オーステナイト、残りは主に
マルテンサイトからなることを特徴とする耐疲労特性お
よび耐食性に優れたコイルドチュービング用ステンレス
鋼。 (3) 前記鋼組成が、さらにCa:0.001 〜0.05%、Mg:0.
001 〜0.05%、La:0.001 〜0.05%、およびCe:0.001
〜0.05%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有
する上記(1) または(2) 記載のコイルドチュービング用
ステンレス鋼。 (4) 上記(1) 〜(3) のいずれかに記載のステンレス鋼か
ら構成したコイルドチュービング用ステンレス鋼管。
成分組成を前述のように数値限定した理由を以下に説明
する。本明細書において特にことわりがないかぎり、鋼
組成を示す「%」は「質量%」である。
焼戻し後の硬度が高くなり過ぎ、硫化物応力腐食割れ感
受性が高くなる。また、炭化物の析出量が増加し、疲労
強度を低下するため、その上限を0.04%と定めた。C%
は低ければ低いほうがいいが、経済的に製造容易なこと
を考慮して、0.001 %を下限とした。そこで、C添加量
を0.001 〜0.04%とした。C%は、低いほど溶接ままで
の熱影響部の靱性が良好となるため、溶接性を考慮した
場合、好ましくは0.001 〜0.025 %、より好ましくは0.
001 〜0.015 %である。
分である。9%以下では十分な耐炭酸ガス腐食性を得ら
れない。また、15%以上では、δフェライトが生成し、
かえって耐炭酸ガス腐食性能が低下する。そこで、Cr含
量は9〜15%とした。
させるのに重要な元素である。Ni添加量が0.7 %未満で
は残留オーステナイトが安定しない。8%を超えると材
料コストが高くなりすぎるため、Niの添加範囲を0.7 〜
8%とした。より好ましくは、0.7 〜7%である。
だし、1.0 %を超えると靱性が低下すると共に、熱間加
工性を低下させるので、その上限を1.0 %とした。好ま
しくは、0.20%未満である。
1 %以上の含有が必要である。3.0 %超の添加ではその
効果が飽和する。
いほどよい。脱硫コストとのかねあいで上限を0.005 %
とした。
食割れ性が著しく悪化するので0.04%以下とした。
%未満ではその効果がなく、0.20%を超えると介在物が
多くなって耐食性が損なわれる。好ましくは0.06〜0.00
1 %である。
すぎ硫化物応力腐食割れ感受性が高くなる。
定し、強度ばらつきを少なくするために少なくとも1種
添加するが、いずれも過剰に添加すると焼入れまま組織
のマルテンサイト率を95%以上とすることができず、さ
らに、焼入れままの硬度も高くなりすぎ、かえってカソ
ード防食性能を低下させるため、Nb:0.001 〜0.10%、
Ti:0.005 〜0.10%、Zr:0.005 〜0.10%、V:0.005
〜0.10%とした。
環境での局部腐食を防止する元素である。本発明の好適
態様にあっては、Mo+W/2:0.2 〜3.0 %を満たすよう
にMo、Wのうちから1種または2種を含有する。Mo+W
/2が3.0 %以上となるように添加しても局部腐食を防止
する効果は飽和するため、また0.2 %未満ではその効果
は発揮できずMo+W/2を0.2 〜3.0 %まで添加すること
にした。
加工性を向上させるのに有効な元素であり、所望により
1種または2種以上を添加する。しかし、いずれの元素
もその含有量が0.001%未満では上記効果が得られな
い。一方、0.05%を超えて添加含有させると、粗大な酸
化物が生成し、却って耐食性が低下する。よって、Ca:
0.001 〜0.05%、Mg:0.001 〜0.05%、La:0.001 〜0.
05%、およびCe:0.001 〜0.05%とした。これらの元素
のうち特に好ましい添加元素は、Ca、Laである。
めには、上記成分限定のみでは達成できず、上記鋼組成
に加えて組織に体積分率で2%以上の残留オーステナイ
トを含み、残りは主にマルテンサイトからなるものとす
れば良いことを実験的に見出した。残留オーステナイト
の量の上限は特に制限ないが、マルテンサイト組織とす
るとき行う焼入れ、焼戻しによれば残留オーステナイト
の量は高々20体積%である。
テナイトは、焼入れ後、Ac1 点からAc3 点の間の温度で
焼戻しをすることにより得られる。このとき、焼戻し温
度の値と焼戻しの均熱時間を変化させることにより残留
オーステナイト量を変化させることができる。好ましく
は、残留オーステナイトの量は5〜20%である。
ービングとして用いるパイプに曲げ戻しの塑性変形を加
えたときに、パイプに付加される疲労のことである。本
発明にかかるステンレス鋼は、上述の鋼組成および鋼組
織が確保できるかぎりいずれの方法で製造することも可
能であり、本発明においてそれらについて特に制限する
ものではない。
いは継目無管などのステンレス鋼管の形態で、特にコイ
ルドチュービングとして使用する。
(A〜Lが本発明鋼、M〜Qが比較鋼) を通常の電気
炉、ならびに脱硫の目的でAr−酸素脱炭炉(AOD炉) を使
用して溶製した後、直径:500mm のインゴットを鋳造
し、次いでインゴットに温度:1200℃で熱間鍛造を施し
て直径:19mmのビレットを成形し、引き続いて前記ビレ
ットよりマンネスマン製管により直径:60.3mm×肉厚:
4.63mmの管とした。各成分組成の材料について、表2に
示す条件で焼入れ焼戻しして鋼管を作製し、これらを用
いて、残留オーステナイトの体積分率測定、引張試験、
実体疲労試験、炭酸ガス腐食試験および硫化物応力腐食
割れ試験を行った。焼戻しの際の均熱時間は15分と一定
した。
線測定法によった。強度は、引張試験の降伏応力で評価
した。繰り返し疲労特性を調査する実体疲労試験は、次
のようにして実施した。
示す疲労試験機を用いた。水圧式シリンダが左右に繰り
返し動くことにより、鋼管は曲げ枠と伸ばし枠間で塑性
変形を伴った曲げと伸ばしの繰り返し疲労を受ける。
試験の曲げ半径が変えられる。今回の試験では、曲げ半
径は1220mmとした。これら値はコイルドチュービングで
使われる一般的なワークリール半径の一つである。さら
に、内圧調節器によりパイプに与える内圧が変えられる
が、今回内圧は10.3MPa(1500psi)とした。
×長さ2000mmのパイプを破断するまで低サイクル疲労を
加え、低サイクル疲労特性を調べた。
1回のまでと1回の伸ばしを意味する。耐食性評価の試
験として次の炭酸ガス腐食試験を実施した。
mm長さを切り出し、600 番エメリー紙にて研磨後、脱
脂、乾燥したものを用いた。この試験片を3MPa CO2 ガ
スを飽和させた5%NaCl水溶液 (液温60℃、流速1m/s)
に720h浸漬した。
片の重量から試験後の試験片の重量を引く) 測定と目視
により試験片表面の局部腐食の有無を確認した。硫化物
応力腐食割れ性の評価として次の試験を行った。
H=4.7 試験温度:25℃ 歪み速度:4×10-6s-1 試験片 :2mm幅×4mm厚×平行部20mm長 (括弧試験
片) 。 試験片はパイプから切り出した。
炭酸ガス腐食にて、0.5 mm/y以下の腐食速度を示し局部
腐食を生じなかったものを "○" 、0.5 mm/y以上、また
は局部腐食を生じたものを "×" とした。
大気中と試験環境中での塑性伸びの比より評価し、塑性
伸び (試験環境中) /塑性伸び (大気中) 95%超えのも
のを"◎" 、90〜95%のものを "○" 、90%より小さい
ものを "×" で示した。
範囲が本発明の範囲内である鋼 試験No.1〜17は、残留
オーステナイトの量が増加するに従って疲労破断回数が
増加している。かつ、耐炭酸ガス腐食性能、耐硫化物応
力腐食割れ性能も良好である。
2体積%以上であっても、充分な疲労特性が得られてい
ないか、疲労特性は良好でも、耐炭酸ガス腐食性能か耐
硫化物応力腐食割れ性能のどちらかが不十分である。
囲内である試験No.7〜12の本発明鋼と試験No.27 〜31の
比較鋼について、疲労破断サイクル回数および耐炭酸ガ
ス腐食性能、耐硫化物腐食性能と残留オーステナイト量
の関係を示したグラフである。
イト量が本発明で定める範囲の本発明鋼では、疲労特性
および耐炭酸ガス腐食性能、耐硫化物腐食性能が良好で
あることが分かる。
ように降伏応力はいずれも550MPa以上である。
ば、疲労特性および耐炭酸ガス腐食性能、耐硫化物腐食
性に優れた550MPa以上の耐力を有する高耐食性コイルド
チュービング用マルテンサイト系ステンレス鋼が提供さ
れる。
ル回数の関係を示すグラフである。
る。
Claims (4)
- 【請求項1】 質量%で、鋼組成が C:0.001 〜0.04%、Si:1.0 %以下、Mn:0.1 〜3.0
%、 P:0.04%以下、S:0.005 %以下、Cr:9〜15%、N
i:0.7 〜8%、 Al:0.001 〜0.20%、N:0.05%以下 を含有し、鋼組織が体積分率で2%以上の残留オーステ
ナイト、残りは主にマルテンサイトからなることを特徴
とする耐疲労特性および耐食性に優れたコイルドチュー
ビング用ステンレス鋼。 - 【請求項2】 質量%で、鋼組成が C:0.001 〜0.04%、Si:1.0 %以下、Mn:0.1 〜3.0
%、 P:0.04%以下、S:0.005 %以下、Cr:9〜15%、N
i:0.7 〜8%、 Al:0.001 〜0.20%、N:0.05%以下を含有するととも
に、 Nb:0.001 〜0.10%、V:0.005 〜0.10%、Ti:0.005
〜0.10%、Zr:0.005〜0.10のうちから選ばれた1種ま
たは2種以上を含有し、 Mo+W/2:0.2 〜3.0 %を満たすようにMo、Wのうちか
ら1種または2種を含有し、鋼組織が体積分率で2%以
上の残留オーステナイト、残りは主にマルテンサイトか
らなることを特徴とする耐疲労特性および耐食性に優れ
たコイルドチュービング用ステンレス鋼。 - 【請求項3】 前記鋼組成が、さらにCa:0.001 〜0.05
%、Mg:0.001 〜0.05%、La:0.001 〜0.05%、および
Ce:0.001 〜0.05%のうちから選ばれた1種または2種
以上を含有する請求項1または2記載のコイルドチュー
ビング用ステンレス鋼。 - 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載のステン
レス鋼から構成したコイルドチュービング用ステンレス
鋼管。
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