JP3437115B2 - 既設配管の更生修理用パイプ及び既設配管更生修理工法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ガス導管等の既設
配管内に合成樹脂パイプを挿入して、この管路内に新管
を形成することによって既設配管の更生修理を行う既設
配管の更生修理用パイプ、及びこれを用いた既設配管更
生修理工法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】既設配管の所定区間全域に対して漏洩対
策を施す方法としては、既設配管内面に樹脂ライニン
グ膜を形成する方法、既設配管の内面に内貼り材を接
着する方法、既設配管内に新管を挿入する方法が良く
知られている。この中で、過度に老朽化した配管或いは
ガス導管等の高圧配管の更生修理には、確実な漏洩防止
が可能で且つ耐圧性も高いことから上記の方法が有効
である。また、上記の方法は、大規模な地震によって
完全に破損した既設配管の更生修理や地震対策としての
補修工法として有効であることから、震災への関心が高
まっている近年において特に注目されている。上記の
方法によってガス導管等の鋼管に対する更生修理を行う
一般的な工法としては、既設配管内に所定厚のポリエチ
レン樹脂パイプを挿入する工法が知られている。

【０００３】この従来工法について説明すると、硬質の
合成樹脂パイプであるポリエチレン樹脂パイプを円筒形
のままで管路内に挿入することは極めて困難であること
から、ポリエチレン樹脂パイプを管路内に挿入し得る形
状に縮小変形して、これを管路内に挿入した後加熱加圧
して管路内で円筒形に膨らませ、管路内面に沿わせるこ
とが行われている。上記の縮小変形の代表的な例は、ポ
リエチレン樹脂パイプを押し出し成型した後、直ちにそ
のパイプを扁平に折り畳み、更にその扁平パイプを二つ
折りにするもの（米国特許第４８６７９２１号明細書等
参照）、或いは長尺円筒状に成型されたポリエチレン樹
脂パイプを加熱し断面Ｕ又はＶ字状に折り曲げ変形する
もの（特開平１１−４２７０７号公報等）がある。ま
た、既設配管の管路口径より小口径のポリエチレン樹脂
パイプを挿入し、その後高圧状況下で加熱することによ
ってポリエチレン樹脂パイプを拡径して既設配管の内面
に密着させる工法も提案されている（特開平１−２９５
８２８号公報）。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上述したように、既設
配管の更生修理のために管路内に合成樹脂パイプを挿入
する工法では、パイプ材料として一般にポリエチレン樹
脂が使用される。このようなポリエチレン樹脂は、表面
自由エネルギーが低く、結晶質で溶剤にも溶けないこと
から、一般に接着剤で接着するには放電処理或いは薬剤
処理といった表面処理を必要となる。そのため、既設配
管内に挿入した後には、接着処理はされない状態とな
り、二重管のような状態になる。

【０００５】ところで、上述したようなポリエチレン管
挿入後の配管に対して、切断・分岐等の作業を行う場
合、既設配管とポリエチレン管とがそれぞれ独立してい
るため、既設配管とポリエチレン管との作業（工具）を
別々に行わなくてはならず、作業時間が長時間化してし
まう問題点がある。また、特に分岐作業にて、分岐開口
部を形成する際に、切断するためにポリエチレン管に過
度な圧力を負荷すると、該ポリエチレン管が変形してし
まい、適正に分岐開口部が形成できない問題点も派生す
る。

【０００６】また、既設配管の管路径より小径のパイプ
を挿入して、既設配管の管路内面と挿入したパイプの外
周面との間隙に接着樹脂を充填することによって、加熱
による縮径変形を施さない工法も提案されている。しか
しながら、これによると、挿入するパイプ自体が小口径
であるので、既設配管の管路口径が更生修理によって減
径することになり、更には、既設管路の更生修理区間全
域において、既設管路内面と挿入したパイプの外周面と
の間隙に接着樹脂を充填する必要があるので、多量の接
着樹脂を必要とするといった問題がある。

【０００７】本発明は、上述のような事情に対処するた
めに提案されたものであって、既設配管内に合成樹脂パ
イプを挿入して、この管路内に新管を形成することによ
って既設配管の更生修理を行う際に、既設配管内に挿入
する合成樹脂パイプの経時的な変形を簡易に防止し、挿
入パイプの充分な開口径を長期的に確保できると共に、
既設管路と挿入パイプとを強固且つ経済的に接着固定す
ることが可能な既設配管の更生修理用パイプ、及びこれ
を用いた既設配管更生修理工法を提供することを目的と
する。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は以下の構成を備える。まず第１に、既設配
管内に合成樹脂パイプを挿入して管路の更生修理を行う
更生修理用パイプにおいて、上記合成樹脂パイプは、パ
イプの外径を上記管路の内径とほぼ同径に形成すると共
にパイプ厚を非加熱状態で押圧作用により縮径変形が可
能な薄厚に形成したナイロン製パイプにより構成され、
上記パイプの外周面には凹部により螺旋溝が形成され、
上記螺旋溝の凹部のみを流動して上記パイプを上記管路
内面に接着固定する接着層が形成されることを特徴とす
る。

【０００９】第２に、既設配管内に合成樹脂パイプを挿
入して管路の更生修理を行う既設配管更生修理工法にお
いて、上記合成樹脂パイプを、パイプの外径を上記管路
の内径とほぼ同径に形成すると共にパイプ厚を非加熱状
態で押圧作用により縮径変形が可能な薄厚に形成したナ
イロン製パイプにより構成し、上記パイプの外周面には
凹部により螺旋溝を形成し、上記パイプを押圧作用によ
り縮径変形させながら上記管路内に挿入した後、上記螺
旋溝の凹部のみに流動させて接着層を形成し、上記パイ
プを上記管路内面に接着固定することを特徴とする。

【００１０】第３に、上記の既設配管更生修理工法にお
いて、上記螺旋溝の凹部内に接着層を形成した後、上記
パイプを管路内面に押圧させることによって、上記パイ
プを上記管路内面に接着固定することを特徴とする。

【００１１】

【作用】 上記本発明によると、既設配管内に挿入する合
成樹脂パイプを高強度で高弾性を有するナイロン製パイ
プとし、しかもそのパイプの外径を既設管路の内径とほ
ぼ同径に形成すると共にパイプ厚を非加熱状態で押圧作
用により縮径変形が可能な薄厚に形成する。これによっ
て、既設管路への挿入時には、加熱変形を施すことなく
非加熱状態でナイロン製パイプを押圧作用により縮径変
形することができる。既設管路内に挿入されたナイロン
製パイプは、その高弾性特性と挿入時における縮径変形
とによって自力で形状回復して既設管路の内面に密着す
る。その後に、このナイロン製パイプの外周面に形成さ
れる螺旋溝の凹部を利用して、この螺旋溝中を流動させ
て上記凹部内に接着層を形成し、このナイロン製パイプ
を上記管路内面に接着固定する。

【００１２】ナイロン製パイプはポリエチレン樹脂パイ
プと比較して接着特性が高いので、施工後の長期間に亘
って既設管路とナイロン製パイプを一体化することがで
きる。また、既設管路内面と挿入するナイロン製パイプ
との間に間隙が形成されないので、更生修理後の既設管
路においても充分な口径を確保することができる。

【００１３】ナイロン製パイプはポリエチレン樹脂パイ
プと比較して引張り等に対して高強度であることから、
充分な強度を確保しながら上記のようにパイプ厚を薄く
することができる。パイプ厚を薄くすることで、更生修
理による口径の減少を最小限に抑えることができ、これ
によっても充分な口径の確保が可能になる。

【００１４】また、ナイロン製パイプ外周面に形成され
る接着層は外周面の凹部にのみ形成されるので、使用す
る接着樹脂の量は少量ですみ経済的である。

【００１５】既設配管の管路内に上記のナイロン製パイ
プを挿入して、上記の接着層を形成した後は、上記のパ
イプを既設管路内面に押圧させることによって、更に強
固に上記パイプを上記管路内面に接着固定することがで
きる。

【００１６】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面を
参照して説明する。

【００１７】図１は本発明の一実施形態に係る既設配管
更生修理用パイプを示す説明図である。同図（ａ）は更
生修理パイプの外観図、同図（ｂ）は更生修理パイプを
既設管路に挿入した状態を示す説明図である。既設配管
更生修理用パイプ１は高強度且つ弾性を有するナイロン
製パイプ１０を基材とする。このナイロン製パイプ１０
は、その外周面に凹部が形成される螺旋溝１ａを有し、
その外径Ｄを挿入する既設配管２の内径とほぼ同径とし
て、パイプ厚ｄをこのパイプを非加熱状態で縮径変形で
きる程度に薄厚とする。そして、既設配管２へ更生修理
用パイプ１を挿入した後に、その外周面に形成される凹
部内に接着層２０が形成される。ナイロン製パイプ１０
の素材としては、周知のように、ナイロン４６，６，６
６，６１０，６１２，１１，１２などを採用することが
できる。接着層２０は、ナイロンと鋼材を強固に接着さ
せる接着樹脂であればよく、例えば、ナイロン系の樹脂
を溶剤で溶かして接着剤としたものや、接着性ポリオレ
フィン、特に、マレイン酸，無水マレイン酸，アクリル
酸などで変性したポリエチレン、ポリプロピレン等の熱
可塑性のもの、或いはエポキシ系の接着樹脂を用いるこ
とができる。

【００１８】図２〜４によって、既設管路への更生修理
用パイプ１の挿入工程について説明する。図２に示した
工法は、更生修理用パイプ１を施工現場に搬入し、その
先端を引き込みロープ３に固定し、この引き込みロープ
３を巻き取りウインチ４で巻き取ることによって、更生
修理用パイプ１を既設管路２内に挿入するもので、既設
管路２の挿入口手前で更生修理用パイプ１が縮径具５を
通過する。これによって、弾性を有するナイロン製パイ
プ１０を基材とする更生修理用パイプ１は、弾性的に縮
径変形し、この変形が縮径具５によって保持された状態
で既設管路２内に挿入される。図３に、上記縮径具５の
断面図を示す。この縮径具５は、円筒形の枠５ａ内に１
つ又は複数個のローラ５ｂ（図においては２個）が軸支
されている。これによって、縮径具５を更生修理用パイ
プ１が通過すると、ローラ５ｂの押圧作用によって更生
修理用パイプ１の断面形状が図に示すように縮径変形す
る。

【００１９】図４は、既設管路２へ更生修理パイプ１を
挿入する他の工法例を示すものである。これによると、
上記と同様の縮径具５を既設管路２の挿入口に固定し
て、その手前に挿入装置６を配設する。挿入装置６は、
更生修理パイプ１の螺旋溝１ａに嵌合する螺旋突起を内
面に備えた回転枠６ｂと、この回転枠６ｂを回転駆動す
るための伝動手段６ａ及びモータ６ｃとからなる。回転
枠６ｂは図示省略した支持手段によって回転可能に支持
されており、モータ６ｃによって回転駆動される。この
際、縮径具５によって更生修理パイプ１の回転が規制さ
れていることから、回転枠６ｂの回転によって、更生修
理パイプ１が既設管路２内に縮径されながら挿入され
る。

【００２０】既設管路２への更生修理パイプ１の挿入が
完了すると、既設管路２の挿入口で更生修理パイプ１は
切断される。高弾性のナイロン製パイプで形成された更
生修理パイプ１は、縮径具５による縮径変形から解放さ
れると自力で復元して既設管路２の内面に密着する。そ
の後、既設管路２の一方端或いは両端から更生修理パイ
プ１の外周面に形成された螺旋溝１ａ中を流動させて、
螺旋溝１ａの凹部内に接着層２０を形成し、更生修理パ
イプ１と既設配管２とを接着固定する。

【００２１】そして、必要に応じて、図５に示すような
押圧手段７を用いて更生修理パイプ１を既設管路２の内
面に強固に接着固定させる。ここで、押圧手段７は、更
生修理パイプ１の外周面に形成される螺旋溝１ａの凹部
内に接着層２０を形成した後、更生修理パイプ１内に挿
通され、更生修理パイプ１を内側から既設管路２の内面
に押圧するものである。押圧手段７の挿通には、上述し
たと同様の引き込みロープ３及び巻き取りウインチ４を
使用する。押圧手段７を用いることによって、上記の凹
部が内側から圧迫されてつぶれ、接着層２０が更生修理
パイプ１の外周面と既設管路２の内面との間に流出して
接着領域を広げ、更に強固な接着固定がなされる。

【００２２】上述した本発明によると、ナイロン製の更
生修理用パイプ１を熱変形させることなく縮径変形して
既設配管２内に挿入し、ナイロン製パイプ１０の外周面
に形成した接着層２０によって既設管路２の内面に強固
に接着固定するので、挿入した更生修理用パイプ１が経
時的に変形して開口が減ぜられるような不都合が生じる
ことがない。また、既設管路２に挿入する更生修理用パ
イプ１は高弾性且つ高強度のナイロン製パイプであるの
で、その肉厚を極力薄くでき、更に更生修理パイプ１を
既設管路２の内面に密着させているので、更生後の管路
口径を充分確保することができる。

【００２３】また、既設管路への挿入後にナイロン製パ
イプ１０の外周面に形成される接着層２０は、螺旋溝１
ａの凹部にのみ形成されるので、接着層２０をパイプ外
周面の全面に形成する場合に比べて経済的である。

【００２４】

【発明の効果】本発明は上記のように構成されており、
既設配管内に挿入する合成樹脂パイプを高強度で高弾性
を有するナイロン製パイプとし、パイプの外径を既設管
路の内径とほぼ同径に形成すると共にパイプ厚を非加熱
状態で押圧作用により縮径変形が可能な薄厚に形成する
によって、既設管路への挿入時には、加熱変形を施すこ
となく非加熱状態でナイロン製パイプを押圧作用により
容易に縮径変形することができ、既設管路内に挿入され
たナイロン製パイプは、その高弾性特性と挿入時におけ
る縮径変形とによって自力で形状回復して既設管路の内
面に密着され、ナイロン製パイプの外周面に形成されて
いる螺旋溝の凹部を利用して、螺旋溝中を流動させて凹
部内に接着層を形成し、ナイロン製パイプを管路内面に
接着固定することができる。 また、ナイロン製パイプは
ポリエチレン樹脂パイプと比較して接着特性が高いの
で、施工後の長期間に亘って既設管路とナイロン製パイ
プを一体化することができ、既設管路内面と挿入するナ
イロン製パイプとの間に間隙が形成されないので、更生
修理後の既設管路においても充分な口径を確保すること
ができる。 さらに、ナイロン製パイプはポリエチレン樹
脂パイプと比較して引張り等に対して高強度であること
から、充分な強度を確保しながらパイプ厚を薄くするこ
とができ、更生修理による口径の減少を最小限に抑える
ことができるので、これによっても充分な口径を確保す
ることができる。 しかも、ナイロン製パイプの外周面に
形成される接着層は螺旋溝の凹部にのみ形成されるの
で、使用される接着樹脂の量は少量ですみ経済的であ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施形態に係る既設配管更生修理用
パイプを示す説明図である。

【図２】本発明の実施形態に係る既設管路への更生修理
用パイプの挿入工程についての説明図。

【図３】本発明の実施形態における縮径具の断面図。

【図４】本発明の実施形態に係る既設管路への更生修理
用パイプの挿入工程についての説明図。

【図５】本発明の実施形態に係る挿入した更生修理用パ
イプを既設管路の内面に接着固定する工程についての説
明図。

【符号の説明】

１ 更生修理用パイプ ２ 既設管路 ３ 引き込みロープ ４ 巻き取りウインチ ５ 縮径具 ６ 挿入装置 ７ 押圧手段 １０ ナイロン製パイプ ２０ 接着層

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平８−52801（ＪＰ，Ａ) 特開 平８−57956（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−170947（ＪＰ，Ａ) 特開 昭62−246715（ＪＰ，Ａ) 特開 昭52−97425（ＪＰ，Ａ) 特公 昭62−2199（ＪＰ，Ｂ２) 特公 昭61−53219（ＪＰ，Ｂ２) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B29C 63/00 - 63/48 F16L 1/00

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 既設配管内に合成樹脂パイプを挿入して
   管路の更生修理を行う更生修理用パイプにおいて、 上記合成樹脂パイプは、パイプの外径を上記管路の内径
   とほぼ同径に形成すると共にパイプ厚を非加熱状態で押
   圧作用により縮径変形が可能な薄厚に形成したナイロン
   製パイプにより構成され、上記パイプの外周面には凹部
   により螺旋溝が形成され、上記螺旋溝の凹部のみを流動
   して上記パイプを上記管路内面に接着固定する接着層が
   形成されることを特徴とする既設配管の更生修理用パイ
   プ。
2. 【請求項２】 既設配管内に合成樹脂パイプを挿入して
   管路の更生修理を行う既設配管更生修理工法において、 上記合成樹脂パイプを、パイプの外径を上記管路の内径
   とほぼ同径に形成すると共にパイプ厚を非加熱状態で押
   圧作用により縮径変形が可能な薄厚に形成したナイロン
   製パイプにより構成し、上記パイプの外周面には凹部に
   より螺旋溝を形成し、上記パイプを押圧作用により縮径
   変形させながら上記管路内に挿入した後、上記螺旋溝の
   凹部のみに流動させて接着層を形成し、上記パイプを上
   記管路内面に接着固定することを特徴とする既設配管更
   生修理工法。
3. 【請求項３】 上記螺旋溝の凹部内に接着層を形成した
   後、上記パイプを管路内面に押圧させることによって、
   上記パイプを上記管路内面に接着固定することを特徴と
   する請求項２記載の既設配管更生修理工法。