JP3416964B2 - KTiOPO4 単結晶の製造方法 - Google Patents

KTiOPO4 単結晶の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、非線形光学材料として
用いられるKTiOPO4 単結晶の製造方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】近年、強力な出力を有しコヒーレンスの
良好なレーザーの出現により、非線形光学材料を用いて
第2高調波(SHG:Second harmonic generation)と
して基本波長の半分の波長の光が得られるようになって
きている。そして、この非線形光学材料としては、非線
形光学結晶であるKTiOPO4単結晶(以下、単にK
TPと称する。)等が代表的なものである。
【0003】ところで、上記KTPの作製方法として
は、水熱合成法やTSSG法(Top Seeded Solution gr
owth)等が知られているが、いずれの場合にも育成によ
って得られるKTP単結晶には、分極が多分域(マルチ
ドメイン)として存在する。このようなマルチドメイン
の存在は、例えば文献(Appl. Phys. Lett., 51,(198
7), 1322)等にも記載されるように、出力の低下を招
き、非線形光学材料のSHGとしての効率が悪化する。
【0004】そこで、従来、前述のマルチドメインのあ
る結晶インゴットをバルクあるいは基板に切り出した
後、熱処理を施したり、あるいは熱処理中に電場を印加
する等して、マルチドメインをシングルドメイン化する
試みがなされている。例えば、先の文献には、育成され
たマルチドメイン単結晶から、C軸(分極軸)に垂直に
板状に切り出し(C板)、このC板の表裏両面にそれぞ
れ電極を形成し、500℃程度に加熱した状態で電圧を
印加してシングルドメイン化する方法が開示されてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
従来の方法は、マルチドメインの配列(例えばジグザグ
の分域壁を有する配列)によっては単分域化は難しいこ
と、電極形成等を含め分極(ポーリング)処理のプロセ
スが煩雑であること、分域の境界に生じた欠陥がポーリ
ング後も残存し易いこと等の欠点があり、実際、本発明
者等が熱処理を施したり熱処理中に電場を印加してマル
チドメインのシングルドメイン化を試みたが、場所によ
っては分極反転がされず、十分なシングルドメイン化を
達成することは難しかった。
【0006】本発明は、かかる従来の実情に鑑みて提案
されたものであって、育成されたKTP単結晶を十分に
シングルドメイン化することができ、非線形光学材料と
してのSHGの効率が高く高品質な結晶の育成が可能な
KTiOPO4 単結晶の製造方法を提供することを目的
とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上述の目的を
達成するために、融剤を含み過飽和状態にある融液に種
結晶を接触せしめて徐冷し、TSSG法により種結晶に
結晶を育成させるKTiOPO単結晶の製造方法にお
いて、結晶の育成時、上記融液を介して上記種結晶に電
流を流すことを特長とするものである。
【0008】また、本発明のKTiOPO4 単結晶の製
造方法においては、種結晶を導電性の保持部材によって
保持してこれを正極とし、融液を導電性の坩堝内に配し
てこれを負極とし、上記融液を介して上記種結晶に直流
電流を流すことを特徴とし、該種結晶に流れる直流電流
密度Dが2.5≦D≦25(mA/cm2 )以下である
ことを特徴とするものである。
【0009】さらに本発明のKTiOPO単結晶の製
造方法においては、融液を介して種結晶に流す電流が交
流電流であり、該種結晶に流れる交流電流密度Aが7.
5≦A≦67.5(mA/cm)であることを特徴と
し、上記種結晶に流れる交流電流の周波数が0.01〜
200Hzであることを特徴とするものである。また、
本発明のKTiOPO単結晶の製造方法においては、
種結晶はC軸方位の結晶であることを特徴とするもので
ある。
【0010】すなわち、本発明においては、先ず、TS
SG法と言われる方法を用い、KTP単結晶を育成す
る。TSSG法は、原料をフラックス(融剤)に溶解さ
せ、過飽和状態を作って種結晶だけに結晶成長させるも
ので、フラックス法の一種である。このTSSG法は、
結晶の大型化が期待でき、種結晶の方位を選ぶことで育
成結晶の成長方位を制御することができるという特徴を
有する。
【0011】KTP単結晶の育成は、通常のTSSG法
の手法にしたがって過飽和状態の融液中で徐冷しながら
行えばよいが、本発明においては、この際、直流または
交流電流を融液を介して種結晶に流すものとする。原料
やフラックスは、通常のものがいずれも使用可能であ
り、例えばフラックスとしては3K2 WO4 ・P2 5
やK6 4 13、WO3 +K6 4 13等が使用され
る。
【0012】また、このときの種結晶としては、数mm
角の角棒状、例えば一辺が2mm、長さが10〜15m
m程度の角棒状の種結晶が用いられ、その長手方向にC
軸が一致するようなC軸結晶が用いられる。
【0013】上述のように融液を介して種結晶に電流を
流す場合、例えば直流電流を流す場合においては、種結
晶を導電性の保持部材によって保持してこれを正極と
し、融液を導電性の坩堝内に配してこれを負極として上
記種結晶に直流電流を流し、また、該種結晶に流れる直
流電流密度Dが2.5≦D≦25(mA/cm2 )の範
囲となるように直流電流を流すものとする。この時、種
結晶の保持部材側を負極とし、融液が内部に配された坩
堝側を正極とすると、KTP単結晶の育成が行われず、
逆に種結晶を溶かしてしまうため、種結晶の保持部材側
を正極、坩堝側を負極とする。また、種結晶に流れる直
流電流密度Dが2.5mA/cm2 未満であると効果が
不足しシングルドメイン化が難しく、直流電流密度Dが
25mA/cm2 よりも大であると育成されるKTP単
結晶にクラックが発生し易く、KTP単結晶を破損する
虞れがある。
【0014】また、融液を介して種結晶に交流電流を流
す場合においては、該種結晶に流れる交流電流密度Aが
7.5≦A≦67.5(mA/cm2 )の範囲となるよ
うに交流電流を流し、上記種結晶に流れる交流電流の周
波数が0.01〜200Hz、好ましくは0.1〜20
Hzとなるようにする。この時、種結晶に流れる交流電
流密度AがA<7.5の範囲であると、育成されるTP
単結晶の収率が良好ではなく、67.5<Aであると、
KTP単結晶が育成されない。さらに、種結晶に流れる
交流電流の周波数が0.01Hz未満,200Hzより
も大であると、効果が不足しシングルドメイン化が難し
い。
【0015】
【作用】本発明においては、融剤を含み過飽和状態にあ
る融液に種結晶を接触せしめて徐冷し、TSSG法によ
り種結晶に結晶を育成させるKTiOPO単結晶の製
造方法において、結晶の育成時、上記融液を介して上記
種結晶に電流を流すため、溶液中の陽イオンおよび陰イ
オンの動きに差が生じてイオンによる空間電荷が生じ、
育成されるKTP単結晶のシングルドメイン化が促進さ
れるものと思われる。
【0016】また、本発明のKTiOPO4 単結晶の製
造方法においては、種結晶を導電性の保持部材によって
保持してこれを正極とし、融液を導電性の坩堝内に配し
てこれを負極とし、上記融液を介して上記種結晶に直流
電流を流し、該種結晶に流れる直流電流密度Dが2.5
≦D≦25(mA/cm2 )以下であるため、融液中の
イオン原子(クラスターイオンが存在するかもしれない
が)に於いて陰あるいは陽イオンの動きに差が生じ、イ
オンによる空間電荷が生じた状態で結晶の育成が行わ
れ、そのままの状態でキュリー点よりも低い温度に冷却
されるため、得られるKTP単結晶はシングルドメイン
化されるものと思われる。
【0017】さらに本発明のKTiOPO4 単結晶の製
造方法においては、融液を介して種結晶に流す電流が交
流電流であり、該種結晶に流れる交流電流密度Aが7.
5≦A≦67.5(mA/cm2 )であり、上記種結晶
に流れる交流電流の周波数が、0.01〜200Hzで
あるため、KTP単結晶育成時に陰あるいは陽イオンの
動きに差が生じ、イオンによる空間電荷が生じるため、
得られるKTP単結晶はシングルドメイン化され、かつ
効果的に結晶が交互に積層されて結晶が育成されるた
め、KTP単結晶の収量が向上されるものと思われる。
【0018】
【実施例】以下、本発明を適用した具体的な実施例につ
いて、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施例に
おいて使用した単結晶育成装置の概略構成は、図1に示
す通りであり、この装置は、融剤を含む原料融液1を収
容する白金坩堝2と、種結晶3を上下する引き上げ機構
4とから構成されてなる。
【0019】上記引き上げ機構4は、サファイア棒5を
回転および上下動させるもので、このサファイア棒5の
先端には白金棒6を介して種結晶3が取付けられてい
る。なお、前記種結晶3と白金棒6、白金棒6とサファ
イア棒5は、連続する1本の白金線7を巻回することに
よって固定されており、この白金線7が前記種結晶3に
電流を流すための引き出しリード線としての役割を果た
すことになる。
【0020】前記白金線7は、直流または交流の安定化
電流電源8の一方の端子に接続され(直流の場合はプラ
ス側端子)、またこの安定化電流電源8のもう一方の端
子に接続される白金線9は、前記白金坩堝2の外壁面に
接続されている。したがって、これら安定化電流電源8
から供給される直流または交流電流は、白金棒6と白金
坩堝2を電極として融液1を介して種結晶3の先端に育
成されるKTP単結晶10に流されることとなる。
【0021】また、内部に融液1を有する白金坩堝2の
周囲には、アルミナボール12を介してアルミナ炉材1
1が配され、さらにアルミナ炉材11の周囲にはカンタ
ル線によって形成される加熱ヒーター14が配されて白
金坩堝2内の融液1の加熱,徐冷が可能なようになされ
ている。すなわち、白金坩堝2の側面に熱電対13が配
され、融液1の液面の端部の温度の測定が可能なように
なされており、実際に種結晶3の接する融液1液面中央
の温度が融液1の液面の端部の温度よりも20℃高いこ
とが実測定により示されていることから、融液1の液面
中央の温度が所定の温度となるように熱電対13によっ
て測定を行いながら加熱ヒーター14により加熱を行う
ことができ、白金坩堝2の周囲にアルミナボール12を
介してアルミナ炉材11が配されていることから白金坩
堝2内の融液1の温度が急激に低下することはなく、融
液1を徐冷することができる。
【0022】実験 1 そこで、上述の単結晶育成装置を用い、育成時に融液を
介して種結晶に直流電流を流した際の電流の大きさと育
成されるKTP単結晶の収量との関係を調査した。先
ず、融剤(フラックス)K6 4 13と出発原料である
KTiOPO4 成分をKTiOPO4 成分が64.8m
ol%となるように混合し、白金坩堝2内で加熱溶融
し、融液1を得た。
【0023】次に、白金坩堝2内の融液1中に引き上げ
機構4の先端に取付けた種結晶3を入れ、KTP単結晶
10を析出、育成した。上記種結晶3は、2mm角で長
さ12mmのc軸方位の結晶とした。なお、単結晶10
の析出、育成は、種結晶回転速度を200rpmとし、
育成開始時の融液温度を963℃として融液1を0.2
4℃/時間の割合で935℃まで徐冷し、その後もその
状態を保持し、140時間育成を行った。したがって、
KTPのキュリー点よりも高い温度下でKTP単結晶の
育成を行った。
【0024】この時、種結晶3に接続される白金線7を
安定化電流電源8のプラス側端子、白金坩堝2に接続さ
れる白金線9を安定化電流電源8のマイナス側端子に接
続し、該安定化電流電源8より電流の大きさを変化させ
て直流電流を流し、KTP単結晶の育成を行い、得られ
るKTP単結晶の収量を調査した。結果を図2に示す。
図2に示されるように、従来のように種結晶に直流電流
を流さないでKTP単結晶の育成を行った場合と比較し
て、種結晶に直流電流を流してKTP単結晶の育成を行
った場合では収量が低下するものの、種結晶に流れる電
流の大きさに応じて得られるKTP単結晶の収量が増加
する傾向が見られた。比較のために、種結晶3側を負電
極とし、白金坩堝2側を正電極として安定化電流電源8
より電流の大きさを変化させて直流電流を流し、KTP
単結晶の育成を行ったところ、KTP単結晶は育成され
ず、むしろ種結晶3が溶けるといった現象が見られた。
【0025】上述のように種結晶3側を正電極とし、白
金坩堝2側を負電極として育成を行ったKTP単結晶の
うち、育成時に流された電流値が+0.5mAであるK
TP単結晶のドメインパターンをふっ酸と硝酸の混酸の
エッチング液により観察したところ、シングルドメイン
化されていることが確認された。また、育成時の電流値
が大きいほどKTP単結晶の収量が増加することも確認
され、本実験例では育成時の電流値を3mA程度とした
場合に、直流電流を流さないで育成を行った場合と同等
の収量を達成できることも確認されたが、あまり電流値
が大きいとKTP単結晶中にクラックが生じ易いことも
確認された。本実験例においては、0.1〜1mAの電
流を種結晶に流した場合に良好にシングルドメイン化さ
れたKTP単結晶を得られることが確認され、本実験例
においては2mm角の種結晶を使用しているため、2.
5〜25mA/cm2 の直流電流密度で直流電流を流し
た場合に良好にシングルドメイン化されたKTP単結晶
を得られることが確認された。なお、本実験例において
は、育成時の融液温度をKTP単結晶のキュリー温度よ
りも高い温度としているが、本発明においては育成時の
融液温度をKTP単結晶のキュリー温度よりも低い温度
としても同様に良好にシングルドメイン化されたKTP
単結晶を得ることが可能である。
【0026】実験 2 次に、上述の単結晶育成装置を用い、育成時に融液を介
して種結晶に交流電流を流した際の電流の大きさと育成
されるKTP単結晶の収量との関係を調査した。先ず、
実験1と同様に、融剤(フラックス)K6 4 13と出
発原料であるKTiOPO4 成分をKTiOPO4 成分
が68.0mol%となるように混合し、白金坩堝2内
で加熱溶融し、融液1を得た。
【0027】次に、実験1と同様に種結晶3の先端部に
KTP単結晶10を析出、育成した。上記種結晶3は、
2mm角で長さ12mmのc軸方位の結晶とした。な
お、単結晶10の析出、育成は、種結晶回転速度を20
0rpmとし、育成開始時の融液温度を998℃として
融液1を0.24℃/時間の割合で966℃まで徐冷
し、その後もその状態を保持し、140時間育成を行っ
た。従って、KTPのキュリー点よりも高い温度下でK
TP単結晶の育成を行った。
【0028】この時、種結晶3に接続される白金線7と
白金坩堝2に接続される白金線9をを通じて安定化電流
電源8より基本波形が矩形波で周波数0.1Hzの交流
電流を種結晶3に流し、電流の大きさを0〜±3mAま
で変化させてKTP単結晶の育成を行い、得られるKT
P単結晶の収量を調査した。結果を図3に示す。(図3
中には電流値を絶対値で示す。)
【0029】図3を見てわかるように、種結晶に交流電
流を流して育成を行った場合のKTP単結晶の収量は、
電流値が0〜±1mAの範囲においては、従来のように
種結晶に電流を流さずに育成を行った場合の収量よりも
増加する傾向にあり、電流値が±1.0mAよりも大で
あると収量が減少し、電流値が±3.0mAに達すると
KTP単結晶の育成が行われないことがわかった。よっ
て、育成時に種結晶に流される交流電流の電流値が±
0.3〜±2.7の範囲にある場合に収量の良好なKT
P単結晶が得られることが確認され、本実験例において
は2mm角の種結晶を使用しているため、7.5〜6
7.5mA/cm2 の交流電流密度で交流電流を流した
場合に収量の良好なKTP単結晶を得られることが確認
された。上記の種結晶に交流電流を流して育成を行った
KTP単結晶は実験1において種結晶に直流電流を流し
て育成を行ったKTP単結晶よりも高い収量を得ること
ができ、かつクラックの発生等も少なく、品質の良好な
KTP単結晶を得ることができる。なお、本実験例にお
いては、育成時の融液温度をKTP単結晶のキュリー温
度よりも高い温度としているが、本発明においては育成
時の融液温度をKTP単結晶のキュリー温度よりも低い
温度としても同様に収量の良好なKTP単結晶を得るこ
とが可能である。
【0030】実験 3 次に、上述の単結晶育成装置を用いて、育成時に融液を
介して種結晶に交流電流を流した際の交流電流の周波数
と育成されるKTP単結晶の収量との関係を調査した。
実験2と同様に融液1の調整を行い、これに種結晶3を
入れ、実験2と同様の育成条件下でKTP単結晶の育成
を行った。この時、本実験例においては、安定化電流電
源8から種結晶3に流される基本波形が矩形波である交
流電流の電流値を±1.0mAに固定し、その周波数を
0.005〜500Hzまで変化させてKTP単結晶の
育成を行い、その収量を調査した。結果を図4に示す。
【0031】図4の結果を見てわかるように、周波数1
Hz近辺で最大収量を得、それより高い周波数あるいは
低い周波数では収量が低下する傾向が見られ、周波数が
0.005〜500Hz(図4中には200Hzまで示
す。)の範囲にあるとき、KTP単結晶の育成が行われ
ることが確認された。
【0032】そこで、KTP単結晶育成時に種結晶に流
す交流電流の周波数を200,100,0.1,0.0
1Hzとして育成したKTP単結晶のドメインパターン
をふっ酸と硝酸の混酸のエッチング液で観察したとこ
ろ、種結晶付近では多少の多分域が見られたが、それよ
り下の部分である結晶のテイル部分はシングルドメイン
化されていることが確認された。よって、KTP単結晶
育成時に種結晶に交流電流を流す際にその周波数を0.
01〜200Hzとした場合において、良好にシングル
ドメイン化されたKTP単結晶を得ることができること
が確認された。また、種結晶に流す交流電流の周波数を
0.1〜20Hzとした場合においては、収量も多く、
好ましい。
【0033】本実験例においては、KTP単結晶育成時
に種結晶に流す交流電流として基本波形が矩形波である
交流電流を用いたが、基本波形が正弦波である交流電流
を用いても同様にシングルドメイン化されたKTP単結
晶を得ることができた。
【0034】実験 4 次に、上述の単結晶育成装置を用いて、育成時に融液を
介して種結晶に交流電流と直流バイアス電流を流した際
にバイアス電流がKTP単結晶の収量に及ぼす影響を調
査した。実験2と同様に融液1の調整を行い、これに種
結晶3を入れ、実験2と同様の育成条件下でKTP単結
晶の育成を行った。この時、本実験例においては、安定
化電流電源8から交流電流とバイアス電流を種結晶3に
流し、電流値を−0.6〜0.6mAまで変化させてK
TP単結晶の育成を行い、その収量を調査した。上記交
流電流は、基本波形が矩形波であり周波数が0.1H
z、電流値が±1.0mAの電流とし、上記バイアス電
流は、その極性を種結晶3側を正極とし、白金坩堝2側
を負極として正のバイアス電流を流し、種結晶3側を負
極とし、白金坩堝2側を正極として負のバイアス電流を
流した。結果を図5に示す。図5を見てわかるように、
バイアス電流が負の時は、種結晶3側を負極として白金
坩堝2側を正極として直流電流を種結晶に流した場合と
同様にKTP単結晶の育成が見られなかった。一方、バ
イアス電流がゼロまたは正の時には、種結晶3側を正極
として白金坩堝2側を負極として直流電流を種結晶に流
した場合と同様にKTP単結晶の育成が見られた。
【0035】実験 5 次に、上述の単結晶育成装置を用いて、育成時に融液を
介して種結晶に交流電流を流した際の交流電流の波形の
変化を調査した。実験2と同様に融液1の調整を行い、
これに種結晶3を入れ、実験2と同様の育成条件下でK
TP単結晶の育成を行った。この時、本実験例において
は、安定化電流電源8から周波数100Hzで電流値が
±1.0mAである交流電流を流し、KTP単結晶の育
成を行い、種結晶3と白金坩堝2間の電圧波形を調査し
た。図6Aに育成開始時の電圧波形、図6Bに育成開始
17時間後の電圧波形を示す。
【0036】図6Aに示されるように、育成開始時の電
圧波形は略対称的であるが、図6Bに示される育成開始
17時間後の電圧波形は非対称的になっていることがわ
かる。さらに、図7にKTP単結晶育成時間に伴う正負
電圧それぞれのピーク値の変化を示すが(図7中の○は
正の電圧、□は負の電圧のピーク値を示す。)、図7の
結果からも単結晶育成に伴って電圧波形が非対称的に変
化していることがわかる。
【0037】本実験例においては、KTP単結晶育成温
度をKTP単結晶のキュリー点よりも高い温度としてお
り、上述のように電圧波形が非対称的な波形を示すとい
うことは、イオンによる空間電荷が生じていることが推
察され、この空間電荷が育成されるKTP単結晶のシン
グルドメイン化に影響を及ぼしているものと思われる。
【0038】例えば、実験1のようにKTP単結晶育成
時に種結晶に直流電流を流す場合において、得られるK
TP単結晶がシングルドメイン化されているのは、融液
中のイオン原子(クラスターイオンが存在するかもしれ
ないが)に於いて陰あるいは陽イオンの動きに差が生
じ、イオンによる空間電荷が生じた状態で結晶の育成が
行われ、そのままの状態でキュリー点よりも低い温度に
冷却されるため、得られるKTP単結晶はシングルドメ
イン化されるものと思われる。
【0039】また、実験3のようにKTP単結晶育成時
に種結晶に交流電流を流す場合において、得られるKT
P単結晶がシングルドメイン化されているのは、KTP
単結晶育成時に陰あるいは陽イオンの動きに差が生じ、
上記の直流電流を流した場合と同様にイオンによる空間
電荷が生じているためと思われる。さらに、実験2のよ
うにKTP単結晶育成時に種結晶に交流電流を流す場合
において、交流電流の電流値をある範囲にすると、従来
のように種結晶に電流を流さないでKTP単結晶の育成
を行った場合よりもKTP単結晶の収量が増加すること
も、種結晶に交流電流を流すことにより融液中の陽ある
いは陰イオンの動きに差が生じるものの、効果的に結晶
が交互に積層されて結晶が育成されるためと思われる。
【0040】以上、本発明を適用した具体的な実施例に
ついて実験結果をもとに説明してきたが、本発明がこの
実施例に限定されるものではなく、原料組成や融剤の種
類、育成条件等は本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜
変更可能であることは言うまでもない。
【0041】
【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、本発
明においては、融剤を含み過飽和状態にある融液に種結
晶を接触せしめて徐冷し、TSSG法により種結晶に結
晶を育成させるKTiOPO単結晶の製造方法におい
て、結晶の育成時、上記融液を介して上記種結晶に電流
を流すため、育成されるKTP単結晶のシングルドメイ
ン化が促進され、良好にシングルドメイン化されたKT
P単結晶を得ることができる。
【0042】また、本発明のKTiOPO4 単結晶の製
造方法においては、種結晶を導電性の保持部材によって
保持してこれを正極とし、融液を導電性の坩堝内に配し
てこれを負極とし、上記融液を介して上記種結晶に直流
電流を流し、該種結晶に流れる直流電流密度Dが2.5
≦D≦25(mA/cm2 )以下であるため、育成され
るKTP単結晶のシングルドメイン化が促進され、良好
にシングルドメイン化されたKTP単結晶を得ることが
でき、収量の良好なKTP単結晶を得ることができる。
【0043】さらに本発明のKTiOPO単結晶の製
造方法においては、融液を介して種結晶に流す電流が交
流電流であり、種結晶に流れる交流電流密度Aが、7.
5≦A≦67.5(mA/cm)であり、種結晶に流
れる交流電源の周波数が、0.01〜200Hzである
ため、育成されるKTP単結晶のシングルドメイン化が
促進され、収量が良好で良好にシングルドメイン化され
たKTP単結晶を得ることができる。また、本発明のK
TiOPO単結晶の製造方法においては、種結晶はC
軸方位の結晶であるため、育成されるKTP単結晶のシ
ングルドメイン化が促進され、良好にシングルドメイン
化されたKTP単結晶を得ることができる。
【0044】したがって、本発明によれば、品質の高い
非線形光学材料を提供することが可能であり、その効果
は非常に大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施する際に用いられる単結晶育成装
置の一構成例を示す模式図である。
【図2】KTP単結晶育成時に種結晶に流れる直流電流
の電流の大きさと得られるKTP単結晶の収量の関係を
示す図である。
【図3】KTP単結晶育成時に種結晶に流れる交流電流
の電流の大きさと得られるKTP単結晶の収量の関係を
示す図である。
【図4】KTP単結晶育成時に種結晶に流れる交流電流
の周波数と得られるKTP単結晶の収量の関係を示す図
である。
【図5】KTP単結晶育成時に種結晶に流れるバイアス
電流とKTP単結晶の収量の関係を示す図である。
【図6】KTP単結晶育成時に種結晶に交流電流を流し
た場合の種結晶と白金坩堝間の電圧波形を示す図であ
る。
【図7】KTP単結晶育成時に種結晶に交流電流を流し
た場合の種結晶と白金坩堝間の電圧のピーク値の変化を
示す図である。
【符号の説明】
1・・・融液 2・・・白金坩堝 3・・・種結晶 6・・・白金角棒 7,9・白金線 8・・・安定化電流電源 10・・・KTP単結晶
フロントページの続き (72)発明者 阿蘇 興一 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソ ニー株式会社内 (56)参考文献 特開 平4−124084(JP,A) 特開 昭51−149597(JP,A) 特開 平3−37194(JP,A) 特開 昭54−145398(JP,A) 特開 平2−97475(JP,A) 特開 平3−275599(JP,A) 特開 平4−292498(JP,A) 特開 平5−97585(JP,A) 特開 平5−186299(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C30B 1/00 - 35/00 G02F 1/35 CA(STN)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 融剤を含み過飽和状態にある融液に種結
    晶を接触せしめて徐冷し、TSSG法により種結晶に結
    晶を育成させるKTiOPO単結晶の製造方法におい
    て、 結晶の育成時、上記融液を介して上記種結晶に電流を流
    すことを特徴とするKTiOPO単結晶の製造方法。
  2. 【請求項2】 上記種結晶を導電性の保持部材によって
    保持してこれを正極とし、上記融液を誘電性の坩堝内に
    配してこれを負極とし、上記融液を介して上記種結晶に
    直流電流を流すことを特徴とする請求項1記載のKTi
    OPO単結晶の製造方法。
  3. 【請求項3】 上記種結晶に流れる直流電流密度Dが
    2.5≦D≦25(mA/cm)であることを特徴と
    する請求項2記載のKTiOPOの単結晶の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 上記融液を介して上記種結晶に流す電流
    が交流電流であり、上記種結晶に流れる交流電流密度A
    が、7.5≦A≦67.5(mA/cm)であること
    を特徴とする請求項1記載のKTiOPO単結晶の製
    造方法。
  5. 【請求項5】 上記種結晶に流れる交流電源の周波数
    が、0.01〜200Hzであることを特徴とする請求
    項4記載のKTiOPO単結晶の製造方法。
  6. 【請求項6】 上記種結晶はC軸方位の結晶であること
    を特徴とする請求項1記載のKTiOPO 単結晶の製
    造方法
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