JP3414855B2 - 精密鋳造用高速度工具鋼 - Google Patents

精密鋳造用高速度工具鋼

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JP3414855B2
JP3414855B2 JP20151194A JP20151194A JP3414855B2 JP 3414855 B2 JP3414855 B2 JP 3414855B2 JP 20151194 A JP20151194 A JP 20151194A JP 20151194 A JP20151194 A JP 20151194A JP 3414855 B2 JP3414855 B2 JP 3414855B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、精密鋳造に使用される
高速度工具鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】高速度工具鋼は、炭素及びCr、Mo、
W等の炭化物形成金属成分を含有し、それらの炭化物を
晶出及び析出させることにより、特に高温での硬度や耐
摩耗性を高めることができる特殊鋼の一種であって、歯
車を製造するための歯切カッター、バイト、チップ、ド
リル、エンドミル等の、金属ないし木材加工用の工具等
に広く使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の高速度工具鋼
は、鋳造状態では凝固時に晶出する炭化物(一次炭化
物)が粗い網目状に形成されているので、高速度工具鋼
に必要な靱性が充分得られない。そのため、鋳造後に熱
間加工等を繰り返して粗い一次炭化物組織を微細均一化
させる必要があり、ほぼ最終に近い製品形状(いわゆる
ニアネットシェイプ)を鋳造のままで達成することは事
実上不可能である。そのため、最終工具形状は、上記熱
間加工の後に切削、熱間鍛造等により別途形成する必要
が生じ、工程数が増えて材料歩留まりが低下する問題が
あった。一方、鋳塊を溶製せず、ガスアトマイズ等で作
製した高速度工具鋼粉末を熱間静水圧プレス(HIP)
して、炭化物が微細均一化した焼結体を用いることも行
われているが、HIP法は鋳造法に比べて割高であり、
また、HIPにより得られたブロック状の焼結体を熱間
加工して用いるため、同様にニアネットシェイプが得ら
れない問題がある。
【0004】本発明の課題は、鋳造後の炭化物微細化の
ための加工処理が不要で、精密鋳造によるニアネットシ
ェイプの形成が可能であり、工具製造の工程数が少なく
材料歩留まりの高い精密鋳造用高速度工具鋼を提供する
ことにある。
【0005】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】本発明の
高速度工具鋼は精密鋳造用に使用されるものであって、
Feを主成分とし、以下の成分を含有することを特徴と
する: N :0.025重量%以上、C :0.7重量%以上
2.2重量%以下、Si:3重量%以下、Mn:1.5
重量%以下、Cr:3.0重量%以上6.0重量%以
下、W :27重量%以下、Mo:13.5重量%以
下、ただし、W+2Moは14重量%以上27重量%以
下、V :6.0重量%以下、及び不可避不純物。
【0006】高速度工具鋼の鋳造組織には、Feを主体
とするマトリクス相と、鋳造時にマトリクス相中に網目
状に形成される一次炭化物等が生じているが、本発明の
高速度工具鋼においては成分中に上記組成範囲のN(窒
素)が含有されており、晶出する一次炭化物の網目間隔
(例えば2次デンドライトアーム間隔)が窒素を含有し
ないものに比べて小さくなる。これにより、網目状の一
次炭化物が鋳造状態で微細かつ均一なものとなるので、
その後の熱間加工等による一次炭化物微細化の処理が不
要となり、精密鋳造により最終に近い製品形状(ニアネ
ットシェイプ)を形成することが可能となるほか、その
微細網目状の一次炭化物自体も材料全体としての硬度の
増加ならびに耐摩耗性の向上に寄与するようになる。な
お、鋳造された材料に焼入れ・焼戻し等の熱処理を施す
ことにより、上記一次炭化物の他に、その熱処理によっ
て析出する二次炭化物等が混在する組織となる。
【0007】窒素の含有量は0.025重量%以下であ
ると、一次炭化物微細化の効果が充分に得られないため
靱性の低下につながる。従って、窒素の含有量は0.0
25重量%以上に設定される。一方、窒素の最大含有量
は材料の化学成分に対応してほぼ決定され、高速度工具
鋼の場合は0.1重量%程度となる。
【0008】本発明の高速度工具鋼においては、マトリ
クス相中に網目状に存在する炭化物は、できるだけ細か
い網目間隔を有することが靱性向上の上で好ましく、例
えばその平均網目間隔を50μm以下とすることができ
る。平均網目間隔は、望ましくは35μm以下とするの
がよい。
【0009】次に、窒素以外の含有成分の役割について
説明する。C(炭素)は、同時に添加されるCr、W、
Mo、Vと炭化物を形成し、鋳造時に一次炭化物を晶出
させるとともに、焼戻しにより微細な二次炭化物をマト
リクス相中に析出させてこれを析出強化するほか、マト
リクス相に固溶して、これを固溶強化する働きもする。
これら効果は、いずれも本発明の高速度工具鋼の硬度
(強度)の向上に寄与する。
【0010】ここで、本発明の高速度工具鋼は、工具材
料として充分な耐摩耗性と強度を確保するために、その
硬度がロックウェルCスケール硬度で64以上、望まし
くは65以上とされるのがよいが、上記炭素の含有量が
0.70重量%未満であると、炭化物の晶出及び析出に
よる材料の強化、さらには固溶強化の効果が充分得られ
ず、硬度が上述の範囲を下回るものとなる。また、炭素
の含有量が2.2重量%を超えると、粗大な炭化物の形
成量が多くなり靱性が低下する。従って、炭素の含有量
は上述の範囲内のものとされる。炭素の含有量は、望ま
しくは0.80〜2.0重量%の範囲内で設定するのが
よい。
【0011】Si(硅素)は、溶湯中の溶存酸素成分と
結合してこれを除去する脱酸剤としての機能を果たすほ
か、マトリクス中に固溶してこれを強化する働きも兼ね
る。Siは3重量%を超えると靱性が低下するため、そ
れ以下の範囲内で含有量が設定され、望ましくは0.5
0重量%以下、さらに望ましくは0.10重量%以下と
される。
【0012】Mn(マンガン)も、Siと同じく脱酸剤
としての機能を果たす。その含有量が1.5重量%を超
えると靱性が低下するため、それ以下の範囲内で含有量
が設定され、望ましくは0.50重量%以下とされる。
【0013】Cr(クロム)は炭化物形成成分の一つで
あり、焼戻し時にマトリクス相中にM236型の微細な
炭化物を析出させ、材料の硬度を上昇させる。また、C
rは鋼の恒温変態曲線の鼻を長時間側に移動させるので
焼入れ性を高める効果もある。Crの含有量が3.0重
量%未満であると炭化物による析出強化の効果が充分得
られず、6.0重量%を超えると粗大な炭化物の形成量
が多くなり靱性が低下する。従って、Crの含有量は上
述の範囲内のものとされる。
【0014】W(タングステン)とMo(モリブデン)
は炭化物形成に対して同様の作用を有しており、鋳造時
に微細網目状に形成されるM2C、M6C型の一次炭化物
の主要成分となるとともに、焼戻し時にはM2C型の微
細な炭化物としてマトリクス相中に析出し、材料の硬度
の増加及び耐摩耗性の向上に寄与する。W及びMoの含
有量の上限は、前者が27重量%、後者が13.5重量
%とされるが、両成分が共添加される場合は、(W含有
量+Mo含有量×2)の値の上限が27重量%とされ
る。MoはWのほぼ半分の原子量を有し、同じ含有量で
Wのほぼ2倍の原子数を与えるため、半分の添加量でW
と同等の効果を与える。そのため、上記共添加時の含有
量の上限を設定するに当たっては、Moの含有量を2倍
することにより、同等の効果を与えるWの相当量に換算
している。
【0015】これら両成分が上記上限値を超えて含有さ
れると、粗大な炭化物の形成量が多くなり材料の靱性が
低下する。また、(W含有量+Mo含有量×2)が14
重量%未満となると、炭化物の晶出量ないし析出量が減
少して、材料の硬度並びに耐摩耗性が不足する。なお、
WとMoはいずれか一方のみを単独で添加することもで
きる。
【0016】V(バナジウム)は高硬度のMC型の炭化
物を形成し、材料の硬度を上昇させる。Vの含有量が
6.0重量%を超えると材料の靱性が低下するので、V
の含有量は上述の範囲内のものとされる。
【0017】本発明の高速度工具鋼には、13重量%以
下のCoを含有させることができる。Coは材料の耐熱
性を向上させるので、重研削用あるいは高速切削用のド
リルなど、摩擦等により温度が上がりやすい環境で使用
される工具等に好適な高速度鋼を得ることができる。ま
た、Coはマトリクス相に固溶してこれを固溶強化する
ほか、マトリクス相の炭素固溶限度を増大させ、炭素に
よる固溶強化を促進する効果も有し、特に大きな硬度を
有する高速度工具鋼が必要な場合においても、その添加
が有効となる。なお、Coを13重量%を超えて含有さ
せると、上述の効果は飽和し、Co成分の無駄が多くな
る。また、上述の効果を顕著に得るためにはCoを3重
量%以上含有させることが望ましい。
【0018】また、本発明の高速度工具鋼に、Al、N
b及びTiのいずれか又は2種以上を、その合計が3重
量%以下の範囲内で含有させることができる。上記成分
を含有させることにより、マトリクス相中にこれら成分
の微細な窒化物ないし炭化物が分散析出し、結晶粒界移
動に対する固着効果が生ずる。これにより、焼入れ加熱
時に結晶粒が成長して粗大化すること、ひいては材料の
靱性が低下することが抑制される。なお、上記成分を過
度に含有させると上述の効果は飽和し、成分の無駄が多
くなるので上記範囲内で含有量が設定される。一方、添
加による効果を充分に得るためには、合計含有量が少な
くとも0.04重量%程度以上であることが望ましい。
ここで、合計含有量は、望ましくは0.04〜1.0重
量%、の範囲内で設定するのがよい。
【0019】本発明の高速度工具鋼には、0.15重量
%以下のS及び0.40重量%以下のPbのいずれか又
は双方を含有させることができる。これら両元素は、材
料の切削性を向上させるので、精密鋳造された鋳造体
に、切削等により若干の加工を施す必要がある場合に
は、その添加が有効となる。なお、これらの元素を過度
に含有させると材料の靱性が低下するので、上記範囲内
で含有量が設定される。一方、添加による効果を充分に
得るためには、Sについては0.03〜0.10重量
%、Pbについては0.05〜0.30重量%の範囲内
で、それぞれ含有量を設定することが望ましい。
【0020】本発明の高速度工具鋼には、希土類成分を
0.60重量%以下の範囲内で含有させることができ
る。希土類成分を含有させることにより、鋳造凝固時の
炭化物の晶出温度域(固液共存域)が狭くなり、晶出す
る網目状炭化物がさらに微細化されて材料の靱性ないし
抗折力が高められる。使用される希土類成分の種類は特
に限定されないが、ミッシュメタル等の非分離希土類金
属が比較的安価であるので好ましく使用される。
【0021】なお、上記希土類成分を過度に含有させる
と、上述の効果は飽和して成分の無駄が多くなる上、希
土類金属は高価でありコスト高を招くこととなる。従っ
て、上記範囲内で希土類成分の含有量が設定される。一
方、添加による効果を充分に得るためには、希土類成分
の合計含有量を少なくとも0.05重量%程度以上とす
ることが望ましい。ここで、合計含有量は、望ましくは
0.05〜0.10重量%の範囲内で設定するのがよ
い。
【0022】Feは本発明の高速度工具鋼の主成分であ
り、マトリクス相の主要成分をなすものである。
【0023】上記の成分以外に、配合原料等から混入す
るP、Cu、Ni、O等の不可避不純物が、例えば合計
で0.7重量%以下の範囲内で含まれていてもよい。
【0024】以下、本発明の高速度工具鋼により、工具
等の各種部材を製造する方法について説明する。まず、
上述の合金組成が得られるように所定量の出発原料を配
合し、これを高周波誘導溶解等の公知の溶解法により溶
解する。ここで、上記窒素成分は窒化クロム、窒化マン
ガン等の窒素を含有する固体物質の形で配合される。次
に、その溶湯を減圧吸上げ鋳造法、上注ぎ減圧鋳造法、
上注ぎ鋳造法等の精密鋳造法により、刃先部等を除いて
後加工の必要性があまりない、ニアネットシェイプを有
する鋳造体を製造する。
【0025】図1に、減圧吸引鋳造を行う場合の装置の
例を示す。鋳造装置1は全体が大気中又は不活性ガス雰
囲気中に配置されており、下部にアルミナ等で構成され
る坩堝2が配置され、その外側に誘導加熱コイル9が配
置されている。坩堝2の上側には鋳型チャンバ3が設け
られ、その内部にはセラミックシェル鋳型等の通気性鋳
型4が配置されている。通気性鋳型4の内部には、所定
の形状の高速度工具鋼部材を鋳造するための鋳造空間5
が形成され、吸引通路部6を介して坩堝2の内側と連通
している。また、鋳型チャンバ3の内側空間は吸引口7
より図示しないポンプにより減圧吸引されるようになっ
ている。なお、8は鋳型チャンバ3と鋳型4との間の気
密性を保持するためのシール部材である。
【0026】図示しない電源より高周波電流を誘導加熱
コイル9に供給すると、坩堝2内の原料が誘導加熱され
溶解する。この状態で、鋳型チャンバ3の内側空間を吸
引口7より減圧吸引すると、通気性鋳型4の壁部を介し
て鋳造空間5内も減圧されるので、坩堝2内の溶湯Mが
吸引通路部6を通って鋳造空間5内へ吸い上げられ、部
材の鋳造が行われる。鋳造空間5内に吸い上げられた溶
湯Mは、減圧による吸引力によって空間5の隅々に偏り
なく供給されるので、寸法精度の高いニアネットシェイ
プの鋳造体を得ることができる。
【0027】上記のようにして得られる鋳造体中には、
前述の微細網目状の炭化物(一次炭化物)が形成されて
いる。なお、切削等により鋳造体に若干の加工を施す必
要がある場合には、鋳造体を軟化させて切削性を高める
ための焼鈍処理が、例えば800〜900℃で0.5〜
2時間程度行われ、焼鈍後は鋳造体は徐冷される。
【0028】次に、得られた鋳造体には、焼入れが施さ
れる。焼入れのための加熱は真空炉又は塩浴等を用いて
行われ、鋳造体を所定温度、例えば1150〜1250
℃程度に所定時間、例えば3〜30分程度保持すること
により、凝固後の冷却時に析出した粗大な炭化物等をマ
トリクス相に再固溶させ、その後上記粗大な炭化物が再
析出しないよう、その析出温度域(例えば900〜10
00℃)を急冷して焼入れを行う。冷却は通常、真空炉
を使用する場合は、不活性ガスによる加圧ガス冷却又は
油冷が、塩浴を使用する場合は油冷又は塩浴焼入れが用
いられる。焼入れ後の鋳造体には、炭素を過飽和に含ん
だマトリクス相(例えばマルテンサイト相及び残留オー
ステナイト相)と、前記一次炭化物相等が形成されてい
る。
【0029】焼入れ後の鋳造体は、大気炉や真空炉ある
いは塩浴等を用いて所定温度、例えば500〜600℃
の温度範囲で焼戻しされる。この焼戻し処理により、C
r、W、Mo、V等の微細な二次炭化物が析出するこ
と、及び残留オーステナイト相の分解により材料の硬度
が大きく増大する。焼戻し処理は、残留オーステナイト
相の分解率を高めるために2回以上、成分偏析が起こり
やすい太物材等には3回以上繰り返して行うことが望ま
しい。焼戻しにより硬化した鋳造体は、刃先研ぎ出し等
の仕上げ加工が施されて最終製品とされる。
【0030】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。表
1及び表2の試料番号1〜21(18〜21は比較例)
の各組成を有する合金を高周波誘導溶解炉を用いて溶解
し、減圧吸上げ鋳造法により歯車製造用の歯切カッタ
(外径30mm、内径28mm、高さ28mm)を鋳造
し、試験品を得た。次に、鋳造体を、真空炉を用いて8
70℃で1時間の焼鈍を行った。なお、焼鈍後の冷却は
600℃まで15℃/hrの速度で徐冷し、以後大気中
にて空冷した。そして、焼鈍後の鋳造体に、表3に示す
A〜Eの5種類の条件により、塩浴を用いた焼入れ及び
焼戻しを施した。なお、焼入れは油焼入れとし、焼戻し
はそれぞれ同一条件で3回繰り返した。また、焼戻し後
の冷却は大気中空冷とした。
【0031】焼戻しにより硬化した試験品(歯切カッ
タ)は、ロックウェル硬度(Cスケール)を測定後それ
ぞれ歯切盤にセットされ、Cr合金鋼(SCr420焼
ならし材)製のはすば歯車(直径22mm、高さ15m
m)の歯切加工を繰り返し行い、切削不能となるまでの
加工回数によりその寿命を評価した。なお、比較用とし
て、硬度の異なる市販の粉末高速度工具鋼鋼材(HRC
67及び69)で作製した2種の歯切カッタ(試料番号
22、23、表2)の寿命評価も同時に行った。結果を
表1及び表2に示す。なお、各番号の試験品は、上記比
較品に対応させて2種の硬度レベルに選別し、各硬度レ
ベル毎に比較品の工具寿命を100として、相対値によ
り寿命を表示している。
【0032】次に、寿命評価終了後の試験品から幅5m
m、厚さ3mm、長さ30mmの試験片を切り出し、下
部スパン20mmにて3点曲げによる抗折試験を行っ
た。また、同じ試験片の表面を研磨及びエッチングし
て、形成された網目状炭化物組織の光学顕微鏡観察なら
びに顕微鏡組織写真の撮影を行った。そして、その組織
写真に上にインク等により適宜直線を引き、その直線に
よって切り取られた炭化物像の網目間隔の平均値から、
炭化物の網目間隔の実寸平均値を見積った。具体的に
は、例えば写真1視野に対し60mm及び45mmの2
本の直線を引き、それぞれの直線が21個及び12個の
炭化物像の網目を横切ったとすると、それら網目の写真
上での平均間隔は(60÷21+45÷12)÷2=
3.31mmとなる。そして、写真の倍率が例えば10
0倍の場合、実寸の網目間隔は3.31mm÷100=
33.1μmとなる。このようにして見積った炭化物の
網目間隔を表1及び表2に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】表1及び表2に示した結果から明らかなよ
うに、窒素含有量が0.025重量%以下の試料(比較
例、試料番号18〜21)は、いずれも炭化物の網目間
隔が50μm以上であり、カッタ寿命は粉末高速度工具
鋼鋼材品(試料番号22、23)のそれを100とした
ときに、60〜90程度と低く、抗折力も200kgf
/mm2程度以下に留まっている。これに対し、窒素の
含有量が0.025重量%を超える本発明の高速度工具
鋼(試料番号1〜17)は、炭化物網目間隔がいずれも
比較例の試料よりも小さく、いずれの硬度レベルにおい
ても熱処理条件に関係なくカッター寿命及び抗折力が粉
末高速度工具鋼鋼材品よりも高くなっており、耐久性及
び靱性に優れたものであることがわかる。これらのうち
でも、特に窒素含有量が0.04重量%を超える試料
(試料番号2、4、6、8〜17)は、炭化物網目間隔
が30μm前後まで減少しており、抗折力とカッター寿
命はいずれも大きくなっている。
【0037】図2、図3及び図4は、それぞれ試料番号
2、1及び18の光学顕微鏡組織の写真(倍率100
倍)である。写真中、白く表れている部分が網目状の炭
化物、やや暗く表れている部分がマトリクス相である。
窒素含有量の少ない試料18(図4)の炭化物の網目間
隔は大きいが、窒素含有量の少ない試料2及び1(図2
及び図3)の網目間隔は小さくなっていることがわか
る。なお、焼戻し時に析出する二次炭化物は非常に微細
なため、倍率の低いこれらの写真には表れていない。
【0038】図5は、上記実施例及び比較例の高速度工
具鋼試料の抗折力を、各窒素含有量レベル毎に、試料の
硬度に対してプロットしたものである。図中、実線で囲
んだプロット点は窒素の含有量が0.04重量%以上の
試料、一点鎖線で囲んだプロット点は窒素の含有量が
0.25〜0.04重量%の試料、破線で囲んだプロッ
ト点は窒素の含有量が0.025重量%未満の試料にそ
れぞれ対応している。本図から明らかなように、窒素を
0.025重量%以上含有する試料は、いずれの硬度に
おいても窒素含有量が0.025重量%未満の試料より
も抗折力が大きく、窒素含有量が0.04重量%以上の
場合には特に優れた抗折力を示すことがわかる。また、
これら窒素含有量の高い試料は鋳造品でありながら、粉
末高速度工具鋼鋼材品(図中●でプロット)と同等ない
しそれ以上の抗折力を有していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高速度工具鋼を精密鋳造するための、
鋳造装置の一例を示す模式図。
【図2】実施例の高速度工具鋼試料の光学顕微鏡組織写
真。
【図3】実施例の別の高速度工具鋼試料の光学顕微鏡組
織写真。
【図4】比較例の高速度工具鋼試料の光学顕微鏡組織写
真。
【図5】実施例及び比較例の高速度工具鋼試料の硬度と
抵抗力の関係を示す図。
【符号の説明】
1 鋳造装置 3 鋳型チャンバ 4 通気性鋳型
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C22C 38/60 C22C 38/60

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Feを主成分とし、下記の成分を含有す
    と共に、マトリクス中に炭化物が網目状に存在する組
    織を有し、その網目状炭化物の平均網目間隔が50μm
    以下としたことを特徴とする精密鋳造用高速度工具鋼: N :0.025重量%以上、 C :0.7重量%以上2.2重量%以下、 Si:3重量%以下、 Mn:1.5重量%以下、 Cr:3.0重量%以上6.0重量%以下、 W :27重量%以下、 Mo:13.5重量%以下、 ただし、W+2Moは14重量%以上27重量%以下、 V :6.0重量%以下、及び 不可避不純物。
  2. 【請求項2】 13重量%以下のCoを含有する請求項
    1記載の精密鋳造用高速度工具鋼。
  3. 【請求項3】 Al、Nb及びTiのいずれか又は2種
    以上を、その合計が3重量%以下の範囲内で含有する請
    求項1又は2記載の精密鋳造用高速度工具鋼。
  4. 【請求項4】 0.15重量%以下のS及び0.40重
    量%以下のPbのいずれか又は双方を含有する請求項1
    ないし3のいずれかに記載の精密鋳造用高速度工具鋼。
  5. 【請求項5】 希土類成分を0.60重量%以下の範囲
    内で含有する請求項1ないし4のいずれかに記載の精密
    鋳造用高速度工具鋼。
  6. 【請求項6】 ロックウェルCスケール硬度が64以上
    である請求項1ないし5のいずれかに記載の精密鋳造用
    高速度工具鋼。
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