JP3389000B2 - ダイカスト用過共晶Al−Si合金ならびに過共晶Al−Si合金ダイカスト鋳物およびその使用方法 - Google Patents

ダイカスト用過共晶Al−Si合金ならびに過共晶Al−Si合金ダイカスト鋳物およびその使用方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ダイカスト用過共
晶Al−Si合金ならびに過共晶Al−Si合金ダイカ
スト鋳物およびその使用方法に関し、さらに詳しくは、
過共晶Al−Si合金をダイカストするに際してCr,
Mnの1種または2種を添加することによってダイカス
ト時に鋳肌表面近傍に生じる初晶Siの晶出していない
領域が抑制されるようにしたものであって、このため
に、加工代が少なく材料歩留まりが向上すると共に、摺
動部が非加工のままであっても安定的に耐摩耗性を確保
することができるダイカスト用過共晶Al−Si合金な
らびにそのような合金を用いた過共晶Al−Si合金ダ
イカスト鋳物およびその使用方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】鋳物に対する軽量化の要請が高まる中
で、従来鉄であった部品のアルミニウムへの置換が検討
されている。この際問題となる一つの特性としてアルミ
ニウム合金の耐摩耗性が挙げられる。このような耐摩耗
性が必要とされる部位へ適用されるアルミニウム合金と
しては、過共晶Al−Si系の合金が広く知られている
(例えば、JIS H 5202 AC9A,AC9
B、JIS H 5302ADC14など)。
【0003】また、近年、アルミニウム合金鋳物に対し
ても、さらなる低コスト化あるいは高い生産性が要求さ
れるようになってきており、これら過共晶Al−Si合
金製の部品においても生産性に優れたダイカスト法によ
って製造される場合が多くなってきている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、過共晶
Al−Si合金をダイカストした場合においては、図9
に示すように、鋳肌面近傍に初晶Siが晶出していない
領域が生成されることが広く認められている。
【0005】この領域は、過共晶Al−Si合金が高い
耐摩耗性を発揮する理由でもある初晶Siが晶出してい
ないため耐摩耗性が劣るので、従来はこの領域を加工に
より取り除いて初晶Siが晶出している領域を鋳肌面と
することにより耐摩耗部材として使用していた。
【0006】さらには、この初晶Siが晶出していない
領域が鋳肌面から1mm近くに達する場合があり、加工
代が多く材料の歩留まりが悪くなったり、加工代が不足
して安定的に耐摩耗性が確保されなかったりするなどと
いった問題点があった。
【0007】さらにまた、過共晶Al−Si合金をダイ
カストした場合、この初晶Siが晶出していない領域が
生成されることは広く知られていたものの、対策手法と
しては鋳造条件や鋳造方案の変更が主であっただけで、
鋳造欠陥抑制との兼ね合いもあり、決定的な対策手段と
は成り得ていなかった。
【0008】
【発明の目的】本発明は、このような従来の問題点を解
決するためになされたものであって、過共晶Al−Si
合金をダイカストするに際して、過共晶Al−Si合金
中にCr,Mnのうちの1種または2種を添加すること
により、過共晶Al−Si合金をダイカストした際に初
晶Siが晶出しない領域が生成されるのを抑制し、加工
代の削減による材料歩留まりの向上、摺動部が非加工の
ままであっても安定的な耐摩耗性の確保が可能である過
共晶Al−Si合金ダイカスト鋳物を提供することを目
的としたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記課題を解
決するために、下記の様な構成としたものである。
【0010】(1) 重量%で、Si:18.0〜2
0.0%、Cu:0.5〜1.5%、Mg:0.5〜
1.5%、Fe:1.5%以下、P:0.001〜0.
02%、およびCr:0.1〜0.5%,Mn:0.2
〜1.0%のうちの1種または2種を含み、残部Alお
よび不純物からなることを特徴とするダイカスト用過共
晶Al−Si合金。
【0011】(2) 重量%で、Si:22.0〜2
4.0%、Cu:0.5〜1.5%、Mg:0.5〜
1.5%、Fe:1.5%以下、P:0.001〜0.
02%、およびCr:0.1〜0.5%,Mn:0.2
〜1.0%のうちの1種または2種を含み、残部Alお
よび不純物からなることを特徴とするダイカスト用過共
晶Al−Si合金。
【0012】(3) 請求項1または2に記載の過共晶
Al−Si合金からなることを特徴とする過共晶Al−
Si合金ダイカスト鋳物。
【0013】(4) 耐摩耗摺動部材として使用するに
際して、摺動部を非加工のままで使用することを特徴と
する請求項3に記載の過共晶Al−Si合金ダイカスト
鋳物の使用方法。
【0014】
【発明の作用】本発明によるダイカスト用過共晶Al−
Si合金ならびにこれを素材とした過共晶Al−Si合
金ダイカスト鋳物においては、Si:18.0〜20.
0%、あるいは22.0〜24.0%、Cu:0.5〜
1.5%、Mg:0.5〜1.5%、Fe:1.5%以
下、P:0.001〜0.02%を含む過共晶Al−S
i系合金に、Cr:0.1〜0.5%,Mn:0.2〜
1.0%のうちの1種または2種を含有させることによ
って、過共晶Al−Si合金をダイカストした際に鋳肌
面近傍に生じる初晶Siの晶出していない領域が狭く抑
えられているために、ダイカスト鋳物素材の表面の加工
代が少なくて済み、材料歩留まりが向上すると共に、ダ
イカスト鋳物素材の表面が非加工のままであっても安定
的に耐摩耗性が確保されることとなる。
【0015】ここで、CrおよびMnのうちの1種また
は2種を添加することにより初晶Siが晶出していない
領域が狭くなる理由としては、初晶Siの晶出に先だっ
て晶出するCr系の晶出物,Mn系の晶出物あるいは
(Cr,Mn)系の晶出物が初晶Si晶出の異質核とな
って初晶Siの晶出を促進すること、およびCr,Mn
の添加により初晶Siの晶出していない領域の生成に影
響を与える溶湯の過冷の状況が変化することが考えられ
る。
【0016】したがって、異質核となるような晶出物を
晶出させないCu,Mg等の元素は、初晶Siの晶出し
ていない領域の抑制には有効でないものと考えられる。
【0017】以下に、本発明によるダイカスト用過共晶
Al−Si合金ならびに過共晶Al−Si合金ダイカス
ト鋳物を構成する各元素の作用と組成範囲(重量%)の
限定理由を示す。
【0018】Si: Siは耐摩耗性の向上に寄与する元素である。耐摩耗性
の向上に寄与する初晶SiはSi量が12.0%未満で
は晶出しないため12.0%を下限とした。しかしなが
ら、25.0%を超えて含有すると、合金の液相線温度
が上昇して溶解,鋳造性が悪化すると共に機械加工性も
著しく悪化するので25.0%以下とした。但し、JI
S H5202(アルミニウム合金鋳物)に規定される
AC9Bに該当させるためには18.0〜20.0%の
範囲に、同じくAC9Aに該当させるためには22.0
〜24.0%の範囲とすることが必要である。
【0019】Cu: Cuは固溶強化および時効硬化による常温および高温強
度の向上に寄与する元素である。しかしながら、0.5
%未満ではその効果は小さく、5.0%を超えて含有す
ると靭性が低下すると共に引け巣の発生が多くなるの
で、0.5〜5.0%の範囲とした。但し、JIS H
5202に規定されるAC9BおよびAC9Aに該当さ
せるためには、0.50〜1.5%の範囲とすることが
必要である。
【0020】Mg: MgはSiとの共存で時効硬化により強度の向上に寄与
する元素である。しかしながら、0.1%未満ではその
効果は小さく、2.0%を超えて含有すると靭性が低下
するので、0.1〜2.0%の範囲とした。但し、JI
S H5202に規定されるAC9BおよびAC9Aに
該当させるためには、0.50〜1.5%の範囲とする
ことが必要である。
【0021】Fe: Feはダイカストを行った際に溶湯の金型への焼き付き
を防止するのに有効な元素である。しかしながら、1.
5%を超えて含有するとFe系の金属間化合物の晶出に
より、鋳物の機械的性質が低下するので1.5%以下と
した。
【0022】P: Pは初晶Siを微細化し均一に分散させる効果を有する
元素である。しかしながら、0.001%未満ではその
効果は小さく、0.02%を超えて含有すると湯流れ等
の鋳造性が悪化するので、0.001〜0.02%の範
囲とした。
【0023】Mn: Mnは過共晶Al−Si合金をダイカストした際に鋳肌
表面近傍に生じる初晶Siの晶出していない領域を減じ
るのに寄与する元素である。しかしながら、0.2%未
満ではその効果は小さく、1.0%を超えて含有すると
鋳造性の悪化および機械的性質の劣化を招くので、0.
2〜1.0%の範囲とした。
【0024】Cr: Crもまた過共晶Al−Si合金をダイカストした際に
鋳肌面近傍に生じる初晶Siの晶出していない領域を減
じるのに寄与する元素である。しかしながら、0.1%
未満ではその効果は小さく、0.5%を超えて含有する
と鋳造性の悪化およびAl−Cr系晶出物の粗大化によ
る機械的特性の低下を招くので、0.1〜0.5%の範
囲とした。
【0025】本発明に係わるダイカスト用過共晶Al−
Si合金ならびに過共晶Al−Si合金ダイカスト鋳物
は、請求項1ならびに3に記載しているように、JIS
AC9B鋳物に対応するものとして、重量%で、S
i:18.0〜20.0%、Cu:0.5〜1.5%、
Mg:0.5〜1.5%、Fe:1.5%以下、P:
0.001〜0.02%、およびCr:0.1〜0.5
%,Mn:0.2〜1.0%のうちの1種または2種を
含み、残部Alおよび不純物からなるダイカスト用過共
晶Al−Si合金、ならびにこのダイカスト用過共晶A
l−Si合金の溶湯をダイカストすることにより鋳肌面
近傍の初晶Siが晶出していない領域の生成を抑制した
過共晶Al−Si合金ダイカスト鋳物とすることができ
る。
【0026】また、請求項2ならびに3に記載している
ように、JIS AC9A鋳物に対応するものとし
て、、重量%で、Si:22.0〜24.0%、Cu:
0.5〜1.5%、Mg:0.5〜1.5%、Fe:
1.5%以下、P:0.001〜0.02%、およびC
r:0.1〜0.5%,Mn:0.2〜1.0%のうち
の1種または2種を含み、残部Alおよび不純物からな
るダイカスト用過共晶Al−Si合金、ならびにこのダ
イカスト用過共晶Al−Si合金の溶湯をダイカストす
ることにより鋳肌面近傍の初晶Siが晶出していない領
域の生成を抑制した過共晶Al−Si合金ダイカスト鋳
物とすることができる。
【0027】さらに、本発明に係わる過共晶Al−Si
合金ダイカスト鋳物の使用方法では、請求項4に記載し
ているように、耐摩耗摺動部材として使用するに際し
て、摺動部を非加工のままで使用するようになすことも
可能である。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によるダイ
カスト用過共晶Al−Si合金は、請求項1に記載して
いるように、重量%で、Si:18.0〜20.0%、
Cu:0.5〜1.5%、Mg:0.5〜1.5%、F
e:1.5%以下、P:0.001〜0.02%、およ
びCr:0.1〜0.5%,Mn:0.2〜1.0%の
うちの1種または2種を含み、残部Alおよび不純物か
らなるものであるから、また、請求項2に記載している
ように、重量%で、Si:22.0〜24.0%、C
u:0.5〜1.5%、Mg:0.5〜1.5%、F
e:1.5%以下、P:0.001〜0.02%、およ
びCr:0.1〜0.5%,Mn:0.2〜1.0%の
うちの1種または2種を含み、残部Alおよび不純物か
らなるものであるから、Cr,Mnを含んでいない従来
の過共晶Al−Si合金を用いたダイカスト鋳物に比べ
て初晶Siの晶出していない領域が狭く制御されてお
り、ダイカスト素材の加工代が低減されて材料歩留まり
が向上すると共に、非加工のままであっても耐摩耗摺動
部材として使用することが可能であり、良好なる耐摩耗
性を安定して得ることが可能であるなどの著しく優れた
効果がもたらされる。
【0029】そして、本発明による過共晶Al−Si合
金ダイカスト鋳物は、請求項3に記載しているように、
請求項1または2記載の過共晶Al−Si合金からなる
ものであるから、それぞれに対応した鋳造性,機械的性
質,耐食性を有していると共に、初晶Siの晶出してい
ない領域が狭く制御されているので、ダイカスト鋳物の
表面の加工代を少なくしあるいは非加工のままであって
も良好なる耐摩耗性を安定して得ることができるという
著しく優れた効果がもたらされる。
【0030】そして、請求項4に記載しているように、
耐摩耗摺動部材として使用するに際して、摺動部を非加
工のままで使用するようになすことによって、ダイカス
ト鋳物の使用に際して表面加工を行わなくて済むという
著しく優れた効果がもたらされる。
【0031】以下、本発明の実施例を参考例および比較
例と共に具体的に説明する。
【0032】この実施例、参考例および比較例において
は、以下に示す方法により、鋳肌面近傍の初晶Siの晶
出していない領域の厚さを測定すると共に耐摩耗性の評
価を行った。
【0033】(溶解,鋳造方法) 表1に示す化学成分組成を有する各種材料を金属抵抗坩
堝炉で溶製した後、表2に示す各条件で350トンダイ
カストマシンを用いてダイカストすることによって、1
80×150×6mmの板状試験片よりなる過共晶Al
−Si合金ダイカスト鋳物を得た。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】(初晶Siの晶出していない領域の測定方
法) 上記(溶解,鋳造方法)によって得たダイカスト鋳物を
切断した後、エメリー紙研磨,バフ研磨を行うことによ
り鋳物断面のミクロ組織写真の撮影を行った。この時の
写真の倍率は50倍で撮影した。
【0037】このようにして得たミクロ組織写真のそれ
ぞれに対して、図10に示すようにn=6個所(L1〜
L6)について鋳肌から初晶Siが晶出し始める領域ま
での深さ測定を行い、この値を初晶Siが晶出していな
い領域の厚さとした。
【0038】(耐摩耗性評価方法) 上記(溶解,鋳造方法)によって得たダイカスト鋳物の
うち、表3に示したものについて、リング−プレート型
の摩擦摩耗試験機を用いて摩擦摩耗試験を行った。
【0039】このとき、リングには、図1に示す形状の
軸受鋼からなるリング1を用いた。すなわち、このリン
グ1は外径D0=25.6(+0.1,−0.1)m
m、内径DI=20.0(+0.05,−0)mm、長
さL=17(+0.1,−0.1)mmの寸法を有する
と共に、幅WL=6.0(+0.1,−0)mmで深さ
CL=3.0(+0.1,−0.1)mmのやや大きい
切欠1aと、幅WS=4.0(+0.1,−0.1)m
mで深さCS=2.5(+0.1,−0.1)mmのや
や小さい切欠1bを形成したものである。
【0040】また、プレートには、表3に示すダイカス
ト鋳物から切りだした図2に示す形状からなるプレート
2を用いた。すなわち、このプレート2は一辺の長さL
A=35(+0,−0.1)mm、他辺の長さLB=3
5(+0,−0.1)mmの矩形をなすと共に厚さT=
3.0(+0.1,−0.1)mmを有し、中央部にD
=4mmの丸穴2aを形成したものである。
【0041】そして、摩擦摩耗試験条件は、面圧:18
MPa、すべり速度:0.1m/s、すべり距離:36
0mとし、油温は常温とした。
【0042】上記の摩擦摩耗試験終了後、試験片の摩擦
面3方向に対して粗さ測定を行い、段付き摩耗量を測定
した。
【0043】
【表3】
【0044】初晶Siの晶出していない領域の厚さ測定
結果 (比較例1,2、参考例1,2,3) 表1に示した比較例1,2および参考例1,2,3に示
す組成の過共晶Al−Si合金の溶湯を表2に示した条
件で鋳造し、初晶Siが晶出していない領域の厚さを測
定した。その結果を図3に示す。
【0045】図3に示すように、Mn,Crの一方ある
いは両方を含有した参考例1〜3の過共晶Al−Si合
金ダイカスト鋳物においては、Mn,Crを含有してい
ない比較例1,2のものと比較して、初晶Siの晶出し
ていない領域の厚さが狭くなっていることがわかる。
【0046】(比較例3,4、実施例1,2,3) 表1に示した比較例3,4および実施例1,2,3に示
す組成の過共晶Al−Si合金の溶湯を表2に示した条
件で鋳造し、初晶Siが晶出していない領域の厚さを測
定した。その結果を図4に示す。
【0047】図4に示すように、Mn,Crの一方ある
いは両方を含有した実施例1,2,3の過共晶Al−S
i合金ダイカスト鋳物においては、Mn,Crを含有し
ていない比較例3,4のものと比較して、初晶Siの晶
出していない領域の厚さが狭くなっていることがわか
る。
【0048】(比較例5,6、実施例4,5,6) 表1に示した比較例5,6および実施例4,5,6に示
す組成の過共晶Al−Si合金の溶湯を表2に示した条
件で鋳造し、初晶Siが晶出していない領域の厚さを測
定した。その結果を図5に示す。
【0049】図5に示すように、Mn,Crの一方ある
いは両方を含有した実施例4,5,6の過共晶Al−S
i合金ダイカスト鋳物においては、Mn,Crを含有し
ていない比較例5,6のものと比較して、初晶Siの晶
出していない領域の厚さが狭くなっていることがわか
る。
【0050】(参考例1〜3、実施例1〜6) 以上、図3〜5に示したように、初晶Siの晶出してい
ない領域の厚さは、Si含有量の多い合金ほど厚くなる
傾向が認められた。これは、同一の冷却速度であれば、
Si量の多いものの方が凝固時の過冷の程度が大きくな
ることによるものであると考えられる。
【0051】耐摩耗性評価結果 (比較例1,参考例3) 表1に示した比較例1および参考例3の組成よりなるダ
イカスト鋳物について、鋳肌面を摺動面として摩擦摩耗
試験を行った。この結果を図6に示す。なお、比較例1
においてはすべり距離60mで試験を中断した時点での
結果を示す。
【0052】図6に示すように、参考例3と比較例1と
では鋳肌面の硬さは同等であるにもかかわらず、段付き
摩耗量は参考例3の方が格段に少ないことが認められ
た。これは、参考例3の鋳物では初晶Siが鋳肌面の極
く近傍から晶出しているのに対して、比較例1の鋳物で
は鋳肌面の近傍には初晶Siが晶出していないことによ
るものであると考えられる。
【0053】したがって、参考例3の鋳物においては、
Mn,Crの添加により、鋳肌面の極く近傍から初晶S
iが晶出しているために、摺動面を非加工のままで耐摩
耗摺動部材として使用することが可能である。
【0054】(比較例3,実施例3) 表1に示した比較例3および実施例3の組成よりなるダ
イカスト鋳物について、鋳肌面を摺動面として摩擦摩耗
試験を行った。この結果を図7に示す。なお、比較例3
においてはすべり距離60mで試験を中断した時点での
結果を示す。
【0055】図7に示すように、実施例3と比較例3と
では鋳肌面の硬さは同等であるにもかかわらず、段付き
摩耗量は実施例3の方が格段に少ないことが認められ
た。これは、実施例3の鋳物では初晶Siが鋳肌面の極
く近傍から晶出しているのに対して、比較例3の鋳物で
は鋳肌面の近傍には初晶Siが晶出していないことによ
るものであると考えられる。
【0056】したがって、実施例3の鋳物においては、
Mn,Crの添加により、鋳肌面の極く近傍から初晶S
iが晶出しているために、摺動面を非加工のままで耐摩
耗摺動部材として使用することが可能である。
【0057】(比較例5,実施例6) 表1に示した比較例5および実施例6の組成よりなるダ
イカスト鋳物について、鋳肌面を摺動面として摩擦摩耗
試験を行った。この結果を図8に示す。なお、比較例5
においてはすべり距離60mで試験を中断した時点での
結果を示す。
【0058】図8に示すように、実施例6と比較例5と
では鋳肌面の硬さは同等であるにもかかわらず、段付き
摩耗量は実施例6の方が格段に少ないことが認められ
た。これは、実施例6の鋳物では初晶Siが鋳肌面の極
く近傍から晶出しているのに対して、比較例5の鋳物で
は鋳肌面の近傍には初晶Siが晶出していないことによ
るものであると考えられる。
【0059】したがって、実施例6の鋳物においては、
Mn,Crの添加により、鋳肌面の極く近傍から初晶S
iが晶出しているために、摺動面を非加工のままで耐摩
耗摺動部材として使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例、参考例および比較例におい
て、摩擦摩耗試験を実施するのに使用したリング材の形
状を示す断面説明図(図1の(A))および正面説明図
(図1の(B))である。
【図2】本発明の実施例、参考例および比較例におい
て、摩擦摩耗試験を実施するのに使用したプレート材の
形状を示す正面説明図(図2の(A))および断面説明
図(図2のB))である。
【図3】本発明の比較例1,2および参考例1,2,3
において、初晶Siが晶出していない領域の厚さを測定
した結果を示すグラフである。
【図4】本発明の比較例3,4および実施例1,2,3
において、初晶Siが晶出していない領域の厚さを測定
した結果を示すグラフである。
【図5】本発明の比較例5,6および実施例4,5,6
において、初晶Siが晶出していない領域の厚さを測定
した結果を示すグラフである。
【図6】本発明の比較例1および参考例3において、摩
擦摩耗試験を行って段付き摩耗量を測定した結果を示す
グラフである。
【図7】本発明の比較例3および実施例3において、摩
擦摩耗試験を行って段付き摩耗量を測定した結果を示す
グラフである。
【図8】本発明の比較例5および実施例6において、摩
擦摩耗試験を行って段付き摩耗量を測定した結果を示す
グラフである。
【図9】過共晶Al−Si合金ダイカスト鋳物において
初晶Siが晶出していない領域を示す金属組織顕微鏡写
真である。
【図10】過共晶Al−Si合金ダイカスト鋳物におい
て初晶Siが晶出していない領域の厚さを測定する方法
を例示した説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 倉 増 幸 雄 東京都品川区東品川2丁目2番20号 日 本軽金属株式会社 内 (72)発明者 橋 本 昭 男 東京都品川区東品川2丁目2番20号 日 本軽金属株式会社 内 (72)発明者 甲 藤 晴 康 東京都品川区東品川2丁目2番20号 日 本軽金属株式会社 内 (72)発明者 堀 川 宏 東京都品川区東品川2丁目2番20号 日 本軽金属株式会社 内 (72)発明者 猪 狩 隆 彰 東京都品川区東品川2丁目2番20号 日 本軽金属株式会社 内 (72)発明者 津 島 健 次 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日 産自動車株式会社 内 (72)発明者 塩 田 正 彦 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日 産自動車株式会社 内 (72)発明者 多 胡 博 司 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日 産自動車株式会社 内 (72)発明者 鞘 師 守 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日 産自動車株式会社 内 (56)参考文献 特開 平5−78770(JP,A) 特開 平8−117946(JP,A) 特開 平5−279777(JP,A) 特開 平1−180938(JP,A) 特開 昭48−102035(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 1/02 C22C 21/00 - 21/18 B22D 17/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、Si:18.0〜20.0
    %、Cu:0.5〜1.5%、Mg:0.5〜1.5
    %、Fe:1.5%以下、P:0.001〜0.02
    %、およびCr:0.1〜0.5%,Mn:0.2〜
    1.0%のうちの1種または2種を含み、残部Alおよ
    び不純物からなることを特徴とするダイカスト用過共晶
    Al−Si合金。
  2. 【請求項2】 重量%で、Si:22.0〜24.0
    %、Cu:0.5〜1.5%、Mg:0.5〜1.5
    %、Fe:1.5%以下、P:0.001〜0.02
    %、およびCr:0.1〜0.5%,Mn:0.2〜
    1.0%のうちの1種または2種を含み、残部Alおよ
    び不純物からなることを特徴とするダイカスト用過共晶
    Al−Si合金。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の過共晶Al−
    Si合金よりなることを特徴とする過共晶Al−Si合
    金ダイカスト鋳物。
  4. 【請求項4】 耐摩耗摺動部材として使用するに際し
    て、摺動部を非加工のままで使用することを特徴とする
    請求項3に記載の過共晶Al−Si合金ダイカスト鋳物
    の使用方法。
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